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ベトナムの産業構造と輸出による経済効果

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Academic year: 2021

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1.はじめに

 近年におけるベトナム経済の著しい成長は輸 出の拡大による貢献が大きいとされている一方 で,輸出製品の製造に必要となる部品等の原材 料を供給できる国内産業が脆弱であるとの指摘 がみられる.このような指摘は,産業連関表を 活用し,各産業部門における中間財に係る取引 状況や最終需要による生産波及の流れ等につい て分析・評価を行う必要性があることを示唆す る.   そ こ で 本 稿 は, ア ジ ア 開 発 銀 行(Asian Development Bank: ADB) が 公 表 し て い る 2010 年と 2017 年のベトナム産業連関表を用い ることにより,近年における産業構造の変化及

ベトナムの産業構造と輸出に

よる経済効果

奥村 豪

本稿では,2010 年と 2017 年のベトナム産業連関表を用い,国 内生産額の変動要因のほか,産業部門間の中間財に関する取引 関係や輸入依存度,ベトナム経済を牽引している輸出による生 産誘発の海外流出の程度等について分析を行った.また,その 上で,ベトナム国内産業の脆弱性や課題について考察し,当該 課題を踏まえた施策の方向性やその効果について検討を行っ た.今回の分析においては,特に,ベトナムの「電子・光学機 器」部門に着目し,輸出による生産誘発の海外流出の要因が主 に「金属加工基礎製品」部門との中間財取引等における輸入依 存率の高さにあること,また,ベトナムにおいては,このよう な産業部門間の中間財取引における輸入依存率の低下が生産技 術構造の変化を通じて国内生産額及び粗付加価値額の増加に寄 与することなどの示唆を得ることができた. 奥村 豪 独立行政法人国際協力機構(JICA)長期派遣専門家

 c/o Vietnam Competition and Consumer Authority, Ministry of Industry and Trade  5th Floor, 25 Ngo Quyen, Hoan Kiem, Hanoi, Vietnam

 E-mail: [email protected]

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びその特徴を分析するとともに,経済成長を牽 引している輸出による生産誘発の海外流出につ いて,産業部門別の流出状況や関係部門間の取 引状況を踏まえつつ分析を行う.その上で,特 に輸出額の大きい産業部門を取り上げ,どのよ うな観点から産業構造上の課題があるといえる のか考察する1)

2.ベトナムにおける産業育成の

取組とその背景

 ベトナムにおいては,1986 年のドイモイ政 策の開始以降,工業化と市場経済化のための施 策が積極的に実施されてきている.特に,2007 年 1 月 の 世 界 貿 易 機 関(WTO) へ の 加 盟, 2008 年 12 月の日越経済連携協定の署名(2009 年 10 月発効)など,ベトナム経済と世界経済 との統合を進めるとともに,2011 年 1 月の「社 会経済発展 10 か年戦略(2011 20 年)」2) におい て 2020 年までに工業国化を達成するという目 標を掲げるなど,製造業における生産能力等を 高めるための取組を継続的に行ってきている.  例えば,2011 年 2 月及び 8 月において,機 械製造,電子・情報通信,自動車製造・組み立 て,紡績・縫製,皮革・履物及び先端技術支援 の 6 分野における裾野産業発展を推進する施策 を 推 進 す る 旨 の 首 相 決 定(No. 12/2011/QD-TTg3) )及び開発を優先的に行う対象製品に関 する首相決定(No. 1483/QD-TTg)がそれぞ れ制定されている.  また,2015 年 11 月には,上記両決定に代わ る政令(No. 111/2015/ND-CP4) )が制定され, 上記 6 分野に属し同政令が指定する製品に関 し,技術移転による試作品製造に対する資金援 助,先端技術研修の提供,技術研修・経営支援・ 貿易促進等を図る機関(裾野産業発展センター) の設置等のほか,指定製品を製造するための新 規投資,技術開発,改良等のプロジェクトに対 する法人税の優遇,必要設備に係る輸入関税の 免除,優遇金利の適用等が実施されてきてい る5)  その後,2018 年 5 月には,工業団地等に関 する政令(No. 82/2018/ND-CP)が制定され, 部品や素材等の製造等,裾野産業分野に特化し た工業団地について,国家予算等からの優先的 な資金の借入れ,土地リース料の減免等に関す る優遇措置を適用している.  このような取組の背景に関し,例えばブイ (2015)は,ベトナムの産業構造が,中国から 衣類・革靴生産に必要な設備や原材料を輸入し, 米国に最終製品を輸出するという三角貿易構造 となっているとし,このような設備や原材料を 生産できるベトナム国内での産業育成の必要性 があることを指摘している.  また,チャン(2017)は,ベトナム経済の特 徴として,賃金の低いベトナム国内で低付加価 値の組立等の労働集約的な作業が行われ,研究 開発や高付加価値の生産工程がベトナム国外で 行 わ れ て い る こ と を 挙 げ て い る ほ か, 田 中 (2018)は,このような特徴に関し,ベトナム 経済がドイモイ政策の下で急速な経済発展を遂 げてきたものの,裾野産業や労働生産性の状況 などを踏まえると,持続的な経済発展を遂げる ための経済構造が作り上げられてきたとは言い 難いと評価し,いわゆる「中所得国の罠」を念 頭に,労働力や資本の量的な拡大による高度経 済成長志向から,高付加価値産業の発展など, 経済構造の質的向上が必要であると指摘してい る.  ベトナムの産業構造に関する同様の指摘は, 産業連関表を活用して産業構造全体に関する評 価・分析を行い,産業部門ごとの特徴や問題点 等について論じている Ha and Trinh(2018) に も み ら れ る. 同 論 文 は,General Statistics Office of Vietnam(2015)による 2012 年ベト ナム産業連関表を基に 2016 年表(19 部門)を 推計し,影響力係数及び感応度係数がいずれも 1 を超えている「飲食料品」,「石油・ガス製品」 及び「その他製造業」の部門について輸入誘発 係数が比較的大きく粗付加価値誘発係数が比較 的小さいことに着目し,ベトナムの製造業が川 下に位置し,製造というよりは加工処理を行っ て い る 傾 向 に あ る こ と, ま た,2012 年 か ら

