後入先出法の審議過程
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(2) 第48巻第3号 は利害が複雑に交錯したのである。 以下では, アメリカの議会における審議過程をみなが ら, これらの権力の関係を分析し, 後入先出法の立法化の背景を探ることにしたい。 II.. 1936年の歳入法の審議過程. 後入先出法が初めてアメリカの議会に登場するのは1936年のことである。 しかし, 業界 ではすでに1934年の秋にアメリカ石油協会は「石油会計の統一 の処理方法」に関する委員 会から報告を受け取った。 委員会は石油会社に対して後入先出法を承認するように満場一 致で採決した。1934年11月, アメリカ石油協会は石油会社における棚卸資産の統一の評価 方法として後入先出法を受け入れることを表明した。1936年になってアメリカ石油協会は 「石油業界にとっての統 一的な会計報告」 という冊子を刊行し, 後入先出法を公に提唱し たのである111。 後入先出法が提唱される以前, 20世紀初頭のアメリカでは墓礎有高法が棚 卸資産の評価方法として広く用いられていた。 しかし, 1918年の歳入法の所得税に関する 規則45より以降,棚卸資産の評価は(a)原価と(b)低価評価のみとなり基礎有高法の適用 はできなくなったのである。 基礎有高法は禁止されているわけではないか, 当時から問題 点が指摘されていた。 理由は基礎有高法によると甚準数量や価格か恣意的に決められるた めである。 よって基礎有高法は正しい課税所得計算かできないというのである。 基礎有高 法には上記のような欠点があったが, 他方では損益計算が価格変動の影響を免れるという 利点かあったのである。 そこで価格変動の影響をうけやすい業界では基礎有高法の長所を 生かしつつ, それに代わる棚卸資産の評価方法を模索しなくてはならなかった。 1936年, アメリカの議会でも棚卸資産の評価方法をめぐる審議が始まった。 それという のもル ー ズベルトが打ち出した留保利益税によって, 業種によっては棚卸資産評価益への 課税のおそれがあったからである。 棚卸資産評価益は実体のない架空利益であって, 企業 にとって大きな負担となっていたのである。. 上院財政委員会におけるPeloubetの証言 1936年5月7日,第74議会の上院,財政委員会の公聴会でアメリカ鉱業会議(American Mining Congress)の意向を代表してPeloubetが証言に立った121。PeloubetはPogson, Peloubet& Co., の一員であり, また公認会計士でもあったか, 業界に味方して発言をし ている。Peloubetは基礎有高法に代わる方法としては後人先出法以外にはないとの考え Ill. アメリカ石油協会の動向については , Hoffman (1962)による。 なお, American Petroleum Institute (1936)を参照した。 121 United States Congressional Record (1936), May 7. -192 (596)一.
(3) 後入先出法の審議過程(毛利) をもっていた。 棚卸資産に関する委員会に際して歳入法案に施行規則としての条項をもり こむことを提案する。 Peloubet の発言の要旨は次のようである。 われわれが提案する条項は, 価格が下落する時期には実現利益の課税を免れられない効 果があるし, 価格上昇の時期には実現利益はすべて課税されることは確かである。 製造や 加工の期間が長期に及び, 原材料の正常な有高を維持することを必要とする産業がそうで ある。 この条項の目的は課税を最小にしたり, あるいは減らしたりすることにあるのでは なく. 実現利益に関し税を規則的に徴収することにある。 非鉄金属を製造, 製錬, そして 精製する産業およびそれに類する産業では, 価格上昇時には架空利益に課税され, 価格下 落時には損失も課税所得になるのである。 これらの産業に適用されている現在の方法に代 えて, 利益が実現する際に課税しようとするのである。 このようなことを述べた上で, Peloubet は1934 年の歳入法の Section22 (c) に注目す る。 そこに棚卸資産について. 以下のような条項があることを指摘している。 それは. 歳 入局長官の意見に従い納税義務者の所得を決定するにあたり,棚卸が必要な時はいつでも. 財務長官の承認を得て, 歳入局長官が最良の会計実務に近く. また明瞭に利益を反映する ものと認定する基準に則して, 棚卸資産の評価方法は納税義務者により採択されるべきで ある. というものである。 Peloubet はこの条項こそが後入先出法への途を拓くものと考 えたのである。 ここで, 上院議員の King と Peloubet との意見のやりとりがあった。. King は Peloubet にこの条項を承認するのか, と問う。 これに対し, Peloubet はそう である, と答えている。 続いて Peloubet は, 業種によって棚卸資産の評価方法が選択されるぺき理由を説明す る。 加工期間が比較的長期にわたる産業では, 棚卸資産は利益決定に最も重要な要素であ る。 金属の製錬や精錬にたずさわる産業, また金属製品にかかわる産業がそうである。 そ のような産業では, 棚卸資産としての金属や金属製品の数量は恒常的でなくてはならず, 企業が継続する限り維持されなければならない。 棚卸資産が売却され, 処分されるのは, 不況期や企業の清算時だけである。 このように Peloubet は述べて, 現行の歳入法の下で は業種によって法人所得税の計算には不都合があると指摘した。. Peloubet かいまこの時期に後入先出法を主張する背景には,. ニ. ュ. ー. ディ. ー. ル政策によ. る留保利益税の導入があった。 留保利益税が未実現利益の課税を招来するからである。 留 保利益税があるなしでは, 課税所得の内容が大きく違ってくるのである。 これまでの歳入 法では, 課税は, 製造過程に結びつく棚卸資産の恣意的な評価によって発生した未実現利 益だけに支払った。 その際, 未実現利益の課税は, 納税義務者の存在を危うくするもので. -193 (597)一.
(4) 第 48 巻第 3 号. なかった。 ところが, 留保利益に課税するよう提案される法律の下では, 会社は, そうし た未実現利益に関し配当を支払うのに借金をするか, そうした利得に税を支払うために借 金をするか, またそうせざるを得ない。 多くの場合, 課税額は実際の現金利益より多いで あろう。 こうして Peloubet は, 棚卸資産が引き渡され, 販売されるまでは収益は得られ ないとする実現主義の下にあって, 恣意的な評価による未実現利益に納税義務者は税金を 支払うべきでない, と述べるのである。 また, 上院議員の King と Peloubet とのやりとりがある。 King は現行の歳入法の下 では, 会社の純利益に課税するにあたって, 利益を識別するのが必要となる, と主張した。 これに対して, Peloubet はそのとおりである, と言う。 さらに, King は会社の同意が得 られたとしても, 議決の基準となる正しくまた合理的な結論に到るには, なおも反対意見 があるだろうか, と問う。 これに対して, Peloubet はその通りである, と答えた。 Peloubet は反対論を支える事例として, 会社が帳簿利益を現金利益に等しく見せる. ケ ー スが多くあることを挙げている。 それは, 歳入局 (Treasury Department) が認めな いケ ー スである。 さらに歳人局が先入先出法を主張するケ ー スがたくさんあって, 期末の 棚卸資産の評価を最終の購入時のものであると仮定しているのである。 しかし, 既に述べ たように先入先出法は製錬業者にとってきわめて不都合な評価方法である。 Peloubet は このように述ぺることによって, 歳人法の不備をついたのである。 納税義務者は実現可能 な利益を課税所得として申告できるのでなくてはならない。 結論として, 1936 年の歳入法の Secticin22 (c) には次のことを書き加えて修正すぺきで ある, と Peloubet は主張した。 その文言とは,「納税義務者が,. 一. 貫して基礎有高法で. 記蜆している産業においてはこの方法を認める。 ただし, 納税義務者は先ずそれと引き替 えに棚卸資産を評価する方法を選択すぺきものとする。」というものである。 先に掲げたように, 歳入法の Section22 (c) には, 棚卸資産の評価方法は財務長官の承 認を得て, 歳入局長官か最良の会計実務に近く, また明瞭に利益を反映するものと認定す る基準に則して,納税義務者により採択されるべきである,とする 一 節があった。Peloubet は非鉄金属の産業で会計慣習となっていた基礎有高法こそは一 定の条件をつけれは認めて よいと考えたのである。 それかこの文言となった。 Peloubet はここで基礎有高法を非鉄 金属など 一 部の産菓に限って認めるのである。 とはいえ1918年以来, 歳人法は基礎有高法 を容認していなかった。 それを知りつつ, あえて Peloubet が基礎有高法を歳人法の 一節 に加えようとした背景には, 留保利益税という差し迫った状況かあったのである。 1936 年の歳入法には新しい税制として留保利益税か導入された。それは企業の純利益の -194. (598) 一.
