はじめに
韓国における移民政策の取り組みが必要になった社 会的な背景としては、世界最低の出生率(合計出産率 1.26 人)2)、高齢化による経済活動人口の減少、国民の 高学歴化による 3D(日本で言う 3K)業種および小規模 企業への就職忌避現象によりこの種の職業に外国人労 働者が流入したため国内滞留外国人が増加(2006 年末 90 万人)したことをあげられる。とりわけ、1993 年か ら行政主導で推進されてきた国際結婚によって海外か ら来た国際結婚女性移住者の急激に増加したことであ る。移住労働者とは異なる定住者として国際結婚女性移 住者(以下「女性移住者」と略す)の増加は今までの移 民政策より具体的な取り組みが必要になったのである。 ところが国際結婚を通して渡韓した女性移住者は、言語 の問題、生活習慣の違い、価値観や宗教の差、異文化な どの異質感などによる夫か家族とのトラブルなどが原 因で離婚率が増加しつつである3)。また、受け入れる側 である夫やその家族も異文化に戸惑い、無意識もしくは 意識的に自分たちのやり方や考え方を無理に押し付け て韓国式に女性移住者を合わせる過程で葛藤がある場 合も多かった。 このように国際結婚から生じる諸問題は次第に社会 問題として注目されるようになり、韓国政府は、2000 年以降になってから多文化社会への取り組みを始めた。 言語の教室や医療や法律などの相談窓口を開設するな どの外国人に対する様々な支援策が行われるように なったのである。また、2006 年度から移民政策、とり わけ国際結婚女性移住者4)に対する政策を、政府が主 導的・積極的に実施し始めた。そこで本稿では、韓国の 国際結婚女性移住者政策について、その転換に注目しな がら実態を把握し、どのような要因で韓国政府が積極的 に取り組むようになったかについて考察してみる。まず Ⅱで 2006 年度から本格的に取り組みが始まった多文化 政策の転換に注目しつつ政策の実態を明らかにする。次 にⅢでは、その転換に影響を及ぼした要因について考察 を行う。諸要因のうち、本稿では社会的雰囲気の変化、 政府側の取り組み姿勢の変化、メディアの報道内容の傾 向について考察してみる。メディアの報道内容の分析に おいては、新聞記事を素材として記事内容の特徴と傾向 を分析しそれを通して多文化政策の転換との相関性を 考察する。Ⅰ.先行研究の検討及び本研究の狙い
韓国の国際結婚女性移住者に対する先行研究は、江原 道庁(2001)、光州女性発展センター(2003)、鄭ギソン ほか(2007)など、自治体内に在住している女性移住者 に関する現状を把握した研究がある。これらの研究の主 な内容は、不幸な国際結婚生活の実態、文化的な適応に 対するストレス、異なる文化の差から生じる葛藤に対し て論じる研究がほとんどであり、政策的なアプローチか らは研究は行っていない。 また、2005 年度からは保健福祉部(2005)の『女性 結婚移民者生活実態調査結果及び保健福祉部対策方案』 を始め、女性家族部(2006)の『結婚移民者家族実態調 はじめに Ⅰ.先行研究の検討及び本研究の狙い Ⅱ.国際結婚女性移住者の政策の実態 1 .国際結婚女性移住者の人口現況 2 .政府と自治体における政策の推進 3 .政府における政策の取り組みの転換 Ⅲ. 国際結婚女性移住者政策の推進に影響を及ぼした 要因 1 .ダブル1)の処遇改善に対する社会的な関心の高揚 2 .政府の積極的な姿勢 3 .メディアの報道傾向と政策転換との相関 おわりに韓国における国際結婚女性移住者に対する
政策の転換とその要因
宋 營
査及び中長期支援政策方案研究』、韓国女性政策研究院 (2007)の『女性結婚移民者に対する地域社会の受容性 研究』など政府傘下機関の実態報告書が相次いて発表さ れた。ところが、このような中央政府の研究内容は、あ る地域を事例として国際結婚女性移住者に対する実態把 握調査と支援政策方案に対するニーズ調査などが主な内 容である。このように、先行研究では韓国政府の多文化 政策がどのように転換されたのか、多文化家族政策の導 入する当時の社会的な背景については軽く言及されてい るだけであり、その転換に及ぼした影響要因に関して考 察を行う必要がある。 続いて、女性移住者に関する言論媒体の先行研究をみ ると、楊ジョンへ(2007)、金スジョン(2008)がある。 これらはテレビや映画などの放送媒体の分析を行い、今 日社会が女性移住者に関してどのような認識を持ってい るのかを考察した。しかし、これらは特定なドラマや映 画を分析対象にしている。そこで、本稿では言論界の分 析において、新聞記事内容の検討を通して多文化政策の 転換への影響を具体的に明らかにしようとするものであ る。
Ⅱ.国際結婚女性移住者の政策の実態
1 .国際結婚女性移住者の人口現況 韓国では 1992 年中国との国交修交をきっかけに農村 男性と中国人(朝鮮族女性)が国際結婚をしはじめ、今 まで増加傾向である。2007 年度の国籍別国際結婚女性 移住者の婚姻件数を見ると、「中国人」が 49.8%(14,526 名)と 1 位であり、2003 年度から増加をしている「ベ トナム人」が 22.7%(6,611 名)5)でそれに続く。また、 2008 年度自治体別国際結婚移民者の現況を示したもの が表 1 である。 2008 年 2 月の国際結婚移民者は合計 113,656 人で、地 域別に見ると京畿道(29,034 名、25.5%)、ソウル(28,726 名、25.3%)、仁川(6,709 名、5.9%)などの都市部に多 い。統計庁資料(2007)によると外国人妻との結婚の比 率は、都市では 8.9%(2005)から 7.7%(2006)に多少 減 少 し た が、 面6)単 位 地 域 で は 16.1 %(2005) か ら 18.1%(2006)に増加した。面単位地域はいわゆる農漁 村地域が多く、農林漁業従事者の男性がほとんどである。 外国人妻との婚姻件数が多い農村地域を見ると、全羅南 道、慶尚北道、慶尚南道、忠清南道、全羅北道の順であ る7)。 2 .政府と自治体における政策の推進 韓国政府における女性移住者に対する多文化家族支援 政策の推進プロセスを見てみると、図 1 のように国務総 理が委員長である外国人政策委員会の総括により、法務 部、労働部、保健福祉部、文化観光部、教育人的資源部 と協力しながら女性家族部(「女性結婚移民者を訪問サー ビス」(2006))、農林部(「農村女性結婚移民者家族支援 事業」(2007))が 2007 年まで主管した。各部署におけ る主な取組の内容は、韓国生活早期定着支援のための生 活情報及び通訳サービス、韓国語の教育及びコンピュー タ利用の機会を提供している。