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算数文章題のつまずきとその指導について : 文献および事例を対象とした研究

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Academic year: 2021

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(1)算数文章題の つ まずきとその 指導について 一文献および 事例を対象とした 研究 一 中山. 修一・高山. 佳子. A@study@on@mathematical@word@problem@soving@and Ifs@instruction@for@the@learning@disabled. ,. Shuichi@NAKAYAMA Yoshiko@ TAKAYAMA -㌔. Ⅰ じめ. ま. 11 Ⅱ. 算数不安という 言葉もあ る通り、 算数に苦手意識を 持つ子ども達は 多い。 その中でも特にっまず きやすいとされるのが、 文章 額 であ る。 計算問題はできる 子ども達でも、 文章題になると 極端にっ まずきが大きくなるとされる。 本研究では、 算数文章題の 解決過程について 文献的に考察し、 それに基づいて 中学生. 1. 名の事例. を 概観した。. 2. 算数文章題 は ついての文献研究 (1) 算数文章題の 解決過程について 算数文章題は 難易を決定する. 要因、 解決方略、. 解決過程などさまざまな 側面からの分析が 行. われている。 その中でも文章題の 解決過程がどのような 段階を経るのかを 知ることは、 つまず きへの理解を 深めるためにも 不可欠なことであ る。 ・算数文章題の 解決過程は、 理解と解決の 過程に分けて 考えられる。 ㎏ wis & Mayer(1987) では問題文を 読んで理解する 問題理解過程と、 理解したことに 基づき解決する 解決実行過程 か らなるとした。 また℡ ntsch & 。 Greeno(1985) も理解と解決の 2 段階にわけ、さらに変換、 統合、. プランニンバ、 実行の 4 つの下位過程を 想定している。 こうした分析について、 吉田・ 多鹿 (1995) ではスキーマ 理論として紹介している。 スキーマとは 問題として書かれている 文章の意味を 理 解し、 内容に関連する 知識を利用して 上間の関係をまとめあ げた知識構造を 言 スキーマ理論では、 文章題を解くプロセスを「理解過程」と「解決過程」の. う. 。. 2 段階に分けた。. 「理解過程」では 文章題を読んで 問題 丈 に記述された 内容に適したスキーマを 構成する。 理解 過程はさらに 個々の文を読んでその 意味を理解する 変換過程と、 算数に関する 知識に照らし 合 わせて文章の 関係をまとめあ げる統合過程に 分けられる。 理解過程での 2 段階を経て、 解決過程 に 入る。解決過程では 理解過程において 構成されたスキーマをもとに、 方略を選択し 計算する。. 方略を選択し、 数式を立てる 過程をプラン 化過程、 演算を適用する 過程を実行過程とする。 以 上のように文章題を 解決する過程は 変換、 統合、 プラン化、 実行の 4 過程に分けて 考えるのがこ の 理論の概要であ る。この中で、 文章題を解く 上で重要と考えられているのが 統合過程であ る。.

(2) Ⅰ. 64. 中山. 文章題を解決するためには、. 修一・高山. 佳子. 単純に文章を 読むというだけではなく、 読みとった内容を 算数の. 知識と結びつけて 何が求められているかを 理解することが 重要になるからであ あ ってはじめて、. る。 その理解が. プラン化過程で 正しく 立式 することが出来る。 石田・ 多鹿 (1993) によれば、. 文章題を解決するには、. 重要と述べている。 このように、 国語 苦手とする児童、 生徒は多い。 文章題でつまずく 子. 理解における 統合過程の役割が. の 読み取りが得意であ っても算数文章題を. ども達は 、 個々の文章の 意味を理解することは 出来ても、 文 間の関係を算数の 知識に照らして 整理することが 難しいと考えられる。 算数をはじめとする 問題解決にあ たっては宣言的知識と 手続き的知識の 重要性が指摘されて. いる (Montague,1992)。 宣言的知識とは「たし 算とはこうい. う. もの」、 「かけ算とはこうい. も. う. の」という言語化できる 知識であ る。 手続き的知識とはそうした 宣言的知識がどのような 働き. をするのか、 どのような場面で 使. う. かに関する知識であ る。 単純にあ る方略について、 よく知. っているだけでは 適切な問題解決にはつながらない。 大人と子どもの 問題解決を比較した 研究. でも、. しばしば子どもは 手続き的知識の. 未熟さにより、 方略を知っていても 問題を解決できな. い場面があ る (Carr&Biddlecomb,1998)oMontague らは、 方略とその使用場面についての 知識、 さらに課題に 対する情動的な 要因 (A 丘ective Factorめを踏まえて 算数問題解決の 認知 一 情動モ. デル (Cognitive.affective model of mathmatical problem solving) を提案している。 (Montague,@ Bos@ &@ Doucette,1991@ ;@ Montague@ &@ Applegate,1993a@ ;@ Montague@ & Applegate , 1993b , Montague , 1996@;@Montague , 1997)@o. 認知. 一 情動モデルでは、. 算数の問題解決を 認知方略、 メタ認知処理、 情動要因の相互作用で. 説明する。 まず認知方略とその 過程として 7 つの段階が上げられる。 換える. (Paraphrase)」、 「視覚化する」、 「仮説をたてる」、. 「評価する (確認する ) 」の 7 段階であ. 問題の表象化を 担. う. 「読む (理解する ) 」、 「言い. 「見積もる (予測する ) 」、. 「計算する」、. る。 このうち「言い 換える」過程と「視覚化する」過程は. ものとされる。 そして「仮説をたてる」、 「予測をたてる」、. 「計算する」段. 階が直接解決に 関わる段階であ る。 7 段階は読み、 表象化し、 解決し、 確認するという 4 つの 段 階 に整理されると 言うこともできるだろう。 これらの 7 段階の認知方略に 対して、 メタ認知処理 は 7 つの段階のそれぞれで 3 つであ. 機能する。 その働きは「自己教示」、 「自己質問」、. 「自己モニタ ナ. 」. る。 これらの働きによって、 解決に当たっていつ、 どの方略が必要なのかを 操作し、. の ま. た解決の過程を 監視する。 最後の情動要因とは 解決にあ た づ ての自信 や 、 興味をいう。 こうし た 複数の処理過程が. 働くことによって、 算数の文章題が 解決されるとするのが 認知 - 情動モデル. の概略であ る。. スキーマ理論、 認知 - 情動モデルにおいて 見られるよ. う. に、 算数文章題の 解決には複数の 異な. る処理過程が 必要とされる。 算数文章題の 難しさとはそうした 複数の異なる 処理過程を必要と すること自体にあ. ると考えられる。 そじてこのような 複数の処理過程を 統制する機能として、. メタ認知が着目されている。. るが、 一般的にはメタ 認知とは、 人の学習や思考活動に 関連する 知識であ り、 学習や思考を 統制する活動と 定義される。 算数に限らず、 読解や作文でも 問題解 沃 にあ たっては方略が 必要であ る。 物語の読解でいえば、 要約、 質問、 予想、 題意の明確化な メタ認知は幅広い 概念であ. どの方略によって、 内容の理解が 進められていく。 メタ認知は、 そうした方略がいつ、 どこで、 どのように必要なのか 制御する。 岡本. (1992) は小学校 5 年生を対象として、 算数文章題を 解決す.

