<論文>喫煙防止教育の効果の一考察
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(2) 喫煙防止教育の効果の一考察 これらの指摘を踏まえて教育職員審議会報告も、養護教. 社会人 7 名(うち男性 1 名)、女性 41 名)であった。. 諭の養成のカリキュラム改善方針に、現代の健康問題に 対応する「保健授業の担当」の制度措置の必要性を示し た。これらの経過を経て、平成 10 年の教育職員免許法 改正によって「養護教諭が保健の授業を担当する教諭又 は講師となり得る」とされた。. 2.授業内容と方法 1)事前のアンケート調査 2018 年度の入学生に対しては 6 月に、2019 年度の入 学生に対しては 7 月に演習の授業を行った。事前に学生. 養護教諭が行う保健指導の現状(加納・上村・田嶋・. 達にアンケート調査を行い、喫煙防止指導を受けた経験. 高橋,2016)の児童生徒等を対象とする集団の保健指導. の有無、 有りと答えた場合は指導を受けた時期 (小学校、. の内容を見てみると多い順に、生活指導、けがの予防、. 中学校、高校、その他大学等)、今まで受けてきた授業. 疾病予防、目耳鼻の健康、歯の健康性、性について、発. や保健指導の項目や内容(タバコに含まれている有害物. 育・発達、その次が喫煙・飲酒・薬物乱用についての指. 質、副流煙、ニコチン依存症、タバコに関する法律、健. 導になっている。. 康障害、その他)、また喫煙について知りたい内容や分. 喫煙防止教育の効果については、多くの先行研究があ. からない内容について調査をした上で実施した。. り、後藤・高野・高濱・橋本・長谷川・波多江(2015)の中 学 1 年生を対象とした喫煙に対する意識と喫煙防止授業 の評価においても、社会的ニコチン依存度の改善に効果 があることが明らかになっている。 喫煙の指導においては、養護教諭の行う指導は低い実 態ではあるが、喫煙防止指導を行う教員への情報提供や. 2)倫理的配慮 学生にはアンケートの趣旨および個人情報保護の徹底、 そして授業の評価に不利益を受けない事を説明し、無記 名で自由意思での協力、途中中断の権利の保障を伝え実 施した。. ティームを組んで行う教科指導への協力、個別指導など の教育に携わっている。. 3)受講者が喫煙防止教育を受けた経験 事前のアンケート調査について、2018 年度の入学生の. Ⅱ.研究目的 筆者の所属する短期大学では、養護教諭を養成してい る。養護教諭として健康を保持増進する保健指導を担う. うち 43 名の提出があり、回収率は 96%であった。また、 2019 年度の入学生のうち 41 名の提出があり、回収率は 98%であった。結果を図 1~図 3 に示した。. ことが多いため、演習の授業の中で毎年、喫煙防止につ いての授業(90 分 1 コマ)を行っている。 養護教諭を志願している学生たちが喫煙に対する理解 を深め、彼らが実際に養護教諭になった際の児童生徒に 対する教育の質を高めるためには、どのような喫煙防止 教育を養護教諭志望学生に行うことが効果的であろうか。 本研究では、筆者が短期大学で実施した喫煙防止教育を 受講した学生に対してアンケートを行い、効果的な喫煙 防止教育の在り方について検討することを目的とする。. 100% 80% 60%. 2018年度. 40%. 2019年度. 20% 0% ある. ない 未記入. 図 1 授業や講義、保健指導を受けた割合 Ⅲ.方法 1.対象. 2018 年度は、これまでに 1 回でも授業や講義を受け. 養護教諭をめざしているA短期大学1年生を対象に、. た者が 91%、受けたことがない者が 7%であった。2019. 2018 年度と 2019 年度の 2 回、喫煙防止教育を行った。. 年度は、これまでに 1 回でも授業や講義を受けた者が. 2018 年度の入学者は 45 名(新卒者 36 名、社会人 9 名、. 98%、受けたことがない者が 2%であった。. 全員女性)、2019 年度の入学者は 42 名(新卒者 35 名、 教育デザイン研究第 11 号(2020 年 1 月). 2.
