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転移性肺癌に対する全肺照射法 利用統計を見る

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Academic year: 2021

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(1)

転移性肺癌に対する全肺照射法

山梨医科大学放射線科

大西洋 尾形均 内山暁

国立病院医療センター放射線治療部

戸板孝文 宇野隆 御厨修一

        はじめに  肺転移は全ての癌にとって大きな位置を占め、 また死因としても重要である.多発性肺転移を来 した時には、原発部位が未制御であったり、他臓 器の転移を伴っていることが多く、癌の終末期と なる場合がほとんどである。これに対し、治癒去 としては、手術適応はまず考えられず、化学療法 か放射線療法がとられる場合が多い。しかし、化 端法は全身のダメージが大きく、末期癌患者に 結果的にはさらに追い打ちをかけてしまうことが ある。また放射線治療は肺の放射線耐容度の低さ から局所の照射のみ適応があり、両肺に拡がった 場合は適応がないとされることが多かった。そこ で我々は、両肺の多発性転移性肺癌に対し全肺照 射を試み、若干の文献的考察を加えたので報告す る。 患者: 診断: 既往: 経過:

    症例 1

K.S.殿46歳女性

直腸癌多発性肺転移

子宮筋腫38歳  直腸癌45歳

昭和63年、血働S出現し直腸癌の診断に てMiles法により手術を受けた。平成元年7 月、咳と血疲が出始め徐々に増強した。胸 部単純写真とerにて両肺野に4粒状陰影を 多発性に認めた(図1A).鎮咳剤として リン酸コデイン60㎎が投与されたが、咳の 改善は認められなかった。7月19日より8月 16日まで両側全肺野(図1B)に対し一回 0.8Gyで20回合計16Gyの放射線治療を施行し た。放射線治療終了後、咳は著明に改善し 疲の量はやや少なくなった。胸部単純写真 上は粒状陰影は明かな改善が認められなか

った(図1C)。また血液中MH値は照射中

軽度低下したが その後再び増加した。照 射による白血球や血4瀬の著明な減少はみ られなかった。咳,疲の量はしばらく軽快 していたが、その後胸部単純写真上腫瘤陰 影が徐々に悪化し、9月に入り呼吸困難が出 現した。別に再発した骨盤内腫瘤によるイ レウス状態を併発し、全身状態が悪化、9月 25日永眠した.  臨床所見の推移を図2に示す. 患者: 診断: 既往: 経過:

    症例 2

76歳 男性 直腸癌多発性肺転移

直腸癌71歳

昭和59年直腸癌のため直腸切断術,人工 肛門造設術を施行した。平成元年9月頃、局 所に腫瘍が再発し膀胱に侵潤して血尿,排 尿困難が出現した。同時に特に症状はなか ったが、胸部単純写真で両側肺に肺転移と 考えられる多発性結節状陰影が認められた。 また少量の両側胸水が存在し、低蛋白血症、 心不全等はないため肺転移による胸水と考 えられた(図3A)。11月28日より12月25 日にかけて、両側全肺野に一回1Gyで20回, 合計2eGyの照射を施行した。胸部単純写真 上、個々の結節はわずかに縮小し胸水は消

失した(図3C)。血液中MH値も照射前1

048U/1であったのが照射後500U/1まで低下 した。血液中CM値は局所の増悪のためか 110㎎ん1から190ng/m1へと増加した。照射 による白血球や血小板の低下はみられなか った。尚12月19日から38°C台の発熱がみら れ、胸部単純写真で左上肺野に間質性の網 状陰影が認められた(図3B).抗生剤に 一55一

(2)

照射前

リニアックグラフイー

照射後

図1症例1

  46歳女性

  直腸癌多発性肺転移

図2  臨床症状・ 検査値の変化

7!7   7!17   7!27   8/01   8!10   8!22   9/1   9/19 咳  + 十十 十十十 綴  + 十十 十十十

LDH

1708

1450   1675

2606

2907

一56一

(3)

反応せず培養検査でも陰性であったことか ら放射線性肺炎が考えられた。12月31日よ り翌年1月3日までリンデロン蝿を静注し たところ解熱し肺の間貫性異常陰影も消失 した。その後1カ月が経遇しているが肺の結 節状陰影は数,大きさとも変化が見られず、 咳,疲,呼吸困難などの症状も出現してい ない。