(3) 5 6 1. レ. て. つ @し. の. 導 指. 分析を行った。 メタ認知として 分析の対象となったのは「結果の. 題理解 J 、 「プラン」、 「実行」、. 「結果の評価」の 5 項目であ. 問題を解決する 以前と以後でその 問題が解けそ 判断であ る。. そ と. き ず. つ. ま. の. 題 章 文 数. 算. る 過程のメタ認知の. 「問題理解」はその. う. 予想」、. 「問. る。 「結果の予想」と「結果の 評価」は. かどうか、. あ るいは答えが 正しいかどうかの. 問題でわかっていることと 求めなければならないことを 質 間し. たものであ る。 「プラン」では 問題内容の図式化と. 立 式 をその項目とした。. 「実行」は計算の 過. 程とその答えであ る。 実験にあ たっては小学校 3 年生から 5 年生で学習された 内容の算数の 文章 題を個別に実施し、 解決している 場面をビデオに 録画した。 文章題を解決した 後、 そのビデオ を被験者に見せながら 解決を振り返ってインタビューを 行った。 インタビュ一内容は 過程ごと に 「このときはどんなことに 気をつけていますか」. といったものであ る。 そしてインタビュ 一. の内容をメタ 認知の確立段階に 応じて質的に 5 段階にわけ、 得点をつけた。 算数の文章題の 成績 で、上位 群と 下位 群 に分けてインタビュ 一の内容を比較した。 「結果の予想」、 「問題理解」、 ラン」、. 「実行」の 4 つの段階で、. 「プ. 上位 群と 下位 群 に有意差が見られた。 「結果の評価」段階につ. いては有意差が 見られなかった。 正しく問題を 解けたかどうかの 判断は、 成績の高い時も 低い 群も同様に正しく 行えていた。 しかし、 それ以外の領域については 成績の差で、 メタ認知に差 が 見られていたことが. 示唆された。 「プラン」段階と「実行」段階では 文章題の結果と、 インタ. ビュ一の得点に 高い相関が見られた。 問題解決の能力が 高ければ、 それだけその 段階について 明確に方略について 熟慮した発言が 出来るということであ る。 能力が上昇するにつれて、. メタ. 認知が増加すると 考えられた。 また、 インタビュ一の 得点においては「プラン」過程と「結果 の 予想」過程、 「プラン」過程と「問題理解」過程の. 相関が高かった。 これらのことより、 算数. 文章題の解決には 解決に必要な 情報をどのようにめっけるのかというメタ 認知、 解決のための プランの立て 方に関するメタ 認知が重要であ ることが示唆された。以上を踏まえて、岡本 (1992) では文章題の 指導において、 問題の理解や 目標同定のためのモニタリンバに 関する指導と、 解 決に至るためのプランの 立て方についての 指導の重要性を 指摘している。 以上算数文章題の 解決過程の研究を 概観した。 次に算数文章題で 見られるつまずき、 および 学習障害児のように 認知的な問題のあ る児童、 生徒を対象とした 研究について 見ていく。. (2) 算数文章題の つ まずきの研究 上記において、 スキーマ理論、 認知 - 情動モデル等、 算数文章題の 解決において 必要とされる. 処理過程に関するモデルを 概観した。 それらの理論に 基づき、 算数文章題の つ まずきやすい 過 程についての 研究が行われている。. 伊藤 (1997)は、スキーマ理論の 4 段階の文章題解決過程でのつまずきについて、 学習障害のあ る児童とない 児童を対象に 比較分析を行った。文章題と同時に 変換統合、プラン化、 実行に関す る 4 つの質問を提示し、 文章題を解決しながら. 質問に答えるよ. 質問とは、文章題中に書かれていて 解決に必要な 情報を問 文章題には書かれていないが、 解決に必要な 情報を問. う. う. う. 求めたのであ る。 変換に関する. ものであ り、統合に関する 質問は 、. ものであ る。プラン化過程での 質問とは. 演算記号の選択を 問い、実行では計算実行に 関して質問した。 学習障害の群では 統合とプラン 化で多く誤りが 見られ、健常 児群 では統合に誤りが 多かった。 学習障害児 群と 健常 児 群を比較すると 統計的には有意とはいえないものの、 プラン化過程にお い て差が見られていた。 共通する点として. 学習障害児 群 でも健常 児群 でも統合過程にっまずき.