また、多文化家庭子女教 育、基本生活及び人権保障(健康及び妊娠・出産支援)、 貧困家族支援、家庭暴力に対する相談実施及び被害者の 表 1 自治体別国際結婚移民者現況 (2008 年 2 月 28 日現在) 男 女 合計 比率 男 女 合計 比率 ソウル特別市 5,661 23,065 28,726 25.3 京畿道 4,070 24,964 29.034 25.5 釜山広域市 506 4,631 5,137 4.5 忠清北道 207 3,327 3,534 3.2 大丘広域市 309 3,062 3,371 3.0 忠清南道 271 4,940 5,211 4.6 仁川広域市 970 5,739 6,709 5.9 全羅北道 165 4,307 4,472 4.0 光州広域市 147 1,968 2,115 2.0 全羅南道 98 4,845 4,943 4.3 大田広域市 257 2,248 2,505 2.3 慶尚北道 220 5,474 5,694 5.1 蔚山広域市 131 1,886 2,017 1.9 慶尚南道 317 6,179 6,496 5.7 江原道 138 2,603 2,741 2.6 済州道 77 874 951 0.1 全国 男性 13,544 合計 113,656 100 女性 100,112 出所:出入国管理事務所(http://www.immigration.go.kr/)支援(女性家族部「女性緊急電話 1366」)、結婚移民者 の人的資源開発などを実施している。また、地域社会の 参与機会拡大及び多文化環境づくりのために、文化観光 部が 2005 年度から毎年ソウルで「多文化祭り」を開催 している。農林部では 2007 年度から農村地域において 支援サービスを必要としており、2007 年度から女性家 族部(現在の女性部)が外部教育に参加しにくい国際結 婚女性移住者及び家族に対して「訪問教育サービス事 業8)」を実施している。 しかし、各部署の目的別に支援対象および政策遂行方 法が異なり、その連携も不足していた。例えば、施策の 対象者を見ると労働部は外国人勤労者、女性家族部は結 婚女性移住者、教育部は外国人子女、法務部は出入国者・ 滞在許可者、保健福祉部は生活保護受給対象者となど異 なっていたため体系的な支援ができなった。そこで、 2008 年度からは政策の主管が女性家族部から保健福祉 部に移管され、その名も保健福祉家族部に改名された。 2008 年 3 月から保健福祉家族部内に新設された社会福 祉政策室、児童青少年政策室、保健医療政策室で多文化 家族支援関連業務を行なっている。 続いて、多文化社会への政府の動きにともない国際結 婚女性移住者が集住している農村地域の自治体も女性移 住者への取組を 2006 年度から積極的に実施し始めた。 女性家族部の主管下に「中央健康家庭支援センター」へ 委託し(2006)、2007 年度 10 月全国 16 広域市で 38 ヶ 所の「結婚移民者家族支援センター9)」(以下「センター」 と略す)を運営している。2008 年度は全国 80 ヶ所で増 設し、現在は 100 ヶ所で運営している。2010 年まで農 村地域を中心に 140 ケ所まで拡大運営する見込みであ る。 センターで取り組んでいる主要事業内容は、①韓国語 教育、家族教育、文化理解教育、情報化教育、②家族生 活相談及び情報提供、③多文化家庭子女保護、④結婚移 民者自助集団育成支援及び指導者養成、⑤情緒的・文化 的支援として、里親及び後援家族の紹介や結婚移民者家 族単位ネットワーク構築、⑥多文化社会受け入れの「社 会雰囲気」のづくり、⑦関連機関・団体と協議団体構成 及び運営、⑧管内結婚移民者支援機関・団体とのネット ワーク構築および情報の 8 種類に分類できる10)。 ここで、2007 年度『国会国情監査資料』により各自 治体で行われた移民者支援プログラムの現況を表 2 にま とめて示した。2007 年度自治体における多文化政策の 事業は、総計 881 件で、京畿道を除いて比較的に小規模 自治体の方が約 5 倍以上も多い。支援事業別に見ると、 韓国語教育と韓国文化の適応教育が 483 件で(54.8%) 最も多く、次は教育分野で移住女性のみならず夫や多文 化家庭の子女のための教育が 168 件(19.1%)である。 ま た、 経 済 的 な 支 援 と 保 健 福 祉 支 援 の 事 業 は 116 件 (13.1%)であり、センターの助成および制度整備、実 態調査などが 26 件(3%)である。母国文化に対する教 育または母国文化や言語を活用する事業は 21 件で全体 の 2.4%にすぎなかったのである。 女 女性性家家族族部部 法務部 労働部 保 保健健福福祉祉家家族族部部 (2008年度から主管) 教育人的資源部 農林部 文化観光部 センター支援団(支援の総括) 市・道( 市・郡・区の支援総括) 市・郡・区(実質的支援業務) 各地域にある非営利団体や公共機 関、大学等に委託し、「多文化家族 支援センター」を運営。 拠点センター 委託 協力 図 1 韓国の多文化家族支援施策の推進図 出所:2009 年度までの多文化家族支援政策の推進現況に基づいて筆者が作成したものである。
3 .政府における政策の取り組みの転換 2000 年代から法務部、女性部、保健福祉部を中心に 国際結婚女性移住者に対する支援が部分的に施行され、 2005 年 12 月 6 日の大統領直属貧富格差・差別是正委員 会の支援対策へと続く。2006 年には行政自治部が居住 外国人の地域社会統合に向けた指針の策定をはじめ、 2006 年 4 月「結婚移民者家族の社会統合支援対策」と「混 血人及び移住者支援方案」(貧富格差・差別是正委員会) を発表した。「結婚移民者家族の社会統合支援対策」の 内容として、①女性結婚移民者の人権保護支援事業(家 庭暴力の被害者の緊急救済および医療システムなど)、 ②女性結婚移民者の定着支援および教育事業(韓国語教 育と職業訓練)、③女性結婚移民者と多文化家族子供の 教育支援(教科課程および教科書の多文化教育強化、外 国人と共にする文化教室運営、多言語で作られた教育支 援システム、放課後教室など)、④国際結婚を管理する 法律を制定する計画(婚姻ビザ発給、電話相談サービス、 結婚仲介業管理、国際結婚関連広告および消費者保護な ど)、⑤女性結婚移民者に対する福祉支援(生活能力な い国籍を取得していない女性結婚移民者の最低生計費支 給、職業教育斡旋、医療サービス提供、産婦コンパニオ ンなど)、⑥公共部門の多文化家庭支援サービスおよび 認識強化(地域社会の雰囲気転換、政府広報媒体活用)、 ⑦女性結婚移民者と家族に対する包括的支援体系構築 (女性家族部主管下結婚移民者家族支援センター指定)11) である。 