著者
内田 和寿
図書名
京都光華女子大学こども教育研究第2号
開始ページ
27
終了ページ
33
出版年月日
2018-03-01
URL
http://id.nii.ac.jp/1108/00000874/
Ⅰ.はじめに 社会がグローバル化する現代において、文部科学省 (2017)は、新しい学習指導要領が目指す姿の 1 つと して、言語や文化に対する理解を深め、国語で理解し たり表現したりすることや、外国語を使って理解した り表現したりできるようになることで、日本文化及び 異文化を理解して多様な人々と協働していくことが重 要であると示している。また、2020 年に東京でオリ ンピック・パラリンピック競技大会が開催されること を契機に、スポーツへの意識を高め、他者への共感や 思いやりを学び、国際交流、国際平和に寄与する態度 を身に付けることも重要であると示している。 つまり、「スポーツ」と「国際交流」は今後の我が 国の教育における重要なキーワードであると捉えるこ とができる。この 2 つのキーワードを融合した取り組 みは既に散見し、我が国のスポーツによる国際交流の 動向について、内田(2015)を基に概観すると、観光 庁が 2011 年にスポーツツーリズム推進基本方針を策 定し(観光庁 2011)、スポーツと観光を融合したスポー ツツーリズムを推進するなかで、訪日外国人を対象と したインバウンドのスポーツツーリズムが各自治体や スポーツ団体を中心に展開されている。具体例として は、大手の旅行会社が各自治体やスポーツ団体と協力 して企画するスポーツ観戦ツアーが挙げられる。プロ スポーツの試合を観戦し、その前泊後泊で観光や買い 物を行うツアーである。また、参加型としては、地域 のマラソン大会に参加して、その前泊後泊で地域住民 と交流したり、地域のグルメスポットや観光名所を訪 問したりするツアーが挙げられる。 次に、大学におけるスポーツによる国際交流につい て内田(2016)を基に概観すると、そのほとんどは大 学体育会の運動部による交流であり、スポーツの競技 力向上を主目的とする練習試合や合同練習が主な内容 となっており、きっかけのほとんどは指導者のつなが りによる。 例えば、神戸親和女子大学のバレーボール部は、関 西大学リーグの 1 部に所属するチームであるが、フィ リピンと交流があり、フィリピンの国内大会に招待さ れたり、フィリピンの代表チームやクラブチームが神 戸親和女子大学で練習や練習試合を行ったりという取 り組みを近年行っている。 その一方で、大学で強豪の体育会運動部に所属しな い学生は、大学の教育の一環として留学したり、訪日 留学生と交流したり、サークルの活動で観光ガイドを したりするといった国際交流は体験できるが、スポー ツによる国際交流を行う機会は十分であるとは言えな い。後述の体育会運動部に所属しない学生が大学生の 割合として圧倒的な数を占めるのは言うまでもない。 大学において親交を目的としたスポーツと国際交流を 結びつける教育プログラムが実施されることで、より 多くの学生が気軽にスポーツによる国際交流を体験で きるようになるであろう。さらには、活動を通して、 異文化を知り、日本文化を再認識し、スポーツの魅力 を感じ、意思疎通を図ろうとお互いに気遣って会話を することは、学生本人の素養を高め、生きる力を育む ことにつながると捉える。 そこで本研究は、体育会運動部としての活動ではな い、大学のスポーツによる国際交流について、事例を 基に振り返りを行い、今後の発展的展開について検討 することを目的として研究を進めていく。研究の手順 として、まずはスポーツの価値と機能について整理し、 事例とする大学が女子大学であることから、女性のス ポーツについても潮流をまとめる。次に、事例として 京都光華女子大学(以下:本学)における活動を挙げ、 大学におけるスポーツ活動を中心とした国際交流につ いて論考する。
大学におけるスポーツ活動を中心とした国際交流
内 田 和 寿