(3) 喫煙防止教育の効果の一考察 b) タバコの 3 大害悪について. 40 35 30 25 20 15 10 5 0. タバコの 3 大害悪といわれるタール、ニコチン及び一 酸化炭素による有害性について説明を行った。タールに 2018年度 2019年度. は、ベンツピレン、ニトロアミンをはじめとする発がん 性物質が数十種類も含まれていること。ニコチンは、タ バコ依存症となる原因物質であり、肺胞から入ったニコ チンは、最初の 1 服の 30 秒後には、静脈血液中に現れ、 脳を含むあらゆる臓器・組織に分布し猛毒であること。. 小学校 中学校 高校 その他. 一酸化炭素については、赤血球中のヘモグロビンに対し. 図 2 授業や講義、保健指導を受けた時期. 酸素の代わりに一酸化炭素が結合し全身の細胞に酸素が 行き届かなくなり、 酸素不足となる。 喫煙する高校生は、. 授業や講義を受けた時期について 2018 年度は、小学. タバコを吸わない生徒に比べ、体力も劣り、持久力がな. 校が 14 件、中学校が 35 件、高校が 30 件、その他 1 件. いため体力テストの結果も劣っているというデータがあ. であった。2019 年度は、授業や講義を受けた時期につ. ること 。. いては、小学校が 19 件、中学校が 33 件、高校が 27 件、その他 3 件であった(複数回答あり)。. 受動喫煙の害についてタバコを吸う人が直接吸い込む 煙を主流煙、タバコから立ち昇る煙を副流煙といい、主. 授業や講義、保健指導を受けた項目について、2018. 流煙はタバコのフィルターを通過する際、いくらか除去. 年度は、有害物質 37 件、副流煙 33 件、依存症 32 件、. されるため有害物質は、主流煙よりも副流煙の方に多く. 健康障害 31 件、実態 29 件、法律 17 件、その他 1 件で. 含まれること。副流煙とタバコを吸う人が吐き出した煙. あった。2019 年度は、授業や講義、保健指導を受けた. とがまじりあったものを、環境タバコ煙と呼び、タバコ. 項目については、有害物質 34 件、依存症 31 件、副流. を吸う人の周りにいる人が、この煙を吸い込んでしまう. 煙 30 件、実態 27 件、健康障害 21 件、法律 5 件、その. ことを受動喫煙ということ。. 他 2 件であった(複数回答あり)。. c) 分煙の定義について 分煙とは、 非喫煙者に対する受動喫煙の健康影響や不快 感を排除または減少させることを目的として喫煙対策を. 40 35 30 25 20 15 10 5 0. 実施すること。時間帯を定めて特定の生活空間を禁煙と する時間分煙と、喫煙可能場所を定め、他の生活空間を 禁煙とする空間分煙とがある。受動喫煙の影響を排除ま 2018年度. たは減少させるためには、空間分煙を実施することが原. 2019年度. 則とされる。喫煙対策として、屋内全体を常に禁煙とす ることも広義の分煙方法のひとつとして取り扱われる。 さらに非燃焼式加熱式タバコ、電気加熱式タバコ、電子 タバコ等最近市場に出回り始めた最新のタバコについて も紹介し、燃焼式タバコとは異なり健康にいいとされて. 図 3 授業や講義、保健指導を受けた項目. いるが、加熱式タバコも副流煙の害の可能性がある調査 結果も報告されていること。. 4)授業内容 2018 年度の授業内容 ① パワーポイントによる解説. d) 生徒が喫煙を始めるきっかけについて 喫煙の開始には、低いセルフエスティーム(自尊心、 あるいは自尊感情などと訳され、自分の能力や勝ちに対. a) 学生がこれまで受けてきた授業や講義、保健指導の実. する自信の程度を意味している)や強いストレスなどの. 態についての紹介。. 心理的要因、 他人からのさそいや広告などの社会的要因、 教育デザイン研究第 11 号(2020 年 1 月). 3.
