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対審権と伝聞証拠(公判外証言)―血中アルコール濃度報告は「証言」か : BULLCOMING v. NEW MEXICO, 564 U.S. -, 131 S. Ct. 2705 (2011)

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(1)対審権と伝聞証拠(公判外証言)—血中アルコール濃度報告は「証言」か. 判例研究. 対審権と伝聞証拠(公判外証言) ―血中アルコール濃度報告は「証言」か ―BULLCOMING v. NEW MEXICO, 564 U.S. -, 131 S. Ct. 2705(2011). 君塚 正臣 [事実の概要] 2005 年 8 月に、上告人 Donald Bullcoming の運転する自動車は、ニュー・メ キシコ州ファーミントンの交差点で小型トラックに追突した。トラック運転手 は Bullcoming の目が血走っていることに気付き、息にアルコール臭がしたの で、警察を呼ぶように妻に言った。やって来た警察官は現場でテストを行い、 Bullcoming は即座に「酒に酔って」(DWI)車両を運転したとしてニュー・メ キシコ州法 1)違反で逮捕された。Bullcoming が酒気検査をすることを拒否した ので、警察は血中アルコール分析を許可する令状を得、令状に従って、血液サ ンプルを地元の病院で採血し、その血中アルコール濃度(BAC)を測定するた めに、同州の保健省科学研究部(SLD)に、サンプルを送った。 SLD のレポートは、逮捕した警察職員が記載する項目に続いて、血液を採 血した看護士と、研究所で血液サンプルを受けた SLD 職員による記載欄があ り、SLD 科学捜査分析者 で あ る Curtis Caylor の 署名 が あって、 「分析者証明 書」という題名が付いていた。Caylor は、Bullcoming のサンプルの BAC が 100㎖につき 0.21 gという、非常に高いレベルであると記載し、また、 「サン 187.

(2) 横浜国際経済法学第 21 巻第 2 号(2012 年 12 月). プルのシールは、無傷で受け取られ、研究所で破られた」 、その「レポートの 分析者のブロックの供述は正しい」 、彼は「レポートの裏に提示される手順に 従った」と記していた。SLD 分析者は、BAC レベルを測定するために、ガス クロマトグラフという機械を使う 2)が、Caylor のレポートにより、100㎖につ き 0.16 gの BAC の基準点以上だという加重 DWI3)となり、州は Bullcoming を通常より重い罪で起訴した。 州裁判所への起訴は、 連邦最高裁による Crawford v. Washington 判決 4)の後、 Melendez-Diaz v. Massachusetts 判決 5)の前になされ、2005 年 11 月には陪審審 理となった。ところが、その裁判の日に、州は、理由を明らかにしないまま、 「ごく最近、無給の休暇をとった」ので、Caylor を証人として呼んでいないと 突然発表した。州が、Caylor の分析をよく見ず、精査もしなかった SLD 科学 者の Razatos の証言しかないのに、 「業務記録」として Caylor による調査結果 を提出しただけであることは、Bullcoming の有する「不利な証人と対決する」 という修正 6 条上の権利を犯すと、被告弁護人は主張した。しかし、州地裁は SLD 報告を有効と認め、陪審は Bullcoming に加重 DWI で有罪判決を下した。 州控訴裁も、 「血液アルコール報告は、この場合は非 testimonial で、信頼性の 保証を通常備えている」と断定し、有罪判決を維持した 6)。州最高裁での審理 中に、 連邦最高裁は Melendez-Diaz 判決を下したが、 州最高裁は、Caylor は「単 なる代書人であり、単にガスクロマトグラフの機械で生じ結果を写しただけ」 であり、Razatos は Bullcoming の血液をテストすることに参加しなかったが、 「ガスクロマトグラフ機械に関する鑑定人の免許を受けて」おり、その証言は 重要であったと判示して、有罪判決を維持した 7)。. [判 旨] 5 対 4 で州最高裁に差し戻す。 <ギンズバーグ法廷意見(三と脚注 6 は相対多数意見)> スカリア判事が同調。ソトマヨール、ケイガンが三以外に、トーマス判事が 188.

(3) 対審権と伝聞証拠(公判外証言)—血中アルコール濃度報告は「証言」か. 三と脚注 6 以外に同調した。 Caylor の testimonial な供述が Razatos の証言を通して証拠の一部となるこ とは、連邦最高裁の支配的な先例に反する。 一 修正 6 条 の 対面条項 は、 「全 て の 刑事告発」を 受 け た 被告人 に「対 峙 す る 証人 に 直面 す る 権利 を」与 え る。方針決定的 な 2004 年 の 決定 で あ る Crawford 判決において、我々は、不在の証人の testimonial な供述の告白 が信頼性の裁判の測定に基づくのを許すように対面条項を解釈した Ohio v. Roberts8)を覆した。Crawford 判決は、対面条項に対する忠誠が、 「供述者を法 廷に呼べず、以前に被告が反対尋問を行う機会があったときだけ、法廷にいな い証人の testimonial な供述」を用いることを許すと考えた 9)。Melendez-Diaz 判決でも、捜査又は起訴に関連して準備される分析者の証明は testimonial で あり、従って、対面条項の射程内にあると本法廷は判示した 10)。本件でも、 州は、証明に署名した Caylor が出廷できないと決して主張しなかった。記録 は、Caylor が明らかにされていない理由で無給の休暇をとったことを示すだ けだった。そして、Bullcoming には Caylor に反対尋問する機会がなかった。 よって、Crawford 判決と Melendez-Diaz 判決は、Bullcoming を強く支える。 分析者 Caylor の役割は「単なる代書人」であり Bullcoming の「本物の告発 人」は機械であった、と州最高裁は述べた。しかし、Caylor は、機械が生成 した以上の報告をした。Caylor は、 彼が法医学報告書番号とサンプル番号が 「一 致した」ことを確認するチェックをし、彼が全く寸分違わず慣行を厳守し、完 全なシールの付いた無傷の Bullcoming の血液サンプルを受け取り、それに特 定のテストを行ったことを証明した。彼は、さらに、レポート空白の「意見」 区画を残すことによって、 「状況又は状態は、サンプルの完全性あるいは分析 の有効性に影響を及ぼす」ことがないことを示した。これらの表現は、生の、 機械で生産したデータでは明らかにされない過去の出来事と人間の行動に関し て、反対尋問のための競技会である。機械で生産したデータから採血される分 析者の testimonial な報告書の比較信頼性は、修正 6 条のハードルを超えるも 189.

(4) 横浜国際経済法学第 21 巻第 2 号(2012 年 12 月). のではない。本法廷は Crawford 判決で、testimonial な供述の 「明らかな信頼性」 は対面条項を免除しないことに落ち着いた 11)。 Razatos が行う用意があった種類の代わりの testimony は、Caylor が知った か、彼の証明書が関係した出来事について観察したもの、即ち、彼が費やした 特定のテストとテストのプロセスを伝えることができなかった。そのような代 わりの証言は、証言している分析者の側のいかなる過ちも嘘も暴くことがで きなかった。ここが重要なのが、Razatos には Caylor が無給の休暇をとった 理由についての知識がなかったのである。その状況にある Caylor に対してこ そ、Bullcoming の弁護人は、無能、回避又は不正が、Caylor がワーク・ステー ションから去った原因かどうかを明らかにすべく質問できた。この点に関して は注目に値することだが、州は決して Caylor が「出廷不能(unavailable)」とは 主張しなかった。州は、Razatos が Bullcoming の BAC に関してどんな「独立 した意見」を持つかをおよそ主張しなかった。本法廷が Crawford 判決で強調 したように、 「修正 6 条の文言は、対決要件からの少しの制限のない例外も裁 判所によって開発されることを示唆しない」12)のである。(弁護人を求める権利に 「修正 6 条の権利の真の目的は、公正な裁判を確実にすることである。 関して、 ) しかし、裁判が、概して公正な限り、権利が無視できるということにはならな い」13)と、本法廷は判示している。要するに、州が Caylor の証明を提出する ことに決めたとき、Caylor は Bullcoming が反対尋問をする権利を有する証人 となったのである。我々の先例は、他のどのようにも賢明に読まれ得ない。 二 我々は、SLD 血液アルコール分析が性格的に非 testimonial であると報 告があり、この事件では対面条項の問題は起こらないという、州の主張に目 を向ける。しかし、Melendez-Diaz 判決における、警察捜査を助けるために 作られた「証拠的目的」のためだけに作成される文書は testimonial と評価さ れる 14)。全ての具体的な点で、本件の研究所報告書は Melendez-Diaz 事件の それらに似ている。また注目に値することとして、SLD 報告書形式は、公認 の血液アルコール分析の許可を与える、地裁及び治安判事裁判所規則に言及し 190.

