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自閉症スペクトラム児を持つ母親が経験する「デイリーハッスル」

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(1)心理科学 第 41巻第 2号 (2020年 12月). 自閉症スペクトラム児を持つ母親が経験する「デイリーハッスル」 飯 野 雄 大 ( 東京都立大学 ). あってはならないものではなく,誰しもが普通に. 問題・目的. 経験するものである。. 障害児を持つ母親を対象としたストレス研究. また,こういった母親が育児で抱く否定的な感. で は, 自 閉 症 ス ペ ク ト ラ ム 児(以 下ASD児)を. 情はストレスだけを引き起こすのではないことが. 育てる母親は,他の障害児を育てる母親に比べ. 示されてきている。日常的な場面での否定的感情. てストレスを感じやすいことが報告されている. は母親が子どもとのズレを意識し,過去の育児を. ( Dabrowska&Pisula,2010,植村・新美,1982)。. 見直すきっかけになる場合がある。それは母親が. 特にASD児の困難は,日常的環境と子どもの特. 育児をしていく上でポジティブな意味がある( 菅. 徴との相互作用から生じる「生活障害」 (田中,. 野,2001,菅野・岡本・青木ら,2009)。日常生. 2010,2011)と言われるように,睡眠や食事と. 活で感じる葛藤を,母親なりに調整しながら対処. いった日常場面で引き起こされる問題が母親の負. し,現実にうまく適応していく姿が注目されてき. 担となることが指摘されている( Ekas&Whitman,. ている( 菅野,2012)。母親は日常生活で経験す. 2011,Davis&Carter,2008,種子田ら,2004)。. る子どもとのせめぎあいの中で否定的感情を経験. こうした日常場面において生じる気になる日々. し,その感情をストレスとしてだけ感じるのでは. の出来事はデイリーハッスル( Daily hassles:日. なく,母親なりに肯定的に捉え直しながら日常を. 常的わずらわしさ )と呼ばれ,精神的健康との関. 乗り越えている。こうした点からすれば,ASD 児. 係で検討されてきた(外山・桜井,1999,中村・. についても,母親が日常生活の中で経験する困難. 上里,2004)。デイリーハッスルは,離婚や配偶. さをどのように意味づけ,どのように対処してい. 者との死別といったライフイベントによるストレ. るのかを明らかにしていく研究が必要といえる。. スと対比して研究されてきており( Luo,1991),. 障害児を育児していく中でも,肯定的な感情の. ライフイベントよりも精神的健康にとって重要. 存在が指摘されている。ダウン症児を養育してい. な要因であることが指摘されている( Lazarus,. く過程で,負担を感じながらもその子なりの発達. 2007,Lazarus&Falkman,1991)。. を喜ぶことができるようになるといった価値観の. ところで,母親研究ではこうした母親が育児を. 変容をもたらすことが示唆されている( 田中・丹. する上で抱える否定的な感情をストレスとしてだ. 羽,1990)。そこでは子どもが反応していること. け扱うことや,それを軽減し,消失するべきもの. に気づくこと,子どもの行動の意味が理解できる. としてだけ扱うことの問題点が指摘されてきた. こと,子どもの育ちに見通しを持つことができる. (大日向,1988,1991)。養育していく中で母親. ことがポジティブなプロセスとして描かれてい. はわずらわしさを経験し葛藤を感じ,否定的な感. る。さらに,ASD 児の母親の感情体験を扱った研. 情を持つことがある。しかし,そういった感情は. 究( 嶺崎・伊藤,2006)では,子どもの年齢によっ -1-.

(2) 心 理 科 学 第 41 巻 第 2 号. て肯定的感情と否定的感情の割合が変化し,時間. 疑いを指摘された学齢期の子どもを持つ母親 20. の経過に伴って肯定的感情が高くなることが明ら. 名(30 ~ 40 代 )。 子 ど も の 年 齢:6 歳 ~ 14 歳,. かにされている。しかし,ASD 児の母親が養育の. 平均 9.6 歳( SD:2.01)。子どもの性別:男児 16 名,. 中で経験する感情体験の具体的内容はまだ十分に. 女児4名。知的障害程度:境界域・軽度 7 名,中. 明らかでないことも指摘されている。. 度 6 名,重度 7 名。所属:通常学級 2 名,特別支. このように,デイリーハッスルそのものはネガ. 援学級 12 名,特別支援学校 6 名であった。診断. ティブな出来事であるが,それをどのように受け. 名について現在では,広汎性発達障害,自閉症は. 止め意味づけるかは,その環境から生じる刺激の. 自閉症スペクトラム障害( ASD )となるが,2015. 重要性をどう評価するかなどの母親の主観的な捉. 年の DSM の改訂以前の調査であるため,広汎性. え方や対処の仕方によって異なってくる(Lazarus,. 発達障害,自閉症ならびにその疑いの指摘を受け. 2007,鷲見,2006)。不快感情が持つポジティブ. ている児童を ASD 児として分析を実施した。. な役割(菅野,2001)が示されているように、デイ. 研究協力者は,筆者がボランティアで関わって. リーハッスルに対してもポジティブな側面がある. いた NPO 法人で募集し,さらに協力を承諾して. ことが予想できる。そのため,日常での葛藤など. くれた母親を通じて募った。研究協力者 20 名の. に対する語りから「デイリーハッスル」を経験した. うち以前から筆者と面識があったのは 3 名であっ. 母親の感情を養育感情体験として否定・肯定の両. たが,筆者が直接支援を行う関係ではなかった。. 側面から研究していくことは意義がある。. 調査時期:20XX 年 8 月~ 20XX +1年1月。. 以上を踏まえて本研究では,ASD児を養育する母. 手続き 研究協力者の募集にあたって,まず調. 親が日常生活の中で経験する葛藤にどのように対. 査を行うことを研究計画書をもとに NPO 法人に. 処しているのかという視点から,母親が経験する. 依頼し,理事長の許可を得た。その上で,母親に. 「デイリーハッスル」と「養育感情体験」の具体的内. 対して研究趣旨,面接概要,倫理上の配慮を明. 容を明らかにし,両者の関係を検討することを目. 記した依頼書を提示しながら,筆者が個別に説. 的とする。まず,具体的な内容を抽出するために. 明した。倫理上の配慮として,拒否をすることで. 母親の語りを収集する。そして,個別性や特殊性. NPO 法人から不利益を受けないこと,データの. を反映しやすい質的データから,関係性を把握す. 取り扱いに関してなどを丁寧に説明し,すべての. るために, (1)質的データからカテゴリを立ち上げ,. 事項について理解してもらうようにした。その場. (2)そのカテゴリを元に数量化分析を行い,母親. では返事をすることが難しい場合に配慮し,依頼. が経験するデイリーハッスルと養育感情体験の関. 書,調査票,面接日程に関する書面,返送用封筒. 係を描き, (3)その結果を元に質的データに戻り,. を持ち帰ってもらい,再度内容を検討してもらっ. エピソードを詳細に検討し考察する。このように. た。その上で,同意をしてもらえる場合は,面接. 質的・量的分析を組み合わせて,語られたエピソー. 日程に関する書類を記入して自主的に返送しても. ドから典型例を見出すことで,ASD児を持つ母親. らうようにし,同意できない場合はすべての書類. の体験を把握する。養育感情体験を取り扱うため,. を破棄してもらうようにした。返送がなかった場. 診断直後ではなく,ある程度生活を経験してきて. 合は,依頼の拒否であると判断して,こちらから. いる学齢期の子どもを持つ母親を対象とした。. 催促や問い合わせは行わなかった。協力を承諾し てくれた母親を通じて募った場合も,電話連絡な どを用いて直接説明した上で,書類を送付し,同. 方法. 意してもらえる場合に,書類を自主的に返送して. 研究協力者と調査時期 インタビュー協力者:. もらうようにした。書類を返送してくれた研究協. 広汎性発達障害,自閉症の診断または,自閉症の. 力者に連絡を取り,後日記入済み調査票を持参し -2-.