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2016 年にかけ全体として粗付加価値誘発係数 が減少傾向にある一方で輸入誘発係数が増加傾 向にあることから,このような特徴が色濃く なってきている旨指摘している.  このような指摘等から,ベトナムにおける産 業育成に向けた取組が進められている背景に は,経済成長の牽引役である輸出や海外からの 直接投資による国内に対する恩恵が少なく,更 なる経済成長を図るに当たっては国内産業主導 の産業構造に転換する必要性があることが挙げ られるものと考えられる.

3.分析方法

 発展途上国における経済構造の分析や産業育 成の方向性を検討するに当たって産業連関表を 用いて考察を行った事例としては,例えば,小 林ほか(2012)が挙げられる.当該論文では, スカイラインチャートを用いて産業構造と貿易 パターンについて分析し,その上で粗付加価値 誘発係数を基にカンボジア経済の中心的な産業 が国内投資や産業発展にどのような影響を与え ているかを検討しているほか,同係数と生産誘 発係数を併せてみることによって,どの産業部 門が国内投資と産業育成を図る対象として適切 かについて考察している.  また,齋藤(2012)は,ラオスの産業連関表 を推計し作成したスカイラインチャートをタイ のものと比較するなどしてラオスの産業構造に ついて分析を行っているほか,同国の資源に依 拠する産業部門の輸出や農業の生産性向上によ る経済発展の可能性について考察している.  特に貿易による生産誘発効果に着目した例と して,宇多(2017)は,日本における生産誘発 効果の自給度や収支について分析し,その中で, 閉じた経済圏を想定して競争輸入型産業連関表 で得た生産誘発効果と非競争輸入型産業連関表 による生産誘発効果を比較し,国内で発生する 生産誘発効果がどの程度失われる可能性がある のかという機会損失について考察している.  本稿では,このような産業連関表の活用事例 を踏まえ,現時点(2020 年 5 月 31 日現在)に おいて最新のベトナム産業連関表を公表してい る ADB が作成した 2010 年と 2017 年のベトナ ム産業連関表(非競争輸入型)6)を用い,まず, 2010 年及び 2017 年のスカイラインチャートを 比較し,また,国内生産額の変動の要因を分析 することにより,ベトナム経済の産業構造の変 化の状況及び経済成長の主要な牽引役について 考察する.  ここで用いるスカイラインチャートは,(国 内需要+輸出=国内生産+輸入)の関係が成立 することを踏まえ,両辺を国内需要で割ること によって得られる比率をチャート上に描くもの を用いる7).また,国内生産額の変動要因につ い て は,Δx=xt −x0 =Bt ft −B0 f0 =B0 ・Δf+Δ B・f0 +ΔB・Δf(x:国内生産額ベクトル,B:(I − Ad)− 1,I:単位行列,Ad:投入係数行列(開 放型),f:国産品に対する最終需要額ベクトル) により,国産品に対する最終需要(国産品に対 する国内最終需要と輸出に分けて分析),生産 技術構造及びその他の各要因に分解することに よって分析する8)  その上で,経済成長において中心的な役割を 担っている産業部門を支える国内産業の状況を みるため,特定部門が産出する中間財における 輸入の割合(以下「中間需要輸入依存率」とい う)及び特定部門の中間投入における輸入の割 合(以下「中間投入輸入依存率」という)につ いて分析する.ここで,中間需要輸入依存率(第 部門)は,∑=1 /∑=1( + )によるほか, 中間投入輸入依存率(第 部門)は,∑=1 / ∑=1( + )による( :国産財の中間投入額, :輸入財の中間投入額, , = 1,2,…, : 産業部門).  そして,最終需要項目別の生産誘発依存度及 び粗付加価値誘発依存度から需要サイドにおけ る役割が大きい最終需要項目を把握し,当該項 目による生産誘発の海外流出の可能性につい て,閉鎖型9)と開放型の逆行列係数を用いてそ れぞれ算出する当該項目の生産誘発額の差によ り分析する.ここで,最終需要項目別生産誘発

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依存度については,x =(I − Ad)−1fk d (x:生 産誘発額ベクトル,I:単位行列,Ad:投入係 数行列(開放型),fk d :国内最終需要項目(輸 出を含む)別の国産品に対する国内最終需要額 ベクトル, = 1,2,…, :最終需要項目) により,開放型の逆行列係数を用いて求めた国 産品に対する国内最終需要の項目ごとの合計生 産誘発額をそれらの総合計で割ることにより算 出する.最終需要項目別粗付加価値誘発依存度 についても同様であり,v=V(I−Ad )−1 fk d (v: 粗付加価値誘発額ベクトル,V:粗付加価値率 の対角行列)による.また,本稿では,特定の 最終需要項目による生産誘発の流出について, (I−A)−1fk d (A:投入係数行列(閉鎖型))に よ り 得 ら れ る 生 産 誘 発 額( 閉 鎖 型 ) と(I− Ad )−1 fk d により得られる生産誘発額(開放型) の差と定義する.  その上で,部門間取引の状況を把握するため, 輸出額と流出額のいずれも大きい産業部門及び 輸出額は大きいものの流出額が少ない産業部門 を取り上げ,これらの部門と他の産業部門との 関係を俯瞰する「連関図」を用い,国内産業に おける課題と施策の方向性について考察する.  また,生産技術構造の変化による国内生産額 及び粗付加価値額に対する寄与について分析す るに当たっては,第 部門の中間財の輸入の 10%が国内産に置き換わるという想定の下, 2017 年表の を( + 0.1 )と入れ替え,そ の 後 の(I−Ad)−1e 及 び(I−Ad)−1fdを 算 出 することにより分析を行う(e:輸出額ベクトル, fd :国産品に対する国内最終需要額ベクトル).