(4) Ⅰ. 66. 中山. 修一・高山. 佳子. が 見られた。. 実験結果によれば、 認知的な問題の 有無に関係なく、 統合過程、 つまり文章題で 何が問われ ているのか、 自分のもっ知識と 照らしあ わせて考えていく 過程にっまずきが 多く見られた。. こ. れは文章題の 解決において 統合過程がもっとも 難しく、 つまずきやすいと 考えることができる だろう。 一方で学習障害のあ る群では統合過程の 他にプラン化過程、 つまり式を立てる 過程に おいても誤りが 多かった。 伊藤 (1997) の研究では、 学習障害児 群と 健常 児群 とでプラン化 過 程の差はそれほど 明確なものとはいえない。 しかし、 いわ める算数嫌 い 、 算数が苦手というこ. とと、 認知的な問題として 算数につまずきがあ ることの違いについては、 指導を考える 上でも 関心のもたれる 点であ る。 さらなる検証が 求められるところだろう。 認知 - 情動モデルを 提唱した Montague. らは、 学習障害児 群と 、 平均的能力の 健 常 児や優秀 児. の 群と 比較した研究を 行った (Montague,Applegate, 1991;Montague,Bos&Doucette,1ggD)o. 構造化面接によって 算数文章題の 解決過程を群間で 比較、 分析したのであ る。 ここで使用され た構造化面接とは MPSA(MathematicalProblem. SolvingAssessment) と呼ばれる算数の 文章. 題 における認知、 メタ認知、 情動を評価する 技法であ る。 MPSA. わる面の質間や、方略の知識などを に 撮り、それを見ながら. 問. う. は算数は得意か、など情動に関. 質問からなる。また、文章題を解いている 場面をビデオ. 場面ごとに、文章題の解決方略等をたずねた。 質問は読み、文章題の言い. 換え、視覚化、 解決への仮説立て、方略の評価、計算の実行、検算という. 7 つの認知方略の. 枠組みに. 基づいて構成されたものであ る。面接で得られた 答えは、 方略に関する 知識 や 、 方略の適切な 使 用などに分類、 整理し、 群 間で比較した。 方略の知識についての 分析に. ょ れば、. 学習障害児 群は 健常 児群 、 優秀 群と 比較して文章題を. 読み、 計算し、 検算するなど 同じような方略の 知識を持ち、 使用していた。 しかし、 問題の表 において違いが 見られたことを 示唆している。 問題の表象化を 象化 (problemrepresentation) 行. う. 方略は、 問題文の内容を 自分の言葉で 言い換えたり、 紙の上や頭の 中で問題内容を 図解し. て 理解を進めたり、. 何が問われているのか 仮説を立てるなどのものがあ げられる。 そうした面. で学習障害児群は 他の群と比較して、 未熟であ ることが示唆された。 また、 その他にも、 ここ で 述べたような. 問題の表象化を 援助する介入を 行. たことを示唆する 研究があ. る. う. ことによって、 算数文章題の 解決が改善し. (Hutchinson,1990;Zawaiza,1991 、 Montague,1992). こうした学習障害児群で 見られた問題の 表象化での つ まずきは、 宣言的知識と 手続き的知識 という観点から 説明されるだろう。 学習障害児は 獲得した方略の 知識では、 健常 児 と比べて 大 きな差は見られない。 しかし、 それらの方略をいっ 使えばいいのか、 という点において つ まず くと考えられる。 Montague & Apple 甲 te(1993)では学習障害児 群と 健常 児 群の算数文章題を 解決する過程を 比較し、 学習障害児 群は 、 他の群と比較して 問題文を言い 換える、 図式化する、 仮説を立てるなど、文章題の内容を 理解し、解決に導く場面が 少ないと述べている。 学習障害児の 算数のつまずきへの 対応を考える 際には、 問題の表象化への 援助が大きな 課題 として考えられる。 問われている 内容がわからなければ、 適切な方略の 使用を導くことも 出来 ない。 これは学習障害児がっまずきやすいと 点であ ると同時に、 これまで見てきた 研究からも わかるとおり、 算数文章題を 解決する上での 要点となる部分でもあ る。 これをスキーマ 理論にあ てはめて考えれば、算数文章題を 解決する 4 段階の中でも 統合過程に あ たると考えられる。 問題文を読んで 自分の算数知識と 照らし合わせて 文章の関係を 整理し 理.

(5) 167. 算数文章題の つ まずきとその 指導について. 解する過程は、 問題 文 を言い換えたり. 図式化することで 質問内容を理解する 問題の表象化に 近. い、 もしくは同じ 過程と捕らえられるからであ る。 算数文章題の 解決には統合過程、 言い換えれば 問題の表象化が 重要な役割を 担っていると 考. えられる。 それでは、 算数文章題につまずきのあ る児童、 生徒に対して、 どのような援助、 介 人 が考えられるのだろうか。 次に算数文章題の 他、計算についての 指導研究についても 概観し 、 算数につまずきのあ る子ども達への 指導法について 考える。. (3) 指導に関する 研究について 学習指導の最終日りな 目標のひとっとして、 指導を受けた 子供たちが自分の 力 で、 問題を解決. できることになることがあ げられるだろう。 そのためには、 読む、 計算するといった 具体的な 方略の他にも、 解決への予想ややる 気など、 さまざまな要因を 考える必要があ る。 問題解決への 動機づけから、 概念的な理解までも 包括した指導方法として、 認知力ウンセリ ングというアプローチがあ. る (市川,. 2000)。 認知力ウンセリンバとは、 認、知心理学を基礎とし. て 面接 法 であ る。 認知的問題によって 学習や理解に 困難のあ る人に対して、 個別的な面接によ. り原因を探り、 解決のための 支援を行うとされる (市川, 1986;2000)。 教育現場において、 一斉 授業や集団テストの 中では見過ごされがちな 問題を個別の 面接、指導場面で見出し 対応を行. 特徴としては、学習者に課題にあ たって自分の 考えていることや、思考過程を話す. よう. う. 。. に求め、. それを指導の 糸ロとすることであ る。 もともとこうした 指導を受ける 場合、 言語的に説明する. ことに慣れていないことが 多い。 それを促すことによって、 理解の状態を 明確にすると 共に 、 より深めていくことを 狙う。 認知力ウンセリンバはもともと 大学生のコンピュータ・プロバラ ムや統計の学習における 困難に対応するために 始められたものであ る。 しかし、 現在ではより 広い対象への 適用が試みられている。 植木 (2000)は認知力ウンセリンバのアプローチを 用いて、 算数につまずきのあ る小学校 6 年生へのひき 算の指導を行った。対象となった 児童は言語的な 能 力は標準的であ ったが、計算の習得につまずきがあ り、算数の学習自体に 消極的になっていた。 算数に対する 苦手意識等を 対話によって 明確にすると 共に、 学習に対する 動機づけを引き 上げ ることことからはじめた。 実際に店に行って 買い物をさせ、 おつりが必要となる 場面を体験さ せることによってひき 算の必要性を 認識させた。 おつりの計算ができなければ 買い物ができな. いことを体験することによって、 まず学習の意欲を 高めたのであ る。 その上で、 過程を独り言の 形で提示し、 同じようにひき 算に取り組ませるなどモデリンバを. ひき算の解決 基本的な指導. 法とした。 児童が間違えた 際には、 同じ間違いを 自分でもして 見せたり、 より極端な間違いを してみせることによって、 解決への 嵐 づきを促したのであ る。 この指導により 比較的短期間で のひき算の習得が 達成された。 この児童の場合は 言語的な能力が 高かったことや 数量概念につ まずきがなかったことがより 学習を促進したとも 考えられる。 この研究では 指導されたのはひ き 算の計算であ. り、 本研究の焦点となる 文章題とは異なる。 しかし、 解決過程の言語化を 促す. ことは、文章題解決で 重要な要素とされる 問題の表象化を 促す点でも有効であ ると考えられる。 Montague らの認知 - 情動モデルに. ょ れば、. 算数文章題の 表象化過程として「言い 換え」が含ま. れている。 対話の中で問題解決の 過程を自分の 言葉で言い直すことで、 解決過程を明確にし、 解決能力の改善を 促すと考えられる。 解決過程についての 対話や話し合いによって、 成績を改善する 指導は Naglieni & Gottling.

