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職業能力開発と地域産業社会

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Academic year: 2021

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(1)職業能力開発と地域産業社会 國 重 正 雄. るサービス産業におけるパートタイム労働者の. はじめに. 増加,もう一つは,製造業における非正規労働. 2008 年 9 月 の リーマ ン・ショック に 端 を 発. 者の増加である.. する世界経済危機は,日本経済に対しても激震. 前者の経済のソフト化については,日本経済. を及ぼした.その影響は労働市場に及び,多く. が 1980 年代での脱工業化・産業の空洞化の過. の派遣労働者が,解雇あるいは雇止めとなり,. 程を経て,知識集約型産業へと転換を始め,高. 2008 年 の 年末 に は,東京 に「年越 し 派遣村」. 付加価値型の知識集約型産業(主として IT 産. が出現するなどの事態となった.大都市圏の自. 業,金融・保険業等)と低付加価値の労働集約. 治体では, 社宅を追い出された労働者のために,. 型産業(主としてサービス業,例示としてコン. 緊急に県営住宅,市営住宅を提供するという対. ビニ,宅配便,ファーストフード,介護ヘルパー. 策に追われてきた.世界経済の動向が,企業経. 等)の両極に分かれて展開してきた.特にサー. 営,雇用状況,地域社会,そして個人の生活に. ビス業は,パートタイム労働などに労働力の多. 1). 直結しているという象徴的な出来事である .. くの部分を依存し,低賃金で数多くの労働者を. 残念ながら,我が国は未だもってこの経済不. 雇用 し て き た.こ の 数年 に 至って は,パート. 況から完全に立ち直ることが出来ていないのが. タイム労働者,中でも日雇い派遣労働者の中か. 実情 で あ る.2009 年第二四半期 と な り,経済. ら,定住地を持たない,いわゆる 「住居喪失. 面では一部に明るさが見えてきたものの,雇用. 者 (ネットカフェ難民)」までも生んでいる3).. 面では失業率が 5% 台後半と一層厳しい状況と. また,後者の製造業における非正規労働者の. なって い る.ち なみに,平成 21 年度財政経済. 増加は,先に述べた派遣事業における規制緩和. 白書では, いまや企業内の潜在的な失業者数が,. と密接な関係にあると考えられる.もっとも,. 最大 528~607 万人にも上るとしている2).. 製造業における非正規労働者の増加は,経済・. 現在,非正規労働者が大きな問題となってい. 産業構造の変化に伴う必然的なものであり,派. るが, 非正規雇用の関する規制緩和については,. 遣・請負の区別を厳密にした上で,製造分野の. 1996 年の派遣事業の拡大,1999 年の派遣事業,. 派遣を禁止すれば,製造業の海外生産シフトに. 有料職業紹介 が 原則自由化,2003 年 に は 派遣. よる雇用空洞化の加速が懸念される,という意. 期間の延長や製造業への解禁,2004 年の有期. 見もある4).このような議論を踏まえるならば,. 雇用契約の上限が原則 1 年から 3 年へ延長とい. 我が国の非正規雇用の問題は,単に,労働分野. う変遷を経てきた.この非正規労働者の増加に. における規制緩和という論点だけでなく,経済. は,主に 2 通りの要因が考えられるのではない. のグローバル化の中で検討・議論されるべき課. か.一つには脱工業化後の経済のソフト化によ. 題であるということになる..

(2) 60. (570). 横浜国際社会科学研究 第 14 巻第 5 号(2010 年 1 月). さらに,戦後の日本経済を振り返るならば,. 今回は,この 2 つの軸の前者,すなわち,職. このような我が国の雇用問題は,非正規労働者. 業能力開発政策と地域産業社会との関係につい. の問題に止まらず,より大きな転換期にあると. て,神奈川県を例に検討する.途上国における. 考えられる.戦後の高度経済成長期の工業化の. 課題の検討については,別の機会に譲るが,地. 中で,農村部から都市部への大量の労働力移動. 域の自律的成長及び人的資本形成について,次. をもたらし,工場労働者や営業職・事務職はじ. 節では,まず,これまでの開発論における論点. め多数の給与所得者が生まれた.その結果,所. を簡単に整理しておきたい.. 得階層において厚い中間的な所得階層を形成 した.ま た,終身雇用制とそれを支える年功. 1 地域の自律的成長・発展. 序列賃金体系を構築した.近年,高度経済成長. 地域 の 自律的成長及 び 人的資本形成 に つ い. の終焉とともに,このような終身雇用制や年功. て,論ずるにあたっては,開発論における都市. 序列賃金体系も崩壊しつつある.他方,農村部. の労働市場に関する分析の研究を参考にするこ. から都市部への大量の労働力移動は,都市部で. とができよう.この研究は,フォーマル部門と. のニュータウンの形成,近年に至ってはそうし. インフォーマル部門という二分論により語られ. たニュータウンの急速な高齢化が大きな課題と. ることが多い.現在,採用されている二元論の. なっている. 農漁村部では過疎化の進行に伴い,. 起源は,概ね J. H. ブーケと W. A. ルイスに影. 限界集落が出現するなど,少子・高齢化の進展. 響されている.ブーケは「輸入された西欧資本. も地域社会に大きな影響を与えている.. 主義が前資本主義的な農業社会に浸透するが,. 現在,このような雇用問題への対策の大きな. 土着の社会体系が,その本質を保持しうる場合,. 柱となっているのが,雇用調整助成金と職業能. 逆にいえば,その社会が資本主義的原理を採用. 力開発政策である.職業能力開発政策は,失業. できず,それを十分に展開できない場合」に前. 者に対する就職支援策としての職業訓練ばかり. 資本主義と高度資本主義という二重経済が成立. でなく,在職者に対しても技術進歩や新製品製. するとしている5).. 造に対応できるよう, 職業訓練がなされている.. ブーケはこのような二重経済を静態的なもの. そこで,本稿では,この職業能力開発につい. であるとしたが,ルイスはアジアには無制限の. て取り上げるこことしたい.この問題について. 労働供給があるとし,そのような経済は「資本. は,大きく 2 つの軸を設定することが重要と考. 主義」 (フォーマル部門)と「生存維持部門」 (イ. えている.一つの軸は地域産業社会との関わり. ンフォーマル部門)に分けられるとした.さら. であり,もう一つの軸は,先進国─途上国間の. に,経済発展は,再投資される利潤が資本主義. 関係である.上記に概観したように,戦後の日. 部門に発生するときに起こるが,利潤の発生を. 本経済を振り返っても雇用・労働問題は地域社. 可能にするものは,資本主義における雇用の増. 会に大きく影響を与え,一方,経済のグローバ. 大にほかならず,この資本主義部門における資. ル化による産業の空洞化は,労働力市場に大き. 本形成と技術進歩の結果であり,経済発展のた. な影響を及ぼした.この 2 つの軸は縦軸と横軸. めには,労働過剰による生存維持的賃金の支配. のように,密接に関わり,また相互に作用して. する生存維持部門を存続させておく必要がある. いると考えられる.我が国における職業能力開. と指摘した.賃金が生存維持的水準を超えて上. 発と地域産業社会の経験や知見が,途上国の政. 昇すると,資本主義部門の拡大も終了するから. 策への示唆となり,また,途上国における経験. である.. や知見が,我が国における取組への示唆となる. ルイスの「生存維持部門」とは,生存維持的. のではないかと考えている.. 農業,自由労働,小商売,家事サービスなどで.