(4) 喫煙防止教育の効果の一考察 入手にかかわる環境要因などが強く影響していること。. 喫煙防止指導案に記載する項目は、以下の項目とした。. e) 最後に生徒をタバコから守るために. ・指導の機会は、いつ行うと良いと考えるか. 有害性は、もちろんのこと、開始要因や背景、防止のた. ・指導を実施する時期は、どの校種が適切か. めの社会的対策などの理解、自他の心身の健康を大切に. ・指導する内容は、どのような内容を行うのか. する価値観の形成などが必要。さらに、開始要因への適. ・指導方法は、どのように実施するのか. 切な対処法の学習が必要。 他人からの喫煙などの誘いや様々な宣伝や情報などに. 喫煙防止指導案を分類した結果は、 以下の通りになった。. 対する効果的な対処法、セルフエスティームの形成、コ. 授業出席者は、38 名であった。. ミュニケーションスキルやストレス対処スキルなどのラ. 喫煙防止の指導機会ついては、道徳 6 件、保健体育 16. イフスキルの形成が重要。. 件、総合的な学習の時間 9 件、ホームルーム活動 2 件、 個別指導 1 件、全校集会 4 件であった。. ② 日本のタバコと外国のタバコの実物紹介 日本のタバコのパッケージは、ブランド名が 70%を占. 喫煙防止の指導時期については、小学校が 9 件、 中学校が 24 件、高校が 4 件、大学が 1 件であった。. めており、健康表示は、パッケージ株 30%に小さな文字 でテキストだけが示されている。文字や色、表現などの. 指導内容について、どのような内容を行いたいかについ. 規制もなく諸外国に比べて対策が遅れている。一方外国. ては、以下の通りであった。. のタバコのパッケージは、健康警告表示が大きく、写真. ・有害性について. 付きでインパクトが大きい。カナダのパッケージは、画. ・自分を大切にすることについて. 像を含む健康警告表示が上部の 75%を占めて目立つデ. ・断り方について. ザインとなっており、クイットラインと呼ばれる禁煙相. ・法律について. 談の電話番号も表示されている。. ・ストレスの発散の方法について. ③ 喫煙、飲酒、薬物乱用防止に関する指導参考資料(日. 指導方法について、どのように実施するかについては、. 本学校保健会,2010,2011,2012)についての紹介. 以下の通りであった。. 指導する機会として保健体育科における指導、道徳に. ・パワーポイントによる説明. おける指導、特別活動における指導、総合的な学習の時. ・ビデオの使用. 間における指導、 個別指導があることについて紹介した。. ・クイズ形式にする ・グループワーク後発表する. ④ タバコ溶解液の実験 タバコ 1 本をコップ1 杯の水に溶かした液体とそれを 2 倍に希釈した液体と普通の水の 3 種類の液の中に生け 花をつけて 3 日間放置し、比較した。 実験の際は、教員が行うのではなく、実験方法を説明 した後に、学生達が実際に手で触れ、体験させる形式で. ・タバコに関する映画を鑑賞する ・実験する 例:血管の変化など 副流煙と主流煙を使った肺の汚染の違い ・タバコをやめた人に経験談を語ってもらう ・親に宿題を出す. 行った。また、実験結果について学生達全員が確認でき るように時間割を配慮した。. Ⅳ.結果 2018 年度及び 2019 年度それぞれ授業終了後に自由記. 2019 年度の授業内容については、2018 年度の授業内 容①から③に加えて喫煙防止指導案を学生に作成させた。 自分が養護教諭として勤務していると仮定し、 喫煙防止. 述の感想を記載させたところ、表 1 および表 2 の結果が 得られた。110 切片を抽出し、kJ法を用いてカテゴリ の作成をおこない 3 カテゴリに分類された。. 指導を行うと想定して記載させた。 教育デザイン研究第 11 号(2020 年 1 月). 4.
