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「法」期限後の部落問題を考える

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Academic year: 2021

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(1)「法」期限後 の部落問題 を考 える. 「 法」期限後 の部落問題 を考 え る 奥. [1]部. 田. 均. 落 問 題 の 解 決 と 期 限 切 れ の 「法 」. (1)2つ. の質問. 2002年3月. 末 を も って 「地 対 財 特 法 」 が 失 効 した。 「法 」 の期 限 切 れ に 関 わ って 、. 複 数 の 行 政 関 係 者 か ら私 は次 の よ うな 質 問 を 相 次 い で受 け た 。 そ の1っ. は、 「これ. によ って部 落 問 題解 決 の た め の法 的根 拠 が な くな って しま った。 取 り組 み が 進 め に く くな る。 一 体 ど う した い い の だ ろ うか」 とい う も の で あ っ た。 別 の 関 係 者 は、 「こ れ か らは 『同 和 地 区 』 を どの よ う に呼 べ ば い い の だ ろ うか 。 戸 惑 って い る」 と い う。 質 問者 はい ず れ も部 落 問題 の解 決 に熱 心 に取 り組 ま れ て きた方 々 で あ り、 そ れ だ け に 「困 って い る」 とい う言 葉 に実 感 が込 め られ て い た。 本 稿 は これ ら2っ の質 問 につ い て検 討 す る と ころ か らは じめ た い。 そ こに、 「法 」 期 限後 の部 落 問題 を考 え る に あ た って の重 要 な前 提 が 含 ま れ て い る と思 わ れ るか ら で あ る。 しか もそ れが 現 場 の関 係 者 の心 を捉 え て い る とす れ ば な お さ らで あ る。. (2)期 第1の. 限 切 れ の 「法 」 と法 的 根 拠 論 点 は、 「地 対 財 特 法 」 の 失 効 に よ って、 部 落 問 題 解 決 の た め の法 的 根 拠. が本 当 に な くな って しま った の か と い う点 で あ る。 結 論 か ら いえ ば 「NO」 で あ る。 確 か に 「地 対 財 特 法 」 は期 限 切 れ を迎 え た。 しか しこ の法 律 は、 「地 域 改 善 対 策 特 定 事 業 に係 る 国 の財 政 上 の特 別 措 置 に関 す る法 律 」 と い う名 称 か ら も明 らか な と お り、 そ の 趣 旨(第1条)は. 、 「当 該 事 業 に係 る経 費 に対 す る特 別 の助 成 そ の他 国. の財 政 上 の特 別 措 置 」 にっ い て定 め て い る もの に過 ぎ な い。 第2条. で記 さ れ て い る. 国 及 び地 方 公 共 団 体 の責 務 は、 「地 域 改善 対 策 特 定 事 業 を 円滑 か っ迅 速 に実施 す る」 こと だ け で あ り、 補 助 率 を定 め た第3条 、 地 方 債 にっ いて の第4条 一17一. と続 き、 元 利 償.

(2) 人権 問題研究資料. 第17号. 還 金 の取 り扱 い を規 定 した第5条. で この 法律 は終 わ る。 た だ そ れ だ けの法 律 で あ る。. お世 辞 に も、 部 落 問 題 解 決 の法 的根 拠 と呼 べ るよ うな もの で はな か った。 そ れ が期 限切 れ を迎 え た 「法 」 の 中身 で あ る。 む しろ、 部 落 問 題 解 決 の た め の法 的根 拠 を あ げ る とす れ ば 、何 よ り も 日本 国憲 法 を取 り上 げ な けれ ば な らな い。 憲 法 で は、 第 十 一 条 に お い て 、 「基 本 的 人 権 は、 侵 す こ との で きな い永 久 の権 利 」 で あ る こ とを規 定 して い る。 さ らに 「生 命 、 自 由及 び幸 福 追 求 に対 す る国 民 の権 利 」 の尊 重(第 十 三 条)を. うた い、 第 十 四条 で は 「人. 種 、 信 条 、 性 別 、 社 会 的 身 分 又 は 門地 に よ り、 政 治 的、 経 済 的又 は社 会 的関 係 に お い て、 差 別 さ れ な い」 と 「法 の下 の平 等 」 を定 め て い る。 職 業 選 択 や婚 姻 の 自 由、 教 育 を受 け る権 利 や勤 労 の権 利 が 保 障 さ れ て い る こ と もよ く知 られ て い る と こ ろで あ る。 そ して 第 九 十 七 条 で は、 「この 憲 法 が 日本 国 民 に保 障 す る基 本 的人 権 は、 人 類 の多 年 に わ た る 自 由獲 得 の努 力 の成 果 で あ って、 これ ら権 利 は、 過 去 幾 多 の試 練 に堪 へ 、 現 在 及 び招 来 の国 民 に対 し、 侵 す こ との で きな い永 久 の権 利 と して 信 託 さ れ た もの で あ る」 と明 言 して い る。 そ れ ぞ れ の条 文 は そ の対 象 を 「日本 国 民 」 と表 現 して い る限 界 を持 っ て は い る もの の、 部 落 差 別 と い う社 会 的 差 別 は決 して 許 され もの で は な い こ と を憲 法 は明 確 に定 め て い る。 ま た、 地 方 自治 体 に お け る法 律 で あ る条 例 に お い て も、 部 落 差 別 を は じめ とす る 差 別 の 撤 廃 や 人 権 擁 護 を 目 的 と した もの が 、2002年1月. 現 在 、 す で に722の. 自治. 体 で 制 定 され て い る。 世 界 共 通 の法 律 で あ る条 約 も、 国 会 が これ を批 准 す る こ と に よ って 法 的 効 力 を 発 す る。 国 連 で は二 十 六 の 人 権 関 係 条 約 が 採 択 され て い るが 、 こ の う ち 日本 は 「国 際 人 権 規 約 」 を は じめ と す る九 つ の 条 約 を締 結 して い る 。 と り わ け1995年 (翌 年1月 発 効)さ. に締 結. れ た 「人 種 差 別 撤 廃 条 約 」 は、 「悪 質 な差 別 行 為 の 禁 止 」 「被 害. 者 へ の救 済 」 「劣 悪 な状 況 にお か れ て い る人 々へ の特 別措 置」 「教 育 啓 発 活 動 の推 進 」 を明 確 に規 定 して い る。 そ して こ の条 約 の対 象 に部 落 差 別 が 含 まれ る こ と にっ い て は国 際 的 に 認 知 さ れ て い る。 さ ら に、2000年11月 r. に は、 「人 権 教 育 及 び人 権 啓 発.

(3) 「法」期限後の部落問題を考え る の推 進 に 関 す る法 律 」 が 制 定 さ れ た。 ま だ ま だ不 十 分 で あ る こ とは確 か で あ るが、 しか し、 部 落 差 別 を な くす 法 律 の存 否 を 問 わ れ れ ば、 そ れ は明 らか に存 在 して い る とい わ ね ば な らな い。 部 落 問 題 の解 決 を め ざ した取 り組 み は、 「地 対 財 特 法 」 の期 限 切 れ に左 右 され る こ と な く、 これ ら一 連 の法 的根 拠 を有 した社 会 正 義 実 現 の営 み と して、 ゆ る ぎな く推 進 され な けれ ば な らな い。 な お、 「法 」 期 限 後 の 「法 的根 拠 」 につ い て は、 ㈱ 鳥 取 市 人 権 情 報 セ ン タ ーの 椋 田昇 一 さ ん が 、 ㈱ 鳥 取 県 部 落 解 放 研 究 所 の 研 究 紀 要 『部 落 解 放 と っ と り』 第4号 (2001年12月)で. 、 「 『法』 は終 わ らな い. 人 権 条 例 の 時 代 が や って来 た!」. との. 論 文 の 中 で す で に指 摘 され て い る。 卓 見 で あ り、 学 ば せ て も ら った。. (3)呼. 称 問 題 の怪. 第2の 論 点 は、 「同 和地 区」 とい う呼称 の 問 題 で あ る(「 同和 地 区住 民 」 と い う呼 称 も これ に連 動 して い るが こ こで は割 愛 す る)。 この 問 題 は、 「法 」 の 期 限 切 れ と直 接 の関 係 は な い。 先 に示 した とお り、 期 限 切 れ を迎 え た 「法 」 に は、 「同 和 地 区 」 ど ころか 「同 和 」 とい う言 葉 す ら登 場 して い な い 。 「同 和 」 とい う言 葉 が 法 律 の上 で 採 用 さ れ て い る の は、1969年 後3年. に制 定 さ れ た 「同 和 対 策 事 業 特 別 措 置 法 」 だ けで あ り、 そ れ は期 限. の 延 長 の 後 、1982年3月. 末 で失 効 して い る。 以 来20年. 聞 、 法 律 の文 言 か ら. 「同 和 」 と い う言 葉 は姿 を 消 して い る。 と こ ろ で 、 「同 和 地 区 」 と い う言 葉 が 社 会 的 に広 が る き っか け と な っ た の は、 1965年 に 出 され た 内 閣 同 和 対 策 審 議 会 答 申 で あ る。 しか し考 え て み れ ば 、 そ れ は 「同 和 対 策 事 業 特 別 措 置 法 」 が制 定 され る以 前 の こ とで あ っ た。 っ ま り、 「法 」 制 定 の 以 前 か ら、 「同和 地 区」 とい う呼 び方 は用 い られ て きた。 そ の後 制 定 され た 「法 」 に は、 そ もそ も 「同和 地 区」 とい う呼 称 は使 用 され て い な い。 か ろ う じて 「同和 」 とい う言 葉 が 採 用 され て い るが 、 そ れ とて20年 一19一. 前 まで の話 で.