(3) 職業能力開発と地域産業社会(國重). (571). 61. あり,その中心となるのは農業であるとした.. そが真の長期的問題であり,「その成長の可能. しかし, この生存維持部門を, 我が国産業のサー. 性は,かりにすべての開発諸国が海中に没した. ビス経済化の状況の中で読み替えると,コンビ. としても,影響を受けないであろう」としてい. ニ 営業,介護労働 サービ ス,派遣労働 な ど の. る8). . 労働分野を「生存維持部門」(インフォーマル. また,この論点に関して,ビーンストックの. 部門)と相似的に捉えることができるように. 議論を踏まえるならば,周辺・中心の双方を含. も思われる.. む,各地域の自律的成長,人的資本の形成を検. 1960 年代末からは工業部門への労働供給が. 討すべきということになる.. 衰 え,脱工業化 が 始 まった.そ し て,1970 年. こ れ ま で 開発援助政策 に お い て は,職業能. 代は,先進諸国で成長率が低下するという,成. 力開発 に 近 い 概念 と し て,職業技術教育訓練. 長率の下方屈折という現象が見られるように. (TVET:technical and vocational education. なった6).. and training)という用語で論じられてきた.. M. ビーン ス トック は, 「移行理論」に よ り,. その具体的意味合いとして,「職業技術教育訓. 周辺地域に波及した工業化が,相対価格を変化. 練 は,労働力 の 質(企業 の 経営・競争力 の 向. させ,部門間・地域間の利潤率を変えて,世界. 上,労働者の収入確保)に直接影響するばかり. 的な構造変化を加速させたと主張している.そ. でなく,地域における学習支援,イノベーショ. の移行理論の命題は次のようなものである.. ン過程,恵まれない階層の労働市場への社会的. すなわち,1960 年代から周辺工業化が加速. 統合という機能を有している.」9)というもので. した結果,世界的な工業製品価格が低下し,工. ある.そこで,先に述べたように開発援助政策. 業部門における収益悪化と旧工業地域の脱工業. における職業能力開発についても,地域社会と. 化が進んだ.新工業地域の収益増大と旧地域か. の関わりの中で,検討していくことが重要と考. らの国際資本移動が進み,旧地域内の構造転換. えている.. に必要な資源再配分と,制度的硬直性や摩擦に よって増大した構造的失業,移行期における過 渡的な性格の長期不況が生じた.世界的資源配. 2 地域開発における職業能力開発政策の問題 の所在. 分と構造転換,工業生産力の移転と工業製品の. では,職業能力開発政策において一体,何が. 交易条件悪化により,中心地域に相対的に不利. 問題点なのか,整理してみたい.2002 年に国. な所得再分配がなされている,というものであ. 際開発学会がまとめたセミナー報告10)による. る.. と,「地域開発 に とって 人材開発,特 に 職業教. 各地域の資源再分配には摩擦と利害対立が伴. 育・技術訓練を通じた人材の育成が欠かせない. うから,構造的失業と低成長は避けられない.. ことは,自明の理として語られる.わが国が戦. しかし,摩擦を回避するために旧産業構造の保. 後の復興をとげ,経済成長に向かう過程でも. 護やインフレ的拡大に頼ることはむしろ問題を. 同様の論理が用いられ,例えば多くの高等専門. 長引かせ,その国の競争力を損なう,と M. ビー. 学校が設立された.発展途上国の地域開発計画. ンストックは指摘している7).. においても,人材開発が組み込まれていない計. このような議論の中で,ルイスは周辺全体の. 画はない.しかし,人材開発の努力が『自動的. 自律的成長が必要であり,その条件は,①自国. に』地域開発をもたらすという考え方には疑問. の企業家と行政官を育て,国内の貯蓄と課税能. がある.」としている.そして,問題点として. 力を高めること,②小国の地域的連邦制が可能. 4 点を挙げているが,極めて基本的,かつ的確. であれば,均衡成長にとって人的資本の形成こ. な指摘と思われるので,具体的に紹介したい..

(4) 62. (572). 横浜国際社会科学研究 第 14 巻第 5 号(2010 年 1 月). 1 つめは「能力を開発された人材が地元で仕. この 4 つの設問に着目しつつ,次節以降,職. 事に就き,教育・訓練で得た知識や技術を,物,. 業能力開発政策の課題を地域社会との関わりの. 知識,サービスなどの生産という形で地域に貢. 中で検討していきたい.. 献するという,人材開発が地域開発をもたらす. 3 我が国における職業能力. ための前提条件である.卒業後地元に残るか都. 開発政策の位置づけ. 会に出ていくか,就職するかしないか,開発さ れた能力をうまく使えるか,など人材開発が地. 我が国における職業能力開発政策は,どのよ. 域開発に実際に結びつくまでには,超えなけれ. うな変遷を経てきたのか,簡単に振り返ること. ばならないハードルがいくつもある」というも. とする.. の.. 我 が 国 に お け る 職業能力開発 に 関 す る 法. 2 つめは「誰を対象として人材開発を施すか. 律 と し て,1947(昭 和 22)年 に 職 業 安 定 法. という問題.小学校卒,中学校卒,高校卒,失. が,1958(昭和 33)年に職業訓練法が,また,. 業者,在職者など,対象となる人材の層は多様. 1985(昭和 60)年 に は,職業能力開発促進法. で,どこに焦点を当てた教育・訓練計画が地域. が制定されている.職業能力開発促進法の目的. 開発にとって妥当であるかは議論の分かれる所. は,「職業訓練及び職業能力検定の内容の充実. であろう. 」というものである.. 強化及びその実施の円滑化のための施策並びに. 3 つめは「どの職業教育・技術訓練機関で人. 労働者が自ら職業に関する教育訓練又は職業能. 材開発を行うのが適切か. 」という問題である.. 力検定を受ける機会を確保するための施設等を. そして,4 つめは, 「行われる教育・訓練の. 総合的かつ計画的に講ずることにより職業能力. 内容は地域社会で要求される内容でなければい. の開発及び向上を促進し,もって,職業の安定. けないが,地域社会の要求の変化が難しいとい. と労働者の地位の向上を図るとともに,経済及. うことがある.教育・訓練プロジェクトを実施. び社会の発展に寄与すること」としている.. する際には,特に労働市場等の状況を常に把握. 国における職業能力開発の具体的な施策は,. し, かつ将来を予測しなければならない.教育・. ①労働者の自発的な能力開発の推進(教育訓練. 訓練プロジェクトの成果と自立発展性を考える. 給付制度やキャリア形成促進助成金など),②. 上で,この変化への対応がプロジェクトの成功. 事業主等が行う職業能力開発に対する支援(認. のための重要な鍵となる. 」としている.. 定職業訓練,職業訓練施設の提供,指導員の派. 1 つめの「前提条件」は後の問題点にも関わ. 遣等),③公共職業訓練 の 推進(公共職業能力. るものであるので, 重複する論点を除くと, 「地. 開発施設,職業訓練受講性に対する援護措置な. 元に就職できるか」ということにまとめられる. ど),④職業能力評価制度(技能検定制度,社. であろう.そこで,地域開発における職業能力. 内検定認定制度 な ど),⑤技能 の 振興(卓越 し. 開発政策の課題を設問として,順序も含めて整. た 技能者 の 表彰,技能競技大会 の 実施 な ど),. 理すると,. ⑥国際協力(政府ベースによる技術協力など). ①誰を対象に人材開発をするか,. ⑦勤労青少年福祉対策(若年労働者のキャリア. ②能力開発した人材が地元(地域社会)に就. 形成相談事業など)という 7 つの分野において. 職できるか,. 展開されている11).. ③どの機関で人材開発を行うのが適切か,. 国際協力の分野をやや特別なものとすれば,. ④地域社会の要求に対応した有効な教育・訓. 職業能力開発は,労働者による職業能力開発と. 練内容とするには,どのようにすべきか,. そ の 支援,事業主等 が 行 う 職業能力開発 の 支. ということになる.. 援及び技能検定・技能振興という 3 つのカテゴ.

