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光ファイバ接続型広帯域96 GHz帯ミリ波レーダの基本構成法及び距離分解能特性評価

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(1)

光ファイバ接続型広帯域

96 GHz

帯ミリ波レーダの基本構成法

及び距離分解能特性評価

二ッ森俊一

a)

森岡

和行

河村

暁子

岡田

国雄

米本

成人

Fundamental Construction Methodology and Range Resolution Evaluation of

Optically-Connected Wideband 96 GHz Millimeter-Wave Radar

Shunichi FUTATSUMORI

†a)

, Kazuyuki MORIOKA

, Akiko KOHMURA

,

Kunio OKADA

, and Naruto YONEMOTO

あらまし 新たなミリ波帯周波数資源の活用として,空港の滑走路面等の小異物探知を目的とした光ファイバ 接続型広帯域 96 GHz 帯ミリ波レーダを提案する.これは,レーダ送受信信号の生成及び処理を行う単一の中央 装置と,複数のアンテナ装置で構成されている分散型レーダシステムである.中央装置とアンテナ装置の間は Radio-over-Fiber 技術を用い,ミリ波帯信号を光ファイバで伝送する.本論文では,送信信号帯域幅が 8 GHz の FMCW 方式の広帯域ミリ波レーダシステムを構築し,基本構成法及び距離分解能特性を議論する.最初に, 空港面監視を想定した光ファイバ接続型広帯域 96 GHz 帯レーダシステムの基本構成を示す.次に,中央装置か らアンテナ装置までの FMCW 送信信号伝送に光 2 逓倍器及び光増幅器を用いることで,送信信号の C/N 比劣 化及び位相雑音増加を抑制しつつ,ミリ波帯信号の長距離伝送が可能であることを確認する.最後に,距離分解 能評価試験を実施し,対象物間隔 4 cm の距離分解能を達成可能であることを明らかにする. キーワード 異物探知,FMCW レーダ,距離分解能,光ファイバ無線(RoF),ミリ波レーダ

1.

ま え が き

滑走路面上の異物は,航空機等に損害を与え,事 故等の危険な状態を引き起こす可能性がある.特に, 2000年に発生したコンコルドの事故[1]以降,そのよ うな異物を自動的に探知するシステムの重要性が増し ている.異物の有無を確認する安全点検の滑走路閉鎖 時間等が無視できないためであり,これらのシステム は繁忙空港において空港面の大幅な利用効率改善に寄 与する技術である.小異物を検出するため,可視・赤 外カメラやレーダ等の様々なセンサを組み合わせたシ ステム等の研究開発がこれまで行われている[2]∼[7]. 図1の左部分に概形を示す長さ42 cm×幅3 cm 程度の金属片が前述のコンコルドの事故を引き起こし 国立研究開発法人電子航法研究所監視通信領域,調布市 Surveillance and Communications Department, Electronic Navigation Research Institute, 7–42–23 Jindaiji-higashi, Chofu-shi, 182–0012 Japan a) E-mail: [email protected] たとされており,現在の空港面における異物探知シス テムの規格では性能用件として,図1の右部分に示す 直径1インチ×高さ1インチの円筒状の金属物体を 図 1 (a)金属片(長さ 42 cm× 幅 3 cm).(b) 金属円 柱(直径 1 インチ× 高さ 1 インチ)

Fig. 1 (a) Metallic strip (42 cm length × 3 cm

width). (b) Metallic cylinder (1 inch diameter

(2)

全ての天候条件で探知することが最低性能として求め られている[8].このような非常に小さい異物を探知 するためには,自動車に用いられる衝突防止用ミリ波 レーダ等に比べ,高感度が求められるとともに詳細な 情報を取得するためにセンチメートル級の高分解能が 必要である.電子航法研究所では,可視カメラやレー ザレーダ等に比較し天候等の環境条件の影響を受けに くく,小型かつ高分解能特性を実現できるミリ波レー ダを主なセンサデバイスとする,光ファイバ接続型空 港面監視用96 GHz帯ミリ波レーダの研究開発を行っ ている[4]∼[7].ここで96 GHz帯を用いた理由は,ミ リ波帯の中においても大気減衰が少なく[9],かつ将来 的に広帯域な周波数帯域幅を活用できる可能性がある ためである. 本論文では,提案する光ファイバ接続型広帯域96 GHz帯ミリ波レーダについて,その有効性を明らかに するための分散型レーダの基本構成法及び距離分解能 特性評価について議論を行う.まず,光ファイバ接続型 ミリ波レーダの概要について述べ,システム構成及び 動作原理について議論を行う.更に,レーダ送信信号 伝送に光ファイバ無線(Radio-over-Fiber,RoF)[10] を用いた,FMCWレーダ送信信号生成及び伝送特性 について測定結果に基づく議論を行う.最後に,構築 した試験用ミリ波レーダシステムを用い,二つの探知 対象物の距離分解能を評価する距離分解能測定結果に ついて議論を行う.