(6) 168. 中山 修一・高山. 佳子. (1995)でも行われている。 一定の時間、 計算練習を続けた 後、 反省する時間、 つまり自分の 練. 血 あ便頑童のを. 留場面を振り 返り、 自分のとった 方法が適切であ ったかどうか、 なぜ自分がそのような 方略を とったのか、 などについて 言語化させた。 そのあ とで、 それを踏まえてさらに 一定時間計算 練. 習を続ける指導を 行ったのであ る。 Naglie Ⅱらは一連の 研究の中で、 指導を受ける 子ども達の 認知的な性格によって 効果に違いは 見られるものの、 計算を繰り返す 過程で自身の 解決過程を. 反省し、 言語化することが 成績の改善につながることを 示唆している (Naglieri & Gottling, 1995 ; Naglie 「 h &. Johonson,2000)0. な方法が取られているのだろうか。. う. ぬはと. ここまでに計算問題への 指導研究について 見てきた。 それでは算数文章題の 指導ではどのよ. 算数文章題を 指導するとき、 しばしば取られる 方法として、 手順を項目化し、 順番に辿るこ. とによって解決に 導くという方法があ る。 Babbit&Miller(1996) は、 それらの研究を 概観し要. 点を 5 つにまとめた。 それは「問題文を 注意深く読む」、 「問題文の内容を 図に書いたりしてよく う. のかを決定する」、 「式を書く」、. 「計算をして. 答えを確認. に解 し、 。っ. 理解する」、 「解決の方略や 何 算 を使. 同時に 7 段階について、 それぞれで自己教示、 自己質問、 自己監視の 3 段階の自己統制方略. ( メタ. 認知方略 ) をとるように 指導される。 読みの段階を 例にとると、 「問題を読み、 理解できなかった ら、. もう一度読む ( 自己教示 ) 」、 「読んだ内容は 理解できただろうか ( 自己質問 ) 」、 「理解できたら. 解決にとりかかろう く. ( 自己監視 ) 」となる。 指導にあ. たってはこうした 手続きを説明するだけでな. 、 指導する側が 解決する過程を 口頭化しながらやってみせ、 ときにはわざと 間違えてみせる.

(7) 169. 算数文章題の つ まずきとその 指導について. ことで、 より具体的に 解決が進められる 過程を理解させるよ しては肯定的に. 評価し、. う. 指示している。 また、 結果に対. またあ る解決の過程がなんのために 必要なのか理解させることを 重視. する。 Solve It 」は実験段階において、 6 、 7 、 8 年生を対象として 実施した際、 7 、 8 年生で効果は 見られ 「. たものの、 6 年生ではあ まり効果が見られなかった (Montague,1992) 。 あ る程度、高い年齢を対象 とした指導方略と 言えるかもしれない。 正しい場面で 正しい方略を 使える手続きを 教える、 というのがこれらの 方略指導のアプロー チ. であ る。 個々の方略を 項目として、 順番に実行できる 形で提示する。 Case,Harris,&. Graham(1992) におけるフローチャート や 、 「. RPV,HECC. 」との提示も、. 「. Solve It!」で認知方略の. 適切な場面で 適切な方略を 使. う. 7 段階の頭文字から. ことが未熟とされる 学習障害児の. 特性を意識した 指導といえるだろう。 こうした例は 他にも多く見られる。 Watanabe(1991). の. SIGNS 」、 M Ⅲ er & Mercer(1993) の「 FAST DRAW 」も、 手続きを覚えやすくすることを 意 識した方略指導であ る。 SIGNS 」は「質問を 概観する (SurVey question)」、 「キーワードとう ベルを特定する (Identi億 key w0rds and labels)」、 「問題を視覚的に 描く (Graphically draw pr0blem)」、 「必要な式を 書き出す (Notetype 0foperation(s)needed) 」、 「問題を解き、 確認す る (Solveandcheckpr0blem) 」の 5 段階の略であ る。 また「 FASTDRAW 」は「解決するもの を探す は indwhaty0u.re solving Eor.) 」、 「何が問題の 部分なのかを 問 (Ask what are the partS of the problem.)」、。 「数字を準備する (Set up the numbers.)」、 「符号を限定する (Tie down the sign.)」、 そして答えを 計算するにあ たって「符号を 見つける (Discoverthe sign.)」、 「問題を読む (Read the problem.)」、 「答える、 もしくは描く、 そして確認する (AnSwe ㌔ or draw and checkJ 」、 「答えを書く (Whtethe answer.)」という手続きを 提示する。 「. 「. う. 「. Solve it!」、 フローチヤート、 SIGNS 」など、 方略の適切な 使用につまずきのあ 「. ると. 考. えられる子供たちへの 指導を考え、 問題解決の過程を 整理して提示されたものであ る。 これに はその項目にしたがって. 進めれば、. れるだろう。 Montague. 自身もその論文の 中で述べているよ. 1 人で問題を解決することが う. 出来るよ. う. に、 との意図も含ま. に、 単純に連続的な 解決方略の. 提示のみによる 指導だけでは、 大きな効果は 得られない (Montague,1992) 。 連続的な解決方略 を 重視するのではなく、. 認知、. メタ認知の過程に 基づいて指導を 進めることが 算数文章題の 指. 導 において重要であ ると考えられる。. 3. 中学生を対象とした 算数文章題の 指導事例. 以下に述べるのは、 る。. 算数文章題につまずきのあ る中学生の男子 T. に対して、. 行った指導事例であ. 算数文章題 は ついて、 どのようなっまずきが 見られたのか 分析した。. (1) 対象 児 T のプロフィール 指導期間は 2002年 3 月より. 2003年 3 月の 1 年間であ る。 対象 児 が小学 6 年生の 3 月より開始し、 中 学 1 年のほぼ 1 年間の指導にあ たった。 指導当時、 通級等の指導は 受けていなかった。 母親から の情報によれば、 小学校 3 年生のとき、 1 年間、 授業中に寝て 過ごした結果、 学習面で遅れが 出 たとのことだった。 紹介を受けた 教育機関によれば、 算数は小学校 3 年生の段階で、 九九は覚え ているものの、 かけ算、 わり算の筆算でつまずいているとのことだった。 2 年ほど前に受けた 教 育 センタ一での 検査結果より、 学習障害が疑われるとの 報告があ った。 本生徒との切面接は 小.