(5) 喫煙防止教育の効果の一考察 表 1 2018 年度 授業後の感想 カテゴリ. 授業内容 の感想. 意見. 教育目標. 切片数. 花の実験が印象的でわかり易かった。. 14. 肺の写真や血液循環の画像はとてもインパク トがあった。. 5. 外国たばこのパッケージを見て驚いた。. 5. 何故喫煙を始めているのかという背景要因を 知ることで根本的な対策や指導ができるので はないかと思った。. 2. タールやニコチンについては知っていたが、 一酸化炭素については知らなかったので勉強 になった。. 2. 喫煙防止指導はとても難しいものだと思って いたが、いろんな工夫の仕方があることが分 かった。. 2. 先生の体験談の話が印象に残った。. 2. 適度であればストレス解消法にもなるので、 絶対にダメとは言い切れないと思う。. 2. 喫煙防止教育の効果を上げるためにも学校敷 地内禁煙が不可欠であると思った。. 1. 自分自身絶対に吸ってはいけないし、自分の 大切な人にも吸って欲しくないと感じた。. 1. 電子タバコについいてはまだ、未知な部分も あるけれどやめた方がいいと思った。. 1. 年齢に応じて教える内容を変化させていく必 要があることを学べた。 身内に「タバコを吸うと早く死んでしまうか ら悲しい」と伝えたら、自力でやめてくれ た。. 行動目標. カテゴリ. 1. 授業内容の 感想. 行動目標. 1. 自分の身内にタバコをやめられない人がいる のでしつこく訴えていこうと思った。. 3. 自分の親戚の子供が受動喫煙している可能性 が高いのでしっかり伝えていこうと感じた。. 2. 吸い始める家族や友達がいれば全力でやめさ せたいと思った。. 1. 思春期の子供達に対してタバコの危険につい て養護教諭になったらしっかりと伝えていき たいと感じた。. 4. 実験や断るコミュニケーション能力を身につ けられるような指導をしていきたいと思っ た。. 3. 喫煙をしてしまうきっかけとして強いストレ スや他人からの誘いでの悩みなどの心理的要 因について健康相談活動や保健指導の充実が 重要だと思った。. 3. タバコへの理解と知識について、繰り返し講 義を行うことが大切だと思った。. 2. 喫煙防止について指導するときは、図、グラ フ及び絵を取り入れて飽きさせないようパワ ーポイントを作成したいと思った。. 2. 実際に喫煙している児童・生徒に対してどの ように対応すればよいか考えさせられた。ま だイメージがついていないが、残りの一年間 で考えていきたい。. 1. 教育目標. 意見 マナーやルールの整っている国と比較 し、日本はもっと環境を整えていく必要 があると思った。 喫煙防止教育の効果を上げるためにも学 校敷地内禁煙が不可欠であると思った。 タールやニコチンについては知っていた が、一酸化炭素については知らなかった ので勉強になった。 肺の写真や血液循環の画像はとてもイン パクトがあった。 外国たばこのパッケージを見て驚いた。 保健指導で子供達に伝える時、自分なら どのような言葉で伝えるか考えるきっか けになった。 喫煙防止指導案を作成して、既に喫煙を してしまっているという生徒や、親が喫 煙者でありタバコに対してどうしても悪 いイメージを持てない子ども達への対応 をどうすべきか、新たな課題が出来た。 適度であればストレス解消法にもなるの で、絶対にダメとは言い切れないと思 う。 年齢に応じて教える内容を変化させてい く必要があることを学べた。 ただ叱るのではなくて背景にあるものも 考え、環境改善やメンタル面での個々の サポートも必要になってくる。 副流煙さえ気にかけてもらえれば、自己 責任で喫煙するのは仕方がない。しか し、自分の大切な人達が喫煙していたら やめてほしいと伝えたい。 自分の身内にタバコをやめられない人が いるのでしつこく訴えていこうと思っ た。 吸い始める家族や友達がいれば全力でや めさせたいと思った。 実験や断るコミュニケーション能力を身 につけられるような指導をしていきたい と思った。 タバコへの理解と知識について、繰り返 し講義を行うことが大切だと思った。 思春期の子供達に対してタバコの危険に ついて養護教諭になったらしっかりと伝 えていきたいと感じた。 喫煙をしてしまうきっかけとして強いス トレスや他人からの誘いでの悩みなどの 心理的要因について健康相談活動や保健 指導の充実が重要だと思った。 喫煙防止について指導するときは、図、 グラフ及び絵を取り入れて飽きさせない ようパワーポイントを作成したいと思っ た。 喫煙防止指導をする時は、合わせてスト レス発散法も教えていきたい。 学校のように教育を受ける機会の無い社 会人に対しての喫煙防止教育も必要だと 思った。 子供達だけでなく教員や学校関係者、保 護者、地域の方々に対しても、喫煙防止 教育ができる教員になりたい。 自分が喫煙防止指導をする際は、タバコ の種類やそれぞれのメリット・デメリッ トも調べて指導していきたいと思った。. 切片数 6 2 2 2 2 2. 2. 1 1 1. 3. 1 1 6 5 4. 4. 1. 1 1. 1. 1. 表 2 2019 年度 授業後の感想 教育デザイン研究第 11 号(2020 年 1 月). 5.
