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論文特集「知能創発とネットワーク」にあたって

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Academic year: 2021

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702 人 工 知 能  34 巻 5 号(2019 年 9 月) 複雑ネットワークと知能創発に関する論文特集を本学 会で組むのは 2 回目となる.初回は「ネットワークが創 発する知能」と題し,採録となった論文は Vol. 30, No. 6, (2015)に掲載されている.16 件の投稿があり,8 件の 採録であった.今回の論文特集は「知能創発とネットワー ク」と題し,偶然にも初回と同数の 16 件の投稿となり, 今回は 6 件が採録となった. 筆者が論文特集編集委員長を担当し,以下の論文特集 編集委員会を組織した. 編 集 委 員 長:栗原 聡(慶應義塾大学) 副編集委員長:服部宏充(立命館大学) 編集委員: 大原剛三(青山学院大学) 鳥海不二夫(東京大学) 臼井翔平(Sansan 株式会社) 伏見卓恭(東京工科大学) 松林達史( NTTサービスエボリューション 研究所) 諏訪博彦( 奈良先端科学技術大学院大学, 理化学研究所) 近年のビッグデータやクラウドといった情報基盤の 拡充,そして通信インフラの高速化を背景として,大規 模で多様なデータの生成・アクセス・蓄積が容易になっ てきた.ビッグデータには,新たな知識や発見の種が埋 もれており,これを発掘・獲得するためのデータサイエ ンスや Deep Learning を中心とする機械学習が大いに 注目を集めている.さらに,今後は Society5.0 や Cyber Physical Systemのコンセプトに基づき,さまざまな場所 に IoT やセンシングネットワークが設置され,実環境の 詳細かつリアルタイムな情報がサイバー空間に流入する ことになる.ここで重要となるのがネットワークである. 多様化するビッグデータは,本来はデータどうしが複 雑に関係する大規模動的複雑ネットワークとして向き合 うべきだと考えるが,その分析手法はまだ発展途上の段 階にある. 一方,脳や Web,社会システムなどの大規模複雑シス テムを理解するためには,従来のトップダウン型のデー タマイニングでは不十分な状況も見えつつあり,その打 開策の一つとして,ボトムアップ型の分析手法の創出を 目指す動きもあり,マルチエージェント協調問題,集合 知や群知能など多数の低機能自律主体の行動から創発す る全体的知能に関する研究も活性化している.今年もこ のようなテーマに関する国際会議である GECCO 2019, ALIFE 2019が開催されたが,いずれも盛況であった. そこで,創発メカニズムやネットワーク科学を核とし た新たな理論,方法論を体系付けるべく「知能創発とネッ トワーク」というタイトルにて 2 回目となる論文特集を 企画することとした. キーワードとしては,複雑ネットワーク,ソーシャル ネットワーク,Web ダイナミクス,Web 構造マイニング, Web情報処理,社会システム,知識ネットワーク,ネッ トワーク認知,ソーシャルキャピタル,集合知,集合学 習,ネットワーク系マルチエージェント,自己組織化お よび創発モデル,Swarm-made アーキテクチャ,複雑系, マルチエージェント,創発システム,進化システム,知 識発見,機械学習,クラウドコンピューティング,モデ ル化に関する基礎理論,知識の構造化と体系化,暗黙知 への接近とその形式知化,などを対象とした. 採録となった論文は,マルチエージェントシステム, ソーシャルメディア,経済モデル,情報抽出,ITS と多 岐にわたる. ビッグデータに対する学習や特徴抽出などにおける, Deep Learningの高い性能が現在の 3 回目の人工知能 ブームをもたらしているわけであるが,昨年あたりから 潮目が変わりつつある.ようやくであるが,漠然とした 盛り上がりから,機械学習法である Deep Learning の 具体的な実問題解決への適用に関心が移りつつある.そ して,この段階となり,Deep Learning が高い学習能力 を発揮できても,例えば,どのようにデータを分類して いるのかの過程がわかりにくい,というブラックボック ス問題が社会実装やサービス化への障壁として露呈しつ つある.この状況において,個々のデータの関係性を考 慮するネットワーク科学への期待が今後高まることが推 察される.また,大規模システムを構築する必要性が増 すことは,自律分散型やボトムアップ型のシステム構築 に対する期待にもつながる.実際,一例であるが ITS に おける交通信号機制御において,現在の集中制御型に対 して,個々の交差点に AI を配し,自律分散型の信号機 制御とすることで,突発的な交通変化にも的確に反応し て渋滞発生の抑制や早期解消を実現する研究プロジェク トが昨年から開始されている.注目すべきは,警察庁も プロジェクトに関わっていることである.実際に実証実 験を行い,次世代の信号機制御法とすべく,大いに期待 されている. 数年後,第 3 回目の論文特集を組む頃には,現在の AIブームも落ち着き,次に注目されるキーワードとし て「ネットワーク」や「自律・分散」が来ていることは 間違いないであろう.次回の論文特集を本学会で組むの が楽しみである.

論文特集「知能創発とネットワーク」にあたって

栗原  聡

(慶應義塾大学)

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