病理診断アトラス(1) : 中枢神経系1:腫瘍性病変
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(2) 8. 図 1 診断のアルゴリズム. 図 2 腫瘍細胞形態による鑑別診断. 病理診断は通常の外科病理以上に必要となることが. 細と画像所見である. 1.診断の手順. ある.しかし,脳神経外科における迅速診断を完全. 診断のアルゴリズムを図 1 に示す.このシェーマ. に施行するのは施設としては困難であるが,現場で. に則って診断方針を立てる.病理診断は基本的には. はその要求度は大きいと考える.. 手術時の組織標本が主体であるが,その摘出部位ば. 診断マニュアルは臨床所見や画像所見を充分に主. かりでなく詳細な手術時の情報が記載されてないと. 治医が病理依頼状に記載するか,術前カンファレン. 診断が困難である.生検標本は基本的には腫瘍の確. スで病理医に知らせることも重要である.摘出組織. 定診断は難しいが放射線画像所見などを加味し最終. は HE 染色,鍍銀染色などを行い,必要な免疫組織化. 診断がつけられる.. 学的染色を施行し最終診断とする.最近は増殖能の. 病理診断には通常の染色方法と多数の免疫組織学 的染色を必要とする.これらは組織の多様性と亜型. 検討は必須である.さらには FISH 法などによる分 子生物学的検索も要求される.. の多さによると考えなければならない.また,迅速 ―106―. 診断の要点は,①腫瘍性病変か,②脳実質内腫瘍.
(3) 9. 図 3 腫瘍組織の構造パターン. 図 4 ロゼットによる未分化神経膠腫の診断. か,③組織の悪性度,④増殖能(MIB-1)の値,など. meningioma,⑤ pituitary adenoma,などがあり,こ. を記載する必要がある.. れらは腫瘍細胞特異的細胞マーカーやその他の診断. 2.腫瘍細胞形態. 基準で鑑別すべき腫瘍であるが,鑑別診断には重要. まず,腫瘍細胞形態で比較的明るい細胞を示す腫. な要素の一つである.. 瘍の鑑別診断を図 2 に示す.すなわち細胞形態が. 3.腫瘍組織. clear cell pattern or perinuclear halo or honey-comb. さらに腫瘍組織には rosette,whorl,palisade,. structure を呈する腫瘍には,① oligodendroglial tu-. などの組織構造のパターン化などがあり,これを理. mor,② central neurocytoma,③ ependymoma,④. 解する(図 3).すでに Zülch(1965)は pattern analy-. ―107―.
(4) 10. 表 1 WHO a ndSt . Anne / Ma yo WHO gr a de. WHO de s i gna t i o n. I. Pi l o c yt i ca s t r o c yt o ma MI B1= 0~ 3 . 9( me a n1 . 1 %) Di f f us ea s t r o c yt o ma MI B1< 5~ 7 . 5 % Ana pl a s t i ca s t r o c yt o ma MI B1= 5~ 1 0 % Gl i o bl a s t o ma MI B1= 1 5~ 2 0 %. I I I I I I V. De s t i na t i o n. Hi s t o l o gi c a lc r i t e r i a. As t r oGI I. Onec r i t e r i a , us ua l l ynuc l e a ra t ypi a. As t r oGI I I. Twoc r i t e r i a , us ua l l ynuc l e a ra t ypi aa nd mi t o t i ca c t i vi t y Thr e ec r i t e r i a , nuc l e a ra t ypi a , mi t o t o s e , e ndo t he l i a lpr o l i f . a nd/ o rne c r o s i s. As t r oGI V. 表 2 当科での通常の免疫染色 脳腫瘍 星細胞系腫瘍. 乏突起膠腫. 上衣腫. 髄芽腫. 松果体細胞腫. AT/ AR. 免疫染色. 悪性度. 脳腫瘍. 免疫染色. 悪性度. GFAP S1 0 0 Vi me nt i n Ol i g2 Ne uN GFAP Ol i g2 Ne uN Vi me nt i n GFAP S1 0 0 Vi me nt i n EMA Cyt o ke r r a t i n. MI B1. 神経細胞性腫瘍. GFAP S1 0 0 Vi me nt i n Ne uN Syna pt o phys i n NF NSE βt ubuki n GFAP, S1 0 0 Vi me nt i n Ne uN, NF Syna pt o phys i n NSE βt ubuki n. MI B1. GFAP, S1 0 0 Vi me nt i n Ne uN Syna pt o phys i n NF SMA GFAP, S1 0 0 Vi me nt i n Ne uN Syna pt o phys i n NF, SMA. MI B1. MI B1. GFAP S1 0 0 Vi me nt i n Ne uN, EMA Syna pt o phys i n NF, SMA Cyt o ke r r a t i n. MI B1. GFAP Vi me nt i n EMA GFAP S1 0 0 Vi me nt i n GFAP Vi me nt i n EMA, CD3 4 GFAP L2 6 (CD2 0 ) UCHL1 LCA GFAP Vi me nt i n PLAP, c ki t HCGβ S1 0 0 Cyt o ke r r a t i n. MI B1. 神経節膠腫 MI B1. 髄膜腫. シュワン細胞腫. MI B1. 血管性腫瘍. 悪性リンパ腫. 胚細胞性腫瘍. 脊索腫. MI B1. MI B1. MI B1. MI B1. MI B1. MI B1. sis に基づく脳腫瘍の組織診断の普遍化の重要性を. moma , astroblastoma , pituitary adenoma , ③. 述べている.特にロゼットは未分化神経膠腫の診断. Flexner-Wintersteiner rosette:retinoblastoma,さ. において極めて重要である.すなわち,①偽ロゼッ. ら に ependymal rosette で は 腔 に 面 し た 部 分 は. ト Homer-Wright. EMA 陽性である(図 4) .. rosette : medulloblastoma ,. PNET,pineocytoma,pineoblastoma,neuroblas-. 4.悪性度. toma,pineocytomatous rosettes,②血管周囲性偽. 通常,神経膠腫での悪性度は WHO and St. Anne!. ロ ゼ ッ ト perivascular pseudorosette:ependy-. Mayo の分類(表 1)を用いているが,脳腫瘍は悪性. ―108―.