(5) 対審権と伝聞証拠(公判外証言)—血中アルコール濃度報告は「証言」か. ている説明を含んでいる。要するに、 「血液アルコール分析の報告書」に付き 添っている手続は、Caylor 断定を testimonial と見做すのに十二分である。 三 州などは(そして反対意見も)、法医学的証拠への対面条項の揺がない適用 が不当な重荷を起訴側に課していると主張する。しかし、ニュー・メキシコ州 法は研究所に、他の分析者によって再テストできるようにサンプルを保つこと を義務付けている 15)。Melendez-Diaz 判決が述べたように、 「対面条項は、起 訴側に証人を連れてくる負荷を課すのであって、被告に対して裁判所に相手方 証人を連れてくる負荷を課しているのではない」16)。それ故、元の分析者を法 廷に連れて来られないとき、再テストを行う義務は、被告でなく州にある。さ らにまた、通知と要求の手順は、多くの裁判では、事実上ずっと、法医学研究 所の負担を減らすことができる。Crawford 判決の前でさえ、科学捜査分析者 を証言のために法廷に呼ぶことは、一般に検察官の慣行であった。そして、州 や地方の研究所は、裁判で分析者の出廷を容易にするために、 「運営上および 職員についての決定をする」17)。検察官は分析者の出廷可能性を考えて裁判日 程を計画し、そして、事実審裁判所は自由に、予想外の紛争が起こるときに審 理延期を行うし、分析者が裁判の時に研究所によって最早雇用されていない珍 しい事例で、 「検察は、裁判所にその分析者を連れてくる努力をする」のであ る 18)。研究所は通常更なるサンプルを持っており、彼らは必要に応じて再び テストを行うことができる 19)。. <ソトマヨール一部同意意見> 一 我々の先例の下、ニュー・メキシコ州最高裁は、BAC 報告書をこの事 件で testimonial であると考えるのが正しかったと思う。供述が testimonial で あるかどうか決定するのに、我々はそれが「裁判証言の法廷外の代わりをな す主要な目的」を有するかどうかを決めなければならない 20)。法廷意見も、 BAC 報告書が何故我々が Melendez-Diaz 判決で testimonial とした証明書と具 体的に区別できないかについて説明する。また、 「形式は、我々の主要な目的 191.

(6) 横浜国際経済法学第 21 巻第 2 号(2012 年 12 月). 審査の唯一の試金石でない」が、供述の形式又は形式ばらないことは、特定の 供述が裁判で使われる主要な目的があるかどうかに光を投げ掛けることができ る 21)。私は、ここで論争中の証明書が、公証の欠如にも拘らず、公式の供述 であるという法廷意見の評価に同意する。 ニュー・メキシコ州最高裁は、Caylor が「単なる代書人」であったので、 そして、Razatos にガスクロマトグラフと検査法の作業について反対尋問する ことができたとした。法廷意見は、それらが何故誤っているかを説明した。 二 この事件が、我々が Melendez-Diaz 判決で考慮した事実と具体的に区別 がつかないが、私は本判決が提示しない事実の状況を若干強調する。第 1 に、 本件は、州が、BAC 報告書のために、代替の主要な目的はもとより、代替の 目的を提示した事件でない。例えば、州は、報告書が Bullcoming に医療を提 供するのに必要だったとは主張しなかった。第 2 に、本件は証言者が、管理者、 評価者、または係争中の科学的なテストと制限的ではあるが個人的な関連を持 つ他の誰かの事件でもない。Razatos は反対尋問で、彼が BAC 報告書を提示 することに何らかの役割を演じたと認めず、Caylor の試験の監督をしたこと もおよそ認めなかった。第 3 に、本件は、鑑定人が証拠に彼ら自身有効と認め られなかった、基本的に testimonial な報告書に関する彼の独立した意見を求 められた事件でない。寧ろ、 「証拠物として提出された報告書を読むことを除 いて、Razatos 氏は、 請願者の血液アルコール含有量に関する意見を述べなかっ た」と州は説明する。最後に、本件は州が、ガスクロマトグラフからのプリン トアウトのように、機械が生成した結果だけを提出した事件でもない。 Melendez-Diaz 判決のように、本件の BAC 報告の主な目的は、明らかに、 証拠として役に立つことにある。従って、それは testimonial であり、事実審 裁判所は、州が Razatos の証言を通してそれを証拠として提出するのを許すと いう過ちを犯してしまったのである。. 192.

(7) 対審権と伝聞証拠(公判外証言)—血中アルコール濃度報告は「証言」か. <ケネディ反対意見> ロバーツ長官、ブレイヤー、アリトー両判事が同調。 Melendez-Diaz 判決の論拠と結論に同意するか否かは置くにせよ、法廷意見 は今日、本件のような例にまでこの判決を新しく広げる重大な誤りを犯した。 一 昨日までに連邦最高裁は、対面条項が、研究所の職員が調査結果を立証 し、研究所での方法と実施に証言して、そして、裁判で反対尋問される調査結 果の採用を禁じるとは判決してこなかった。記録は、当該分析者の役割が、管 理の連続の中の他の誰よりも大きくなかったことを明らかにしている。血液サ ンプルが処理された州科学研究部では、分析は 40 から 60 のサンプルの束で流 れていく。分析は——本事例のように——全ての研究所職員が帰った後で動く かもしれないガスクロマトグラフによって、機械的に実施される。検察側が呼 んだ研究所の代表は、Razatos という名の科学的分析者である。彼は「州を通 してこれらのプログラムの管理を監督する中で手伝った」と、証言し、これら のステップの各々に関して質問に答える資格を与えられた。Bullcoming の弁 護士による質問中で、Razatos は彼の名前が報告書で見つからないことと認め た。彼はサンプルを受け取らず、分析を実行せず、報告書を完成させていない。 そして、彼は幾らかの人事的決定の理由すら知らなかった。これらの許可に関 して被告弁護人から議論を秤にかけた後、そして、研究所の慣行とプロセスを 知っていた Razatos の証言を考慮した後で、陪審は被告の有罪に関して合理的 疑いを発見しなかった。これらの状況で、書類に記入しテストの結果を記録し た技術者を呼ぶことを州に義務付けることは、無意味な形式論である。そして、 弁護側は、テストが必ずしも信頼できない、あるいは技術者が間違いをしたか もしれないと説明するため、他の鑑定人を呼ぶかもしれない。ここでしたよう に、陪審はそのとき、テストが信用できるかを決定できるのである。 二 対面条項と多くの修正 6 条の条項は、信頼できる証拠により公正な裁判 を確実に行えるように設計されている。法廷意見は、今日、例えば、 「署名さ れた文書として形式分類される」ので、研究室の報告書を証拠採用することを 193.