A 照射前

B 照射直後

C 照射後2週

症例2

76歳男性

直腸癌多発性肺転移

         考察

 転移性肺癌の全肺放射線治療は、肺の放射線に 対する耐容性の低さから線量が制限されるため、 一定の治療法としては確立していないのが現状で ある。放射線性肺炎を生じる線量は通常の分割照 射(一回1.5’v2.06y)では200cr2の照射野で406 y、全肺照射では20Gy程度とされている1已これに 対し、腫瘤を形成した悪性腫癌を制御するには少 なくとも50Gyの放射線治療が必要と考えられてい る.しかし、これよりもっと少ない線量で有意な 治療効果を得たとする報告がある.Pairat2,は47 例の転移性肺癌を対象とし、87.2Xの症状改善(著 効59.6X,軽快27.6X)、X線写真上74.5Xの効果( CR 27.7X,m46.欲)を得たと報告している◆照射 法は両側全肺に一回1.06Gyで25回総線量26.5dVを 照射している.組織別には放射線感受性の高い精 上皮腫,悪性リンパ腫,ウィルムス■瘍で50似上 の高いC曄であった.また注目すべき1ま肩平」波 癌と腺癌を比べた場合、→曽には放射線感受性の 低い腺癌の方が効果が高かったとしている点であ る(表1)。Pairatはこの理由を腺癌では小腫癌 性の多発転移を来すため、肺胞からの酸素が充分 行き渡り、酸素効果により放射線の効果が強めら れるのではないかと考察している.肺転移巣が原 発巣より小さい線量で縮小するのは、肺という特 異的な環境における酸素効果によると考えられる. 一57一

(4)

この報告では放射線性肺炎の発生率は14.9Xであり いずれも抗癌剤併用例であった.最後にPa iratは 転移性肺癌の治療法として全肺照射法は化学療法i に比し安価で副作用の小さい治療法であるとして 推奨している。我が国では国立病院医療センター の戸板ら3)が子宮体癌の両肺多発性転移に対し全 肺照射を行い、ほぼ完全に転移腫瘤を消失させた 症例を経験している(図4)。これに対し、Marg olisら4)は、ユーイング肉腫,ウィルムス腫瘍, 悪性リンパ腫といった放射線感受性の高い転移性 腫瘍に関しては高い治癒率があったが、その他の 腫瘍にっいてはあまり治療効果が認められなかっ たとしている。また、kharamらS》は、種々の肉腫 や精上皮癌を対象に、抗癌剤と全肺照射を併用し て、50Zの〔R率を得ている.これらの報告は全肺照 射に関してはいずれも15∼25Gyを2∼3週かけて照 射している。その他、転移性肺癌に対する全肺照 射法はいくっか報告されている6’le)が、有意な生 存期間の延長は認められなかったとする報告が多 かった。しかし、我々は画像上著明な改善がみら れなくとも症状が軽快した例を経験しており(症 例1)、生存期間の延長とは別に、末期癌患者の Quality of Lifeを向上させることが出来ると考え ている。  全肺に照射した場合に生じる放射線性肺炎の発 生率は、一回1.5∼2.OGyの通常照射で合計20Gy程 度であれば5似下とされているD。また放射線性 肺炎は一回の照射量の大きさに強く依存するとさ れている11)e抗癌剤の併用により全肺照射の効果 は向上するが、放射線性肺炎も起こりやすくなる。 Margolisら4}はアクチノマイシンDを用いた場台 15Gyが上限であるとしている。感染の合併も放射 線性肺炎を生じやすくすることが分かっているt2 》。組織学的には照射後2∼8週をおいて、肺胞内へ の滲出液の貯留・炎症細胞の遊出・肺胞上皮脱落 ・毛細血管の充血・肺胞中隔の膨化がみられる。 症状は発熱・咳鰍・喀疲・呼吸困難などがみられ・ X線的に肺炎から肺線維症に移行する所見が認め られる。また、小児の全肺照射の副作用としては、 上記の他に肺容積とコンプライアンスの減少・胸 郭形成障害が生じるとされている13) e−「般には放 射線性肺炎を生じても、副腎皮質ステロイドが有 効であり、抗生剤や気管支拡張剤を使用すること により重篤な経過をとることは少ない。  文献報告を総合すると、放射線性肺炎を生じる ことなく治療効果を得るためには、一回1.5Gy以下 で総線量20Gy程度、抗癌剤を併用する場合は総線 量15Gy程度が適当であると考えられる。しかし我 々の経験では、一回1.OGy,総線量20Gyで重症では ないが放射線性肺炎を経験しており(症例2)、 症例を重ねて適正な線量を補正していきたい。現 在のところ症例数は少ないが、症例1では症状の 改善があり、症例2では胸水の消失と腫瘤の軽度 縮小,進行の停止が得られたことから、全肺照射 法は肺転移を生じた末期癌患者のための有意義な 治療法であると考えられた。また転移性肺癌だけ ではなく、原発性肺癌に関しても手術不能例や化 学療法抵抗性のびまん性浸潤例にも適応があると 考えられる。 伽任$P。・記。fp・㎞。卿m・t・・t・記・t。岨i・ti。・怒雛鵬dbyX−・ymm・・fth・Che$tat two weGk$aRer tτeatm●nt. Mstology Total No. Cornplete treated   or》50%・     regression 25−50%       No        Pro−−      No data      dhange      gression     available regrcWhon Sq.㏄皿Ca. Adenoca「Cinoma Rβticulum cell Ca. Undiff. Ca. Hod8㎞ゴ3曲改鵬 Seminoma Other$ 12 8 7 5 3 3 9 0 3 3 1 1 3 2 6 4 4 2 2 0: 4 5 0 0 1 0 0 0 1 0 0 0 0 0 2 0 1 0 1 0 0 1 Total 47 13 22 6 3 3