2.

空港面監視用ミリ波レーダ

ここでは,空港面監視用システムとして応用を想定 する,光ファイバ接続型ミリ波レーダの基本構成,動 作原理及びシステム構成について述べる. 2. 1 分散型ミリ波レーダの基本構成 図2及び図3に,それぞれ光ファイバ接続型空港面 監視ミリ波レーダシステムの概要及びRoF技術に基 づく光ファイバネットワークによる分散型ミリ波レー ダシステムのブロック図を示す.光ファイバ接続型ミ リ波レーダでは監視領域を複数の監視セル領域に分割 して異物探知を行う.また,レーダシステムでは,監 視対象の近傍に設置する複数のアンテナ装置及び局舎 等に集約して設置する一つの中央装置からなり,その 間を光ファイバネットワークで接続する. ここで,提案しているレーダシステムは,中央装 置で生成した共通のレーダ送信用のミリ波帯信号を, RoFを用い直接電気信号から光信号に変換して,複 図 2 光ファイバ接続型空港面監視ミリ波レーダシステム の概要

Fig. 2 Concept of optically-connected airport surface foreign object debris detection millimeter-wave radar systems.

図 3 RoF技術に基づく光ファイバネットワークによる分 散型ミリ波レーダシステムのブロック図

Fig. 3 Distributed millimeter-wave radar system based on RoF technology and optical fiber network. 数のアンテナ装置に配信する分散型システムであるこ とを大きな特徴としている.このことで,空港等の規 模に応じ,必要な数の路面装置を柔軟に変更できるス ケーラビリティに優れたシステムを構築可能である. また,一つの中央装置内に信号生成及び処理機能等を 含め,コストが掛かる機能を集中することで,アンテ ナ装置の極力単純化を計り,全体としてシステムの低 コスト化を目指している.ここで,受信信号も同様に アンテナ装置においてディジタル化を行い,光ファイ バで信号伝送を行う. 2. 2 FMCWレーダ 提案する分散型ミリ波レーダでは,電気信号及び光 信号を用いた逓倍回路によりミリ波送信信号を生成す る.これは,FMCW信号が理想的には同一振幅で瞬 時周波数が時間変化する信号であり,周波数逓倍技術 と組み合わせることで,所望のFM変調周波数及び周

(3)

波数帯域幅を有する信号を得られることから,FMCW 方式が広帯域信号を用いた高距離分解能レーダに適し た構成であるためである.また,FMCW信号源に精密 に周波数制御が可能な信号発生器を用いることで高距 離分解能特性が実現可能である.更に,後述する光逓 倍技術を用いることで数km以上の信号伝送が可能と なる.そのため,電気信号及び光信号の周波数逓倍技 術を用いる本レーダでは,FMCW方式[11]を本構成 の距離測定方式として適用する.三角波変調FMCW 方式を用いたレーダでは,図4に示すFM変調波を送 信波として用い,送信信号と受信信号の混合により目 標の距離と速度を計算する.ここで,FM信号のアッ プチャープ信号によるビート信号周波数をfbu,ダウ ンチャープ信号によるビート信号周波数をfbdとする と,目標距離Rと目標速度vについて,次式の関係 が成立する. fbu= 4fmΔf c R − 2f0 c v (1) fbd= 4fmΔf c R + 2f0 c v (2) ここで,Δf: 周波数帯域幅,fm: FM変調周波数,c: 光速,f0: 送信信号中心周波数である.上式(1),(2) から目標の距離Rと速度vを得ることができる. R = − c 8fmΔf (fbu− fbd) (3) v = − c 4f0 (fbu+fbd) (4) また,距離理論間隔ΔR及び速度理論間隔Δvは, フーリエ変換による周波数間隔をfmとすると,以下 図 4 (a) FMCWレーダ方式の送受信信号及び (b) 受信 ビート信号の周波数–時間