(8) 横浜国際経済法学第 21 巻第 2 号(2012 年 12 月). 閉ざすのである。だが、現在、法廷意見が明らかにしたことは、この規則は、 それが最初に現れたときより明白でないか、今後これに従えるほどあまり厳密 でない、ということである。複数の関係者を含んでいるときの手続は、この問 題を例示する。本件に適用されるならば、その規則は、3 人以上の身元を確認 された証人の証言のある報告書の証拠能力を条件にしただろう。他の事例で は 7 人、いや 40 人の証人さえ、義務付けられた。裁判所は、このように——メ Melendez-Diaz 判決への忠誠により——自らを邪悪な選択に閉じ込めてしまう。 三 Crawford 判決自体は、今日の結論を強要しない。同判決は、本条項の 基本的な目的を、Walter Raleigh 卿に対する悪名高い反逆罪裁判の類の濫用の 防止だったと説明した 22)。だが、この条項を伝聞証拠ドクトリンへの依存か ら解放する代わりに、法廷意見は、今、この条項を、彼らの最も性急で最も厳 正で、そして最も洗練されていない明確な表現をもって、伝聞証拠ルールと結 合させた。その結果、法廷意見は、犯罪を観察し、裁判で現れず対決しない有 効な証人による宣誓のある一方的な法廷外の言明を禁ずるというその最も重要 な適用を遥かに越えてこの条項を解釈した。 次に、合衆国は今、本法廷によって見直された彼らの伝聞証拠ルールの一部 にあるような危険に晒されていない。端的に言って、合衆国には、進行中で継 続的な全体的な変位と、連邦構造の崩壊がある。法廷意見は、本決定は「告発 における不当な負担を課す」ものではない、という Melendez-Diaz 判決以来の 主張を繰り返す。しかし、被告弁護人が反対尋問の権利を放棄する適切な理由 がないまま裁判を進行するのが、普通の事例である。そして、反証は既に上り 始めている。例えば、2008 年から 2010 年の間に、酔っ払い運転事例でニュー・ メキシコの分析者を証言させる召喚令状は 71%、実数にして 600 増である—— 別の言い方をすれば、全平日で 8 から 9 件に上る 23)。面積によって 5 番目に 大きく、丁度 10 人の分析者を雇用する 24)州で、血液アルコール事例の各分析 者は、最近 1 年で 200 の召喚令状を受け取った 25)。分析者は、現在、大部分 の平日に長距離を移動しなければならない。結果は、研究所の言葉を借りれば、 194.

(9) 対審権と伝聞証拠(公判外証言)—血中アルコール濃度報告は「証言」か. 「大混乱」である。そして、弁護側が反対を掲げ、分析者が別の裁判所の手続 に拘束されるならば、休暇、欠席、移動中に遅れた、もはや雇用されていない、 病気、もう生きていないときも、彼らはたなぼたを得るのである。 7 年が経過して、Crawford 判決のアプローチが定まっていなかったことを肝 に銘じるべきことを示している。今は、しっかりした理由に戻るときである。. [研 究] はじめに 伝聞証拠排除の原則 26)は、被告を有罪に陥れるため、安全地帯で勝手な証 言をなすことや証拠を捏造することを排除し、刑事手続を適正に進めるために あると言えよう。そこまで悪意がなくとも、知覚、記憶、叙述の各段階で誤り が混入する危険は避けられない 27)。このことは、誤審を避けるためには、被 告に不利な証拠について、現在又は過去に反対尋問を行う機会がなければ、受 理されない、という規則に結実する 28)。陪審制度(そして裁判員制度)の下では、 証人の態度まで陪審に見てもらうことは重要であろう 29)。とは言え、「原則」 であるということは、証言が不可能、困難、無用という理由で伝聞例外 30) があることを示す。どこまでを例外として許容するかは、難しい問題である。. 1.先例の整理 以前の連邦最高裁の先例は、1980 年の Ohio v. Roberts であった。他人名義 の小切手を偽造し、盗難クレジットカードを所持したという容疑で逮捕された 被告が、被害者の娘から譲り受けたと主張したが、唯一の証人である彼女は出 廷せず、その後音信不通となった事案である。最高裁は、証人の供述が不能で、 信頼性の徴候があれば、即ち「信頼性の十分な徴候(adequate indicia)」があれ ば不利な供述の証拠採用もできるとし、彼女の法廷での証言なしに、被告の有 罪を認定したのだった。また、深く根を下ろした伝聞例外なら、具体的立証な 195.

(10) 横浜国際経済法学第 21 巻第 2 号(2012 年 12 月). くとも信頼性を認める、薄いが広い原則を示したものであった 31)。 この状況を大きく変えたのが、2004 年の Crawford v. Washington である 32)。 傷害事件で、被告と妻にミランダ警告を与えて取調べたところ、被告は、数週 間前に被害者が妻に sexual advances しようとしたと聞き、立腹し、刺したが、 そのとき「被害者は手に何か持っていた」と述べた。これに対して、妻は、 「後 で何かを掴んだかもしれない」と述べたが、妻にはワシントン州法の認める夫 婦間証言拒否権(marital privilege)を行使し、検察は録音された妻の警察への供 述を伝聞例外として提出したので、被告が修正 6 条違反を唱えた事案である。 最高裁(スカリア判事法廷意見)は、1791 年制定の修正 6 条の歴史的背景を検 討し、被告人に不利な尋問・法廷外供述を証拠として一方的に使うことはでき ないが、他方、全ての伝聞が修正 6 条の問題ではないとして、本条は被告人に 不利に「証言する(bear testimony)」者に適用されるのだとした。全ての証言に 同じ原則を適用するのは広汎過ぎ、一方的証言でも信頼性があれば十分とする のは緩過ぎると先例を非難し、testimonial な供述では、憲法制定者は一般的な 信頼性は認めてこなかったことを強調して、判例変更を行った。この枠組みは、 以前とは逆に、 「カバーする範囲は狭いが目の細かい網」33)だとも評される。 その結果、妻は身柄拘束中に供述したもので、釈放がかかっている中で誘導的 な質問がなされており、反対尋問なしに被告に不利な testimonial な供述を証 拠採用することは修正 6 条違反であるとして、破棄差戻しとしたのである。 この判断は、testimonial と非 testimonial の区別は歴史的根拠がないので、 判例変更は必要ないとする、オコナー判事が同調したレンクィスト長官の結 果同意意見 が あった の み で、結論 に お い て 全員一致 で あった 34)。こ の 立場 は当初は盤石に見えた。例えば、2006 年の Davis v. Washington, Hammon v. Indiana35)では、 「元ボーイフレンドに殴られた」という 911 番通報における通 報者とオペレーターの会話は緊急事態の最中であって非 testimonial だが、夫 婦喧嘩騒ぎの通報で到着した警察官による妻の取調べ内容は、緊急事態では なく刑事手続が始まっているので testimonial だとの判断がなされた。また、 196.