(6) 喫煙防止教育の効果の一考察 Ⅴ.考察 授業前に行ったアンケート調査の結果においては、. 2018 年度の感想においては、 花の実験が印象的でわか り易かったこと、肺の写真や血液循環の画像のインパク. 2018 年度、2019 年度ともに、90%以上の学生が授業や. トがあったといった授業内容の感想が大半をしめていた。. 講義、保健指導を受けた経験があった。しかしながら、. 次いで、タバコの危険性についての指導、コミュニケー. 受けていない学生がいたため、受けた経験のある学生達. ション能力を身につけられるような指導の充実、ストレ. にとっては復習になってしまうが、喫煙防止教育の基本. スや悩みなどの健康相談活動の充実といった教育目標が. 的な内容は、パワーポイントを用いて説明を行った。. 多かった。. 授業や講義、保健指導を受けた時期については中学生. 2019 年度の感想においては、 実験を取り入れた授業展. の時期が多く、 次いで高校、 小学校という結果であった。. 開や断るコミュニケーション能力を身につけられるよう. 喫煙・飲酒に関する興味および関心が高まる中学生の時. な指導をしたい、タバコの理解と知識について繰り返し. 期を踏まえての結果であろう。. 講義を行う必要性などの教育目標が最も多かった。次い. 授業や講義、保健指導を受けた項目については、タバ. で、諸外国に比べ日本はマナーやルールを整えていく必. コに含まれている有害物質についての内容が最も多く、. 要性や喫煙防止教育を高めていくための敷地内禁煙の環. ニコチン依存症、副流煙、健康障害についても同じ位説. 境が整う必要性といった授業内容の感想が多かった。. 明されているが、法律について余り触れられていなかっ. 授業の内容に関する感想が多かった 2018 年度と比較. た。パワーポイントによる説明の際は、事前アンケート. し、2019 年度では、養護教諭として喫煙予防教育にどの. の質問内容に何故吸い始めると止められなくなるのか知. ように関わっていきたいかという明確な視点が多くなっ. りたいという内容があったため、わかり易いイラストを. ていた。. 用いて行った。また、分煙の定義や加熱式タバコについ てわからない、との事だったので説明を加えた。. 高等学校学習指導要領解説 保健体育編・体育編(文 部科学省,2018)においては、次のように示されている。. 出来るだけ近年の情報に基づき説明できるよう、数日. 喫煙や飲酒は、生活習慣病などの要因となり心身の健康. 前に掲載された新聞記事のコピーを配付し、心掛けてお. を損ねることを理解できるようにする。その際、周囲の. こなった。また、外国のタバコのパッケージを実際手に. 人々や胎児の影響などにも触れるようにする。. とって見ることができるよう配慮した。. また、喫煙や飲酒による健康課題を防止するには、正し. 養護教諭として保健指導をする場合、指導の機会・指. い知識の普及、健全な価値観の育成などの個人への働き. 導の内容の参考例を説明するとともに、実験例を紹介し. かけ、及び法的な整備も含めた社会環境への適切な対策. た。. が必要であることを理解できるようにする。その際、好. 以上の内容で、 2018 年度は実施したが、 2019 年度は、. 奇心、自分自身を大切にする気持ちの低下、周囲の人々. 90 分 1 コマで実施しなければならない中で、教員の一方. の行動、マスメディアの影響、ニコチンやエチルアルコ. 的な講義でなく学生達が主体的に取り組めるよう、学生. ールの薬理作用などが、喫煙や飲酒の開始や継続の要因. 達に指導案を書いてもらう時間を設けた。入学して、指. となることにも適宜触れるようにすると示されている。. 