(3) 飯野:自閉症スペクトラム児を持つ母親が経験する「 デイリーハッスル 」. てもらい,半構造化面接を行った。. い内容は除外した。. 調査票の構成は,①フェイスシート,②子ども. 子どもとの生活の中で生じるデイリーハッスル. と母親が受けてきたサポート,③子どもに関して. とそれをどう捉えているのかそれに対する気持ち. 気になること,の 3 つであった。面接開始時に,. がセットで語られている部分を意味のあるまとま. 面接内容に関するガイドラインと倫理上の配慮に. りとして切片化し,1 つのエピソードとして抽出. ついて書面で提示し説明した。面接には,母親が. した。その結果,研究協力者 20 名から 137 個の. 経験してきたことについて教えてもらいたいとい. エピソードが得られた。. う態度で臨んだ。筆者が評価する立場ではないこ. 分析の枠組 137 個のエピソードに含まれる. とを強調し,母親の率直な気持ちが聞けるように. 「 デイリーハッスル 」と「 養育感情体験 」の 2 つの. 配慮した。面接の最初に「 お母さんご自身が普段. 内容を,それぞれ KJ 法( 川喜田,1986)を援用. の育児の中で感じていること,気になっているこ. し,同じような内容をまとめ,そのまとまりに. と聞かせて下さい 」と伝え,面接を円滑にすすめ. ラベルを付けカテゴリを作成した。137 個のエピ. るために調査票を適宜参考にしながら話をしても. ソードに「 デイリーハッスル 」カテゴリと「 養育. らった。 「 子どもの様子について気になっている. 感情体験 」カテゴリがそれぞれ 1 つずつ割り振ら. こと 」に対して「 母親の気持ち 」が語られなかっ. れた。心理学を専攻する大学院生 1 名によりカテ. た場合は随時質問を行なった。そのさい,具体的. ゴリとエピソードの一致率を測定した。その結. な日常場面での気になることを語ってもらえるよ. 果,84.7%の一致率を得られた。一致しなかった. うに配慮した。. エピソードに関しては,協議の上カテゴリに割り. 質問項目において, 「 気になっていること 」と. 振った。. いう質問としたのは, 「 デイリーハッスル( Daily. 分析 「デイリーハッスル」と「養育感情体験」. hassles:日常的わずらわしさ ) 」は一般的な表現. の 2つのカテゴリがどのような関係にあるかを等. ではなく,予備調査において,語りが出てきにく. 質性分析で分析した。この分析法によって 2つの. く,さらに「 わずらわしさ 」という語感からネガ. 質的変数間の関係を把握できる。等質性分析を行. ティブな内容が出てきやすいことが明らかになっ. なうことによって,カテゴリの座標値を求める. たためである。そのため,養育の中で引きこされ. ことができ,座標値に基づいて空間に布置され. る様々な葛藤を幅広く捉えるために「 気になって. る。この空間布置で,互いに近くに位置づけられ. いること 」という質問項目を用いることとした。. るカテゴリ同士は互いに等質的なものであり,離. 面接の時間は 1 回 1 時間程度で,面接の進度に. れたものは互いに異質であると解釈できる(足立,. よって 1 回~ 3 回に分けて実施した。面接は療育. 2006)。 「デイリーハッスル」カテゴリと「養育感. 機関の相談室か大学の相談室で実施した。面接は. 情体験」カテゴリが相対的に近くに布置されたも. 許可を得た上,IC レコーダーで録音し,トランス. のの関係が近いものであるといえる。 「デイリー. クリプトを作成した。. ハッスル」カテゴリと最も近い「養育感情体験」カ. 分析の対象 「 現在の子どもの様子について気. テゴリ,または「養育感情体験」カテゴリと最も近. になっていること 」とそれに対する「 気持ち( 養. い「デイリーハッスル」カテゴリに注目をした。. 育感情体験 ) 」に関わる語りを分析対象とした。 トランスクリプトにおいて「 気になっているこ. 結果・考察. と 」という質問に対して語られた内容から,日常 的な出来事に言及している内容を取り上げ, 「デ. まず, 「 デイリーハッスル 」カテゴリ, 「 養育感. イリーハッスル 」とした。診断などの出来事や施. 情体験 」カテゴリの内容についてそれぞれの結果. 設や制度に対する要望など日常的な出来事ではな. を示した。次に等質性分析によって 2 つのカテゴ -3-.

(4) 心 理 科 学 第 41 巻 第 2 号. リ間の関係を分析した。. 一方で,子どもの状態について母親が苦痛や負. 母親が経験するデイリーハッスルの分類. 担を感じている【 負担感 】や,対応について分か. デ イ リ ー ハ ッ ス ル に つ い て,137 個 の エ ピ. らないと思っていたり,不安に感じていたりする. ソードを分類した結果,7 つのカテゴリとなった. 【 戸惑い 】の語りがあった。母親のこのような【 負. ( Table1)。デイリーハッスルのカテゴリ名は《》. 担感 】や【 戸惑い 】は,デイリーハッスルをネガ. で示した。 《 ことば 》 《こだわり》に関しては 20名. ティブなものとして捉えている側面といえる。. 全員が語っていた。. また,負担や不安は語られないが,現在の状態. 母親の養育感情体験の分類. を改善して欲しいと感じている語りが見られた。 【改善への期待感】は,母親が思い描く程度まで,. 母親が経験するデイリーハッスルに対して,ど. 子どもの状態が改善して欲しいという語りである。. のように意味づけ対処し,どのような感情を持っ ているかについて,137 個のエピソードを分類し. 「最低限このぐらいは」と妥協を含んだ期待が語ら. た結果,8 つのカテゴリとなった( Table2)。養育. れていた。 【環境への期待感】は,子どもの成長よ. 感情体験カテゴリを【】として示した。. りも周囲の環境が変化することや,子どもを受け. 気になることをそのままでよいと肯定的に感じ. 入れてくれる環境と出会うことを期待している語. ていたり,成長として感じていたり,特に改善を. りであった。 【責任感】は,母親が積極的に対応し. 望んでいない語りが【 現状肯定感 】 【 成長の実感 】. ていかねばらないといった義務感が語られたもの. であった。母親は日常的に気になる事柄に対し. であった。 【諦観】は,改善を願いながらも「障害. て,わずらわしく感じるだけでなく,その事柄か. だからしかたがない,この子には難しいと思う」. ら子どもの成長を実感するなどそれを肯定的に受. といったあきらめを含む語りであった。. け止めている側面が見られた。こういった受け止. 出現数としては【 改善への期待感 】 【 現状肯定. め方は,必ずしもデイリーハッスルをネガティブ. 感 】が比較的多く語られた。学齢期の ASD 児を持. に捉えるだけでなく,ポジティブにも捉えている. つ母親は,負担や戸惑いを感じているばかりでは. ことを示している。. なく,子どもの将来を考えて改善を期待したり,. Table 1 デイリーハッスルカテゴリの内容 出現数 出現インフォー (頻度 %) マント数. カテゴリ名. 内容. 対人関係. 人への関心,人との関係に関する事柄. 19 (13.8). 16 名. 生活習慣. 生活(着替え,食事,排泄など)に関する事柄. 19 (13.8). 18 名. ことば. 発語,発話に関する事柄. 26 (18.9). 20 名. 学習. 数の理解,文字の獲得など知的な活動に関する事柄. 19 (13.8). 18 名. こだわり. 固執性,こだわり行動に関する事柄. 21 (15.3). 20 名. 運動. 運動,健康に関する事柄. 16 (11.6). 16 名. 情緒. 感情の表出や起伏,パニックに関する事柄. 17 (12.4). 16 名. -4-.