4.ベトナムの産業構造の変化

4 1

 国内生産と需要の状況

 初めに,2010 年及び 2017 年の産業連関表か ら得られる国内需要額,輸出入額及び国内生産 額を用いた図 1 のスカイラインチャート(横軸 は 各 産 業 部 門 の 国 内 生 産 額 の 比 率 と し て い る10) )から,産業の構成や各産業部門における 輸出入の変化について分析する.  当該二時点のスカイラインチャートの比較か ら,産業全体の構造については,「3.飲食料品」 及び「4.繊維製品」を含む第二次産業及び第 三次産業の国内生産額に占める割合が全体的に 大きくなっており,第一次産業の割合が低下し ていることから,経済構造が工業化の傾向にあ ることが分かる.  また,特に,「2.鉱業」,「3.飲食料品」,「4. 繊維製品」,「5.革・革製品・履物」,「10.ゴム・ プラスチック」,「14.電子・光学機器」,「16. その他の製造業」等の産業部門における国内生 産の伸びが大きい.このうち,ADB が「Low Tech」に分類11)し,労働集約的な産業部門で ある「5.革・革製品・履物」の輸出の伸びが 最も大きく,同様の性格を有する「2.鉱業」,「3. 飲食料品」,「4.繊維製品」についても比較的 大きい伸びがみられる.また,ADB が「High and Medium Tech」に分類している「14.電子・ 光学機器」については,2010 年時には国内生 産によって国内需要が賄えない状況であったも のの,2017 年には輸入超過から輸出超過の状 況に変化している.  他方,大きな輸出超過がみられる「3.飲食 料品」,「4.繊維製品」,「5.革・革製品・履物」, 「10.ゴム・プラスチック」のような労働集約 的又は「Low Tech」に分類されている産業部 門に優位性があり,「11.その他の非鉄金属」, 「14.電子・光学機器」等を除き,「8.石油・ 石炭製品」,「9.化学製品」,「12.金属加工基 礎製品」,「13.一般機械」のような資本集約的 又は「High and Medium Tech」に分類されて いる産業部門においては,国内生産が国内需要 を満たすことができず輸入に頼るという全体の 構造は,大きく変化していないものとみられる.

4 2

 国内生産額の変動要因

 次に,国内生産額の変化が,輸出,国産品に 対する国内最終需要及び生産技術構造の各要因 によってどのようにもたらされたのかについて 分析する.

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図 1 スカイラインチャート(ベトナム,2010 年及び 2017 年)

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 図 2 から,全体的にみて,輸出が国内生産額 の変化に比較的大きく寄与しており,輸出がベ トナム経済の牽引役となっていることが分か る.  他方,生産技術構造要因についてみると,第 一次産業及び第二次産業のうち,「8.石油・石 炭製品」,「12.金属加工基礎製品」,「13.一般 機械」,「15.輸送機械」,「17.電力・ガス・水 道」,「18.建設」の 6 部門を除く各部門におい て,国内生産額の変化に対してマイナスに寄与 している.  このことは,第一次産業及び第二次産業に属 する大部分の産業部門において,中間財の取引 に関する構造に改善の余地があることを示唆す る.

4 3

 中間需要における海外依存度

 国内生産額の変化に対して生産技術構造の変 化の寄与がマイナスとなっている産業部門につ いては,前記 2 で触れたブイ(2015)による原 材料の輸入依存が高いとの指摘,また,田中 (2018)による裾野産業が発展していないとの 指摘等から,中間財に係る輸入依存がその主要 な要因となっているのではないかと考えられ る.  そこで,特定の部門が各部門に産出する中間 財のうちどの程度輸入が占めているか(中間需 要輸入依存率),また,特定の部門が生産活動 を行うに当たって各部門から投入を受ける中間 財のうちどの程度輸入が占めているか(中間投 入輸入依存率)について,それぞれ分析する.  表 1 をみると,2010 年から 2017 年にかけ, 第一次産業及び第二次産業のうち,「8.石油・ 石炭製品」,「13.一般機械」,「15.輸送機械」 及び「18.建設」の各部門において中間需要輸 入依存率が低下しているほか,「17.電力・ガス・ 水道」において中間投入輸入依存率が低下して いるが,これらの産業部門は,前記 4 2 の変動 図 2 国内生産額の変動要因 (注)ADB によるベトナム産業連関表(2010 年及び 2017 年)を基に筆者作成.

