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1930年代における作文教育実践く1>
中kjテ∫ 珊 lま じめもこ 本鯛蜜は、日本における作文教育実感の内実を明らかにするため、その手がかりと なる資料を整理することを目的とする。さらにその集積により優れたとされる実践者 ・集団の形成・展閲のより具体的な姿も明らかにしていきたい。 本稿では、1930年代における作文教育実演の記録として、東京市で行われた研究授 業の学習指導案を二縮取り上げた。 工 尋五線方指導案 東京市品川直芳水尋常小拳校訓導 今 井 蕃次郎 教 材 電車の中の人達(東京市標準文集尋五用一〇五頁一一〇七貢) 目 的 綴方に書く場合の物の見方について教えるのであるが、 1、鋭く見て書くこと 2、特徴を見ぬいて書くこと 3、感想を書くこと の順に進める予定で、3が最終日的である 準 欄 児童は務め標準文集九五貢一一〇九貢まで(観察、説明のところ) を通讃して置くこと。赤菅の色鉛筆を用意すること。 方 法 1、 r電車の中の人達」 と板書する。 2、「電車の中の人達」の文を讃んで下さい く 3、電車に乗ってゐる人はどんな人達ですか ・21−女畢生 下町のおかみさんのやうな人 商人(反物屋さんらしい) 努働者 軍人、おまはりさん、 つとめ人(作者)等
)
むかふ側 男の畢生)こちら側 4、この文は、どういふ鮎がよいのですか。では、この文の最後の評を譲ん で下さい。 鋭く見て、特徴を見ぬいて書いてある。 * 感想が書いてある。 l_ _____ _ 1 5、鋭く見て、特徴を見ぬいて書いてあるところを、一人々々についてしら ペませう。 鋭く見て、特徴を見ぬいて 感 想 女畢生の二三年生らしい。 女 畢 生 しきりに英橋の本を見てゐ る。 きっと明日試験でもあるに逮 ひない。どこの畢校に行くの だらう。 ひざの上に赤ん坊をだいて、 僕は見てゐてはら、/するが、 下町のおか 左には五つ位の子供を腰か けさせてゐる。 みさんのや うな人 始めは子供に話したり、赤 ん坊をあやしたりしてゐた が、その中に居候をはじめ  ̄ ̄‘…1 − 22・ しかしどうも出来ない。 矢張り子供が多くて働くから 朝でも眠いのであらう。_とj
四十位の男の人がゐる。 商人に逮ひない。反物でも華 南 人 様の羽織に角帯をしめて大 りに行くのだらう。 きな風呂敷を持ってゐる。 しるしぼんてんを着て、ゴ べんたうに逮ひない 努働「者 ム底の足袋をはいてゐる。 黒い風呂敷に 包んだのは巨
にも元気で勇ましい。 軍人さん おまはりさ こちら紺ははっきりわから ん 男の畢生 つとめの人 ない。 いろ−\′一な人が乗ってゐる。 6、「一つの世界のやうな嵐がして面白い。」といふのはどういふ意味ですか。 最後の感想のところをんで讃んで答へて下さい。 ちが lった l顔)(
ちがっ た心 元気な人…………努働者 つかれた人………・下町のおかみさんのやうな人 男の人…………‥おはぜい 女の人…………‥おはぜい )( 悲しむ人‥‥‥つ
生活の頭にうかんだこと。(特にどの人かをさ 喜ぶ 人……・ したのではない) 7、最後の感想は、作者が r一つの世界」即ち「世の中」のことに眼を向け − 23 −て、r世の中」の色々なことに射して面白味を感じてゐるから、うまく 書けたのです。この作者は電車の中の人々をどんな心で眺めてゐるので せうか。たゞ、鋭く見て、特徴を見ぬいて書かうとしてゐるばかりでな く、さういふ心の典に実に立派な心掛がひそんでゐるやうに思はれます。 それはこの作者が、世の中の人々の生活に射して、やさしい心持を持っ てゐることです。うやまひの心を持ってゐることです。下町のおかみさ んのやうな人に封しては「矢張り子供が多くて働くから、朝でも眠いの でせう。」と書き、努倣者に射しては「いかにも元気で勇ましい。」と書き、 女畢生のことは「きつと明日試験があるに達ひない。」と心配してやり、 商人に謝しては「反物でも貿りに行くのだらう。」とその仕事のことを書 いてゐます。これとは反射に、かういふ人達を見て、馬鹿にしたやうな 書き方をしたとすると、どうでせう。さういふ風に書いた子供のよくな い心が、はっきりと文にあらはれるでせう。文章には、ひとりでにその 作者の心があらはれますから、話でもふだんから正しい心を持ってゐる ことが大切です。 かういふやうに「世の中」のことを、正しい心でみてゐると、心々な感 想がわいて来ます。