(5) 職業能力開発と地域産業社会(國重). (573). 63. リーに分けて理解することができる.厚生労働. を行うのが適切か」という設問と密接な関わり. 省に よ る 職業能力開発政策予算のうちの多く. があり,人材開発・職業能力開発を中央で担う. が,労働保険特別会計の雇用勘定に基づくもの. のが適当か,地方で担うのが適当かという議論. であり,その雇用勘定の多くが公共職業訓練を. でもある.後述するように,戦後の都道府県に. 実施する独立行政法人雇用・能力開発機構への. おける職業訓練は,地域との結び付きが強く,. 12). 交付金等となっている .. (独)雇用・能力開発機構の前身の組織も含め. ま た,職業技術教育訓練(TVET:technical. た訓練よりも一足早く取り組まれてきたという. and vocational education and training)と い う こ. 経緯がある.また,戦前においても,1894(明. とでは,このような厚生労働省が取り組む職業. 治 27)年 の 徒弟学校規程 の 制定以来,全国各. 能力開発政策とは別に,文部科学省の政策分野. 地 で 徒弟学校 が 設立 さ れ た.会津漆器徒弟学. である専門学校,各種学校などによる教育訓練. 校,瀬戸陶器学校,南都留染織学校など,いず. も広い意味で,この分野を担っていると言える.. れも地域の伝統工芸技術と結びついて発展して. 一方,産業政策 の 面 に お い て も,様々な 人. きた.地域の自立的成長・発展を目指す観点で. 材育成が図られてきた.とりわけ,1963(昭和. も,原則的には地方で担うことが望ましいと考. 38)年に中小企業庁が発足させた「中小企業技. えられる.. 術者研修制度」は特筆に値するものである(第. 世界的にも,地域の雇用創出を促進するため. 6 節で詳述する) .. の手段として地方分権を選択した国の代表例と. このような我が国の職業能力開発のあり方. して,カナダ,イタリアが挙げられている14).. は,国際比較の中では, 「教育セクター内の中. このような経緯・趨勢を踏まえると,基本的に. 等教育段階ないしポスト中等教育段階の教育・. は,地方(自治体)を中心とする,地域ニーズ. 訓練機関による職業教育と,労働省など他省庁. に適した職業訓練が実施されていくことが望ま. の管轄下にある非教育セクターの訓練機関が提. しいと考えられる.. 供する職業訓練が併存する複線型職業技術教育 訓練制度モデル」と位置づけられている13).. 4 神奈川県における職業能力開発政策. また,労働保険特別会計の雇用勘定の多くが. 次に,神奈川県を事例に取り上げ,職業能力. 公共職業訓練 を 実施 す る(独)雇用・能力開. 開発政策と地域産業社会との関係を検証してい. 発機構への交付金等となっていることを述べた. きたい.. が,2008 年 12 月 24 日 に は「雇用・能力開発. 神奈川県内には,県立の職業能力開発校(神. 機構の廃止」の閣議決定がなされており,その. 奈川では現在,職業技術校と呼ばれている.以. 中で「可能なものはできるだけ地方や民間にゆ. 下,技術校と呼ぶ)や(独)雇用・能力開発機. だねていくとの視点に立って,適切な役割分担. 構の職業能力開発促進センターなどが存在する. を図る.その際,必要に応じ,地域の中小企業. ほか,既に述べたように,職業教育に関する機. 事業主等の意見を踏まえる. 」という方針が示. 関・施設として専修学校や各種学校も数多く存. されている.この閣議決定に対しては,雇用情. 在している.高等教育機関としての大学や短大. 勢が 大変厳 し く, (独)雇用・能力開発機構に. も職業能力開発の役割を果たしていると捉える. よる離転職者向け訓練も,多くの就業ニーズを. ことができるが,対象範囲を広げすぎると焦点. 受け止めて実施されている最中であるため,公. が拡散してしまうため,まず,神奈川の職業能. 共職業訓練の縮小・撤退を危惧する声も多いと. 力開発をどのように捉えるのか,基本的な枠組. ころである.. みを用意したい.. この問題は,前節の「③どの機関で人材開発. そのために,職業能力開発の担い手は公か民.

(6) 64. (574). 横浜国際社会科学研究 第 14 巻第 5 号(2010 年 1 月). 表 4―1 職業能力開発の類型(神奈川県) 施設内訓練(公). 括弧内は年間延定員 委託訓練・認定校(民). 求職者(未就職者・離転職 神奈川県立高等職業技術校(8 校 1 分校 970 人) 離転職者委託訓練 者)に対する訓練 県立産業技術短大校(400 人),障害者職業能力 県立高等職業技術校・短大校 開発校(180 人) (2 校,629 人)⇒各専門学校・各種学校 横浜市立職業訓練校(1 校 220 人) 障害校 ⇒各専門学校・各種学校 関東職業能力開発促進 セ ン ター(520 人),港湾 (1 校,392 人) 職業能力開発短期大学校横浜校(115 人)※ 在職者訓練. 県立高等職業技術校,県立産業技術短大校,障 事業内職業能力開発(認定校・共同訓練) 害者職業能力開発校(7 校,559 コース,8,120 人) 長期間(10 校 10 団体,466 人) 短期間(48 団体,28,281 人). 注:数字は平成 19 年度のもの.※関東職業能力開発促進センター,港湾職業能力開発短期大学校は(独)雇用・能力開発機構 の職業能力開発施設である.. か,対象 は 求職者(未就職者・離転職者)か. となり,1969 年の新職業訓練法の制定時には,. 在職者かという 2 つの軸を設けると,表 4─1 の. 施設数 と し て は 最大 の 18 施設 と なって い る.. ような 4 つのカテゴリーに類型化できると考え. 語学要員校,農機具校,自動車校など,各校の. る.. 設置状況をみても産業雇用情勢を背景に,職業. 表 4─1 で強調しておきたいことは,求職者に. 訓練が大きく変貌を遂げてきたことが窺える.. 対する訓練も重要であるが,表下段の在職者に. 職業訓練法の一部改正があった 1974 年には,. 対する訓練も,公共施設内訓練,認定校による. 法に基づく都道府県計画として,第一次神奈川. 訓練,職種別組合・協会などによる共同訓練を. 県職業訓練計画が策定された.また,1985 年 3. 合わせて,実に約 3 万 7 千人余りを対象に実施. 月には「いちょう計画(新職業訓練体系整備事. されているということである.就職後の技術・. 業)」が 策定 さ れ,「職群制・単位制訓練方式」. 技能向上のための訓練として重要な意味を有し. に基づく専門校 10 校 1 分校の高等職業技術校. ている.. の体制となっている.職群制方式とは,職務の. 神奈川県によるこれまでの職業訓練を振り返. 領域が拡大する傾向を視点に,職務に共通基盤. ると,戦後の京浜工業地帯を中心とする県内産. を持っている類型の職種を統合し職種系列(職. 業の高度化にあわせて,目まぐるしい変遷を遂. 系と呼ぶ)をつくり,さらに関連する職種系列. げてきたといえる.. を複数まとめた集合体を職群とするものであ. まず,県の職業能力開発施策は,1947(昭和. る.この職群・職系をもとに各職業能力開発施. 22)年の労働基準法・職業安定法の制定より早. 設を職業別,訓練水準別,対象者別に専門校化. く,1946(昭和 21)年 に 職業補導事業 と し て. して相互の有機的な結合を図り,職業能力開発. 発足 し,神奈川県厚生職業校(横須賀) ,語学. を多様・弾力的に展開する方式がとられた.職. 要員校(横浜) ,横浜木工校,横浜建築校 の 4. 群には,具体的に高度技術群,工業技術群,情. 施設の体制で開始した.翌 1947 年には,施設. 報技術群,建築技術群,社会サービス群,実務. も 川崎木工校,婦人校(藤沢) ,平塚校,農機. 技術群があり,各専門校をこの職群に位置付け. 具校(厚木) ,小田原木工校,与瀬校,横浜自. た.この神奈川独自の方式の採用は,当時とし. 動車校が加わり,11 施設となった.以来,様々. ては画期的なものであり,他自治体のモデルと. な 新設,統廃合 が 行 わ れ,1958(昭和 33)年. もなったとのことである.. の職業訓練法が制定されたときには,12 施設. さらに十数年を経て,少子高齢化など大きな.