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要因分析において生産技術構造が国内生産額の 変化に対してプラスの寄与をしている産業部門 と一致している.  このことは,ベトナムの産業構造においては, 中間財の輸入依存率の低下が生産技術構造によ る国内生産額への寄与をプラスとすることを示 唆しているものと考えられる.  なお,「2.鉱業」,「10.ゴム・プラスチック」, 「23.内陸輸送」について 2017 年の数値をみる と,中間需要輸入依存率が低い一方で中間投入 輸入依存率が高くなっている.このことは,一 見すると,他部門からのこれらの部門に対する 中間需要については国内で賄えるようにみえる ものの,その背後においては,その生産のため に輸入原材料に多くを頼らざるを得ないという 状況にあることが分かる.  特に,「14.電子・光学機器」12)については, 中間需要輸入依存率及び中間投入輸入依存率の 両方が高く,2010 年から 2017 年にかけて両輸 入依存率が増加し,前記 4 2 のとおり,国内生 表 1 中間財に係る輸入依存率の状況 中間需要輸入依存率 中間投入輸入依存率 2010 2017 差 2010 2017 差 1.農林水産業 13.8% 17.2% 3.4% 23.9% 29.8% 5.9% 2.鉱業 14.9% 22.5% 7.6% 40.1% 46.6% 6.6% 3.飲食料品 11.8% 14.4% 2.6% 14.1% 15.9% 1.7% 4.繊維製品 23.3% 35.3% 12.0% 25.2% 33.4% 8.2% 5.革・革製品・履物 8.9% 11.6% 2.7% 17.7% 22.7% 5.0% 6.木材・木製品 3.0% 5.2% 2.2% 14.2% 16.1% 1.8% 7.パルプ・紙・紙製品 20.4% 23.3% 2.9% 22.2% 25.8% 3.6% 8.石油・石炭製品 55.3% 53.6% ↓ − 1.7% 35.1% 37.2% 2.2% 9.化学製品 57.9% 59.6% 1.7% 37.0% 43.2% 6.2% 10.ゴム・プラスチック 17.2% 19.9% 2.6% 38.0% 43.3% 5.3% 11.その他の非鉄金属 11.4% 13.9% 2.5% 23.9% 25.5% 1.6% 12.金属加工基礎製品 50.1% 51.5% 1.4% 44.1% 50.6% 6.5% 13.一般機械 67.8% 64.5% ↓ − 3.2% 43.8% 52.1% 8.3% 14.電子・光学機器 44.1% 49.9% 5.9% 39.8% 45.4% 5.6% 15.輸送機械 20.6% 16.9% ↓ − 3.7% 29.8% 33.0% 3.3% 16.その他の製造業 22.9% 27.5% 4.6% 22.0% 25.3% 3.3% 17.電力・ガス・水道 2.3% 2.4% 0.2% 25.0% 23.7% ↓ − 1.3% 18.建設 0.6% 0.5% ↓ − 0.1% 30.5% 34.5% 4.0% 20.卸売業 1.2% 1.3% 0.0% 19.4% 21.0% 1.5% 22.宿泊・飲食業 6.6% 12.5% 5.9% 24.4% 26.0% 1.6% 23.内陸輸送 1.0% 1.3% 0.3% 42.1% 47.5% 5.4% 27.郵便・情報通信 3.6% 7.9% 4.2% 23.0% 27.6% 4.6% 28.金融仲介業 18.8% 25.7% 6.9% 18.0% 23.0% 5.0% 29.不動産 1.9% 3.2% 1.3% 12.6% 15.3% 2.7% 30.物品賃貸その他 13.3% 17.0% 3.7% 19.7% 22.3% 2.5% 31.公務 0.1% 0.1% 0.0% 21.0% 22.3% 1.3% 32.教育 15.1% 13.3% ↓ − 1.8% 20.1% 19.2% ↓ − 0.9% 33.健康・福祉 7.9% 5.9% ↓ − 2.0% 46.7% 32.5% ↓ − 14.2% 34.その他のサービス 4.2% 6.2% 1.9% 22.5% 24.6% 2.1% (注1)ADB によるベトナム産業連関表(2010 年及び 2017 年)を基に筆者作成. (注2)2017 年における国内生産額の合計に占める割合が 1%以上の部門について掲載. (注3)2010 年及び 2017 年におけるいずれかの輸入依存率が 40%以上の部門に網掛けを行っている.

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産額の変化に対する生産技術構造要因がマイナ スに寄与している中で,前記 4 1 のスカイライ ンチャートの変化にみられるように,2010 年 から 2017 年にかけ,輸入超過から輸出超過の 状態に変化している.  このことは,「14.電子・光学機器」が中間 財を輸入し最終製品に組み立てる工程を中心に 発展していることを示唆するものと考えられ る.

5.生産誘発の海外流出

5 1

 誘発依存度

 ベトナム経済における国内最終需要の各項目 の役割は,表 2 のとおり,各項目に係る生産誘 発依存度及び粗付加価値誘発依存度における 2010 年から 2017 年の動きから,大きく変化し たことが分かる.  特に,2010 年から 2017 年にかけ,民間消費 支出に対する両依存度は若干減少している一方 で,輸出に関してはそれぞれ約 10%ポイント 増加し,輸出に対する生産誘発依存度は 50% 超,粗付加価値誘発依存度は 47.6%に拡大して いる.  このため,ベトナム経済においては,2010 年から 2017 年にかけ,需要面及び付加価値面 における輸出に対する依存度が大きく高まった ことが分かる.

5 2

 海外への生産波及の状況

 一般的に,特定の部門における生産活動に投 入される中間財の輸入依存率(中間投入輸入依 存率)が高い場合,当該特定部門に対する最終 需要は国内の生産をそれほど誘発せず,その誘 発効果の多くが海外に流出するものと考えられ る.  ここでは,特にベトナムの経済成長に大きく 寄与し,生産誘発及び粗付加価値誘発共に依存 度の高い輸出による生産誘発効果が国内におい てどの程度の規模で享受されているのか,また, 海外にどの程度流出しているのか,2017 年に おける輸出による生産波及の状況について閉鎖 型及び開放型の逆行列係数を用いた場合の生産 誘発額の差を分析することにより考察する.た だし,ここでいう「流出」については,宇多(2017) が指摘するように,実際に海外に流出した実績 額又は率ではなく,あくまで国内産業に誘発さ れたであろう生産機会の損失を意味するものと なる.  表 3 のとおり,「1.農林水産業」,「2.鉱業」, 「3.飲食料品」,「4.繊維製品」,「8.石油・石 炭製品」,「9.化学製品」,「12.金属加工基礎 製品」,「14.電子・光学機器」の各部門につい ては,閉鎖型の逆行列係数を用いた生産誘発額 が比較的大きいことから,これらの部門はベト ナムの輸出を支えている産業部門と位置付けら れる.  特に,自らの部門における輸出額の少ない「8. 石油・石炭製品」,「9.化学製品」,「12.金属 表 2 最終需要項目別生産誘発依存度及び粗付加価値誘発依存度 最終需要項目 生産誘発依存度 粗付加価値誘発依存度 2010 年 2017 年 2010 年 2017 年 民間消費支出 35.8% 33.0% 38.8% 36.4% 政府消費支出 2.9% 3.1% 5.0% 5.3% 資本形成 18.7% 12.6% 16.9% 11.1% 在庫等増減 2.9% 0.5% 2.6% 0.4% 輸出 39.8% 50.8% 36.7% 46.7% 合計 100.0% 100.0% 100.0% 100.0% (注)ADB によるベトナム産業連関表(2010 年及び 2017 年)を基に筆者作成.