(8) 170. 中山. 修一・高山. 佳子. 学校 6 年生米 02 月であ る。 初回、 および 2 回目、 3 回目では問題を 解いている最中や、 質問され. た場面で、 突然、 居眠りをはじめるということも 見られた。 しかし、 数回の指導を 経て、 居眠 りの場面は少なくなった。 以前に受けた 教育センタ一での 検査からの指摘によれば 本生徒の書手、 特に漢字において 直 線 であ るべきところが 分割して書かれるなど、 視覚との 協応 になんらかの つ まずきがあ る可能 性も考えられた。 WISC. 皿の結果は、 全検査 10 (FIQ) 81 、 言語性 IQ (VIQ) 76 、 動作性 IQ (PIQ) 90 であ っ た。 群 指数は言語理解 73 、 知覚統合 93 であ る。 注意記憶、 処理速度に関しては、 本人の体調不 良 で記号探しと. 数唱の検査を 実施していないため、 現状では出していない。 ・下位検査を 見ると. 絵画完成と積み 木模様の成績が 高く、 検査場面を見ていてもパズルとして 楽しげに取り 組んで いた。. K.ABC の結果は継 時 処理尺度の標準得点が 100 、 同時処理尺度の 標準得点が 110 、 認知処理 尺 度の標準得点が 106 、 習得度尺度の 標準得点が 78 だった。 5 パーセント水準で 維持処理、 同時処. 理、 および認知処理尺度と 比較して習得度尺度の 標準得点が有意に 低かった。 (2) つ まずきの分析 算数に関する 課題でみると、 1 桁の加、 減算の文章題はすべて 暗算で答えることができた。 九九は覚えてはいるものの、 ややあ いまいで質問されると 1 をかける段階から 順番に唱えて 答 えを出すこともあ った。 九九があ い ま い であ る、 という自覚があ るためか、 かけ算はたし 算で、 わり算はひき 算を繰り返すことで 答えを出す場面も 見られた。 「. 「. 3X4 」であ れば、 3 を 4 回足す 、. 12-4 」であ れば 0 になるまで 12 から 4 を引いた回数を 数えていた。 Rileyetal. (1983)の分類に従い、 結合、 比較などの文書題を 実施したが、 すべての問題を. っ. まずくことなく 暗算で答えることが 出来た。 小学校 3 、. 4 年生レベルの. 算数文章題は 問題なく解決することが 出来た。 割合や平均など、 学. 年 相応の問題においては、 少し戸惑っていた。 しかし一度解決方法を 学習すると、 別の間 題 に その解決方法を 応用して解決することが 出来た。 かけ算、 わり算の筆算は 苦手としていた。 そのため筆算を 使わなくても 答えを出そうとする 工夫が見られた。 何 としては次のようなものであ る。 N が筆者、 T が対象児であ る。 N:72 枚の紙を 3 人で同じ 数 ずっわけます。 1 人分は何枚になるでしょう :72-3. T. 式を立てたあ と、 しばらく無言で 考え込み、. 34 」と書いた。. ワ. たの. 頭の中で 72-3. し. 出. て つ ら. う た. やか. どっ. こえ. NT. N:72-3?. 「. 、 できちゃった ? ど う やってできたの ?. T : ど う やって、 って。 ただ、 12 だけ ね いて、 あ とは 60 にわけて. N: あ あ 、 先に 12 を抜いて、 それから 60.