スポーツの捉え方は幅広く、国や地域によって異な り、社会情勢の変化によっても価値観は転換する。本 研究では、スポーツを 18 世紀にイギリスで誕生した 「近代スポーツ」として捉え論を進める。 我が国におけるスポーツの価値の変遷を、稲垣・谷 佂(1995)、内田・横山(2013)に依拠し、なおかつ 女性のスポーツについて石田(2005)を基に整理する と、戦後から 1970 年前半までは、1964 年の東京オリ ンピックでのメダル獲得や国威掲揚の風潮からスポー ツは強いほど価値があると捉えられていた。女性は、 従前の激しい運動は女性の身体に悪影響を及ぼすとい う通説を覆すかの如く、エベレスト登頂に成功したり、 マラソンに参加したりと様々なスポーツに参加するよ うになった。また、メディアでも女性のスポーツ活動 が取り上げられるようになり、1964 年の東京オリン ピックの女子バレーボール決勝戦の視聴率(66.8%) は、スポーツ番組において現在も破られることのない 記録的な高視聴率であった。つまり、女性も競技スポー ツをすることが当たり前になりつつある時代であっ た。 その後、我が国には生涯教育という社会の流れが起 こり、1979 年に「ニュースポーツ」という和製英語 が誕生したことをきっかけに、だれでも気軽に楽しめ る軽スポーツやレクリエーションの活動が普及し、ス ポーツの価値は競技力が高くて強いことだけにあるの ではなく、あらゆるスポーツに対等の価値があるとい う風潮になっていく。そして、性別や年齢、競技レベ ルに関係なく一緒に楽しむことができる様々なスポー ツが普及し、地域発祥のスポーツも誕生していくので ある。1980 年代は、世間ではフェミニズム論やジェ ンダー論に基づく女性運動が盛んになり、女性の社会 進出が叫ばれるようになり、スポーツに関しても同様 で、ただ参加するのではなく、女性がリーダーとして 参画する活動も見られるようになった。 ところで、女性のスポーツ政策に関する世界的な指 針となったのは、1994 年の第 1 回世界女性スポーツ 会 議 に お け る「 ブ ラ イ ト ン 宣 言 」 で あ り、 日 本 は 2001 年に署名している。これは、あらゆるスポーツ の場に女性が参加する権利と女性の登用を保障するよ う、政府やスポーツ団体に求めた宣言であり、スポー 2010)。つまり、我が国における女性のスポーツに関 する本格的な取り組みは、まだ始まったばかりである。 2011 年には我が国でスポーツ基本法が公布され、 前文にスポーツは世界共通の文化であると明示され、 すべての国民が各々の関心、適正等に応じて、安全か つ公正な環境下で日常的にスポーツに関わることが理 念の 1 つとして示された。具体的な取り組みの動向と して、サッカーやラグビー、野球といった従来男性が 行っていたスポーツに女性の実施者が増加し、地域の スポーツクラブや学校の部活動でも盛んに行われ、全 国大会が男子大会と同様に行われる種目も多くなって いる。また、卓球やテニスのミックスダブルスのよう に、男女がペアを組んで競技を実施する種目が増加し、 従来女性の種目とされていた新体操やチアリーディン グなどで男性の実施者が増加している。このほかにも、 競技レベルの垣根を超えた、トップアスリートと市民 のスポーツ交流が増えたり、子どもから高齢者まで参 加して一緒に活動するスポーツイベントが数多く実施 されたりしている。つまり、スポーツはボーダーレス、 ジェンダーレスという風潮にある。 現在では、自身が「する」スポーツだけでなく、選 手を応援する「観る」スポーツや、選手をサポートす る「支える」スポーツにも価値が見いだされ、スポー ツに関わる人みんなで楽しむことに意義があると捉え られている。このことに関連して、スポーツを専門と する大学の学科をみると、トップアスリートやスポー ツ指導者の育成だけでなく、スポーツビジネスコース やスポーツトレーナーを目指すコースが設立された り、女子大学においてもトップアスリートの育成だけ でなく、ジュニアスポーツの指導者を育成したり、高 齢者やキッズを支援するスポーツ活動に力を入れたり と、スポーツに関わる様々な職業人の養成が行われる ようになっている。 次に、スポーツの機能について整理する。スポーツ の機能として一般的に知られているのは、活動者自身 の健康の増進に寄与するということである。 しかし、スポーツの機能はこれだけではなく、内田・ 横山(2013)より、健康の増進に寄与すること以外に 3 つ挙げる。まず 1 つ目は、普遍性の高さである。スポー ツは世界共通のルールに則り行われるため、例え言葉 が通じなくとも、身振り手振りとルールやプレーの用