(4) 人権問題研究資料. 第17号. あ る。 しか る にな ぜ 、 今 回 の. 「法 」 期 限 切 れ と と も に 、 「同 和 地 区 」 と い う 言 葉 の. 問 題 が ク ロ ー ズ ア ップ さ れ る の で あ ろ うか 。. (4)呼. 称 問 題 と誤 解. 「同 和 地 区 」 とい う言 葉 は、 「被 差 別 部 落 」 と い う言 葉 に対 す る行 政 用 語 と して 登 場 した。1965年. の 「同 対 審 」 答 申で は、 「集 落 を っ く って い る住 民 は、 か っ て. 『特 殊 部 落 』 『後 進 部 落 』 『細 民 部 落 』 な ど 蔑 称 で よ ばれ 、 現 在 で も 『未 解 放 部 落 」 ま た は 『部 落 』 な ど と よ ば れ 、 明 らか な差 別 の対 象 と な っ て い るの で あ る。 この 『未 解 放 部 落 』 ま た は 『同和 関 係 地 区 』(以 下 単 に 『同 和 地 区 』 と い う。)の 起 源 や 沿 革 に っ い て は(略)」. と記 され 、 「同和 地 区 」 が 部 落 差 別 の対 象 とな って い る地 域. を指 す もの で あ る こ とが 明記 さ れ て い る。 そ の後 、 同和 対 策 事 業 が 開始 さ れ る と、 行 政 は この事 業 を実 施 す る対 象 地 域 を具 体 的 に指 定 す る必 要 に迫 られ る こ とと な った。 い うま で もな く同和 対 策 事 業 は部 落 差 別 の解 消 を め ざ した もの で あ るか ら、 部 落 差 別 を受 け て い る地 域 と して の 「同 和 地 区 」 が 、 事 業 実 施 の対 象 地 域 と な った の で あ る。 と こ ろが 、 こ の事 業 は全 国 のす べ て の同 和 地 区 が対 象 に な っ たの で はな い。 様 々 な事 情 の 中 で 、1000ヶ 所 に も及 ぶ と いわ れ る同 和 地 区 が 事 業 未 実 施 の ま ま放 置 され た。 いわ ゆ る 「未 指 定 地 区 」 で あ る。 行 政 に あ って は、 これ ら地 域 を 「同和 地 区」 と呼 ぶ こ と は、 同 和対 策 事 業 を 実 施 す る こ と にっ なが る。 そ の結 果、 事 業 実 施 にか か わ る 「未 指 定 地 区 」 は、 「被 差 別 部 落 」 で あ る に もか か わ らず、 行 政 的 に 「同和 地 区 」 と は呼 ば れ な い 状 態 に置 か れ た。 こ う した事 情 の 中 で 、 「同和 地 区 」 との呼 称 は、 同和 対 策 事 業 を実 施 す る対 象地 域 とい う意 味 合 い を持 た され始 め た の で あ る。 「法 」 の 期 限 切 れ に よ り特 別 対 策 事 業 が 終 了 す る と 「これ か らは 『同和 地 区 』 を ど の よ うに 呼 べ ば い い の だ ろ うか」 とい う冒頭 の質 問 は、 こ う した経 過 に起 因 して い る と思 わ れ る。 しか しこれ は大 い な る誤 解 と いわ ね ば な らな い。 「同 対 審 」 答 申 が示 して い る と 一20一.

(5) 「法」期 限後 の部落 問題 を考 える お り、 「同 和 地 区」 と は部 落 差 別 の対 象 と され て い る地 域 の こ とな の で あ り、 同和 対 策 事 業 が 「同 和 地 区 」 つ ま り 「被 差 別 部 落 」 を作 り出 した の で は な い。 に もか か わ らず 、 長 年 の 慣 行 の 中 で 「同 和 地 区 」 と い う言 葉 に特 別 対 策 事 業 との か か わ りを 拭 い去 る こ とが で きな い の で あ れ ば 、 この さ い意 味 の 明 確 な本 来 の 「被 差 別 部 落 」 と い う言 葉 を 用 いれ ば よ い の で はな い だ ろ うか 。 それ だ け の ことで あ る。. (5)内. 包 す る 重 大性. 呼 称 問題 が こ う した誤 解 に起 因 す る場 合 に は、 そ の 誤 解 を改 めれ ば簡 単 に解 決 す る。 しか しそ うで はな い理 由 に よ る もの で あ れ ば 、 これ は じっ く りと議 論 を深 め な けれ ば な らな い。 そ の 第1は 、 部 落 差 別 の 現 実 認 識 に か か わ る場 合 で あ る。 「法 」 の期 限 で あ っ た 2002年3月. 末 を も って、 もは や 部 落 問 題 は解 決 さ れ た とい う理 解 に立 て ば、 「被 差. 別 部 落」 とい う社 会 的存 在 は解 消 され た こ と とな る。 も ち ろん 、 歴 史 的 経 緯 にお い て部 落差 別 を受 けて きた地 域 と して の 「部 落 」 は存 在 す るが 、 現 実 の 被 差 別 状 況 を 表 現 した 「被 差 別 部 落 」 とい う呼 称 は適 切 で は な く、 した が って そ の 行 政 用 語 で あ る 「同和 地 区」 とい う言 葉 の使 用 も再 検 討 を求 め られ るの は当然 で あ ろ う。 も しこ う した観 点 か ら呼 称 問 題 が 論 じ られ て い る とす れ ば、 そ れ は も はや 呼称 問題 な どで は な い、 差 別 の現 実 認 識 にか か わ る重 大 な議 論 とい え よ う。 第2の. 理 由 は、 行 政 が特 別 対 策 事 業 を実 施 す るわ け で もな いの に、 「同 和 地 区」. とい った被 差 別 の地 域 を想 定 して い い の だ ろ うか とい う考 え で あ る。 この点 は先 に も述 べ た 通 り、 同和 対 策 事 業 が 実 施 さ れ る以 前 か ら、 「同 和 地 区」 と い う概 念 や言 葉 が使 用 さ れ て きた事 実 に よ って まず 否 定 さ れ るべ きで あ ろ う。 しか し この 考 え 方 に お け る よ り重 要 な問 題 点 は、 「同 和 地 区 」 を想 定 しな いで 、 部 落 問 題 を解 決 す る た め の取 り組 み が 果 た して組 み立 て られ るの だ ろ うか とい う点 で あ る。 そ こか らは、 部 落 差 別 と は ど の よ うな差 別 な の か、 被 差 別 の現 実 は今 ど の よ うに な って い る のか と い う、 部 落 問 題 の 基 本 認 識 が 問 われ て くる。 これ は、 特 別 一21一.