(7) 職業能力開発と地域産業社会(國重). (575). 65. 表 4―2 平成 19 年度入校者の年齢層等 年齢層 募集定員. 入校者. うち受講 指示. うち女性. ~ 34 歳. 35 ~ 44. 産業短大. 200 人. 207 人. -. 50 人 (24.2%). 204 人 (98.6%). -. 技術校. 850 . 838 . 465 (55.5%). 270   (32.2%). 516 (61.6%). 障害校. 150 . 138 . 128 (92.8%). 31 (22.5%). 計. 1,200   . 1,183 . 593 (50.1%). 351  (29.7%). 45 ~ 59. 60 ~. 1人. 2人. 131 (15.6%). 158 (18.9%). 33 (3.9%). 101 (73.2%).   20 (14.5%).   16 (11.6%). 1 . 821 (69.4%). 151 (12.8%). 175 (14.8%). 36 (3.0%). (出典:表 4─2 ~表 4─4,表 4─6「平成 20 年度(19 年度対象)かながわの職業能力開発」神奈川県雇用産業人材課). 表 4―3 平成 19 年度入校者の最終学歴 入校者. 最終学歴 中学卒. 高校卒. 短大卒. 大学卒. その他. 産業短大. 207 人. -. 202 人 (97.6%). -. 2人 (1.0%). 3人 (1.4%). 技術校. 838 . 25 (3.0%). 431 (51.4%). 128 (15.3%). 2,224 (26.7%). 30  (2.3%). 障害校. 138 . 15 (10.9%). 100 (72.5%). 3 (2.2%). 13  (9.4%). 7 (5.1%). 計. 1,183  . 40 (3.4%). 733 (62.0%). 131 (11.1%). 239 (20.2%). 40  (3.4%). 社会経済状況 の 変化 を 受 け て,2004 年 2 月策. 者の 15.3% が短大卒,26.7% が大学卒というこ. 定の「高等職業技術校再編整備計画」では,こ. とである.この数字はやや意外なものとして受. う し た 体制 を 東西 2 校 の 大規模総合型 の 技術. け止められるであろう.. 校へ集約することとなった.そして,2008 年 4. ドイツのデュアル訓練システム(職業学校で. 月には,全国最大規模の県立東部総合職業技術. の教育+特定企業内での実習訓練)とは違って,. 校が開校している.同校には,工業系(チャレ. 戦後,米国型の教育制度を受け入れた我が国は. ンジプロダクト,自動車整備,機械 CAD など) ,. 一般教育中心の教育となっており,離転職者が. 建築系(建築設計,室内施工,ビル設備管理な. 必要とする訓練,技能の形成は,技術校や専門. ど) ,社会サービス系(ケアワーカー,給食調理). 学校等で行われていることの表れであると考. の 15 のコースが設けられている.. えられる.表 4─2 の入校者の年齢層等では,産. では,このような職業能力開発施設の入校者. 業短大,障害校では,若年者の割合が高く,技. の状況はどのようになっているのであろうか.. 術校では,30 歳台~ 60 歳台まで広範囲に亘っ. 産業技術短期大学校の入校者の殆どが,高校. ていることが分かる.61.6% が 34 歳以下であ. 卒というのはある意味で当然のことであるが,. る が,35 歳以上 は 38.4% で あ り,60 歳以上 も. 表 4─3 から分かることは高等職業技術校の入校. 3.9% となっている.学歴だけでなく,年齢的.

(8) 66. 横浜国際社会科学研究 第 14 巻第 5 号(2010 年 1 月). (576). 表 4―4 平成 19 年度入校者の生活維持法 生活維持法. 入校者. 生活保護. 雇用保険. 訓練手当. 近親扶助. その他. 産業短大. 207 人. 2人 (1.0%). -. -. 196 人 (94.7%). 9人 (4.3%). 技術校. 838 . 8 (1.0%). 473 (56.4%).    6 (2.0%). 252 (30.1%). 99  (11.8%). 障害校. 138 . -.   24 (17.4%). 112 (81.2%). -. 計. 1,183  . 10 (0.8%). 497 (42.0%). 118 (10.0%). 448 (37.9%). 2 110   (9.3%). 表 4―5 平成 18 年度修了生の就職状況(修了後 1 年を含む) 08 年 3 月修了時点 . 定員. 09 年 3 月末現在. 就職率の 全国平均. 修了者 就職者. 就職率. 就職者. 就職率. 高等職業技術校の合計. 950 人. 782 人. 620 人. 79.3%. 709 人. 90.7%. うち普通課程. 390 . 283 . 238 . 84.1%. 245 . 86.6%. 92.6% ※. うち短期課程. 500 . 461 . 344 . 74.6%. 426 . 92.4%. 75.2% . うちデュアルシステム訓練. 60 . 38 . 38 . 100%. 38 . 100%. ※都道府県の学卒者訓練(普通課程,専門課程,応用課程)の全国平均値. にもかなり幅広い年齢層から入校生を受け入れ. 維持であり,失業給付を受けながらの訓練が多. ていることが分かる.. いことが裏付けられている.技術校では高校. 学歴の高い若年層にとって,雇用機会を得る. 生などを主に受け入れている普通課程もある. ことが難しくなってきている,というのは我が. ため,近親扶助という割合も 30.1% と高い値と. 国だけでなく,アジアの各国とも共通した動向. なっている.他方,障害校では,雇用保険受給. 15). となっている .神奈川県における職業能力開. 者は 17.4% と低く,81.2% という多くの方が,. 発の訓練生の学歴別の実態からも,同様の傾向. 訓練手当を受けての訓練となっていることが分. にあることが検証できる.. かる.. 従って,前々節での「①誰を対象に人材開発. では,このような職業訓練修了後の就職状況. をするか」という設問に対しては,かなり広範. はどうなっているであろうか.. 囲な学歴・年齢層を対象に,職業能力開発が行. 表 4─5 に 示 す よ う に,2006(平成 18)年度. われているのが実情となっているということが. の 技術校修了生(8 校 1 分校)の 1 年後 の 就. できよう.. 職率 は 90.7%,う ち 学卒者向 け の 普通課程 は. 表 4─4 は入校生の生活維持法を示している.. 86.6%,離職者向 け の 短期課程 は 92.4%,デュ. 職業技術校生の 56.4% は,雇用保険による生活. ア ル シ ス テ ム 訓練 は 100% と なって い る.県.

(9) 職業能力開発と地域産業社会(國重). (577). 67. 表 4―6 平成 19 年度修了生の就職先(従業員規模,職種) 就職者+ 中途就職者. 従業員規模. 就職先の職種. ~ 299 (中小企業). 300 ~ (大企業). フルタイム. パート. 自営. 産業短大. 176 人. 135 人 (76.7%). 41 人 (23.3%). 176 人 (100%). -. -. 技術校. 562 人. 389 (69.2%). 173  (30.8%). 481 (85.6%). 72 (12.8%). 9 (1.6%). 障害校. 104 人. 30 (28.8%). 74 (71.2%). 86 (82.7%). 18 (17.3%). -. 計. 842 人. 554 (65.8%). 288  (34.2%). 743 (88.2%). 90 (10.7%). 9 (1.1%). データと全国データはカテゴリーが若干異なる. に対応した職業能力開発を実施するために,神. ため,一概に比較は難しいが,修了後 1 年では. 奈川県では,職業技術校については 1980 年度. 学卒者向 け 訓練 は 神奈川県 は 全国平均 よ り 低. から,産業短期大学校については 1998 年度か. く,離職者向 け 訓練は全国平均より高い値と. ら,修了生の追跡調査を実施している.「平成. なっている.神奈川県の離職者向けの短期課程. 19 年度神奈川県産業技術短期大学校卒業生・. 訓練において,修了 1 年後には,就職率が 9 割. 高等職業技術校修了生実態調査報告書」を参照. を超えているのは評価できよう.. し よ う.表 4─7 の 回答者 210 名(平成 16 年度. 次に,職業技術校修了生の就職先はどのよう. の職業技術校修了生)のうち,修了後,同一の. になっているのであろうか.表 4─6 は,その就. 職場で働き続ける者の割合を「定着率」とし. 職先の従業員規模別,フルタイム,パート等の. て,年 ご と に 見 る と,2004(平成 16)年末日. 職種別に示している.まず,技術校生の 69.2%. の時点では,95.2%,2005 年(平成 17)末日の. が 従業員 300 人未満 の 中小企業 に 就職 し て い. 時点では 75.2%,2006(平成 18)年末日の時点. る.産業技術短大生は,それより多くの 76.7%. で は 61.0%,2007(平成 19)年 11 月 1 日現在. が中小企業に就職している.一方,障害校の修. では,52.9% となっている.すなわち,技術校. 了生は,71.2% が 300 人以上の大企業に就職し. 修了後,約 3 年経過し同一の職場に定着して働. ている.障害校の修了生の多くが大企業に就職. き続ける者は修了生の 5 割強となっている16).. しているのは,障害者の雇用状況を反映しての. 表 4─8 は「今後受講したい研修等と希望する. ことと考えられる.. 研修場所」を修了生に聞いたもので,受講した. こ の 就職先 の 従業員規模 300 人未満 の 中小. い研修等は「技術校で学んだ分野」が 27.5% と. 企業の殆どは,県内企業であると想定される.. 最も高くなっている.さらに,希望する研修場. 従って,前々節 で の「②能力開発 し た 人材 が. 所についても,公共訓練施設が 26.6% と勤務先. 地元(地域社会)に 就職 で き る か」と い う 設. の 12.7% の倍の値となっている.この数値は,. 問 に 対 し て は,産業技術短大生,技術校生 と. 修了後の在職者訓練としても,技術校等でスキ. もに,概ね地元である地域社会に就職できて. ルアップするニーズが存在していることを示し. いる,ということができよう.. ている.訓練修了後も公共訓練施設が引き続き. では,職業技術校生の就職後の定着状況はど. 修了生と深い結びつきを保っていることを示す. のようになっているであろうか.県民のニーズ. 貴重なデータである..