導案の立案の仕方を十分に学習できていない時期のため、 具体的な立案まで求めることはしなかった。 学生達の指導案についてみてみると、どのような内容 を指導したいかについては、筆者の行った講義内容を踏. 上記の内容は、喫煙予防教育を行うに当たり重要な内 容であり、教員として指導する際は網羅されるような授 業づくりが必要になる。限られた時間の中で、いかに効 果的な授業を行うのか力量が問われる。. まえての内容が多かったが、指導方法についてはクイズ. 保健指導を行う際、望ましい行動や結論を指導者が一. 形式、グループワーク、実験例等、活動的な内容が散見. 方的に説明したのでは、子どもの力にはなりにくい。重. された。. 要なのは、子どもの生活実態や知識、経験などを土台に. 授業後の感想においては、表 1(2018 年度)と表 2. して、子どもが主体となって学べるような指導を工夫す. (2019 年度)に示す通り、「授業内容の感想」、「行動. ることである(日本教育保健学会,2016)児童生徒が何と. 目標」、「教育目標」の 3 カテゴリに分類された。. なく理解している内容について、明確な根拠を伴い理解 教育デザイン研究第 11 号(2020 年 1 月). 6.
(7) 喫煙防止教育の効果の一考察 できるような過程を組みこんだ授業構成とする。そうす. 今後は、学生達の中でディスカッションし、より効果. ることで、児童生徒の理解は一層深まることになり、内. 的な喫煙予防教育を立案できるよう授業改善に努めてい. 的変化に繋がる保健指導となるのではないだろうか。. きたい。. 2018 年度の授業では、 学生達の自己の経験をまとめた 実態や必要な知識の講義の後に、学生達の取り組める実. 引用文献. 験を取り入れた。2019 年度の授業では、講義の後に自分. 後藤美和・高野義久・高濱寛、橋本洋一郎、長谷川由佳、. が養護教諭として講義を行うことを想定した指導案作成. 波多江崇 (2015).中学校 1 年生を対象とした喫煙に. を組み込んだ。2018 年度よりも 2019 年度の授業後の感. 対する意識と喫煙防止授業の評価 社会薬学 Vol.34. 想の方が、教育目標が多数述べられていた。喫煙防止教. No.1 pp.34-39. 育においては、子ども達が 1 本目を吸わない、または吸. 加納亜紀・上村弘子・田嶋八千代・高橋香代 (2016). 養. うことを止めるという行動変容ができるかが大きなカギ. 護教諭が行う保健指導の現状. となる。. 保健指導の校種間比較- 学校保健研究 Vol.57. 松本・福富・原山・古賀・岩坂(2005)は、健康教育にお. No.6. -個人及び集団の. pp.323-333. いては、単に知識を習得するためにだけ行われるもので. 国立がん研究センター (2016). 喫煙と健康 厚生労. はなく、自分自身を大切にし、高めることが大切である. 働省 喫煙の健康影響に関する検討会報告書(平成. という内面に根ざした価値観を身につけ、知識を行動に. 28 年 8 月)の概要を知りたい人のために. 生かす態度を育てることが必要であると述べている。. 松本敬子・福富敦子・原山照美・古賀由紀子・岩坂いず. 子ども達自身が自分を大切に思う気持ちを育めるよう、. み (2005) 養護教諭の授業づくりー基礎から実践. また学んだ知識を活用したいと思い、実際に行動に移す. までー 東山書房. ことを実践する教育が必要であると考える。 長田・友川(2016)は、 学校教育の中で行う保健学習は、. 文部科学省 (2018)..高等学校学習指導要領解説 保健 体育編・体育編、http://www.mext.go.jp/compon. 