(5) 11. 図 5 内視鏡生検組織―悪性神経膠腫. ローン名であるが,熱処理を加えることによってホ. 表 3 WHO 2 0 0 0Cl a s s i f i c a t i o no fme ni ngi o ma s. ルマリン固定標本でも反応する最初の抗体として非. WHO Gr a de1 Me ni ngi o t he l i a lme ni ngi o ma Fi br o us( f i br o bl a s t i c )me ni ngi o ma Tr a ns i t i o na l( mi xe d)me ni ngi o ma Ps a mmo ma t o usme ni ngi o ma Angi o ma t o usme ni ngi o ma Mi c r o c ys t i cme ni ngi o ma Se c r e t o r yme ni ngi o ma Lympho pl a s ma c yt e r i c hme ni ngi o ma Me t a pl a s t i cme ni ngi o ma WHO Gr a de2 Cho r do i dme ni ngi o ma Cl e a rc e l lme ni ngi o ma At ypi c a lme ni ngi o ma WHO Gr a de3 Pa pi l l a r yme ni ngi o ma Rha bdo i dme ni ngi o ma Ana pl a s t i cme ni ngi o ma. 常に有名になったため,現在「ミブワン MIB-1」が Ki-67 の代名詞的に使用されている. 脳実質内腫瘍すなわち神経上皮性腫瘍はその分化 により診断が異なることから,神経膠細胞か,その 中間か,神経細胞性腫瘍かとの鑑別も重要な診断基 準である.この際に各種の免疫組織化学的染色が必 要となる.当科ではすべての脳腫瘍に対して HE 染 色後,鑑別に必要な各種の免疫染色を施行している (表 2). 5.脳腫瘍の生検組織診断の問題点 生検時の病理診断は組織が微小であり診断困難な 場合が多い.図 5 は松果体部の腫瘍であり,胚細胞 腫,髄膜腫などが考えられたが内視鏡による生検組 織では神経膠腫で悪性度の高い腫瘍と診断されるも. 度分類がその他の臓器の癌などと異なるために各種. のの最終診断は付けがたい. 各種脳腫瘍の病理診断. 腫瘍個々に増殖能を検索し,病理学的悪性度と併記. 脳腫瘍取り扱い規約第 2 版(2002)の分類は WHO. することが多くなっている. すなわち MIB-1 染色による MIB-1 値%(図 5)で. 分類 2000(表 3)に準拠したものであり,これに準. ある.Ki-67(MIB-1)とはもともと白血病患者の血. じて頭蓋内腫瘍,特に神経上皮性腫瘍(神経膠腫)を. 液中の自己抗体として発見された抗体名である.こ. 中心に解説する. 1.Neuroepitherial tumors:神経上皮性腫瘍. れが認識する 345kD および 395kD のいわゆる Ki67 抗原(gene:10q25-qter mki-67)は細胞増殖周期. グリア細胞はastrocytes,oligodendroglia,epen-. の主に G1, さらに S から M 期までの細胞の核内に. dymal cells お よ び microglia の 4 種 類 に 分 類 さ れ. 認められ,その陽性率(labeling index)はフローサ. る.4 種 類 の グ リ ア と そ れ ら の 未 分 化 細 胞 か ら. イトメトリーなどでのデータとの相関がよいことか. glioma は発生する可能性があるが,microglia 由来. ら細胞増殖能の指標とされている. 「MIB-1」はク. の腫瘍は報告されていない.. ―109―.