Fig. 4 (a) The relation of frequency and time of the transmitting and receiving signal with linear triangular FMCW radar. (b) The beat fre-quency obtained when measuring the moving target. のとおりである. ΔR = cf (5) Δv = c 2f0fm (6) ここで,理論間隔とはフーリエ変換の各ビン間隔を 示しているため,実際に二つ以上の目標対象物の距離 や速度を分離可能な間隔ではないことに注意が必要で ある.例えば,距離間隔の理論値は,表1に示す光ファ イバ接続型ミリ波レーダの送信信号帯域幅8 GHzに おいては,1.875 cmとなる.これは,FMCWレーダ の各チャープ変化時間を,全てフーリエ変換した場合 の各ビンの周波数間隔を距離値に換算したものである. 実際の二つ以上の対象物の距離分離性能を表す距離分 解能は,レーダ信号品質,信号取り込み可能時間,窓 関数等の信号処理条件及び一定誤警報確率(Constant

False Alarm Rate,CFAR)処理等のしきい値処理条 件に大きく依存すため,距離分解能評価には実機を用 いた評価を行う必要がある.

2. 3 レーダシステム構成

表1及び図5に,光ファイバ接続型ミリ波レーダの

表 1 光ファイバ接続型 96 GHz 帯ミリ波レーダの仕様 Table 1 Specifications of optically-connected 96 GHz

millimeter-wave radar system.

図 5 光ファイバ接続型ミリ波レーダのブロック図 Fig. 5 Block diagram of optically-connected 96 GHz

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仕様及びブロック図を示す.周波数帯域は92 GHzか ら100 GHzまでの8 GHz幅を用い,広帯域信号によ る高距離分解能特性を目指している.また,送信信号 電力は,広帯域かつ高出力電力を同時に達成できる電 力増幅器の入手が困難であることから,17 dBmとし ている.更に,滑走路面における異物探知を迅速に行 う必要性があるため,最大10 kHzのFM変調周波数 を達成できるように設計を行う. レーダの所望性能としての対象物の検出能力の評価 は重要な指標の一つであるが,対象物検出の際の信号 処理条件及び目標対象物検出処理方法等に依存する とともに,気象条件及び設置場所等の環境条件に大き く左右されるために,別途詳細な検討が必要である. 参考値として,前述の直径1インチ×高さ1インチ の円筒状の金属物体(RCSσ: −21 dBsm@96 GHz) を検出することを想定し,レーダの受信信号ノイズフ ロアを−105 dBmとし,対象物検出のために信号帯 雑音比10 dBが必要な場合,最小受信電力Smin −95 dBmとして,レーダの最大探知距離Rmaxは,レー ダ方程式[12]から以下の式で表される. Rmax= 4  PtG2λ2σ (4π)3S min (7) ここで,PtG及びλは,それぞれ送信電力,アンテ ナ利得及びレーダ送受信信号波長である.表1の条件 から,最大探知距離Rmaxの推定値は約210 mであ る.アンテナ装置1個辺りの覆域が広い方がコスト面 で有利なため,探知可能距離が長いほど望ましいが, 前述のとおり詳細な検討が必要なため,実用システム の仕様は今後の検討事項である. 前述の分散型レーダを実現するため,本レーダシス テムは,信号発生及び処理装置を集約した中央装置と 滑走路脇に設置することを想定したアンテナ装置の二 つから構成されている.二つの装置は,送受信信号を 伝送する光ファイバで接続される.アンテナ装置は,将 来的には複数接続することを想定しているが,本論文 では,基本検討として中央装置とアンテナ装置の1対 1接続のシステムを試作する.中央装置では,FMCW レーダ送信信号生成を行い,E/O変換器を用いて光 信号に変換し,光ファイバで伝送する.その信号は, アンテナ装置のO/E変換器で電気信号となり,アン テナ送信信号及び受信の局部発振信号となる.また, 受信信号は,中間周波数に変換された後,アンテナ局 でディジタル信号に変換され,同様に光ファイバで中 央装置に伝送される.中央装置では,レーダ受信信号 をFPGA(Field-Programmable Gate Array)等を