(5) 後入先出法の審議過程(毛利) 中から配当していない利益額について, 課税するものであった。 課税を逃れるためには, 企業は配当を促進すれば済むことである。 しかし, そうはいかない企業もあった。 棚卸資 産を長期に保有することによって, 価格変動の影響を受けやすい企業である。 こうした企 業では, 未実現利益が会計利益に算入し, 課税所得になる。 この恐れのある企業が非鉄金 属であった。 Peloubetはこの産業に味方して証言したのである。 ただPeloubetは過去 の古い遺物である基礎有高法を主張するにとどまった。 ついに後入先出法の言葉は彼の発 言から聞かれなかったのである。 もちろん1936年の歳入法に基礎有高法が取り入れられる ことはなかった。. III.. 1938年歳入法の審議過程. 1936年の歳入法は留保利益税をとりいれた。 しかし, この留保利益税は産業界にとりは なはだ評判のよくない税であった。 というのは留保利益税は分配率が低いほど累進税率は 高く, 資産規模の小さい企業ほど負担は大きかったのである。 そのために企業の経営状況 をいっそう悪化させたのである。 また, 財務省の中にも留保利益税が産業界 に心理的負担 となったという考え方が生じていた。 このような状況下で, 1938年の歳入法をめぐる審議 が始まった。. 下院歳入委員会におけるPeloubetの証言 1938年1月25日, 下院歳入委員会の公聴会で, Peloubetは銅 . 真鍮製品製造工業協会 <. を代表して証言を行った 31 。 銅 . 真鍮製品製造工業協会はニュ. ー. ヨ. ー. ク市 にあった。. Peloubetは銅 . 真鍮製品製造業 に味方して, 歳入法 に後入先出法の導入を提言したので ある。 その内容はおおよそ次のとおりである。 委員会報告を調査すると, 二つのことが明白である。 第 ーは, 高い税率を存続せざるを 得ないことである。 第二は, 委員会か架空利益や未実現利益への課税を防止するため に大 きな努力をしたことである。 しかし, 私か思う に, 委員会が一 つ見逃したことかある。 っ まり, 原材料の加工あるいは製造業者である産業の状況である。 これらの産業は長い間, 区別されてきた。 綿織物工業や製粉業は, 取引をヘッジする結果を棚卸資産 に適用するの が認められた。 このよう にして, そうした産業は, 棚卸資産の評価増や評価減 によって生 しる架空利益あるいは架空損失の表示を回避できたのである。 銅 . 真銃製品製造業, 皮革 (3) United States Congressional Record (1938), January 25. -195. (599)一.
(6) 第48巻第3号. 業石油産業製綱業のような産業に対して, 何ら救済が与えられなかった。私たちが求 めていることは, 課税を逃れることではない。私たちは特権を求めているわけでない。 銅や真鍮製造業のような産業活動は, 加工製品をつくることに向けられる。 これらの産 業では, 製品を2, 3か月先に引き渡す。 彼らは, 注文を受けて原材料を手に入れる。 売 上収益の多くは, 鉱石の仕入れに費やされる。 それによる棚卸資産の評価益を期待してい るわけではないし, もちろん, 評価損は避けたい。 彼らは, 製粉業がヘッジする方法, あ るいは綿紡織業がヘッジする方法を適用する。 製粉業と綿紡織業の二つの産業におけるヘッジは, 棚卸資産に適用するのが認められる。 その他の産業が行うような先物取引はまったく考慮されていない。 それ故, 製粉業や綿紡 織業は恒常的に維持する棚卸資産を現在の取引に対応せざるを得ない。 彼らには, 現在の 売上に現在の原価を対応するのは認められていない。 結果として, 価格上昇の時期には, 棚卸資産の評価増により架空利益が生じる。 実際の売上に対し実際原価の対応があいまい になる。 Peloubet はこのように述ぺて, 製粉業や綿紡織業における棚卸資産評価方法の 不備を訴えた。 ここで, 下院議員の Vinson と Peloubet との間にやりとりがあった。 Vinson は Peloubet に先入先出法によると確かに架空利益が発生するのか, と問う。これに対して, Peloubet は発生する, と答えている。 そして次のように言う。 今や, 価格が下落する市 場では反対のことが起こる。 1937 年に, もし, 後入先出法あるいは現在の売上に現在の原 価を適用するのが認められたなら, 真鍮製品製造業では1千万ドルあるいは l 千2百万ド ルをこえる課税所得があったであろう。 また, 皮革業では課税所得が1千5百万ドルある いは 2 千万ドルになっただろう。この方法を認めないことによって, 1937 年に歳入は大き く減少した。 1936年には, 架空利益への課税が大きかった。 Peloubet がこのように述べたところで, Vinson が先入先出法が財務省の方針であっ たのはどのくらいの期間か, と質問する。 これに対し, Peloubet は歳入法か成立して以 来, 先人先出法が財務省の方針であった旨を述べる。 そして, Peloubet は先入先出法が ある産業にとって適切な会計方法であるとした。 また, 特定の産業ではより適正に利益を 反映するのに財務省が他の方法を認めていないという事実を指摘した。 さらに, Vinson は現在の商品(つまり完成品)の販売価格は, 現在の原材料の販売価 格とどんなつながりがあるか, と問うている。これに対して, Peloubet は, それは直接 に関係する, と言う。そして, 次のように述ぺている。 銅の価格が変動すると, 真鍮の価 格も変動する。 価格の構成は, 例えば真鍮の場合, 通常は3分の2が銅で,. -196 (600)一. 3分の1が亜.
(7) 後入先出法の審議過程(毛利) 鉛である。 そのようにして金属価格を知ることができる。 それに続いて, 見込み違いを知 ることができる。 銅の価格が上昇すると各製品の価格は上昇するし, 価格が下落すると, 各製品の価格も下落する。 それは直接, 変動する。 Peloubet はこのように述べることに よって, 製品価格と原材料の原価との関係を強調したのである。 そこで, Vinson はそれ は毎日でも変動するという意味か, と問う。 これに対し, Peloubet は変動するときはい つでも変わる, と答えている。 Vinson 議員とのやりとりの後, Peloubet は業種によるヘッジングの仕方の違いを認. めるぺきであると主張した。 先物市場のある産業とそれのない産業は区別が必要である。 1936 年の歳入法以来.法律顧問覚書 17322は製粉業や綿紡織業における棚卸にヘッジング. の適用を認めたのである。 今や, 銅 . 真鍮製品製造業においても状況は同じである。 この ように述ぺて, Peloubet は, 以下の文言を 1936 年の歳入法 Section22 (c) に相当する歳 人法の 一節に挿入されるべきことを提案した。 「歳人局長官がその方法を適用してよろしいと認める産業においては. 後入先出法や取 替法として知られる会計実務で行われるように, 棚卸資産は現在の原価を現在の販売活動 に対応する基礎で処理されてよい。」 さもなければ, 次の文言が歳入法の同じ節に追加されるべきことを示唆する。 「その業界で継続した行為によって, 同業者の協会の勧告によるか, 会計の諸団体の意 見や表明によって証明される会計慣習は. そうした方法を使用する納税義務者にとって最 良の会計実務とみなされるべきであり, また本法で課税所得を決定する方法として認めら れるぺきである。」 Peloubet のこうした考えは. その後の上院の公聴会の証言でも繰り返されている。. 上院財政委員会における Peloubet の証言 1938年 3 月 18 日, 上院の財政委員会の公聴会において, Peloubet は銅 . 真鍮製品製造 Ill 工業協会 (Copper and Brass Mill Products Association) を代表して証言する 。 銅 . 真. 鍮製品製造工業協会は製品価格が最も仕人原価の変動をうけやすい業種に属する団体であ る。 Peloubet か証言する内容は三つである。 その一 つは 銅. 真鍮製品製造工業協会を取り. 巻く経済環境である。 その二は銅 . 真鍮製品製造工業協会の企業活動の性格である。 その 三は銅 . 真鍮製品製造工業協会に求められる会計方法である。 (4). United States Congressional Record (1938), March 18. -197. ( 601) 一.