(9) 算数文章題の つ まずきとその 指導について. 171. T : 60 を 3 でわって、 12 を 3 でわった. この例では、. 結果的に計算は 間違えているが、 考え方としては. 指導を進めるにあ. どうか、. たっては、. あ っているかどうかの. 毎回数間の文章題の. 間違っていなかった。 解決を求めた。 解決前と解決後にできるか. 判断を 100 から 0 の評定で求めた。. T の文章題の解決を 見ると、 単独の式で解決できる 問題については、 大きなつまずきもなく 解決することが 出来た。 しかし、 複数の式を必要とするもの、 四則での判断がつきにくい 問題 では混乱する 様子が見られた。 「男子が 36人、. 女子が 48人います。 ダンスをするために、 それぞれ同じ 数 ずっにわかれて、. 男女のバループを 作ります。 と 思います。. あ まる人が出ないように、. できるだけ多くのグループを 作りたい. グループの数はいくつにすればいいでしょう」という 文章題に対して、 解決でき. るかどうかの 判断は、. 100から 90という高いものだった。 これは数値から 判断した様子で、 実際. に 解決に入ると 混乱していた。. 判断したあ と、 数分考え、 N: ここから、. ど. う. 「. 36+48 丁 84」と書いたあ と、 さらに 1 分ほど黙って 考えていた。. すればいい ?36+48 で 84n 84 をど. T : え ? ……どうするっていわれても. N:. う. ん。. じ やあ. 、 どうして 36+48=84. う. する ?. ? ここしかまだ、 できない って出したの ?. T : どうしてって 言われても、 なんとなく。. ここからさらに 84 を 2 で割るなどして 考えていたが、 自分で答えを 出すことはできなかった。 そこで表などを 用いて、 段階的に考えながら. わたって練習したが、. 最初に使った. 答えを出した。 このあ と、 同形式の問題を 数回に 表を使って考える 方法を用いて、 以降は 1 人で解決することが. 出来た。 このように複数の 式を必要とする. 問題は、. それまでの文章題への 取り組みと比較して. 予想、よ. りも大きなつまずきが 見られた。. り、 質問をしてもなかなか 言葉が出なかった。 それがさら 考えられた。 次の例では、 沈黙したまま 式をたてることが 出来なか. T は考えはじめると 黙りがちであ に 混乱を招いていることも. ったため、 段階的に質問しながら 解決を進めた。 文章題は「 1 つ め ダンボールを 荷造りするのに、 ひもが 4 メートルいります。 16個荷造りをし ました。 ひもはまだ 32 メートル残っています。 全部で何個、 荷造りできますか」というもので あ. る。 しばらく黙って 考え込んでいた。 N: 今、 わかってることはなに ? T : 今、 わかってること ?. N:. う. ん。 ダンボールを 1 つ荷造りするのに、 ひもが 何 m いるの ?. T@ : 4o. N: 4 メートル。. じゃ 、. 今までに何個、 荷造りをしました ?.

(10) 172. 中山. 修一・高山. 佳子. T : l5 個。 N:. じ やあ 、 ヒモはどれだけ 残ってる ?. T : 32 メートル。. N:. う. ん。 じ やあ 、 この問題で聞いてるのはなに ?. T : え ? ぜんぶで何個. N: 何個。 ぜんぶで何個、 荷造りができるか。 何がわかれば、 全部で何個荷造りができるか わかると思. う. ?. ここでしばらく 沈黙が続いたため、 あ らためてはじめに 戻って質問をくり 返した。. T. N: 今、 何個まで、 荷造りが終わった ?. N: 今、 何個終わって た ? T@ :@15. N: そ. う. 、 15 個終わっているんだね。 じ やあ 、 のこり、 何個できると 思. う. ? あ と、 何個両造. T T. りできるの ?. N:. じ やあ 、 質問、 かえるよ ? あ と、 何個荷造りできる ? 今、 いくつひもが 残ってて、 残り. T. のひもで何個、 荷造りができるの ?. N: あ と、 何個荷造りできるかわかるためには、 何がわかればいい ?. N:T. 君、 今、 どこまで考えた ?. ここで考え込み、 またⅠ分ほど 沈黙が続いた。. N: ねえ、 T 君。 のこりのひもで、 何個荷造りができる ?T 君 ? のこりの ヒそ で、 何個荷造り ができるか知るために、 何算 をすればいい ? 何算 ? T : 知らない. N:. じ やあ 、 ひもは何個残ってる ?. T : 32 メートル N:. じ やあ 、 一個荷造りするために、 何 m 必要 ?. T@ :@4. N:. 4. メートル。 ということは、 32 メートルで、 何個荷造りができる ? 何 算すれば、 わかるかな ?. しばらく黙って 考えていたが、. 「. 7 」と答えを出した。. 算をしたと言いかけ、 かけ算と答えなおした。 N:. これ、 ど う やって 7 を出したの ?. どのように考えたのかを 問うと、. 引き.

(11) 173. 算数文章題のつまずきとその 指導について. T : いや、 偶然ひいて、 かけてたら……. N: あ あ 、 4 の 段 やってて、 4X7?4X7=28 T. : あ ら. N. :. 4 の 段 やってたら. だよ。. 4X8?. T@ :@32o N: そ. う. 、 8 個だね。 4X8=32. だから、 8 個。 のこり 8 個荷造りできます。 だから、 ぜんぶで 何. 個 、 荷造りできるの ?. T@ :@23. T はわり算を引き 算で解くことがあ った。 ここで「ひいて」と 言いかけたのは、 引き算で答. えを出していたためとも 考えられる。 問題解決後、 反省するかのように 自分の つ まずきについて 発言した。 ワ の め た 。す. つむ. た田. か貫. 楠卍庁. カこ. があん 式おう. TNT. T の文章題解決を 観察すると、 単独の式で解決できる 問題であ れば、 基本的に 1 人で解決する. ことが出来た。 かけ算、 わり算の筆算でのつまずきはみられたが、 数値を分解したり、 たし算、 ひき算に変換して 解決する工夫も 見られた。 一方で、複数の式を必要とする 文章題にあ たると、 1 人で解決することは. 難しかった。 T の問題解決の 様子を観察していると、 すべてを考え 込んで. 進めようとする 傾向が見られた。 自分から図を 描くことはなく、思考過程について 質問しても、 明確な答えは 見られなかった。 「式が浮かばなかった」という. 発言より、 式が浮かばないとき、. どういう手順で 解決を進めるかを 考える意識が 低いことがうかがわれた。 T の場合、 比較的、 少ない手順で 解決できる問題については 自分で進めることが 出来る。 しかし一度に 考えられる. 手順を超えた 問題では、 解決に向けた 方略の選択が 難しかった。 T は式が浮かべば 算数文章題を 解決することができる。 では浮かばない 時にど. う. するのか。. 段階を追って 考えることを 明確にするため、 具体物を使った 指導を行った。 以下に、 具体物を使った 際の指導場面の 例を示した。 文章題は、 「山田さんはティーバックを 17個。. さんはティーバッバを 9 個もっています。. 山. 田さんがいくつティーバッバをあ げれば、 2 人のティーバッバは 同じ数になりますか ?. 」という. 17から 9 を引き、. それをそ. ものであ. る。. この問題を読んだあ. と、 無言で「 8 個」と書いた。. これは. のまま移動すればよいと 考えたことと 思われた。 実際にティーバッバを 用いて、 17個と 9 個の差 があ るなかで、 8 個動かせば同じになるかどうか 確認を求めた。 N: 大丈夫 ?. じ やあ. 、 これで 8 個あ げたら、 同じ数になるかな。 同じ数にするためには、 何個、. あ げればい いか 。 T : 8個 N:. じ やあ. 、 8 個あ げてみよう.