用いて,フーリエ変換,積分処理及びCFAR処理等 の信号処理を一括して行う.ここでは,レーダシステ ム全体の低コスト化を目的に,複雑な信号生成及び信 号処理等は一括して中央装置で行い,アンテナ装置は 単純な構成とすることを目指している. 2. 4 FMCWレーダ送信信号の生成及び伝送 図6に示すように,FMCW信号生成には,高いFM 変調周波数を実現するため,任意信号発生器(Agilent technologies, M8190A)を用いる.最大サンプリング レートが12 GS/sであることから,位相雑音(Phase Noise,PN)及び信号対雑音比(Carrier-to-Noise ra-tio,CN比)を考慮して4 GHz帯のFM信号を生成 する.4 GHz帯のFM信号を送信周波数である,96 GHz帯の信号に変換するため,周波数逓倍回路を用い る.ここで,極力高い周波数帯において光信号伝送を 行うことが,アンテナ装置の簡単化のためには望まし いが,96 GHz帯の直接伝送は,高効率のE/O変換 器及びO/E変換器の入手が困難である.更に,通常 の搬送波及び両側波帯の3信号を用いる光両側波帯変 調信号を用い,長距離のRoF伝送を行う場合,光ファ イバの屈折率が波長によって異なる群速度分散特性に より,各側波帯の位相が反転し互いに打ち消し合うこ とで,周波数特性にRoF伝送損失が増加するヌル点 が発生する[5], [7].空港等での本レーダの応用を想定 した場合,RoFによる伝送距離は,敷設された光ファ イバの経路長から中規模空港においても数km以上と なるため,この影響を受けやすい.そこで,光搬送波 抑圧両側波帯変調を用いた光2逓倍器[13]を適用し, 距離に関係なく安定したRoF信号伝送が可能な構成 とする.光2逓倍器は,搬送波を抑圧し,両側波帯の 2信号のみを伝送することが可能であるため,光ファ 図 6 FMCW送信信号の生成及び伝送系ブロック図 Fig. 6 Block diagram of FMCW radar signal

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イバ分散の影響を受けない[7].この場合,入力の電気 信号周波数に対して出力の電気信号周波数は2逓倍動 作となる.今回の場合,使用するO/E変換器(U2T XPDV2120R)の帯域から,光2逓倍器の入力信号周 波数帯は16 GHz帯であり,アンテナ装置のO/E変 換器の電気信号の出力周波数帯は32 GHz帯である. また,E/O及びO/E変換による出力電力値低下 を補償するため,中央装置でエルビウム添加光ファイ バ増幅器(EDFA,Erbium Doped Fiber Amplifier, PriTel LNTFA-20-NMA)を用いて光信号を増幅す る.EDFAで増幅した信号を光ファイバによりアンテ ナ装置への伝送する.アンテナ装置では,光帯域通過 フィルタを用いてノイズシェーピングを行い,所望信 号のCN比改善を行う.ここで,図7に,FMCW送 信信号のレベルダイヤグラム及びCN比を示す.光信 号については,O/E変換器を用いて電気信号に変換 した後に測定を行う.図から,各周波数帯における, FMCW信号電力値及びCN比が確認できるが,16 GHz帯の増幅器出力から32 GHz帯の光2逓倍器出 力の比較では,約85 dBの信号出力低下及び約40 dB のCN比劣化が確認できる.その後,EDFA及び光 帯域通過フィルタを用いることで,出力電力低下及び CN比劣化はそれぞれ,約52 dB及び約5 dBまで抑 えることが可能である.これは,EDFAを用いること で電気信号に変換する際の雑音成分を低減しながら信 号を増幅することが可能なためであり,本構成を用い たミリ波レーダに必要である.その結果,図7から, 16 GHzの増幅器出力と32 GHzの増幅器出力のCN 図 7 各周波数における FMCW 送信信号のレベルダイヤ グラム及び CN 比

Fig. 7 Level diagram and carrier-to-noise ratio of FMCW radar transmission signal.