表1Pairat2,の文献より引用

一58一

(5)

紗 ’“

A 照射前

1/1・・

B 照射後

、・

リぷ,、

図469歳女性

子宮体癌多発性肺転移 注)経過中、左但胸水貯留を来たし、アドリアマ イシンにて胸膜癒着術を行なっている。        繍   転移性肺癌に対する全肺放射線治療法を、当科 での経験をもとに文献的考察を含めて紹介した。

文献

1) Newton. 【.A., and Spittle, H.F. :  An analysi8  0f 40 cases  treated by  total  thoracic  imd−  iation, Clin. Radiel. 20 :  19−22, 1969. 2) Pairat, T. : 愉ole−Lun‘Irradiation in the  Treat■ent of Pul■onary Hetastases. J. Hed. 舶8.  Thailand. 61: 681−688 3)pers㎝al随●血cat1㎝ 4)ぬrgolis, L.冒.,Phillips, T.L.: 冒hole−Lu㎎  Irradiati㎝  for Hetastatic Tu■or, 脚IOMGV 93 :  ll73∼1179・  1969 5) 愉1ara■, H,D., Phillips, T.L., Jacobs, E.H. :  Co■bination  che■otherapy and冒hole  lung  lrra−  diation for puL■onaryロetastases fro●sarcesas  and gemirぬ1 cell tu薗ors of the testis, Cancer  34:136 − 142,1974 6) 〔袖x,・」.D., Gingerelli, F., Rea■, N.∀., and  肖aier, 」.G.:  Total Pu1■onary Irradiation for  Hetastases fro■ Testlcular Carcina■a. Radiology  1972, 105:163 7) Martin, J., and Rickha■. P、P.: Pul■onary neta−  stases in Wil■,s Tueour:Trefitロent and Prognosis. 8) Lo, T.C.H., and Son, Y.H.: Radiotherapy tor  Testi斑lar Tロours Hetastasized to Ltmg. 旭. 」.  Roentgenol. 1976, 126:475.  9) daldrell, 胃.L.:  Electrive tholeLung Irr副ta−   ti㎝. Radio1㎎y. 1976, 120:659. 10) Hincer, F., 80tstεin, C., SChvarz, G●.Zacharo−   poulos, 0., and Hc Dou‘al1, R.: lioving StriPs   Irradiation ln the Trea鳩ent of Extensive Neopl−   astic Di8ease in the Chest. 舶. 」. Roentgeno1.   1970, 108:278 11) Rubin, P.: The Franz Buschke Lecture: Late   effects of che■otherapy and radiatien therapy:   a new hypothesis, Int. J. Radiat. Oncol. 8iol.   Phys. 10:5−34, 1984. 12) Moss, W.T., Haddy, F.」., and Sweany, S.K.:   so田e Factors Altering the Seve1「ity of Acute Rad−   iation Pnev■onitis:  Variation with Corti80随,   Heparin, and antlbiotics.Radiology 75:50−54,   July l960, 13)Mr Benoist, J Le■erle. R』ean. P Rufin, P Sch−   ein但a∫m, J Paupe.: Effects on pul口onary functi−   on of whole lung irradiati〔m for Wil●’5 tu■our   in children, Therax:  37:175−180, 1982. 一59一

参照

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