(5) 飯野:自閉症スペクトラム児を持つ母親が経験する「 デイリーハッスル 」. Table 2 養育感情体験カテゴリの内容とエピソード例 カテゴリ名. 内容・エピソード例. 出現イン 出現数 フォーマント (頻度 %) 数. 現状肯定感. 現状のままで良い,そのままのペースで進んでいけばよいと 30 いう本人の状態を肯定している気持ち ・一つのことに集中できるのはいいことなので,いいことに (21.8) 集中して伸ばせればいいなって思いますね(110). 16 名. 成長の実感. 子どもの成長として感じている気持ち ・今になってそういう年になったのかって思って,やっとそ ういう年に到達したってことなのかなって思いました (46). 9 (6.5). 9名. 負担感. 13 子どもの状態に負担を感じている気持ち ・周りが大変すぎる。本人が一番辛いと思うけど,大変(25) (9.4). 9名. 戸惑い. 対応についてのわからなさを感じている。またはどうなって いくかわからないという気持ち ・どうするのが一番いいのかなっていうのが正直分からない んですよね。どういう風にしたらいいのかとか(122). 12 (8.7). 8名. 改善への 期待感. 最低限ある部分は成長して欲しいという気持ち 31 ・話せるかは難しいと思うけど,伝えなくちゃいけない最低 (22.6) 限ぐらいのことは言えたほうがいいと思う(8). 15 名. 環境への 期待感. 子どもの周囲の環境が変化して欲しいという気持ち ・やっぱり仲間っていうか,自分が独りぼっちにならないた めに,一緒にいて楽しいって思えるような人ができるといい と思います(128). 9 (6.5). 5名. 責任感. 親がどうにかしていかなければならないという気持ち 19 ・なかなか難しいけど,でも難しいだけじゃわかってもらえ (13.8) ないから,やらなきゃいけないなとは思っています (64). 12 名. 諦観. 障害だからしょうがないと感じている気持ち 14 ・もう自分の子が自閉症だっていうのを受け容れた時点で, 結構色んなことは諦めというか,こういう子なんだからって (10.2) いう風に思うようにはなったかな(117). 10 名. 注 . エピソード例の( )内はエピソード番号を示す. 現状を肯定的に感じたりしやすいことが示唆され. を検討するために,等質性分析を用いて 2 種類の. た。子どもの年齢が上がるにつれてポジティブ. カテゴリを平面空間に布置し,カテゴリ間の関係. な感情が増加しやすいとする結果( 嶺崎・伊藤,. を明らかにした( Figure1)。等質性分析は,相対. 2006)と合わせて考えると,子どもとの生活を. 的距離が近いカテゴリ間の関係が深いことを示. 重ねていく中で,母親は将来を意識し,肯定的に. している。結果として,6 つの関係が見出された。. 現実を捉えやすくなる可能性がある。しかし,ポ. (1) 《 情緒 》と【 成長の実感 】,(2) 《 こだわり 》. ジティブなものだけでなく,負担感や戸惑いとい. と【負担感】 【 現状肯定感】, ( 3) 《 生活習慣》と【戸. うネガティブなものも同時に存在している点は,. 惑い 】, ( 4) 《 運動 》と【 責任感 】, ( 5) 《 対人関係 》. 単純にポジティブな捉え方が増え,負担が減って. と【環境への期待感】 【 諦観】, ( 6) 《 ことば》と【改. いくわけではないといえる。次に養育感情体験と. 善への期待感 】であった。視覚的に理解しやすい. デイリーハッスルの関係を検討した。. ように,6つの関係を円で囲った。 《 学習 》は相対 的にみて近い養育感情体験カテゴリがないため,. デイリーハッスルと養育感情体験の関係. 円に含んでいない。 《 対人関係 》については,【 環. 「 デイリーハッスル 」と「 養育感情体験 」の関係. 境への期待感 】 【 諦観 】がそれぞれ同距離にあるた -5-.

(6) 心 理 科 学 第 41 巻 第 2 号. 数量化 2. ■ デイリーハッスル ■. 情緒. ○ 養育感情体験. ○. 成長の実感 負担感. 1. ○. こだわり. 次元2. ■ ○. 現状肯定感. ○. 戸惑い. 0. 生活習慣. 運動. ○. 環境への期待感 ■. ○. ■. 諦観. ■. 学習 責任感. -1. 対人関係. ■. ことば. ○. ■ ○. 改善への期待感. -2. -1. 0. 次元1. -1. Figure 1 等質性分析の結果図:デイリーハッスルと養育感情体験の関係 め,3 つのカテゴリを円で囲い,合わせて検討し. 一つ上に上がったのかなと思っています。 (14). た。また, 【 現状肯定感 】からみて最も近いカテ. ・自分で我慢しなきゃいけないときって半分涙目. ゴリは《 こだわり 》であるが, 【 負担感 】から見て. になって,これを今我慢しなきゃいけないんだっ. も《こだわり 》は最も近いカテゴリのため,3つの. て自分で感情をコントロールしている部分が見ら. カテゴリを合わせて検討した。それぞれのカテゴ. れるので。 ( 中略 )自分に言い聞かせて,自分の感. リの典型的なエピソードを提示しながら考察を行. 情の中でコントロールしているという部分は今見. なう。 ()内の数字はエピソード番号である。. られているので,それは成長してるのかなって。. 《 情緒 》と【 成長の実感 】の関係 2 つのカテゴ. (66). リを含むエピソードの例を示した。. 【 成長の実感 】は母親が子どもに抱く喜びのよ. ・最近色々なことがわかるようになってきて,駄. うなポジティブな感情である。パニックのような. 目っていわれたものが通じなかったり,自分の思. 激しい泣きといった情動表出を, 「 発達の段階で. う通りにならないと泣くようになってきた。泣い. 一つ上にあがったのかな(14) 」 「 それは成長して. て自分をコントロールして抑えているわけですよ. いるのかなって(66)」というように子どもの成長. ね。泣き止むと結構けろっとしているんで,それ. として感じていた。乳幼児期において情動的な表. はいいことだと思っていますけど。発達の段階を. 出が少なかったという様子を振り返り,泣きとい -6-.