(11) 対審権と伝聞証拠(公判外証言)—血中アルコール濃度報告は「証言」か. 2008 年の Giles 判決では、 駆けつけた警察官に「元ボーイフレンドが暴行、 脅迫」 したと被害者が発言したという警察官の証言は testimonial であるとされた。 ところが、スカリア判事が以上の法廷意見を繰り返しても、反対意見が増え てきた。2006 年事件ではトーマス判事が一部反対意見を述べたほか、2008 年 事件ではブライアー、スティーブンス、ケネディの 3 判事が反対に回った。そ して同じくスカリア判事が法廷意見を執筆した 2009 年の Melendez-Diaz 判決 では、ロバーツ長官とケネディ、ブライアー、アリトーの 3 判事が、本判決 と全く同様に、反対に回った。判決は、被疑者護送後、車内捜索でビニール 袋押収し、それについてコカインを含むとした公証人面前宣誓ある化学鑑定書 は中核的 testimonial であるとして、州研究所の検査官に求められれば反対尋 問を受けねばならないとしたのであった。そして遂に、2011 年の Michigan v. Bryant で、スカリア判事はギンズバーグ判事と共に反対意見に回ることとなっ た。ソトマヨール判事の法廷意見は、銃で撃たれてガソリンスタンドで発見さ れた致命傷の被害者(後に死亡)の声を聞いた警察官の証言は伝聞証拠例外に当 たり、非 testimonial だとした。アリトー判事が相対多数意見を執筆した 2012 年の Sandy Williams v. Illinois36)では、強盗強姦事件の精液の DNA 鑑定に関し て、被告による分析者への反対尋問の請求が斥けられたのである。 このように、現在、判例の立場は微妙である。裁判官の組合せも、保守派・ リベラル派、州権派・連邦派という枠組み 37)でも説明できないものである。 ほぼ一貫してスカリア判事の反対に回っているのはブライアー、ケネディ両判 事であるが、Crawford 判決で典型的に見られるスカリア流の歴史解釈を嫌っ ているためとも思える 38)。2009 年の Melendez-Diaz 判決の多数派裁判官のう ち 2 人が最高裁を去り、辛うじて Crawford 判決の判例変更以降の立場を、ス カリア判事以外の裁判官の筆によって維持した。ただ、補充されたソトマヨー ル、ケイガンの両判事がスカリア判事の立場に丸々は賛同しなかったこともあ り、一部が相対多数意見となるなど、Crawford 判決は既に論争的となってい ると言ってよい 39)。 197.

(12) 横浜国際経済法学第 21 巻第 2 号(2012 年 12 月). 2.testimonial 区分の困難さ 判例の立場は、 「証拠(testimonial)」であり、証言が可能であれば、法廷での 反対尋問という原則に戻れというシンプルな主張に思え、多くの微妙な事案で、 これが結論になっていると解せる。しかし、まず、そもそも testimonial とは 何かは明確とは言い難い 40)。testimonial であれば反対尋問権を厳密に保障す るアプローチは、非 testimonial のケースでは被告不利な決定を導くことにな るのである。当然のことながら、この区別は重大な意味を有するのに、であ る 41)。2006 年の 2 事案が、通報は非 testimonial だが聴取は testimonial とした ものの、実際に駆けつけた警察官は継続して事実関係を調べようとするのであ り、具体的線引きが困難なことも多かろう 42)。また、Bryant 判決の警察官の 証言が非 testimonial だとしながら、本件や Melendez-Diaz 判決での分析者の 鑑定書が testimonial となる理由もやや解せない。被害者が瀕死の状態で通報 したといえども、それを聞いた唯一の生存者がそれをそのまま報告しているの かは、鑑定書の分析者以上に反対尋問で明らかにすべきにも思えるからである。 加えて、事件の知らせが、友人間でなされ、警察への通報ではなかったとき、 testimonial なのかという問題もあろう 43)。 また、被告が反対尋問を求めれば、原則としてそれを認めるべしとする判 例は、家庭内暴力、児童虐待事件に大きなインパクトを与えるとの懸念もあ る 44)。被害者が協力拒否したり撤回したりすることで、DV の訴追を取り消し た例が続出しているとの指摘もある。被害者は安全ではなくなり、法廷で加害 者と面と向かって対決する恐怖が生じた。訴訟でカップルの実情が明らかにな れば、子どもが州に引き取られる危険も増すため、このことも被害者の証言の 障害となっている。そして、被害者が加害者に経済的に依存しているときには、 正直に事実を証言しないのではとの懸念もある。Crawford 事件での妻は、男 性関係に巻き込まれ、レイプの虞れがあったと聞いて飛んで来てくれた夫には 負い目があり、真実を語ることが期待できない 45)。州法の夫婦間証言拒否権が 維持されれば、手続的障害から、無罪とせざるを得ないのが殆どとなろう。 198.

(13) 対審権と伝聞証拠(公判外証言)—血中アルコール濃度報告は「証言」か. 証人が子どもの場合、証人があまりに年少であって記憶が定かでない、捜査 官などの関係者に操作され易い、裁判官や陪審員に意思が伝え難いという問題 もさることながら、子どもの証言能力が認められるときであっても、弁護人の 厳しい反対尋問を受けても、証言を貫けるかという疑問がある 46)。年少者の 当初の、親や医師への素朴な発言をその限りで信じる方がまだよいことになり、 ビデオテープや閉回路テレビジョン(closed circuit television)を用いる法令も登 場している 47)が、Crawford 判決の判例との齟齬はないかは微妙である。 加えて、本件などのように、主観的には機械的に任務を果たした 48)と信じ て疑わない分析者が法廷に引き出されることに違和感を感じる、理工系研究者 も多いであろう。ステレオタイプ的に言えば、薄暗い実験室しか知らない白 衣を纏った青白い青年が、凶悪な犯罪者だと思われる人物と対決するために 法廷に引き出されるとき、真実を語る外見を終始維持できるものなのかも解 らない 49)。反対意見の指摘するように、自然科学系の専門分化は著しく、証 言は細切れとなり、そのデータの総合的に意味することを語る人物が証言する ことで十分とも言えなくもない。そして、仮に分析の各段階における責任者の 証言を必要だと被告側が主張したとしても、有罪とするのに十分な主要な分 析者を反対尋問すればよい 50)のであり、平易な事案で数十人の科学者を証人 に呼ぶと考える必要はないようにも思われる。分析の管理者のみで十分とい う、本件反対意見と同じ見解もある 51)。個々のデータから、総合的に判断し て、結論を組上げたのは責任者だからである 52)。死因は絞殺だと認定した検 死官が公判時点で死亡していれば、被告は無罪になるのではないか、との指摘 もある 53)。特に最近の Sandy Williams 判決を経れば、鑑定書に関して、反対 尋問権の厳密な保障までは不要とする立場にも一理あろう。分析データの正誤 は、 客観的な鑑定人が判断すればよいだけとも言える 54)。化学データの分析と、 信号の色の認識とどこが異なるのか、という論評もあるところである 55)。 この点、スカリア判事の立場は、結局、分析の正確さよりも、検査の担当者 の証言を求めたと言える 56)。誰に代表されようと、検査に関わらない者は代 199.

(14) 横浜国際経済法学第 21 巻第 2 号(2012 年 12 月). 理であって、反対尋問の対象ではあり得ないという筋論である 57)。現在の判 例が確立してきた状況で、Caylor が裁判を、言わば無断欠席した理由は不明 であり、検査・分析に何らかの問題があったのではないかとの疑いが残る。検 査方法一般ではなく、当該分析者の分析に問題が生じ易いのであって、やはり 彼への尋問は必要であったとの論評もある 58)。いくら有能でも、その誤りを 代理が証言することはできず 59)、この点は、当人を尋問しなければ解明でき ないであろう。ただ、逆に、旧式の DNA 鑑定の誤りが指摘される虞れ 60)を思 えば、殊更、犯人の特定という核心事実に関しては、客観的に見える事実であっ ても評価を伴う筈であるから、分析者の法廷での十分な説明が求められるべき だという見解にも心は動く。化学分析が採用されなければ、供述証拠が用いら れるのみであり、結果は同じだとの論評 61)もある。だが、再テストのために サンプルの保管を続けることは分析者の義務であり、そのコストや手間は問題 にならないとも言え 62)、また、そもそもこの議論は本末転倒に見える 63)。. 3.日本法への示唆 日本では、道路交通法 65 条 1 項が酒気帯運転を禁じており、同法施行令 44 条の 3 が血液 1㎖につき 0.3mg 又は呼気 1㎖につき 0.15mg をその基準として おり、違反点数は 13 となる。そして、呼気中アルコール濃度 0.25 mg 以上(も しくは飲酒検知を拒否した場合)では、違反点数も 25 であるほか、3 年以下の懲役. 又は 50 万円以下の罰金も科される。ニュー・メキシコ州よりも厳しい基準で あり、近時、酒気帯運転厳罰化の傾向も強い 64)。更に、アルコール濃度の検 知値には関係なく、 「アルコールの影響により正常な運転ができないおそれが ある状態」での運転は酒酔い運転とされ、違反点数 35 点(再受験が受けられない 、5 年以下の懲役又は 100 万円以下の罰金が科される。 免許の欠格期間は 3 年) 本判決と同様の事例が日本で生じても、運転者は警察官の要求する呼気検査 に応じることが多いであろう。検査器は 2 回の呼気検査で全く同じ数値を示す とは思えず、微妙な事例でも、その 1 回の数値が決め手となる。しかも、呼気 200.

