平成25 年度 研究経過報告書 研究者名 加藤 明宣 研究課題名 植物を宿主とする近縁病原細菌における情報伝達クロスレギュレーション進化 研究目的・内容 近年、問題となっている薬剤耐性菌の多くは弱毒性常在細菌であり、生息域は腸、皮膚、家 畜、食肉、乳製品、野菜、土壌等、広範囲に及ぶ。細菌の二成分制御系(TCS)は、病原性 調節や薬剤耐性化に関わりが深いため、その詳細の解明が重要性を増している。そこで、腸 内細菌科の植物感染性病原菌を中心とした近縁細菌において、二成分制御系(TCS)間のク ロスレギュレーションについて体系的に解析することで、種間共通・種特異的なクロスレギ ョレーションを検出・統計化する。次に、それらに関わる分子機構を個別に解析することで、 ネットワーク進化の基本原理に迫る。 研究の経過 まず、植物を宿主とする近縁病原細菌における情報伝達クロスレギュレーション進化の体 系的解析を進める上で基礎となる二成分制御系(two-component system, TCS)遺伝子スト ックの構築①〜③を行った。 1. サルモネラ菌、イネ内穎褐変病菌においてレスポンス・レギュレーター(RR)/ セ ンサー・ヒスチヂンキナーゼ(HK)ダブル欠損株の構築がほぼ完成した。 2. 腸内細菌科に属する種々の菌株でレポーターアッセイを行う際、共通に使用可能な、 ターゲット遺伝子のプロモーター/GFP レポーターシステムの構築が行われたが、 検出感度の問題から、ルシフェラーゼをレポーターとした新しいシステムの構築に 変更した。このレポーターシステムについてもほぼ完成した。①上記欠損株に対し、 ②のターゲット遺伝子のプロモーター/ルシフェラーゼレポーターシステムを接合 伝達によりハイスループットに導入する手法も確立した。 3. RR を高発現できるプラスミド系列の遺伝子ストックの構築もほぼ完成した。サル モネラ菌、イネ内穎褐変病菌において、このプラスミド系列を使用する実験手法を 確立した。また、乳児腸炎原因菌、植物内生菌、白菜軟腐病菌、ジャガイモ黒あし 病菌で、それぞれの野生株に、②のターゲット遺伝子のプロモーター/ルシフェラー ゼレポーターシステムと、③のRR を高発現できるプラスミド系列を接合伝達によ り導入可能かの検証が開始された。 つぎに、これらの遺伝子ストックを用いた体系的なアッセイを開始した。イネ内穎褐変病菌 RR/HK ダブル欠損株においては、接合伝達効率、及び、接合伝達後の②のターゲット遺伝 子のプロモーター/ルシフェラーゼレポーターシステム保持の安定性が良好であったのに対 し、サルモネラ菌では、接合伝達効率、安定性ともに低い結果であった。これに相関して、 イネ内穎褐変病菌で安定的なアッセイデータが得られたのに対し、サルモネラでは、比較的、
再現性が得にくい問題点も明らかとなった。 これらのアッセイ結果から、種特異的なクロスレギュレーションの存在が複数存在するこ とを示唆するデータが得られた。 本研究と関連した今後の研究計画 研究計画が進行するとともに細部において修正が必要な問題点も明らかとなっている。今 後は、接合伝達効率が低いサルモネラ菌で、より菌密度を高い状態で接合する等の改良を加 え、再現性の高いデータを取得する。また、サルモネラ菌とイネ内穎褐変病菌以外での RR/HK ダブル欠損株も新たな実験項目として加える。乳児腸炎原因菌、植物内生菌、白菜 軟腐病菌、ジャガイモ黒あし病菌のうち、比較的容易な菌種からRR/HK ダブル欠損株の構 築を順次進める。現在進行中のハイスループットアッセイの精度と作業効率を高め、複数の 菌種で、ゲノム依存的なクロスレギュレーションのパターンを比較する。 RR を高発現できるプラスミド系列を保持する上記菌種においてもハイスループットアッ セイを進める。最終的にはRR/HK ダブル欠損株で得られたデータと RR を高発現できるプ ラスミド系列で得られたデータの比較する予定である。 (平成26 年 3 月 31 日現在)