(8) 第48巻第 3 号. Peloubet は銅 . 真鍮製品製造工業協会の主張を支持する立場から発言する。 内容 に 立 ち入る 前 に , この協会は, 今 度の歳入法案の 一 節が証券取 引 委 員会 ( Securities and. Exchange Commission: SEC) への報告, 株主への報告, またその他の報告 に 適用するの と同じ会計方法をこの メ ン バ ー に 許可する文言 に なるよう願って い る, と Peloubet は述 べた。 この場合の会計方法とは, 現在の売上 に対し現在の費用を対応させる後入先出法で ある。 いまや, 歳入局も後入先出法を法人所得決定の基礎として用 いるのを認めるように なったからである。. Peloubet は今 回の上院の財政委員会以前 に も, 1936年の歳入法に かかわる公聴会で証 言したが, 後入先出法の使用を認めるよう に 立法化を求めたものの, 後入先出法の使用を 認めるのは歳入局長官の権限であり, 故 に 立法化は必要がない と言われたのである。 その ため, 銅 . 真鍮製品製造工業協会は, 1936年歳入法が成立して以来, 財務省と絶 えず折衝 を続けてきたが, 財務省は銅 真鍮製品製造業 に 対して正しいとは思われな い 所得決定の 方法を要求し続けた, と い う。 先ず, Peloubet は銅 . 真鍮製品製造業をめぐる経営環境 に つ い て証言する。 それとい うのも銅 . 真鍮製品製造業は, 損失を回避し, 市場価格の変動 による利益を除去するよう に行動する。 そのことは, 仕入れと販売を次のよう に対応すること に よって達成されるの である。 製品は受注生産であり, 将来のある時点で引き渡される。 受注から引き渡しまで 一般 に 90日, しばしばそれ以上かかる。製品の価格は, 製造費用から構成され, 注文かあっ た日の製品に 使用される金属の価格で決まる。その後すぐ に , 受注を履 行する に必要な銅, 真鍮, その他の金属 に対する購入 に 着手する。 Peloubet は銅 . 真鍮製品製造業がほか の 企業と違って受注生産であり, そのことが棚卸資産の評価方法 に関係することを指摘する。 次 に , Peloubet は銅 真鍮製品製造業の企業活動の性格 に つ い て証言する。 製品は将 来, 確実 に 引き渡されるとは限らな い。 また原料となる金属が数週間そして数 ヶ月のうち に 間違 い な く 手 に は い るとは限らな い 。 しかし, 製造者は販売するため に は金属を仕入れ て いかな け ればならな いのである。 原料である金属を高 く 仕人れるか安 く 仕人れるかは問 題でな い 。 大事なことは販売価格と製造原価の差額である。 この差額が利益であり, 企業 活動の基礎であるc このよう に述べること に よって, Peloubet は銅 . 真鍮製品製造業 に おける会計上の問題 に つ い て証言する。 銅 . 真鍮製品がほかの製品と著し く 異なるのは製 品価格 に 対する原価の比率が大き い ことである。 銅 . 真鍮製品の価格は, 銅や真鍮の価格 か変化する に つれて上昇ある いは下落する。 製品価格の変動は金属価格の変動の後, 数時 間内 に 起こる。 そのことか, 銅 . 真鍮製品製造業界の会計を理解する上で重要である。 原. -198 ( 602 ) 一.
(9) 後入先出法の審議過程 (毛利) 料である金属の価格変動を 考慮しないならば業者にとって 巨 額の損失が生 じ るからであ る。 このようにして Peloubet が言いたかったことは, 銅 . 真鍮製品製造業にとって, 重大 な 問題は原材料が棚卸資産の大部分をしめることであった。 顧客に販売される製品に含ま れる金属からは真鍮鋳造業者は損失もないし利益も得られない。 しかし, 製造業者が製品 として 引 き渡すと契約した金属についての み 圧延するわけには い かない。 しかも, 製造業 者は金属という棚卸資産を維持しなくてはならないのである。 鋳造を始めると, 傷物や鉱 滓を捨てるので, それだけ余計な 金属が製造されなくてはならない。 操業を終 え ると, 製 品は余分の原材料を削減することによ り , 適正な大きさに減らされる。 特定量の製品を生 産するためには, よ り 多くの数量が加工されなければならず, 余剰があれば ス ク ラ ッ プに なる。 この ほかに. 一部加工された材料の数量は, 注文に応 じ て製造を継続していかなけ ればならない。 それ故に. 製造業者は, 数 ヶ 月 の生産に見合う棚卸資産を手許においてお かなければならない。 この棚卸資産なしには稼働できなかったのである。 この棚卸資産の 有高は販売に対する準備ではない。 金属の仕人は販売に見合って なされるのである。 Peloubet はこう言って, 銅 . 真 鍮製品製造業か多くの リ ス ク をかか え た産業であること を強調したのである。 このようにして Peloubet は, 現行の歳入法の施行規則にある先入先出法は銅 . 真鍮製 品製造業には適合しな い と断言した。 そして先入先出法に代わる評価方法として 後人先出 法 を 提 示するのである。 Peloubet は ,. 後 入 先出法の根 拠を以下の よ う に 証 言 する。. Section22 (c) では, 歳 入局長官の定める規則は, 製造業者に古い仕入 原価に現在の売上 収益を対応させることを強制した。 このことは, 製造業者の経営実務と相反するものであ る。 これは, 所得計算の中に未実現の棚卸資産評価損益を算入するという結果を生 じ るの である。 銅 真鍮製品製造業の場合, 歪み かとくに著しい。 その理由は, 製造業の性格, 金属の高 コ ス ト , そして価格の変動のためであった。 製造作業が物理的, 技術的な困難を 伴う複雑な工程であ り , 棚卸資産の価格変動が長期にわたって大きな影響をうける。 金属 の仕入原価か製品原価の大部分を 占めるのである。 さらに, 銅は大きな価格変動をこうむった。 1937年 中に銅は, 期首の12 セ ン ト から17 セ ン ト に上昇したか, 期間末には10か 1/8セ ン ト に下落した。 期間中 , 市場価格が製造業 者の所得へ反映すれば. 課税所得は 2 倍になるかもしれないし, 損失か生 じ るかもしれな い 。 公正な課税は望 む べくもな い のである。 銅 真鍮製品製造工業協会は, Section22 (c) の修正を 望 ん で い る。 それは, 売上収益 -199. ( 603 ) 一.