続いて、2006 年 5 月には「多文化家庭子女12)教育支 援対策」(教育人的資源部)と「外国人政策基本方向及 び推進体系」(外国人政策委員会)を発表した。2007 年 4 月には「在韓外国人処遇基本法」が通過し 7 月から施 行された。このような政策の特性、主要政策対象、目標、 課題を表 3 にまとめて示した。 表 2 2007 年結婚移民者支援事業の現況 (単位:事業件数) 事業 分野 地域別 合 計 適応 教育 支援 制度整備 ネットワーク 母 国 文 化 そ の 他 韓 国 語 韓国文化 人的資源開発 夫 子 女 経 済 支 援 保 健 福 祉 センターの運営 制 度 整 備 実 態 調 査 結 縁 行 事 ソウル 29 3 7 2 0 0 11 6 0 0 0 0 0 0 0 釜 山 67 12 31 1 1 5 0 11 0 1 2 1 0 2 0 大 丘 14 5 5 1 1 0 0 0 2 0 0 0 0 0 0 仁 川 17 5 6 2 1 0 0 2 0 0 0 0 0 1 0 光 州 4 0 1 1 1 1 0 0 0 0 0 0 0 0 0 蔚 山 14 4 7 1 1 0 0 1 0 0 0 0 0 0 0 京畿道 134 34 50 9 6 10 2 13 3 1 1 3 2 0 0 江原道 118 22 37 6 9 10 8 11 3 0 0 2 7 1 2 忠清道 112 21 42 12 5 12 3 5 2 0 0 2 5 3 0 全羅道 150 30 43 19 6 11 7 13 2 0 1 2 6 9 1 慶尚道 204 54 56 10 5 15 0 21 2 2 2 27 5 4 1 済州道 18 2 6 1 1 2 1 1 1 0 1 1 0 1 0 事業別 数 881 192 291 65 37 66 32 84 15 4 7 38 25 21 4 % 100 21.8 33.0 7.4 4.2 7.5 3.6 9.5 1.7 0.5 0.8 4.3 2.8 2.4 0.5 分野別 数 881 483 168 116 26 63 21 4 % 100 54.8 19.1 13.1 3 7.2 2.4 0.5 出所:大韓民国国会『2007 年度国会国定監査資料』より。
最も早く取り組みを始めたのは女性移住者とその子供 の社会への適応を課題とした。しかし、その他の在住外 国人および在外同胞は対象にならないという批判があ り、その後、結婚移民者だけではなく同胞に対する優待 政策ならびに国内のすべての外国人に対する社会の差別 的な処遇を改善しようとする政策を本格的に取り組んだ のである。 続いて、保健福祉家族部は 2008 年 10 月 30 日に結婚 移民者と子女など多文化家族の社会統合を支援するため の「多文化家族生涯周期別対応型支援強化」対策を発表 した。各生涯周期別の支援策の内容を以下に示す。 (1)結婚準備期:①結婚仲介過程の不正確な情報によ る被害防止のために国際結婚仲介業者の身上情報事前提 供の義務規定新設など法令改正を推進し、仲介業者と利 用者間公正な取引秩序を確立するために標準約款を制定 する(公正委)。②事前プログラム履修、入国する際に 多文化家族支援センターに登録、国籍別自助の集いと連 係して初期通訳・情緒支援および社会適応プログラムを 進行する。③韓国人国際結婚予備配偶者教育参加率向上 のため自治体と連係・協力を強化して婚姻届を提出する 際に自治体で配偶者教育プログラム案内および参加を促 すことを推進する。 (2)家族形成期:①結婚移民者のコミュニケーション 支援のためにセンターを中心に通訳・翻訳の要員を派遣 するシステムを構築、②多国語相談および連係サービス 実施、③通訳サービスを実施する示範保健所拡大(5 ヶ 所増設)、④多文化家族または学校などで要請がある時 に、相談のための通訳要員を派遣する。 (3)子供養育期:①妊婦や新生児の支援対象を低所得 層 出 産 家 庭 で 中 産 層 家 庭 ま で 段 階 的 に 拡 大 推 進 し (2010)、②栄養支援、教育プログラムを全国保健所に拡 大推進する、③両親と子供間の自負心を向上させるため にプログラムを開発・普及する、④一定所得以下の多文 化家族幼児に対する無償保育料支援を検討して(2010)、 保育施設がない農漁村を中心に村会館など遊休空間を活 用して小規模保育示範地域を指定、⑤保育施設での多文 表 3 韓国政府の多文化政策の主要内容13) 政策名 政策対象 政策目標 政策課題 結婚移民者家族の 社会統合支援対策 (2006 年 4 月 26 日) ( 外 国 人 女 性 + 韓 国人男性)家族と その子供 ・女性結婚移民者の社会統合 ・多文化社会実現 ・差別と福祉差別の解消 ・違法結婚仲介防止および当事者保護 ・安定的な滞留支援 ・早期適応および定着支援 ・児童の学校生活適応支援 ・安定的な生活環境造成 ・ 社会的認識改善および業務責任者教育推 進体系構築 混血人および移住 者支援方案 (2006 年 4 月 26 日) 国内混血人 国外混血人 国内外国人 ・ 社会統合を越え、未来の韓国 社会 ・異文化・外交・経済人材養成 ・法・制度的基盤構築 ・社会的認識改善 ・国内混血人の生活安定対策 ・ 国外混血人の国籍取得支援および国家イ メージ向上 ・国内外国人の児童・母性保護を優先保障 外国人政策基本方 向および推進体系 (2006 年 5 月 26 日) 外国籍同胞、結婚 移民者、外国人女 性、外国人の子供、 難民、外国人勤労 者、不法滞留外国 人、国民 ・外国人の人権尊重 ・優秀外国人材の誘致支援 ・社会統合 ・外国籍同胞包容 ・子供権益向上 ・難民実質的支援 ・外国人勤労者処遇改善 ・不法滞留外国人の人権保護 ・多文化社会への統合基盤構築 在韓外国人処遇基 本法 (2006 年 12 月 5 日 発議→ 2007 年 7 月 18 日から施行) 合法滞留外国人 ・多文化包容 ・社会統合実現 ・競争力強化 ・人権保障 ・政策樹立体系 ・国家および地方自治体の責務 ・ 外国人政策樹立および推進体系(法務部 ; 外国人政策委員会) ・在韓外国人処遇 ・共に生きていく周辺環境造成 ・外国人専門担当職員
