太陽活動と電離層
2014 年度 卒業論文
明星大学 理工学部 総合理工学科 物理学系
1
要旨
本研究では太陽活動と電離層の関係について調べるため、電離度上昇の要因である極端 紫外線(EUV)の放射に伴うと考えられる太陽電波強度のデータを指標として、また太陽 からの紫外線強度は太陽活動の程度に依存するので、太陽活動の指標として、黒点数のデ ータを用いて電離度との相関を求め議論した。 解析ではまず、各データの12 か月ごとの移動平均値をとり、比較した。そこから太陽活 動の1st Peak、2nd Peak、極小値それぞれの活動周期ごとでの時間と値をまとめた。 次にfoF2 のデータと他のデータとの相関をとった。 結果、 foF2 のグラフは各周波数の太陽電波強度、相対黒点数とほぼ同じ周期で増減して いるのがわかった。第23 活動周期では 1st Peak、2nd Peak、極小値のすべての値が低くな っており、また11 年周期の乱れから太陽活動の減衰が読み取れた。 相関では、月別中央値のデータのままでは、ばらつきが大きいので12 か月ごとの移動平均 値をとったデータを用いるとばらつきは無くなり、曲線を描いたグラフになった。foF2 と プラズマ周波数 𝑛!の関係からfoF2 を二乗して相関を求めるとグラフは直線となり、高い 相関係数を得ることができた。 電離層の電子密度の変化と太陽電波の強度変化をくらべたところよい相関が得られた。 太陽電波の強度は、太陽紫外線強度のいい指標になっており、地球電離層の電子密度は、 太陽紫外線の強度の変化に従って変化しているといえる。 また、太陽電波強度は太陽活動の変化に応じて変化していることから、地球大気電離層は 太陽活動に大きく影響されているといえる。2
目次
第1章 序論
1-1 研究の背景
1-2 太陽について
1-3 電離層について
1-4 本研究の目的
第2章 データについて
2-1 太陽電波強度
2-2 相対黒点数
2-3 f
oF2
第3章 データ解析の方法、結果
3-1 各データの時間変化
3-2 f
oF2 との相関
第4章 考察・まとめ
謝辞
補遺
引用文献
3
第1章 序論
1-1 研究の背景
太陽は我々に最も近く、表面を詳細に観測できる唯一の恒星である。恒星は宇宙の基本 構成要素であるため、太陽を観測することは宇宙の研究をする上で重要な意味を持ってい る。また、太陽で起こる太陽フレアはX 線強度、極端紫外線強度が増大し、電離層の電離 度が増大する。電離度の増大は、通常では反射される電波が吸収され、電波が伝わりにく くなり、GPS などの測位電波の伝播にも影響を与えるほか、衛星軌道における残留大気密 度を増大させ衛星の軌道、姿勢にも悪影響を及ぼすこともある。太陽活動の11 年周期は地 球の気象、気候にも影響を及ぼしていると考えられており、したがって太陽についての研 究は我々の生活にも深く関わっていると言える。 太陽観測の中で黒点の観測は最も長い歴史を持つ。 太陽面上に現れる黒点数は約11 年の周期で増減しており、黒点の多い時期を活動極大期、 少ない時期を極小期といい、1 つの周期は極小期から次の極小期までと定義される。黒点の 出現緯度は、1 周期の間に南北の中緯度帯から赤道向かって近づいていくのが知られている。 図1.1 上図はその様子を表しているが、蝶を横向きに並べたように見えるのでモーンダーの 蝶形図と呼ばれる。 黒点は出現する際、東西に並んで対になって現れる(正確には対を結ぶ軸が緯度に対し傾 角を持っている)が、西側の黒点(先行黒点)のほうが東側の黒点(後行黒点)より、一般に 大きく長寿命である。また、この先行、後行黒点の磁極はN 極と S 極が互いに対になって いる。1 周期の間に現れる先行黒点の磁極は N か S かのどちらか一方であること、北半球 と南半球では必ず磁極が反対になること、その次の周期ではこのN 極、S 極の関係が逆転 する、以上の磁極極性を考慮すると太陽活動は22 年周期になる。 黒点数の増減はほぼ11 年周期であると述べたが、それ以外の周期、不規則な変動も見られ る。17 世紀中ごろからおよそ 70 年間黒点数がほとんど観測されない時期があった。 この期間はモーンダー極小期とよばれる。 太陽活動は地球にも影響を与える。フレアや太陽風、コロナ質量放出(CME)などの宇 宙天気現象は衛星障害や宇宙飛行士、航空機の被爆、地上インフラ(主に高緯度地域)、通 信、測位の障害が生じる。(被害はないがオーロラも宇宙天気現象である。)例として、1989 年大規模な磁気嵐が発生し、カナダのケベック州で大規模な停電が起きた。また、米国の 気象衛星の通信が止まるなど、各国の様々な社会インフラが影響を受けた。このような被 害を減らすため、太陽活動に起因する宇宙環境の変動(宇宙天気)をひので衛星や電波観 測、電離圏の電子数観測などによって予測する研究が行われている。4 したがって太陽の活動について知ることは非常に重要である。 図1.1