(7) 飯野:自閉症スペクトラム児を持つ母親が経験する「 デイリーハッスル 」. う感情表出がみられたことを本人なりの自己主張. そういう話をすると,うちの子は少し他の人から. と評価し,成長を実感していると考えられる。. そういう風に言われたほうがいいんだよって。私. 母親は,過去の子どもの姿と比較し,現在の状. としては,言われるほうの身にもなれよなぁと. 態を肯定的に意味づけていた。これは,子どもが. 思って。大きなおにいちゃんが, ( 子どもが )い. 泣いたりパニックを起こしたりすることによって. やーみたいに言ってしまうと,やっぱり視線は感. 生じる葛藤から,新たな価値観を模索するプロセ. じますよね。そういうのは恥ずかしいなって思. スの一端であると考えられる(菅野,2001.菅野・. う。 (47). 岡本ら,2009)。. ・今は葉っぱがノイローゼ。雨でも傘を置いて,. 《 生活習慣 》と【 戸惑い 】の関係 2 つのカテゴ. 葉っぱをむしる。もうあきれて言葉もありませ. リを含むエピソードの例を示した。. ん。本当に嫌ですので。外に行けば葉っぱってい. ・おしっこが早い段階でできてたんですが,ウン. うのが,迷惑じゃないですか他所の家の葉っぱ. チがトイレでできない。トイレでするんだよって. を。ある程度のことは仕方ないかなって,障害も. いうと便器をトントンってたたくんですけど,そ. 抱えているので,わりと寛容に見ているつもりで. れがここがトイレだって思っているだけなのか,. す。でも今は葉っぱちぎりは嫌,かといって他に. 分かっているよのトントンなのか,それもちょっ. ( やれる活動が )何があるのっていうのがないか. と分からないので,どこまで自分の中でそのウン. ら。 (97). チはトイレでするものって分かっているのかも分. こだわりの中でも特に,他者に迷惑だと思われ. からないので。 (57) . るようなこだわり行動に対して母親は負担を感じ. 着替えや食事といった生活習慣でのデイリー. ていた。例えば, (47)のエピソードではエレベー. ハッスルに対して, 「どうなっていくのか分からな. ターに関わるこだわりを持っていた子どもの行動. い,どう対応していけばよいのか分からない」と. に対して, 「 そういうのは恥ずかしい(47)」 「 迷惑. いった戸惑いが語られた。学齢期の子どもを持つ. じゃないですか(97)」と,家族以外の人との関係. 母親は,乳幼児期から母親なりに子どもの生活習. において生じる感情が語られ,それをノイローゼ. 慣への対応をしてきたであろう。しかし,学齢期. と表現している。また, (97)のエピソードでは. 以降,これまでの対応でよいのか,このまま対応. 葉っぱをちぎることに対するこだわりを「 ある程. していってどこまでできるようになるのかといっ. 度のことは仕方ないかなって 」と,母親個人とし. た不安を抱えると考えられる。ASD児が持つ感覚の. ては寛容にみたいと思っているが, 「 他所の家の 」. 過敏や異常,柔軟性の欠如といった要素から生じ. という他者との関係を考えると寛容になれずに. る活動への拒否や習慣の積み上がりにくさは,周. 「 あきれて言葉もない 」 「 本当に嫌 」と負担を感じ. 囲の人に理解されにくい。日常生活での困難さは,. ていた。. ある決まった対処法があるわけではない(Rutter,. 《 こだわり 》と関係が近いもう一つの養育感情. 1983)。そのため,母親は戸惑いを感じ,自信を. 体験として【現状肯定感】があった。 【現状肯定感】. 持って対応することができないと考えられる。. と《 こだわり 》を含むエピソードの例を示した。. 《こだわり》と【負担感】 【 現状肯定感】の関係 ま. ・家に帰ってくると紐をたらして,自分の興味の. ず《こだわり 》と【 負担感】のカテゴリを含むエピ. あるものに対して紐を振ったりとか。それはそれ. ソードの例を示した。. で気持ちが落ち着くんだったら人に迷惑かけるよ. ・エレベーターに乗っていたときに,自分たちだ. うなものではないので,いいかなと思っていま. けで乗りたいんですね,家族でいるときに,乗っ. す。 (54). て行っちゃいたい。いかにも親のしつけが悪いみ. ・忙しい時間,早く学校に行かなきゃいけないの. たいだからやだなぁって思って,家に帰って夫に. に,パジャマをきちんとたたんでから行くそうい -7-.

(8) 心 理 科 学 第 41 巻 第 2 号. うことが多い。でも急がせたいときにも,本当に. そういう言葉って大切だと思うんですよね。ごめ. もう自分のペースでやっているので,気になると. んなさいとかね。もちろん挨拶もそうだけど,せ. ころではあるんだけれども,でもそれだけを考え. めてそのぐらいわかって言ってくれればいいなと. ると悪いこだわりではない。なくしたいとかそう. 思うんですけど。 (22). いうのではないですね。 (124). ことばの問題に対して,改善を期待している語. これらのエピソードで語られているこだわり. りがみられた。しかし, 「 出たところでもどれく. は「 人に迷惑をかけるようなものではないのでい. らい話せるかはそんなに望めない(8) 」と通常の. いかな(54)」 「 悪いこだわりではない。なくした. 会話ができるようになることは難しいと感じてお. いとかそういうのではないですね(124) 」という. り,日常生活において「 最低限ぐらいのことはい. ように,現状を変えることを特に望んでいないも. えたほうがいい(8)」と,目標を再設定している。. のであった。また,それらのこだわりを,母親は. 言語的コミュニケーションは,家族から子どもが. 子どもにとって必要なものであると感じていた。. 離れていき,他者から支援を受ける上で必要とな. 【 現状肯定感 】であげられたこだわりは,人に迷. る。そのため, 「 ください 」など子どもが他者に. 惑をかけるようなものではなく,子ども個人の中. 要求することができたり,挨拶をすることができ. で完結しているものであった。これは【 負担感 】. たりといった,基本的なコミュニケーション能力. にみられたこだわりの内容とは異なる。このこと. が育って欲しいと期待していた。. から,こだわりを受け入れ,肯定的にみることが. 子どもの発達についてある部分はあきらめなが. できるかどうかは,こだわりが他者と関わるもの. ら,具体的な現実への適応を想定した上で改善を. であるかどうかが関係しているといえる。こだわ. 期待している。典型発達と比較して,ことばの改. りが必ずしも負担となるわけではない。. 善は困難だと感じ,あきらめを持ちながらも子ど. 世間の目がある場で引き起こされる,他者と関. もの将来のために妥協点を模索し, 「 このぐらい. わるような行動が母親に負担感を生じやすい。特. まで 」は改善していって欲しいという願いである. に,他者に影響を与えるこだわり行動をより負. と考えられる。. 担であると感じていた。母親の well-being は,社. 《 運動 》と【 責任感 】の関係 2 つのカテゴリを. 会的な影響によって変化する( Dunst,Treivette,. 含むエピソードの例を示した。. Hamby & Pollock,1990)ことから,周囲に母親. ・手先のこととか,不器用なんで,やっぱり色々. の苦労が理解されない場合,負担感が高まること. うちでも 1 対1で,こうだよ,ああなんだよと. が示唆される。. か,やっていかなきゃいけないのかなって。本人. 《 ことば 》と【 改善への期待感 】の関係 2 つの. も家だと母親と 1 対 1 っていうのもなかなか難し. カテゴリが含まれるエピソードの例を示した。. いけど,でも難しいだけじゃわかってもらえない. ・( ことばが )出たところでもどれくらい話せる. から,やらなきゃいけないなとは思っています。. かはそんなに望めないと思うんですけど。将来的. (64). にオウム返しぐらいで話せるかっていうのも難し. ・運動機能としては単純なものなら出来るけど,. いと思っています。誰でも伝えなくちゃいけない. 難しいのはできない。発達が少しでも良くなるん. 最低限ぐらいのことは言えたほうがいいのかなと. だったら,やれるのならやりたいですよね。怪し. 思うんですけど。 (8). いものには手を出したくないですけど,親が出来. ・最低限,例えばおトイレに行きたいとか,簡単. る範囲で。そのことによって発達の一つの良い刺. な要求。そういうのは示して欲しいなと思う。誰. 激になったらよいことだと思うから。 (92). にでもわかるような,くださいとかありがとうと. 運動面について,母親が運動できる環境を提供. か。大切な言葉ですよね。他に何ができなくても. しなければならない,親が気をつけていかねばな -8-.