語を用いてコミュニケーションをとることができるた め、国際交流のツールとしての機能を有している。2 つ目は、対象者に応じてルールや用具を変更したり工 夫したりすることができる応用性の高さである。この 機能を活用することで、年齢や性別、競技レベルを超 えて多くの人が一緒にスポーツを楽しむことができる のである。3 つ目は、受動的に楽しめることである。 つまり、自身がスポーツ活動の主体者にならずとも、 スポーツを観戦したり応援したり、活動者をサポート したりするという楽しみ方があるということである。 このようなスポーツの保有する諸機能に着目し、堀 他(2007)は、スポーツの活動がまちづくりに有効で あると述べ、横山(2011)は、スポーツが持つソーシャ ル・キャピタル形成機能は地域を紡ぐ無形の資源であ ると述べており、人々の交流促進のツールとして地域 活性化にスポーツを活用するケースが増加する動向に ある。 大学の活動においても、教員や学生の学問領域や利 害関係に縛られることなく、平等な関係性で誰でも気 軽に参加できる活動であるというスポーツの特性を活 かして、多くの人と人とを結びつけることを目的に、 例えば新入生のオリエンテーションや研修のコミュニ ケーションワークの一環として活用されるケースが多 い。 Ⅲ.本学におけるスポーツによる国際交流 1.香港との交流 本学では、2015 年に香港のバレーボールクラブチー ム(以後チーム名:Victory)と国際交流を行った。 交流のきっかけは Victory のコーチが筆者と過去に FIVB(国際バレーボール連盟)主催の国際セミナー に共に参加し、懇意な関係にあったことによる。 Victoryのほとんどの選手は大学生で、香港の母国 語は広東語であるが、どの選手も英語が堪能であった。 香港と日本のバレーボールに関する交流を概観する と、トップチーム同士の交流は、アジアの諸大会で対 戦するくらいで、日本のトップチームが香港の女子 チームと合宿をしたり合同練習会をしたりする機会は 皆無である。その理由の 1 つは、競技レベルに差があ ることである。FIVB(2017)によると、2017 年 8 月 更新の女子世界ランクで日本は 6 位、香港は 66 位と その差が大きいことが伺える。 Victoryは香港の 2018 年度のバレーボール国内リー グでトップリーグに所属するチームである。選手のほ とんどは過去に日本へ訪れたことがあり、日本のバ レーボールについて興味関心が高いが、世界ランクの 違いや、指導者間の交流ネットワークが無いことから、 小グループによる観光のみの訪日であり、今回が初め てのチームによるバレーボール活動を含んだ海外合宿 であった。 本学に於いての国際交流は、5 日間実施された。主 な内容は、こども教育学科の学生(1 年生)とのスポー ツ交流、バレーボール交流、学生のガイドによる京都 観光及び、Victory の競技力向上を目指した他大学や 高校との交流であった。それぞれについて、詳細を述 べていく。 スポーツ交流は、学生が履修する科目「スポーツ実 技」の授業に Victory の選手が参加する形で実施され た。授業の担当者である筆者が、学生に Victory の選 手を紹介し、小グループに分かれてそれぞれで自己紹 介を行い、グループでの準備運動およびパス練習を行 い、ソフトバレーボールのゲームを実施した(図 1)。 図 1 ソフトバレーボール交流 活動の序盤では、初対面による緊張と英語でのコ ミュニケーションによる緊張がみられたが、一緒に ボールを追いかけ、声を出し合ってプレーしていくこ とで緊張がほぐれてくると、自発的にコミュニケー ションをとり、肯定的情意行動(円陣、ハイタッチ、 拍手、ガッツポーズなど)が多くみられるようになっ た。 バレーボールの交流は計 2 回行った。1 回目は、こ