1-2 太陽について
太陽は直径が約140 万 km(地球の約 110 倍)、質量が 2×1030kg(地球の約 33 万倍)で ある。しかし平均密度は水の密度の1.4 倍(地球の平均密度は水の 5.5 倍)しかない、9 割 以上が水素から成る巨大なガス球である。また、恒星としての太陽は銀河の中では標準的 な主系列星の一つであり、推測年齢は46 億年になる。太陽の内部構造は内側から中心核、 放射層、対流層、光球となっており、その上に彩層、コロナの外層大気が存在する。 太陽の中心には半径10 万 km の中心核があり、温度は 1600 万度、密度は 1.56×105kg/ ㎥(およそ水の150 倍)であり、太陽全体の 2%ほどの体積の中に約 50%の質量が詰まっ た状態になっている。中心核での熱核融合反応により水素がヘリウムに変換され、これが 太陽のエネルギーの源となっている。このエネルギーのほとんどはγ線に変わり、一部は ニュートリノに変わる。γ線は周囲のプラズマとの相互作用により、次第に「穏やかな」 電磁波に変換され、数十万年かけて太陽表面にまで達し、宇宙空間に放出される。一方、 ニュートリノは物質との反応率が非常に低いため、太陽内部で物質と相互作用することな く宇宙空間に放出される。その外側には、厚さ40 万 km ほどで中心核を覆う放射層が存在 する。ここでは放射(輻射)による熱輸送によって内部で生じたエネルギーが外側へ運ば れている。さらに外側、厚さ20 万 km ほどの対流層では放射よりも効率の良い対流によっ て外側へエネルギーを運ぶ。この層では電離した水素の核に電子が結合し、その際に光エ5 ネルギーが放出される。 光球は肉眼で見える太陽表面の層である。厚さは500km ほどで、ここから光とエネルギ ーが宇宙空間に放出されている。表面の温度は約6000 度で、対流運動がもたらす湧き上 がる渦がつくる「粒状斑」とよばれる細かい粒がたくさん集まった模様がみられる。これ は太陽の内部からエネルギーが対流によって運ばれてくることを示している。また、光球 では黒点と白斑がみられる。黒点はその2000~3000G の強い磁場により対流運動が抑制さ れるため、温度が約4000 度と周りよりも下がり、黒く見える。白斑は周りよりも温度が高 く明るく見える。黒点ほどではないが強い磁場(1000~2000G)をもつ。 光球のさらに外側には彩層とよばれる太陽大気の層がある。厚さは1000~10000km ほど で、温度は約9000 度である。この彩層では黒点を囲む明るい領域のプラージュや、粒状斑の 縁に対応する領域で見られる針状の突起構造であるスピキュールなど様々な活発な太陽活動が 観測できる。また、彩層のガスが磁力線に沿って浮き上がったものをプロミネンス、黒点付近で発 生する太陽大気の爆発現象をフレアという。 彩層の外側にはさらにコロナと呼ばれる層が存在しており、その温度は100 万度を超え る。彩層とコロナの間には遷移層と呼ばれる薄い層があり、ここから温度、密度が急激に 変化するが、詳細はまだ解明されていない。このコロナからは太陽の引力から解放された プラズマの流れがでており、太陽系、太陽圏を満たしている。このプラズマの流れを太陽 風という。 図1.2
6
1-3 電離層について
電離層(電離圏)は大気が紫外線を吸収し、部分的に電離している領域である。 電離層は電波の伝搬に様々な影響を与えるだけでなく、磁気圏のプラズマの供給源であり、 また磁気圏と電磁的に結合して強い電流が流れる領域になる等、宇宙環境を決めるうえで 重要な働きをしている。電離層は高さによってD 領域(70~100km 付近)、E 領域 (100~150km)、F1 領域(150~200km)、F2 領域(200km 以上)に分けられている。 電離圏の状態を表すには様々なパラメータが用いられるが、最も代表的なのがプラズマの 高さ分布での最大電子密度の値である。電子密度の値によってプラズマ周波数が決まり、 地上から短波帯の電波が垂直に入射した場合、磁場の効果がなければ、送信周波数がプラ ズマ周波数と一致した高度で電波は反射される。1-4 本研究の目的