(9) 飯野:自閉症スペクトラム児を持つ母親が経験する「 デイリーハッスル 」. 次に《 対人関係 》と【 諦観 】のカテゴリを含むエ. らないといった親の責任が語られた。運動は,本 人の努力や成長によって達成されるというより,. ピソードの例を示した。. 運動する機会を親が作っていくことで達成される. ・そんなに嫌われるタイプでもないので,人間関. と感じているといえる。しかし,親がやらなけれ. 係に関しては,攻撃的ではないので,ただもう. ばならないこととして責任を感じながらも,取り. ちょっとみんなとの協調性というか,仲良く一緒. 組んでいくことの難しさを感じている。 「 母親と. に遊ぶというのができればいいなと思いますけ. 1 対 1 っていうのもなかなか難しいけど,でも難. ど。そうですね,皆の中に入れるような感じに. しいだけじゃわかってもらえないから(64) 」とい. なってほしいですけど,なかなか自閉症の特性と. う語りにみられるように,わからないけれども取. して難しいと思います。 (16). り組んでいかなければならないという義務を感じ. ・気になるっていうのは人とのコミュニケーショ. させる語りであり,親の役割が強調されている。. ンですよね。簡単に人との人間関係とかコミュニ. 《対人関係 》と【 環境への期待感】 【諦観】の関係. ケーションとかいっているけど,うちの子にとっ. まず,【 環境への期待感 】と《 対人関係 》のカテ. てかなり難しいのかななんて。普通級の子って. ゴリが含まれるエピソードの例を示した。. 遊びが中心じゃないですか,その中で友だちに対. ・やっぱり人と関わるのが苦手なので,話しかけ. しての思いやりとか,ちょっと我慢しなきゃいけ. られてもしらんぷりしてますし。そうですねお友. ない部分とか,そういう人間性みたいのは育って. だちとかできればいいかなって,家族とか大人の. いくと思うので。正直ねとっても難しいことだと. 先生以外に,同年代の子どもで好きな子ができ. 思うんですけど。それを少しでも小さい頃から味. る。一緒にいてね,楽しいなって思える子ができ. わって成長して欲しいなっていう思いは私の中に. るようになるといいなって思います。やっぱり大. はあるんですけどね。難しいと思います本人に. 人はどんどんいなくなってしまいますので,仲. とっては。 (61). 間っていうか,自分が独りぼっちにならないため. 対人関係の問題について,改善してほしいとい. に,一緒にいて楽しいって思えるような人ができ. う期待はあるが,本人にとっては難しいだろうと. るといいと思います。 (128). 感じている母親の語りである。対人関係や人との. 子どもが持つ対人関係の苦手さや無関心さと. やりとりに対して,もっと関わって欲しいと期待. いったことに関して,それらが受け入れてもらえ. しながらも, 「 簡単にコミュニケーションといっ. る環境を期待している語りがみられた。本人の対. ているけれど,この子には難しい(61) 」と,子. 人関係が改善することを期待するよりも,子ども. どもの実態を理解し,期待と現実のギャップを把. を取り巻く環境が変化することによって良い対人. 握している。こういった捉え方は慢性疾患の患. 関係を築けることを期待していた。 「 家族とか先. 者の語りからも指摘されており,鈴木・飯牟礼. 生以外に(128)」と,家族外の関係,特に子ども. (2008)は期待と現実のギャップをしょうがない. が一緒にいて楽しめる同年代の子との出会いを望. とし,あきらめを持つような現実の捉え方を「 諦. んでいた。 「 自分( 子ども )が独りぼっちにならな. 観 」という言葉で表現している。 「 諦観 」には物事. いため(128)」という語りにみられるように,将. を見通す,見極める,物事を明らかにするといっ. 来的に子どもが親の手を離れていくことを想定し. た意味を持っている。. ている。そのために,環境が変わっていくこと,. 諦観をすることで,母親は葛藤が存在する現実. または子どもにあった環境と出会えることが重要. を受け入れようとしている。ある事柄をあきらめ. 視されている。子どもの将来について,子どもの. る姿勢は,その事柄を敵として捉えるのではな. 状態を理解し,親の手を離れても子どもが生活し. く,苦しい出来事が持つマイナスの側面をあきら. ていける場を期待しているといえる。. めることによって極小化する。ASD 児を持つ母親 -9-.

(10) 心 理 科 学 第 41 巻 第 2 号. は,子どもが持つ問題に対して, 「 障害だから」 「こ. いくつかの典型的なパターンが存在することを示. の子には難しい 」と思うようにしてあきらめるこ. した。ことばや対人関係の問題,他者に影響を及. とで上手に付き合っていると考えられる。. ぼしにくいこだわり行動は,ポジティブな感情体. 【 環境への期待感 】 【 諦観 】はそれぞれ《 対人関. 験と関係しやすいものであった。一方,他者へ影. 係 》と近い関係であった。どちらの養育感情体験. 響を及ぼすこだわり行動や,生活習慣の困難さに. も,子どもの対人関係は改善するのは難しいとい. 対しては負担感や戸惑いといったネガティブな感. う思いは共通しており,一方で周囲の環境に期待. 情体験と関係しやすいことが明らかになった。. し,他方で現実を受け入れようとしていた。 【環. 母親は養育の中で子どもの特徴と日常との相互. 境への期待感 】では,親亡き後のことが語られて. 作用から生じる葛藤を感じながらも,ある側面を. おり,母親が将来のことを具体的に意識している. 肯定したり,改善してほしいことに優先順位をつ. かどうかが影響している可能性がある。. けたりすることで折り合いをつけながら過ごして いた。パニックをきっかけにして成長を見直し, ことばの問題に対して将来のことを考え妥協点を. 総合考察. 探り,目標を再調整していた。本研究は,子ども の発達を見直したり,子どもの視点で行動を意味. (1) 「 デイリーハッスル」と感情体験の関係 本研究では,ASD 児の母親が養育において感じ. づけたりすることから,母親自身の価値観が変化. るデイリーハッスルとそれに対する感情体験を検. していくという側面( 田中・丹羽,1990)の一端. 討した。その結果は次の 3点であった。. を描いたことに意義がある。. ①養育感情体験という視点から見ていくと,母. 最後に③デイリーハッスルの内容によって,あ. 親はデイリーハッスルから子どもの成長を捉え. る部分を妥協しあきらめることで折り合いをつ. るといった,ポジティブな側面があることを示. け,わずらわしさを軽減する方略を用いているこ. した。母親が ASD 児を養育していく中で生じる. とを示した。. ポジティブな感情とネガティブな感情( kayfitz,. 母親は子どもが成長し,よりよい方向に向かっ. Gragg&Orr,2010,嶺崎・伊藤,2006)は,ポジ. てくれるように期待している。しかし,養育をし. ティブな感情が時間経過に伴って増加することが. ていく中でうまくいくこと,うまくいかないこと. 示されていたが,そのポジティブな側面の具体的. の両側面があることを実感する。そして,うまく. 内容を【 現状肯定感 】 【成長の実感】として明らか. いかないことに対して,現在の状態を一部あきら. にした。本研究は時間的な経過に伴う因果関係の. めながらも,環境に期待をしたり,子どもに対す. プロセスについて明確に示すことはできないが,. る目標を再調整したりしながら折り合いをつけて. 前述した先行研究と合わせて考えると,子どもの. いた。このようにデイリーハッスルの観点から,. 成長や変化を通して,過去の子どもの状態と比較. 母親の語りを見ることで,日々の葛藤を母親なり. する中で成長を実感したり,行動の意味を理解し. に乗り越えている姿が明らかになった。. たりしていくことでポジティブな感情が表出され ていくことが予想される。. (2) 「 あきらめ 」から障害受容を捉えなおす. 日常の中でわずらわしい経験はしているが,そ. 【 環境への期待感 】 【 改善への期待感 】 【 諦観 】の. れ自体が肯定的な養育感情の基盤となっている。. 3 つのカテゴリには,ある部分に対する「 あきら. つまり,母親は ASD 児が持つ様々な困難さを引き. め 」が含まれている。. 受けながらそれを肯定的な育ちの指標として取り. あきらめるとは一般的には否定的に捉えられが. 込んでいくと考えられる。. ちだが,障害児を養育する中では,長いスパン. 次に②デイリーハッスルと感情体験の関係には. の中で子どもの発達を捉える視点である。氏家 - 10 -.

