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「小学生のための絵画鑑賞教室」報告書

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(1)文学・芸指・文化. 1 8 巻 1号. 2 0 0 6 .7. 研究ノート. 「小学生のための絵画鑑賞教室j報告書 井面信行. 芸術学科造形芸術専攻・芸術学コースでは、 3年生のゼミナール授業の. 1月 一環として「小学生のための絵画鑑賞教室」を企画し、平成立年の 1 と1 2月の 2固にわたって、近畿大学附属小学校の児童を対象に、この企 画を実行した。以下は、その経過と実践の報告である. O. 1.主旨 本企画は、近畿大学附属小学校の協力を得て、「芸術学ゼミナ-)I.--Jの授 業の一環として立案したものである O その主旨は、以下の二点に要約できる。. 1)大学と小学校との連携、協力によって小学生に絵画鑑賞の機会を提 鑑賞学j とそれを通した小学生の芸術理解とを促進 供し、もって f すること O. r. 2) 鑑賞教室j を大学教育におけるスクー jレインターンシップとして. 位置づけ、それを実践すること. O. 現在、一般に、大学における芸能理論に関する授業(美学、芸術学、美 錨史学等〉においては、教員の講義、学生の卒業論文研究ともに、芸能に 関する捧系的歴史的研究が中 Jむでるり、芸術の享受者を前提とした「鑑賞 学J(末尾に掲載の. r 鑑費学j 序説i参照)の視点、が希薄になっている。. 芸能の理論研究を空虚な観念に終わらせないために、小学生児童を対象と した「絵画鑑費教室j を組織的に実践することは、芸術と社会とを結びつ -99-.

(2) f 小学生のための絵画鑑賞教室」報告書井面. ける「アート・マネジメント」の観点、からも、芸術普及を効果的に作用さ せ、もって小学生に芸街鑑賞の楽しみや意義を理解してもらうひとつの可 語性を開くものであると考えられる。 また、この実践においては、大学教員および学生と小学校教員との連携、 協力が不可欠であるがゆえに、この協力枠制を通して、学生(および教 員)は社会とのつながりの中で自己反省をする好機を得ることに立ると思 われる O 言い換えれば、この実践は、教育実習とは異なった意味において、 すなわち学生と社会とを結びつける「スクール・インターンシップj の面 において、学生に有益な体験を与えるものと期待されるのでるる. O. 2 . 企冨と準備 「小学生のための絵画鑑費教室J (以下、[鑑堂教室j と略す)の企画に先 立って、まずその理論的基礎討けとして、. r鑑賞学j 序 説j (末尾に掲載). を提示した。近畿大学前属小学校(木票晴夫校長)に本全画を提案する際、 この小論を示し、理解と協力を得ることができた。すなわち、そこで示し た「見ること j、「読むことよ「書くこと j一一この三つの行為を軸にして. f 鑑費教室j の企画と準備が進められた。. r. 1) 鑑賞教室」の組み立て. 「鑑費教室J,ま近畿大学附麗小学校の積極的な協力を得て、 3年生の ゼミナール授業において以下のように全面された。. 1.対象学年: 3年生と 4年生(各学年それぞれ 1回、計 2回行う) 2.対象見童の人数: 1学年全体 ( 1 0 0 名前後) 3.開催場所:近畿大学 Eキャンパス A館 301教室〈プロジェクタ一、 スクリーン、培幕の設重された教室). 4.鑑賞する絵画の選定 -100-.

(3) 文学・芸構・文化. 1 8 巻 1号. 2 0 0 6 .7. 3年生ーピカソ〈ゲルニカ〉 4年生-(伴大納言絵詞〉 ・ゼミナーんにおいて選定し、小学校健の意見を開いた後、最終的 に決定された。 -選定理由 〈ゲルニカ):現代美術を代表する画家としてまずピカソが選ばれ、 その代表作として選定された。戦争をテーマとした 重い意味を含んだ作品であるが、 3年生は、国語の 授業ですでに第二次世界大戦をテーマとした作品. ) を勉 (あまんきみこ作「ちーちゃんのかげおくり J 強しており、戦争に関する知識を持っていることも 勘案された結果である。. 2 世 〈伴大納言絵巻}:日本美術から作品選定をする前提に立ち、 1 起に人類が産み出した最も優れた絵画のひとつとい う意味で選定した。物語は難解な面を含んでいるが、 [平安時代のミステリ. J として劇画風に解釈でき. る可龍性が魅力的であった。. 5 .I 鑑堂教室 j の進め方 。資料の準婿 ①ワークシート、その他資料の作成 ②画像資料の作成(パワーポイントの費用) ③進行手1匿の構成. -この三つの課題は有機的につながっているが、軸は「ワーク 見ることよ f 読むことよ シート」である。「ワークシート」は、 f 「書くこと」に沿って、鑑賞者が質問に答える(記述する〉形式 で構成される O 例えば、「見ること jでは、「画面に描かれている ものをできるだけたくさん書き出してくださ Lリというように、. -101-.