太陽から極端紫外線強度が増大し、電離層の電離度が増大すると人工衛星の軌道などに 影響を及ぼすと思われる。 本研究の目的は、太陽活動と電離層の関係について調べるため、電離度上昇の要因であ る極端紫外線(EUV)の放射に伴うと考えられる太陽電波強度のデータを指標として、ま た太陽からの紫外線強度は太陽活動の程度に依存するので、太陽活動の指標として、黒点 数のデータを用いて電離度との相関を求め議論することである。7
第2章 データについて
2-1 太陽電波強度
今回用いた太陽電波強度のデータは野辺山太陽電波観測所で稼働している太陽電波強度 偏波計のデータを用いた。 太陽電波強度偏波計は7 つの周波数で太陽全面から出てくる電波の強さと円偏波(電波の 回転方向)とを正確に測り、太陽の活動の様子を調べている。 1.0、2.0、3.75、9.4 GHz はもともと名古屋大学空電研(豊川)で稼働していたものを 1994 年4 月に野辺山へ移設・統合した。観測は以下の年から行われていた。 1951 年 3.75GHz(豊川) 1956 年 9.4GHz(豊川) 1957 年 1.0GHz・2.0GHz(豊川) (17GHz は 1978 年、35GHz は 1983 年、80GHz は 1984 年) 長いものは今年で60 年間以上継続して観測していることになる。 17GHz 以上は大気の影響を受けやすいので、1.0GHz~9.4GHz のデータを使用した。 単位はSolar Flux Unit.(SFU) 10!!!W/㎡・Hz・太陽電波強度偏波計の性能 観測周波数:1.0、2.0、3.75、9.4、17、35、80 GHz の 7 周波数 観測視野:太陽全面 空間分解能:なし(太陽全面からの電波を計測) 時間分解能:0.1 秒 図2.1 国立天文台 野辺山太陽電波観測所にある太陽電波強度偏波計
8
2-2 相対黒点数
黒点数のデータはSIDC(Solar Influences Data Center)が提供する相対黒点数の月平
均値の長期間のデータを用いた。相対黒点数は以下の式より与えられる。
R=k(10g+s)
R は求めるべき相対黒点数である。s は個々の黒点の数、g は黒点群の数で、k は異なる観 測者間の補正係数であり、ヴォルフの観測機器である口径7.5cm、倍率 64 倍の望遠鏡で目 測(投影面の観察)での識別能をk= 1 とするものである。 黒点観測はシーイング、望遠鏡、場所、天候、観測者等によって異なる。2-3
f
oF2(F2 層臨界周波数)
電離層のデータはNICT(情報通信研究機構)の国分寺にあるイオノゾンデという観測装 置で得られたものを用いた。(図2.4)イオノゾンデによって取得される電離層の一次観測 データをイオノグラムと呼ぶ。図2.2 のように地上からパルス電波を電離層に向け発射する と、送信周波数と同じ電子プラズマ周波数の高度で電波は反射され、地上で受信すること ができる。したがって、送信周波数が最大電子密度のプラズマ周波数を超えると電波は突 き抜ける。この周波数を臨界周波数といい、通常最も密度の高いF2 層(高度 300km 付近) の臨界周波数をfoF2 という。今回はイオノゾンデで観測されたfoF2 の地方時 12 時の月別 中央値のデータ(1969 年~2011 年)を用いた。 図2.29
図2.3 より地上観測イオノグラムには、電波の正常波(O)モード反射エコーと異常波(X)
モード反射エコーが観測される。これは地球磁場の存在により電離圏が電波伝搬に対して
複屈折性をもつためである。各電離圏領域(E、Es、F1、F2)の最大電子密度に対応する
特性周波数(臨界周波数)foE、foEs、foF1、foF2(O モード)およびfxE、fxEs、fxF1、fxF2