化プログラムを強化する。 (4)子供教育期:①進学前幼児言語発達支援のために 保育施設中心に多文化児童を対象に韓国語教育など特別 活動を実施し、発達遅延児童に対する言語治療師を保育 施設などに派遣する(2010)、②学習支援のために地域 児童センターを放課後多文化特化施設で活用予定、多文 化プログラム普及および児童福祉教師派遣を支援する、 ③多文化児童・青少年の二重言語力量開発のためにセン ターで言語別教育講師(結婚移民者の活用)を養成して、 保育施設、地域児童センターなどに派遣する。 (5)家族力量強化期:①結婚移民者就職または創業支 援のために地域および人的資源特性を考慮した結婚移民 者適合職種を開発し職業訓練を強化し、就職先の連係協 力体系を構築する、②多文化家族を政策主 体で参加さ せて政策の現実適合性向上のために中央および自治体で の多文化政策モニター団の運営を活性・拡大化、③中央 の多文化家族生活不便解消のための窓口を開設して、④ 結婚移民者のボランティア活動など地域社会参加を活性 化する。 (6)家族解体時:多文化家族実態調査を通じて、離婚 理由及び離婚後の問題実態を把握して無縁故で放置され る児童・青少年を専門保護する。 (7)前段階:①体系的なサービス支援のために案内シ ステムを構築する。②農村地域中心に多文化家族支援セ ンター拡大運営し、③センターと社会福祉館、住民自治 センター、村会館など、地域インフラ間の支援・連係で サービス接近性を強化する、④民・官の協力の効率的事 業推進のために、センター及び地方自治体―民間団体― 企業間の協力ネットワーク構成で事業連係を強化す る14)。 以上、このような多文化家族生涯周期別の政策の課題 を表 4 にまとめて示した。 このように、多文化家族生涯周期別対応型支援強化対 策の推進課題の特徴は、家族生涯周期の全般において、 家族統合教育、配偶者教育、父母・子供プログラムなど 家族全体を対象にする事業を体系化・多様化し、特に、 子供が元気に成長することを支援するために子供養育・ 保育および成長支援政策に比重を置いている。また、女 性移住者にとって最も困難であるコミュニケーション問 題を解消するための通訳・翻訳の支援事業を本格的に実 施する方案を含んでいる。 ここで、転換された政策内容に注目しつつ多文化家族 生涯周期別対応型支援強化支援策を図 2 に表す。 表 4 多文化家族生涯周期別対応型支援強化対策 周 期 別 政 策 課 題 詳 細 推 進 課 題 1. 結婚準備期 結婚仲介違法防止および結婚予定者事前準備 支援 ・国際結婚違法防止及び結婚当事者人権保護 ・結婚移民予定者の事前情報提供 ・韓国人予備配偶者事前教育 2. 家族形成期 結婚移民者早期適応および多文化家族の安定 的生活支援 ・結婚移民者意思疎通支援 ・多様な生活情報提供 ・多文化家族生活保障 ・家族関係増進及び家族危機予防 3. 子供養育期 結婚移民者経済・自立力量強化 ・妊娠・出産支援 ・父母の子女養育能力培養 ・幼児保育・教育強化、・子女健康管理 4. 子供教育期 多文化児童・青少年の学習発達および力量開 発支援 ・児童言語・学習・情緒発達支援 ・児童・青少年力量開発支援 ・貧困・危機児童・青少年支援 ・父母の子女教育力量の強化 5. 家族力量強化期 結婚移民者経済・自立力量強化 ・結婚移民者経済的自立力量強化 ・結婚移民者社会連携強化 6. 家族解体時 解体多文化家族子供及び方親家族保護・支援 ・片親家族支援 ・要保護児童支援 7. 全段階 多文化社会履行のための基盤構築 ・事業推進体系整備 ・国民多文化認識向上
以上の結婚移民者政策から多文化家族生涯周期別対応 型支援策への政策推進流れの中で、目立った転換内容と して以下の 4 点が明らかになった。 第 1 に、国際結婚女性移住者の被害防止のため国際結婚 仲介業者の身上情報事前提供の義務規定に関する法令改正 及び結婚移民者事前情報提供の制度導入を挙げられる。国 際結婚の推進は行政主導型で、その主体は各地域の地方自 治体であるが、実質的には国際結婚を遂行する全過程には 商業的なブローカーなどが深く関与している15)。特に 2005 年度から国際結婚のブローカーが増加したことに よって、農村の男性のみならず、アルコール中毒者、社 会不適応・暴力などの社会的問題を持った男性など、結 婚生活を正常的にできる能力が全般的に不在した男性も その家族の依頼によってブローカーが商業的な目的を達 成するため紹介し結婚をする場合が生じるようになっ た。このような男性と結婚した女性移住者の結婚生活は、 家庭内暴力や葛藤状況は深刻であり、コミュニケーショ ン能力の不在により被害を謳えることすらできなく、家 出をして結局離婚する場合が多かったのである。そこで、 女性移住者の人権保護および離婚率の減少のため政府は 至急に結婚仲介業者の違法に関する取締りをせざるをえ なかったと思われる。 第 2 に、多文化児童・生徒に対する認識を国際化時代 における人的資源として見直した。ハーフではなく多数 の文化を持っているダブルという人間としてのアイデン ティティを持てるようにすることを目指した。そのため 教育支援として持っている二重言語能力を開発し発揮さ せるように図っている。今後これらの児童達の教育問題 はさらに深刻化される見込みであり16)、未就学の児童 が成人になった時に社会の不適応など、発生する諸問題 を防ぐためにも本格的に政策を講じなければならない状 況であったと思われる。 第 3 に、家族教育、特に韓国人配偶者に対する教育を 強化させた。女性移住者のコミュニケーションの未熟や お互いの理解不足による家族間の葛藤を予防するため、 家族構成員の教育を通じて家族内の役割および家族文化 に対する理解力の向上を目的としている。その内容は、 家族全体統合教育、舅姑教育、夫婦および父母教育を年 市・郡・区 多文化家族支援センター ( 総合サービス提供) 保育施設 学校・教育庁 保健所及び医療機関の支援 雇用支援センター 移住女性休息所(移住女性保護施設) 対象者連携 生涯周期別サービス案内 登録・サービスを申請 教育申請(社会適応プログラム) 婚姻届を提出する際に韓国人配偶者の教育誘導 サービス提供 事前教育サービス提供 国際結婚仲介業者 事前教育機関 結婚準備期 家族形成期
国
際
結
婚
移
民
者
対象者連携 協力ネットワークを構成 子供養育期 子供教育期 家族力量強化期 事前身上情報提供義務規制により被害防止 家族解体場合 人権保護 図 2 多文化家族生涯周期別対応型支援策 出所:保健福祉部「多文化家族生涯周期別対応型支援強化対策」の資料を参考に修正・加筆し作成したものである。 注:→は、政府および自治体が行う。…▶は、その他のアクターを指す。また、■は転換された内容を示す。間三つ以上運営するように決まられている。予備配偶者 は年間 1 回以上、配偶者教育は年間 2 回以上教育を実施 するように決められている。 第 4 に、経済的・法的支援策の改善が挙げられる。ま ず、経済的な支援策として国民基礎生活保障制度の対象 を拡大した。従前までは韓国国民のみを対象にした制度 であり、国籍を習得してない女性移住者はその対象にな らなかった。しかし、2007 年 1 月から韓国人配偶者と の子女がいる場合は、国籍未取得者も対象になるように 改善され、2009 年からは多文化家族の基礎生活保障を 支援するために直系家族を扶養する国籍未取得者である 女性移住者に対しては基礎生活保障制度を特例に適用す る予定である。また、家庭暴力被害者に関する法的な処 遇改善も改善された。具体的な内容は、従来は滞在更新 を申請するためには夫の同意が必要であったが、家庭暴 力被害者の場合は夫の同意がなくても公認された人権団 体などの意見提出書のみでも申請できるように規制が改 善された。