(10) 第48巻第 3 号. に対応する売上原価の決定を認めることであ っ た。 これが後入先出法である。 つまり, 販 売する金属の原価は歳入法の施行規則にい うような最初に取得されたものでなく, 最後に 取得された大きさである。 このように Peloubet は, 銅. 真鍮製品製造業が価格変動の リ ス ク を常に抱え込んだ業種であるが故に, この産業では後入先出法が最も合 致した方法で あるとしたのである。 もう 一 つ Peloubet が後入先出法の根拠としたのは会計慣習である。 後入先出法は銅. 真鍮製品製造業の多くが会社の会計報告に用 いる方法であると いうのである。 課税所得の 計算に後入先出法を適用するのは認められて い な い にもかかわらず, それは実現利益だけ を決定する。 未実現利益を課税することなく, 発生した損失は認めるのである。 以上, Peloubet は後入先出法が既に, 実務にお い て用 い られ, 容認されて い る方法であること を一 つの根拠とする。 それだけでなく Peloubet は, 銅· 真鍮製品製造業界だけでなく公的機関, 民間の団体, 研究者も後入先 出法を支持してい ることを根拠にした。 SEC (証券取引委員会) は後入先 出法を基礎に作成された会計報告書を受け人れて い るし, また ア メ リ カ 会計士協会 (AIA) も1 936年 5 月 7 日付の報告書でこの方法を容認して い る。 さらに Sanders, Hatfield and Moore による 『会計原則』 も後入先出法を承認して い る, と述べるのである。 こうして Peloubet は一 元的な会計制度の考えから離脱することを説くのである。 あら ゆる産業に適合する棚卸資産の評価方法と いうものはな い。 銅 . 真鍮製品製造業は, 価格 上昇の期間に未実現利益を示し, 価格下落の期間に損失を示すよりは, 実現利益で税を支 払う方法の認可を求めて い る。 銅· 真鍮製品製造業には後入先出法しか適合しな いのであ る。 銅. 真鍮製品製造業は, 財務省によ っ て会計処理が制約されて いる。 他の産業は課税 所得を決定するのに適合した会計方法を用 いるのが認められて い る。 そして, 実現ある い は実現可能な利益に課税される。 他方, 銅. 真鍮製品製造業は, 未実現の利益に課税され る。 Peloubet はこのように述ぺたうえで, 銅· 真鍮製品製造業にと っ て現在の施行規則 か不公平な課税を生んで い ると指摘した。 Peloubet によると, 不公平な課税は銅 . 真鍮製品製造業にとどまらない。 綿紡織業や 製粉業では, 状況は上記の産業と似ているが, 棚卸資産に対して 「ヘ ッ ジング」 の取引を 適用し, 後入先出法と同じ結果を得ることができる。 綿紡織業や製粉業は課税目的のため にヘ ッ ジングの方法を用 い るのが認められて い る。 ところか, 皮革業, 非鉄金属業などの 産業は, 結果として同じになる会計方法を用 い るのが許されて い な い。 Peloubet は後入 先出法をヘ ッ ジングと同じ効果があるものと考えた。 そうであればヘ ッ ジングを 一部の産. -200 ( 604 )一.
(11) 後入先出法の 審議過程 (毛利) 業に認 め ながら, 銅 . 真 鍮製品製造業に許さな い のはおかしい 。 Peloubet は こ れを次の ように説明する。 将来, 高 い 税 率が続く こ とを考えれば, 課税が分散できるような利益の みを反 映する会計方法を用 いる こ との意義は大 き い 。 5 バ ー セ ン ト の 名 目 税率は, 架空利 益を含 む こ とによ っ て, 10バ ー セ ン ト の税率に等しくな り 不 公平である。 架空利益に20 から30バ ー セ ン ト の名 目 の税率を課す こ とは, 実現利益にして みれば, 40, 60, 80ある い は 100パ ー セ ン ト の税率と同 じ である。 一 こ のようにして Peloubet は, 棚卸資産に関する歳入法の 節が, 銅 . 真 鍮製品製造業. の メ ン バ ー に受け入れられるような条項となる こ と, また一般に受け入れられる基準で課 税所得の計算ができるようにする こ とを 求 め て証言を締 めくく っ たのである。 そ こ で, 歳 入法の Section22 (c) に次の文言を挿入する こ とを提案した。 「棚卸資産の残高は, 送 り 状では識別できな い ほ ど 混在して い る場合, それが取得され た期間にお いて, 最初に仕入れ, ある い は製造された財とみなす。 販売された財の原価は, 最近の仕入れ, ある い は製造された財の原価とみなす。 但し, それは納税義務者の記録や 報告の方法と一 致し, 最良の会計慣行と一 致する こ と。 」 以上が Peloubet の証言 内 容である。 Peloubet は1936年の公聴会で, 棚卸資産の評価 方法としての恒常有高法が恣意性の故に財務省規則によ っ て 否認されて い る こ とを述ペ た。 そして, 後入先出法が恒常有高法と似て非なるものである こ とを力説して いる。 しか し, 1938年の証言ではもはや恒常有高法に言及する こ となく, 後入先出法を提言して い る。 こ の こ とは 後入先出法を受け入れる環境が整 っ てきた こ とを物語るものである。 最 後に, Peloubet は次のように付け加 え て 言 っ た。 Peloubet が言 い たか っ たのはなに も, 銅 . 真鍮製品製造業者に特典を求 め て い るのではな いし, また, 例 外的な こ とを求め て い るのでもな い , と い う こ とである。 後人先出法には, 期間中の歳入を減らすような こ とは何もな い 。 事実 1937年度につ い て 言 え ば, もし こ の方法を用 い る こ とが認 められた なら, 歳入は増加したであ ろ う。 1937年度に, 多くの産業で現在よ り 大きな課税所得があ っ たであ ろ う。 も ち ろ ん , それは歳入の増 加か減少か, い ずれかの方向に作用する だ ろ う。 • 銅 . 真 鍮 製品製造業界にと っ て課税の結果は ど うでもよか っ たのである。 要するに, Peloubet が言 い た い こ とは, 未実現利益に対しては税金を支払 い たくな い こ とであ っ た。 販売して い な い 棚卸資産につ い て評価益を計上するのは, 認 め がた い こ とであ っ たのであ る。 Peloubet にと っ てそれは ごく当た り 前の主張であ っ た。 議長は, 財務省の代表に こ れらの問題に注意を喚起するよう求 め ると い っ て, 審議を終 え て い る。 以上か上院の議長と Peloubet との意見のや り と り である。 -201 ( 605 ) 一.
(12) 第48巻第 3 号. なお1938年 3 月18 日 , 上院財政委員会の公聴会へ Pe l oubetは銅 . 真鍮製品 製造工業 協会を代表 し て報告書を提出 し た。 小さな報告書ではあるが, その内容は事例をま じ えた 詳細なものである。 Pe l oubetの証言はこの報告書の内容に即 し て いる。 その骨子は次の とおりである。 先ず, 銅 . 真鍮製品 製造業者は連邦所得税の計算にあたって, 後入先出法が認められる よう望んでい ること, そ し てこの業界では実際にそれが適用されて いること, またそれが 業界の実情に合致 し て い ることを指摘 し て いる。 次に, 基礎有高法と比較 し 後入先出法の長所を指摘する。 銅 . 真鍮製品製造業では, 最 小量の棚卸資産を製造工場に維持するのが要求される。 それは, 売上が手許にある在庫で はなく, 最新の仕入によって カ バ ー されることを必要と し て いるからである。 受注を在庫 で カ バ ー するとすれば, そのときの仕入原価は契約 し た販売価格より高 い かも し れな い の である。 銅 真鍮製品 製造業では, 経営者は在庫に現在の価格を付すのでなく, 販売を カ バ ー するために仕入れなければならな いことを知って いる。 このために, 在庫の仕人原価 を変えることなく現在の売上収益に現在の仕人原価を対応させることによって利益を計算 するのがこの産業の慣習なのである。 現在の売上に現在の仕入れを対応させるのが, 棚卸 資産の評価方法でなくてはならな い。 これが後入先出法と し て知られた方法にほかならな い。 他の業界では最初に仕入れた財が先に払 い 出されると仮定するのに対 し て, 銅 . 真鍮 製品製造業では最近仕入れたものが先に払 い出されると仮定する。 基礎有高法によって得 られる結果は後入先出法のそれに近 いか, 他方, 基礎有高法は基準価格や基準数量を恣意 的に仮定 し なくてはならな い。 これ に対 し , 後人先出法は, 基準棚卸法のよ う な恣意性が なく, 同時に, 理論的に基礎づ けられて いる。 また, 基礎有高法の長所を残 し つつ実務に もうまく合致 し て いるのである。 以上がこの報告書の骨子である。. 上院財政委員会における Stempf の証言 1938年 3 月18 日 . 上院財政委員会の公聴会で Stem pf. V. H. が証言 する包 Stempf は ア メ リ カ 会計士協会 (Ame rican Instit ute of Account ants: AIA) の連邦法人税委員会委 員長である。 上院の財政委員会の公聴会では, Stempf は会計士協会を代表 し , 歳人法の 改正をめぐって証言を行 っ た。 同時に, Stempf は下院で採択された H.R.9682 に関 し て, 歳入法の改正に賛成する勧告書を上院に提出 し た。 報告書の内容は. 超過利潤税, 資本税, (5) United States Congressional Record ( 1 938), March 1 8. -202. (606 ) 一.