(6) 12. 図 6 As t r o c yt i ct umo r s. 結節性硬化症に合併し,側脳室と第 3 脳室に多発. A)Astrocytic tumors:星細胞系腫瘍(図 6) 限局型の localized astrocytomas と,び慢性に浸. する脳室壁の腫瘍である.腫瘍細胞は gemistocytic. 潤する傾向 の 強 い 通 常 型 の diffusely infiltratin as-. astrocyte に類似した大型の腫瘍細胞であるが,glial. trocytomas に分ける.. fibrillary acidic protein(GFAP)は一部の細胞に陽性. 1)Localized astrocytoma. で,GFAP 陰性の細胞がむしろ多く,また,ニュー. a.Pilocytic astrocytoma(WHO grade I). ロフィラメント陽性となる腫瘍細胞もあり,神経細. 毛髪様の細長い突起を持つ piloid cells からなる. 胞に類似しているものがある. 結節性硬化症には皮質結節がみられるが,この際. 腫瘍である.小児の小脳,視神経,視床下部,脳幹 が好発部位で,細胞が密に存在する部分と強い水腫. に出現する巨細胞でも同様の所見が観察される.. 変性を伴う部分が交代性に混在する biphasic pat-. 2)Diffusely infiltrating astrocytomas. tern が特徴で あ る.Granular body や Rosenthal fi-. 通 常 は grade II で あ る が,こ の diffuse astrocytoma から anaplastic astrocytoma(grade III)を経て. ber などの変性構造物がみられる. Pilomyxoid astrocytoma は piloid cells か ら な る. glioblastoma(grade IV)へと変化するといわれてい. 腫瘍で,間質に myxoid matrix が豊富で,biphasic. る.最初から glioblastoma として発症する例は pri-. pattern や Rosenthal fiber がみられない腫瘍で悪性. mary glioblastoma といわれ,良性から悪性化した. 度がやや高い.. glioblastoma は secondary glioblastoma といわれて. b.Pleomorphic. xanthoastrocytoma ( PXA ). いる. a.Diffuse astrocytomas(WHO grade II). (WHO grade II) (図 7). 神経膠細胞の星細胞類似の細胞が脳内でび慢性,. 若年者の大脳表層部にしばしば囊胞を伴って発生 する限局性の astrocytoma で, 壁在結節状である.. 浸潤性に発育する腫瘍である.以下の 3 型に分類さ. 組 織 学 的 に は 腫 瘍 細 胞 の 多 態 性,xanthomatous. れる.. change,間質の線維形成などが特徴である.Eosino-. ① Fibrillary astrocytoma:繊細な好酸性細胞 突. philic granular body が多数みられ,Rosenthal fiber. 起を伸ばす多極性ないし双極性の腫瘍細胞からなる. を認めることもある.側頭葉などでは pilocytic as-. 腫瘍. ② Protoplasmic astrocytoma:稀であり,胞体が. trocytoma との鑑別を要する. c.Subependymal giant cell astrocytoma(SEGA). 淡く短い突起を有し,微小囊胞を形成する. ③ Gemistocytic astrocytoma:好酸性の広い胞体. (WHO grade I) ―110―.
(7) 13. 図 7 Pl e o mo r phi cxa nt ho a s t r o c yt o ma (PXA). 図 8 右前頭葉腫瘍. を持つ大型の腫瘍細胞がび慢性に増殖する腫瘍であ. droglial components であり,星細胞腫が主体で,増. る.細胞には核の大小不同があり,ごく少数の核分. 殖能はMIB-1=5.6%とgrade IIではやや高値である.. 裂像を認め,anaplastic astrocytoma になることもあ. MRI 上で従来からび慢性星細胞腫と診断されて いた症例には悪性度の高い腫瘍や,oligodendroglial. る. 図 8 は右前頭葉腫瘍で術前診断は比較的良性の神. tumor がしばしばみられる.. 経膠腫である.本例はいわゆるび慢性星細胞腫であ. b.Anaplastic astrocytoma(WHO grade III). るが,最終診断は diffuse astrocytoma with oligoden-. Anaplastic astrocytoma は細胞密度の増加,核異. ―111―.
(8) 14. 図 9 Gl i o bl a s t o maの画像および組織の多様性. 図 10 Ma l i gna ntgl i o ma :f r o z e ns e c t i o n. 型の明瞭化,核分裂像の増加,血管の増生と内皮細. 的な組織所見であるといわれている.これらの組織. 胞の腫大などがみられる腫瘍型である.しかし,星. 像は脳腫瘍全体の組織診断にも重要な病理学的所見. 細胞腫の特徴が残存する腫瘍である.. なのでよく知る必要がある.Glioblastoma は極めて. c.Glioblastoma(WHO grade IV). 多彩な組織像を呈するので部分摘出では比較的良性. 最も悪性度の高いグリオーマであり,腫瘍細胞は. の神経膠腫の部分も認める(図 9∼11). Glioblastoma に は 原 発 性 の glioblastoma と. 顕著な多態性,退形成,核異型を示す.核の分裂像, 間質の血管は数の増加とともに血管壁を構成する内. anaplastic astrocytoma が 次 第 に glioblastoma の 要. 皮細胞や平滑筋細胞が壁内で増殖し,腎糸球体様の. 素も有する二次性の glioblastoma が診断される.そ. 構造 glomeruloid structure を作っている.腫瘍組織. の亜型として,giant cell glioblastoma,gliosarcoma. の壊死像もみられ,壊死巣のまわりに紡錘形の腫瘍. などがある. B)Oligodendroglial tumors:乏突起膠細胞系腫. 細胞核が柵状 に 配 列 す る 所 見 nuclear pseudopalisading around necrotic foci は glioblastoma に 特 徴. 瘍(図 12). ―112―.