Ⅲ.国際結婚女性移住者政策の推進に影響を
及ぼした要因
1 .ダブルの処遇改善に対する社会的な関心の高揚 2001 年度アメリカの 9・11 テロ、フランスの 2005 年 10 ∼ 11 月の都市外郭地域の暴力事態、スペインの 2005 年 3 月 の マ ド リ ー ド 列 車 爆 発 テ ロ 事 件、 イ ギ リ ス の 2005 年 7 月ロンドン地下鉄テロ事件など世界各国で移 民問題が本格的な葛藤や騒擾事態が問題化になった。こ れらの国に比べると韓国は移民受け入れの歴史が短いの で、人種主義、宗教問題などはまだ問題化されてないが、 今後いつかは前例のような問題が発生する可能性が高い と見込まれている17)。このように人種間対立による騒 擾事態の事例のような社会不安を防止するために政府は 国内滞留外国人の社会適応支援と統合政策の重要性を認 識し始めた。したがって、移民政策の統合モデルに対す る全面的な検討の論議よりは、当面の多文化社会への移 行に対応して政府、言論界、市民団体などが強力に提示 し国際結婚、混血問題などを中心に移民に対して非常に 好意的な論議が展開されて来たのである。 また、韓国社会の特殊的な背景としては、従前までは 単一民族主義と血統主義、地域的差別主義、父系・父権 中心の家族中心主義であったが、2006 年 2 月韓国系ア メリカ人選手であるハインズウォード(Hines Ward)が アメリカのプロフットボール(NFL)の最優秀選手(MVP) として選ばれたのをきっかけにダブルに対する関心が高 まるようになった。彼は外見が黒人であるため、幼い時 から差別されるなど不幸だった過去を乗り越え、限りな い愛で息子を成功に導いた韓国人母の献身的な愛に成功 で報いた彼の話は韓国にウォードのブームを起こし、「こ れは混血人の人権への純血主義文化に対する批判などに 多様に展開している18)」とされた。 次に、1990 年代以後国際結婚が急増していること (1995 年総結婚件数に対する国際結婚の比率は 3.4%で あったが、2006 年は 11.9%)をあげられる19)。韓国政 府と社会が移住民に対する政策と認識が根本的に転換す るきっかけになったことは国際結婚の増加による結婚移 住者およびその多文化家庭の子女の登場であると思われ る。従前まで外国人労働者に対する労働力管理にすぎな い政策であったが、移住労働者とは異なる永住者として の結婚女性移住者や多文化家庭の子女の増加は韓国の移 民政策を本質的に修正せざるを得ない状況を作り出した のである。 2 .政府の積極的な姿勢 次に、当時の政府各部署間に政策の実施における競争 が挙げられる。結婚移民者政策も基本的には移民政策で あるが、2005 年 4 月 26 日「支援対策」では、女性家族 部が主導的な役割を果たした。その背景として、2000 年代になると韓国は少子化問題が重要な社会問題になっ た。そこで家庭と職場を両立しにくい女性達の家庭と仕 事を支援するために 2004 年 6 月女性部は福祉部の予算 の中に配分されていた保育および家族予算と業務を女性 部に持っていったのである。このように、外国人政策に 関わる政府各部署間の拡大努力は、政策の実施主体によ り過熱する様相が見られた。「産業研修制」と「雇用許 可制」に代表される法務部と労働部の競争や、女性家族 部の「家族政策」と法務部の「移民政策」の葛藤が代表 的な例である20)。 また、各部署の政策諮問団の役割も重要で、諮問団の 構成メンバーは過去には経済学者中心であったが、2000 年以後からは社会学者、社会福祉学者、文化人類学者な ども政策諮問団に参加することになった。このことも政 策の変化を促進させた要因であると思われる。 続いて、政府の主導的な役割が挙げられる。政府の移民政策の「外国人労働者政策」から「多文化政策」への 変化に影響を及ぼした主な要因として、2003 年盧武鉉 前大統領の政権がスタートしてから少数者に対する差別 解消に主要課題として取り組んだ点も重要である。12 項目の国政課題のうち東北アジア時代の拠点国家に対す るビジョンとして、女性、障害者、外国人などの少数者 に対する差別撤廃の内容が含まれていたのである。2003 年 4 月「東北アジア経済中心推進委員会」が 2004 年 6 月「東北アジア時代委員会」に改編された以後、東北ア ジア共同体の拠点国家になるためには国家間の人的交流 を促進する開放的な「移民政策」が必要であるという認 識につながったことであり、これは労働力不足を克服す る方案でもあった。 2004 年 2 月改編された「高齢化及び未来社会委員会」 は、少子化・高齢化に対処するために高齢化や女性を人 的資源としての活用政策と、このための人口・家族・女 性保育などの政策の内容も含まれている。 一方、法務部の出入国管理局は 2004 年 9 月、学界、 法廷界および市民団体などの 14 人で移民行政研究委員 会を発足し、移民政策に対するワークショップを開催し た。特に 2005 年 5 月 25 日「国家間の人的交流支援及び 管理改善方案」というセミナーでは当時の政府の政策長 官などが参加し、そのセミナーで発表された移民政策は 大統領に伝達された。このような政策の推進の結果、 2005 年 4 月大統領は「移民政策を慎重に検討して少子化・ 高齢化に対する根本対策の樹立」を図るように保健福祉 部に指示したのである21)。 3 .メディアの報道傾向と政策転換との相関 メディアで報道される女性移住者のイメージは、女性 移住者のアイデンティティ形成にも一定部分影響力を及 ぼすだけでなく、彼女たちに対する多数大衆の認識を形 成するとともに、政策決定の土台としても作用すると考 えられる。このように大衆の視線を形成し、拡散・強化 させるのに重要な役割をすることがメディアであるとい うことを前提とする22)。本節では、女性移住者をめぐ る当時の新聞記事の内容と多文化政策の転換の相関を検 討する。