鋭く見て、特徴を見ぬいて書くことも、人々を馬鹿 にし、さげすむやうな正しくない心を持ってゐては、決して出爽るもの ではありません。 8、では、さういふ正しいやさしいうやまひの心持で、もう一度文を甜んで 下さい。 縦書きB5謄写版袋とじ(ステイプルどめ)6′ヾ−シ、、。 *の部分に次の参加者の書き込みがある。 「批評柵より入る ①より特徴へ ⑧より感想へ」 t工 尋常科第二単年緒方拳習指導案 東京市潤野川尋常高等小畢校訓導 高 野 柔 蔵 一、惑 目 あるがまゝに、細かに叙寓させる指導一人物、事物について一 二、指導文例 ウチニネコ(標準文集二、五) 補助文例 こまねずみ(標準文集二、九) 三、文例「ウチノネコ」を鑑賞させて、人物、事物を細かに観無し、あるが − 24 −
まゝに細かに叙寓する態度を修練する。 四、指導観 1、尋二の表現態度の指導目標は、ありのまゝに叙寓すること一一再現的叙寓と いふことが考へられる。即ち縫倹事象を、ありのまゝに具象的に表現させる といふことである。 2、本単年に入って既にニケ月余、子供の綴る態度も、柑正道についてゐると見 られる。私の指導教程から見れば、四月は、ありのまゝに叙寓する入門的指 導として、植瞼行動の再現的叙寓といふ点に集中し、五月には、ありのまゝ に叙寓する手法として、観察の重要性を指導し、生活内省させ細かに観察し、 「あるがまゝに細かに叙寓する態度」を培って爽たのである。 かくて六月の指導目標としては、その発展として、「あるがまゝに細かに叙 寓する」ことを、再びとりあげてゐるのである。 3、「あるがまゝに細かに叙鳥する」といふことは、作品の具象化の過程である この仕事が充分なされていく噂、作者の思性知性は活字酎こ作用し、ありの まゝに書くといふ再現的叙寓はなさせていく。 4、細かに叙寓するには、嘗然絶倫、事象の精細な観察といふことが先決間感に なる。精細な観察がなされゐる時、それが細かに叙寓されるのである。 従って、細かに叙窯するには、細かに観察するところの観察態度を先づ指導 しなければならい。 5、観察態度の指導としては、自己の絶倫行動の生活内容よりは、客観的な人物 事物の観察を主とする経験内容の方が安易になされる。この点から見て、第 一に、子供の周囲をとりまく人物、事物を観察させ、その観察内容に取材さ せることを心掛けることである。 6、かうした観点から、こゝに「あるがまゝに細かに叙寓させる」指導としては、 人物、事物を観察し、それとの交渉を内容とした指導文例をとりあげたので ある。 7、かうした意味からすれば、「ウチノネコ」よりは、「こまねずみ」の文例の 方が適格であるが、指導は、常に単級事情によって、決定されるものである から、その点、「ウチノネコ」を主教材としてとりあげ、「こまねずみ」を 副教材として組合せたのである。 8、「ウチノネコ」は、作者の家で飼っている猫であり、作者は、「トテモカワ イガツテヰル猫ヂアル。」従って、作者の日常生活の中に、身につけてゐる 猶である。 作者が猫に封する愛惜は、充分に描かれてゐる。これは、日夜親しんでゐる 猶であるから、その行動、行藩は、眼をつぶれば、ありありと想起されてゐ るのである。こゝに素材と作者の緊密さが見られる。そこから、細かに叙寓 するといふ態度も自づから出て来てゐる。こゝに、取材指導として考察すべ き問題一身近なものをかくといふことが領倉される。 9、文の主題は、「うちの猫は本首に可愛い」といふ、猫に謝する愛惜をとりあ げて叙来してゐるのである。二年程度としては、行動行察締列的再現的であ ー 25 −
るか、若しくは、棺進んでは印銀を中心として主想とし、内容を構成すると 10、次に発表内容を、構想に即して見るに、大体次の様になってゐる。 (の「ウチノネコハトテモカハイイ」と、先づ作者の感情と−一文の主底を述 べてゐる。 (ロ)次に、この間猫が脚をよごして入って来た時の事件を述べてゐる‘, (1)ネコガアシヲヨゴシテハイツテキテ、オトウサンニシカラレタコト 猫を叱る父親の梯子が述べられてゐる。 (2)ネコハ、長イハコノ申ニハイツタガ、見ルトヰナカツタコト 父親の不安さうな様子が述べられてゐる。 (3)ポクガ、エンノ下ニヰタネコヲミツケタコト 作者の書びと、父の安心したらしい無関心な態度が述べられてゐる。 (こ)ゴハンヲ夕べテヰルトキ、ネコガ来タコト 作者になつく猫の梯子が述べられてゐる。 (ホ)ネコトアソンダコト 楽しく遊んでゐる情景が述べられてゐる。 (へ)ネコノナマへノコト 「ミミ」と愛稀で呼んでゐることを、述べてゐる。 (ト)拳校カラカへルト、ネコガアマへテクルコト 猫となれ親しんでゐることが述べられてゐる。 (チ)ホンタウニカハイイネコダトイフコト 種々なる猫との交渉を叙して来た、泉賓可愛いと、実感してゐるのである。 「トテモカハイイ」から、「ホンタウニカハイイ」と体感した経過を述べ てゐるのである。 11、これは、今まで、たゞ可愛いと思ってゐたことが、猫の行動を細かに観察し、 父と猫、作者と猶の生活交渉を、細叙して来て体得した実感である。これは、 細かに観察したことを、そのまゝあるがまゝに細叙してゐるので、具象化さ れたのである。 即ち、精細に観察したことを、そのまゝ細叙したことによった。作者の表現 意蘭が、なし遂げられたことが理解される。 12、「あるがまゝに細かに叙寓されてゐるJ点を考察して見れば、 父の様子 O「コラマタキタナイアシヂアガツテキタカJ Oハコヲノゾイテ見マシタガ、ヰマセンノデ、ハコヲタタイテミマシタ。 O「オィ、サツキハドウシタイ 猫の様子 ○アシヲヨゴシテハイツテキマシタ。 ○ネコハ、ハタハタ三デフノザシキへイツタコト ○ネコハ、オトウサンノカホヲ見ナガラボクノ方にキマシタ。 ○ヒモノアトヲオヒカケテキマス。 ○ポクノアシへハナヲツケマス。 − 26 −
作者の行動 ○ノドヲナヂテヤリマシタ。 ○長イヒモヂアソンダコト 以上の諸点があげられる。が主として、猫の行動を中心に細かに観察細叙し てゐることがわかる。こゝに封銀を細かに観察することの重要性と共に、や がては、自己の行動の内省細叙へと具体化の指導を向けていくべき萌芽が見 られる。がこゝでは、猫及び文の行動の観察細叙を中心に指導していくので ある。こゝに、事柄に合せて、心持を述べるといふことも理解きれよう。 13、指導に嘗っては、猫の行動、父の行動の細叙されてゐる点を中心にして、観 たことを、観たまゝ細かに叙来してゐる点を考察鞍見させて、あるがまゝに 細かに叙寓する態度を培っていくことにカを入れたい。 かくて、次時の創作指導に於いては、身近にある人物に取材させ細かに観察 させ、あるがまゝに、細かに叙寓することを修練していくのである。 五、指導計麓 第一次 指導文例により、あるがまゝに細かに叙寓することを修練する(本噂) 第二次 細かに観察した、人物、事物について記述させる。 第三次 作品指導一一細かに叙寓することの修練 第四次 推敲清書一一細かに叙寓することの体得 第一次の指導車−(木崎) 主 蝦 指導文例「ウチノネコ」を濱ませて作者の猫に寄せる愛惜を味はせ、あ るがま)に細かに叙寓してゐることを考察させ細かに観察してあるがま ゝに細かに叙寓するたいどを修練する。 指導過程 1、題材提出 ウチノネコ(プリント配布) 2、日的指示 「ウチノネコ」の綴方のおけいこしませう。 3、作品も理解 (イ)自由讃、並びに指名濱一一望ませて作品の内容を理解させる。 ○どういふことを書いたのか、 「ウチノネコノカハイイトイウコト」 ○出て来る着は? 作者、父、猫 ○どんなに害いてゐるか一一叙述に即して構想を解明する。 一、ウチノネコハ、トテモカハイイトオモツタコト、 二、ネコガアシヲヨゴシテハイツテキタコト、 三、ゴハンノトキノコト 四、ナマへノコト、 五、拳校カラカへツタ喝ノコト 六、ホンタウニカハイイヨオモツタコト ○この親方では、どういふことを書かうとしたのか一一着想、主感の把捉 「ウチノネコハホンタウニカハイイ」 − 27 −
4、作品の味譲 ○それがうまくかけてゐるところは何虎か−自由に噴表させる(註指導観) 5、作品の考察 ○どうしてこんなに上手にかけたのか、 かはいらしいところ−猫の梯子、父の梯子作者と猫の交渉を、よく観察 して、あるがまゝに細かに叙寓してゐる虎を亜見させ、自覚させる。 6、観察の指導一一ありのまゝ細かにかく ○細かに見て、そのまゝ書いてゐるところは何庭か。 猫のこと、父のこと、 ○どんなに書けばよいか。 よく載ること、一一観察の修練、細かに見て、そのまゝ細 かにかくこと。 7、反省 ○今までの自分の繊方はどうであったか。 ○これからは一一。 8、朗讃 9、補助文例の紹介及印象批評 10、次時への予告 ○いろいろな物人物事物を見てきて、細かにかくこと。 (第二次以下略) 縦書きB5謄写版袋とじ(ステイプルどめ)〃いヾ一ジ、。