(X モード)が観測される。O モード臨界周波数をf(o MHz)、X モード臨界周波数をf(x MHz) とすると、両者にはfo2=fx2‐fx・fBの関係がある。fB(MHz)は電子のジャイロ周波数fB (MHz)=2.80×104B(テスラ)である。電離圏の最大電子密度は Ne(m-3)=1.24×1010・〔fo (MHz)〕2で与えられる。 図2.3 •イオノゾンデの性能 観測方式:シングルパルス 1観測所要時間:約15秒 送信尖頭出力:10kW 観測周波数範囲:1.00~29.98MHz 周波数分解能:20kHz(リニア) 送信繰り返し周波数:100Hz 観測高度範囲:60~1500km 高度分解能:1km 強度情報分解能:8bit 図2.4
10
第3章 データ解析の方法、結果
3-1 各データの時間変化
各データの12 か月ごとの移動平均値をとり、比較した。(図 3,1) ただし、foF2 のグラフは他のグラフと比較しやすいよう 20 倍にしている。 図3.1 より、foF2 のグラフは各周波数の太陽電波強度、相対黒点数とほぼ同じ周期で増減 しているのがわかった。実際に太陽活動の1st Peak、2nd Peak、極小値それぞれの活動周期 ごとでの時間と値をまとめたものが図3.2、そこから周期、増減値を読み取ったのが図 3.3 であるが、類似していることがよくわかる。 第23 活動周期では 1st Peak、2nd Peak、極小値のすべての値が低くなっており、また 11 年周期の乱れから太陽活動の減衰が読み取れる。 図3.111 図3.2 それぞれの極大、極小時の時間とその時の太陽電波強度(SFU)、 相対黒点数、臨界周波数(MHz)の値
1980-02 1989-07 2000-07
127.10
133.78
121.49
1980-02 1989-07 2000-07
166.44
177.75
150.51
1980-01 1989-06 2000-04
185.95
198.21
175.11
1980-01 1989-06 2000-07
337.53
357.04
341.67
1979-12 1989-07 2000-04
164.50
158.46
120.80
1979-07 1989-07 2000-06
12.3
12.5
11.6
cycle,22
cycle,23
3.75G H z
1st Peak
cycle,21
1.0G H z
2.0G H z
9.4G H z
SpotN um ber
foF2
1970-07 1981-05 1991-06 2002-03
98.21
127.57
134.63
130.59
1970-07 1981-05 1991-07 2002-02
130.16
169.2
171.59
165.18
1970-07 1981-09 1991-07 2002-02
154.5
190.12
192.75
189.75
1970-03 1981-09 1991-05 2002-02
318.3
342.49
352.3
359.59
1970-03 1981-04 1991-02 2001-11
106.17
143.44
147.59
115.53
1970-06 1981-08 1991-07 2002-02
11.0
12.4
12.1
11.9
SpotN um ber
foF2
cycle,23
1.0G H z
2.0G H z
3.75G H z
9.4G H z
2nd Peak
cycle,20
cycle,21
cycle,22
1976-06 1986-09 1996-05 2008-03 45.54 46.69 46.37 44.76 1976-06 1986-09 1996-05 2008-10 55.57 55.82 54.42 52.82 1976-06 1986-09 1996-05 2008-10 79.95 78.29 80.29 77.67 1976-10 1986-02 1995-12 2008-04 258.98 254.36 258.16 257.71 1976-03 1986-09 1996-05 2008-12 12.17 12.31 7.98 1.70 1976-06 1985-06 1996-03 2008-10 6.6 6.4 6.2 5.5 foF2 cycle,22~ cycle,24~ 3.75G H z M IN cycle,23~ 1.0G H z 2.0G H z cycle,21~ 9.4G H z SpotN um ber
12 図3.3 (図 3.2)からそれぞれの極大、極小時で区切り周期、増減値を求めた。