(4) 「小学生のための絵画鑑賞教室 j 報告書. 井面. 絵を凝視する集中力を捉すことを目標とする o I 読むこと j では、 具体的な文献資料を掲げたり、絵を「読む」方法を導いたりする。 さらに、「書くこと」で誌、感じたこと考えたことを文章に綴る ことを目標とする。具体的内容の詳細は、小学校の劫言を得なが ら、ゼ、ミナーんで検討、作成する。「ワークシー刊誌、後に揚げ. 0 留の設問からなり、顕を追うにつれて鑑賞行為が るように、 1 進展するように構成されている。 ・パワーポイントによる画像資料は、「ワークシート jの設関に. 5 枚のスライドから構成された。スライドの全体的な 対応する 3 流れは、おおよそ以下の通りである。 ピカソの紹介コピカソの初期作品・代表作コ〈ゲルニカ〉コス ) ペイン地留とゲルニカの位置=今廃壇となったゲルニカの町二学パ 1. 万博でのくゲルニカ〉展示風景コ〈ゲルニカ〉コ〈ゲルニカ〉の 習作コ完成作に至る 7つの段指二今「死んだ赤ちゃんを抱いて泣く お母さん」のクロースアップコ. f 牛j の変化コ「たおれた兵士j. の変化二今 f 馬 j の変化コ「炎に包まれた女'註j コ〈ゲルニカ〉 -進行法、すべてるらかじめ詳絹に記述した「台本j に沿って行 う。臨機応変の対応、が必要とされる場面が生じることは必然であ るが、進行が滞らないよう、「台本j は不可欠である。. o 進行 ①進行はすべて学生が行う。 ②以下のような「係り j を決め、円滑な進行に努める. O. -司会: 2名、前半と後半で交代 -パソコン操作:パワーポイントによる画像資料の投影を操作 イ絵画博士J:絵の情報の告知、児童の雲間への返答など、進行 全体を和ます潤滑油的存在 -会場係り:マイクをもって見童の意見を聞く -102-.

(5) 1 8 巻 1号. 文学・芸街・文化. 2 0 0 6 .7. .;tワイトボード:見童の意克をホワイトボードに書き出す .タイムキーパー:司会者に時間の消費量を伝達する -電灯操作:会場の電灯操作 金予行演習を行う. O. ただし、正規のゼ、ミの時間だけでは不足であち、. 時間外に参加可能者だけでも行う必要がある。(実際には、〈ゲル ニカ〉については 3[0行うことができた). O 事後. C Dr ワークシート j を回収し、ゼミナールにおいて内容分析をする. O. ②分析結果をまとめ、さらに「鑑賞教室j 全体を反省し、総括的な 報告書を作成して、小学校に報告する. O. また、「ワークシート」. はコメントをつけて克童に返却する O. 3 . 実践の報告 上述のような企画と準儲に基づき、近畿大学附属小学校の克童を対象に して「鑑賞教室j が開擢された。 3年生と 4年生を対象に都合 2回行われ たが、ここでは 3年生を対象に実行された「鑑賞教室」についてのみ報告 をすることにする。. 7 年1 1月258 ( 金 〉 開鎧日時:平成 1. 午後 1持30分 ~2時30分. 開催場所:近畿大学 Eキャンパス A館 3 0 1教室 参加者. :近畿大学附属小学校 3年克童 99名{その他、小学校教員、保 数名) 護者、関係者、計20. 1) 実践の経過 「鑑賞教室j 誌、スライドによって画復を提示しつつ、「ワークシ-. U. にしたがって見童に質問をし、それに対して見童が口頭で答え、ま 4Eム. AU. qG.

