イルカ 触れ合い活動に参加し た発達障害児の
母親のストレ ス調査
臨 床こ 理 学 専 修P06601 植 田 有 香 ( 指 導 教 員 三 木 善 彦 教授 ・ 宮 川 治 樹 准 教授)問 題 と 目 的
近 年 、 ド ルフ ィ ン セ ラ ピ ーや イ ル カ の 廁 し 効 果 が 注 目 さ れ るよ う に な っ て き た が 、 科学 的 な実 証 デ ー タ は少 な く、 調 査 ・ 研 究 が こ こ 数 年 で 進 め ら れ てい る のが 現 状 で あ る。 また 、 調 査 内 容 は 子 ど もを 中 心 と し た も の ばか り で 、 家 族 の 変 化 や 、 保 護 者 の 変 化 に つ い て の も の はあ ま り 見 当 た ら ない 。 こ の こ と を 受 け 、 植 田(2007 )は ’Iイ ル カ 触 れ合 い 活 動 ’Iに 参 加 し てい る 子 ど も の母 親 の ス ト レ ス変 化 調 査を 2005 年 に 行 っ た 。 そ の 結 果、 障 害 が 重 度 の子 ど もを 持 つ 母 親 の ス ト レ ス の 一 部 に 変 化 が 見 ら れ た。 そ こ で 、 本 研究 は 上 記 の 研 究 を 踏 ま え た上 で、2006 年 に 調 査 し た デ ー タを 加 え 、 改 め て 母 親 の ス ト レ ス変 化 を 捉 え る こ と と す る。 方 法 調 査場 所 香川 県 さ ぬ き 市 にあ る ド ル フ ィ ン セ ン タ ー。 こ こ で は 、 ’Iイ ル カ 触 れ 合 い 活 動 ’Iを 行 っ て い る。 こ れ は、 保 護 者 や 周 囲 の 人 々 の介 入 は 最 小 限 に 留 め 、 見 守 ら れ る 環 境 を 設 定 し てい る。 ま た、 参 加 す る子 ど も が 楽 し い 時 間 を 過 −49 ご し 、 興 味 や 関 心 に 基 づ い た 自 由 な 体 験 が で き るよ う に 行 っ て い る 活 動 で あ る。 調 査 対 象 者 2006年 7 月 5 囗∼ 9月17 囗の 期 間 に イ ル カ 触 れ 合 い 活 動 に 参 加 し た 発 達 障 害 児 の 母 親 (42 名 ) を 対 象 に 実 施。 内、33 名 が 有 効 回 答 者 と な っ た 。 母 親 の 平 均 年 齢 は37.7歳 、 子 ど も の平 均 年 齢 は8.0歳 ( 男 児24 名、 女 児 9 名 ) で あ っ た。 ま た、 統 制 群 と し て 、 A市 の 親 の 会 に 在 籍 す る母 親 に も 同 様 の 質 問 紙 を 実 施。 母 親 (14 名 ) の 平 均 年 齢 は46.7歳 、 子 ど も の 平 均 年 齢 は14.8歳 ( 男 児 9名 、 女 児 5名 ) で あ っ た 。 但 し 、 こ の 統 制 群 はイ ル カ 触 れ 合 い 活 動 に参 加 し て い る 群 と は 障 害 や年 齢 が 異 な る の で 、 活 動 を 行 っ て い な い 群 とし て 参 考 程 度 に 用 い る こ と と す る。 手 続 き イ ル カ 触 れ 合 い 活 動 の約10 日 前 に 質 問 紙 を 郵 送 、 活 動 前 日 ま で に 記 入 し て もら い プ ロ グ ラ ム当 日 に 回 収。 活 動 の約 1 ヶ 月 後 に 再 び質 問 紙 を 郵 送、 記 入 の 後 に返 信用 封 筒 に 入 れ、 郵 送 し て も ら う 形 を と っ た 。調 査 票 フ ェ イ ス シ ー ト で 、 母 親 の 年 齢 、 子 ど も の 年 齢 ・ 性 別 、 子 ど も の 診 断 名 、 家 族 構 成 、 子 ど も の 障 害 の 程 度 な ど を 尋 ね た 。 匚日 本 版 GH Q 精 神 健 康 調 査 票12 項 目 版 ( 以 下 、GHQ) 」 を 使 用 し た 。 