(15) 対審権と伝聞証拠(公判外証言)—血中アルコール濃度報告は「証言」か. 1㎖につき 0.15mg という値は、呼気検査器販売者の主張だが、 「昨日飲んだお 酒でも、寝て起きても検出される数値」であるらしい 65)ので、飲酒運転は非 難されるべきであり、最大限慎重であるべきとは思われるが、他方、機械運と でも言うべきものに左右されているとも言える。ここで、アルコール血液検査 を行う必要があると判断したが、本人の同意が得られない場合は、裁判所によ る身体検査令状が必要であるとされるが、日本でこれが大きな問題とならない のは、運転者がこれ以前の段階で諦念するからであろう。本判決の理論が日本 で適用されれば、交通警察から交通裁判所まで大混乱は必至であろう。 しかし、日本国憲法は、明らかに合衆国憲法修正 6 条由来の 37 条を有する。 2 項前段の、反対尋問権の対象には、鑑定人、参考人、共同被告人などが広く 含まれるというのが通説的理解である。知覚、記憶、叙述のどの段階にも誤解 は入り込む以上、発信者の真意は伝わらない虞れが常にあり、宣誓させ、反対 尋問をさせ、供述の態度も観察する必要があるということになろう。 だが、刑事訴訟法 320 条が伝聞証拠排除法則を定めるも、大陸法的な実質的 「直接主義」66)だと思われる伝聞例外が、刑訴法 321 条以下に数多く残ってお り、一連の司法制度改革の対象とならず、密室での取調べの温床となってい る 67)。必要性が高く、反対尋問に代わる信用性を保障する特信事情があれば 証拠として採用する、書面主義の傾向は色濃い。自分で作成した日記などの供 述書、他人が作成した調書などの供述録取書は証拠となる。刑事訴訟法 321 条 1 項 2 号の検察官面前調書が許容されることがよく問題にされる 68)が、この論 点から憲法上問題にされるべきは、これに留まらないと言うべきである。裁判 官面前調書、公判準備・記述の供述録取書、捜査機関の検証調書、鑑定書、特 信文書(公務文書、業務文書、その他)に至るまで、再考を要し、反対尋問不能な 調書の証拠能力を否定するのを原則と考えるべきであろう 69)。日本の刑事司 法や憲法訴訟の現状を思えば、アメリカの旧判例のような広いが緩やかな基準 は、日本では、殆どの事例で合憲判断を導き、伝聞例外を無尽蔵に作り出し、 反対尋問権という憲法上の権利を寧ろ例外化させるに等しい。本判決に至る判 201.

(16) 横浜国際経済法学第 21 巻第 2 号(2012 年 12 月). 決群は、このことを日本法に強く示唆する 70)。証人は法廷に連れてくること を徹底した、狭いが厳しい基準で、この原則を解することが必要であるように 思われる。その意味では、近年の米連邦最高裁の判例は、米国内では行き過ぎ との批判があっても、日本に紹介する意義は大きかろう。. おわりに 本稿は、反対尋問権に関するアメリカの判例を紹介したものである。日本の 刑事手続の適正化を図る実践的意図からも、紹介は有意義に思える。表現の自 由と刑事手続は、判例と学説の乖離が最も激しい分野だと思われる 71)が、近 代立憲主義 72)諸国の判例ともかけ離れていることを認識すれば、判例を動か す行動がそろそろあって然るべきであろう。米判例のような反対尋問権の厳格 な運用は、寧ろ日本でこそ提唱されるべきなのかもしれない 73)。被害者・遺 族の権利が強調されてきているが、有罪が確定するまでは一市民として処遇さ れる被告の権利を憲法は保障している。これが簡単に奪われかねない歴史と伝 統がこの国にはあると思われる。その中で、反対尋問権を被告固有の権利とし て理論と実務を見直すことは、極めて重要に思えてならない 74)。起訴事案の 有罪率の極めて高い日本では、量刑に関してもこれは強調されてよかろう 75)。 法理論としても、狭いが厳しい基準と広いが緩やかな基準の何れを選ぶか が、古今東西の法学者を悩ましてきた難問であったことを、本判決に至る判 例は改めて示す。日本の憲法学においても、 「令状逮捕」におよそ一切の例外 を認めないとする一部有力説 76)は前者の典型例であり、平等をめぐる「合理 性」の基準 77)などは後者の例であるように思われる。何れも困難に漂着した 感があり、かといって、適度な基準を比例原則に従って適用するという理論は、 現実の緊迫した憲法事件で、一般に少数派が憲法を持ち出すという事情と日 本の司法の実情を考えれば、結局はあまり有益ではなく 78)、 「通常審査」79)も 敗北に終わろう。この際、条文上の根拠が複数示せれば、2 つの基準の併用を 導けるため、理論的には非常に有益である。近時の有力説が、 「検閲」につい 202.

(17) 対審権と伝聞証拠(公判外証言)—血中アルコール濃度報告は「証言」か. て絶対的禁止を主張しつつ、事前抑制は原則禁止であると述べているのは適 切な手法に思える 80)。このことにより、より「検閲」ではない事前抑制が選 択できるならば、当該事前抑制の選択は違憲だとの結論も導き出せよう 81)。こ の点、同じく精神的自由の分野の原則である政教分離原則について編み出され た、レモン・テスト、エンドースメント・テスト、目的効果基準などは、相対 的に広いが緩やかな基準ばかりであり、日本国憲法について述べれば、20 条 3 項の国による宗教活動の禁止を国教樹立の絶対禁止 82)と読んで、全体を厳格な 基準とすると同時に、20 条を立体的に捉えることは可能であるように思われ る 83)。 1)Ann. § 66-8-102(2004) . 2)法廷意見の説明(本文及び脚注 1)によると、この方法は「混合物の成分を量的に分析 するのに広く使われている」が、 「人為ミスは各々のステップで起こる」 。 「コロラド州 では、一つの法医学研究室が 3 年間に、いくつかの刑事上の告発の棄却を喚起するよう な血液アルコール表示を、少なくとも 206 回行った」という証言や、そのエラーが「か なり複雑だ」と述べる分析者の証言を取り上げている。See, Brief for National Association of Criminal Defense Lawyers et al. as Amici Curiae 32-33; Ensslin, Final Tally on Flawed DUI: 206 Errors, 9 Tossed or Reduced, Colorado Springs Gazette, Apr. 19, 2010, p. 1.ヘリウムなどを用い た、気化し易い化合物の同定に用いられる機器分析の方法である。 3)§ 66-8-102(D) (1) . 4)541 U.S. 36(2004) .邦文では、寺尾美子ほか「座談会」アメリカ法[2004-2]187 頁、257 頁以下[酒巻匡] 、 早野暁「米判批」 (中大)比較法雑誌 39 巻 4 号 210 頁(2006) 、 二本栁誠「米 判批」 (早大)比較法学 39 巻 3 号 204 頁(2006) 、津村政孝「米判批」ジュリスト 1430 号 79 頁(2011) [以下、津村前掲註 4)I 評釈、と引用] 、同「米判批」樋口範雄ほか編『ア メリカ法判例百選』 (2012)掲載予定、 小早川義則「米判批」名城ロースクール・レビュー 20 号 57 頁(2011)など参照。なお、本判決については、2012 年 3 月 17 日に慶應義塾大 学三田キャンパス研究室棟 7 階会議室で行われたアメリカ憲法判例研究会(大沢秀介会 長)で報告の機会があり、2014 年度には、同研究会編の著書の中で判例研究として公表 する予定であり、その際には本稿と同じ文献が引用されることがあり得ることも御断り しておく。 5)557 U.S. 305, 129 S.Ct. 2527(2009) . 邦文では、小早川義則「米判批」名城ロースクール・ 203.