比比較では,約7 dBの劣化に留まり,RoF伝送によ る信号特性への影響を十分に低減している.これは, 図8に示すFMCWレーダ送信信号の各周波数帯にお ける位相雑音特性からも確認可能である.位相雑音増 加P Ndと逓倍数Mの関係は以下のとおりである. P Nd= 20 logM (8) ここで,4 GHz帯から96 GHz帯までは合計24逓倍 であり,上式から位相雑音増加の理論値は,約28 dB である.例えば,10 kHzオフセット時の位相雑音は 4 GHzから96 GHzまでに約28 dBの増加となり, RoF伝送に起因する顕著な劣化は観測されない.図9 に,アンテナ出力端における96 GHz帯のFMCW送 信信号スペクトラムを示す.スペクトラムアナライザ 図 8 FMCW送信信号の各周波数帯における位相雑音 特性

Fig. 8 Phase noise characteristics of FMCW radar transmission signal at AWG output (4 GHz), optical amplifier output (32 GHz), and an-tenna output (96 GHz).

図 9 アンテナ出力端における 96 GHz 帯の FMCW 送 信信号スペクトラム

Fig. 9 96 GHz FMCW transmission signal spectrum at antenna output waveguide port.

(6)

にハーモニック次数8の外部ミキサに接続して測定 をしているため偽像が発生しているが,任意信号発生 器を基準とし,電気及び光逓倍回路を用いた,広帯域 FMCW信号の生成が確認できる.以上の結果から, FMCW方式が本構成の分散型レーダシステムに適し ていることが明らかである.

3.

距離分解能特性評価

構築した光ファイバ接続型ミリ波レーダを用いた距 離分解能特性評価試験について議論を行う.図10に概 観を示す,光ファイバ接続型広帯域96 GHz帯ミリ波 レーダを用いた距離分解能試験を実施する.試験では 送信信号帯域幅は8 GHzである.これまでに76 GHz 帯において送信信号帯域幅6 GHzの信号を用いて5 cmの距離分解能を確認している[14]. 3. 1 距離分解能特性評価系 距離分解能測定は,電波暗室内において実施するこ とから受信回路の飽和を避けるため,表1に示したシ ステム仕様のうち,アンテナを利得23 dBiのホーン アンテナに変更する.同様に中間周波数帯の増幅器を 除き,周波数混合器の出力において信号を取得する. 図11に,距離分解能測定時の二つのレーダ反射器 の設置状況を示す.96 GHzにおけるレーダ反射断面 積が14 dBsmの誘電体レンズ反射器を用い,レーダ 送受アンテナとの距離は20 mとする.反射器の距離 間隔を変化させ,1次元距離スペクトルを取得し,距 離分解能を測定する.また,表2に測定時のレーダ 動作及び信号処理パラメータを示す.レーダ信号の取 図 10 光ファイバ接続型広帯域 96 GHz ミリ波レーダの 概観

Fig. 10 Overview of the optically-connected wide-band 96 GHz millimeter-wave radar system.

り込みには,各チャープ変化時間の間の信号を全て取 得し,最小の周波数ビン間隔となるよう測定を行う ため,送信信号帯域幅8 GHzにおいて,周波数ビン 間隔は距離換算値で1.875 cmとなる.更に,距離分 解能評価のための目標対象物検出処理を想定し,Log Cell-averaging CFAR処理によるしきい値処理を行 う[15].目標対象物検出処理方法としては,クラッタ の存在する中で定誤警報確率を実現するために様々な CFAR処理が現在までに提案されているが,本論文

ではその中でLog Cell-averaging CFAR処理を用い たしきい値処理を行う.Log Cell-averaging CFAR処 理はクラッタ振幅がレイリー分布であると仮定したし

図 11 距離分解能測定における 2 個のレーダ反射器の設 置状況

Fig. 11 Overview of the two lens radar reflector for the range resolution measurement.