ま た 、 匚学 齢 期 心 身 障 害 児 を 持 つ 父 母 の ス ト レ ス 尺 度 」( 植 村 ・ 新 美 、1983) か ら 、 匚こ の 子 自 身 の 問 題 」 を 16 項 目 、 匚自 分 自 身 の 問 題 」 を13 項 目 、 匚家 族 の 問 題 」 を12 項 目 、 計41 項 目 を 使 用 し た 。 匚CBCL4∼18 (Child Behavior Checklist) 」 の 問 題 行 動 尺 度 か ら は 、15 項 目 を 使 用 し た 。 こ れ に 加 え 、 活 動 前 に 2 項 目 、 活 動 後 に 5 項 目 の SCT に 回 答 を 依 頼 し た 。 但 し 、 CBCL は 今 回 の 分 析 に は 用 い て い な い 。
結 果 と 考 察
研 究1 2006年 度 の デ ー タ で、2005 年 度 と 同 様 の 結 果 が示 さ れ る か を み る た め、 活 動 期 間 ( 2 水 準 ) と 障 害 の 程 度 ( 4 水 準 ) の 間 で 、 分 散 分 析 を 行 っ た。 そ の結 果 、 匚こ の子 自身 の 問 題 」 で 障 害 の 程 度 の 主 効 果 (p<。05) が 示 唆 さ れ た。 ま た、 下 位 検 定 を 行 っ た 結 果 、 障 害 が重 度 の子 ど もの 母 親 で は子 ど もに 関 す る ス ト レ スが 高 かっ た。久 保(1979) は母 親 の身 体 的 ・ 精 神 的 な 匚大 変 さ 」 の 度 合 い は、 匚児 童 の問 題 の 程 度 」 に 比 例 し てい る よ う で あ る と 述 べ て い る。 こ の よ う に、 障 害 が 重 度 の 子 ど も の 母 親 の スト レ スが 他 群 よ り も高 い こ と は当 然 の結 果 と思 わ れ る。 ま た、 先 行 研 究 を 支 持 す る 結 果 が 示 唆 さ れ な か っ た の は、 実 験 対 象 者 数 が 充 分 で な か っ た こ と が 挙 げ ら れ る。 イ ル カ 触 れ合 い 活 動 は 実 施 期 開 か 隕 ら れて お り、 参 加 人 数 も隕 ら れ −50 て く る の は 必 然 で あ る 。 こ れを ふ ま え て 、 研 究 2 に移 り たい と 思 う。 研 究2 2005年 度 と2006 年 度 の 調 査 デ ー タを 合 わせ 、 スト レ ス変 化 を 再 検 討 し て み る た め 、 活 動 期 間 ( 2水 準 ) と障 害 の程 度 ( 4水準 ) の間 で 、 分 散 分 析 を 行 っ た。 そ の 結 果 、 GHQ の 交 互 作 用 に 有 意 傾 向 ( 亘3) =2.69, p<。10 ) が 、 匚こ の子 自 身 の 問 題 」 に お い て 障 害 の 程 度 の 主 効 果(K3)=5.13, p<。05 ) が 示 唆 さ れ た。 ま た下 位検 定 で は 、 障 害 が 重 度 の 子 ど も の母 親 の活 動 期 間 に お い てGHQの 単 純 主 効 果 (F (1) =5.65, p<。05 ) が 、 匚自 分 自 身 の 問 題 」 で は有 意 傾 向 ( 戸1) =5.65, p<。05 ) が 認 め ら れ た。 障害 が 重 度 の子 ど も の母 親 のGHQが 減 少 、 母 親 自 身 の ス ト レ スに 減 少 傾向 が 見 ら れ た の は、 筆 者 の2005 年 度 の デ ー タ と 同 様 の 結 果 を 示 し て い る。 こ れ は、 障 害 が重 度 の 子 ど も ほ ど 、 普 段 の生 活 で 母 親 は子 ど も に つ き っ きり に なり 、 多 く の 時 間 を と ら れ て し ま う こ とが 挙 げ ら れ る。 