(10) 68. 横浜国際社会科学研究 第 14 巻第 5 号(2010 年 1 月). (578). 表 4―7 職業技術校生の定着状況 離職者. 定着率. 平成 16 年末日. 回答者 210 人. 定着者 200 人. 10 人. 95.2%. 離転職率 4.8%. 平成 17 年末日. 210 . 158 . 52 . 75.2 . 24.8  . 平成 18 年末日. 210 . 128 . 82 . 61.0 . 39.0  . 平成 19 年 11 月 1 日. 210 . 111 . 99 . 52.9 . 47.1  . 表 4―8 今後受講したい研修等と希望する研修場所 (複数回答可) 今後受講したい研修等 技術校で学んだ分野. 希望する研修場所. 100. 27.5%. 公共訓練施設. 111. 26.6%. 74. 20.4%. 勤務先. 53. 12.7%. 外国語. 52. 14.3%. 自己学習. 44. 10.5%. 特になし. 27. 7.4%. 大学. 36. 8.6%. 製造生産技術. 24. 6.6%. 通信教育. 33. 7.9%. ソフトウェア開発等. 22. 6.1%. 専修学校・各種学校. 32. 7.7%. 事務(簿記等). 22. 6.1%. カルチャーセンター. 28. 6.7%. 法律. 21. 5.8%. 特になし. 27. 6.5%. 13. 3.6%. 民間企業. 26. 6.2%. 8. 2.2%. 地域サークル. 21. 5.0%. OA 機器関係. その他 販売・営業. その他 合計. 363. 100%. 合計. 7. 1.7%. 418. 100%. (出典: 「平成 19 年度神奈川県産業技術短期大学校卒業生・高等職業技術校修了生実態調査報告書」 平成 20 年 3 月 神奈川県 雇用産業人材課). 就職支援のみならず,在職者に対する職業能. 中小企業団体中央会,中小企業経営者協会,商. 力開発支援においても,職業技術校が大きな役. 店街連合会などがあり,一方で,産業分野別に. 割を果たしている,あるいは,果たし得る可能. は工業会・工業会連合会,情報サービス産業協. 性が大きいことが示唆されている.. 会,建設業協会などの諸団体も存在する.それ. 5 職業能力開発施策を支援する企業集団. ぞれの団体がそれぞれの立場から地域経済振興 の役割を果たしている.. 次に,前々節での「④地域社会の要求に対応. しかし,職業能力開発の観点から見るには,. した有効な教育・訓練内容とするには,どのよ. これらの団体のほかに,職業能力開発推進協議. うにすべきか, 」を検討するために,地域産業. 会や技能士会連合会,職業能力開発協会という. 社会における企業集団について, 考えてみたい.. 団体が存在しており,これらの団体の活動に注. 人口 900 万人の神奈川県には約 30 万の事業. 目すべきであろう.. 所が存在し, 約 330 万人の従業者が働いている.. 神奈川県 で は,県立,県営 の 職業訓練機関. では,この地域産業社会をどのように捉えるの. を核として,職業技術校ごとに各地域の企業. が適当であろうか.地域の経済団体であれば,. 主等 が「職業能力開発推進協議会」を 組織 し. 商工会議所,商工会,経営者協会,経済同友会,. ている.その目的は,「地域における労働者の.

(11) 職業能力開発と地域産業社会(國重). (579). 69. 表 5―1 職業能力開発推進協議会会員企業への就職割合 平成 19 年度修了者 推進協議会 (会員数). 技術校 就職者数(人) うち会員企業 就職者数(人). 割合. H協議会. (85). 138. 12. 8.7%. F協議会. (86). 28. 25. 89.3%. O協議会. (79). 82. 7. 8.5%. D協議会. (116). 69. 24. 34.8%. T協議会. (353). 164. 94. 57.3%. S協議会. (100). 77. 18. 23.4%. (985). 558. 180. 32.3%. 計. 生涯教育訓練の円滑な実施と地域の実情に適応. 推進団体連合会であり,県との職業能力開発に. した公共訓練の推進及び内容の充実について協. おける連携を図っている.その構成は,会長 1. 議するとともに,労働者の能力の向上と雇用の. 名,副会長 2 名,理事 2 名,会計監査 2 名となっ. 拡大並びに地域産業の振興を図るため」となっ. ており,各役員は,各推進協の会長が兼ねてい. ている.現在,神奈川県内には,神奈川東部(166. る.その主な事業は,ア)県立,県営の職業訓. 会員) ,藤沢(86 会員) ,秦野(116 会員) ,小. 練の充実強化についての協議,イ)各推進協並. 田原(79 会員) ,平塚(85 会員) ,産業技術短. びに職業能力開発に関する情報・資料の提供,. 大(353 会員) ,職業自立(100 会員)と い う 7. ウ)職業能力開発に関する調査・研究について. つの職業能力開発推進協議会が存在し,その会. の協力,エ)職業能力開発の関する普及・啓発. 員数合計は 985 会員となっている.また,神奈. 及び振興についての協力,オ)職業修了生の就. 川職業能力自立推進協議会(職業自立)は,全. 職促進等となっている.この連合会による活動. 国に 18 校存在する障害者職業能力開発校の中. も全国的には唯一といってよい活動である.. で,唯一設けられた推進協議会となっている.. その結果,技術校の就職先のかなりの部分が. その主な活動は, ①総会・役員会などの会議,. 職業能力開発推進協議会の会員企業となってい. ②施設見学会などの研修会,事業主の懇談会,. る.表 5─1 は,技術校修了者の推進協議会会員. ③技術校が実施する地域技能展への参画,④就. への就職割合を示している.現在,神奈川県で. 職した修了生・卒業生の優良者や企業で働いて. は職業技術校の再編統合を行っている最中でも. いる優良従業員に対する表彰,⑤会報の発行な. あり,こうした事情を反映してか,推進協議会. どとなっている.業種ごとの専門部会活動や技. ごとに受け入れ状況がかなり異なっているもの. 術校生への講話や「修了生のつどい」への協賛. の,高い協議会では約 9 割,平均でも約 3 割の. 17). などに取り組んでいる協議会もある .. 就職者を受け入れていることが分かる.. その上部組織として 1978(昭和 53)年 12 月. このように,推進協議会は職業技術校・訓練. 4 日に設置されたのが,神奈川県職業能力開発. 生の安定的な就職の受け入れを推進してきた..

