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巻頭言

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Academic year: 2021

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巻 頭 言

「天平文化に学ぶ独自性への模索」

今年の 5月下旬の週末,学会で久々に奈良を訪れる機会を得ました。目に優しい新緑の緩や かな山々に囲まれた奈良の地は,神仏が宿る神社仏閣も多く,今年度からの新しく慣れない仕 事で慌ただしい日々を送っていた私にとって,パワースポットとしての御利益を得るとともに, つかの間の心の癒しとなりました。そして,「美しいものを見て目を肥やすのは環境デザイン 学科に身を置く者の務め!」と半ば言い訳的なことも考えながら,セッションの合間を縫い, 先人の残した造形物を時間の許す限り見学してきました。 中学の修学旅行以来となる興福寺では,「阿修羅 天平乾漆群像展」が開催されていました。 今回の仮講堂での公開では,これまで国宝館に一列に並んでいた仏像たちが,約 1300年前の 姿を彷彿とさせる本来の配置で阿弥陀如来の周りを守るように取り囲んでいました。後日テレ ビで本展覧会の特集を見て,この配置が釈集会像という名称であることを知りましたが,左 右に据えられた一対の金こん鼓くと呼ばれる楽器はその音色により罪と業を消し去るとされ,釈の 十大弟子や釈の教えに帰依した神々である八部衆立像の,感覚を耳に集中し心の中に目を向 けているような微妙な表情からは,当時の匠たちの仏像製作の技術水準の高さを感じました。 中でも 734年に作られた,すらりとした 6本の長い腕と 3つの頭を持つ国宝の阿修羅像は,戦 いの神でありながら,華奢な青年のような面持ちで本当に美しく,目を奪われました。左面: 険しさ(戦いの神である阿修羅の本性)→ 右面:悔しさ(過去の悪行を悔い改める)→ 正面:内省(戦 いをやめ仏に帰依した)という,心境の変化を段階的に表現したという 3つの面おもて。写実的ながら 生々しすぎない,抑え気味の日本的な美の表現が実に心に響き,最高傑作のひとつとされてい るのも納得がいきます。これらの微妙な心理描写には,当時の技法である脱活だっかつ乾漆かんしつ 粘土で原 型を作り,麻布で表面を固めた後に粘土を抜き取り,その上に木の粉を漆に混ぜたパテのよう な木屎こ くそうるし漆で肉付けする技法が重要な役割を果たしていたと考えられ,それぞれの時代の美 がその時代の人の感性だけでなく技術とも強く結びついているのだと改めて気づかされました。 平城遷都から平安遷都までの天平の時代は,その前の中国や朝鮮の文化を受け入れ模倣した 白鳳時代とは異なり,「日本とは何か」を考え,唐からもたらされた仏教の経典や定型化され た仏像を,日本ならではの感性で表現しているといえます。本学は「昭和ならでは」のキャッチ フレーズで本学独自の教育の特色を PRしてきましたが,環境デザイン学科でも,「環境なら では」を明確に示せる「環境デザイン学科の目指す教育とは何か」ということを改めて考える 毎日です。優れたデザインには「美しさ」「機能性」の他に,「独自性」が絶対的に必要とされ ます。他にない独特なものを求めて,デザイナーは日々アイデアを模索するのです。本学環境 デザイン学科の教育にも,うちならではの「独自性」を確立すべく,各人がその感性を大事に しつつ学科の未来について考えることを続けたいと思っています。 本紀要には,環境デザイン学科に所属している教員の研究成果として研究論文 2報,デザイ ンノート 2報を掲載しております。昨年度実施した 4名(教員 2名,助手 2名)の学術研究会の サマリーも示しました。昨年度,本学科では 193名の学生が,それぞれの進路に向かって学び 舎を巣立っていきました。その卒業生全員の卒業研究のテーマを巻末に記載しています。また 本学科の特徴的なカリキュラムのひとつである平成 29年度のデザイン計画特講の講師一覧も 掲載しておりますので,併せてご覧いただければ幸いです。 (環境デザイン学科長 石垣理子)

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