(6) 人権 問題研究 資料. 第17号. 対 策 事 業 終 了 の議 論 と は性 格 を異 にす る、 部 落 問 題 の解 決 へ の 「行 政 の責 務 」 に関 す る重 大 な論 点 とい え よ う。. 部 落 問題 の解 決 に必 要 で あ り、 か っ 有 効 な 「法 」 の あ り方 にっ い て の 構 想 を打 ち た て る こ と。 部 落 差別 の現 実 にっ いて の 共 通 認 識 を 形 成 す る こ と。 改 め て 部 落 問 題 と は どの よ うな 差 別 な の か と い う、 差 別 の 捉 え 方 にっ いて の 議 論 を しっか り深 め る こ と。 冒頭 で取 り上 げた2っ. の質 問 に は、 これ ら 「法」 期 限 後 の部 落 問 題 や そ の解. 決 を 目指 す 同和 行 政 の推 進 を 考 え る上 で の 重 要 な 意 味 が含 まれ て い る。 こ こで は提 起 され て い る内容 の詳 細 に まで 論 及 す る こ と はで きな い が、 戸惑 い を 解 き ほ ぐす 論 点 整 理 と して お きた い。. [2]議 (1)議. 論 と模 索 の 意 味 論 と模 索 の 舞 台. す で に明 らか な 通 り、 期 限 切 れ を 迎 え た 「法」 そ の もの の 内容 は、 部 落 問 題 の解 決 に と って 極 めて 限 定 的 な 意 味 を 持 って い る に過 ぎな い。 しか し この 間 の取 り組 み が 、 こ の 「法 」 に よ って裏 付 け られ た特 別 対策 事 業 の執 行 を基 軸 に展 開 され て きた こ と に よ り、 心 理 的 な 側 面 も含 め て 期 限 切 れ の持 っ影 響 は 、 「法 」 の 実 力 以 上 に、 関係 者 へ の戸 惑 い を 与 え て い るの も事 実 で あ る。 「一 体 こ れ か ら ど う な る の だ ろ う か」 「ど うす れ ば い い の だ ろ うか 」 と、 部 落 解 放 運 動 の分 野 は も とよ り、 同和 行 政 や 同和 教 育 の分 野 にお い て も様 々 な議 論 と模 索 が な され て い る。 この議 論 と模 索 の意 味 は大 き い。 なぜ な ら、 そ の発 端 が 「法 」 の期 限切 れ にあ っ た にせ よ、 今 後 の 発 展 の 方 向 を求 め た この 作 業 は、 実 は、 日本 とい う国 そ の もの が 新 た な 進 路 を 模 索 して い る大 変 革 の さ なか に繰 り広 げ られ て い るか らで あ る。. (2)3回. 目の脱 皮. 日本 と い う国 は 、 近 代 に入 って 大 き く3度 の大 変 革 の 時 期 を 迎 え て き た。 「3回 一22一.

(7) 「法」期限後の部落問題 を考え る の脱 皮 」 を 経 験 して 来 た とい って も い いだ ろ う。 第1回. 目 の脱 皮 は明 治 維 新 で あ る。. それ まで の 封 建 社 会 に代 わ り、 近 代 国 家 、 資 本 主 義 経 済 の 国 へ と大 変 化 を 遂 げ た の で あ る。 第2回. 目の脱 皮 は敗 戦 で あ る。 これ に よ り 日本 は天 皇 を 中 心 とす る国 か ら、. 国 民 主 権 の 民 主 主義 の 国 へ と大 き く変 貌 した 。 そ して 今 、 第3回. 目の 脱 皮 が 展 開 さ. れ て い る。 第1回. 目の 脱皮 の外 か らの き っか けを 作 った の が 「黒 船 」 で あ り、 第2回. れ が 「連 合 軍」 で あ った とす れ ば、 今 繰 り広 げ られ て い る第3回. 目の そ. 目の脱 皮 の 外 か ら. の エ ネ ル ギ ー は 「グ ロー バ ル化 」 とい う世 界 の 変化 で あ る。 ヨー ロ ッパ で の通 貨 の 統 合 は、 「国 家 」 と い う境 界 を越 え た新 しい 世 界 の 枠 組 み作 りを象 徴 した 出来 事 で あ った。 労 働 者 が国 境 を越 え て移 動 し、 世 界 を舞 台 に活 躍 す る企 業 の成 長 も珍 し く な い。 情 報 もイ ンタ ー ネ ッ トを通 じて、 自宅 のパ ソ コ ンに世 界 の様 々 な 出来 事 が 瞬 時 に入 り、 同時 に個 人 が 世 界 中 の人 々 に情 報 を発 信 す る こ と も可 能 とな って い る。 国境 で 区切 られ た世 界 地 図 は、 今 や 国 境 線 と い うそ の ボ ー ダ ー を色 あせ た もの に し つ っ あ る。 今 私 た ち は、 日本 の 歴 史 の そん な大 変 革 の時 代 に位 置 して い る。 大 変 革 は、 それ ま で の社 会 の仕 組 み や 考 え 方 の 変 更 を 求 め る。 明 治 維 新 が そ うで あ っ た よ う に、 ま た、 戦 後 改 革 が そ うで あ った よ う に、3度. 目 の脱 皮 の時 期 を迎 え て い る今 日、 政 治. や経 済 の仕 組 み に と ど ま らず 、 価 値 観 や 人 生 観 が め ま ぐる しい変 化 を 遂 げっ っ あ る。 単 な る時 代 の 変 遷、 単 な る世 代 間 の違 いで は な く、 歴 史 の 転 換 点 に起 因 す る大 変 化 が 起 こ って い る とい え よ う。 「構 造 改 革 」 と い う言 葉 が、 実 に様 々 な分 野 で必 要 不 可 欠 な もの と して 叫 ば れ て い るの はそ の た あ で あ る。. (3)大. 変革 と部 落 問題. 社 会 の 大 変革 にあ って は、 当然 、 部 落 問題 も大 きな変 化 を受 けざ る を得 な い。 か っ て 大 変革 の 時代 に身 を お い た先 輩 達 は、 「一 体 これ か らど うな るの だ ろ うか 」 「ど うす れ ば い い の だ ろ うか 」 と、 不 安 に思 い、 悩 み、 ま た希 望 を感 じた に違 い な い。 一23一.

(8) 人権問題研究資料. 第17号. しか しそ の都 度 、 大 変 革 の時 代 に あ っ た 日本 社 会 は 「それ ど こ ろ で は な い」 と、 部 落 問 題 の解 決 を置 き去 りに して き た。 明 治 維 新 で は、 外 国 の植 民 地 に な って は大 変 だ と い う こ とで 「富 国 強兵 」 に逼 進 し、 「解 放 令 」 によ り身 分 制 が撤 廃 され た に もか か わ らず 、 「そ れ ど こ ろ で は な い」 と して 、 部 落 差 別 の 実 質 的 な解 決 に結 びっ く積 極 的 な 取 り組 み は展 開 され なか っ た。 これ に 対 して 部 落 の人 々 は、 「も う これ 以 上 の差 別 は我 慢 な らん 」 と して 、1922年. に全 国 水 平 社 を結 成 して 立 ち 向 か っ た. ので あ る。 敗 戦 に続 く戦 後 改 革 で は、 日本 国 憲 法 が 制 定 さ れ、 「民 主 主 義 の 確 立 」 は国是 と な っ た。 しか し国 全 体 が 戦 後 復 興 を 急 ぐ中 で 、 ま た もや 「そ れ ど こ ろで は な い」 と して、 部 落 問題 解 決 の た めの 取 り組 み は再 び置 き去 りに され て しま った。 部 落 の人 々 は、 戦 後 の 荒 廃 の なか か ら部 落 解 放 運動 を 再建 し、 差 別 の 実 態 を 放 置 して きた 国 の 責 任 を 厳 し く問 う なか で 、 同 和 対 策 事 業 を 核 とす る同和 行 政 の推 進 とい う形 で これ に立 ち 向 か っ た。 そ の 契 機 とな った 内 閣 同 和 対 策 審 議 会 の答 申 は、 敗 戦 後 実 に20 年 を経 過 して の こ とで あ っ た。 そ して 今 日、 私 た ち は三 た び大 変 革 の 時 代 に あ って、 「一 体 これ か らど うな るの だ ろ うか 」 「ど うす れ ば い いの だ ろ うか 」 と、 様 々 な議 論 と模 索 を 始 め て い る。 今 度 こ そ、 「そ れ ど こ ろ で はな い」 と い う放 置 を許 して は な らな い。 む しろ こ の大 変 革 に、 部 落 問題 の解 決 を しっか り と位 置付 け、 根 本 的解 決 へ の一 大 契 機 に して い か な けれ ば な らな い。 で は一 体 、 何 を持 って この 変 化 に立 ち 向 か って い くの か。 ど の よ うな視 点 と方 向 性 を持 って取 り組 み を推 進 して い けば い い の か。 そ れ が今 日の議 論 と模 索 の歴 史 的 な意 味 で あ る。 そ れ は決 して 「法」 期 限切 れ に対 す る善 後 策 とい った対 症 療 法 的 な 作 業 で は な い こ と に注 意 を 払 い た い。 日本 社 会 の大 変 革 、 「3度 目 の脱 皮 」 に立 ち 向 か う戦 略 を描 く こ と、 そ れ が今 私 た ち に 問 わ れ て い る。. (4)私. は希 望 を感 じて い る 一24一.