(12) 70. 横浜国際社会科学研究 第 14 巻第 5 号(2010 年 1 月). (580). 表 6―1 正社員として採用する若年者に求める資質・能力 若年者に求める資質・能力. 若年者に求めるビジネススキル. 責任感,確実性. 762 件. 68.2%. 営業・企画職. 420 件. 37.6%. 協調性,柔軟性. 713. 63.8%. 技術・開発職. 392. 35.1%. 行動力,実行力. 669. 59.9%. 生産工程・労務職. 383. 34.3%. 誠実な人柄. 599. 53.6%. 事務. 157. 14.1%. コミュニケーション能力. 504. 45.1%. 接客・販売職. 156. 14.0%. 精神的な強さ. 395. 35.4%. 経理. 136. 12.2%. 体力. 329. 29.5%. 総務・人事. 126. 11.3%. 自社に必要な専門知識. 273. 24.4%. サービス職. 98. 8.8%. 独創性,想像力. 182. 16.3%. SE・プログラマー. 90. 8.1%. リーダーシップ. 155. 13.9%. 無回答. 82. 7.3%. 計画性. 141. 12.6%. その他. 39. 3.5%. その他. 14. 1.3%. 無回答. 59. 5.3%. 1117. 100%. 1117. 100%. 合計. 合計. 前節のような就職率及び定着率を維持している. 確保を図る観点から,調査を実施している.そ. のも,これら推進協議会という企業群との協力. の「神奈川県県内企業の若年者雇用に関する意. 関係が重要な働きをしているものと考えられ. 向調査」(平成 19 年 8 月実施)では,神奈川県. る.また,産業技術短期大学校では,これまで. 内 3,182 事業所 を 対象 に,回収率 35.1%,回収. に推進協議会とカリキュラムについての意見交. 件数 1,117 件を分析している.. 換会も実施しており,密接な協力関係にあると. 表 6─1 に示すように,若年者に求める資質・. 言える.. 能力で 50% を超える値となっているのは,「責. 公共職業訓練施設と地域の企業が連携するこ. 任 感,確 実 性」,「協 調 性,柔 軟 性」「行 動 力,. とにより,地域社会の要求に対応した教育,訓. 実行力」「誠実な人柄」である.40% 台が「コ. 練内容に近づける努力がなされている.離転職. ミュニ ケーション 能力」,30% 台 が「精神的 な. 者の就職面だけでなく,第 4 節後段に見られた. 強 さ」,20% 台 が「体力」「自社 に 必要 な 専門. ように,就職後の在職者訓練においても,この. 知識」,10% 台が「独創性,想像力」「リーダー. 結びつきは保たれているのである.. シップ」「計画性」となっている.. 6 若年者に求める資質・職業能力と 在職者訓練. ま ず,「自社 に 必要 な 専門知識」「独創性, 想像力」「計画性」などが予想以上に低いこと に 気 づ く.優先度 の 高 い 第 1 グ ループ は「責. 冒頭に示したように,若年者の就職状況は. 任感,協調性,行動力」といったもので,極め. 大変厳しいものとなっている.では,企業は. て基本的な資質といえる.第 2 グループは「誠. 就業面で若者に何を期待しているのか?神奈. 実な人柄,コニュニケーション能力」で第 1 ク. 川県では,県内企業の①若年者採用についての. ループに似通った資質,能力である.第 3 グルー. 考え方,②企業が若年者に求める資質・職業能. プは「精神的な強さ,体力」で心身ともに強く. 力,などの意向を把握し,県内企業の若手人材. なければならないというもの.「体力」よりも.

(13) 職業能力開発と地域産業社会(國重). 「精神的な強さ」の方が高いというのも印象的. (581). 71. このうち,技能分野では,短期間の訓練を地. である.. 域の職種別組合 48 団体が 28,281 人の受講者に. これらの結果を裏から考えれば,近年の若年. 実施している.このような訓練には,神奈川県. 者にやや欠けている(敢えて求める)ものが,. 技能士会連合会という技能士の集団が,ネット. 第 1 グループが「責任感や協調性や行動力」で. ワークを形成して訓練事業の維持に貢献してい. あるとも言えるのではないだろうか.そして第. る.. 2 グループが「誠実な人柄,コミュニケーショ. (社)神奈川県技能士会連合会 は,1976(昭. ン能力」で,第 3 グループは「精神的な強さ,. 和 51)年 6 月に設立,1986(昭和 61)年 12 月. 体力」となっている.. に社団法人化した団体である.正会員等 29 団. 2008(平成 20)年 12 月に,かながわ若者就. 体,2,260 構成員 と なって い る.神奈川県内 に. 職支援センターのカウンセラーからヒアリング. 事務所を有し技能士が所属する団体または技. を行った.そのヒアリングの中で,次のような. 能士などにより組織されており,「技能尊重気. コメントが印象深いものであった18).. 風を醸成するとともに,技能者の職業能力を. 「長年フリーターを続けている者を中心に,. 開発,向上することにより,技能者の社会的評. 多くの若者の相談を受けている.その中で『そ. 価の向上及び職業生活の安定を図り,もって労. ろそろ正社員として就職をしなければならない. 働福祉の向上に寄与すること」を目的としてい. と考えているが,人と接する機会の多い営業職. る.その主な事業として,かながわ技能フェス. には就職したくない.できれば事務職に就きた. ティバル,技能グランプリ等への参加や神技連. い. 』という若者があまりに多い.ところが,. ニュースをはじめとする広報活動や技能に関す. 企業側の多くの求人は,技術者でなければ営業. る情報収集のほか,各種技能講習会,技能研修. 職がほとんどである.外回りをしないようなデ. の実施に取り組んでいる.. スクワーク中心の事務職の求人も若干はある. また,技術者向けの在職者研修について,神. が,極めて単純な事務業務となってしまう.営. 奈川県 で は 1963(昭和 38)年 よ り,県内工業. 業職といっても,様々な企画を立てて営業活動. 技術者の技術研修を行ってきた.この研修は,. を行うわけで,必ずしも商品を持って家々を回. 県産業技術 セ ン ター(前身 は,県工業試験所). るようなイメージのものではない.さらに,こ. の場所において,同所と連携して実施されてき. のような営業活動の経験を経て,様々な業務を. た も の で,1963(昭和 38)年 に 中小企業庁 が. 任されることになるのであるが,多くの若者と. 発足させた「中小企業技術者研修制度」に基づ. の認識のギャップが大きい. 」. くものである.. このような「若年者に求める資質・能力」の. 2008(平成 20)年 ま で の 実績 は,長期技術. 結果は,人材を会社内に受け入れた後に,養成. 者研修(約 360 時間)で 実 に 延 4,337 人,中期. していくということを如実に示している.宮本. 技術者研修(約 60 時間)で 延 2,382 人,短期. 光晴教授は,ドイツ型の職業別労働市場と日本. 技術者研修(約 36 時間)で 延 4,133 人 な ど と. 型の内部労働市場という形で議論しているが,. なっている.こうした技術者向けの職業能力開. この調査結果もそのことを裏付けるものである. 発・技術研修 は,「技術力強化支援事業」に よ. 19). と言ってよいであろう .. り,現在も県の施策として続けられている20).. 在職者訓練 の 事業内職業能力開発 に つ い て. さらに,今後,期待される職業能力開発関連. は,第 4 節の表 4─1 に示されるように,各企業. のネットワークとして,「かながわ人材育成支. や職種別の職業訓練法人,協会等により実施さ. 援ネットワーク」がある.このネットワークは. れているのが実情である.. 2004(平成 16)年 6 月に設立されたものであ.