(6) 「小学生のため の絵匝j ' 鑑1 1教室j脅i , 作' rJ ¥ " . r ( I 1. た 「ワーク シート 」 に記述するかたちで進めら れた。以ドに「ワーク シート 」の質問内容とそ れに対応する p ! f j 像を 脳級する(ただし、ここで i l l j悔は必要対小限 にとどめた) はl 聞い 1 この絵を見て 、どんな印象を受 けますか。 自分が感じるものを O でかこんでください 。いくつかこ んでもかまいません 。 明るい暗い楽しそう 悲しそう. こわいにぎやか静かさみしいきたない. ごちゃごちゃしている. わくわくする. 。 そのほかに感じることがあれば、 自由に書いてくださし、 。 聞い 2 この絵には、どのようなできことが捕かれていると思いますか。 自由に想像し て書いてください 。 聞い 3 この絵にはなにが箔かれていますか。できるだけたくさん書いてください。 また 、描かれているものはどんなようすでしょうか、どんな表情をしているで しょうか。 ※. 次に、 {ゲルニカ }完成までの順を追った、第 1段階から完成作までの. 7枚のスライドを提示。 関い 4 「死んだ赤ちゃんを抱いて泣くお母さん Jのかたちは、 どこがおかしいでしょう 。. -104一.

(7) ∞. 文学 -i E制 r :・文化. 1 8巻 lU - 2 6. 7. 聞い 5 〈牛 〉は 、 1番目と完成作で、どのように変わ ったでしょう 。. 完成作. 1番目. 聞い 6 くたおれた兵士 〉は 1番目と 3番目で 、どのように変わったでしょう 。. 璽題 3番目. 1番目 聞い 7 〈たおれた兵士 〉は 3番目と完成作で、どのように変わったでしょう 。. 3番目. 完成作. u. 唱EA. F. nHV. 、.

(8) 「 小学生 のため の絵 l u l j鑑賞数本」報行, 1 : = ) 1: I f r i. 聞い 8 〈馬 〉は 、 1番目と完成作でどのように変わったでしょう 。. 1番目. 完成作. 聞い 9 〈ゲルニカ 〉についての質問や感想を、自由に書いてください。. 聞い 10 今日の「給函鑑賞教室」をみなさんで採点してくださし、 。 5点満点で何点 ですか。点数のところに Oをつけてください 。. 1楽しくなか った. 4楽しかった. 2あまり楽しくなかった 5とても楽しかった. 3ふつう. 良かった点は、どのようなところでしたか。 悪かった点は、どのようなところでしたか。. 2) 間いのねらいと回答 。問い lー絵に閲する知識をまったく持たない状態で、 児童が 〈ゲル 直感的に何を感じ取るかを答えさせるもので ニカ 〉の第一印象として l ある 。 したがって、この見方は「直感的 Jであると同時に. f l 直観的 J. な見方でもある 。あらかじめ提示した各選択H 支に対する問答数は次の 通りであった 。. -106-.

(9) 1 8 巻 I号. 文学・芸街・文化. 明るい:. 2 0 0 6 .7. 4. 暗い:. 74. 楽しそう:. 1 6. 悲しそう:. 3 1. こわい:. 42. にぎやか:. 30. 静か:. 3 1. さみしい:. 3 1. きたない:. 4. ごちゃごちゃ: 4 0 わくわくする: 1 6 -その色、自由な感想、として次のようなものがあった。 おもしろい 驚いた. び、っくりしている 不気味. 地獄の窟のよう. 伺を描いているのか分からない 不思、議. 選択肢では同部リを選んだ克童が圧罷的に多い。これは全体の色 調に原因があると推測される。進行係は、最初のほうで、このスライ ドはモノクロではなくカラーであることをすでに伝えている O 雰囲気 の把握としては「悲しそう Jr こわ pJrさみし Lリが多いが、「にぎや. rごちゃごちゃしている j もかなりの数あり、全体としてこの絵で かJ は荷のモチーフがどのように描かれているのかを直感的に把謹しにく いことを示唆していると考えられる。それを端的に示すのが「何を描 いているのか分からな Lリという自由な感想である O. 門. i. マEA. AV.