新聞記事を基にメディアがどのような問題に注 目していたのか、また、その問題に対して、どのような 原因に注目していたか、その傾向を検討するとともに、 多文化政策の転換への影響を考察してみる。 検討方法としては、韓国の新聞検索サイトである KINDS(Korea Integrated News Database System)23)を 通じて、2000 年 1 月 1 日から 2008 年 12 月 31 日まで『ハ ンギョレ新聞』と『朝鮮日報』記事を検討した24)。 まず、記事収集のために国際結婚女性移住者、結婚移 住女性、結婚移民者の検索キーワードを使用し、記事の 総件数を表 5 に示す。『ハンギョレ新聞』は、2004 から 増加しはじめ 2006 年には 111 件で前年度と比べ約 3 倍 も急激に増加し、2007 年度は 173 件で最も多く報道さ れた。これは 2000 年から女性移住者が急激に増加し始 め、翌年 2001 年度から本格的に社会問題として意識し はじめ報道されたのではないかと伺える。『ハンギョレ 新聞』の場合、2006 年度政府における政策の取り組み の動きとともに急激に女性移住者の問題などに関する記 事が増加し、これは政策改善に大きく影響を及ぼしたと もいえるだろう。しかし、『朝鮮日報』の記事は 2005 年 度から報道されたのである。それに対して『ハンギョレ 新聞』は 2001 年から女性移住者問題を社会問題として 意識し報道している。 では、このような記事の内容のうち、年度別の女性移 住者の問題に対してどのような原因に注目していたの か、その最もの原因と政策転換との相関を見てみる。そ の傾向に関して「仲介業者の資質」「政府の不実な政策」 「適応教育プログラムの不足」「社会的な認識」「経済的 困難」の 5 つの指標から記事を考察する。 検索総件数から述べると『ハンギョレ新聞』50 件、『朝 鮮日報』27 件で総 77 件の記事が検索された。その結果 を図 3 に示す。「政府政策の不実」は、移民法の改訂、 移住民の定着支援事業の不足、家庭暴力被害女性支援策 など主に韓国社会での定着に必要な制度支援の不在に関 する内容である。また、「社会的な認識不足」とは、肌 色の違いに対する偏見、純血統主義から生じる反感、多 表 5 年間記事掲載の総件数 (単位:件数) 2001年 2002年 2003年 2004年 2005年 2006年 2007年 2008年 ハンギョレ新聞 10 10 10 21 35 111 173 135 朝鮮日報 0 0 0 0 3 26 70 107
文化主義に対する認識欠如などが代表的な事例として挙 げられる。「経済的な貧困」は、多くの移住女性たちは 貧困や就職機会の不足など経済的な部分に困っているこ とについての記事内容である。 図 3 の 2007 年度『ハンギョレ新聞』の検討結果に注 目すると、仲介業者の資質問題が女性移住者の諸問題の 原因として最も指摘された。記事のうち仲介業者からの 被害に関する記事の例は以下のようである。 フィリピン人のアンナ(22 歳)は、仲介業者に騙され て結婚したと語った。韓国人運営結婚情報業者は夫を 30 代後半の技術者であると紹介したが、結婚後韓国に来て 全てが偽りであった。夫はトラックの八百屋で、年齢は 結婚前に聞いたより 10 才も上だった。韓国社会について よく分からない女性たちに韓国では農業が尊敬される職 業だと紹介し、結婚すると夫と二人きりで生活し、就職 もできて実家に送金もできると甘い話のみ聞かれた25)。 政府はこのような被害を防ぐために 2008 年 6 月から 「結婚仲介業の管理に関する法律」を制定、施行した。 その内容は、仲介業者は各自治体に申告・登録するよう になり、利用者の婚姻経歴・所得などの情報を正確に提 供し、手数料や会費と会員名簿などを保存するようにし た。ところが、2007 年度農漁民の国際結婚支援事業を 推進しているほとんどの自治体が低出産対策として仲介 業者に国際結婚の費用を支援した。このように自治体が 仲介業者に直接費用を支援するなど密接な関係にあるた め、仲介業者を管理し監督する主体としては適切ではな いという指摘があった。したがって政府は、より厳格な 規定を適用するため 2008 年「多文化家族生涯周期別対 応型支援強化」対策で、結婚違法防止のため仲介業者に 対する法令規定改善策が取り入れるように転換されたの である。このように 2007 年度に最も仲介業者の問題に 注目した新聞記事の傾向は、2008 年度から本格的に実 施されている仲介業者の問題改善策の転換に影響を与え た要因とも言えるだろう。 次は、新聞記事で女性移住者が経験する困難な問題と してどのような問題に注目したかについて図 4 に表し た。「人権抑圧と排除」は、離婚による不法滞在、人権 侵害、子女教育問題、情報疎外による社会的なネットワー クを形成しにくい、社会参与機会が極めて少ないことな どを問題として挙げられている。 まず、図 4 のように保守的な『朝鮮日報』は女性移住 者に対する問題として言語問題の記事が 13 件で最も多 く重視している。しかし、記事の内容のうち例えばこの ような記事内容がある。 韓国社会への早期適応のために外国人女性に韓国語・ 韓国文化教育とともに職業教育も必要である(中略)韓 国の適応教育は円満な結婚生活に役に立つためであ る27)。 1 1 7 4 1 1 1 3 1 8 1 2 1 1 2 1 1 1 2 2 1 1 1 1 1 1 3 1 1 1 3 2 1 1 3 6 3 3 2 0 5 10 15 20 25 30 35 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 件数 仲介−ハン 政府-ハン 適応−ハン 認識−ハン 経済-ハン 仲介−朝 政府-朝 適応-朝 認識-朝 経済-朝 図 3 記事が注目する国際結婚女性移住者の問題の原因 注:「仲介」は仲介業者の資質、「政府」は政府の不質な政策、「適応」は適応教育プログラムの不足を、「認識」は社会的認識、「経済」 は経済的貧困を表す。また、「ハン」は『ハンギョレ新聞』を、「朝」は『朝鮮日報』を指す。