(14) 72. (582). 横浜国際社会科学研究 第 14 巻第 5 号(2010 年 1 月). り,職業能力開発に関わる多様な教育訓練資源. 中心に就職できていること,「③どの機関で人. (訓練講座,指導人材,教材等)を 持 つ 民間教. 材開発を行うのが適切か」については,地方に. 育訓練機関と公共訓練機関とが相互に連携し,. おいて自治体を中心に人材開発・職業能力開発. 神奈川県の産業を支える人材の育成活動に支. に取り組んでいくことが適当と考えられるこ. 援する組織である.趣旨に賛同する教育訓練機. と,また,技能・技術にわたる在職者に対して. 関・団体は,簡単な手続きで,いつでも会員に. も,訓練の実績が積まれてきたこと,「④地域. なり,かながわ人材育成支援センターの行う事. 社会の要求に対応した有効な教育・訓練内容と. 業に参画することができる.現在,登録されて. するには,どのようにすべきか」については,. いる会員数は,教育訓練機関(民間+公共)が. 公共職業能力開発施設等において,地域の企業. 144 会員,企業会員が 48 会員である.. 集団や職種別組合などと連携することで,地域. おもな事業は, (ア) 教育訓練情報 (訓練講座,. ニーズに即した内容となるような努力がなされ. 指導人材,教材など)の提供, (イ)キャリア・. てきたこと,また,両者の間のネットワーク化. コン サ ル ティン グ(職業能力開発相談) , (ウ). が図られ,ニーズを具現化していく試みがなさ. オーダー型在職者訓練のコーディネート, (エ). れていること,などが確かめられた.. 民間・公共の共同研究プロジェクトの推進など. 十分ではないにしても,具体的なデータに基. となっている.設立後数年であるが,職業技術. づき検討することにより,現代の職業能力開発. 教育訓練機関と地域企業を連携させる役割を担. と地域社会における実情について,その 1 つの. う組織として,期待されるものは大きいと考え. 断面を切り取り考察することができたのではな. る.. いかと考えている. おわりに. 樋口美雄,シルヴァン・シゲールは,日本の 地域の雇用促進にとって必要なことを次のよう. 世界経済の変容,国際資本移動,非正規雇用. にまとめている21).. の増大等の中で,地域の自律的成長・発展が望. (ア)知識基盤を構築し,従来の公共投資に. まれることを論じ,雇用対策の大きな柱の一つ. 代表される外部依存型の雇用創出策から,熟練. である職業能力開発を取り上げてきた.この職. した労働力を育成し,活用できる地域内部自律. 業能力開発については,先進国─途上国間にお. 型の開発戦略への移行.(イ)労働市場政策お. ける関係及び職業能力開発と地域産業社会との. よび経済開発政策の連携を強化する必要があ. 関連という 2 つの軸に基づく検討が課題解決へ. り,地域が独自の判断で両者の調整をできるよ. の示唆を与えるものと考えている.. うに権限と責任が与えられること.(ウ)地域. 本稿では,職業能力開発と地域産業社会との. 特区的に各地域が独自の戦略を実施することに. 関連において,4 つの設問を設定し,神奈川県. より,それぞれの試みの成果を評価することに. を事例に検討・検証してきた.. よって,他の地域もそれを参考にすることがで. この中から明らかになったことを整理する. きること.(エ)地域が戦略の立案と政策の方. と, 「①誰を対象に人材開発をするか」につい. 向づけを決定するためには,自治体とともに企. ては,雇用状況が極めて厳しく,学歴,年齢と. 業や労働組合,市民,NPOの参画が不可欠で. もに広範囲な職業訓練が求められていること,. あること22).. 「②能力開発した人材が地元(地域社会)に就. これらの指摘は,それぞれ妥当なものである. 職できるか」については,公共職業能力開発施. と思われるが,現実に取り組んでいくことは,. 設と地元企業との長年にわたる連携関係が構築. 決して容易ではないと考えられる.. されており,殆どの訓練生が地元の中小企業を. 雇用情勢が一層厳しさを増す中で,今後と.

(15) 職業能力開発と地域産業社会(國重). も,職業能力開発 に つ い て,単 に 労働力 の 質 の向上と捉えるだけでなく,企業競争力の向 上,地域 に お け る技術革新の進展など,多面 的に捉えるべきであり,それは地域社会の構 造や機能との関わりの中で,分析を進める必 要があると考える.そして,その中から,地 域 の 自律的成長・発展,雇用労働情勢 の 改善 への道筋が見えてくるものと思われる.. 注 1)本稿 は,第 9 回 ガ バ ナ ン ス/国際開発研究会 (平成 21 年 1 月 24 日開催)における報告を踏ま えているものである.当日は小池治教授はじめ, 研究会参加者から貴重なご指導・ご教示を頂い た.ここに記して御礼を申し上げたい. このような事態に対して,例えば,神奈川県 では,12 月上旬に発表した緊急経済対策の第 3 次対策の中で,主に製造業で解雇された人を 対象に,「緊急特別短期訓練」,「緊急体験訓練」 に取り組んだ. 2)本稿執筆で直近である 2009 年 7 月の全国完全 失業率は 5.7%(季節調整値,2009 年 8 月 28 日 総務省発表)と なって い る が,『平成 21 年度 財政経済白書』では,企業内の潜在的な失業者 は経済全体で,528~607 万人,製造業で 328~ 369 万人であり,これを同白書では「雇用保蔵」 と呼んでいる. 3) 『住居喪失者不安定就労者の実態に関する調査』 厚生労働省,平成 19 年 8 月 28 日発表によると, ネットカフェ等を週の半分(3~4 日程度)以上 オールナイト利用する「常連的利用者」である 住居喪失者は全国で約 5,400 人,そのうち住居喪 失短期労働者は約 1,700 人と推計された. 4)山田久「二重構造を放置すると産業はますま す 空洞化」,『エ コ ノ ミ ス ト』2009 年 8 月 4 日 号 p. 38 5)駒井洋,[1980]「発展途上国の都市に対する 二分論的接近の妥当性」『アジア経済』Vol. 21, No. 112 1980 年 12 月, 原 典 は J. H. ブーケ, 永易浩一訳[1979]『二重経済論』秋董書房 6)高度経済成長を続けてきた日本経済において も,第 1 次石油危機後 の 1970 年代 に は 成長率 が下方屈折するとともに,戦後最大といわれる 雇用調整を迫られる状況となった. 7)本山美彦編著[1995],『開発のフロンティア』 第 1 章 小野塚佳光,p. 33.(原典 は Michael Beenstock[1984] “The world Economy in Transition, 2nd ed.”). (583). 73. 8) 本 山 前 掲 書 p. 46 (原 典 は,W. Arthur. Lewis[1978]“The Evolution of International Economic Order” p. 71 原 田 三 喜 雄 訳『国 際 経済秩序 の 進展』東洋経済新報社 1981 年,p. 74) 9)“International Perspective on Teachers and Lecturers in Technical and Vocational Education” p. vii Introduction by the Series Editors 10)国際開発学会[2002] , 『 2001 年度外部機関 に よ る 評価 タ イ 首都圏 と 地方 と の 地域間 格差是正 セ ミ ナー報告書』 ,国際協力事業団 (JICA)委託 p. 203 11)人材開発研究会編[2008] , 『解説 日本の職 業能力開発 平成 19 年度版』 (労働新聞社)に よる整理,各章立てを参考とした. 12)厚生労働省職業能力開発局 の 平成 19 年度予 算額 は 1,448 億円(一般会計 157 億円,労働保 険特別会計 1,291 億円)で あ り,労働保険特別 会計 の 1,291 億円 の う ち 1,287 億円 は 雇用勘定 に区分されており,その雇用勘定の多くが公共 職業訓練を実施する独立行政法人 雇用・能力 開発機構 へ の 交付金等(運営交付金 770 億円, 事業費補助金 238 億円,施設費補助金 17 億円) と なって い る. (出典: 『日本 の 職業能力開発』 19 年度版) 13)岡田亜弥,山田肖子,吉田和浩編著[2008] , 『産業スキルディベロップメント─グローバル 化と途上国の人材育成─』 (日本評論社)では, 公的な TVET 制度を 4 つの類型に分けること が可能としている. 「第一 は,中等教育(後 に 後期中等教育)に おける職業教育を中心とする職業技術教育訓練 (インドネシア型) .第二は,ポスト中等教育段 階の教育・訓練機関による職業教育を中心とす る 職業技術教育訓練(ア メ リ カ 型) .第三 は, 労働省など他の省庁が管轄する非教育セクター の訓練機関による職業教育を中心とする職業技 術教育訓練(インド型) .第四は,教育セクター 内の中等教育段階ないしポスト中等教育段階の 教育・訓練機関による職業教育と,労働省など 他省庁の管轄下にある非教育セクターの訓練機 関が提供する職業訓練が併存する複線型職業技 術教育訓練制度モデル(タイ, ベトナム, ネパー ル,中国,ブラジル,南アフリカ,ガーナ,日 本など) 」p. 217 「しかし,上記 4 類型のいずれのモデルが, 途上国の産業スキルディベロップメントを推進 する上で最適なモデルであるかは, 後述の通り, さまざまな要因が関わっているため,一概に判 断できない. 」p. 218 としている. 14)樋口美雄,S. シゲール,労働政策研究・研修 機構編著[2005] , 『地域 の 雇用戦略』 ,日本経.