(10) 「小学生のための絵画鑑童教室j 報 告 書 井 面. 。聞い②-この間い誌、直感的印象ではなく、もう少し絵を見つめる ことを要求した上で、異体的な出来事として需が描かれているかを回 答させるものである。すなわち、. f 見る J行為を一段深めた段階での. 把握内容を問うものである。 回答として誌、概ね「人々が苦しみ、悲しんで、いるようす」という 意味のものがもっとも多かった。しかし、動物に着目した回答も多く、 動物が. f あばれている Jr 家の中に入ってきてむちゃくちゃにしてい. iおばけ j がいるという るj、などの回答もあった。また、「ゅうれい J 意見も少なからずあった。すでに〈ゲルニカ〉の知識を持っている児 童であろうか、「戦争や悲しいことがおこったあとで、みんなが悲し んでいるところ j と答えた児童もいた。. 。聞い 3 この間いは、さらに眼を鍛視的に用い、短期のモチーフと して画面に何が搭かれているかをできるだけ詳しく見ることを要求す. r 牛J r 今にも死にそうな入j るものである。具体的回答としては、「馬 J. r r. 「死んだ赤ちゃんを抱いているお母さん J電球J ナイフをもってたお れている入Iさけんでいる入Jなど、克童はほぼすべてのモチーフを 指摘してくれた。「おばけ J(おそらく中央の窓から腕を伸ばす女性か と思われる)という回答も複数るった。 じっくりとよく画面を克ることを詰もって要求したうえでの回答で あったが、 2、 3分画面を見つめることでこの成果があったことは、 絵をむっくりと見て、克たものを言葉で記述するという[鑑賞学j の 基本が児童に対して、たとえ彼らに明確に意識されなかったとしても、 うまく機能したものと考えられる。. 。聞い 4 -この間いは、ピカソ独特の形のデブオルマシオンに着自す ることを促すためのものである。文章だけでは何を答えるべきなのか. -108-.

(11) 1 8 巻 1号. 文学・芸鮪・文化. 2 0 0 6 .7. 判断しがたいところがあると思われるが、「絵画博士Jの示唆によっ て、具体的な形の歪みを指摘した回答が得られた。いくつかの回答を 列記する。 首が長い 舌がとがっている/三角になっている 手が大きい/右手と左子の大きさがぜんぜんちがう/指の形が変 手足が今にもはれっしそう かみが誌んぶんあって、はんぶんない 目が変なところにある/自がでっばっている/日の形が丸ではなく、 まがたまの形をしている 体がない/どこにあるかわからない/体の部分が少したりない/むね の長さがちがう 頭にきずがある ふくをきていない 全体として首、子、百、体;こ著目する回答が極めて多かった。日を 「まがたまの形j とみなす的確な指摘もあった。また、お母さんは悲 しんでいるのに子供を見ていない、という意見が少なからずあったが、 上を向いているけれども日で子供を見ている、という鋭い見方もあっ た 。. 形の変化をよく見ることを促すと同時に、 2 。聞い 5、 6、 7、 8 -. f 読むj ことを実践させるための関. つの絵の比較によってその差異を いである. O. また、〈ゲルニカ〉が、簡単に出来上がった毛のではなく、. 途中で何度も構想、を変えながら完成に至ったことを認識させるための ものでもある。しかし、これらの間いへの毘答に関しては、時間の制 約もあって、言会者や「絵画薄士j がやや誘導的に見童を導いたこと もあり、児童自身の判猷がどれほど冨答に反映されているか、測りが. 唱ZA. AV. Qd.