(9)

加工基礎製品」といった部門は,専ら他の産業 部門の生産品の輸出を支える役割を果たしてい るといえる.ただ,その流出率の高さから,当 該部門が供給する中間財の多くは輸入によって 賄われ,その輸入中間財が他の部門の輸出を支 えているという構造となっているものとみられ る.  他方,「3.飲食料品」,「4.繊維製品」,「14. 電子・光学機器」といった部門は,閉鎖型の逆 行列係数による生産誘発額に加え,輸出額につ いても比較的大きい.このうち,「3.飲食料品」 及び「4.繊維製品」については,流出率が比 較的低く,前記 4 3 の表 1 のとおり,中間需要 輸入依存率及び中間投入輸入依存率が比較的低 いことから,中間財から完成品に至る生産工程 が国内に存在していることが窺われる.一方で, 「14.電子・光学機器」については,流出率が 比較的高く,流出額も大きいことから,当該部 門が供給する中間財の多くが輸入によって賄わ れていることが分かると同時に,自部門及び他 の部門における輸出のための生産活動に対して 中間財を供給する国内事業者が当該流出額に相 当する規模で不足していることが分かる.

5 3

 連関図による分析

 前記 5 1 から,特に流出額の大きい「8.石油・ 石炭製品」,「9.化学製品」,「12.金属加工基 礎製品」,「14.電子・光学機器」の各部門にお ける中間財の国内生産体制が発展していないこ とが認められるものの,これまでの分析では, 表 3 輸出による生産誘発の状況(2017 年) (単位:百万米ドル) 部門 輸出 生産誘発額 (閉鎖型) 生産誘発額 (開放型) 流出額 流出率 1.農林水産業 8,900.6 46,756.7 33,445.0 13,311.8 28.5% 2.鉱業 11,086.9 30,319.0 15,221.5 15,097.6 49.8% 3.飲食料品 31,432.1 53,954.6 47,131.6 6,823.0 12.6% 4.繊維製品 20,710.5 45,412.1 32,522.5 12,889.5 28.4% 5.革・革製品・履物 15,160.1 20,457.1 19,549.5 907.7 4.4% 6.木材・木製品 1,491.1 5,870.0 4,519.9 1,350.1 23.0% 7.パルプ・紙・紙製品 590.7 8,804.7 4,394.4 4,410.3 50.1% 8.石油・石炭製品 557.4 42,409.9 8,894.3 33,515.6 79.0% 9.化学製品 1,834.0 46,700.9 9,566.0 37,134.9 79.5% 10.ゴム・プラスチック 5,423.7 15,729.3 10,632.9 5,096.3 32.4% 11.その他の非鉄金属 3,579.9 5,441.9 4,610.3 831.6 15.3% 12.金属加工基礎製品 5,414.1 67,099.1 16,111.8 50,987.3 76.0% 13.一般機械 1,048.7 10,382.3 2,645.1 7,737.2 74.5% 14.電子・光学機器 21,570.7 51,821.9 30,045.1 21,776.8 42.0% 16.その他の製造業 7,130.8 11,194.0 9,047.0 2,147.0 19.2% 17.電力・ガス・水道 52.1 7,884.9 4,511.4 3,373.5 42.8% 20.卸売業 10,818.4 28,772.6 21,675.4 7,097.2 24.7% 22.宿泊・飲食業 7,337.6 8,794.6 8,107.2 687.4 7.8% 23.内陸輸送 2,025.7 5,192.9 3,932.6 1,260.3 24.3% 28.金融仲介業 1,014.8 11,447.3 5,290.9 6,156.4 53.8% 30.物品賃貸その他 808.2 6,223.7 3,365.2 2,858.5 45.9% 合計(全部門) 166,500.0 552,283.0 311,762.2 240,520.9 43.6% (注1)ADB によるベトナム産業連関表(2017 年)を基に筆者作成. (注2)閉鎖型の逆行列係数により算出した生産誘発額(閉鎖型)ベクトルにおける値が 5,000 百万ドル以上の部門について掲載. (注3) 流出額については生産誘発額(閉鎖型)ベクトルの第 i 部門の値( )と生産誘発額(開放型)ベクトルの第 i 部門の値( )の差( − )であり,流出率については( − )/ により算出.