ツ実技」の授業のソフトバレーボール交流終了後に国 際親善試合を行った。ソフトバレーボールで交流した 学生は、両チームの応援を行った。学生有志チームは Victoryを迎え入れる準備として、事前に集まって数 回の練習を行い、非常に意欲的であった。 2 回目は、後日、バレーボールの練習を合同で行い、 交流を深めた。この時は Victory と学生のミックス チームを 2 つ編成し、それぞれ香港のコーチが監督と してチームをまとめた。ゲーム前とゲーム間にはチー ムのミーティングが行われ、簡単な英語を用いて、コ ンビネーションのサインとチームのフォーメーション 及び作戦を確認した(図 2)。 図 2 チームミーティングの様子 次に、学生のガイドによる京都観光について述べて いく。この活動も、学生が事前に準備をする内容が多 く、複数の教員が関わりサポートを行った。まずは、 観光コースの計画立案である。こども教育学科の科目 「社会」の授業で、担当教員の指導の下、学生による 話し合いが行われ、観光スポットとして球技の神様が 祭られている白峰神宮や日本庭園が美しい龍安寺など が候補に挙がり、訪日する人にとっては少しなじみの 薄い、しかし、京都の学生がお勧めの名所として選定 した。 また、観光をする際にガイドブックを基に説明した ほうが、より伝わるであろうとの考えから、オリジナ ルのガイドブック作成を「社会」の授業で同様に行い、 授業外で英語を専門とする教員から英語表現の指導を 受けて完成させた。この時作成したガイドブックは、 後日、香港のスポーツマガジンに「Victory 日本京都 暑期集訓」として記事で取り上げられ、そこでは、お もてなしの心に感銘を受けたとされており、学生に 図 3 SPORTSOHO(2015)に掲載された記事 また、今回さまざまな活動を通して、学生と Victory の選手は記念撮影を行ったり、LINE の交換を行った り、お互いの Facebook を紹介したりと、今後、交流 の継続が期待される連絡先の交換が行われていた。 Victoryと本学との国際交流は、こども教育学科の 学生以外とも行われた。具体的には、国際交流センター 主催のパーティー、 茶部によるお点前披露である。 国際交流センター主催のパーティーは、丁度、韓国と カナダからも留学生が大学を訪問する日に日程の調整 を行い実施された。それぞれの国の参加者が自己紹介 を行ったり、学生の企画によるゲーム大会が実施され たりと、大いに盛り上がる会となった。 茶部による お点前披露は英語で実施され、Victory にとっては日 本文化を知る貴重な場となったと言えよう(図 4、図 5)。
図 4 国際交流パーティー 図 5 茶部との交流 Victoryとの交流活動は、本学の学生とだけではな く、他大学の学生や高校生ともネットワークを形成し て行われた。この活動の主目的は、Victory のバレー ボールの競技力向上である。筆者が交流を持つ京都市 内の大学や高校のバレーボール部の練習に Victory を 引率し、日本のバレーボールを体験する機会を設けた。 この機会は同時に、日本の大学生や高校生が国際親善 試合をする機会となった。活動としては、一緒に日本 の練習を行ったり、交流試合を行ったりした。本学で は十分に満たすことのできなかった内容について補完 するものであった。 2.インドネシアとの交流 本学では、2015 年に引き続き 2016 年にインドネシ アのバレーボールクラブチーム(以後チーム名:W− JAVA)と国際交流を行った。交流のきっかけは、香 港のコーチ同様、FIVB の国際セミナーに共に参加し たインドネシアのコーチが 2015 年度に行った本学で の香港との交流活動を聞きつけ、申し出があったこと による。 W−JAVA のほとんどの選手は大学生で、母国語は インドネシア語であるが、半分以上の選手は英語が堪 能であった。 インドネシアと日本のバレーボールに関する交流を 概観すると、FIVB(2017)より、インドネシアの女 子世界ランクは 66 位であり、トップチーム同士の交 流は香港のケースと同様に皆無である。しかし、イン ドネシア国内にはバレーボールのプロリーグが存在 し、所属する選手はバレーボールのプロとして生計を 立てている人がほとんどである。また、チームによっ ては補強選手として数名の外国人選手とプロ契約する 企業もあり、世界ランクが香港と同位ではあるが、競 技レベルはインドネシアが数段上である。 