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フィボナッチ数の閉じた計算式 解析的アプローチと代数的アプローチ

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Academic year: 2021

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─ 27 ─

日本福祉大学健康科学論集 第12巻

研究ノート

野 呂 春 文

日本福祉大学 健康科学部

Keywords: Fibonacci number, closed formula, generating function, matrix representation

フィボナッチ数の閉じた計算式 解析的アプローチと代数的アプローチ

Closed formula of Fibonacci number, analytical and algebraic approaches

NORO, Harufumi

Faculty of Health Sciences, Nihon Fukushi University

1 はじめに

 次の式で定義される数列 をフィボナッチ数列とよ ぶことは良く知られているとおりである. 例えば, に対して である.  フィボナッチ数 は によって値が決定されるから の関数とみなすことができる.そこで,上記のような 再帰的定義ではなく,あらわに だけに依存する数式と して書き下すと,次のようになることも知られている. 整数の足し算だけで作られるフィボナッチ数列が,この ように複雑な式で表わされることに多くの初学者は驚か される.  式 (2) は,J.P.M.Binet が 1843 年に発表したことをもっ て Binet の公式 と呼ばれている.しかし,D.Knuth らによると,1730 年ごろ A.de Moivre がこの式を初め て発表しており,次いで,L.Euler が 1765 年に著書で公 にしているそうである.数学ではしばしばこのようなこ とが起こっており,真の発見者よりも後世の研究者の名 前が冠される例が珍しくない.  上に名をあげた数学者達はいずれも,式 (2) を良く似 た方法で導いている.それは,Euler がその著書「無限 解析序説」1)の中で説明しているようなある種の 解析的 な方法である.一方,19 世紀の中ごろ以降に発達したた めに彼らの時代には知られていなかった 代数的 な方 法で式 (2) を導くこともできる.この小文では,それら 2 つのアプローチを高校数学で理解できるように解説する.

2 解析的アプローチ

 数列の母関数を利用する方法である2).フィボナッチ 数 を係数とする無限級数, をフィボナッチ数列の母関数とよぶ.このように定義さ れた関数からは,フィボナッチ数列のすべての性質が導 き出されると考えられるからである. フィボナッチ数列の定義 (1) より, であるから, に と を代入すると,

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─ 28 ─ 日本福祉大学健康科学論集 第12巻 2009年3月 が得られる.これを無限級数展開して式 (3) と項ごとに 比較すれば の表示が得られるはずである. 式 (5) が有理関数であることから,等式 が利用できる.そのためには式 (5) を と書きなおす必要がある.ここで, より, となるから,それより を求める.  式 (9) を満たす は二次方程式 の 根であるから, と解くことができる.よって,式 (8) より となる.式 (5) は, となるので,等式 (6) を利用すると, が得られる.つまり, であり,式 (2) が得られた.  このアプローチでは,微分や積分が表面にあらわれて こないから 解析的 アプローチと呼ぶことに抵抗をお ぼえるかもしれない.しかし,ここで用いた母関数を 含む無限級数は 18 世紀においては Euler が 無限解析 analysin infinitorum と呼んでいるように解析的な道 具とみなされていた.今日でも,関数を無限級数に展開 する際の標準的手法であるテイラー展開は解析的な道具 とみなされている.  なお,ここで,式 (6) が成り立つ理由を示しておく. と無限級数に 展開できたとする. より, が わかるから, である.

3 代数的アプローチ

 代数的アプローチの道具として行列を用いる.ここで は行列の利用法として 2 種類の方法を紹介する.  3.1 代数的アプローチその 1  引き続く 2 個のフィボナッチ数 , をベクト ル    で表わす3).1 つ前のフィボナッチ数のベ クトルは    である.これらのあいだには, という関係が成り立つ.そこで, とおけば,行列 を使うことによって, が成り立つことが容易にわかる. と はあらかじ め与えられているから, について知るには がわかればよい.そこで行列の冪乗を計算するときの 定石にしたがって, を対角化するために次の定理 を利用する.  定理 : ジョルダンの標準形 の特性方程式 が異なる 2 根 を持つなら,ある正則行列 を使って とできる.   特性方程式は, であるから,異なる 2 根を持ち,          である.

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─ 29 ─ 日本福祉大学健康科学論集 第12巻  式 (18) より, であるから ここで, とおけば, である.さらに, とおけば, である.つま り,複素数 と を使って, と表わされることがわかる. より,       であるから, となり,式 (2) が得られた. 3.2 代数的アプローチその 2  代数的アプローチその 1 では,式 (16) の行列 を フィボナッチ数のベクトルから,次のフィボナッチ数 のベクトルに変換する演算子として考えた.ここでは, 少し違ったアプローチとして,フィボナッチ数からな る行列を考えてみる4)  引き続くフィボナッチ数からなる行列         を考える. であるから, を特別に と書けば,         となる. は,前出の A と同じものである.ここで を思い出すと, となる. とおけば, となるから, 複素数 と を使って と表 わすことができる.あとは既に述べたとおりで となり,式 (2) が得られる.

4 おわりに

 ここで紹介した 2 つのアプローチを使うと,パラメー タ を持つ線形再帰式, によって生み出される数列の一般項の閉じた計算式を求 めることができる.  最初の例として,フィボナッチ数列の係数を一般化した リュカ数列の 1 つ について,解析的アプローチを使って の閉じた計算 式を求めてみる.  数列 の母関数 を とする. だから, である.これを と書き直すと, となる.これより,上記のリュカ数列の閉じた公式として,

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─ 30 ─ 日本福祉大学健康科学論集 第12巻 2009年3月 が得られる.この計算式には根号どころか複素数まで登 場している.  次に 4 項関係式, が生み出す数列 について,代数的アプローチを使っ て閉じた計算式を求めてみる. ベクトル    と    との関係を表わす行列Aは, で与えられる. が容易にわかるから,あとはフィボナッチ数列の場合と まったく同様にして閉じた計算式が得られる.  フィボナッチ数列には 神がかり とでも評するしか ない熱狂的なファンが多い5).ここで取り上げた閉じた 計算式についても「整数の足し算だけで生み出される数 列を表わすために根号まで現れている.これは奇跡だ.」 などと堂々と述べている書物やホームページまである.  しかし,以上で説明してきたように,再帰的に定義さ れる数列の一般項の閉じた表示を求める問題は,初等的 に解くことのできる問題であり,神秘的なものなどどこ にも存在しない.この小文が教育場面で役に立てば幸い である.

参考文献

1)Euler, L., 高瀬正仁訳:オイラーの無限解析,海鳴 社 (2001) 2)結城浩:数学ガール,ソフトバンククリエイティブ (2007) 3)砂田利一:行列と行列式1,岩波講座現代数学への 入門,岩波書店 (1995)

4)Johnson, R.C. : Matrix methods for Fibonacci and related sequences,

http://www.dur.ac.uk/bob.johnson/.bonacci/ 5)Simanek, D.E. : Fibonacci Flim ―Flam,

参照

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