(9) 「 法」期限後 の部落 問題 を考 える 3度 目の 大 変 革 の 今 回 こそ 、 部 落 問 題 の 解 決 を 置 き去 りに して は な らな い。 大 変 革 の 時 期 で あ るが故 に状 況 は決 して 楽 観 で き る もの で はな い が、 私 は希 望 を感 じて い る。 そ の 何 よ りの根 拠 は、 部 落 問 題 の 解 決 に取 り組 む協 働 の力 が存 在 して い る と い う事 実 で あ る。 先 に第1回. 目の 放 置 に 対 す る反 撃 と して 、 全 国 水平 社 の結 成 と そ の活 動 を取 り上. げ た。 これ は主 に、部 落 の 青 年 を 中 心 とす る活 動家 に よ って担 わ れ た もの で あ った。 第2回. 目の 放 置 に対 す る反 撃 は、 生 活 要 求 を 基 盤 に、 部 落 ぐる み の大 衆 運 動 と して. 展 開 され た。 部 落 の活 動 家 か ら部 落 大 衆 へ と反撃 の輪 は大 き な広 が りを み せ て い る が 、 しか しい ず れ に して も、 反 撃 の 主 体 は部 落 のパ ワー に限 定 さ れ て い た と い わ ざ るを得 な い。 しか し3度 目の今 回 は 、部 落 内 外 の 協 働 の パ ワー が存 在 して い る。 戦 後 の部 落 解 放運 動 が培 って きた労 働 者 ・行 政 ・教 育 ・企 業 ・宗 教 ・市 民 な ど の部 落 問 題 の解 決 を 求 め る社 会勢 力 が、 部 落 の 人 々 と と もに 「そ れ ど ころで は な い」 と い う大 変 革 の 風 潮 に立 ち 向 か お う と して い る。 国 際 的 な 人権 擁 護 の潮 流 も、 固 くこれ に結 びっ い て い る。 この新 しい現 実 に、 私 は これ ま で に な い大 きな希 望 を感 じず に は おれ な い。. [3]部 (1)多. 落 はみん な個性 的 様 な部 落 の現 実. 社 会 の大 変 革 は今 後 の進 路 の構 想 に、 これ ま で と は異 な っ た大 胆 な発 想 の転 換 を 求 め る。 部 落 問題 に お い て も然 りで あ る。 本 論 で は、 部 落 の 現 実 ・差 別 の実 態 認 識 に か か わ って3っ の視 点 を提 示 し、 そ こか ら提 起 され る具 体 的 な実 践 の方 向 を探 り た い。 そ の 第1の 視 点 は、 「部 落 はみ ん な個 性 的 」 で あ る こ との 直 視 で あ る。 例 え ば 、 「部 落 」 と聞 くと、 そ こ に何 か 一 っ の イ メ ー ジを思 い浮 かべ る こと は な い だ ろ うか。 あ るい は 「大 阪 の部 落 」 と い う と、 「都 市 型 の大 きな部 落 」 とい う感 じを もた れ る こ とが多 い。 しか し一 口 に 「部 落」 と言 って も、 実 際 の 状 況 は実 に色 々 で あ る。 そ 一25一.

(10) 人権 問題研究 資料. 第17号. の 実 際 を 大 阪 市 内 に あ る12の 部 落 に 関 わ る3っ の デ ー タを 例 示 的 に取 り上 げ て 確 か め て み た い。 数 値 は い ず れ も大 阪 で実 施 され た 「2000年 部 落 問 題 実 態 調 査 」1)の 結 果 で あ る。 表1は 、12の 部 落 の地 区別 人 口 を1990年 模 の 大 き いL部 落 の人 口 は12.964人 で あ る。 これ に対 してK部 落 は442人. 調 査2)と 比 較 した もの で あ る。 最 も規. に達 して お り全 国 で も も っ と も大 規 模 な 部 落 とL部 落 の わ ず か3.4%の. 人 口 と な って い る。. 1990年 時点 か らの増 減 率 も部 落 に よ って 大 き く異 な り、A部 落 で は4.12%の 増 加 が 見 られ るの に対 して、K部 落 で は マ イ ナ ス18.15%と. 表1地. 人口. 大 き く減 少 して い る。. 区 別 人工. 今回調査 大阪市全体. 1990年. 2,602,421. 今回調査 大阪市同和地区. 調査. 2,636,249 1990年. 調査. 40,002. 44,320. A地 区. 9,652. 9,270. B地 区. 1,545. C地 区 D地 区. .・ ..1. 1,355 3,602. 増減率 一1. .28%. 増減率 一9. .74%. 4.12% 一17. 1,440. 一5. 3,710. 一2. .82% .90% .91. E地 区. 1,682. 2,010. 一16. F地 区. 2,090. 2,390. 一12. .55%. 1,560. 一7. .50%. 2,170. 一16. .59% .20%. G地 区 H地 区. 1,443 1,810. .32%. 1地 区. 1,391. 1,680. 一17. J地 区. 2,026. 2,400. 一15. .5$%. 540. 一1$. .15%. 15,270. 一15. .10%. K地 区 L地 区. 442 12,964. 注)「 地 区概 況 調 査 」 図1は 、 それ ぞれ の部 落 に住 む住 民 に 「あ な た は 自分 を 『同和 地 区 出身 者 』 で あ 一26一.

(11) 「 法 」 期 限後 の部 落 問 題 を 考 え る る と思 い ま す か 」 と た ず ね た 結 果 で あ る。L部. 落 で は 「そ う思 う」 と 答 え た 人 は2. 6.8%に. す ぎ ず 、 「そ う は 思 わ な い 」 と し た 人 が57.4%に. て1部. 落 で は 「そ う思 う」 が68.1%、. の ぼ っ て い る。 これ に対 し. 「そ う は 思 わ な い 」 が22.0%と. な って い る。. 同 じ大 阪 市 内 の 部 落 で も、 こ ん な に 住 民 の 自 己 認 知 に 差 が あ る こ と が 明 らか と な っ た 。 図1に. は12部. 落 の平 均 値 が 示 され て い る が、 こ う して そ れ ぞ れ の部 落 に お け. る違 い を 見 て い く と、 平 均 値 の 意 味 は 慎 重 に 理 解 し な け れ ば な ら な い こ と に 気 付 く。. 一27一.

(12) 人権問題研究資料 表2は. 第17号. 、 「あ な た の 街 で 、 今 、 整 え て ほ しい福 祉 サ ー ビス は何 で す か 」 との 質 問. へ の回 答 結 果 で あ る。 例 え ば 「自宅 へ の給 食 サ ー ビスへ の希 望 」 をみ る と、L部 落 で は11.3%で. あ る の に比 べ てK部 落 で は22.1%と. で はK部 落 の ニ ー ズ は11.5%と12部 23.5%と 約4人 表2で. 約2倍. に な っ て い る。 「住 宅 相 談 」. 落 の 中 で 一 番 低 く、 これ に対 してD部 落 で は. に1人 が 住 ま い の問 題 で の 相 談 の場 を求 あて い る。. は、 それ ぞ れ の項 目に お け る最 高 と最 低 の割 合 を 示 して い る欄 に 「網 掛 け」. を して い るが 、 こ う して 眺 め て い くと随 分 と部 落 に よ って そ の ニ ー ズ に違 い が あ る 表2福. 祉 サ ー ビスへ の ニ ー ズ別 回答 者 数 総数 (個人). 大阪市同和地区 A地 区 B地 区 C地 区 D地 区 E地 区 F地 区 G地 区 H地 区 1地 区 J地 区 K地 区 L地 区 大阪府 同和地区. サ ー ビス. 3,014 925 606 637 759 658 781 207 1鋪 641 ssa 659 11s 1,285 7,805. 財産 や金銭 などの管理. 複数の人が集 生 活相 談(制 住 宅相談(入 生 きがいづくり 外出、通院、 な まっての会食 度 の説 明 な 居、改造、家 どの介助 ど) 賃助 成) 13.7% 4.7% 43.6% 20.0% 13.7% 9.$% 13.6% 4.3% 13.4% 21.1% 15.0% 10.1 20.5% 7.1% 15.3% 18.6% 22.4% 12.0% 17.oi 灘然 1s.zi 15.7% 14.1% ?2?% 18.3% 5.4% 13.4% 簸 慧鎚 1s.si 14.1% 16.7% 5.9% 圭 繊 韮% a1.si 13.7% 10.5% 16.0% 3.5% 14.0% 22.7% 12.8% 鑑1轟難 '9 鰹 騒 .7% 15.9% 16.4% 24.2% 14.5% 17.8% 5.0% 15.4% 18.1% 16.8% 12.3% 21.7% 5.4% 14.8% 1s.si 22.2% 灘鶴 12.4% 4.6% 17.3% z1.4i 15.3% 9.9% 22.1% >3>f 騰鰯 窪髄 鋸 鎌 藁難 ユ2.4% 雛灘遷 4.4% 14.9% ZO.0% 1z.4i 7.5% 15.7% 4.8% 14.1% 19.2% 15ユ% 11.7%. 自宅 へ の配 食. 健 康づ くり. そ う じや 買 い. 子育 て相談. サ ー ビス. 大阪市 同和地 区 A地 区 B地 区 C地 区 D地 区 E地 区 F地 区 G地 区 H地 区 1地 区 J地 区 K地 区 L地 区 大阪府同和地区. 1.6% 1.si. 麗購 2.5% 1.3% 1.7% 1.0% 一. 1.6% 1.4% 1.1%. ㈱鑑 1.3% 1.5%. 19.0%. 19.0% 27:'6% 20.6% 19.8% 18.4% 17.$% 26.ユ%. 20.7% 21.4% 難魏 蓬 26.5% 18.5% 19.7%. 12.1% 12.8% ii.1i ユ2.9%. 15.9% 14.4% 12.0% 13.0% 魏繊 棄 15.5% 11.4% 14.2% 1韮 ま騰 難 13.6%. 障 害 の あ る人. 就職 あっせん. その他. が気軽に集え. 物 など の家 族. る場 所 づ くり. 3.0% 3.8% 4.5% 3.8% 3.7% 3.6% 2.6% 3.9% 3.7%. 灘灘 3.0% 諮鑑. 2.7% 3.5%. 11.0% 13.4% 13.2%. 灘無 1a.4i 8.8% 1i.si 14.oi r1.7% 14.9% 11.1% 1難 葺難 鎚 8.6% 11.8%. 1s.si. 1.6%. ユ3.7%. 2.1. 14.2%. 1.5% o.ai. 薩鱒 14.si 13.2% 13.8% 11.6% 13.4% 13.5% 籔嚢 9.7% 15.5% 13.5%. ユ.8%. 0.3% 1.4% 0.5% 3.1% 1.6% 2.1% 1.si 1.4% 1.2%. 注1)「 特 にな し」「わか らない」は省略 注2)各 項 目にお ける網掛 け部分 は、それぞれの最高 と最低の割合を示 している. 一28一. `鴨. 甲 ¶.