W−JAVA は、ジャワ島にあるクラブチームで、国 内のクラブ選手権では常に優勝を争うチームで、大学 生ながら、プロリーグのシーズン中はプロとして活躍 し、国の代表選手に選出される学生も多数在籍してい る。インドネシア人が日本を訪問するには VISA が必 要であり、費用も高いことからほとんどの選手は今回 初めての来日であった。 本学に於いての国際交流は、7 日間実施された。主 な内容は、こども教育学科の学生(1 年生)とのスポー ツ交流、日本文化を体験する交流、学生のガイドによ る京都観光、W−JAVA の競技力向上を目指した高校 や他大学との交流であった。それぞれについて、詳細 を述べていく。 スポーツ交流は、1 年生が履修する「スポーツ実技」 の授業への参加を検討したが、学生の履修者数が多く 体育館のスペースの問題で実施が困難であったことか ら、インドネシアとのスポーツ交流を 1 年生に案内し、 参加者及び、観戦者を募った。その際、どのようなス ポーツで交流したいかを学生に尋ねたところ、インド ネシアはバドミントンが盛んであることを知っていた 学生がおり、バドミントンをしたいという意見と、バ レーボールでぜひ外国の代表選手とプレーしてみたい という意見があり、この 2 種目で交流を行うこととし、 授業の空き時間に、スポーツ交流をする学生と応援す る学生が体育館に集い、親睦を深めた(図 6)。バド ミントンはダブルスで対戦し、時にはミックスでペア を組むこともあった。バレーボールは、本学の学生が 教えてもらう形で練習やゲームを行った。応援する学 生は、いいプレーが見られると、一緒に歓声を上げて
図 6 インドネシアとのスポーツ交流 次に、日本文化を体験する交流について述べていく。 こども教育学科の科目「社会」の授業において、昨年 度は京都観光を計画したが、今回は日本の文化を紹介 するというテーマで、担当教員の指導の下、学生が、 けん玉、だるま落とし、コマ回しを紹介し、体験して もらうという活動内容であった。W−JAVA の選手は、 興味深そうに何度も何度も挑戦し、技が成功した際は、 みんなで感動を共有することができた。前日にスポー ツで交流した学生がクラスにいたこともあり、積極的 なコミュニケーション活動が行われ、最後は全員で アーチを作ってお見送りをした(図 7)。 図 7 アーチを作ってお見送り こども教育学科の学生以外の学生との交流イベント は 2 つ実施した。1 つは、学生のガイドによる京都観 光である。国際交流センターから全学の学生にガイド のボランティア募集を呼びかけてもらい、学科の枠を 残念ながら、応募者は少なかったが、W−JAVA の選 手に金閣寺と渡月橋を案内し、たくさんの記念撮影を 行った。もう 1 つは、 茶部によるお点前披露を昨年 に引き続き英語で実施した。W−JAVA の選手は、イ ンドネシアでは体験したことのない正座に悪戦苦闘し ながら、日本の伝統文化について学びを深めていた。 そして、昨年同様に他大学の学生や高校生ともネッ トワークを形成して、W−JAVA のバレーボールの競 技力向上を主目的とした活動も実施した。 Ⅳ.おわりに 事例で紹介した本学の取り組みは、現在も規模は小 さいものの、継続して行っている。W−JAVA とバレー ボールで交流した学生は、2016 年の 3 月に京都外国 語大学で開催された国際親善バレーボール大会に参加 し、他大学やマレーシアのチームと交流を深めた。 Victoryと交流した学生は現在 3 年生になり、数名の 学生は再度本学を訪問した選手と再会を果たした。こ のように、国際交流が一過性のイベントで終わるので はなく、何かしらの形で心に残り、つながりを継続し ていくことが大切であると考える。 今後、日本へ来たいという海外の学生やスポーツ チームが今以上に増加することは明白であり、大学に よるスポーツ活動を中心とした国際交流は、学生に とって、また、訪日する学生にとってもより魅力的な 活動になることが希求される。 そこで、最後に本研究のまとめとして、本学の事例 を振り返りながら、今後の大学のスポーツ活動を中心 とした国際交流の在り方について検討を行う。 我が国でのスポーツ活動を中心とした国際交流は、 スポーツ活動+α(スポーツ以外の交流活動)とい う考え方が主流で、企業や自治体が企画するスポーツ ツーリズムの、スポーツ+観光・グルメといったモデ ルが多く活用されている。大学が主体となって実践す るスポーツ+αの活動の特長は、何と言ってもスポー ツ+教育が実現できることにある。教育の中には、歴 史、文化、伝統、語学、観光、食、道徳など様々な内 容が包含され、各大学がその特色に応じて内容を取捨 選択し、トータルとして複合的な魅力のある活動を展 開していくことが、大学の独自性を示すこととなる。