(12) 「小学生のための絵画鑑堂教室J報告書. たい面がおるように思われる. O. 井面. 次回以蜂の反省点として残る。とはい. え、細部の変化をしっか与と捉え、絵を的確に「読んだ」回答もあっ た。例えば、. 1番目はおれたやりをもち、自をえぐりとられて、 3番巨はおれた剣を もち、子がせつだんされている(関い 6). 1番 Bの患は下がっているけど、完成作は尾がたっている(向い 5) 完成作では牛のおでこがつき出ている(間い 5) 詣の告もちがうし、たたかってきたようにきずついてる感じ(間い 6) 顔の形が変になっているし、日が黒かったのに、白く、まゆげが太く なっている(詫い 6) 子がふとくなっている。ゆびが 3本だったのに、 5本になっている(間 P 7 ). 兵士の首が切れている(題い 7) {兵士の)子のきずが多く立っている(潤い 7) 完成作は(馬の)顔がまるでロボットみたい(向い 8) 形の違いを「読むj ことは、様式的差異を認識することへとつなが る重要な視覚の訓練でもある. O. したがって、これらの関いについては、. 指導の仕方をさらに工夫することによって、より有効な成果を寂める ことができると考えられる。. 。関い 9 -{ゲルニカ〉の形式的、内容的意味を解き明かした後で、 改めて〈ゲルニカ〉の感想、を問うもので毒る。この間い誌、「鑑賓学J の「書くこと j に対応、するものである O 打鑑賞学j序説j で述べたよ うに、見たもの、感じたことを「書くこと j は、それらの事象を意識 化する上で不可欠の行為だからである. O. 〈ゲルニカ〉が戦争への怒り、犠牲になった人々への悲しみを表現 したものであるという理解の上に、さらに少なからぬ克童が自分自身. -110-.

(13) 1 8 巻 1号 2 0 0 6 .7. 文学・芸術・文化. の感想、を積み上げてくれた。 ピカソの気持ちは文ではなく絵で表していて、とってもすごいと思い ました。 はじめはとてもかんたんそうに見えたけど、大学のみなさんや博士に おしえてもらって、すごく苦労して描いた絵だと分かりました。 はじめは俺が描いてあるのか分からなかったけれど、戦争のことが描 いであるのが分かったので、とても悲しく思いました。 〈ゲルニカ〉を描いたピカソはとても患いやりがあって、それを絵で伝 えたということはすごいことだと患いました。 ピカソがいかりと悲しみをぶっつけているのが、伝わってきた。 最初はお祭りだと思っていたけど、戦争で苦しんでいることがわかっ た. この絵をもっと細かく知りたいと思ったし、絵を見ることは楽しいこ となんだなあと患った。 こん立に立ぞがある立んてび、っくりしました。 戦争の悪さ、にどとやってはいけない事を絵で表したことにとても感 心した。なぜピカソはこんな深く考えさせる絵をかくのか。 ピカソが 508もかかっていっしょうけんめいかいたえをできの国は、 ピカソの気持ちをわかってくれたのかなあと思った。 戦争への怒り、悲しみを言葉ではなく、絵という媒体によって表現 した点にピカソの〈ゲルニカ〉の意義を認める意見があったことは、 鷺きであると毘時に、開催者 に と っ て 誌 う れ し い こ と で あ る O. 。聞い 1 0 この「鑑賞教室」に対する克童の評掘の平均点は以下の通りである O. ( ※ 4年 生 〈 伴 大 納 言 絵 巻 ):4. 48 ). 3年 生 〈 ゲ ル ニ カ ):4 . 6 9. また、「長かった点 j と し て は 、 司 会 者 の 説 明 が は っ き り と し た 声. ム. 4Eム. 42ム. 4 a.

(14) 「小学生のための絵画鑑賞教室j 報 告 書 井 面. で分かりやすかったこと、スライドでま自かな点まで詳しく説明された ことが多く挙げられた。 悪かった点としては、ワークシートを書く持間が短かったこと、進 行にいくつかの誤りがあったことが指摘された。しかし、見童なりの 配慮、も含まれていると思われるが、概ね良い評価を得ることができた。. 3)総括-或果と課題 「鑑賞教室」開催の後、関震小学校教諭山中えりか氏(留工担当) の参加を得て、 4年生対象の分も含めて、{鑑賞教室j の成果と今後 の課題について反省会を行った。 「鑑賞教室」の開催は、初めての経験であり、あらゆることが手探 りの状態で出発した。もっとも大きな不安は、小学較 3、 4年生の絵 を見る力、言い換えれば美的感性の発達がどの程度であるのかを測り 知ることができなかった点である. O. 国語の教科書等によって、文章理. 解の水準についてはある程度知ることができたが、今回の「ワーク シーけの内容が児童の美的感性の水準に適合しているのかいないの か、今回の. f 鑑費教室j だけでは測りがたいところがるると思われる. しかし、児童の発達の程度にあわせて「鑑糞教室j を実施する必要 はないともいえる。すなわち、美的感性が訓練によって年齢に関わり 立く訪│青されるものであるならば、「鑑賞学j はまさしくそのような 目的を持って展開されるべきものだからである O ①成果 小学校の先生の感想、では、見童が学校の授業よりも生き生きとし、 発言も活発に行われたということであった。その点では、この. f 鑑賞. 教室j を通して、少なからぬ児童が絵画鑑賞に、あるいは絵画という ものに興味関心を寄せてくれたということができる O また、授業の一環という意味では、学生諸君はこの新しい企画に対. O. i. 噌・. 臼 つ z A.