(13) 後入先出法の審議過程(毛利) 留保利益税などであ る 。 上院の公聴会ではその内容についての質疑があ っ た。 そのなかで, 財政委員会の議長は留保利益税については賛成 し ていないのか, と Stempf に尋ね た。 こ れに対 し , Stempfは留保利益税の原理に反対であ る と答 え てい る 。 そこで上院議員の Lonergan は, 会社が利益の分配を故意に抑制 し た場合の救済措置を糾 し た。 これについ て Stempf は多くの ケ ー ス で歩み寄りがみられた し , それが不当な利益留保に対す る 措置 であ る と答 え てい る 。 Stempf への質疑は短いものであ っ た。 そこで, Stempf が財政委 員会に提出 し た報告書を検討す る 。 この報告書の中から, 留保利益税と後入先出法をとりあげてみよう。 先ず, 留保利益税 についてであ る 。 留保利益税は棚卸資産をめ ぐ る 論議の発端とな っ た1936年の新税制であ る 。 ア メ リ カ 会計士協会は次のような理由で留保利益税に反対 し た。 1.. 税収がおばつかないこと。. 2.. 税の簡素化に反 し , 規定が複雑であ る こと。. 3'. 留保利益税が新たな会計上, また財務上の問題を引き起こす こと。. 4'. 内国歳人局によ る 行政監督がむずか し いこと。. 5'. 留保利益税は中規模の会社に不当な苦 し みを招くこと。. これは1936年 5 月 7 日, 上院財政委員会へ提出された覚書によ る が, いまなお有効であ る という。 会計士協会は, 留保利益税の基本原則か不健全であり, 会社財務をだめに し , 会社の安定性を危険 に さらすものであ る と し てい る 。 ただ, この覚書は棚卸資産評価益の 問題 に は言及 し ていない。 次に, 後人先出法 に ついてであ る 。 ア メ リ カ 会計士協会はすでに1936年の租税特別委員 会報告で棚卸資産の評価方法の 一 つと し て後入先出法を承認 し ていた。 連邦法人税委員会 のこの報告書も, 後入先出法を支持す る 。 委員会の勧告の要旨は ほ ぼ以下のような内容で あ る 。 1936年歳入法の section22 (c) によ る と棚卸資産の条項は 「歳入局長官がその方法 を適用 し てよ ろ し いと認め る 産業においては, 後人先出法や取替法と し て知られ る 会計実 務で行われ る よう に , 棚卸資産は現在の原価を現在の販売活動に対応す る 基礎で処理され てよい。 」 とな っ ていた。 ここ に 財務長官の承認を得て, 歳入局長官か定め る 規則の文言が あ る 。 連邦税委員会はこの文言 に 注 目 し た。 というのは, 一部の産業では棚卸資産評価損 益 に 対処す る 方法と し て,. ヘ. ッ ジ ン グの会計処理が認められていたからであ る 。 法律顧問. 覚書17322は, 原材料を加工す る 産業, 主に製粉業や綿紡織業 に ヘ ッ ジ ン グの適用を認め る。 そう し た棚卸資産に対 し ては原材料 に 生 じ る 損益を除去す る のか目的であ る 。 とこ ろ か, -203. ( 607 )一.
(14) 第48巻第 3 号. 原材料を生産 製造, 加工する産業では, 歳入局長官は後入先出法を認めていない。. ヘ. ッ. ジ ン グは受注 日 の原材料の原価で販売価格を決めるのに対 し て, 後入先出法は現在の売上 に近い時点の仕入原価を対応させるのである。 委員会に し てみ れば,. ヘ. ッ ジ ン グも後入先. 出法も棚卸資産損益に対する措置という点では同じ こ とであ っ たのである。 にもかかわら ず, 後入先出法を認めないことへの不満があ っ た。 委員会は続けていう。 後入先出法は, (a) 加工が継続的で, (b) 加工期間が長く, (c) 最小の棚卸資産が コ ン ス タ ン ト に維持され なければならない産業, また(d) 原材料が製品の総原価の大部分を 占 める産業に適する。 さらに, 後入先出法は産業界で実質的に受け入れられており, 会計学者により支持され, SEC によ っ て適切なものと し て認識されている。 価格上昇期に, 先入先出法は棚卸資産や. 運転資本に含まれる利益を課税する結果になる。 また加工期間が長い産業には不当な負担 になる。 正常な在庫と し て後入先出法は, 会計の標準的方法であり, 企業の ニ ー ズにもよ く合致 し ている。 従 っ て, 後入先出法は承認されるべきである。 1936 年以来, 会計士協会 は後入先出法を支持 し てきたが, この報告書はその繰り返 し に過 ぎないともいえよう。 し か し ,連邦税委員会が税制の観点からも後入先出法を積極的に薦めたことの意義は大きい。 Stempf が提出 し た報告書はは会計士の立場から, 後入先出法を支持 し た。 その理由は,. 後入先出法か既に 一 部の産業では会計慣行と し て行われていたからである。. 上院財政委員会に おける Conover の証言 1938年 3 月 19 日 , 上院財政 委 員会 で Conover, J. D. が ア メ リ カ 鉱 業 会 議 (The American Mining Congress) を代表 し て証言する凡 Conover は ア メ リ カ 鉱業会議の主. 事である。 1936 年に ル ー ズ ベ ル ト は新 し い税と し て留保利益税を導入 し た。 留保利益税は配当する. ことなく企業に留保 し た利益に課税するというものであ っ たか, 価格上昇による評価益に もおよんだ。 そのため原材料の仕入れから製品の販売にいたる期間か長い業種によ っ ては, 未実現利益の課税負担が重くな っ たのである。 このような事態を 目 の当たりに し て, 上院 の財政委員会で Conover は鉱業界の支援を受け, 留保利益税の廃止と後入先出法の容認 を主張 し たのである。 財 政 委 員会で, Conover は 議 長 に 対 し 歳入法案の修正を求 める書 簡 を提出 し た。 Conover は書簡の全文を記録と し て残 し てほ し い 旨を申 し 入れた。 そこで, 議長は議事記. (6). United States Congressional Record (1938), March 19. -204. ( 608) 一.