本学の事例においても、スポーツを専門とする筆者 が、ただスポーツによる国際交流だけを行うのではな く、社会科を専門とする教員や英語を専門とする教員 と協力し、また、大学の国際交流センターや 茶部と も連携を取って、教育的な国際交流プログラムを充実 させた。 大学として、今まで国際交流を身近に感じることの なかった学生や、スポーツを身近に感じることのな かった学生に、気軽に国際交流やスポーツを体験でき る機会を提供することは、学生の新たな興味喚起につ ながる。 また、学生が仮に語学や人とのコミュニケーション が苦手であっても、スポーツという共同体験を通して 感動を共有し、心でお互いを理解し、人と人とのつな がりを感じることが少しでもできれば、語学への興味 関心が芽生え、人と接することに楽しさを覚えるので はないかと学生の成長を期待する。 さらには、スポーツの活動を通して参加者間のソー シャル・キャピタルの形成を促進することで、一体感 のある雰囲気を醸成することは、学科や大学への帰属 心、愛校心を高めることにつながるのではないかと考 える。 このように、学生本人の素養を高め、生きる力を育 むことを実現するために、スポーツの諸機能を理解し、 スポーツだからこそできる活動を実践し、なおかつ、 充実した教育プログラムを付随させる活動を継続して 行うことが、今後の大学におけるスポーツ活動を中心 とした国際交流に求められている。 将来的には、大学が核となり、他大学やほかの教育 機関、自治体、企業と連携して活動の人的ネットワー クを拡大していくことで、さらに、より多くの人々が スポーツと国際交流を身近なものとして、日常生活の 一部として捉えることができるようになることを目指 して、研究を深めていきたい。 引用文献 FIVB(2017)世界ランキング女子 2017 年 10 月 23 日閲覧 http://www.fivb.org/en/volleyball/VB_Ranking_ W_2017-08.asp 堀繁・来田悟・薄井充裕(2007)スポーツで地域をつく る . 東京大学出版会.17‐19.50‐59 稲垣正浩・谷佂了正編(1995)スポーツ史講義. 大修館 書店.84‐86.151‐152 石田良恵(2005)女性とスポーツ環境. モダン出版. 114 −117 観光庁(2011)スポーツツーリズム推進基本方針 2017 年 10 月 15 日閲覧 http://sporttourism.or.jp/pdf/sporttourismpromotin gbasicpolicy.pdf 文部科学省(2017)新しい学習指導要領等が目指す姿 2017 年 10 月 15 日閲覧 http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/ chukyo3/siryo/attach/1364316.htm 岡野進(2010)概説スポーツ. 創文企画.95 SPORTSOHO(2015)日本京都暑期集訓. Sportsoho Media Limited sep#80. 67
内田和寿・横山勝彦(2013)スポーツによる地域活性化 ―女性のスポーツ活動に着目して― 京都滋賀体育 学研究 第 29 巻第 1 号.1‐11 内田和寿(2015)スポーツツーリズムによる国際交流 香港バレーボールチームを事例として. 京都ノート ルダム女子大学研究紀要 45 号 .45‐57 内田和寿(2016)香港クラブチームのスポーツツーリズ ム(京都).バレーボールミーティング報告. 2016 年 8 月 横山勝彦(2011)スポーツとソーシャル・キャピタル. 菊 幸一・斎藤健司・真山達志・横山勝彦編. スポーツ 政策論.成文堂.336‐338