(15) 1 8 巻 1号. 文学・芸構・文化. 2 0 0 6 .7. して覆極的に意見を出し、準備作業、予行演習等に熱心に取り組んで くれた。その点では、十分な成果があったと思われる. O. ②反省点、と課題 今後の改善点、も多く残った。以下、箇条書きにして示すことにする. C. 1.進行について ワークシート jの間いの数が多すぎる ・7 .見童の発言の詩需を増やす -司会者が回答のとントを過剰に出しすぎた .記述のための時間を十分にとる. 2.内容について ・関いの内容が図像的なものに漏った -色彩、構図等についても問う必要がある ぺ伴大納言絵巻〉は解説するべきことが多すぎて、不適当であっ た. 3.準備について -準備作業法正規のゼミの時間では足りず、時間外の作業が必要と なった -事前に小学校の授業参観をさせてもらう -予め係りを決め、役割分担によって効率よく作業を進める. 付記 今回の「鑑賞教室jの開催に捺して、木原晴夫校長先生をはじめとする 近畿大学的属小学校の教員の方々に全面的な協力をいただいた。心より感 謝申し上げたい。また、授業の一環とはいえ、「鑑賞教室 j の準備、実行 に多くの詩間を裂き、積極的に取り組んでくれた. f 芸術学ゼミナーん J3. 年生の学生諸君にも、名前を記して慰労の意を表したい。 参加学生(学籍番号顕) :畠中浩編、鴻田悪子、棚構大輔、梶原羽衣、. Eム 噌. 丹 ふ. τ2ム.

(16) f 小学生のための絵画鑑賞教室j 報告書. 井面. 李恵京、北門直美、福永保葉、山中智子、比良山{憂香、野口卓海、津田. i 昔、希、浅野元文、奥田千絵(敬称轄). 42ム 噌EA. A A.

(17) 1 8 巻 1号. 文学・芸指・文化. 2 0 0 6 .7. 。補遺. 「鑑賞学」序説 井面信行. 1 . ,まじめに 芸術の理論的研究、とちわけ美術の研究は、具体的な存品を晃て味わう こと、すなわち鑑賞することにその契機がある。しかし、現在、一般に、 大学教青における芸術研究のカリキュラムの中に、「鑑賞行為j を理論的 に整理付け、実践的に役立つものとして構築することを目差す学問、科目 は存在していな Lしけれども、芸術研究が?鑑賞行為j から始まるとすれ ば、その行為を為らかじめ見通しよく秩手付けるための、いわば「鑑賞 学j というべきものが提言されてしかるべきである九そして、現代にお いて、その要請はいっそう切実になっていると患われる. O. というのは、現. 代芸能が「何でもあり jの様相を呈するあまり、それら現代芸術に接する には、個人の勝手気ままな好き嫌いだけで判定すればそれでよい、という 趣味の主観主義化があまりにも蔓廷しすぎたように思われるからである。 言葉を換えて言えば、初等教育から高等教育まですべての教育の場におい て[自由な発想ム. f 個性の尊重j というスローガンが打ち立てられ、それ. が誤解されて、「感註」や「宣感jがあまりにも甘やかされすぎたと言え るのである。 このような反省に基づき、以下に「鑑賞学j の構築に向けて、その若干 の要諦を示すことにしたい。. 言SA. Fhd.