(15) 後入先出法の 審議過程 (毛利) 録係へ書簡を手渡すことを指示した。 こうし て 財政委員会での Conover の 証言 が は じ ま った の である。 Conover に よ る発 言 の 骨子 は 次 のとお り である。 (1). 留 保利益税 の 完全な排除とそれに 代 え て均一の法人所得税とする。. (2). 留 保利益税が適用される年度につ い て, 企業の 窮状を救済するた め の 措置をする。. (3). 当 年度 の利益からの 控除とし て , 少なくとも 2 年間 の損失繰越規定を設 ける。. (4). キ ャ ピ タ ル . ゲ イ ン お よ びロ ス に対 する現在 の 複雑な規定を廃止し て , 12% の 均一 税率を復活する。. (5). 資 本税 お よ び超過利潤税につ い て税 率 の 引 き下 げを求 める。. (6). 設備の 老朽化に よ る除却損や売却損を所得控除として 認める。. (7). 棚卸資産を扱う規定 の 中で, 鉱 山 や 冶金産業で は , 現在の仕入れに対し現在の売上. を対応させるという会計慣行を認めるべきである。 それ は 後入先出法として 知られる 方法の承認に よ る。 以上が Conover の 主張である。 ( 1 ) は , 留 保利益税 の 廃止を求 め て い る。 そのことが経 営を刺激し, 課税 ペ ー ス を増 すことに よ っ て , 政府 は こ の 税 の 廃 止から歳入 の 減少を相殺. ( ) は, 留 保利 する以上に, 歳入を得ることができると Conover は 確信するからである。 2 益税 の 下で苦境に陥った会社に対し, 実質的軽減を認め る。 Conover は 留 保利益税に よ っ て苦し い 企業の実情を述べ て , 税負担 の 軽減措置 の 必要性を訴 え た の である。 (3) は, 鉱 山 業にとくに重要である。 Conover が い う よ うに, 損失繰越制 度 は 1 933 年 の歳入法から廃 止され て い たが, 復活を望む声 は産業界からとくに強かったの である。 (4), (5), (6) は, 税 制 の緩和を求 めたものである。 ( l ) から (6) ま での Conover の 主張に は 共 通 の も の がある。 ア メ リ カ 鉱業会議を代表し て議会で証言し て い る の であるから, こ の産業に対する税制 の 緩和を求 め た の は 当 然 の こ とである。 しかし, Conover の 本 当 の ねら い は 企業にお け る 内 部 資金 の 留 保にあった。 内 部 資金 の 留 保を 促 進 さ せ ることが, 企 業 活 動 の 発 展 に 結 びつくと 考 え た。 そ の た め に. Conover は租税措置 の変更を せ ま ったの である。 留 保利益税 の 廃止を求め る意見 はそ の 典 型である。 後入先出法 は こ の よ う な 企業 の 状 況を抜きにし て は 理解しがた い の である。. Conover は, そう し た考 え を ふ ま え た上で, (7) で 後入先出法に言及した の である。 こ の ことから, Conover によ る後人先出法 の 主 張 は 企業にお け る 内 部 資金 の 留 保を高 めるため であったこと は 想像に難くな い 。 結論とし て , Conover は 税 制 改 正 へ の 運 動が企業活動を 奮 い 立た せ , 製造業にとっ て投資を活発にし て , 雇用を創出し, 政府に対 する歳人を増 す と確信する, と言った。 議会での 証言で, Conover は 後入先出法につ い て ごく簡単にふれ. -205. ( 609 )一.
(16) 第48巻第3号. るにとど ま った。1 938 年 3 月 1 9日, 証言に先立ち Conover は書簡を議会に提出しており, 公聴会における意見はその骨子である。. 上院財政委員会における Callahan の証言 1 938 年 3 月 1 9 日, 上院財政委員会で Callahan, D. A. が証言する呪 Callahan は ア メ. リ カ 鉱業会議の代表である。 1 938年の歳入法案に関する Callahan の ス テ ー ト メ ン ト は. 1 938年 3 月 1 9 日に上院の財政委員会の公聴会に提出されたものである。 Callahan. は証言. にあたり. この書簡を読み上 げることはしないが. その内容を伝えたい旨を議長に申し出 た。 議長は許可した。 Callahan が上院の財政委員会に提出した書簡は概ね 以下のような内容である。. この法案は. 納税義務者の所得を計算するにあたり. 棚卸の基礎を規定する権限を歳入 局長官に与える。 この法案の中で. 財務省は. 金属の製錬. 精製, 製造に従事する業者に 売上原価の決定に際し現在の売上に現在の原価を適用するのを認めていない。 ア メ リ カ 鉱 業会議は. 後 入先出法を業界に許可するように. この一節が改正されるべきことを主張す る。 この方法は. 株 主への報告, 配当の支 払いそしてあらゆる会社の目的のために最良の 会計として認められている。 会計の専門家. 証券取引委員会 (SEC ) , そして財務省は課税 所得計算への後入先出法の適用を承認した。 製錬業者や精錬業者は. 金属の価格変動を見越して供給できないことを経験から学んで いる。 f員失の リ ス ク はあ ま りに大き く , 加工期間はあ ま りに長い。 金属は, 急激な価格変 動を受けやすい。 精錬された金属の価格の大部分は, 粗鋼の原価である。 金属精錬業者に とってヘ ッ ジングのための先物市場はない。 金属産業におけるこのような状況にもかかわらず, 企業活動に適した現在の売上に現在 の購入の原価を対応する方法は認められていない。 しかし, 売上原価を決定するのに先 入 先出法を適用することを義務 づけている。 この後者の ル ー ルは. 先に購入された原材料が 先に払い出されることを仮定している。 従って, 後に仕入れたものは後に払い出されるの である。 この ル ー ルは, 製錬や精錬業に適用できない。 というのは, 効率的に活動するために, 製錬や精錬業者は, 手許に ス ト ッ ク 量を維持しなくてはならない。 先 入先出の ル ー ルは, 棚卸資産の流れを逆にしている。 現在の仕入れに対し現在の売上を対応する方法こそか生 産者や加工業者の双方にとって望 ま し い結果をもたらすのである。 以上は, Callahan が (7). United States Congressional Record ( 1 938), March 1 9. -206. ( 6 1 0 )一.
(17) 後入先出法の審議過程 (毛利) 上 院の財政委員会に提出 し た ス テ ー ト メ ン ト の骨子である。 Callahan はこの ス テ ー ト メ ン ト に基 づいて, 次のように発言 し た。 先の Peloubet 氏 やGlass 氏の証言は同 一の原則に立つ 発言であ り , ア メ リ カ 会計士協会の書簡も根本は同 じ ものと理解 し ている。 長年の間 棚卸資産の基礎を確定するのに現在の法律が支配 し てお り , 財務省はかた < なであ っ た。 2 年前, われわれは改正を求めて財務省と接触するよう指示されたにもかか わらず, 何もなされなか っ た。 このように述べた上で, Callahan は精錬業の性格に言及 するのである。 大 多 数の会社は精錬業者と契約で取引 をする。 精錬業者は鉱石を手に し , 鉱石の成分を確かめる。 そ し て, 同 じ 市場で仕人れたものを販売する。 も し 鉱石を貯蔵 し , 市場にあ ち こ ち 参入すれ ば, 極端な リ ス ク に見舞われることを業者は発見 し た。 数年は利 益を得ても, ある年度には損失が大きい。 Callahan は精錬業者のヘ ッ ジ ン グはそれぞれ の取引 先とのあい だで行うことを指摘するのである。 そこで, 上 院議員 Connally, 議長, および Callahan とのあい だに意見の や り と り がある。 Connally は Callahan の見解を 質 し ている。 要するに, Callahan が言うのはヘ ッ ジ ン グのことではないかということである。 つま り , き ょ う, 鉱 石を手に入れて, それに見 合う総額を販売するのと同 じ 操 作 だからである。 Connally はそれで, 採算がとれるか, と問う。 これに対 し て, Callahan はそのとお り である, と 答 え ている。 また, 議長は, 法の下で財務省はこのような状況を改める権限がある, と言 っ ている。 議長に対 し て , Callahan は承知 し ていると言 っ た。 そこで精錬業者は リ ス ク を回避するために特有の会計方法によら ざるをえ ない。ここで, 上院議員の Lonergan が質問する。 Lonergan は, 自らが コ ネ チ カ ッ ト 州出身である 旨 を述ぺ,そこにはたくさんの真鍮製造工場かあると言 っ た。 そのような実状を知 っ た上で, Lonergan は製造業者のおかれた窮状を訴え たのである。 製造業者が銅を手に入れるのに 1 ポ ン ド あた り 10 セ ン ト 支払い, 市場で受け渡 し の約定をする前に 1 ポ ン ド あた り 15セ ン ト に 価格が上昇 し たと仮定されたい。 そ し て 1 ポ ン ド あた り 8 セ ン ト で販売されると し よ う。 い っ たい どうすれ ばいいのか, と Lonergan はいうのである。 これに対 し て, Callahan はあらま し 次のように答え ている。 精錬業者がすることは企 業の仕 入と販売部 門 の 強調である。 彼らは, 仕人れの量を計画する。 そこで売 り 手は, 特 定 日 の価格を決める。 そのことによ っ て, 自 由市場を維持することができる のである。 彼 らは仕 人れに対 し 売上を均衡さ せ るc 鉱石を手に入れ, 貯蔵 し て, 仕入れの順序で販売す る方法によると, 価格変動による投機を意味 し , 異常な損失あるいは利得を生 じ るのであ -207. ( 611 ) 一.