(10)

を併せて参照)をもたらす主な要因となってい るものと考えられる.  次に,「14.電子・光学機器」部門は,輸出 のほか,中間財を「13.一般機械」,「15.輸送 機械」,「18.建設」,「27.郵便・情報通信」の 各部門に供給しているが,これらの中間財の過 半が輸入によって賄われている.このことは, 「14.電子・光学機器」部門のベトナム国内で の生産の役割は専ら海外需要(輸出)を満たす ことであって,自部門や他の部門における国内 産業が中間財として必要としている製品を国内 向けに供給するという役割を担うことができて いないことが分かる.  一方で,「3.飲食料品」に関しては,図 4 の とおり,当該部門に供給される中間財のほとん どが国内製品であり,また,部門内取引におい てもほぼ自国内で完結していることから,当該 部門を支える産業が国内に存在しているものと 考えられ,このことが生産誘発の海外流出の度 合いが低い要因となっているものとみられる. どの部門におけるどの部門に対する中間財の国 内生産がどの程度不足しているのかという点に ついては,これを視覚的にみることは難しい.  そこで,これらの部門のうち,輸出額が大き い「14.電子・光学機器」について,その投入 面及び産出面から関係のある産業部門との取引 状況について連関図13)を用いて分析する.また, 併せて,輸出額が最も大きい部門であるものの 流出率が小さい「3.飲食料品」の連関図につ いても分析する.  まず,図 3 において中間投入の側面をみると, 「14.電子・光学機器」に中間財を供給する産 業部門として「12.金属加工基礎製品」が重要 であることが分かるが,当該部門から供給され る中間財の約半分が輸入によって賄われてい る.また,「14.電子・光学機器」部門内にお ける取引のうち過半が輸入によって賄われてお り,輸出される製品を製造するための関連部品 の多くが輸入されている.このため,これら中 間財の輸入が輸出による生産誘発の流出(表 3 図 3 「14.電子・光学機器」部門に関する連関図 (注)ADB によるベトナム産業連関表(2017 年)を基に筆者作成.

(11)

 他方,「3.飲食料品」に対する最大の中間財 供給元である「1.農林水産業」に中間財を供 給している「8.石油・石炭製品」及び「9.化 学製品」については,その供給の過半を輸入が 担っている.  なお,「8.石油・石炭製品」及び「9.化学 製品」については,前記 5 2 において,輸出額 が少なく,専ら他の産業部門の生産品の輸出を 支える役割を果たしている部門と位置付けられ る旨言及しているが,具体的に,「3.飲食料品」 との関係では,「1.農林水産業」,「10.ゴム・ プラスチック」,「23.内陸輸送」といった部門 を介して「3.飲食料品」を間接的に支えてい ることが分かる.

6.考察

6 1

 施策の方向性

 これまでの分析から,ベトナムの経済成長の 牽引役である輸出による国内産業に対する生産 誘発の状況が産業ごとに異なり,例えば,中間 財における輸入依存の高い産業部門に関して は,国内産業が輸出によって享受する恩恵が限 定的であること,また,産業部門間の取引にお ける生産誘発の流出の状況等について具体的に 把握することができたものと考えられる.  特に,輸出による生産誘発の流出の程度が比 較的大きい「14.電子・光学機器」については, 輸出製品を製造するための関連部品の調達(自 部門取引)や関連部品の製造に必要な「12.金 属加工基礎製品」からの中間財の多くを輸入に 依存しているほか,その供給先である「18.建 設」等の部門が必要とする製品を供給できてお らず,国内において需要と供給のミスマッチが 生じていることが判明した.このことは,「14. 電子・光学機器」におけるベトナムの位置付け が輸出製品の組立工程でしかないとの見方を支 持する.  また,ベトナムにおいては,中間財における 輸入依存率の低下が生産技術構造の変化を通じ て国内生産額に対してプラスに寄与しているこ とも確認することができたところである.  このため,「14.電子・光学機器」に関しては, 図 4 「3.飲食料品」部門に関する連関図 (注)ADB によるベトナム産業連関表(2017 年)を基に筆者作成.

(12)

輸出製品を組み立てるための部品等の中間財の 製造,当該部品製造に必要な「12.金属加工基 礎製品」等における中間財の製造,また,「18. 建設」等の国内産業が必要とする製品の製造を 国内で行うといった視点からの施策の必要性が 浮かび上がる.

6 2

 施策の効果

 産業連関分析の特徴の一つは,何らかの具体 的な施策が実施された場合の経済効果を推測す ることができる点である.ここでは,仮に,輸 出による生産誘発効果が大きいものの流出額も 大きい「8.石油・石炭製品」,「9.化学製品」, 「12.金属加工基礎製品」及び「14.電子・光 学機器」について海外直接投資を呼び込むなど の何らかの施策を実施し,これによってこれら の 産 業 部 門 が 供 給 す る 中 間 財 の 輸 入 部 分 の 10%が国内による供給に切り替わった場合(た だし,他の産業部門の構造は全く変化しないこ とを前提とする),国内生産額及び粗付加価値 額にどのような効果があるのか,2017 年のベ トナム産業連関表を用いて試算する.  表 4 のとおり,2017 年における各部門の輸 出額及び国産品に対する国内最終需要額が全く 変化しない場合,上記の 4 つの部門における 10%の輸入が国内生産品に代替されることによ り,国内生産額を 14,774.1 百万ドル(増加率 2.41%)及び粗付加価値額を 3,694.8 百万ドル(増 加率 1.73%)押し上げるとの計算結果が導き出 される.特に,2017 年当時におけるベトナム に お け る 名 目 GDP が 約 2,240 億 ド ル で あ り, 同年の GDP 成長率が 6.81%であること14)から, これらの数字については政策的にも一定の意義 が認められるものと考えられる.