(9) 15. 図 11 Gl i o bl a s t o maにおける画像と腫瘍組織像との関係 周辺では血管増生,腫瘍細胞浸潤(+).. 図 12 Ol i go de ndr o gl i a lt umo r. この腫瘍は最近抗腫瘍剤によく反応するので,そ の診断が重要になりつつある.病理組織診断と分子. ず つ 集 塊 を 作 っ た り,柵 状 の 配 列 を 示 し polar spongioblastoma に類似の像を呈することもある. 2 ) Anaplastic oligodendroglioma ( WHO grade. 生物学的診断が併用されている.. III). 1)Oligodendroglioma(WHO grade II) (図 13) 組織学的には円形核が細胞の中心にあり,核周. 細胞密度が高く,腫瘍細胞に異型と核分裂像が認. 囲の細胞質は極めて淡明で,halo のようにみえる. められる.毛細血管がよく発達し,血管内皮細胞の. (perinuclear halo,fried-egg appearance).この細胞. 増生もしばしば認められる.核の柵状配列を伴う壊. は敷石状に密に配列し,細胞密度は比較的高い.こ. 死巣が出現する症例もある. 3)Oligoastrocytoma(WHO grade II),anaplastic. のような特徴的な組織像は,honey-combed structure などと呼ばれている.この細胞間に minigemis-. oligoastrocytoma(WHO grade III). tocytes と呼ばれる星細胞 が み ら れ る.Mixed oli-. 基本的には oligodendroglioma 系統の腫瘍である. goastrocytoma にはしばしば出現する.細胞が数個. が,腫瘍性格を持った astrocyte が関与していると. ―113―.
(10) 16. 図 13 Ol i go de ndr o gl i o ma. 図 14 Epe ndymo ma. 管に向かって繊細な突起を伸ばしており,血管周囲. これらの名称が用いられる. C)Ependymal cell tumors:上衣細胞系腫瘍. 性偽ロゼットを形成する.この場合,腫瘍細胞の核. 1)Ependymoma(WHO grade II) (図 14). と血管は離れており.いわゆる細胞突起のみからな. 小児に多く,第 4 脳室が好発部位であるが,脊髄. る無核帯がみられる.EMA 陽性顆粒を認めること. 下部,終糸などにも発生する.脳室内に突出する腫. がある.. 瘤を形成する.組織学的には微細顆粒状のクロマチ. 亜型として. ンを持つ類円形核と,境界の不明な弱好酸性細胞質. a.Cellular ependymoma:細胞性上衣腫,細胞密. を持つ細胞が,比較的密に増殖している.細胞は血. 度が高く上皮性配列を欠く.. ―114―.
(11) 17. 図 15 Ana pl a s t i ce pe ndymo ma (MI B1 =1 4 ). b.Papillary ependymoma:乳頭性上衣腫,乳頭. 成人の第 4 脳室が好発部位である.腫瘍細胞は立方 上皮の形態を示し,血管に富む間質に添って乳頭状. 性細胞配列が目立つ. c.Clear cell ependymoma:明細胞上衣腫,この. に配列する. 2)Choroid plexus carcinoma:脈 絡 叢 乳 頭 癌. 腫瘍は他の腫瘍系(oligodendroglioma,central neu-. (WHO grade III). rocytoma)との鑑別が重要である.. 小児に稀にみられるもので,細胞密度が高く,核. d.Tanycytic ependymoma:長細胞上衣腫,繊細. 異型が著明で壊死を認める.乳頭状配列が不明瞭に. な細長い突起を伸ばす紡錘形細胞. e.Myxopapillary ependymoma:粘 液 乳 頭 状 上. なる. E)Glial tumor of uncertain origin:組織由来不明. 衣腫(WHO grade I),成人の終糸に発生する特殊な 上衣腫で,腫瘍細胞が硝子様肥厚を示す血管結合織. のグリオーマ. の周囲に乳頭状に配列し,間質には粘液反応陽性物. 1)Astroblastoma(WHO grade IV). 質が認められる.. 極めて稀な腫瘍で,腫瘍細胞が太い突起を血管に. f.Subependymoma:上衣下腫(WHO grade I),. 向かって伸ばして,血管周囲性偽ロゼットを作る所. 成人の第 4 脳室,側脳室などの壁に稀に発生する発. 見(astroblastic formation)が腫瘍全体にみられるも. 育の遅い腫瘍である.豊富な線維性基質の間に小型. のと定義されている. 2)Gliomatosis cerebri(WHO grade IV). の腫瘍細胞を巣状に認める.. 大脳膠腫症は脳内に極めて広範な浸潤を示す as-. 2)Anaplastic ependymoma(WHO grade III) (図. trocytoma で,明瞭な腫瘤を形成しない.生検のみで. 15) 退形成上衣腫は上衣腫の特徴を示す腫瘍である. は診断困難であるが,CT,MRI 等の画像所見で脳. が,腫瘍細胞が異型を示し,核分裂像,壊死巣,血. 内に広範に浸潤する所見が捕えられ,かつ生検でび. 管内皮増殖などを随伴する悪性型である.. 慢性に浸潤する腫瘍が認められれば,gliomatosis cerebri として診断されている.. D)Choroid plexus tumor. 3)Chordoid glioma of the third ventricle. 1)Choroid plexus papilloma:脈 絡 叢 乳 頭 腫. 第 3 脳室脊索腫様膠腫は Brat らによって 1998 年. (WHO grade I) 脈絡叢の構造を模倣した腫瘍で,小児の側脳室と. に初めて報告された腫瘍である.組織学的には均一. ―115―.