(12) 174. 中山. T. こ. う. 修一・高山. 佳子. なるだけ. 実際には、 8 個動かしても 同じ数にはならない。 そこで、 同じ数になるよ 作して考えるよ. う. T :. う. ティーバッバを 操. 求めた。. 同じ 数 ……今はどうなってる. N:. う. ? 同 B 数になってる ?. ん. N: 何個あ げた ? T :4個 N: T. 4 個だね。 4 個あ げたら、 同じ数になった。 : あれ. 自分の出した 答えの間違いに 気づいた。 しかしどうしてそうなるのかは 理解していない 様子 だった。 そこでティーバッバを 用いて説明した。. N. :. はじめ、 17個。 17個と 9 個だった。 ね。 17個と 9 個で、 違いが 1 、 あ った。. T :. う. 2. 3. 4. 5. 6. 7 、 8個. 2 人のちがいは 8 個。 8 個をとったら、 2 人は同じ 数 だよね。. ん. N: ということは、 17-9 は 8 で、 8 個の差が……. 2 人を同じ数にするんだから……. T 君、 ちがい. は 8 個。 これがなければ 2 人のティーバッバは 9 個ずつでいっしょ。 T :.うん. N: っていうことは、 ちが い の 8 の分をど. う. すればいい ? この 8 を ?. T : わる. N: そ. う. 、 2 人でわけてやればいい。 8 わる 2 はいく っ ?. T@ :@4. このように具体物を 使わず文章題を 読んで解く段階では、 問われている 内容を理解しておら ず 、 またそのことにも 気づいていなかったと 思われた。 具体物を使って 実際に・はじめに 想定し た 答え、. 「. 8 個」を移動させたところ. 同じ数にはならず、 誤りに気づくことができた。 さらに 促. すことによって、 そこからさらに 具体物を操作することによって 正解を導くこともできた。. し. かし、 具体物を用いない 抽象的な思考のみではこの 過程を進めることは 難しかった。. (3) 考察 T は文章題を読んでわからないときは、 数分にわたって 黙って考え込んだ 後、 と 答える場面が. 「わからない」. 見られた。 もともと発言が 少なく、 プロトコルを 収集するために 質問を繰り返. しても必ずしも 明確な答えが 返ってくるわけではなかった。 以上の例で見たとおり、 単一の計算で 解決できるような 問題であ れば、 それほど大きなつま. ずきは見られなかった。 一方で複数の 立 式 が要求されるような、 段階を追って 進める問題の 解 決は難しかった。 ここでの T のつまずきの 要因の一つとして 解決方略が見つからないとき、. ど.

(13) 175. 算数文章題の つ まずきとその 指導について. うすれば解決できるのか 進められないことにあ ったと考えられる。 つまずいた場面で T は「式 が浮ばなかった」と 発言した。 彼にとって式は 浮ぶものであ り、 求めて行くものではなかった のではないだろうか。 ここで具体物を 使って手元で 操作することによって、 あ る程度、 自発的. に考えていく 手がかりは与えられたと 考えられる。 しかし一方で、 文章題によっては 具体物を 数えることに 時間がかかり、 かえって混乱する 場面も見られた。 小学校高学年から 中学生まで の文章題は、 複雑な推論が 必要であ ることも多く、 具体物を使った 方略には限界があ る。. そ. う. した問題に沿った 援助方法について、 さらなる検討が 求められる。. 4. 総合考察 以上に、 算数文章題のつまずき、 及びその指導法の 文献研究の概観し、 一事例における 算数文章. 題の解決過程についてみた。 算数文章題の 解決は、 文章を読んで 意味をとる変換過程、 文章の意味を 算数、 数学的知識に 照ら し 合わせる統合過程、. 式を立てるプラン 化 ( プランニンバ ) 過程、 計算する実行過程に 分けられる。. 算数文章題を 解決する上でつまずきやすく、 大きな役割を 担っているとされるのは 統合過程であ る。 算数文章題の 難しさは、 文章を読んだ 後でそれを算数の 文脈で整理し、 立式 に結びつける 過程にあ るとされる。 それぞれの過程は 密接に関連するものであ り、 厳密に分離して 考えることは 難しい。 しかし、 過程ごとに整理することは、 必要な指導、 援助を考える 上で有用なことだろう。. Xin&Jitendra(1999). では、 算数文章題の 指導研究に対するメタ 分析を行った。指導対象 児の 1Q 、. 指導の方略、 覚 す文章題の性質などに 分類し、 その効果について 比較している。 その中で、 指導の アプローチとして 分類、 項目化されたのは 4 つであ る。 その内容は表象 (Representation)、 方略指導. (Strategy) 、 コンピュータを 使った指導 (C Ⅲ ) 、 その他であ った。 ここで表象指導とされたのは 算 散文章題に含まれる 情報の表彰、 解釈に関わるものを 対象とする。 具体的な指導方法としては、. 問. 題文を読んで 図を描いたり、 具体物を操作したりといったことが 挙げられる。 方略指導は問題を 解 決する上での 直接的、 顕在的な方略の 指導をい. う. 。 ここには問題文を 言い換えたり、 予想を立てる. などの方略が 含まれる。 Montague らの認知、 メタ認知指導もここに 含まれた。 C Ⅲはコンピュータ ーを使って解き 方を提示するという 援助方法であ る。 その他に含まれるのは、 注意を喚起したり、 電卓を用いるなど、 上記に含まれるような 指導以覚のものであ る。 この 4 分類の効果は、 CAI が最も 高く. 、 続いて表象指導、 方略指導、 その他という 順になっていた。 本研究において、 中心的に考察. し、. また事例においても 焦点をあ ててきたのは 表象指導にあ たるといえる。 Xin&Jitendra(1999). においても、 表象の指導は、 比較的有効であ ることが示唆されている。 しかし同時に、 場合によっ てはかえっで 混乱を招く研究例も 報告されている。 算数文章題の 内容を正確に 表象する援助でなけ れば、 当然のことであ るが正解には 結びつかない。 本研究の事例においても、 具体物を与えられて 考えている場面で 数が大きくなりすぎてしまい、 かえって正確な 操作ができなくなるということがあ った。 具体物あ るいは図などを 使った方法は 、 算数文章題の 内容理解を助ける 上で有効な方法であ る。 本研究では、 対象児の思考過程を 分析する 必要から、 指導 側 に見られたとおりなるべく 一対一対応の 方略を用いた。 問題によっては、 象 度の高い方略を 提示する必要があ ると思われる。 思考過程の分析を 行った. ぅ. ょり. 抽. えで、 コンピュータ. 一などを使ってより 柔軟な援助を 考えることが 求められる。 本研究では、 ・算数文章題における 表象、 つまり問題 丈 に含まれる情報の 理解と解釈に 焦点をあ て.