(18) 横浜国際経済法学第 21 巻第 2 号(2012 年 12 月). レビュー 23 号 155 頁(2012)参照。 6)144 N.M. 546, 189 P.3d 679(2008) . 7)147 N.M. 487, 226 P.3d 1(2010) . 8)448 U.S. 56(1980) .邦文 で は、安冨潔「米判批」渥美東洋編『米国刑事判例 の 動向 III』 297 頁(中央大学出版部、1994)参照。 9)541 U.S., at 59. 10)129 S.Ct., at 2717-2719, 129 S.Ct., at 2537-2540. こ の 直 後 に 脚 注 6 が あ る。Davis v. Washington, 547 U.S. 813, 822(2006)を引用して、 「testimonial として評価されるために は、言明は『潜在的に後の刑事告発にとって重要な過去の出来事を確定するか、証明す る』 『主要な目的』を有していなければならない」ことや、Melendez-Diaz 判決を引用し て、業務記録と公的な記録が「testimonial ではない」ことを述べる。 11)541 U.S., at 62. 法廷意見は、 「たとえ起訴側が提出する報告書を書く分析者が『キュリー 夫人の科学的な洞察力とマザー・テレサの真実性』を有するとしても、彼らは対決のた めに利用可能でならなければならない」とも述べた。 12)Id. at 54. 13)Giles v. California, 554 U.S. 353, 145(2008) .邦文 で は、津村政孝「米判批」ジュリ ス ト 1428 号 112 頁(2011) 、小早川義則「米判批」名城 ロースクール・レ ビュー 21 号 49 頁 (2011)参照。 14)129 S.Ct., at 2532. 15)See, N.M. Admin.Code SS 7.33.2.15(A) (4) (6) (2010) , available at http://www.nmcpr. state.nm.us/nmac/ _title07/T07C033.htm 16)129 S.Ct., at 2540. 17)Brief for Public Defender Service for District of Columbia et al. as Amici Curiae 23. 18)Id. at 24-25. 19)脚注 10 において、 「反対意見は、選択的にロサンゼルスの経験に言及するが、ミシガン で文書化された経験を見落している。Melendez-Diaz 判決後、この州で、裁判所におけ る分析者の証言の増加は僅かだった」として、 「2006 年に、分析者は全てのテストの僅 か 0.7%で証言をした」だけ、2010 年にも 1%だけであることを説明する。See, http:// www. michigan.gov/msp/0,1607,7-123-1593_3800-15901 \,00.html 20)Michigan v. Bryant, 562 U.S. _, _, 131 S.Ct. 1143, 1155(2011) .この事件では、ソトマヨー ル判事が法廷意見を執筆し、トーマス判事が補足意見を執筆した。スカリア、ギンズバー グ両判事が反対意見を執筆し、ケイガン判事は不参加だった。 204.

(19) 対審権と伝聞証拠(公判外証言)—血中アルコール濃度報告は「証言」か. 21)Id. at 1160. 22)541 U.S., at 51. 1603 年にイギリスで反逆罪に問われた彼は、反対尋問を求めたが拒否さ れて死刑宣告をされ、1616 年までロンドン塔に幽閉された。その後、探検に出たところ、 部下が略奪行為を働いたため、スペイン大使が彼を死刑にするよう求め、処刑された。 スカリア判事は、この法廷意見において、こういった事実を、治安判事による公判前尋 問の読上げが日常化して生まれた悪例であり、後に大逆罪制定法によって改正されたも のとして取り上げ、このような慣行は英植民地でも一貫して存在したと主張した。 23)New Mexico Scientific Laboratory Brief 2. 24)Id. at 3. 25)Id. at 33. 26)アメリカにおけるこの問題一般を取り扱う邦語文献には、以下に引用するもののほか、 津村政孝「証人対審権 の 歴史的展開」学習院大学法学部研究年報 19 号 151 頁(1984) 、 同「最近の連邦最高裁判決における証人対審条項と伝聞法則」同 24 号 243 頁(1985) 、 同「アメリカ連邦刑事手続における捜査過程で作成された供述書面の取扱い」同 26 号 229 頁(1991) 、堀江慎司「証人審問権の本質について(1-6・完) 」法学論叢 141 巻 1 号 1 頁、2 号 1 頁、3 号 1 頁、4 号 1 頁、5 号 1 頁、142 巻 2 号 1 頁(1997) 、伊 藤 博 路「伝 聞法則の適用範囲に関する一考察(1-5・完) 」北大法学論集 48 巻 4 号 1 頁(1997) 、5 号 35 頁、49 巻 1 号 123 頁、2 号 115 頁、3 号 41 頁(1998) 、清水真「対質権条項 に 関 す る 考察」東京国際大学論叢経済学部編 22 号 123 頁(2000) 、 山田道郎『刑事証拠法の研究』 (成 文堂、2004) 、伊藤睦「対質権と強制手続請求権を貫く基本理念」法学 69 巻 5 号 135 頁 (2006) 、松田岳士『刑事手続 の 基本問題』 (成文堂、2010) 、小早川義則「証人尋問権 と 伝聞法則(1、2・完) 」名城ロースクール・レビュー 19 号 1 頁、22 号 27 頁(2011) 、 同「事 後的反対尋問と証人対面権」同 23 号 1 頁(2012)などがある。 27)田宮裕『刑事訴訟法』 〔新版〕367 頁(有斐閣、1996) 。同書 368 頁は、言い違いや聞き 違いがあるので伝聞の証明力が低くなるから、というわけではないと説明している。 28)J.H. ウィグモア (平野龍一=森岡茂訳) 『証拠法入門』191 頁(東京大学出版会、1964)参照。 29)しばしば、陪審員は法医学的な証言に非常に説得力を感じる。M. Weisgerber, Comment: Confronting Forensics: Bullcoming v. New Mexico And The Sixth Amendment, 45 Loy. L.A. L. Rev. 613, 629-30(2012). 30)伝聞例外については、ウィグモア前掲註 28)書 196 頁以下参照。臨終の陳述、不利益な 事実の供述、家の歴史に関する供述、認証証人の供述、業務上なされる通常の記載、私 有地の境界に関する供述、故人の供述一般、土地・歴史・婚姻・性格に関する評判、学 術論文、商業用・職業用の目録、宣誓供述書、肉体的感覚や精神状態を表す供述、興奮 205.