7.おわりに

 一般論として,ベトナム経済の持続的な成長 を実現するに当たっては,各種統計を用いた経 済状況の正確な把握,産業構造等のより具体的 な分析等を背景とした施策の検討・実施が重要 と考えられる.  本稿では,このような観点から,ADB が公 表している 35 部門の産業連関表を使用し,産 業部門間の中間財に係る取引関係等に着目する ことにより,輸出による生産誘発の海外流出の 要因について把握を試みた.  特に,輸出額の大きい「14.電子・光学機器」 に関しては,自部門内での取引と同部門に中間 財を供給する「12.金属加工基礎製品」部門と の取引における輸入依存率の高さに,生産誘発 の海外流出の主な要因があることが分かったほ か,ベトナムにおける「14.電子・光学機器」は, 他部門における中間財の需要に応える産業と なっていないことが分かった.  また,今回の分析により,ベトナムにおいて は,中間財における輸入依存率の低下が生産技 術構造の変化を通じて国内生産額及び粗付加価 値額の増加に寄与することを明らかにすること ができた.  しかしながら,35 部門の産業連関表を用い た分析では,産業部門間の関係等について細か 表 4 生産誘発額及び粗付加価値誘発額における政策効果 (単位:百万米ドル) 生産誘発額 粗付加価値誘発額 切替前 ( ) 切替後 ( ) 差 ( − ) 増加率 ( − )/ 切替前 ( ) 切替後 ( ) 差 ( − ) 増加率 ( − )/ 輸出 311,762.2 319,384.3 7,622.1 2.44% 99,707.5 101,621.1 1,913.5 1.92% 国産品に対する 国内最終需要 301,586.9 308,738.9 7,152.0 2.37% 113,782.7 115,564.0 1,781.3 1.57% 合計 613,349.1 628,123.2 14,774.1 2.41% 213,490.2 217,185.0 3,694.8 1.73% (注)ADB によるベトナム産業連関表(2017 年)を基に筆者作成.

(13)

く分析し,海外流出の要因をより具体的に把握 することは困難である.また,ベトナム統計局 (General Statistics Office of Vietnam)は,こ れまで,1989 年,1996 年,2000 年,2007 年及 び 2012 年の産業連関表を作成しているものの, 2012 年表(164 部門)の後の産業連関表の公表 は現時点(2020 年 5 月末現在)ではなされて いないため,経済成長の著しいベトナム経済の 最新の状況を踏まえた分析を行うことは難し い.  このため,今後,ベトナム統計局から最新の ベトナム産業連関表が作成・公表されることが 望まれるとともに,同表が作成・公表された場 合には,これを活用し,産業部門間の関係の変 化や課題等についてより具体的かつ詳細な分 析・検討を行う必要があるものと考えられる. 〔注〕 1) 本稿を執筆するに当たり,法政大学経済学部の菅幹 雄教授から有益なアドバイスを頂いた.また,本稿 の査読者から多くの有益な指摘を頂戴した.ここに 感謝の意を表したい.なお,断るまでもなく,本稿 における誤りは全て筆者に帰するものである. 2) 「社会経済発展 10 か年戦略(2011 20 年)」は,2011 年 1 月の第 11 回共産党大会で採択された文書であり, 2016 年 1 月の第 12 回共産党大会において,それまで の 5 年間における実施結果の評価のほか,2016 年か ら 2020 年の方向性に関する報告書が採択されている. 当該報告書では,2016 年から 2020 年の目標として, 生産性・競争力の向上,早期に近代的な工業国にな るための基礎作り,などが掲げられている. 3) ここでいう「QD-TTg」は首相決定を示すベトナム 語の略であり,「QD」は決定(Quyết Định),また, 「TTg」は首相(Thủ Tướng)の略である. 4) ここでいう「ND-CP」は政令を示すベトナム語(Nghị Định của Chính Phủ)の略である. 5) 特に,自動車産業については,2016 年 2 月,輸入車 の関税削減・撤廃に伴う国内産業支援策として,小 型自動車やエンジン等の重要部品を生産する企業等 に対し,更なる優遇措置を適用するとの首相決定(No. 229/QD-TTg)がなされている. 6) ADB のホームページ(https://data.adb.org/dataset/ viet-nam-input-output-economic-indicators) を 参 照 (2020 年 5 月 31 日アクセス確認).また,本稿で用い ている部門の和名に対するオリジナルの英文名との 対応関係については付表のとおりである. 7) 本稿において Leontief(1963)によるスカイライン チャートを作成するに当たっては,山梨大学教育学 部准教授の宇多賢治郎氏によって開発され,宇多 (2019)において解説されている「Ray3」を用いた. また,総務省(2020)及び三重県(2017)を参照した. 8) 詳細については,宍戸(2010),総務省(2020)等を 参照されたい. 9) ADB が公表している産業連関表は非競争輸入型であ るため,中間投入における輸入部分を国内部分に加 えて投入係数を算出し,その上で閉鎖型の逆行列係 数を算出した. 10) 「21.小売業」については,ADB のベトナム産業 連関表上,国内生産額,中間投入額及び粗付加価値 額が計上されておらず,その理由は不明である. 11) ADB(2018)における分類による.

12) General Statistics Office of Vietnam(2018) に よ ると,2017 年における主要輸出品目の第 1 位が携帯 電話・部品,第 2 位がコンピュータ・部品となって いる. 13) 連関図については,併せて,東北大学公共政策大 学院ワークショップ I(プロジェクト B)最終報告書 (2015)及び奥村(2019)を参照されたい.

