反転法の解析幾何学的考察
2013SE032橋口高明
指導教員: 小藤俊幸
1
はじ めに
座標平面上の点を 向き が同じ で原点から の距離が元の点
の距離の逆数に比例する よ う な 点に対応さ せる 変換を 反転
と いう . 反転を 利用し て 様々 な 図形の性質を 調べる 手法を
総称し て 反転法と いう .
反転法は特に複数の円や球が内接し て いる 問題を 解く 際
に絶大な 力を 発揮する . し かし , ど のよ う な 問題でも その
力を 発揮する かいえ ば,必ずし も そ う ではな く , 簡単な 図
形や反転し て も あま り 変わら な い図形では反転法を 利用す
る 意味がな く な っ て し ま う こ と も あり , 初等幾何で解く 方
が簡単に解け る 場合も 多い.
本研究では, 反転法の解析幾何学的考察を し , 実際に解
析幾何を 用いて 問題を 解いて みたいと 思う .
2
反点と 反形について
2.1 反点と 反形と は
図1
定円の中心を O, その半径を kと する . Oから 引かれる
直線上の2点P, P1の間に OP OP1= k2と いう 関係が
ある と き , P, P
1はこ の円に関し て 反点である と いう [1].
ま た, こ のと き の定円の半径kを 反転定数と いう [2].
P(x, y), P
1(x1, y1)が定円x2+ y2= k2に 関し て 互い
に反点である と き , OP = r, OP
1= r
1と 置く と ,
x
x
1=
y
y
1=
r
r
1=
rr
1
r2
1
が成り 立つ(図1参照).
rr
1= k2
, r2
1= x21+ y21よ り ,
x
x
1=
y
y
1=
k2
x2
1+ y12
よ っ て ,
x= k
2
x
1
x2
1+ y21
, y= k
2
y
1
x2
1+ y12
(1)
同様にし て ,
x
1= k
2
x
x2
+ y2, y1=
k2
y
x2
+ y2 (2)
(1)と (2)はx, yと x
1,y
1の関係を 表す式である . こ れ
によ っ て , ある 点P の位置から 対応する 反点P
1の位置を
求める こ と ができ る .
Pが円の中心に 限り な く 近いと き , P
1は円の中心から
限り な く 遠く な り , Pが円の内側に ある と き P
1は円の外
側に あり , Pが円に 近づく に つれて P
1も 円に 近づく . ま
た, Pが円の上にある と き , P
1と 一致する .
ま た , P が一つの曲線を 描く と き , P
1は他の曲線を 描
き , P
1の描く 曲線を 定円に 関し て P の描く 曲線の反形と
いい, 定円の中心を 反形の中心と いう [2].
2.2 直線の反形
直線ax+ by + c = 0の定円x2
+ y2
= k2
に関する 反形
の方程式は, (1)によ り ,
ak2
x
1
x2
1+ y12
+ bk2y1
x2
1+ y12
+ c = 0
すな わち ,
c(x2
1+ y21) + k2(ax1+ by1) = 0
が成り 立つ.
し たがっ て , c 6= 0のと き , すな わち 原点を 通過し な い
直線の反形は原点を 通過する 円と な り , c = 0のと き , す
な わち 原点を 通過する 直線の反形は元の直線と 同じ 直線に
な る .
2.3 円の反形
円x2
+ y2
+ 2gx + 2f y + c = 0(f, g は実数)の定円
x2
+ y2
= k2
に関する 反形の方程式は, (1)よ り ,
k4
x2
1
(x2
1+ y12)2
+ k
4
y2
1
(x2
1+ y12)2
+ 2gk
2
x
1
x2
1+ y21
+ 2f k
2
y
1
x2
1+ y21
+ c = 0
すな わち ,
c(x2
1+ y21) + 2gk2x1+ 2f k2y1+ k4= 0
が成り 立つ.
し たがっ て , c 6= 0のと き , すな わち 原点を 通過し な い
円の反形は円と な り , c= 0のと き , すな わち 原点を 通過
する 円の反形は直線と な る .
3
適用例
次に 実際に 参考文献[2]に 載っ て いる 問題を 解析幾何で
解いて みる .
問題 図2元図のよ う に 半径Rの大円2個と そ れに 接
する 直線と の間に小円を 逐次入れて いく . 最初の小円を 第
1円と する と きn番目の小円の半径rnを 求めよ .
解答 図2元図のよ う に2つの大円の接する 点を 原点O
と し , A= (2R, 0)と おく .
反転定数を 1と し , 原点を 中心と する 円に関し て 反転す
る と , 大円1と 大円2は原点を 通ら な い直線にな り , 小円
はすべて 原点を 通ら な い円にな り , 直線は原点を 通る 円に
な る . ま た, 反転し て も 各図形が接し て いる 図形は変わら
な いので, 図3反転図のよ う にな る .
そこ で, (2)よ り , A′
の座標は 1
2R,0
!
と な る .
よ っ て , 小’円の半径は 1
2Rと な る .
ま た, 小’円nのy軸と の交点のう ち , x軸側の点の座
標は 0, −n −1
R
!
, x軸と 遠い方の点は 0, −n
R
!
と 表さ
れる .
(1)よ り , 図4小円n拡大図のよ う に 小円nのy軸と
の交点のう ち , x軸側の点の座標は 0, −R
n
!
, x軸と 遠
い方の点は 0, − R
n −1
!
と 表さ れる .
よ っ て ,
rn=
1
2
−R
n +
R
n −1
と な り,計算する と ,
rn =
R
2n(n − 1)
と な る .
こ れは, 参考文献[2]に載っ て いる 答え と 一致し て いる .
図2 :元図
図3 :反転図
図4 :小円n拡大図
4
おわり に
参考文献[2]に 載っ て いる 反転基本式な ど , 反転法に は
定理がいく つかある . 最初はその定理を 解析幾何を 用いて
証明し , 使おう と し て いた. し かし , ど う し て も その証明
に 対し て , 解析幾何の有用性が見出せな かっ た . そ こ で,
私は, 解析幾何を 用いた ら 反転法を 使う 問題を 定理を ほ
と んど 使わず高校数学のみで解け る のではな いか, と 考え
た。 そし て , 実際に解いて みたら 案外あっ さ り と 解け て し
ま い, 驚いた. ま た, 解析幾何の有用性を 再確認さ せら れ
た. そし て , 本研究を 通し , 難し い和算の問題な ど も 簡単
に解け て し ま う 反転法について と て も 理解が深ま っ た.
参考文献
[1] 坂井英太郎:『 解析幾何学』
共立社出版, 東京, 1929
[2] 田部井勝稲, 松本登志雄:『 高校数学で解く 日本の図形
問題 反転法と 算変法』
一粒書房, 2014
[3] デビッ ド ・ W・ ヘン ダーソ ン,ダイ ナ・ タ イ ミ ナ(鈴木
治郎 訳):『 体験する 幾何学』
ピ アソ ン ・ エデュ ケ ーショ ン , 東京, 2010