(12) 18. な上皮様細胞が豊富な粘液様基質の背景の中に集団. Melanotic schwannoma:メラニン性 シ ュ. や細胞索を作りながら増殖し,脊索腫に類似の構造. ワン細胞腫. を 示 し て い る.腫 瘍 細 胞 は 免 疫 組 織 化 学 的 に. Plexiform schwannoma:蔓状シュ ワ ン 細. GFAP,vimentin,S-100 などが陽性である. また,. 胞腫. MIB-1 標識率は 1% 程度の低値を示している.間質. B)Neurofibroma:神経線維腫(WHO grade I). には様々な程度のリンパ球および形質細胞浸潤を伴. シュワン細胞,線維芽細胞,神経周皮様細胞で構. うことも特徴である.この腫瘍は傍鞍部から第 3 脳. 成され粘液様基質と膠原線維の沈着を伴う腫瘍.S-. 室にかけての腫瘍の鑑別には重要である.. 100 蛋白陽性細胞が出現する.多くは皮膚および遠. F)Neuronal and mixed neuronal-glial tumors. 位の末梢神経に発生し,稀に脊髄神経根にみられる. この範疇の腫瘍系は神経細胞性の腫瘍が主体で,. が,脳神経にはほとんどみられない.. さらに神経膠細胞関与介在する腫瘍で,臨床的には. C)Perineurioma:神経周皮腫(WHO grade I). てんかんを主訴として診断される.近年てんかんの. 神経周皮細胞の腫瘍性増殖からなる腫瘍で,intra-. 外科治療が再認識されてから,その組織学的診断で. neural type と soft tissue type がある.頭蓋内には. 腫瘍か cortical dysplasia かなど鑑別が問題になる.. 非常に稀である.. Desmoplastic infantile astrocytoma !ganglioglioma:2 歳以下の乳幼児の大脳に発生し,顕著な好. D ) Malignant peripheral nerve sheath tumor (MPNST) :悪性末梢神経鞘腫(WHO grade III!IV). 銀線維の増生を認める desmoplasia を示す astrocy-. 悪性シュワン細胞腫.NF1 などに付随して発生す. toma である.大部分の細胞は GFAP 陽性である.腫. る悪性腫瘍であり,再発,遠隔転移などを起こす. 3.Tumor of the meningitis:髄膜腫瘍. 瘍間質には血管がよく発達している.. Meningothelial,mesenchymal tumor:髄膜皮細. G)Embryonal tumor この腫瘍は未分化悪性腫瘍であり,medulloblas-. 胞(クモ膜細胞)の性格を示す細胞から発生する腫. toma についてはロゼット形成などの所見がある.詳. 瘍とその他の間葉系細胞から発生する腫瘍に分け. 細は専門誌を参照されたい.. る. A)Tumor of the meningotherial cells. 2.Tumor of the peripheral nerves:脳 神 経 お よ. Meingioma 髄膜腫は,良性腫瘍であり,少数のも. び脊髄神経腫瘍 A)Schwannoma:シュワン細胞腫(WHO grade. のは悪性で,浸潤性に増生し遠隔転移を来す.免疫 組織化学染色で,EMA,vimentin が陽性である.髄. I) 分化した腫瘍性のシュワン細胞からなる腫瘍.通. 膜皮細胞あるいはくも膜細胞に由来する腫瘍であ. 常被膜で包まれた良性の腫瘍.通常は薄い被膜で包. る.. まれており,割面は淡褐色で,黄色斑状病変,囊胞,. ○低 異 型 度 髄 膜 腫:Meningioma with low risk of. 出血を伴うことがある.組織像は紡錘形の腫瘍細胞. recurrence and aggressive growth. が線維束を形成し密に増殖し,処々で核の柵状配列. 1)Meningothelial meningioma(WHO grade I). (nuclear palisade formation)を示す Antoni type A. 一般的な髄膜腫で,whorl 形成のほか胞巣状や小. の領域と,水腫性で細胞の密度が低く疎な分布を示. 葉状の増殖パターンを示す.このタイプでは腫瘍細. す Antoni type B の領域からなる.時に柵状配列が. 胞は syncytium 様配列を示す. 2 ) Fibrous ( fibroblastic ) meningioma ( WHO. 球状構造を形成することがあり,Verocay body と呼 ばれる. 血管は部位によっては集簇する傾向があり,. grade I). 血管壁の硝子様肥厚が認められる.Hemosiderin の. 線維芽細胞様の形態を示す腫瘍細胞の増殖からな. 沈着は本腫瘍の特徴の一つである.鍍銀染色で微細. り,細胞間に種々の程度の膠原線維が認められる.. 線維がみられるのが髄膜腫との鑑別に有用である.. Antoni A type の schwannoma や solitary fibrous. 免疫染色では S-100 蛋白が核・細胞質ともにび慢性. tumor との鑑別が問題となる.最も信頼がおけるの. に陽性となる.. は鍍銀染色である.Schwannoma の場合,繊細なレ. 組織亜型. チクリン線維が細部まで入り込んでいる. 3)Transitional(mixed)meningioma(WHO grade. Cellular schwannoma:細胞性シュワン細 胞腫. I) ―116―.