(13) 「法」 期限後の部落問題を考え る こ とが わ か る。 これ らデ ー タは、 そ れ ぞ れ の部 落 に お け る実 態 や課 題 を 示 して い る と と もに、 同時 に、 住 民 の ニ ー ズ に十 分 に は こた え きれ て い な い取 り組 み の現 状 を 表 現 して い る と もい え よ う。 い ず れ に して も、 同 じ大 阪市 内 の部 落 にお い て さえ、 そ の状 況 は実 に多 様 で あ る こ とが わ か る。 こ こで は3っ の デ ー タを も と に12の 部 落 の違 い を 見 て き た が 、 同 じ大 阪 市 内 に あ る部 落 で も こん な に違 う こ とに改 あ て驚 か され る。 これ を 大 阪府 内 の部 落 、 さ ら に は全 国 の部 落 で比 較 して い く と、 も っ と も っ と大 きな違 い が あ る こ と は容 易 に想 像 で き る。 っ ま り、 全 国 の部 落 は被 差 別 の地 域 と して の共 通 性 を持 ち、 そ れ ゆ え に部 落解 放 の取 り組 み に お け る共 通 した原 則 や 目標 は確 か に あ るが、 しか しそ の 実 態 や課 題 は 実 に様 々 で あ り、 ど この部 落 に もぴ った り当 て はま る全 国共 通 の 「実 態 の モ デ ル」 「取 り組 み の 正 解 」 は な い とい う こ とで あ る。 部 落 はみ ん な個 性 的 で あ る。 だ とす れ ば、 そ れ ぞ れ の部 落 で は、 そ れ ぞ れ の部 落 の現 実 を し っか り とっ か み 、 そ れ を踏 ま え た そ れ ぞ れ の取 り組 み を、 そ れ ぞ れ の部 落 の人 々 こそ が主 体 的 に創 造 して い く こ とが必 要 だ とい う こ とに な る。 そ れ が取 り組 み の 出発 点 とい え よ う。. (2)「 法 」 期 限 切 れ と 「自由 」 部 落 はみ ん な個 性 的。 この こ と と の 関 わ りで い え ば、 「法 」 の 期 限 切 れ は思 わ ぬ 「自 由」 を運 動 や 行 政 関 係 者 に 与 え っ っ あ る。 そ れ が 同 和 対 策 事 業 か らの 自 由 で あ る。 部 落 問題 の解 決 を め ざ した これ ま で の 同和 行 政 は、 同和 対 策 事 業 を柱 と して取 り 組 ま れ て きた。 運 動 もま た、 課 題 に 占 め る同和 行 政 の比 重 の大 き さ に比 例 して、 同 和 対 策 事 業 の あ り方 へ の関 心 を高 め ざ る を得 な か った とい え る。 しか し、 法 律 に基 づ く この事 業 は、 全 国 画 一 の取 り組 み で あ った。 全 国共 通 の事 業 実 施 基 準 が設 定 さ れ、 各 地 の部 落 の実 態 は、 この基 準 に照 ら し合 わ せ る 中 で事 業 が実 施 され て きた。 言 うな らば、 国 基 準 に各 地 の部 落 の実 態 を合 わせ て きた の で あ り、 部 落 の実 態 に国 一29一.

(14) 人権問題研究資料. 第17号. の施 策 を あ わせ て き たの で は な い。 そ して 多 くの 自治体 は、 現場 の部 落 の 課題 に対 応 す る姿 勢 を、 それ に応 え る国 事 業 の 有 無 や 採択 基準 に照 ら し合 わ せ る中 で組 み立 て て き た と いえ る。 い きお い、 関 係 者 の 関心 と エ ネル ギ ー は国 の動 向 に向 け られ て い っ た。 しか し、 部 落 はそ もそ もみ ん な個 性 的 な の で あ る。 これ を全 国統 一 基 準 の施 策 で 何 とか しよ う と して も無 理 な の で あ り、 そ れ ぞ れ の部 落 の実 態 や課 題 を 出発 点 に、 何 が 必 要 か 、 ど うす れ ば い いの か を 考 え な い こ と に は本 当 の解 決 に は向 か って い か な い。 そ の意 味 で 「法」 の 期 限 切 れ は、 行 政 に あ って も、 あ るい は運 動 体 に あ って も、 具 体 的 な足 元 の 現 実 を も う一 度 見 つ あ な お す こ と。 そ して、 どの よ うに解 決 に 向 けて 取 り組 ん で い くの か は、 国 に答 え を求 め るの で は な く、 現 場 の 自分 達 こそ が 智 恵 を出 し合 い、 設計 図 を描 い て い か な けれ ば な らな い とい う発 想 や必 要 性 を い や が うえ に も気 付 か せ る こ と にな って い く。 自分 達 で 自分 達 の取 り組 み を考 え て い く 「自 由」 を手 に しよ うと して い るの で あ る。 大 切 な こ と はそ の 「自由」 を し っか り使 い こな す ことで あ る。 ま だ ま だ国 の動 向 を 眺 め て そ れ に あ わ せ る くせ が 抜 け きれ て は い な い。 「法 」 期 限 切 れ を 迎 え これ か ら ど う して い こ うか とい う戸 惑 い が あ る こ と も確 か で あ る。 しか し新 しい時 代 は、 自分達 で 自分達 の取 り組 み を創 造 して い こ う とい う時 代 で あ る こ とを 積 極 的 に受 け 止 め 、地 域 現 場 か ら、 部 落 問題 解 決 に 向 け た責 任 あ る プ ラ ンを 打 ち立 て て い くこ と を 求 あ て い る。 こ う した取 り組 み は、 や が て 国 の責 務 と役 割 にっ いて の 新 た な課 題 を 提 起 す る こ と とな るだ ろ う。 ま た そ の実 現 に 向 けた活 動 は、 国 策 樹 立 を求 あ たか っ て の 活 動 の よ う に、生 き生 き と した緊 張 関係 を持 って展 開 さ れて い くに違 い な い。 そ して 部 落 に限 定 した特 別 対 策 事 業 の終 焉 は、 こ う した取 り組 み を 部 落 内 外 の 広 が りを もった 市 民運 動 と して創 り上 げ て い く こ とを求 め る。 そん な可 能 性 が 「法 」 の 期 限 切 れ に よ って 浮 か び上 が って きて い る。. 一30一.