(18) 第48巻第 3 号. る。 このよう に Callahan は述べた。 最 後 に , 上院議員 Lonergan と Callahan との意 見のやりとりがある。 Lonergan. 財務省はその時々 に 損失を企業 に 負わそうとするのか。 Callahan. いいえ, 財務省が従う ル ー ルは, 先入先出法です。 あなたは棚卸の順序を逆 に さかのばらな く てはなりません。 その 日 に 払い出されなか っ た棚卸資産は旧いものです。. 上院財政委員会における Glass の証言 1938年3月21 日 , 上院財政委員会で Glass が皮革業 に 与する立場から証言する181 0 Glass は ア メ リ カ 皮革業協議会 (Tanner's Council of America) の経済学者と し て. 現行 の歳入法そ し て提案される歳入法 に関心をも っ ている。 根本問題は. 課税所得の決定 に対 する現行の規則の不公平性 にあ っ た。 証言の内容はこの点 に 注意を払 っ ている。 Glass は皮革業の性格に ついてあらま し 次のよう に 証言する。 所得 に 対 し て税金を支払 うこと に ついては. なんら文句はない。 し か し . 皮革業は, 未実現利益である「帳簿利益」 に も税を支払うことが求められている。 その理由 は二つある。. 一. つは皮革業 に 固有の特長. であり. 加工する期間が極端 に 長いことである。 皮革を製造するの に 数か月かかる。 場合 に よ っ ては. 加工の過程から完成品に なるまで 8 か月から 9 か月間も要する。 それはほか の多くの製造業と異なる点である。 その二は. 皮革業は原材料の継続的な在庫を要 し . 加 工する際 に 原材料を必要とする産業であることである。 皮革産業は棚卸資産な し に存続で きないのである。 皮革産業 に と っ て, 棚卸資産は. 設備. 建物のような固定資産 に 似てい るかも し れない。 皮革業では. 維持される棚卸資産が全資産の60 %から7 0 % に 及 ぶ事実か ら し ても, その重要性を察することができる。 以上の Glass の指摘は, 前述の非鉄金属 産業 に 対する Peloubet の証言と共通 し ているところがある。 さら に Glass は証言を続ける。 不公平な状況を生み出すもう 一つの要因は. 課税所得 の決定 に対する. 内 国歳人局の現在の規則である。 これらの規則は多くの製造業 にと っ て は適切であるか, 皮革業のよう に 棚卸資産が重要な役割を果たす産業では, 不適当である。 課税所得を決定する に あた っ て, 現在の規則は適正でなく. 皮革業の姿をゆ かめている。 Glass は. このことを例を示 し て説明する。 皮革業者が営業を開始 し . 棚卸資産の皮革 が 1 ド ルで評価されると し よう。 彼は最低限必要な量の棚卸資産な し に は営業できない。 必要な数量が不足すると. それ に等 し い量を再調達 し なければ. 彼は営業をやめざるをえ ない。 それは. 加工期間の中断を意味 し , 皮革業者 に は販売する皮革がない。 結果と し て. (8) United States Congressional Record ( 1 938), March 2 1 . -208 ( 612 ) 一.
(19) 後入先出法の審議過程 (毛利) 彼は最低量の棚卸資産 を 維持せ ざ る を 得ない。 さら に 設 例 を 広 げる。 年度中 に , 皮 革の価格が上がったとしよう。 年度末 に . 皮革業者 は. 年度始めの 1 ド ルの代わり に ,. 2 ド ルの皮革となる。 内 国歳入法の規定 に よれば. 皮. 革業者は. 課税所得の 中 に . 1 ド ルの架空の帳簿利益 を 含ま ざ る を 得ない。 皮革業者 に とっ てそれは未実現利益である。 これは1935年お よ び 1936 年 に 実際 に 起こった ケ ー ス であった。 根簿利益の大部分は処 分できず. 税の支払いもできない。 そうした利益は市場価格が下落する時,. i肖 失するであ. ろ う。 1937年 に それが起こった。 前年の帳簿利益は, そのとき生 じ た棚卸資産損失 に よっ て相殺された。 皮革業では, 適正な利益を決定する唯 一の基準は. 現在の売 上 に 対し. 最 終の原価あるいは取替原価を 適用することである。 皮革業者は, いつも市場取 引 が中心であり, 市場で皮革 を 販売し.. 日 々 , 購入する。 も. し皮革の断片が20セ ン ト で売れるならば. それ に 見合う価格で生皮 を仕入れなくてはなら ない。 彼らが得たいのは取替価格 を 回収した 後の利益である。 取 替価格は, 皮 革業者の最 近の原価あるいは取替原価 を 示す。 これは. 実現利益あるいは実現可能な利益の唯一の測 定である。 Glass はこのよう に 述 ぺて, 証 言 を 締めくくった。 ここ に 明らかなよう に , Glass に は 後入先出法は原価主 義でなく, 時価主義あるいは実体資本維持であるとの 考 え 方が あったのである。 後人先出法 に 対するこうした考 え は. その 後, 論者のなか に 少なからず ある。 Glass の証言の後 上院議員の Connally とのあい だ に 次のような 意見のやりとりがあ る。 上院議員の Connally の. このことは施行規則の改正 に よって修正できないかとの問 い に 対し , Glass はできる, と答え ている。 また. 施行規則の改正のため に 考慮すべき問 題は財務長官と合意すべきである. と委員会か勧告したという。 さら に . 部 局のさま ざま の眠員 に イ ン タ ビ ュ. ー. した結果. 修 正 案 に 対して積極的な反対はなかったと述べている。. 上院 に お け る 質疑 1 938年 4 月 8 日 , 上院では上院財政委員会か提出した 後人先出法の 修 正 案 を め ぐ る質疑 かあっ だ悶 上院財政委 員長 は Harrison, S. P. である。 以下で は , 上院での質疑の模様 を 示すこと に しよう。 上院財政委 員会か提出した 後人先出法の 修正 案は次のような 文言であ った。 「1938年, 1 2月 3 1 日 以 降の課税年度 中 に 販売された財の原価 は , そ の 方法かよき会計 (9). United States Congressional Record ( 1 938). April 8. - - 209. (6 1 3 ).
(20) 第48巻第 3 号. 慣行 に 一 致するな ら ば, 後入先出法で計算することができる。 また納税義務者の根簿ある いは記録の中で継続的 に 適用できる。 そうした方法の変更は, 財務長官の承認を得て, 歳 入局長官が税の回避を防止するのに 必要であるとの規則 に 則 っ てなされた場合 に 認め ら れ る。 前述の規定で, 納税義務者がそうした方法へ変更するのが認め ら れる場合 に は, 当該 年度またその後の課税年度 に 続けてその方法を適用するものとする。 その後の課税年度 に そうした方法の変更は認め ら れない。」 この 文言はそれぞれの企業が望めば, 後入先出法への変更が可能なことを示唆して いた。 しかし, 上院議員の Lonergan は修正案の Section22 (c) が後入先出法を適用できる企 業を限定していること に 気づいていたのである。 Lonergan は次のように 発言する。 歳入 法の Section22 (c) の制定 にあたり, 棚卸資産の場合, 健全な会計慣行 に 従 っ て計算され る納税義務者の所得を得るのが議会の目的である。 もちろん, それは産業 に よ っ て異なり ます。 こうして非鉄金属, 皮革産業のような産業では, 後入先出法が最も正しく所得を反 映するものとして, 会計当局 に よ っ て認め ら れる。 それは株主への報告,. ニ. ュ. ー. ヨ. ー. ク証. 券取引所 (New York Stock Exchange: NYSE), 配当の支払い, そして SEC に 提出す る報告書 に用い ら れる。 しかし, これを課税目的 に 適用する に こと に は疑問 かある。 修正 はその疑いを取り除くため に企て ら れた。 Lonergan はこのよう に 述べた上で, 修正案 に 疑問を提起する。 修 正案は, 最良の会計実務 に 従 っ て帳簿を記録する納税義務者 に 対して, さ ら に その方法が最もよく適 合する企業の納税義務者 に 後人先出法の使用を制限してい る。 後入先出法への変更は財務省が規定する規則 に 従う と き に のみ行うことができる。 修 正案では, 1939年 1 月 1 日以前 に はできない。 Lonergan は後入先出法の適用を特定の企 業 に 制限したこと に ついて, 税収の減少を懸念する財務省の意向がはた ら いたのではない かと疑 っ たのである。 Lonergan はこのような考え に 対して反論する。 棚卸資産のこうし た方法は, 歳入 に 影響しないことは明 ら かである。 一期間中, 納税義務者の所得金額は実 質的 に同 じ である。 しかし, 課税目的のため に 現在認め ら れる会計方法は, 数年間に わ た っ てその所得の分配を歪めること に なる。 ある年度の利益を大きくし, 他の年度の損失を大 きくして, 企業活動と食い違うこと に なる。 この修 正案では, 歳入の額を減 ら すことなく, 歳入を均 衡させること に なる。 Lonergan に 続いて,. コ ロ. ラ ド 州選出の Johnson, S.E. が発言する。 それは Section22. (c ) の 委 員会の修正案 に 関するものであり, Lonergan の発言への補足である。 その内容. はおおよそ次のようである。 第 一 に , どんな産業も課税所得を計算するの に , 最良の会計 方法を適用するのか認め ら れるべきである。 第二 に , -210. ( 614 ) 一. 一. つの産 業は, 課税所得の計算, 株.