(11) 飯野:自閉症スペクトラム児を持つ母親が経験する「 デイリーハッスル 」. (2010)の指摘では, 「あきらめ」とはある限られ. よって日常の生きづらさが強くなれば,負担が増. た時間と場所ではダメだとあきらめたとしても,. 加したり不安を感じやすくなったりする可能性が. それをすぐに切り替えて次の可能性に挑むための. ある。この姿勢はゴールとしての「 障害受容 」と. ものである。 【 環境への期待感 】は現在の状態に. いう捉え方ではなく,現実と目標のギャップへの. ついてある部分をあきらめながらも,将来の子ど. 対処として捉える必要があり,受容とは質の異な. もにあった環境を期待することで,あきらめた部. るプロセスであることが考えられる。. 分を補おうとしているものであった。現在の一部. 受容というゴールを想定せず,継続的にネガ. をあきらめながらも,将来の環境に期待するとい. ティブな感情が再燃するという点では,慢性的悲. う,場と時間のあきらめ(氏家,2010)であると. 哀説( Olshanskey,1962)との類似点を指摘する. いえる。一方, 【 改善への期待感 】は子どもの発. こともできる。しかし,日常的に生じるネガティ. 達のある部分をあきらめながらも,最低限必要な. ブな出来事に対して,母親は常に悲哀のただなか. ことは改善して欲しいと期待している語りであっ. にいるわけではなく, 「 あきらめ 」をうまく用いる. た。普通に発達してほしいという目標を,短期的. ことで能動的に対処している姿が示された点は,. にはあきらめながら,子どもの現実に即した目標. 母親の積極的な心理的反応をより具体的に描いた. を設定し直し,長期的な視点では希望を持ってい. といえる。. た。特に《 ことば 》の問題に関して,ことばでは 難しくても,ジェスチャーなど他のコミュニケー. (3)生活モデルにたって養育を支援する. ション手段を用いて,意志を伝えてほしいという. ASD 児とその家族に対する支援は,従来は問題. 期待がみられた。 【 諦観 】は,その状態にあきら. の原因を特定し,診断し,治療方針を構築する医. めてはいるが,絶望しているわけではない。その. 学モデルが主流であった。早期診断・早期支援が. 状態を障害特性として理解し,しょうがないと捉. 重要視され,家族に対して,障害受容を促し,養. え,現段階では積極的にそれを変化させないとい. 育のストレスを軽減する支援を行っていく。しか. う気持ちであった。. し,ASD などは,医学的に治療することが困難で. 母親は養育の中のハードルを乗り越えていくた. ある。そのため,当事者やその家族は慢性的な困. め,あきらめを用いて現実場面に折り合いをつ. 難さを抱えながら,それと向き合い,折り合いを. けていると考えられる。あきらめることは,物. つけながら生きていかねばならない( Kleinman,. 事に「 固執しない 」ことである( 鈴木・飯牟礼,. 1988/1996)。日々の生活は「 治療 」 「 回復 」だけ. 2008)。ある目標に固執することは,現実と目. を目標としてすごしていくわけではない。もちろ. 標のギャップが大きいほど負担となる。母親は子. ん,医学モデルのもと,子どもを診断し,それに. どもの問題に対して,子どもが思い描く理想まで. 沿った支援を行っていく必要はある。それに加. 成長してほしいという期待を妥協したり,先送り. えて,日常生活をどのように過ごしやすくしてい. したり, 「 固執しない」ようにしていくことで,負. くのかといった,子どもと母親の生活に合わせた. 担を軽減している可能性がある。現実の困難さを. 「 生活モデル 」にたって支援を考えていく必要が. 極小化して捉えたり,一部をあきらめたりするこ. ある( 宮田,2001)。. とで,日常生活を過ごしやすいようにしているの. 本研究では,デイリーハッスルに対して母親な. ではないだろうか。. りに折り合いをつけている姿を理解しながら,障. この「 あきらめ 」は障害を受け入れた姿勢と見. 害によって生じる「 生きづらさ 」を支援していく. ることもできる。しかし,一時的にうまく折り合. 必要性が示された。保育者や教師といった福祉・. いをつけることができ「 受容 」しているように見. 教育に携わる専門家や,家族といった母親の周囲. えたとしても,子どもの成長や家族環境の変化に. にいる人々が,母親とともに子どもの成長を確認 - 11 -.