(15) 「 法」期 限後 の部落 問題 を考 える [4]差 (1)あ. 別 の 現 実 ・解 放 へ の 課 題 は 具 体 的 る高 齢 者 の 孤 独 死. 「部 落 一 般 」 が 存 在 す る ので は な く一 っ 一 つ の部 落 は み ん な個 性 的 で あ るよ うに、 差 別 の現 実 や そ こか ら提 起 され る解 放 へ の課 題 もそ れ は常 に具 体 的 で あ る。 これ ら は例 え ば、Aさ ん の個 人 的 な悩 み や心 配 と い う形 を と って、 あ る い はBと い う部 落 に降 りか か って い る地 域 の 問 題 とい う風 に、 必 ず 具 体 的 な人 や 出来 事 を通 して現 わ れ て くる。 「差 別 の現 実 、 解 放 へ の課 題 は具 体 的 」、 この ことが 部 落 の現 実 ・差 別 の 実 態 認 識 に関 わ って 提 起 した い第2の 視 点 で あ る。 部 落 解 放 同 盟 大 阪 府 連 西 成 支 部 の経 験 はそ の こ とを 教 え て くれ て い る。 西 成 支 部 は現 在 、 大 阪 で 最 も活 発 に部 落 解 放 運 動 が 展 開 され て い る支 部 の一 っ で あ るが 、 そ の 特 徴 は 「未 来 に輝 く人 間 都 市 」 を 合 言 葉 に した ま ちづ く りの取 り組 み が 強 力 に推 進 され て い る こ とで あ る。 特 にそ の 中 心 的 な 課 題 と して 福 祉 の取 り組 み が 豊 か に展 開 され て い る。 しか しこ う した 先 進 的 な 取 り組 み の 契 機 の 一 っ に、 あ る高 齢 者 の 孤 独 死 と い う、 本 当 に 悲 しい 出 来 事 が あ った とい う。 亡 くな られ た この 方 は、 まだ まだ 同 和 行 政 も 充 実 して い な い ころ か ら西成 の 解 放 運 動 に加 わ り、 運 動 発 展 の 原 動 力 とな った 住 宅 要 求 闘争 に も参 加 され て い た 人 で あ った。 そ の 人 が 、 運 動 で 勝 ち 取 った 解 放 住 宅 の 一 室 で誰 に も看 取 られ る こ とな くひ っそ り と亡 くな り. 、 しか もす ぐ に は発 見 さえ さ. れ な か った とい う文字 通 りの 「孤 独死 」 とい う最 期 を迎 え た。 新 聞 で報 道 さ れ れ ば わ ず か数 行 の べ タ記 事 に され て しま うで あ ろ う この 出来 事 に、 西 成 支 部 の メ ンバ ー は非 常 な衝 撃 を受 けた 。 「人 間 の 尊 厳 を」 と訴 え て き た 自分 達 の解 放 運 動 は、 一 体 何 を して きた の だ ろ うか。 確 か に住 環 境 よ くな って きた。 生 活 水 準 も改 善 さ れ て きた。 高 校 へ の進 学 率 も上 が った。 しか しそ ん な 中 で、 運 動 が勝 ち取 った解 放 住 宅 に お い て、 そ の運 動 の創 設 期 を担 った地 域 の仲 間 を 「孤 独 死 」 に 追 い や って しま った 自分 達 の取 り組 み とは何 で あ った の だ ろ うか。 自分 達 が 目指 し て きた もの は何 な の か。 そ ん な厳 しい 問 い か け を 自分 た ち 自身 に投 げ か け、 目 の前 一31一.

(16) 人権 問題研究資料. 第17号. の 「孤 独 死 」 とい う事 実 を、 決 して た ま た ま起 こ っ た不 幸 な 出来 事 と して済 ませ て しま って は な らな い と受 け止 め た。 こ の 出来 事 に 中 に、 解 放 運 動 が 一 番 大 切 に しな け れ ば な らな い こと や、 こ れか らの西 成 に お け る具 体 的 な取 り組 み の課 題 が い くっ もい くっ も表 現 さ れ て い る こ と に気 付 い た。 それ が 、 現 在 の西 成 支 部 に お け る 「人 間 復 興 」 の ま ちづ く りの大 き な原 動 力 と な って い っ た と い う。 現 実 は、 た った一 人 の願 い、 た った一 つ の家 族 の心 配 、 た った一 っ の 出来 事 、 た っ た一 っ の地 域 の課 題 と して表 現 され る。 大 切 な こ と は、 こ う した具 体 的 な一 っ 一 っ の事 柄 を し っか りと受 け止 あ る こ と。 そ して それ を 「個 別 の問 題 」 と して 事 件 解 決 主 義 的 に処 理 して終 わ る ので は な く、 そ の 具 体 的 現 実 に こ そ部 落 差 別 の 現 実 や 部 落 解 放 の課 題 を発 見 し、 それ に応 え る こ との で き る取 り組 み を 実 践 し、 施 策 を 打 ち立 て て い くと い うこ とで あ る。 西 成 支 部 の 取 り組 み か ら学 ぶ こ と は多 い。. (2)相. 談活動活性化への期待. 差 別 の現 実 や 解 放 の 課 題 は具 体 的 で あ る とい う事 実 に着 目す る と き、 具 体 的 な生 活 の課 題 が 当事 者 と と も に登 場 す る相 談 活 動 へ の期 待 は大 き く膨 らむ。 相 談 活 動 の 積 極 的 な展 開 は急 務 と いえ よ う。 と こ ろで 、 同 和 対 策 事 業 を 中心 と した これ ま で の相 談 活 動 は、 と もす れ ば これ ら の事 業 と リ ンク した課題 別 ・縦割 りの取 り組 み と して展 開 され る き らい が あ った。 相 談 が 専 門 分 化 す る と い うの は取 り組 み の発 展 の現 わ れ で もあ るが、 しか し他 方 で 、 悩 み や 心 配 を抱 え た住 民 は、 そ れ を ど こに も って い くの か とい う 「仕 分 け」 を 自分 の判 断 で す る こ とを 求 め られ る。 さ らに、 一 っ の悩 み事 に は、 実 は様 々 な要 因 が 絡 ま って お り、 一 っ の窓 口だ けで は問題 の根 本 的 な解 決 に な らな い場 合 も多 い。 表3は 、 「2000年 部 落 問 題 実 態 調 査 」 に お け る 「生 活 実 態 調 査 」 で の 質 問 、 「あ な た は、 あ な た ご 自身 や ご家 族 の方 が 保 健 ・福 祉 サ ー ビス を受 け る と き、 困 っ た こ と はあ ります か 」 に対 す る回 答結 果 で あ る。 「ど こ に相談 して い い のか わ か らなか っ た 」 と い う相 談 先 の 不 明 が30.0%も. あ る の に加 え て 、 「ど こ まで 応 援 して くれ るの 一32一.

(17) 「法 」 期 限 後 の部 落 問題 を考 え る か わ か ら な か っ た 」23.8%、. 「何 を し て くれ る の か が わ か ら な か っ た 」21.8%な. ど、. 現 在 の 相 談 活 動 の 問 題 点 が デ ー タ か ら も示 さ れ て い る 。 表3保. 健 ・福 祉 サ ー ビ スを 受 ける 際 に困 った こ との 経 験(複 数 回 答). 該当数. 2,878. ど こに相談 して いい の かわ か らな い. 30.0%. い ろいろ と 聞か れる の が面倒 くさ か った. 11.7%. を正 しく説 ど こまで応 自分の状態 療 きなかっ た 7.0%. 援 して くれ る のかわか らなか った. 23.8%. 人 によ って 説明 が違 っ て混乱 した. 10.6%. 相手 の説 がよ くわ か 明 らな か った. 9.0%. 何を して く れ るのかが わからなかっ た 21.8%. その他. 困 った こと は なか った. 4.8%. 40.0%. 注)「 受けたことはない」「 わからない」「 不明」は省略 調査 の 結 果 か ら も導 か れ る相 談 活 動 改 善 の 一 っ の ポ イ ン トは、 「よ ろ ず生 活 相 談 」 と もい うべ き、 総 合 生 活 相 談 活 動 を 展 開 す る こ とで あ る。 当 事 者 の 思 いを 丸 ご と受 け とあ、 そ れ を ど うす れ ば 解 決 して い け るの か の 設 計 図 を 描 く、 総 合 的 な 取 り組 み の 出発 点 とな る相 談 活動 で あ る。 イ メー ジ と して は、現 在 多 くの総 合病 院 で 開 設 さ れ は じめ て い る 「総 合 診 療 科 」 を 思 い お こす とわ か りや す い か も しれ な い 。 医学 の進 歩 は診 療 科 目の細 分 化 を促 して きた。 例 え ば 内科 ひ とっ を と って も、 消 化 器 系 内科 や循 環 器 系 内科 な ど の よ うに専 門分 化 して お り、 心 身 の不 調 を 解決 して も ら うた め に、 自分 は い った い どの診 療 科 を受 診 す れ ば い い の か戸 惑 う こ とが しば しばで あ る。 そ こで最 近 の総 合 病 院 にお い て は、「総 合 診 療 科」 「初 診 相談 室 」 とい っ た窓 口が 設 け られ、 受 診 者 は先 ず そ こで抱 え て い る症 状 の一 切 を訴 え て診 察 を受 け、 そ の判 断 の上 に 医 師 が適 切 な専 門診 療 科 へ誘 導 した り、 チ ー ム を組 ん で治 療 に あ た る と い う こと が行 な わ れ始 め て い る。 この 「総 合 診 療 科 」 と同 じよ うな機 能 を持 っ た相 談 活 動 の場 が求 め られ て い る の で は な い だ ろ うか 。 相 談 活 動 改 善 の も う一 っ の ポ イ ン トは、 相 談 を受 け る者 の資 質 の向 上 で あ る。 相 談 者 に思 い を し っか り話 して も らえ る カ ウ ンセ リ ング の力 や 安 心 を感 じて も らえ る 力 。 相 談 者 の秘 密 を守 る こと の で き る力 や相 手 にわ か る よ うに説 明 す る こと ので き る力 。 現 行 施 策 に関 す る豊 か な知 識 や 親 身 に なれ る感 性 。 さ らに こ う した個 別 の相 談 内 容 を通 じて 、 政 策 課 題 や 運 動 課 題 を発 見 して い くこ と ので き る力 量 。 そん な力 を持 っ た相 談 員 の育 成 が 、 新 しい時 代 の取 り組 み を 支 え る基 礎 体 力 を 形 成 す る と い え よ う。 一33一.