(18) f 小学生のための絵画鑑賞教室j 報 告 書 井 面. 2 .r 鑑賞学 j の基本要素-. r 見ること jイ読むこと J• r 書. くこと j f 美的性費j を主. すでに示唆したように、現代においては、美徳作品の. 直感」によって感得すれば、美衝鑑賞は達成されたかの 観の「惑性j や f ように考えられる傾向が強い。この傾向は、抽象芸術が広範に涜布したこ とによって益々助長されているように晃える O しかしながら、抽象芸縞こ そ、概念によって基礎付けられた「鑑賞学j に基づいて解釈されなければ 立らないのである. O. 美術鑑賞を単に主観的な好き嫌いに委ねてしまうのではなく、その過程 を秩序付け、そこに論理を与える必要がある。そこに る. O. f 鑑賞学」が生まれ. その論理をいま三つの基本要素に分け、それらの栢互連関によってよ. り充実した「鑑賞行為」が結晶する過程を考えてみたい。その三つの基本. r. r. 要素とは、「見ること J.読むこと J.書くこと j である。. r. 1) . 克ること」. 美街鑑賞が「見ること」に始まるのは、言を侯たない。けれども、実は. f 晃ること Jは決して簡単な行為ではな t~o. 逆に、多大な心身のエネル. ギーを必要とする行為であると言わなければならない。 私たちは普段、隈を開きさえすれば、世界の光景は根に見え、その視覚 ' 1 官報が簡単に与えられると思い込んでいる。美術鑑賞の場合も同様であり、. 一枚の絵の前に立ち、ざっとその絵を見渡せば、そこに何が描かれている のかが分かるーーそのように多くの入が思い込んでいる. O. しかしながら、. 「見られたもの j は、その実{言葉に置き換えられた観念j にすぎないこ とが圧倒的に多いと言わざるをえない。実際、私たちの日常生活は、世界 の多様な表象を次々と「言語表象j に変換して Lぺ作業によって成り立っ ているといってよ~ ~o 絵を見る場合も、私たちは画面に描かれている様々. 噌EA. 唱SA. n L O.

(19) 1 8 巻 I号. 文学・芸術・文化. 2 0 0 6 .7. のモチーフを「言葉j で確認する作業に追われる一一例えば、「ぜエタ j の場面は、次のように言葉でなぞられる J処刑され、十字架から蜂ろされ たキリスト、キリストを抱いて悲しむマリア、その隣はマグダラのマリ 。言葉で確認すれば、私たちは絵を理解した気分になってしま ア・. ..J う。そして、絵の前を去ったあと、記憶に残っているのは、往々にして 「言葉の観念j だけなのである。 技能職人が道具の使用に熟練するために多くの調練が必要なように、い かに奇妙な言い方に聞こえても、絵を十全に見るためには、眼という道具 を十分に使いこなす調練が必要なのである。そのための第一段措誌、まず 一枚の絵の隅々まで時間をかけてじっくりと「見つめる」ことである O 例 えば、一枚の絵を三分間見つめることを試してみれば、それだけで絵を 「見ること j には多大なエネルギーが必要なことがわかるであろう。しか 練を重ねれば、自長は、形と色の世界を藍観し、分析し、統合す し、この言I る、言葉に頼らない独自の. f 眼の論理j を展開することができるようにな. J をいたずらに思考 る。ここで重要なことは、「見られたもの(視覚情報 ) や惑情に譲り渡してしまわないことである。徹底して「晃ること」に留ま ること. 乙の苦しい作業が美術輩賞の第一段階である. O. r. 2) . 読むこと j. f 見ること j が純粋にそれだけで遂行され、終結することは、しかし、 現実にはありえない。「見ること j と共に、様々の知的要求が生まれてくる。 端的に言えば、その作品についての知識を得たいという欲求である。そし てこの知識を理解するためには、. f 読むこと Jが必要となる. O. 知識はいくつかに分類することができる。まず最初は、作品の作者に関 する知識である O すなわち作者の生涯、人格、思想、感情、環境など、作 者の人間性そのものと役を取り巻く状況についての知識である。二番目は、 作品自体についての知識である O これには二つある。ひとつは作品に「何. gA 噌. ti. ワs.