そ の 為 、 イ ル カ 触 れ 合 い 活 動 に 参 加 す る こ と は大 き な環 境 の 変化 と な った り 、 い つ も と違 う 視 点 で 子 ど もを 見 る こ と が 出来 たり し、 気 分 転 換 に な っ た為 、 母 親 自 身 の ス ト レ スが 軽 減 し た と 考 え る 。 ま た、 障 害 が 軽 度 の 子 ど もを 持 つ 母 親 ・ 中 度 の子 ど も を 持 つ 母 親 で は ス ト レ スの 軽 減 が 見 ら れ な か っ た。 こ れ は、 筆 者 が 先 行 研 究 (2007 ) で 述 べて い る よ う に 、 匚母 親 の 子 ど も に対 す る 期 待 度 」 が 、 障 害 が 軽 度 ・ 中 度 の子 ど もを 持つ 母 親 と 、 障 害 が 重 度 の 子 ど もを 持 つ 母 親 と で は 異 な る か らで あ る と 考 え る 。 子 ど も に 過 度 の 期 待 を し て し ま っ た 結 果 、 イ ル カ 触 れ合 い 活動 を 行 っ て も子 ど もに 変 化 が 見 ら れ な か っ た 場 合 に 落 胆 し て し ま う と い う こと が 挙 げ ら れる 。 こ れ は、 SCTの 匚私 か 子 ど も に 期 待 す る こ と は、」 の 項 目 へ の記 述 内 容 か ら も 期待 感 が 伺 え る。 研 究3 2005年 度 と2006 年 度 の デ ー タ を あ わせ た上 で 、 障 害 の 程 度 で は な く、 継 続 年 数 によ っ て ス ト レ ス変 化 が 異 な る の か を 新 た に 検 討 す る た め、 活動 期 間 ( 2 水準 ) と 活 動 年 数 O 水 準 ) の 間 で 、 分 散 分 析を 行 っ た。 そ の結 果 、 匚自 分 自 身 の 問 題 」 に お い て 交 互 作 用 に 有 意 傾 向(K2) = 2.99, p<。10) が 、 匚家 族 の 問 題 」 に お い て 交 互 作 用(K2) = 3.88, p<。10 ) が 示 唆 さ れ た。 ま た 下 位 検 定 で は 、「 自 分 自 身 の問 題 」 で は継 続 し て活 動 に 参 加 し て い る 母 親 の 活 動 期 間 に お い て 単 純 主 効 果 (F (1) =4.30, p<。05 ) が 認 め ら れ た 。「 家 族 の問 題 」 で は、 継 続 し て 活 動 に 参 加 し て い る 母親 (Kl)=2.83, p<。10 ) と 統 制 群CF(1)=3.89, p<。10) の活 動 期 間 に お い て 有 意 傾 向 が 認 め ら れ た。 ま ず、 母 親 自 身 の ス ト レ ス加 減 少 し た こ と につ い て は 、 研 究 2 で 挙 げ た よ う な 環 境 の変 化 や気 分転 換 の 効 果 だ と 推 測 す る。 次 に 参 加 −51 初 年 度 の家 族 で スト レ ス変 化 が 見 ら れな か っ た の は、初 めて の体 験 で あ る か ら だ と考 え る。 こだ わ り を 持 っ て い る子 ど も や、 初 め て の場 所 が 苦 手 な 子 ど もで は、 子 ど も だ け で な く母 親 の不 安 も 大 き い と の で は な い だ ろ うか 。 そ の為 に、 母 親 自 身 が 楽 し む と い う こ と が 難 し か っ た の で は な い だ ろ うか 。 そ れ に 比 べ 、 継 続 参 加 の 母 親 は 以 前 に 体 験 し て い る の で 安 心 感 が 生 ま れ、 少 し 余 裕 を 持 っ て活 動 を 見 た り 、 母 親 自 身 が 楽 し む こ と が で き る よ う に な る の で は な い だ ろ う か。 い ず れ に せ よ、 家 族 が 安 心 し て 参 加 で き る場 で あ るこ と が大 切 で あ る。