(18) 人権 問題研究資料 [5]差 (1)差. 第17号. 別 の 現 実 に市 民 の 人 権 の課 題 を 発 見 す る 別 の現 実 は社 会 矛 盾 の 集 中 的 表 現. 「法 」 の期 限 切 れ 、 社 会 の大 変 革 期 と い う時 代 にお け る部 落 問 題 解 決 の 取 り組 み を考 え る に あ た り、 その 基 本 と な る部 落 の現 実 ・差 別 の 実 態 認 識 にか か わ る3っ 目 の視 点 。 そ れ は 「部 落 差 別 の現 実 と は、 社 会 に広 く存 在 す る人権 侵 害 の 反 映 で あ り、 同 時 に そ れが 最 も厳 しい形 で あ らわ れ た も ので あ る」 と い う と らえ 方 で あ る。 人 権 と は 「人 間 で あ る と い う こ とだ けで 認 め られ て い る権 利 で あ る」 と い う こ と を ふ ま え れ ば、 部 落 の 人 た ちだ けの 人 権 と い う よ うな もの が な い の と同 じよ う に、 部 落 の人 た ち だ けが 侵 され て い る人 権 と い う よ うな もの もな い。 これ ま で部 落 解 放 運動 や 同 和 行 政 が と りあ げて きた 様 々 な課 題 、 例 え ば 、住 宅 の 問題 や教 育 の問 題 、 福 祉 や 仕 事 の 問 題 な ど も、 そ れ ら は皆 、 部 落 の課 題 で あ る と同 時 に市 民 の課 題 で もあ るの で あ る。 だ とす れ ば 一体 、差 別 の現 実 と は何 か とい え ば、 そ れ は、 こ う した人 権 の 課 題 が 、 部 落 の場 合 に はよ りひ ど く、 よ り厳 しく、 よ り慢 性 的 に現 われ て い る こ とだ と い う こ と にな る。 これ まで の同 和 行政 は、 この 「よ りひ ど く、 よ り厳 しい」 部 落 の実 態 を部 落 内外 の 「格 差 」 と して 明 らか に し、 そ れ を 両 者 の 「違 い」 と して 受 け止 め て きた。 「違 い」 と して 捉 え る こ とが、 「異 な った施 策 展 開 」、 つ ま り特 別 対 策 事 業 の論 拠 と して 採 用 され て き たの で あ る。 これ に対 して こ こで の提 案 は、 この 「格 差 」 とい う現 実 を、 人 権 侵 害 の集 中度 と して理 解 しよ う とす る もの で あ る。 「違 い」 と して 捉 え る よ りは、 共 通 した課 題 の そ の ひ ど さ の モ ノサ シで あ る と受 け とめ た方 が わか りやす い ので は な い だ ろ うか 。 「2000年 部 落 問題 調 査 」 の結 果 を踏 ま え た大 阪 府 の同 和 対 策 審 議 会 答 申(2001年9 月)は 、 それ を 「同和 地 区 に現 れ る課 題 は、 現 代 社 会 が 抱 え る さ ま ざ ま な課 題 と共 通 して お り、 そ れ らが 同和 地 区 に集 中 的 に現 れ て い る とみ る ことが で きる」 と表 現 ・した。 部 落 も部 落外 も、 人 権 の課 題 を ま だ ま だ多 く残 して い る現 在 の 日本 社 会 と い う 「共 通 の 土 俵」 の上 に存 在 して い るの で あ る。 一34一.

(19) 「法」期限後 の部落問題 を考 える こ う した視 点 か ら部 落 の現 実 を見 っ め る と き、 そ れ は部 落 の状 況 を 明 らか に す る ばか りで は な く、 現 在 の社 会 や 地 域 が 抱 え て い る人 権 の課 題 、 つ ま り 「市 民 の人 権 の課 題 を発 見 す る」 と い う作 業 とっ なが っ て い く。 部 落 に は、 差 別 に よ って、 社 会 が 抱 え る人 権 の課 題 が よ り く っき りと現 わ され て い るが ゆ え に、 よ り見 え や す く存 在 して い る ので あ る。 差 別 の現 実 を こ の よ うに と らえ て は じめて 、 部 落 解 放 の課 題 と市 民 の人 権 の課 題 が 重 な り、 部 落 解 放 の取 り組 み と人 権 社 会 建 設 の取 り組 み とが 軌 を い っ に した もの と して登 場 す る。 そ こに部 落 問題 の根 本 的解 決 へ の展 望 も広 が っ て くる と い え よ う。 部 落 だ け を対 象 と した対 症 療 法 的 な こ れ まで の 同和 対 策 事 業 で は、 問 題 の根 本 的 な解 決 に はな らな い。 「法 」 の期 限 切 れ は、 これ ま で の 差 別 の 捉 え方 を 発 展 させ る 大 き な き っか け を与 え て くれ て い る。. (2)身. 元 調 査 と プ ラ イバ シ ー の侵 害. これ は生 活 実 態 の分 野 だ け の こ とで は な い。 例 え ば、 部 落 問 題 の中 で も最 も重 要 な課 題 と い わ れ て い る結 婚 差 別 の問 題 を取 り上 げて み よ う。 結 婚 差 別 は相 手 が 部 落 出身 者 で あ る のか ど うか の識 別 を通 じて 引 き起 こ され る。 その た め に、 相 手 の住 所 が 同 和 地 区 で あ る のか ど うか 、 本 籍 地 が ど う なの か 、 出生 地 や 生 育 地 が ど うな の か と い っ た情 報 を本 人 の知 らな い と こ ろで 入 手 しよ う とす る ので あ る。 い わ ゆ る身 元 調 査 で あ る。 そ れ は時 に は、 本 人 の み な らず 、 両 親 や 祖 父 母 に関 わ る情 報 の入 手 に まで 至 る と い う。 そ して こ う した情 報 の入 手 に は、 調 査 の プ ロで あ る興 信 所 や探 偵 社 が 利 用 さ れ る こと も多 い。 結 婚 差 別 は こ の よ う な状 況 の中 で 今 日 もな お 引 き起 こ され 続 け て い る。 これ ら一 連 の行 為 は、 プ ラ イバ シー の侵 害 と い う重 大 な人 権 侵 害 で あ る。 出生 地 や本 籍 地 な ど、 そ れ らは いず れ もそれ ぞれ の人 の大 切 な個 人 情 報 で あ る。 身 元 調 査 の場 合 は さ らに家 の資 産 や親 の職 業 な ど まで 調 べ 尽 く し、 ま るで 身 ぐる み剥 が れ る よ うに 自分 の個 人 情 報 が 調 べ 上 げ られ る ので あ る。 部 落 の人 々へ の結 婚 差 別 は、 こ 一35一.