(20) 横浜国際経済法学第 21 巻第 2 号(2012 年 12 月). 状態において思わず出た叫び、公務員の供述がその典型例だという。 31)この頃の裁判官の立場は、 以下の通り。 証拠の採用を認めた、Roberts 判決には、 ブレナン、 マーシャル、スティーブンスが反対、United States v. Inadi, 475 U.S. 387(1985)にはブ レナン、マーシャルが反対、Bourjailey v. United States, 483 U.S. 171(1987)ではブラッ クマン、ブレナン、マーシャルが反対、Maryland v. Craig, 497 U.S. 836(1990)ではブ レナン、マーシャル、スティーブンス、スカリアが反対、White v. Illinois, 502 U.S. 346 (1992)ではスカリアとトーマスが一部同意一部結果同意意見を執筆した。これに対して、 証拠採用を認めなかった、Coy v. Iowa, 487 U.S. 856(1988)ではブラックマン、レンクィ ストが反対、Idaho v. Wright, 497 U.S. 805(1990)ではブラックマン、レンクィスト、 ケネディ、ホワイトが反対、White v. Illinois, 502 U.S. 346(1992)では反対なしであった。 総じて、当初はリベラル派と保守派の色分けが鮮明であったが、後半これがやや崩れて おり、 その先に Crawford 判決があるという展開である。邦文では、Coy 判決については、 邦文では、 津村政孝「米判批」ジュリスト 965 号 86 頁(1990) 、Craig 判決については同「米 判批」アメリカ法[1994-2]375 頁、White 判決については松原芳博「米判批」九州国際 大学法学論集 2 巻 2 号 126 頁(1995)参照。 32)この判決は「連邦や州の裁判所で、そして法学者の間で動揺を引き起こし」 、 「検察官は、 最早、証拠に関する州や連邦のルールに頼ることができなくなった。 」See, J. A. Moreno, Finding Nino: Justice Scalia’s Confrontation Clause Legacy From Its( Glorious )Beginning To (Bitter)End, 44 Akron L. Rev. 1211, 1212(2011) . 33)堀江慎司「修正 6 条の対面条項の射程をめぐる最近の判例」アメリカ法[2010-1]106 頁、 120 頁。 34)こ の判決では、寺尾ほか前掲註 4)座談会 262-263 頁[酒巻]の述べるように、スカリ ア判事の歴史解釈に大半の判事が同意したこと、同文献 263 頁[寺尾、松井茂記、酒巻] の述べるように、保守派の主張なのに人権拡大的な働きをしている点は興味深い。 35)547 U.S. 813(2006). 邦文 で は、津村政孝「米判批」ジュリ ス ト 1373 号 126 頁(2009) 、 小早川義則「米判批」名城ロースクール・レビュー 20 号 79 頁(2011)参照。 36)132 S. Ct. 2221(2012). これには、ロバーツ長官、ケネディ、ブライヤー両判事が同調 した。ブライヤー判事が同意意見(トーマス判事が同調) 、トーマス判事が結果同意意 見を執筆した。これに対して、ケイガン判事の反対意見には、スカリア、ギンズバーグ、 ソトマイヨールの 3 判事が同調した。A. Herskowitz, Bullcoming v. New Mexico: Revisiting Analyst Testimony After Melendez-Diaz, 6 Duke J. Const. L. & Pub. Pol’y 194, 206(2011)は 判 例変更を予測していた。 37)溜箭将之「米判批」ジュリスト 1361 号 169 頁、177 頁表(2008)参照。. 206.

(21) 対審権と伝聞証拠(公判外証言)—血中アルコール濃度報告は「証言」か. 38)Melendez-Diaz 判決でのケネディ判事の反対意見(ロバーツ長官、ブライヤー、アリトー 両判事同調)は、この点を特に強調した。557 U.S., at 330. 津村政孝「対審権の歴史に関 する連邦最高裁の理解について—証拠法研究ノート(2) 」学習院法務研究 6 号 19 頁、45 頁以下(2012)も本件に連なる米最高裁判例の歴史解釈のあり方に懐疑的である。なお、 歴史解釈には幾つかの疑問がある。主に、当該事実が存在したか、その事実に当該法令 の解釈を支える意味があるかという内在的疑問と、そもそも歴史ばかりに依拠して決定 的解釈を導くことが解釈方法論として正しいのか、歴史解釈はしばしば変更されるもの で客観的認識とはならない(成田龍一『近現代日本史と歴史学—書き替えられてきた過 去』 (中央公論新社、2012)など参照) 、 「制定者意思」は不明であるときにあるべき「制 定者意思」を探るのであれば実践であって歴史認識ではないという外在的疑問である。 39)ケ イガン判事の態度は読めず、最高裁は一貫した理論というよりも事実集約型を当面 繰返していくだろうという予測がある。 THE SUPREME COURT 2010 TERM: LEADING CASES: I. Constitutional Law: D. Sixth Amendment: Confrontation Clause, Bullcoming v. New Mexico, 125 Harv. L. Rev. 251, 262(2011). だが、Sandy Williams v. Illinois を経た今、こ の問題で主導権を握るのは、ケイガン判事でもソトマイヨール判事でもなく、保守派で 歴史解釈を好むとされ、一般にスカリア判事との結論一致率も高いトーマス判事である。 州裁判所 の 混乱 も 大 き い と い う 指摘 も あ る。See, J. J. Norris, Who Can Testify About Lab Results after Melendez-Diaz and Bullcoming?: Surrogate Testimony and the Confrontation Clause, 38 Am. J. Crim. L. 375, 394(2011) . また、各州の裁判所の対応については D. “Dib” Waldrip & S. M. Berkeley, “What Happened?”: Confronting Confrontation in the Wake of Bullcoming, Bryant, and Crawford, 43 St. Mary’s L. J. 1, 60(2011)に付録がある。 40)津村前掲註 4)I 評釈 83 頁、 小早川 4)評釈 75 頁などもこれを指摘する。日本でも、 伝聞・ 非伝聞の区別は難しい。緑大輔「ロー・クラス 刑事訴訟法入門(20)—伝聞と非伝聞の 区別—伝聞法則をめぐって」法学セミナー 683 号 116 頁(2011)など参照。 41)このためか、松原芳博「証人対質条項と伝聞法則をめぐる問題状況」鈴木義男古稀『ア メリカ刑事法の諸相』225 頁、241-242 頁(成文堂、1996)は、 スカリア判事による Coy v. Iowa の法廷意見や Maryland v. Craig の反対意見に批判的であり、 「対質条項内部におけ る、 『面と向かっての』対面、反対尋問、陪審による態度の観察等の諸要素の有機的関 連を認める機能的考察方法のほうが妥当だと思われる」と評する。 42)津村前掲註 35)129 頁参照。 43)R. J. Coleman & P. F. Rothstein, Grabbing the Bullcoming by the Horns: How the Supreme Court Could Have Used Bullcoming v. New Mexico to Clarify Confrontation Clause Requirements for CSItype Reports, 90 Neb. L. Rev. 502, 550(2011). 44)津村前掲註 4)I 評釈 83 頁、小早川 4)評釈 74 頁など参照。 207.

(22) 横浜国際経済法学第 21 巻第 2 号(2012 年 12 月). 45)早野前掲註 4)評釈 218 頁。 46)岡上雅美「性的虐待 の 被害者 た る 子供 の 法廷外供述 の 採用 と ア メ リ カ 合衆国憲法修 正 6 条 の 対 質 条 項」 (早大)比較法学 27 巻 2 号 51 頁、53 頁(1994) 。See, Waldrip & Berkeley, supra note 39,at 28-30. 47)同上 55 頁参照。Idaho v. Wright では父から性的虐待された女児を診察した小児科医の 供述を採用しなかったが、Maryland v. Craig では性的虐待等の被害女児のテレビ尋問を 証拠採用し、White v. Illinois でも強制猥褻被害女児のベビーシッターや医師の供述を証 拠採用した。連邦法に関しては、堀江慎司「テレビ尋問制度について」同 148 巻 3=4 号 297 頁、322 頁以下(2001)参照。 48)Norris, supra note 39, at 415. 49)法医学者について、同様の指摘がある。Id. at 380. 50)Id. at 400. 51)Id. at 399. 52)Id. at 417. 53)Id. at t 378; Coleman & Rothstein, supra note 43, at 546. 54)Captain D. I. Stovall, Military Justice Edition: “Let Cobham Be Here”: The Introduction Of Drug Testing Reports In Courts-Martial Post Melendez-Diaz, 67 A. F. L. Rev. 153, 184(2011). 55)Coleman & Rothstein, supra note 43, at 529. 56)Moreno, supra note 32, at 1255. 57)Coleman & Rothstein, supra note 43, at 536. 58)Weisgerber, supra note 29, at 627. 59)Id. at 631. 分析者本人も気付いていないかもしれない。 60)日本でも、足利事件では、最判平成 12 年 7 月 17 日刑集 54 巻 6 号 550 頁で確定した有罪 判決(無期懲役)について、東京高決平成 21 年 6 月 23 日判時 2057 号 168 頁が再審を決 定し、宇都宮地判平成 22 年 3 月 26 日判時 2084 号 157 頁で無罪が確定している。 61)Norris, supra note 39, at 405. 62)Id. at 426. 63)Weisgerber, supra note 29, at 631. これに対しては、FBI の捜査に支障が出るという反論 もある。Coleman & Rothstein, supra note 43, at 554. 64)交通死亡事故については、刑法 211 条の業務上過失致死罪(最高刑懲役 5 年)で処断さ れてきたが、1999 年 11 月の東名高速東京インター付近での 2 幼児死亡事故、2000 年 4 208.