(21) 後入先出法の 審議過程 (毛利) 主への報告, SEC への報告, 配 当方針の決定またその他すぺての 目 的に対し, 同 一 の会計 方法を用いるのが認められるべきである。 第三に, 修正案は歳入不足を生 じ ないであ ろ う 。. Johnson は三つの要点をあげて, 最良の会計方法の適用は長期的にみれば歳入の増加につ ながる, と言 っ た。 修正案は 後入先出法の適用を限定しているので, 反対意見はないもの と確信したのである。 長い間, 財務省のなかには修正案では歳入不 足をきたすとする根強い反対意見があ っ た。 しかし こ う した反対意見も, もはや 修 正案を否決する ほ どの力にはなりえ なか っ た。 委員 会は財務省の不遜な態度に嫌気がさしたのである。 財務省の考えに反論し, Johnson は概 ね 次のよ う に言 う 。 過去 3年にわたる会議の 後, 財務省は, 私た ち に修正案が歳入の不足 を 引 き起 こ すであ ろ う と ア ド バ イ ス する。 財務省の一 部にある こ う した主張は, 修正案を 信用させまいとするだけでなく, 歳入不 足に関する財務省の主張が全く馬鹿 げている こ と は誰の 目 にも明らかである。 合衆国の財務省 に より公表される統計によると, 1 934年度に 後入先出法を適用する会社の課税所得の総額は280,000,000 ド ル以上 に な らない こ と, 総 課税所得に対して支払われる納税額は40,000,000 ド ル以上にならない こ とを示している。 同 じ 業種の会社は, 1 934 年度に278,000,000 ド ルの欠損があ っ た。 こ れらの数値は,. 後入. 先出法を適用する資格のない 多くの納税義務者が含まれているから, 大きす ぎる。 確かに それらは, 最大限の所得と課税を示している。 たとえ , 不足の事態か生 じ て ,. 後入先出法. へ の 変 更 に より棚卸資産からの課税所得が減少するとしても, 歳人への影響は40,000,000 ド ルの う ち のわ ずかな割合です む。 後入先出法は, もし価格下落の年度 に 選択されたなら は , その年度 に 大きな課税を生 じ るであ ろ う 。 それ に よ っ て, 税は実現利益 に 課されるで あ ろ う 。 先入先出法を選択した場合 に 比 べれは, より安定した歳人かある。 しかし, 年度 を こ え れ ば課税所得は実質的 に 同 じ に な るだ ろ う 。 Johnson は歳入の点から財務省の考え が問題 に なら な い こ とを論証した。 さら に , Johnson はすべての企業の数値 が利用できる わ けではないと断 っ た上で, 銅 . 真鍮製品製造業を事例 に あ げて財務省に反論する。 以下は, その要 旨である。 銅や真鍮を 製造する産業 , 改正の要求 に 適する産業 に と っ て数値は, 1 930年 1 月 1 日 から 1937年 1 2 月 31 日 の期間 に お ける後入先 出 法での産業の所得は , }員 失を差し 引くと, 8,000,000 ド ル に な るであ ろ う こ とを示しているc 先人先出法て は, 8 年間で8,500,000 ド ルの純損失か示 されたであ ろ う c 1 930年, 193 1 年そ し て 1 932年度 に 大き な 損失か も た ら された e 全 企 業 に とり, 後 人 先 出法の下での課税は, 先人先出法より年度当たり ほ は60,000 ド ル 少 な か っ た。 こ れは 1 930 -2 1 1. ( 6 15) 一.
(22) 第48巻第 3 号. 年, 1931年, 1932年度における棚卸資産の50,000,000 ド ルの価値下落を考慮すると先入 先出法による課税とほぼ近似する。 しかし, 1937年の価格下落の期間に, 課税所得は, 先 入先出法より後入先出法の方がより大きく, 1,500,000 ド ルであ っ た。 この年度に, 納税義 務者は, 追加的な1,500,000 ド ルの税を含むにもかかわらず, 後入先出法を選択している。 それ故に, 納税義務者は, 1938年に後入先出法へ変更しても便益をう け ないであろう。 1937年 1 月 1 日時点での変更は, 歳入を維持し, 価格変動にお ける高くも低くもない出発 点を保証する最良の方法かもしれない。 企業は, 出発点としてこの日を喜んで受 け入れる であろう。 Johnson はこのように述べて, 財務省の租税政策が企業活動と調和すべきこと を説いた。 この時期にはもはや均衡財政主義は崩れていた。 長期的に財政は均衡すればよ か っ たのである。 最後に, Johnson は修正案に後入先出法を導入すべき根拠を述べている。 その発言の要 旨は以下のとおりである。 納税義務者は, なぜ, 結果的に課税上有利でない方法の適用を 求めるのであろうか ?. なぜかといえば, 彼らは, 未実現利益に対して税を支払いたくな. いからである。 市場価格が上昇することによる利益や税の支払いを予想するのは, 納税義 務者にと っ て耐え難い負担である。 納税義務者が支払い能力があるのに, 市場価格が下落 したからとい っ て課税を減らすのは決してよいこととはいえない。 逆に, 後人先出法を認 めず先入先出法を選択した企業では, 価格上昇の期間に課税負担は大きくなる。 価格が下 落する時期には, 課税は小さいか, なくなる。 かくて, それは課税制度の不安定性を助長 し, 納税義務者の支払能力を減らすことになる。 後人先出法の選択は, 安定した効率的な 課税制度を打ち立てるのに役立つ。 それは確実な歳入と信頼性ある予想ができ, 長期的に は, 経済の繁栄と納税義務者の支払い能力を通 じて付加税による歳入を確保する手段とな る。 以上が Johnson の発言の内容である。 1938年, 多くの議論の末に, 1938年歳入法は 一 部の企業にではあるか, 後入先出法を 認めたのである。 このことは ア メ リ カ の税制にと っ て大きなでき ごとであ っ た。 それは単 に産業界の要望が受 け 入れられたからではない。 財務省, 議会, それに産業界がそれ ぞれ の利害を考慮しつつ, 議会で議論を戦わせながらその結果として成立したからである。 そ の結 果 1939年に後入先出法はすぺての産薬に認められることとな っ た。. IV.. 後 入 先 出 法 の 審議 と 書筋. 1938年 3 月 18 日 , 上院財政委員会にお けるPeloubetの証言につ いてはすでに述ぺた -212. ( 616 ) -�.
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