(20) f 小学生のための絵画鑑賞教室」報告書井富. がj描かれているか、つまり主題あるいは意味内容は何かということであ り、もうひとつは、作品は造形的には司鍔に」描かれているかということ である。両者共に当該作品だけを「見ること」ことでは決着が付かな L凡 なぜなら、人間の営みとしての芸術活動が歴史の中で展開されるかぎり、 芸術作品は歴史の中で孤立して生まれてくるのではなく、すべて堅史性を 担い、歴史的コンテクストのなかでしか存在し得な Lゆミらである。それゆ 如伺に j を知るためには、歴史的文化的伝統=文 え、作品の「何が j と f 献資料と造形的伝統=様式を. f 読むこと j の作業が必、要となる. O. 文献資料. を「読むこと」は文字通り、文字資料を読んで理解することであり、一時 的に作品そのものから離れることになる。しかし、この作業抜きでは、作 品の意味内容がどのような歴史的文化的コンテクストから生じたものかを. 7 世紀ヨーロッパの 理解できなくなってしまい、例えば、 1. f ヴァニタス. 絵画(人生の穆さを表現する絵画) J をただの静物画とみなしてしまうこ とになる. O. それに対して、様式を「読むこと j は、再び「見ること j に徹しなけれ ばならない。しかし、この場合、思法比較の作業を要求される。例えば、 ルネサンス絵画とバロック絵画の比較を通して、はじめて両者の様式=形 象世界の特徴があぶりだされる。様式比較はそれ自捧、形の差異を隈で 「読むこと」なのである. O. このようにして、文献資料を「読むこと」と造形的形象世界を「読むこ とj とが、鑑賞行為の第二段搭を形成することになる. O. r. 3) . 書くこと j 「書くこと j は、「見ること Jと「読むこと j を通して育まれる作品につ いての全体的な直観ないし表象を、記述という行為を通じて言葉に定着さ せることである。言葉による観念を排除して徹底的に「見ること」から出 発した鑑賞行為は、最終段稽において、再び言葉による表現活動となって. -118-.

(21) 1 8 巻 1号. 文学・芸術・文化. 終結するのである. 2 0 0 6 .7. G. f 直観法表現である J( B .クローチェ)という考え方がある. O. 私たちが意. 識の中で把捉したと思っている表象は、意識内部に留まったままで外面的 表現形式にまで達しないかぎりは、莫に把捉されたとはいえないのである。 一司の終わりに、ごく簡単右メモ程度の日記を綴るときですら、毅った言 葉によってはじめて今日一日自分が信を考えていたのかが分かる、という ことがある O 外面的表現に定著されない限り、意識内部の表象は本当に理. f 言葉になら会 p J状況とは、まさしく自分で 解されてはいないのである o 未だ捉えきれない亘観のことである。それゆえ、鑑賞行為を通して理解し えたことは、その内容を言葉によって表現しないかぎり、本当に理解した ことにはならないと言える. O. 「書くこと j は「考えること Jでも品る。書く作業と考える作業は一体 である. O. したがって、[書くこと j で完結する鑑雲行為は、美術をただ. 「感性j と「直感」によって感じ取るだけでこと足れりとするものではな く、最終的に「考える J力と行為を必要とすることになる. O. 最初に述べた. 考える」行為、「書く」行為を要求す 抽象芸能は、具象芸術にもまして f る。なぜなら、抽象芸術は、自らを言葉の対極に位置させて、言葉による 説明と解釈を挑発するものだからである。. 3 . 結び 鑑賞行為が遂行される過程を、「見ること jイ読むこと」イ書くこと j の 三つの段階に分けてたどってきた。しかし、この三つの段階は、必ずしも 時間的に頗次的な経過として進行するのではない。三つの段階は、最初か ら、部分的にではるっても並行して展開している。 読むこと J . f 書くこと j は、人間の認識行為の基盤であり、 「見ること j・7 同時に自己表現の基盤でもある。それゆえ、芸衝の鑑賞行為は、決してた. U. 42A. taA. ハ 可.

(22) f 小学生のための絵画鑑賞教室j 報 告 書 井 面. んなる快楽にとどまり続けるものではなく、人間が新たま自己自身を切り 開く活動であるといえるのである O. この覚書き在度の小識は、「小学生のための絵画鑑貫教室」の企画を近畿大学謝属小 学校に提言した緊仁、添付した文章に、加筆諺正を擁したものである。また、この小論は、 l. 鑑賞教室j 開催の当日、保護者の方々にも 題名、文体、その他に若干の変更を加えて、 f 配布された。. I 鑑費学j の提言として誌、すでに次の論文がある。吉1 1 1登 「 行 為 と し て の 鑑 賞 鑑 号 平成 4年)。この拙 賞学の序章としての盤賞行為の分析J(大学美術教育学会誌第 25 2. 論の枠組みは、この論文に示唆を受吋ているが、加えてK.フィードラ一、 E パノフス )ン等の芸街論を基礎としている キー、 H.ヴェルフ 1 O. -120-.

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参照

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