1st peak
21~22
22~23
1.0G H z
9年5ヶ月
11年
2.0G H z
9年5ヶ月
11年
3.75G H z
9年5ヶ月 10年10ヶ月
9.4G H z
9年5ヶ月
11年1ヶ月
SpotN um ber
9年7ヶ月
10年9ヶ月
foF2
10年 10年11ヶ月
21~22
22~23
1.0G H z
6.68
-12.29
2.0G H z
11.31
-27.24
3.75G H z
12.26
-23.10
9.4G H z
19.51
-15.37
SpotN um ber
-6.04
-37.66
foF2
0.2
-0.9
2nd peak
20~21
21~22
22~23
1.0G H z
10年10ヶ月
10年1ヶ月
10年9ヶ月
2.0G H z
10年10ヶ月
10年2ヶ月
10年7ヶ月
3.75G H z
11年2ヶ月
9年10ヶ月
10年7ヶ月
9.4G H z
11年6ヶ月
9年8ヶ月
10年9ヶ月
SpotN um ber
11年1ヶ月
9年10ヶ月
10年9ヶ月
foF2
11年2ヶ月
9年11ヶ月
10年7ヶ月
20~21
21~22
22~23
1.0G H z
29.36
7.06
-4.04
2.0G H z
39.04
2.39
-6.41
3.75G H z
35.62
2.63
-3.00
9.4G H z
24.19
9.81
7.29
SpotN um ber
37.27
4.15
-32.06
foF2
1.40
-0.30
-0.20
13
m in
21~22
22~23
23~24
1.0G H z
10年3ヶ月
9年8ヶ月 11年10ヶ月
2.0G H z
10年3ヶ月
9年8ヶ月
12年5ヶ月
3.75G H z
10年3ヶ月
9年8ヶ月
12年5ヶ月
9.4G H z
9年4ヶ月
9年10ヶ月
12年4ヶ月
SpotN um ber
10年6ヶ月
9年8ヶ月
12年7ヶ月
foF2
9年
10年9ヶ月
12年7ヶ月
21~22
22~23
23~24
1.0G H z
1.15
-0.32
-1.61
2.0G H z
0.25
-1.40
-1.60
3.75G H z
-1.66
2.00
-2.62
9.4G H z
-4.62
3.80
-0.45
SpotN um ber
0.14
-4.33
-6.28
foF2
-0.2
-0.2
-0.7
14
3-2
f
oF2 との相関
foF2 のデータと他のデータとの相関をとった。 月別中央値のデータのままでは、ばらつきが大きいので12 か月ごとの移動平均値をとった データを用いて相関をとった。相関係数が最も高い2.0GHz のグラフを参照する。 図3.4 [月別中央値での相関] [移動平均値での相関] 0.0 2.0 4.0 6.0 8.0 10.0 12.0 14.0 16.0 0 20 40 60 80 100 120 140 160 180 200 220 foF2 [M Hz] 太陽電波強度[SFU]2.0GHz
0.0 2.0 4.0 6.0 8.0 10.0 12.0 14.0 0 20 40 60 80 100 120 140 160 180 200 foF2 [M Hz] 太陽電波強度[SFU]2.0GHz
15 移動平均値での相関は非常に綺麗なグラフを得られたが曲線になっているのがわかる。 これはfoF2 のデータがプラズマ周波数 𝑛!に比例しているからである。 太陽電波強度は極端紫外線(EUV)に比例し、それは電子密度𝑛!に比例している。 一方、電子密度𝑛!は、電離層大気の電離の進み具合で決まり、電離を進めるのが太陽から の極端紫外線(EUV)である。そして、太陽電波強度は太陽紫外線に比例していると考え られる。したがって( 𝑓𝑜F2)!∝ 𝑛 !~太陽電波強度となるためfoF2 のデータを二乗して相関を 求めてみた。 結果は図3.5 より、ほぼ直線になり、高い相関係数を得られた。 図3.5 0 20 40 60 80 100 120 140 160 180 0 20 40 60 80 100 120 140 160 180 200 (fo F2 )^2 [MHz] 太陽電波強度[SFU]
2.0GHz
相関係数
1.0G H z
0.98688770
2.0G H z
0.99424486
3.75G H z
0.99325817