(23) 対審権と伝聞証拠(公判外証言)—血中アルコール濃度報告は「証言」か. 月の座間市 2 大学生死亡事故などの悪質な事案が大きく報道され、飲酒運転による死亡 事故の加害者への厳罰化を求める声が高まった。その後、平成 13 年法律第 138 号で刑法 208 条の 2 に危険運転致死傷罪が挿入された。そして、2006 年 8 月福岡市内の 3 幼児死 亡事故はその声を加速させた。被告は、一審(福岡地判平成 20 年 1 月 8 日判タ 1268 号 330 頁)では危険運転致死傷罪の適用が否定されて懲役 7 年 6 カ月を宣告されたが、 二 審(福岡高判平成 21 年 5 月 15 日判タ 1268 号 330 頁)では同罪が適用されて懲役 20 年 が言い渡され、 最高裁も上告を棄却した(最判平成 23 年 10 月 31 日刑集 65 巻 7 号 1138 頁) 。 同罪の適用の難しさや、 「逃げ得」の問題も浮き彫りとなった。この過程で、同条は、 平成 19 年法律第 54 号により、原付自転車まで含むようになり、また、同条 2 項には自 動車運転過失致傷罪が新設された。 65)http://www.cocojc.com/anom/anomu3.htm 66)辻本典央「伝聞法則の研究」近畿大学法学 58 巻 2=3 号 337 頁、339-341 頁(2010)のように、 伝聞証拠排除の趣旨の第一に直接主義を挙げるものもある。 67)判例 も 例 え ば、食糧管理法違反事件(最大判昭和 23 年 7 月 19 日刑集 2 巻 8 号 952 頁) は証人の供述を録取した書類などを証拠にできないものではないと判示し、最大判昭和 25 年 3 月 6 日刑集 4 巻 3 号 308 頁は交互尋問を保障していないと明言し、最大判昭和 25 年 3 月 15 日刑集 4 巻 3 号 355・371 頁は弁護人があれば被告人不在でも裁判の続行は可 能だと述べたのである。 68)判例はこれを違憲とした例がおよそない。 最大判昭和 27 年 4 月 9 日刑集 6 巻 4 号 584 頁、 最判昭和 30 年 11 月 29 日刑集 9 巻 12 号 2524 頁など参照。 69)三井誠『刑事手続法 III』369 頁(有斐閣、2004)も、鑑定書の内容についても反対尋問 権が実質的に保障されるべきことを強調する。この点、ロッキード事件丸紅ルート最高 裁判決(最大判平成 7 年 2 月 22 日刑集 49 巻 2 号 1 頁)は、刑事免責・自己負罪免責特 権喪失を刑訴法が採用していないことを理由に、嘱託尋問調書の証拠能力を否定したが、 一般的な例とは言い難い。実際、その後も、最決平成 15 年 11 月 26 日刑集 57 巻 10 号 1057 頁はソウル地方法院での共犯者の自白を、東京高決平成 21 年 12 月 1 日判タ1324 号 277 頁は強制出国中の者の調書を、それぞれ証拠として採用している。 70)寺尾ほか前掲註 4)座談会 260 頁[酒巻]は、Crawford を取り上げるに当たり、 「これ もし日本で出た判例だったら大騒ぎですよ」と述べ、検面調書などの問題を指摘する。 71)君塚正臣編『法学部生のための選択科目ガイドブック』33 頁(ミネルヴァ書房、2011) [君塚] 。伝聞証拠に関して検察実務側から解説を行う小野寺雅之「立証趣旨と伝聞法則」 西南学院大学法学論集 44 巻 1 号 150 頁、78 頁(2011)も、このことを認める。 72)君塚正臣「未完の 『近代立憲主義』 『 」高等学校新現代社会教授資料』掲載予定(帝国書院、 209.

(24) 横浜国際経済法学第 21 巻第 2 号(2012 年 12 月). 2013)も参照。 73)堀江慎司「 『心理状態 の 供述』に つ い て」 『鈴木茂嗣先生古稀祝賀論文集下巻』451 頁、 482 頁(成文堂、2007)も、心理状態の供述に関して同様の見解を述べる。 74)以上につき、伊藤睦「被害者供述と対質権」三重大学法経論叢 27 巻 2 号 31 頁、42-43 頁 (2010)同旨。 75)島田良一「量刑手続と被告人の 『対面権』 」阪大法学 54 巻 4 号 105 頁、123 頁以下(2004) 。 76)例えば、 杉原泰雄「判批」芦部信喜ほか編『憲法判例百選 II』 〔第 4 版〕254 頁、255 頁(有 斐閣、2000) 。 77)例えば、宮沢俊義『憲法 II』 〔新版〕288 頁(有斐閣、1971) 。 78)小山剛『 「憲法上 の 権利」の 作法』 〔新版〕67 頁以下(尚学社、2010)は、 「審査密度」 と結び付けることで、比例原則が裸の利益衡量論に堕することを防いでいるように見え る。但し、そうであれば、従来の二重の基準論の徹底で済む話であるが。関連して、宍 戸常寿『憲法—解釈論の応用と展開』18 頁(日本評論社、2011)も参照。 79)高橋和之『立憲主義と日本国憲法』 〔第 2 版〕125 頁(有斐閣、2010) 。 80)芦部信喜(高橋和之補訂) 『憲法』 〔第 5 版〕190 頁(岩波書店、2011) 、佐藤幸治『日本 国憲法論』256 頁(成文堂、2011)など圧倒的多数。これに対して、 「検閲」と事前抑制 を一元的に捉える説は、 田畑忍編『日本国憲法論』81 頁(法律文化社、1977) [松下泰雄] などが見られたが、現在では有力な見解の中には見当たらない。 81)君塚正臣「判批」東海大学文明研究所紀要 15 号 95 頁、102 頁(1995) 。 82)この点、 津地鎮祭訴訟二審 (名古屋高判昭和 46 年 5 月 14 日行集 22 巻 5 号 680 頁) による、 「宗教」を定義した絶対的基準は興味深かったが、一般的な宗教の認識と異なる結果を 導き賛同を得なかった。また、今にして思えば、このような、狭いが厳しい基準一本で 政教分離原則を解決しようとすることにも限界があったように思われた。 83)君塚正臣「判批」新・判例解説 Watch(速報判例解説)12 号掲載予定(2013)参照。. [付記] 本研究は 2012 年 6 月 16 日に学習院大学東 2 号館 8 階会議室で行われた合衆国最 高裁判所判例研究会(紙谷雅子会長)での報告をまとめたものである。当日は、多くの会員 から貴重なコメントを戴いた。深く御礼申し上げたい。. 210.

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参照

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