(12) 心 理 科 学 第 41 巻 第 2 号. したり,共有したりすることで,デイリーハッス. クラス 20 人もいたら,そうそう( 理解力が )下に. ルを肯定的に意味づけできるよう促すことが有効. 合わせられないので,うちなんて一番下のぐらい. な支援になると考えられた。一方で,他者に迷惑. だから,分からない授業を一生懸命耐えて,その. がかかるこだわりや,生活習慣の身につかなさと. 姿を授業参観で見るのがちょっと辛いですよね。. いった,負担を感じやすい部分には,医学的なケ. (78). アやトレーニングといった具体的な支援が必要で. この語りでは,理解力の問題と他学年を含めた. あるといえる。さらに,母親の負担が第三者の視. クラス内での授業内容や進度に対するわが子の難. 点や社会との関係性で生じるという視点から,社. しさを感じており,母親が授業を参観することの. 会的な制度の整備やその円滑な運用など社会的な. 辛さが語られていた。授業進度に対して自分の子. 面での支援も重要となってくる。社会的な制度の. どもと他の生徒とのレベルの違いを意識し, 「耐. 利用も含め,将来を意識した段階的な目標を提示. えているわが子 」と捉えていた。この母親が抱く. し,折り合いがつきやすいように環境を調整して. 負担感には,支援学級のクラス編成などに影響を. いくことが生活を支援することにつながると考え. 受けている可能性が示唆される。. られる。. しかし,本研究では母親の日常生活を対象とし て調査をしているためか,≪学習≫に関する語り の中でも学校内で起こっている事柄について明確. (4)学校種別と知的障害を考慮した事例の分析 次に子どもが所属する学校環境との関係につい. に語られているものはあまり見られなかった。家. て考察する。 「 生活モデル 」という視点から見て. 庭場面ではなく,学校場面での「 デイリーハッス. いくと,子どもがどういった社会的制度の中で生. ル 」を収集していく上では教員へのインタビュー. 活しているのかを考慮することが必要である。子. などを実施していくことも検討する必要がある。. どもの生活圏は家庭だけではなく,学校など様々. さらにいえば,学校選択においては知的障害の. な場所が想定される。本研究では,通常学級,特. 程度も関係してくる。母親の抱えるデイリーハッ. 別支援学級,特別支援学校と異なる場所に所属し. スルは,子どもの「 知的障害の程度 」によって変. ている子どもたちを対象とした。そのため,それ. 化することが想定される。一方で ASD がスペクト. ぞれ異なった学校という環境の中で生じる「 デイ. ラム障害と呼ばれるように,子どもの行動特性は. リーハッスル 」とその対処を捉えていくことも重. 上記の変数によって明確に区別できるものではな. 要であると考えられる。. い。本研究では境界域から重度という幅の知的障. その際に参考となるのが≪学習≫カテゴリで語. 害を併発するASDのデイリーハッスルの全体像を. られたエピソードであると思われる。≪学習≫カ. とらえた。そのうえで,仮説的ながらも障害の軽. テゴリは等質性分析の結果では典型的なパターン. 重を考慮した事例の考察を行う。. が見られなかったカテゴリであるが,学校などで の学び関する語りが含まれるため、学校種による. (5)知的障害の程度によるデイリーハッスルの考察. 違いを推測するための指標となると考えられる。. 知的障害の程度による違いを検討するために,. そのうちの一つが次の小学校 2 年生特別支援学級. 《学習》カテゴリに含まれるエピソードを見ていく。. に在籍している子どものエピソードである。. 次に示したのは知的障害の程度が重度(障害者手帳. ・理解力とか,そういうのがとても低いですね。. 2度)の 2人の子どもについてのエピソードである。. 例えば文章を見ていて,最後の言葉だけを理解し. ・数字 1 から 10 ぐらいまで分かっているような. ていたりする。ただ耐えるだけになっている時. 気がするけど,みかんを 3 つください( 数の概念. 間がけっこう多くて,知的( 知的の支援学級 )の. が身についていない )といってもくれないんです. 6 年生になると,理解力が高い子もいて,人数も. よ。120 円とかそいうのを少し教えていきたい - 12 -.

(13) 飯野:自閉症スペクトラム児を持つ母親が経験する「 デイリーハッスル 」. なって思ったばかり。 (25). に改善していくのか不安やわからなさを感じてい. ・何となく生活する分には多少の介助はいるんで. たり,親がやっていけることをやっていきたいと. すけど,そんなに困らないというか,何とかやっ. 責任感を持っていたりすることが語られていた。. ていけるんですけど,勉強面とか知的な部分はす. こういった学習に関するエピソードには知的障. ごい低いんだっていうのがこれからどういう形で. 害と関連する内容が含まれていると考えられる。. 影響していくのかなって。受験ができるまで賢く. このことから知的障害の程度と母親の「 デイリー. なって欲しいとは全然思わないんですけど,ある. ハッスル 」や「 養育感情体験 」は関連が示唆され. 程度のコミュニケーションができるぐらいまでの. る。しかし,今回の研究協力者には,以前アスペ. 能力は引き上げてやっていきたいなって思いはあ. ルガー症候群や高機能自閉症と呼ばれていたよう. りますよね。社会に生きて困らない分だけの。ど. なケースは含んでおらず,知的障害の程度との関. うなっていくのかが分からないでので,そのとき. 連は十分に検討できていない。. の不安はありますね。 (39). 本研究では,実際に日常生活で生じている困難. 両方とも知的な部分についての遅れを認識し,. さとそれに対する母親の意味づけを対象とし,日. それでも社会生活で必要なスキルなどを身につけ. 常の中での「 デイリーハッスル 」を調査した結果,. させていと考えていたり,将来に対する不安を感. 知的障害との関連が示唆されたと考えられる。知. じていたりする語りであった。. 的障害の程度との詳細な関係を検討していくこと. 一方で,次に示したのは知的障害の程度が軽度. は今後の課題である。. (障害者手帳 4 度 )の 2人の子どもについてのエピ ソードである。. (6)今後の展望. ・文を読んで内容が理解できないような感じなん. 本研究では,母親の語りをエピソードで区切っ. だろうなと思うんですけど。漢字は好きで全部覚. て分析を行ない,エピソード単位でデイリーハッ. えるんですけど。読解力とか道徳とかで(課題が). スルと養育感情体験の関係を検討した。まずは,. ありますよね。特に道徳とかはホント理解できる. 語りの中から,学齢期のASD児を持つ母親に見ら. ようになってもらいたいなと思いますけど,どこ. れる傾向を明らかにした。ASD児を持つ母親への. まで理解できるのか私も分からないです。 (18). 支援を考えていくさいには,デイリーハッスルに. ・ひらがなとかちょっとおぼつかなくて,漢字は. よって母親が抱く感情の典型例を把握することが. できるものもあるけど。読み書きそろばん程度で. 最初の段階では必要であったと考える。しかし,. きれば世の中暮らしていけるんじゃないかって. 本研究ではカテゴリから,あくまで典型的な関係. 思って。うちの子の場合は( 本人が )言っている. を描き出したにとどまっている。個人に焦点を当. ことは分かるんですね。ただそれを学習的にき. て縦断的な変化を追っていくなど,より主観的体. ちっとしてはまだまだ難しい部分がある。でき. 験を考慮した分析も必要であろう。子どもと母親. なくてもそれはそれでしょうがないし,ただ,目. を取り巻く環境に焦点を当てながら,負担や戸惑. 標としては普通の子に近くなってもらいたいため. いが強い母親や,肯定感が強い母親など,感情体. に,お母さんが声かけするとか,家でできること. 験の個人差や折り合いの付け方の個人差にも目を. があれば,今やっていきたいと思っている。 (88). 向けていくことが今後の課題である。さらにASD. 知的な問題に対して, 「 漢字は覚えられるが算. 児とその家族を取り巻く社会的な制度との関係が. 数や読解が難しい」 「ひらがなは難しいけど漢字は. 影響していることが予想される。子どもが成長し,. できるものもある」というような発達の偏りを推. 就労の問題や親亡き後の問題が近くなったさいに,. 測させるような語りが見られた。発達の偏りに対. 福祉制度などの状況によって養育感情が変化する. して,できないところができるところと同じよう. 可能性がある。学齢期以降の養育感情体験の特徴 - 13 -.