9.4G H z
0.97231932
Sunspot N um ber
0.99020433
16
第4章 考察・まとめ
本研究では太陽活動と電離層について調べた。 まず各データの12 か月の移動平均値をとり時間変化を比較した。 結果はすべてのデータがほとんど同じ周期で増減していることがわかった。 どのデータも1st Peak、2nd Peak が読み取れる。これは太陽の北半球と南半球の活動度の 変化に時間的ずれが見られるためで、南北の非対称として 昔から知られているものである。 図3.2 を見ると、第 23 活動周期になるにつれ極大値、極小値が低くなっているのがわかり、 特に相対黒点数に至っては一段と下がっていた。また、11 年周期の乱れも確認できた。ど のデータも揃って第23 活動周期の落ち込みが長く、なかなか上がらなかったため、12 年以 上かかっていた。 次にfoF2 との相関を求めた。 初めは1か月平均のデータで相関を求めたが、ばらつきが多かった。foF2 の値は春分、秋 分近くに二回Peak があり、5 月から 8 月の夏季の間は最も低くなる。これは、太陽紫外線 を受ける電離層大気そのものの状態が季節変化をするためであり、このような季節変動が 影響しているとからだと思われる。したがって、移動平均値をとったもので相関を求めた。 そうすると、ばらつきは無くなり、曲線を描いたグラフになった。foF2 とプラズマ周波数 𝑛! の関係からfoF2 を二乗して相関を求めた。結果は直線となり高い相関係数を得ることがで きた。 2.0GHz が最も高い相関係数であったが、これは電離層が極端紫外線(EUV)の影響により 電離するのだが、この極端紫外線の出ているあたりから1.0 や 2.0GHz などの低い周波数の 電波が放射されるからだと考えられる。反対に、9.4GHz などの高い周波数の電波はもっと 太陽の深いところから放射されているため相関係数が低かったと思われる。 相対黒点数はfoF2 との直接関係はないが、太陽活動指数として用いられており、高い相関 係数を得ていた。 太陽電波強度は2.8GHz(F10.7:波長が10.7 ㎝の電波強度)が世界的に使われているが、 今回は他の周波数で解析したので貴重なデータが得られたと思われる。 最近の研究によると、短期間の電離層密度の変動は低い周波数、特に1.0GHz(F30:波長 が30 ㎝の電波強度)との相関がよいので人工衛星の軌道計算にも用いられている。17
謝辞
本研究を行うにあたり、野辺山太陽電波観測所の柴崎清登教授には数々のご指導をして いただき、大変お世話になりました。また研究員の岩井一正さん、野辺山観測所の皆様に は、様々な面で研究生活をサポートしていただきました。明星大学天文学研究室の小野寺 幸子先生、井上一先生、日比野由美さん、先輩方にはゼミを通して多くのアドバイスをい ただきました。今後、大学院生として研究していくために大切なことを学ぶことができま した。支えてくださったすべての方々に感謝申し上げます。補遺
本研究では、黒点数、太陽電波強度、foF2 の相関をとり、そこから相関係数を求めた。 ここで相関係数について説明する。 相関係数とは、2 つの確率変数の間の相関(類似性の度合い)を示す統計学的指標である。 原則、単位は無く、−1 から 1 の間の実数値をとり、1 に近いときは 2 つの確率変数には正 の相関があるといい、−1 に近ければ負の相関があるという。0 に近いときはもとの確率変 数の相関は弱い。1 もしくは−1 となる場合は 2 つの確率変数は線形従属の関係にある。相 関係数は以下の式より求められる。 2 つの変数x,y の平均をそれぞれ𝑥,𝑦とすると、相関係数ρは より求められる。この式は共分散をそれぞれの標準偏差で割ったものに等しい。(相関係数)=
(共分散) (!の標準偏差)(!の標準偏差) また、一つの目安として相関係数の大きさ(絶対値)と相関の程度の表現の対応関係は以 下のように考えれば良いといわれている。 1.0≧|R|≧0.7 :高い相関がある 0.7≧|R|≧0.5 :かなり高い相関がある 0.5≧|R|≧0.4 :中程度の相関がある 0.4≧|R|≧0.3 :ある程度の相関がある 0.3≧|R|≧0.2 :弱い相関がある 0.2≧|R|≧0.0 :ほとんど相関がない (出典:「社会調査の基礎」放送大学テキスト)18