表 2 レーダ動作パラメータ及び信号処理パラメータ Table 2 Radar operation and signal processing

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きい値処理であり,入力信号特性を仮定したパラメト

リックCFARとして最も一般的なCFAR処理である

ことから,本論文では代表例として本方式を適用する. Log Cell-averaging CFAR処理の具体的内容は,受 信信号の対数増幅後に注目するレンジビンの前後の複 数のレンジビンの平均値からしきい値を決定する方式 であり,詳細は複数の文献で述べられている[15], [16]. ノンコヒーレント積分回数は10回であり,CFARし きい値は8 dBである.また,リファレンスセル数及 びガードセル数はそれぞれ2セル及び1セルとする. 3. 2 電波暗室内測定結果 図12に,二つのレーダ反射器を設置した場合の1 次元距離スペクトルを示す.例として,二つのレーダ 反射器間隔を50 cm,10 cm及び4 cmとしている. 図12 (a)から20 m及び20.5 mに設置した反射器か らの信号が,それぞれ−60 dBm程度で確認できる. 図 12 レーダ反射器を 2 個設置した場合の 1 次元距離ス ペクトラム (a) 反射器間隔 50 cm,(b) 反射器間 隔 10 cm,及び (c) 反射器間隔 4 cm

Fig. 12 1-dimensional range spectrum obtained by the two radar reflectors at (a) 50 cm sepa-ration, (b) 10 cm sepasepa-ration, and (c) 4 cm separation. ここで,反射器からの信号以外に前後に反射ピークが 観測されているが,理由は後述する.Log CA-CFAR 処理によるしきい値との比較から,二つの対象物が分 離可能であることが観測できる.更に同様に,反射器 間隔10 cm及び4 cmに関しても,しきい値との比較 から二つの対象物が分離可能であることが明らかであ る.しきい値処理後に対象物を分離するためには,二 つの反射信号ピーク間の最大値と最小値の差分が,信 号ノイズフロアのゆらぎよりも十分に大きい必要があ る.今回の測定条件で,間に1点を挟んだ2点の周波 数ビン間隔が距離換算値で1.875 cmの2倍の3.5 cm であり,フーリエ変換のハニング窓関数のサイドロー ブ半値幅が,3 dB帯域幅及び6 dB帯域幅で,それぞ れ距離換算値2.8 cm及び4.1 cmとなることからも, 今回確認した送信信号帯域幅8 GHzを用いた4 cmの 距離分解能は理想的な値に近い距離分解能であること が確認できる. 一方,図12では,二つの対象物周辺に,雑音による ピークが複数存在する.この雑音によるピークにより, CFAR処理等による対象物検知しきい値を下げること が困難になる場合若しくは対象物誤検知が発生する可 能性があるため,雑音成分は取り除くことが必要であ る.例えば,図12 (b)においては,20 mに設置した 対象物からの反射の前後,19.25 m付近及び20.75 m 付近に,それぞれ二つの反射ピークが存在する.図13 に,誘電体レンズ反射器を1個のみとして20 mの位 置に設置した場合の1次元距離スペクトラムを示す. こちらも同様に,20 mの位置に設置した対象物から の反射の他に,近傍に反射ピークが存在する.これら 図 13 レーダ反射器が 1 個の場合の 1 次元距離スペクト ラム

Fig. 13 1-dimensional range spectrum of one radar reflector.

(8)

は,FMCW送信信号の近傍雑音に起因するものであ り,周波数に換算して雑音のピーク周波数は50 kHz から100 kHz程度中心周波数からオフセットした周波 数に存在している.これは,図8からも確認可能であ り,4 GHz帯の数kHzオフセット周波数に存在する 位相雑音ピーク周波数が逓倍により,96 GHz帯では 50 kHzから100 kHz離れた周波数に移動しているた めである.この近傍雑音の強度及びピーク周波数は, 任意信号発生器のサンプリング速度と出力周波数の関 係により変化し,図8の測定条件よりも高い出力レベ ルで発生していることも考えられるため,今後詳細な 分析を行う予定である.

4.