(14)

付表 産業部門名対訳表

ADB の産業連関表における産業部門名 本稿における産業部門の表記 1.Agriculture, hunting, forestry, and fishing 1.農林水産業

2.Mining and quarrying 2.鉱業 3.Food, beverages, and tobacco 3.飲食料品 4.Textiles and textile products 4.繊維製品 5.Leather, leather products, and footwear 5.革・革製品・履物 6.Wood and products of wood and cork 6.木材・木製品 7.Pulp, paper, paper products, printing, and publishing 7.パルプ・紙・紙製品 8.Coke, refined petroleum, and nuclear fuel 8.石油・石炭製品 9.Chemicals and chemical products 9.化学製品

10.Rubber and plastics 10.ゴム・プラスチック 11.Other nonmetallic minerals 11.その他の非鉄金属 12.Basic metals and fabricated metal 12.金属加工基礎製品 13.Machinery, nec 13.一般機械 14.Electrical and optical equipment 14.電子・光学機器 15.Transport equipment 15.輸送機械 16.Manufacturing, nec; recycling 16.その他の製造業 17.Electricity, gas, and water supply 17.電力・ガス・水道 18.Construction 18.建設

19.Sale, maintenance, and repair of motor vehicles and motorcycles; retail sale of fuel 19.自動車販売・修理 20.Wholesale trade and commission trade, except of motor vehicles and motorcycles 20.卸売業

21.Retail trade, except of motor vehicles and motorcycles; repair of household goods 21.小売業 22.Hotels and restaurants 22.宿泊・飲食業 23.Inland transport 23.内陸輸送 24.Water transport 24.水運 25.Air transport 25.航空輸送

26.Other supporting and auxiliary transport activities; activities of travel agencies 26.旅行業その他の運送 27.Post and telecommunications 27.郵便・情報通信 28.Financial intermediation 28.金融仲介業 29.Real estate activities 29.不動産 30.Renting of M&Eq and other business activities 30.物品賃貸その他 31.Public administration and defense; compulsory social security 31.公務

32.Education 32.教育 33.Health and social work 33.健康・福祉 34.Other community, social, and personal services 34.その他のサービス 35.Private households with employed persons 35.家事サービス

ADB の産業連関表における最終需要項目名 本稿における産業部門の和名 36.Final Consumption Expenditure by Households 36.民間消費支出

(部門 37 については数字が計上されていないため,部門 36 及 び 37 を合わせて「民間消費支出」とした.)

37.Final Consumption Expenditure by NPISHs

38.Final Consumption Expenditure by Government 38.政府消費支出 39.Gross Capital Formation 39.資本形成 40.Changes in Inventories and Valuables 40.在庫等増減 41.Exports 41.輸出

(15)

●参考文献 宇多賢治郎(2017)「2011 年産業連関表の比較と我が国 経済の構造変化の検証」『経済統計研究』第 44 巻第 4 号,27 42 ページ,経済産業統計協会. 宇多賢治郎(2019)「スカイラインチャートなどのグラ フ描画プログラムを組む方法」『産業連関―イノベー ション& I-O テクニーク―』第 27 巻第 1 号,39 58 ペー ジ,環太平洋産業連関分析学会. 奥村豪(2019)「価格カルテルの経済効果に関する産業 連関分析の有効性の検討」『産業連関―イノベーショ ン& I-O テクニーク―』第 27 巻第 1 号,81 89 ページ, 環太平洋産業連関分析学会. 小林慎太郎・山本由紀代・丹治肇・齋藤勝宏(2012)「カ ンボジアにおける経済開発と貧困削減―産業連関分 析からの展望―」『産業連関―イノベーション& I-O テクニーク―』第 20 巻第 1 号,49 58 ページ,環太 平洋産業連関分析学会. 齋藤勝宏(2012)「ラオスの社会会計表の推計と資源利 用に基づく経済発展の可能性」『産業連関―イノベー ション& I-O テクニーク―』第 20 巻第 1 号,59 71 ペー ジ,環太平洋産業連関分析学会. 宍戸駿太郎監修(2010)『産業連関分析ハンドブック』 環太平洋産業連関分析学会編,東洋経済新報社. 清水雅彦・菅幹雄(2013)『経済統計―産業活動と物価 変動の統計的把握―』培風館. 総務省(2020)『平成 27 年(2015 年)産業連関表―総 合解説編―』総務省. 田中隆(2018)「ベトナムにおけるドイモイ政策と経済 開発の課題」『日本大学大学院総合社会情報研究科紀 要』No. 19,109 119 ページ,日本大学大学院総合社 会情報研究科. チャン ティ フエ(2017)「ベトナム製造企業におけ る研究開発活動の決定因」『Journal of the Graduate School of Asia-Pacific Studies』No. 34,75 99 ページ, Graduate School of Asia-Pacific Studies, Waseda

University. 東北大学公共政策大学院ワークショップ I(プロジェク ト B)最終報告書(2015)「宮城県における産業の特 徴とその持続的発展に資する施策」(掲載ホームペー ジ:http://www.publicpolicy.law.tohoku.ac.jp/about/ hyoka/workshop/2014/b.pdf)(2020 年 5 月 31 日 ア クセス確認). ブイ ディン タン(2015)「ベトナム貿易構造の特徴 と課題」『佐賀大学経済論集』第 47 巻第 6 号,109 125 ページ,佐賀大学経済学会. 三重県(2017)「近隣県とのスカイラインチャート比較 による三重県の産業構造の特徴について∼平成 23 年 産業連関表より」(三重県ホームページ(www.pref. mie.lg.jp/common/content/000724470.pdf) に 掲 載. 2020 年 5 月 31 日アクセス確認).

Asian Development Bank (2018)

, Asian Development Bank.

General Statistics Office of Vietnam (2015) Ả

ĐỐ

Ă , General Statistics Office of Vietnam.

General Statistics Office of Vietnam (2018)

, General Statistics Office of Vietnam.

Ha, N.H.P. and B.Trinh (2018) “Vietnam Economic Structure Change Based on Vietnam Input-Output Tables 2012 and 2016,”

, No. 8, pp. 699 708, Scientific Research Publishing.

Leontief, Wassily W. (1963) “The structure of development,”

, edited by Wassily W. Leontief (1986), pp. 162 187, Oxford University Press.

図 1 スカイラインチャート(ベトナム,2010 年及び 2017 年)

参照

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