(13) 19. Meningothelial components と fibrous compo-. 腫.空胞状の胞体を有する細胞がみられることがあ. nents を含む腫瘍で HE 染色では比較的紡錘形細胞. り,chordoma に類似する.Chordoma や chondro-. が多くみられ, 細胞間に中等度の線維性成分を含む.. sarcoma は S-100 蛋白陽性であるが,chordoid men-. 4)Psammomatous meningioma(WHO grade I). ingioma は陰性である. 12)Atypical meningioma(WHO grade II). Psammoma body(砂粒体)が多数出現する腫瘍 で,腫 瘍 実 質 は whorl を 伴 う transitional men-. 腫瘍細胞の核分裂像,細胞密度の上昇,核! 細胞質. ingioma であることが多いといわれる.砂粒体形成. (N! C)比の高い小型細胞,著明な核小体,地図状の. が高度になると腫瘍細胞がほとんど消失してしまう. 壊死巣を認める髄膜腫である.強拡大 10 視野あたり. 症例もある.. 4 個以上の核分裂像の出現を基準としている. ○高悪性度髄膜腫. 5)Angiomatous meningioma(WHO grade I). 13)Papillary meningioma(WHO grade III). 大小多数の血管があり,血管の間に髄膜腫細胞が 介在する.毛細血管の高度な増生や壁が硝子化した. 腫瘍細胞が血管周囲に偽乳頭状に配列し増殖する. 血管がみられる.部分的には毛細血管の増生を認め. 部位がみられる髄膜腫.鑑別診断が必要な腫瘍とし. hemangioblastoma に類似している.. て,転移性癌,脈絡叢癌,上衣腫が挙げられる.免. 6)Microcystic meningioma(WHO grade I). 疫染色では keratin,EMA,S-100 蛋 白,GFAP の. 大小の空胞あるいは囊胞様腔隙があり,実質が網. 染色性が鑑別に応用できる.Papillary meningioma. 目状構造を示す腫瘍で好酸性硝子滴や xanthoma-. では例外を除いて GFAP は陰性で EMA 陽性であ. tous change を示す腫瘍細胞がみられる.血管も豊. る.. 富で,壁が硝子化した血管が出 現 し,前 項 の an-. 14)Rhabdoid meningioma(WHO grade III). giomatous subtype と共通する点が多い.. Rhabdoid cell は malignant rhabdoid tumor (MRT) で定義された細胞で,明瞭な核小体を有し偏. 7)Secretory meningioma(WHO grade I) 好酸性円形小体を入れた腺腔様構造が多数出現. 在する核と好酸性硝子様あるいは線維性の類円形封. し,この小体は PAS 染色陽性で pseudopsammoma. 入体を持つことが特徴とされる.髄膜腫においては. bodies と呼ばれている.. 通常の髄膜腫要素とともに rhabdoid cells の領域が. 8)Lymphoplasmacyte-rich meningioma(WHO. 出現する場合と rhabdoid cells のみからなる腫瘍が ある.免疫染色では vimentin が陽性である.. grade I). 15)Anaplastic(malignant)meningioma(WHO. 形質細胞・リンパ球浸潤と線維増生を伴う髄膜腫 で,炎症性病変部と腫瘍実質の混在するもので,髄. grade III). 膜腫様成分が少ない場合,過形成なのか,真の腫瘍. Atypical meningioma にみられるような異常所見. で あ る の か が 問 題 と な る.Hypertrophic cranial. が高度にあり,明らかに悪性の組織学的特徴を示す. pachymeningitis などとの鑑別も要する.. 髄膜腫を指す.増殖能が異常に高く mitotic index. 9)Metaplastic meningioma(WHO grade I). が 20 個以上に達するものが含まれる.また,壊死巣. 明らかな間葉系分化を示す髄膜腫で,骨,軟骨の. が広範にあり,腫瘍細胞が偽乳頭状に残存する像が. 形成を伴うものや脂肪腫様変化,黄色腫様変化,粘. みられることが多い.. 液腫様変化を示すものが含まれる.