(14) 176. 中山. て 考察を行ってきた。 しかし、Montague. 情動の要因が 配慮されていたよ. う. 修一・高山. 佳子. らの研究においても 算数文章題にあ たったときのやる 気、. に 、 他の要因についても 考えて行く必要があ る。 Kamann. &. Wong(1993) では、 算数不安 (mathematicsanxiety) に焦点をあ て、 認知行動変容のトレーニンバを 実施して不安を 軽減することで、 成績が改善することを 示唆している。 さまざまな処理過程、 要因 が含まれるところに 算数文章題の 難しさがあ ると考えられる。 対象 児 によっても、 つまずきの要因 は 異なるだろう。 指導にあ たっては、 一人一人のつまずきを 細かく分析し、 対応にあ たることが求. められる。. 参考文献 Babbitt,B .C .,& Mille ち S .P@. (1996). Using. hyp)ermedia tX) improve. も. he. ma thematics も. problem.sol ㎡ ng skills of students with lea で nine disabilities JOourn りal of ムea. ェヵ 血ざ. Disabilities@@)@391-401,412 Badian , N A , (l983)@ Dyscalculia@ and@ nonverbal@ disorders@ of@ learning ・. In@ H , R Myklebust. ・. ・. , 5,235-264 (Ed , ) , Progress(n´earning.isabilties. Das , J , R , Naglieri , J A ・, &@Kirby , J , R , (1994)@Assessment@of@cognitive@processesThe@PASS@theory ・. ofinteligence. ・. New@York:@Allyn@&@Bacon. Fuchs , L , S ・, Bahr , C M ・, &@ Rieth , H , J ・. (1989)@ Effects@ of@ goal@ structures@ and@ performance. ・. contingencies@on@math@performance@of@adolescents@with@learning@disabilities@Journ ofLearnin. 多 Disabtlitfees,22,554-560. 算数文章題における つ まずきⅠD( 学習障害 ) 一 研究と実践Ⅰ. 伊藤一美学習障害児にみられる. 19997(2), 80-89 JonSon,N.C.. (2000) Ma hematical thinking in Second. & Hanich,L.B.. g ど ade. も. ch Ⅱぬen with. different’orm{fLD Journal{f´earning.isabilities・ Kamann. , Micael , P , , &W0ng. , B Y L(l993)@Inducing@Adaptive@Coping@Self ・. 、 Statements@in@Children. ・. with@Learning@Disabilities@. Through@ Self Instruction@Training@Journal@of@Learning ・. Disabilities@26(9)@630-638 MaS. 士で. ople 耳 l,M,A.,Sc ど uggs,T.E., & disabled. students:A. ど. (1991) Ma hematlcs. Shlah,S.. eviewo. ど Ⅰ. も. esea. で. lnstructlon foY leaYnlng. ch ムe オ 二刀Ⅰ 刀多 Dlzsれろ Ⅲb 自,esRese. 按 ⅠqC力. ん ⅠⅠ 接Ⅰ むⅠ e,. 6,89-98 Marsh,L.G..andcooke,N.L.(1996)Theeffectofusingmanlpulatlvesln s0lvlng to. s 屯 udents. w. Ⅰも. h. Ⅰ. ea. Ⅰ. nlng dlsabl Ⅱtles. 毛. eachingma. ムe ゑ止り Ⅰ万客 刀Ⅰs 按み. ⅠⅠリ 土田. es. も. hproblem. Aese. Ⅲけり. り イを (. Practice@ll(l) , 58-65 M0ntagu8,M.,Bos,C.,andDoucet 0feighth-grade 月ぷぽ. c 仮rf?6. Ⅰ. 寸. ma. も. e,M.(1991)Affective@. ]hema cal 毛. Ⅰ. p. nob Ⅰ. Ⅰ. (em. cogn. ⅠもⅠ. ve,. andme. も. ⅠもⅠ. ve. a もも r. solve Ⅰ :S ムe 凄エ ⅠⅠⅠ7窩り @7s窩み iesReSee 皿. Ⅰンリ・. ょ. Ⅰ. bu. も. eS. 按 Ⅰ C五あ リ. 45-151. Mon lague,M.,andAppl<egate,B.(1993a)MathematlcaIprobl<emsolvingcharacte も. school. acogn. s も uudentiS. wl h も. Ⅰ. earn. nng Ⅰ. d eeabⅡⅠ es. Ⅰ. 士Ⅰ. で. lS lcsofmllddle も. Ⅰ方e ノo Ⅱ x 竹ゑⅠのⅠ 勒)ec ノタ ⅠⅡE 乃はひ C 安打のり ク. 27,175-201 Montague. , M ,,and@Applegate. , B , (l993b)@Middle@school@students@. Ⅲ athematical@probl0. Ⅲ. solving.

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