このように、韓国社会に適応させ、結婚生活を維持さ せることを前提として韓国語を勉強すべきであると述べ ているようにも思われる記事があった。一方、進歩的な 『ハンギョレ新聞』は女性移住者の人権侵害問題や子女 教育問題に関する記事が 16 件で最も多く、次は仲介業 者からの被害が 10 件、言語問題と社会的な偏見は各 8 件ずつである。ここで、家庭暴力に関する記事を 2 つ紹 介しておく。 フィリピン人女性リンダ(32 歳)は、結婚してからずっ と夫の暴言と暴行に苦しめられてきたが、子供たちのた めに離婚できない。まだ韓国の国籍ではないため離婚を する瞬間子供をあきらめて一人でフィリピンに帰らなけ ればならない28)。 1993 年結婚したフィリピン人女性タッタは、韓国人 夫の暴力から逃げてベランダ下に落ちて亡くなった。韓 国の風習をよく分からないし、またフィリピンに送金す るのが理由であった。(中略)タッタのように夫に暴力 されて相談をする場合が昨年だけで 100 件を越える。警 察に申告もできなくてそのまま生きていく場合がほとん どである29)。 2007 年6月結婚し来韓した 19 歳ベトナム人女性は、 結婚して一ヶ月後に夫に殴られ亡くなった。この事件の 判決として 2008 年3月夫に無期懲役の判決を言い渡し た。そのうえで裁判官は「他国女性たちをまるで物を輸 入するように考える社会の未熟さから始まったことであ る30)」と指摘した。またこれは夫のみの問題ではなく 女性移住者に対する社会の人々の認識は反省すべきだと 謳えている。 このように、家庭暴力について 2007 年から 2008 年上 半期にかけてしばしば報道された。女性移住者の人権侵 害問題は多様な被害事例があるだろうが、そのうち離婚 による不法滞在者にならないように暴力の被害を受けて も我慢するしかないということが 1 つの理由でもあっ た。そこで、このような女性移住者のために、2008 年 度「多文化家族生涯周期別対応型支援強化」対策では、 法的な改善策を取り組んだのである。 一方、社会的な偏見に関する記事は、肌色の違いを理 由に差別を受けた31)という記事がほとんどで具体的な 事例については報道せず、単なる意識を改革しなければ ならないという抽象的な指摘に留まる場合が少なくな い。 また、女性移住者の言語疎通問題は子供の教育におい ても影響を及ぼしている。例えばこの記事で、「ママの 韓国語が下手で子供が会話をしようとしない…子供の宿 題が恐ろしい…上級学校に通わせることが心配であ る32)」とされているように、子女の教育問題に困って いる外国人母親たちが少なくない。このような状況の対 処として政府は表 2 に示したように多文化政策支援事業 のうち韓国語・韓国文化が 483 件(54.8%)で最も多く 行われているのである。 次は、女性移住者の諸問題に対する解決策としての記 事傾向を表 6 に示した。「政府支援策」が『ハンギョレ 新聞』は 37 件、『朝鮮日報』は 17 件で最も多く、「社会 図 4 記事が注目する国際結婚女性移住者の問題26) 0 5 10 15 20 25 言語問題 文化的な差 社会的な偏見 家庭暴力 仲介業者からの被害 経済的な困難 人権抑圧と排除 朝鮮日報 ハンギョレ新聞 3 7 5 2 3 3 2 2 8 2 8 5 10 10 3 3 16 16 1 13 13 3 7 5 2 3 3 2 2 8 2 8 5 10 3 3 16 1 13
市民の認識の変化」、「教育を通した女性自身の変化」を 求める順である。一方、「市民団体や民間団体などの活動」 を通して解決を求めるよりは、根本的に政府の政策から 解決を求めていることが明らかになった。
おわりに
本稿では、国際結婚女性移住者の政策に関する先行研 究を参考にしながら、政策の転換に注目しつつ政策の実 態を検討した。また、既存の研究では明確に検討されな かった多文化政策の転換に影響を及ぼした要因を考察し た。その要因は、社会認識の変化、政府側などの動きを 把握するとともに、新聞の記事傾向の実証分析を通して、 記事内容の傾向と政策の転換との相関性を把握すること にできた。 本稿の内容を総括すると、まず、韓国の国際結婚女性 移住者への政策を積極的に取り組み始めた要因として は、2000 年代国外における人種間対立事態のように韓 国政府も社会不安を防止するためにダブルに対する社会 の関心を高揚させたことが挙げられる。また、政府各部 署も取り組むようになり、とりわけ当時の盧武鉉前大統 領の政権が少数者に対する差別解消に主要課題として積 極的に取り組んだことが最も大きな影響を与えた。 続いて、2005 年度から女性移住者の処遇問題を言論 界が積極的に取り上げたことを挙げられる。記事では国 際結婚過程の中、募集過程で人権侵害的な広告行為、人 権侵害的な仲介手続き、一方的で不正確な情報提供、仲 介業体の過度な手数料受取などの問題を取り上げた。 2007 年度から最も問題化された仲介業者の被害に注目 してみると、政府はその解決策として、2008 年 6 月「結 婚仲介業の管理に関する法律」を制定、10 月「多文化 家族生涯周期別対応型支援強化」対策では結婚準備期か ら仲介業者の身上情報事前提供の義務規定新設や、配偶 者に対する正確な情報提供など法令の改定を取り入れる ように転換されたのである。このような新聞記事の傾向 は 2008 年度本格的に取り組みを始めた仲介業者の問題 改善策の転換に影響を与えた要因として見られた。とこ ろが、自治体と仲介業者との緊密な関係である現在の状 況では自治体が仲介業者を正しく管理及び監視ができる かは疑問である。 一方、社会の全体的な偏見問題の解決策としては新聞 記事でも単純に意識の変化をすべきであるとしか述べて いない。現在の政策も単に「社会的認識改善」を課題と 設定し市民とともにするイベントや、母国の料理講演会 などほとんどが 1 回性に留まっている。韓国で生まれて、 ずっと韓国で育った多文化家庭の子供たちは、韓国では 外見が異なるため幼い頃から外国人として差別され、一 部では行動障害、学習不振などを経験する子供たちが増 加しているとも報道されている33)。このような多文化 児童・生徒は不就学の問題があり、さらに社会への不適 応の問題までつながる。それに対して 2008 年度政策は 多文化児童・生徒を国際化時代の人的資源として認識し 力量開発支援として持っている二重言語能力を発揮させ るように図っている。しかし、幼い頃からの二重言語教 育によって、正常な言語の習得ができなくなり、社会的 な偏見と重なって自分のアイデンティティが混乱する恐 れがある。多文化家庭における子女の言語能力を開発し て国際化時代の人材としての育成を図る前に、韓国社会 で平常に生活できるような社会環境づくりが至急に必要 だと思われる。そのためにはまず、学校で適応をサポー トするために教育者を十分に養成し、公教育制度内に編 入する方案が積極的に検討されなければならない。 最後に、本稿では多文化政策の推進と関連した市民団 体・民間団体の動向を明らかにすることができなかった。 また、政策を本格的に取り組むために実施した 2006 年 外国人政策委員会の会議記録の分析を行い、多文化政策 を行わざるを得なかった当時の委員の意見について考察 をすることを今後の課題とする。 