(14) 心 理 科 学 第 41 巻 第 2 号. や変化も合わせて検討していく必要がある。. 中央公論社 .. また,今回は「 気になること 」という質問に対. Kayfitz,A.D,Gragg,M.N.&Orr,R.R.( 2010).Positive. する母親の語りの中からデイリーハッスルに注目. Experiences of Mothers and Fathers of Children with. し分析をした。しかし,デイリーハッスルだけで. Autism .Journal of Applied Research in intellectual. 障害児やその母親の育児生活全体を捉えることが. Disabilities,23(4),337-343.. できるわけではない。本研究では,日常の幸福な. Kleinman,A.( 1996).病の語り:慢性の病をめぐる臨床. 出来事から始まる語りについては取り扱えていな. 人類学( 江口重幸ら訳 ).東京:誠信書房 ( . Kleinman,. い。そのため,ポジティブな体験から始まる語り. A.(1988).The Illness Narratives: Suffering,Healing,. そのものやデイリーハッスルとの関係についても. And The Human Condition.New York:Basic books. ). 今後検討していくことが,日常の育児をより丁寧. Lazarus,R.S.,& Folkman,S.( 1991).ストレスの心理学:. に描き出していくことにつながると思われる。. 認知的評価と対処の研究( 本明 寛・春木 豊・織田正 美, 監 訳 ).東 京: 実 務 教 育 出 版 ( . Lazarus,R.S.,& Folkman,S.( 1984 ).Stress,appraisal,and coping.. 謝辞. New York: Springer. ). 本研究の実施にご協力いただきました保護者の方に心よ り感謝申し上げます。また本論文の作成に際し、査読者の. Lazarus,R. S.( 2007).ストレスと情動の心理学( 本明寛. 先生方、ならびに東京都立大学の浜谷直人氏、田中浩司氏. 監訳 ).東京:実務教育出版 ( . Lazarus,R.S.( 1999).. には貴重なコメントを頂きましたことを御礼申し上げます。. Stress and Emotion:A New Synthesis.New York:Springer. ) Lu,Luo.( 1991 ).Daily hassles and mental health: A. 文 献. longitudinal study. British Journal of Psychology,82. 足立浩平. (2006).多変量データ解析法:心理・教育・. (4).441-447.. 社会系のための入門.京都:ナカニシヤ出版. Dabrowska,A.,Pisula,E.( 2010 ).Parenting stress and. 嶺崎景子・伊藤良子 ( . 2006).広汎性発達障害の子どもを. coping styles in mothers and fathers of pre-school. 持つ親の感情体験過程に関する研究 . 東京学芸大学紀 要,総合教育科学系,57,515-524.. children with autism and Down syndrome.Journal of. 宮田広善 ( . 2001).子育てを支える療育:<医療モデル>. Intellectual Disability Research,54,266-280.. から<生活モデル>への転換を.東京:ぶどう社 .. Davis,N.O.,&Carter,A.S.( 2008 ).Parenting Stress in Mothers and Fathers of Toddlers with Autism. 中村奈々子・上里一郎 ( . 2004). 中高年者の日常いらだち. Spectrum Disorders: Associations with Child. 事に対するコーピングのパターンとストレス反応と. Characteristics. Journal of Autism Development. の関係.健康心理学研究 .17(1).18-28 中田洋二郎(1995) . . 親の障害の認識と受容に関する考察:. Disorder,38,1278-1291. Dunst,C.J.,Treivette,C.M.,Hamby,D., & Pollock,. 受容の段階説と慢性的悲哀 . 早稲田大学心理学年報, 27,83-92.. B.( 1990 ).Family systems correlates of behavior. 中田洋二郎 ( . 2002).子どもの障害をどう受容するか:家. of young children with handicaps.Journal of Early. 族支援と援助者の役割 . 東京:大月書店 .. Intervention,14,204-218.. Olshansky,S.( 1962 ).Chronic sorrow:A response to. Ekas,N.&Whitman,T,L.( 2011 ).Adaptation to daily stress among mothers of children with an autism. having a mentally defective child.Social Casework,. spectrum disorder: the role of daily positive affect.. 43,190-193.. Journal of Autism Development Disorder,41,1202-. 大日向雅美 ( . 1988).母性の研究 . 東京:川島書店 .. 1213.. 大日向雅美 ( . 1991).親としての発達 . 児童心理学の進歩 vol30( pp.153-179).東京:金子書房 .. 川喜田二郎 ( . 1986).KJ 法:渾沌をして語らしめる . 東京: - 14 -.

(15) 飯野:自閉症スペクトラム児を持つ母親が経験する「 デイリーハッスル 」 Rutter,M.( 1983).Cognitive deficits in the pathogenesis. 号 ),18-24. 東京:金剛出版. of autism.Journal of Child Psychology and. 田中康雄 ( . 2011).発達障害は生きづらさをつくりだすの. Psychiatry,24,513-531.. か . 東京:金子書房:. 菅野幸恵 ( . 2001).母親が子どもをイヤになること:育児. 種子田綾・桐野匡史・矢嶋裕樹・中嶋和夫 ( . 2004).障害. における不快感情とそれに対する説明づけ . 発達心理. 児の問題行動と母親のストレス認知の関係 . 東京保健. 学研究,12,12-23.. 科学学会誌,7,79-87.. 菅野幸恵. (2012).あたりまえの親子関係に気づくエピ. 外山美樹・桜井茂男 ( . 1999). 大学生における日常的出来. ソード 65.東京:新曜社.. 事と健康状態の関係 : ポジティブな日常的出来事の影. 菅野幸恵・岡本依子・青木弥生・石川あゆち・亀井美弥子・. 響を中心に.教育心理学研究,47(3).374-382.. 川田 学・東海林麗香・高橋千枝・八木下( 川田 )暁. 植村勝彦・新美明夫. (1982).心身障害幼児をもつ母親. 子( . 2009).母親は子どもへの不快感情をどのように. のストレスについて:ストレス・パタンの分類.特. 説明 するか:第1子誕生後2年間の縦断的研究か. 殊教育学研究,19(3),20-29.. ら.発達心理学研究,20,74-85.. 氏家靖浩 ( . 2010)「 . 障害 」とは何かを問い続けよう:支援. 鈴木 忠・飯牟礼悦子 ( . 2008).諦観と晩年性:生涯発達. 者が心得ておきたいこと . 発達,123,47-53. 京都:. 心理学の新しい概念として.白百合女子大學研究紀要, 44,101-127.. ミネルヴァ書房 . 鷲見克典 ( . 2006). 知覚されたストレス尺度( Perceived. 田中千穂子・丹羽淑子 ( . 1990).ダウン症児に対する母親. Stress Scale )日本語版における信頼性と妥当性の検. の受容過程.心理臨床学研究,7,68-80.. 討 . 健康心理学研究 .19(2).44-53.. 田中康雄.(2010) 「発達障害」 . を「生活障害」として捉える.. (2019 年 1 月 25 日受稿、2020 年 2月 25 日受理). 発達障害の理解と支援を考える( 臨床心理学増刊第 2. - 15 -.

(16) 心 理 科 学 第 41 巻 第 2 号. Daily Hassles Experienced by Mothers with Children with Autism Spectrum Disorder. Takehiro IINO ( Tokyo Metropolitan University). Daily hassles and emotional experiences of. those related to language,relationships,living. nurturing have been associated with maternal. habits,physical exercise,emotion,learning,. mental health. This study examined the. and compulsiveness. These daily hassles. relationship between the daily hassles and. led to feelings of “affirmation,”,“actually. emotional experiences of mothers with children. experiencing the child development.”,“burden, ”,. with Autism Spectrum Disorder (ASD). Semi-. “puzzlement,”,“hope for improvement,” ,. structured interviews on daily hassles were. “hope for environment,”,“resignation,”,and. conducted with 20 mothers of children with. “responsibility.” These results indicate that. ASD (N=20). Narratives from the interviews. mothers of children with ASD require support for. were analyzed to identify how mothers perceive. minimizing daily hassles arising from language,. their daily hassles and emotional experiences. relationships,and compulsiveness to avoid. of nurturing. The follow ing results were. feelings of resignation. . obtained. Daily hassles were classified into. - 16 -.

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参照

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