児童生徒が保健に関する知識や能力を身につける最良の. ent/a_menu/education//micro_detail/_icsFiles/afieldfile//. 場である。保健学習を実施するために必要な能力を指標. 2018/07/13/1407073_07.pdf. として掲示し、学生に意識させる必要があると述べてい る。 また、加納ら(2016)は、養護教諭は子どもの発達段階 や健康課題に応じて、その指導の対象や指導方法、指導 内容を柔軟に選択し、多様な保健指導を展開すると述べ ている。様々な価値観を持つ児童生徒達に、将来、喫煙 防止教育をおこなわなければならない。短期大学生であ る学生達は、学生個々が様々な家族背景の中で生活して きた。小学校・中学校・高校・本学以外の短期大学・大 学・専門学校という経験してきた中で学んできたことも 異なっている。学生一人ひとりの持つ意見を集団の中で 活かせる指導方法の工夫が必要であると考える。. 長田光司・友川幸 (2016). 保健学習の指導力向上のた めの模擬授業の効果と課題 ―省察の変容に着目し て―学校保健研究 Vol.58 No.1. pp.33-38. 日本学校保健会 (2010). 喫煙、飲酒、薬物乱用防止に 関する指導参考資料 小学校編 日本学校保健会 (2011). 喫煙、飲酒、薬物乱用防止に 関する指導参考資料 中学校編 日本学校保健会 (2012). 喫煙、飲酒、薬物乱用防止に 関する指導参考資料 高等学校編 日本教育保健学会 (2016). 教師のための教育保健学 子どもの健康を守り育てる実践と理論 参考文献 日本学校保健会 (2018). 学校保健の動向 平成 30 年. Ⅵ.今後の課題 今回の授業の中で各学生に指導案の立案までを実施し てもらった。しかしながら、その後その指導案を発表す る。あるいは、その指導案に基づきグループワークする 時間を設けることができなかった。. 度版 日本学校保健会 (2002). 喫煙、飲酒、薬物乱用防止に 関する用語事典 藤宮正規・石川哲也・川畑徹朗・中村晴信・辻本悟史・ 桑原恵介・増山隆太 (2011). 飲酒、喫煙を含む青 教育デザイン研究第 11 号(2020 年 1 月). 7.
(8) 喫煙防止教育の効果の一考察 少年に対する薬物乱用防止教育における Normative Education の有効性 学校保健研究 Vol.53 No.1. pp.71-74. 中村正和 (2015). 国レベルのアドボカシー:研究成果 を活用タバコ政策への提言 日本健康教育学会誌 Vol.23 No.3 pp. 224-230 大窄貴史・田川則子・家田重晴 (2010). 看護学生を対 象とした喫煙防止教育の効果 -喫煙への寛容度及 びタバコ対策への参加意識等について- 学校保健 研究 Vol.52 No.2 pp.159-173 坂田敦子・鬼頭英明・西岡伸紀 (2018) 小学校 3、4 年 生を対象としたセルフエスティーム育成プログラム の評価 学校保健研究 Vol. 60 No.1 pp.18-25 上田裕子・鬼頭英明 (2017). 看護学生へのライフスキ ル教育を踏まえた薬物乱用防止教育の教育直後と 3 か月後の教育効果の検証 学校保健研究 Vol. 59 No.5 pp.367-378 山本眞由美・田中生雅・佐渡忠洋・清水克時 (2010). 大 学の禁煙推進の取り組みと学生の喫煙率変化 - 10 年の取り組みを経過して- 学校保健研究 Vol.52 No.1. pp.71-74. 教育デザイン研究第 11 号(2020 年 1 月). 8.
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