化生とはある種. ○Meningioma of any subtype or grade with high. の成熟した細胞が他の種類の成熟した細胞に分化す. proliferation index!or brain invasion B)Non-meningotherial tumor:髄膜腫以外の間. ることを意味している. ○中 間 異 型 度 髄 膜 腫:Meningioma with greater. 葉系腫瘍 Mesenchymal , non-meningothelial tumors : 頭. likelihood of recurrence and! or aggressive behavior 10)Clear cell meningioma(WHO grade II). 蓋内に髄膜腫以外の間葉系腫瘍は比較的稀である.. 明るく抜けた細胞質を有する腫瘍細胞の増殖から. これらの腫瘍は中枢神経内,または髄膜に発生する. なる髄膜腫.胞巣状増殖や whorl 形成が不明瞭で,. 良性または悪性の腫瘍であり,線維組織,組織球,. 小塊状の硝子化した間質線維が特徴的である.. 脂肪組織,血管内皮,軟骨,骨などの組織像を示し,. 11)Chordoid meningioma(WHO grade II). 髄膜組織への分化を示さない腫瘍の総称である.頭. 粘液様基質内に腫瘍細胞が索状に増殖する髄膜. 蓋外では軟部組織に発生する腫瘍で,筋組織,脂肪. ―117―.
(14) 20. 性である.Gliosarcoma,meningioma の鑑別にはこ. 組織,線維組織などの非上皮性組織からなる. 悪性度は WHO で良性の腫瘍は grade I で悪性の. れらの免疫染色が有用である.頭蓋内肉腫は大部分 がこの組織であるが,さ ら に rhabdomyosarcoma. 腫瘍は grade IV である. その腫瘍名は脂肪腫,血管脂肪腫,hibernoma,脂. や chondrosarcoma が発生する.その予後は極めて. 肪肉腫,孤発性線維腫,線維肉腫,malignant fibrous. 不良である.Fibromatoses-hypertrophic intracara-. histiocytoma,平滑筋腫,平滑筋肉腫,横紋筋種,横. nial pachymeningitis などの非腫瘍性病変もみられ. 紋筋肉腫,軟骨腫,軟骨肉腫,骨腫,骨肉腫,骨軟. る. 3)Benign fibrous histiocytoma:線維組織球性の. 骨腫,血管腫,上皮性血管内皮腫,血管周皮腫,血. 腫瘍. 管肉腫,Kaposi 肉腫,などがある.. この病変は線維芽細胞様細胞,組織球様細胞から. 2000 年の脳腫瘍全国統計では骨軟骨腫, 脂肪腫, 肉腫などの発生頻度は 0.8% である.脂肪腫,MFH,. なる腫瘍で,細胞が storiform pattern を呈してい. hemangiopericytoma などは比較的頻度が高い腫瘍. る.Fibrous xanthoma などの名前が付けられてい. である.Hemangiopericytoma は 0.2% である.. る.さらに炎症細胞,泡沫細胞がみられる.頭蓋内. 1)Lipoma:脂肪組織の腫瘍. 腫瘍では一 部 の GFAP 陽 性 の xanthomatous tum-. 脂肪腫,血管脂肪腫,hibernoma,脂肪肉腫などが. nor は pleomorphic xanthoastrocytoma などの腫 瘍 に分類された.. あり,これ以外に奇形に付随する腫瘍もある. Lipoma:脂肪腫,通常脂肪腫は原発性脳腫瘍の. Malignant fibrous histiocytoma(MFH):悪 性 線. 0.1∼0.5% といわれている.視交叉部や脳梁部脂肪. 維性組織球腫(MFH)は,多くが未知のままである. 腫が最初に報告されたといわれている.80∼95% は. 腫瘍である.線維芽細胞様細胞と組織球様細胞が. 脳の正中構造に沿って発生するといわれ,脳梁,四. 種々の割合で存在し,低分化で多形性で肉腫と考え. 丘体 ambient,視交叉などの蜘蛛膜下腔に好発する.. られている.通常は四肢,後腹膜などに発生し中年. その組織成分は結合組織,血管成分,石灰化,神経. から高齢者に多く,軟部悪性腫瘍の約 10∼20% とい. 膠組織など多彩であるが成熟脂肪組織が主成分であ. われている.頭蓋内に発生する MFH では大部分は. る.. 硬膜に付着する腫瘍で脳内に発生する本腫瘍は少な. 血管脂肪腫:組織学的には成熟脂肪細胞と小血管. い.本腫瘍は組織球腫に分類されるが,未分化な間. 網が複雑に分岐してみられる.血管腫や血管肉腫と. 葉 系 腫 瘍 で そ の 起 源 は perivascular pial sheath,. の鑑別を要する.