(16) 74. (584). 横浜国際社会科学研究 第 14 巻第 5 号(2010 年 1 月). 済新聞社 序章「経済開発と雇用創出を促進す るための地域ガバナンス─日本の挑戦」p. 7. なお,労働保険特別会計の雇用勘定を原資と する同機構の公共訓練の地方への移管にあたっ ては,地方における負担増とならないような財 源の移譲が必須であり,大きな課題であると考 えられる. 15)例えば,独立行政法人労働政策研究・研修機 構の 2004 年 12 月の『グローバル化と若者の未 来に関するアジア・シンポジウム』によると, 「 90 年代後半の経済危機以降,各国とも雇用状 況が改善しているものの,若年者の失業率は高 い水準にある.(略)一方では,人的ニーズの 高度化のなかで学歴水準の低い若年者にとって 雇用機会を得ることが難しくなるという問題が あ り,(略)他方 で は,大卒者等 の 高学歴若年 者の雇用も問題になっている.これまでの高学 歴若年者は,少数エリートとして良好な雇用機 会を獲得できていた,しかし,高学歴化が進み 高学歴若年者の供給が増加するなかで,彼ら(彼 女ら)が高度化する企業の人材ニーズに適応で きていないという問題が深刻化している.(タ イでも韓国でも高学歴若年者の雇用問題が深刻 化し,若年者失業問題に対応するための職業能 力開発施策政策が課題になっている.)」 16)就職 3 年後の離職率は中学卒で 7 割,高校卒 で 5 割,大学卒で 3 割といわれ,一般に,「 753 現象」といわれている.3 年後の離職率が 5 割 であるということは,高卒の割合に近いという ことができる. 17)紅葉ヶ丘職業能力開発推進協議会 を 例 に と る.昭和 57 年 に「紅葉ヶ丘女子高等職業技術 校」の推進協議会として発足しており,当時の 訓練科目 は 和文 タ イ プ 科,ト レース 科,給食 科,福祉ヘルパー科の 4 科で訓練生は全て女子 だった.会員企業は一般企業のほか,医療施設 や福祉施設等も多く多彩なメンバーだった.そ の後,社会の変化に伴い訓練科目や訓練期間も 変わり,86 年 4 月には校名から女子の字が消 え,また高齢化社会の進展に伴い,訓練も介護 と調理が主体となった.会員の構成も変わった が,推進協議会の会員施設が積極的に訓練生の 現場実習を引き受けてきた結果,修了生の就職 率も高く,職場定着率も良好で毎年多数の会員 企業の永年勤続修了生の表彰も続けてきた.紅 葉ヶ丘高等職業技術校 が,2008 年度 か ら,神 奈川県立東部総合職業技術校に再編統合される こととなったため,07 年度をもってその幕を 閉じている.なお,08 年度からは,新たに「東 部地区職業能力開発推進協議会」として再出発 している. 18)かながわ若者就職支援センターでは,30 歳 台までの若者を中心とするキャリア・カンセリ. ングの他に, 「地域連携事業」において,県内 高校生などを対象に,社会人によるキャリア教 育,職業観の醸成の取組を展開している. 19) 『日本 の 雇用 を ど う 守 る か』宮本光晴著, PHP 新書,1999 年 1 月. 20) (社)神奈川県工業技術研修 セ ン ター 『 42 年間 の あ ゆ み 1966 年~2008 年』よ り.同社 団法人は 2008(平成 20)年 3 月 31 日に解散と なったが,研修事業は技術力強化支援事業とし て,県直営事業により継続実施されている. 21)樋口美雄,S. シゲール,労働政策研究・研修 機構編著 前掲書 p. 2.同書 で は,日本 の 問 題点として 3 点掲げている.1 点目として,国 が決めた画一的な施策では,効果が十分発揮で きないことであり,地域ニーズに適した,需要 サイドの要請を強く反映した施策が必要とされ ていること.2 点目として,国における縦割り 行政のデメリットがそのまま地方行政に持ち込 まれ,政策間の連携・融合が十分図れないこと. 3 点目は少子化による長男長女社会の到来で, 若年層においても地元定着率が高まり,大都市 への人口移動率が低下し,地域間の需給ギャッ プを埋める力が失われつつあり,各地域で雇用 を創出する必要性が高まっていること. 22)政策 へ の 企業 や 労働組合,市民,NPO の 参 画は不可欠であるが,他方では,地域社会単位 (集団)が果たす機能に着目して,適切な「政 策的働きかけ」をしなければ,地域社会開発政 策の効果は上がらず,また,市民参加を得るこ とも困難であろう. (國重正雄, 「地域社会開発 政策をより有効とするためには?」 ,放送大学 大学院教育研究成果報告 『オープ ン フォーラ ム No. 4 』p. 122). 参考文献 森川俊孝,池田龍彦,小池治編著[2004] , 『国際 協力の法と政治』 ,国際協力出版会 余語トシヒロ・佐々木隆共編著[2008] , 『地域社 会と開発─東アジアの経験─』 ,古今書院 日本福祉大学 COE 推進委員会編著[2005] , 『福 祉社会開発学の構築』 ,ミネルヴァ書房 本山美彦編著[1995] , 『開発のフロンティア』同 文舘出版株式会社 J. H. ブーケ,永 易 浩 一 訳[1979] 『二 重 経 済 論』 秋董書房 Michael Beenstock[1984]“ The world Economy in Transition, 2nd edition.” George Allen & Unwin Ltd. W. A. ル イ ス 原田三喜雄訳[1981] 『国際経済 秩序の進展』東洋経済新報社 国際開発学会[2002] , 『 2001 年度外部機関 に よ.

(17) 職業能力開発と地域産業社会(國重). る 評価 タ イ 首都圏 と 地方 と の 地域間格 差是正 セ ミ ナー報告書』,国際協力事業団 (JICA)委託 ピーター・オーク レー著 勝 間 靖,斉 藤 千 佳 訳 [1993],『「国際開発論」入門─住民参加によ る開発の理論と実践─』,築地書館㈱ Edited by Philipp Grollmann Felix Rauner Editors[2007],“International Perspective on Teachers and Lecturers in Technical and Vocational Education” Springer 人材開発研究会編[2008],『解説 日本の職業能 力開発 平成 19 年度版』,労働新聞社 岡田亜弥,山田肖子,吉田和浩編著[2008],『産 業スキルディベロップメント─グローバル化 と途上国の人材育成─』,日本評論社 大矢奈美著[1996],『公共職業能力開発校におけ る 職業能力開発 の 評価』,横浜国立大学大学. (585). 75. 院 国際社会科学研究科 博士論文 宮本光晴著[1999] , 『日本の雇用をどう守るか』 , PHP 新書 樋口美雄,S. シゲール,労働政策研究・研修機構 編著[2005] , 『地域 の 雇用戦略』 ,日本経済 新聞社 神奈川県雇用産業人材課[2008] , 「平成 20 年度 (19 年度対象)かながわの職業能力開発」 神奈川県雇用産業人材課[2008] , 「平成 19 年度 神奈川県 産業技術短期大学校卒業生 高 等職業技術校修了生 実態調査報告書」 神奈川県雇用産業人材課[2007] , 「若いパワーを 明日へ(神奈川県県内企業の若年者雇用に関 する意向調査)から」 [く に し げ ま さ お 横浜国立大学大学院国際社 会科学研究科博士課程後期].

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