注 1)国際結婚家庭で生まれた者を、既存では「混血人」または 「半分」を意味する「ハーフ(half)」という名称がよく使わ れた。しかし、それが差別的であるとの理由から近年は「ダ ブル(double)」という呼称を用いている。本稿では、多文 表 6 記事が提示する女性移住者の問題の解決策 (単位:件数) 政府支援策 市民・民間団体などの活動 社会認識の変化 教育を通した変化 朝鮮日報 17 1 7 4 ハンギョレ新聞 37 5 3 6化家庭支援政策の取り組みが始まった 2006 年を基準として 前は「ダブル」を、後は「多文化家庭子女」という呼称を用 いる。 2)統計庁の「人口動態統計年譜」によると、2007 年度合計 出産率は 1.26 名で、1.3 名以下は超低出産(少子化)社会と いわれている。人口規模の維持に必要な出産率は 2.1 名であ る。(別注:韓国においては「合計出産率」という用語が使 われており、妊娠可能な女性(15 ∼ 49 才)一人が一生出産 する子供の人数を意味する。)(韓国政府『2006―2010 第 1 次低出産高齢社会基本計画』17 項より) 3)韓国統計庁ホームページ(www.kosis.kr)「2008 年度全国 外国人妻の国籍別の離婚率」によると、2004 年離婚件数は 1,567 件、2005 年 2,382 件、2006 年 3,933 件、2007 年 5,707 件、 2008 年 7,962 件で年々増加傾向である。 4)韓国では「女性結婚移民者」という言葉を、日本では「国 際結婚女性移住者」の用語を使っている。本稿では日本の用 語を用いる。 5)韓国統計庁ホームページ(www.kosis.kr)「夫韓国人・妻外 国人の国籍別にみた年度別婚姻件数」より。 6)日本における町村の地域単位に当該する。 7)韓国統計庁ホームページ(www.kosis.kr)「農林漁業従事者 である夫韓国人と妻外国人の地域別にみた年度別婚姻件数」 より。 8)訪問教育サービス教育とは、韓国語教育指導者及び児童養 育指導者が結婚移住者の家庭に直接に訪問し韓国語の教育を 支援し、子供養育支援、相談支援などを行っている。2008 年度約 3,000 人の訪問教育指導者がおり、韓国社会・文化へ の適応を主な目的とし、言語教育、文化教育、家族関係増進 のための相談などを行なっている。 9)結婚移民者家族支援センターは、2008 年 9 月 22 日から多 文化家族支援センターに名称を変更した。 10)金イソン・外「女性結婚移民者の文化的な葛藤の経験と相 通 増 進 の た め の 政 策 課 題 」『 韓 国 女 性 開 発 院 』2006 年、 210 ∼ 211 項。 11)語句は原則として直訳である。 12)多文化家庭子女とは、国際結婚家庭(韓国人男性と外国人 女性、あるいは韓国人女性と外国人男性)で生まれて子供、 外国人労働者家庭(外国人労働者が韓国で結婚し生まれた子 供、または外国で結婚し形成された家族が韓国内に移住した 家庭)の子供である。 13)表中の語句は原則として直訳である。 14)保健福祉部『多文化家族生涯周期別対応型支援強化対策資 料』2008 年、14 ∼ 45 項。 15)2008 年 10 月羅州市結婚移民者センターの HONG Ki-Sul 牧師にインタビュー調査を行い、その結果から得られた内容 である。 16)多文化家族の児童の教育支援に関して従前と比べて本格的 に取り組んだ背景をみると、2008 年 7 月の行政自治部の資 料によって結婚移民者子女の年齢別の現況を見ると、総人数 は 58,007 名 で、16 ∼ 18 歳 が 2,504 名(4.3 %)、13 ∼ 15 歳 が 3,672 名(6.3%)、7 ∼ 12 歳が 18,691 名(32.2%)、6 歳未 満が 33,140 名(57.1%)で、そのうち 18,769 名(39.6%)の み就学している状況である。 17)外国人政策委員会の関係者である金ヒョンミ教授のヒヤリ ング調査から得られたことである。 18)『ハンギョレ新聞』2006 年 2 月 12 日。 19) 金ナムイル「開かれた社会具現のための外国人政策方向」 『 韓 国 的 多 文 化 主 義 の 理 論 化 』、 韓 国 社 会 学 会、2007 年、 144 ∼ 148 項。 20)李へギョン「移民政策と多文化主義:政府の多文化政策評 価」『韓国的多文化主義の理論化』、韓国社会学会、2007 年 8 月、226 ∼ 229 項。 21)李へギョン、前掲、238 ∼ 239 項。 22)アメリカの社会学者であるクーリーは、印刷媒体は非常に 多様な考え方と情緒を広範囲に伝播できる表現の拡大、時間 の制約を克服した記録の永久性、空間の制約を克服した迅速 性、すべての階層の人々が接触できる伝播性を特徴であると 主張した。このような特徴によって、人間の社会的な関係と 経験を拡張させ、さらにこのような変化が政治、経済、社会、 文化、教育に至るまでのすべての社会組織と機能は勿論社会 心理にも革命的な変化を引き起こす要因にもなる。(楊ジョ ンへ 2007:53) 23)韓国言論財団が運営する公益的な性格の記事検索サイトで ある。現在、全国の総合日刊紙と経済紙および英字紙は勿論 地域新聞の記事原文まで検索することができる。(http:// www.kinds.or.kr/) 24)2 つの新聞を選んだ理由は、それぞれの新聞が見せる論調 の保守性、進歩性において極端に異なるからである。 25)『朝鮮日報』2005 年 3 月 22 日。 26)記事の内容によって、複数の指標に当該する場合もあり総 検索件数とは不一致である。 27)『朝鮮日報』2005 年 3 月 23 日。 28)『ハンギョレ新聞』2003 年 6 月 5 日。 29)『ハンギョレ新聞』2003 年 3 月 27 日。 30)『ハンギョレ新聞』2008 年 3 月 13 日。 31)『ハンギョレ新聞』2005 年 10 月 19 日。 32)『ハンギョレ新聞』2004 年 11 月 11 日。 33)『ハンギョレ新聞』2005 年 4 月 7 日。 参考文献・資料・URL 江原道庁(2001)「外国人主婦生活実態及び福祉要求討論会資 料集」。 光州女性発展センター(2003)『外国人主婦実態調査』。 鄭ギソンほか(2007)「京畿道国際結婚移民者家族の支援長短 期計画」『京畿道家族女性開発院政策報告書』。 チョへヨンほか(2007)「多文化家族子女の学校生活実態と教師・
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