(20) 人権問題研究 資料. 第17号. う した 重 大 な プ ライ バ シー の 侵害 とい う人権 侵 害 を伴 って現 実 化 して い る。 しか しこ う した人 権 の侵 害 は、 果 た して部 落 の 人 た ち だ け が被 って い る 問題 だ ろ うか 。 こ こで の差 別 の捉 え か た に立 脚 す れ ば、 こ う した人 権 の侵 害 は、 何 も部 落 の 人 た ちだ けが 被 って い る の もの で はな く、 社 会 に広 く残 さ れ て い る人 権 侵 害 の反 映 で あ る とい う こ とに な る。 市 民 の個 人 情 報 を平 気 で調 べ、 そ れ を商 品化 して売 買 し、 しか も これ に 対 す る有 効 な規 制 が存 在 しな い とい う社 会 の現 実 の反 映 で あ る と い う こ とで あ り、 そ う した社 会 の矛 盾 が部 落 の人 々 を集 中 的 に お そ って い る現 実 、 それ が 結 婚 差 別 に お け る身 元 調 査 問題 で あ る とい う こ とに な る。. (3)オ. ー ドリ ・ヘ ップバ ー ン. 結 婚 差 別 に お け る身 元 調 査 の現 実 は、 市 民 一 人 一 人 の プ ラ イバ シーが 果 た して 守 られ て い るの だ ろ うか とい う自 らの人 権 の課 題 を問 いか けて くる。 そ う気付 い て私 自身 、 自分 の生 活 を振 り返 れ ば、 いか に 自分 の 個 人 情 報 が知 らな い 間 に盗 み取 られ、 勝 手 に利 用 され て い る のか に愕 然 た る思 いが す る。覚 え の な い と ころ か らダ イ レク トメ ー ルが 来 た り、 マ ン シ ョ ンの購 入 ・子 ど もの 家庭 教 師 や英 会 話 教 室 な どへ の勧 誘 の電 話 は 日常 茶 飯 事 で あ る。 そ う いえ ば 一 人 目の子 ど もが生 ま れ た と きに は、 まだ 母 子 と も病 院 に い る間 に、 出 産 の お 祝 い返 しの カ タ ロ グが送 られ て き た。 父 が亡 くな った と き に は、49日 の法 要 に 向 けて 、 い くっ もの 仕 出屋 か ら案 内が 届 い た。 特 に驚 い た の は、 映 画 俳 優 の オ ー ドリ ・ヘ ップバ ー ンが亡 くな って しば ら く した 後 に、 映 画 「ロ ー マの 休 日」 の ビデ オ購 入 の申 込 書 が送 られ て きた こ とで あ る。 こ の不 思 議 を学 生 た ち に伝 え る と、 それ は私 が これ まで に レン タル ビデ オ シ ョ ップで 、 彼 女 が主 演 した映 画 を 何 度 も借 りて い るか らだ と い う。 レ ン タル ビデ オ シ ョ ップで ア ルバ イ トを して いた 彼 の 説 明 に よ る と、 レン タル情 報 は貴 重 な個 人 情 報 と して 関 連 会 社 で再 利 用 され る こ とが 多 く、 コ ン ピュ ー タ ーに入 力 され た情 報 は実 に簡 単 に 編 集 処 理 され 利 用 価 値 が 高 い ら しい。 細 か な字 の 入会 説 明 の ど こか に、 レ ンタ ル情 一36一.

(21) 「法」期限後 の部落 問題 を考 え る 報 の利 用 につ いて の説 明 が な され て い た ので は な いか とい うが 、 そ れ はほ とん ど形 式 で 、 当 の私 は 自分 の レ ンタ ル情 報 の こ う した再 利 用 に同 意 した実 感 は な い。 こ う した個 人 情 報 の活 用 は高 度 情 報 化 社 会 の 中 で ます ます 容 易 に な り、 他 方 、 プ ラ イバ シー保 護 の観 点 か らこれ に対 処 す る社 会 の 対 応 は遅 れ て い る。 「営 業 の 自由 」 の 名 の もとで 、 個 人 情 報 が 商 品 と して 流 通 して い るの で あ る。 だ か ら こそ、 個 人 情 報 の 収 集 を 真 正 面 か ら目的 と した 身 元 調 査 行 為 が 、 堂 々 と業 と して 営 まれ て い る の で あ る。 プ ラ イバ シ ーの 権 利 、 個 人 情 報 の 保 護 と い う こ とが あ ま りに も放 置 され て い る、 そ ん な 人 権 の 課 題 を 抱 え た 社 会 の あ り さ まが 浮 か び 上 が って くる。. (4)部. 落 問 題 の 解 決 と人権 確 立社 会 の建 設. こ う して 社 会 全体 の 人 権状 況 に視 野 を広 げ る と き、 結 婚 差 別 に お け る身 元 調 査 と は、 プ ライ バ シー の権 利 が無 残 に も踏 み に じられ て い る社 会 の現 実 の 最 も厳 しい 現 れ 方 で あ る こ とが わ か って くる。 そ の人 権 の侵 害 は、 多 くの市 民 の場 合 、忙 しい 時 に 限 って電 話 が か か って くる とか、 こん な資 源 の無 駄 遣 い み た い な分 厚 い ダイ レク トメ ー ル が …. とい うよ うに、 多 少 の迷 惑 に感 じる程 度 で す ん で い る こ とが 多 い. か も しれ な い。 しか し部 落 か ど うか の身 元 調 査 の場 合 に は、 そ れ に よ って愛 を 引 き 裂 か れ た り、 就 職 へ の道 が閉 ざ さ れ る と い った、 ま さ に人 生 を左 右 しか ね な い よ う な形 で、 部 落 の人 々 を襲 って い る の で あ る。 こ う した人 権 侵 害 が 引 き金 と な って、 人 生 を絶 望 し、 か けが え の な い生 命 を絶 っ た と い う悲 しい事 件 もこれ ま で幾 度 とな く繰 り返 さ れ て き た。 こ う した 現 実 を 、 「部 落 の 人 は ひ どい こ とを され て い る」 と い うふ うに、 これ を 「部 落 の人 々 が被 って い る問 題 」 と して 限 定 して 受 け止 め るの か 、 そ うで はな く、 こ う した差 別 の現 実 は、 社 会 の中 に残 され て い る市 民 の 人 権 の 課 題 が 集 中 的 に表 現 し、 それ を照 ら し出 して い る と捉 え るの か 。 これ は差 別 の 捉 え 方 にお け る、 実 に大 き な分 か れ 道 で あ る。 部 落 差 別 の現 実 に市 民 の 人 権 の課 題 を発 見 し、 そ の解 決 を社 会 全体 の変 革 の 中 で 一37一.

(22) 人権問題 研究資料. 第17号. 迫 る と き、 そ れ は部 落 問 題 の 根 本 的 な解 決 に資 す る と と もに、 人 権 行 政 の 推 進 を は じあ とす る人 権 確 立 社 会 の 建 設 と一 体 の もの と して 登 場 す る。 そ の 時 、 部 落 問 題 の 解 決 は、 よ り深 い意 味 で の 「国 民(市 民)的 課 題 」 と して 、 い っそ う大 きな 社 会 性 を 持 ち は じめ る とい え よ う。. 「法 」 期 限 切 れ とい う新 しい現 実 へ の対 応 に、 今 しば ら くは戸 惑 いを 覚 え 、 様 々 な 議 論 や 模 索 が 続 くで あ ろ う。 それ が 、 日本 と い う国 そ の もの が 新 た な進 路 を 模 索 して い る大 変 革 の さな か に繰 り広 げ られ て い る こ とを 踏 まえ れ ば 、 な お さ らの こ と で あ る。 本 論 で は、 こ う した議 論 や 模 索 に関 わ って3っ の 視 点 を 提 示 した が 、 さ ら に この 作 業 を 丁 寧 に積 み 上 げて い き た い と思 う。 部 落 問 題 解 決 へ の 営 み は、 新 た な 戦 略 を 打 ち立 て る変 革 の 時 代 に位 置 して い るか らで あ る。. (注) 1)大. 阪 府 が2000年. に 実 施 した 「同 和 問 題 の解 決 に 向 けた 実 態 等 調 査 」。 調 査 は① 行 政 調 査. と して の 「地 区 概 況 調 査 」 「差 別 事 象 調 査 」 「事 業 実 績 調 査 」 「 既 存 報 告 書 の ま とめ」、 ② 同 和 地 区 内 関 係 調 査 と して の 「生 活 実 態 調 査 」 「同和 地 区 内意 識 調 査 」 「ヒア リ ング調 査 」、 ③ 同 和 地 区 外 関係 調 査 と して の 「府 民 意 識 調 査 」 か ら な る8種 類 の調 査 に よ って 構 成 さ れ て い る。 そ の 概 要 と特 徴 点 に っ い て は、 拙 著 『「人 権 の 宝 島 」 冒険 一2000年 部 落 問 題 調 査 ・10の 発 見 』(部 落 解 放 。人 権 研 究 所2002年10月)を 2)大. 阪 府 が1990年. 参 照 さ れ た い。. に実 施 した 「同 和 対 策 事 業 対 象 地 域 住 民生 活 実態 調 査 」。. 一38一.

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