む す び

空港面異物監視用システムとしての応用を想定した 光ファイバ接続型ミリ波レーダの基本構成法及び距離 分解能評価試験結果について議論を行った.まず,提 案するRoF技術を用いた分散型構造を有する光ファ イバ接続型ミリ波レーダシステムの概念について述べ た上で,FMCW方式を用いた測距原理を述べた.更 に,8 GHzの送信信号帯域幅を有する広帯域96 GHz 帯ミリ波レーダシステムの基本構成について示し,精 密に周波数制御された信号源から,電気及び光逓倍を 用いることで所望のFM変調周波数及び周波数帯域幅 を有する広帯域ミリ波FMCW信号が生成可能である ことから,FMCW方式が本構成の分散型レーダシス テムに適していることを明らかにした. 次に,中央装置からアンテナ装置までのFMCW送 信信号伝送に光2逓倍器及びEDFAを用いることで, 送信信号のC/N劣化を約7 dBまで抑えることが可 能となった.また,このことから任意信号発生器出力 周波数帯の4 GHz帯から送信信号帯域の96 GHz帯 までの24逓倍で,位相雑音は理論値に近い約28 dB 増加に留まり,RoF伝送による影響をほぼ無視できる ことを確認した. 最後に,電波暗室内に構築したレーダシステムを設 置し,距離分解能評価試験を実施した.送信信号帯域 幅8 GHzの広帯域送信信号を用い,Log CA-CFAR 処理を行った上で,対象物間隔4 cmの距離分解能を 達成可能であることを明らかにした. 謝辞 本研究の一部は,総務省からの受託研究「90 GHzリニアセルによる高精度イメージング技術の研 究開発」により実施された. 文 献

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[15] 関根松夫,レーダ信号処理技術,電子情報通信学会,1991. [16] V.G. Hansen and H.R. Ward, “Detection perfor-mance of the cell averaging LOG/CFAR receiver,” IEEE Trans. Aerospace and Electronic Systems, vol.AES-8, no.5, pp.648–652, Sept. 1972.

(平成 27 年 4 月 3 日受付,7 月 26 日再受付, 11月 11 日公開) 二ッ森俊一 (正員) 平 16 北大・工・電子卒.平 21 同大大 学院博士課程了.同年,独立行政法人電子 航法研究所入所.この間,マイクロ波デバ イス,ミリ波レーダシステム及び環境電磁 工学等の研究に従事.現在,国立研究開発 法人電子航法研究所監視通信領域主任研究 員.平 20∼平 21 日本学術振興会特別研究員.平 20 年度本会 学術奨励賞受賞.工博.IEEE 会員. 森岡 和行 (正員) 平 17 北大卒.同年,株式会社アルチザ ネットワークス入社.平 23 独立行政法人 情報通信研究機構入構.平 25 独立行政法 人電子航法研究所入所.平 26 信大大学院 博士課程了.この間,無線通信システムの 研究開発に従事.現在,国立研究開発法人 電子航法研究所監視通信領域研究員.工博.IEEE 会員. 河村 暁子 (正員) 電気通信大・工・電子卒.同大大学院博 士課程了.平 19 独立行政法人電子航法研 究所入所.平 23 仏ニース・ソフィア・ア ンティポリス大学客員研究員.この間,ミ リ波レーダシステム及び環境電磁工学等の 研究に従事.現在,国立研究開発法人電子 航法研究所監視通信領域主幹研究員.工博.IEEE 会員. 岡田 国雄 平 24 独立行政法人電子航法研究所入所. ミリ波レーダに関する研究に従事.現在, 国立研究開発法人電子航法研究所監視通信 領域研究員. 米本 成人 (正員) 平 7 佐賀大・工・電子卒.平 12 同大大 学院博士課程了.平 13 運輸省電子航法研 究所入所.平 18 仏ニース・ソフィア・アン ティポリス大学客員研究員.平 24 東京海 洋大学大学院海洋科学技術研究科特任准教 授.この間,ミリ波レーダシステム及び環 境電磁工学等の研究に従事.現在,国立研究開発法人電子航法 研究所監視通信領域上席研究員.工博.IEEE,EuMA 各会員.

Fig. 1 (a) Metallic strip (42 cm length × 3 cm width). (b) Metallic cylinder (1 inch diameter
Fig. 2 Concept of optically-connected airport surface foreign object debris detection  millimeter-wave radar systems.
Fig. 4 (a) The relation of frequency and time of the transmitting and receiving signal with linear triangular FMCW radar
Fig. 9 96 GHz FMCW transmission signal spectrum at antenna output waveguide port.
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参照

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