これらの血管には血栓を伴うこと. perivascular mesenchymal cells,deep blood vessel. がある.. walls,primitive mesenchymal cells な ど が 挙 げ ら れている.. 2)Solitary fibrous tumor:結合組織の腫瘍 孤立性線維性腫瘍は胸膜に発生する腫瘍である. その組織所見は多形性の組織球様細胞や線維芽細. が,中枢神経系にも稀に発生する.線維性の髄膜腫. 胞様細胞の増殖で,storiform pattern,histiocytes,. や血管周皮腫などに類似する腫瘍で,混同されて診. macrophages などがみられる. 臨床診断は髄膜腫,. 断されている可能性がある.その予後は比較的良好. 悪性リンパ腫,悪性神経膠腫などとの鑑別が困難で. である.組織学的には紡錐形細胞が不規則索状配列. ある.組織像は多形性を示す組織球様細胞や線維芽. を呈し,膠原線維を認める.鍍銀染色では膠原線維. 細胞様細胞が主体であり,storiform pattern が特徴. が 豊 富 で あ り,hemangiopericytoma で み ら れ る. である.免疫組織化学的検索で vimentin,マクロ. staghorn-vessel がみられる.CD34 免疫染色では腫. ファージのマーカーであるMAC387,α-antichymo-. 瘍細胞が陽性である.Hemangiopericytoma との病. trypsin,lysozyme などが陽性である.GFAP は陰. 理学的鑑別は硝子化変化と膠原線維の増加がみら. 性である.組織亜型として ordinary type(storiform-. れ,核異型や壊死像などがみられないことである.. pleomorhpic type ), myxoid type , giant cell. Fibrosarcoma:肉腫で頭蓋内発生は極めて稀で. type,inflammatory type の 4 型に分けられる.増. ある.その細胞起源は不明であるが,髄膜,脳内血. 殖能の指標である MIB-1 は 20% 前後であり,be-. 管成分や脈絡叢組織などが腫瘍の起源との説もあ. nign fibrous histiocytoma では MIB-1 は 2% 前後 で. り,放射線治療後に発生する腫瘍の代表的な組織で. ある.. ある.GFAP,EMA は陰性であるが Vimentin が陽 ―118―. 4)Condrosarcoma:軟骨・骨の腫瘍.
(15) 21. 軟骨・骨形成性腫瘍のことであり,以下のように. ンチン,デスミン,ミオシン,ミオグロブリンなど が有用である.鑑別は Ewing 肉腫,神経芽腫,悪性. 分類されている. Chondroma:通常頭蓋骨では膜性骨化であり,骨. 線維性組織球腫などがある.. そのものから発生する軟骨腫は稀である.成熟した. Rhabdomyoma:横紋筋腫,通常は脳の結節性硬. 軟骨組織より形成される良性の腫瘍で蝶形骨周辺の. 化症を伴う心臓の横紋筋腫があるが,成人型と胎児. synchondrosis を形成している部分から発生するこ. 型に分けられる.頭蓋内にはきわめて稀である.. とが多い.硬膜からも発生する.. WHO2000 で embryonal tumor と し て,atypical. Osteoma:通常頭蓋骨外板,副鼻腔,特に前頭洞,. teratoid!rhabdoid tumor の概念が採用された. 7)平滑筋の腫瘍. 篩骨洞などにみられる.成熟した層板骨から構成さ. Leiomyoma:血管壁,消化管の壁,子宮壁など平. れる良性の腫瘍である. Osteochondroma:頭蓋内骨軟骨腫はきわめて稀 であり,後頭,頭頂骨や頭蓋底などから発生する.. 滑筋の発達する組織から発生する腫瘍で,頭蓋内に 発生することはきわめて稀である.. 頭蓋底を形成する後頭骨,蝶形骨,側頭骨岩様部は. Leiomyosarcoma:平滑筋肉腫,平滑筋に由来す. 発生学的には軟骨性頭蓋であり,この部分の骨結合. る悪性腫瘍で,横紋筋肉腫に比べて発現頻度は低い.. 部に遺残した胎生期軟骨からこれらの軟骨腫や骨軟. 頭蓋内に発生する leiomyosarcoma は稀であるが最. 骨腫が発生すると考えられる.組織学的には軟骨と. 近 AIDS などの免疫不全症例で頭蓋内に本腫瘍の発. 軟骨内骨化による骨組織の腫瘍である.. 生が増加している.特に HIV や移植を受けた症例の. Mesenchymal chondrosarcoma:悪性の腫瘍で小 型円形および紡錐形で未分化な腫瘍細胞からなり,. leiomyosarcoma と Epstein-Barr virus と の 相 関 が 述べられている.. これらの組織内に軟骨組織は島状または巣状にみら. 4.Germ cell tumor:胚細胞系腫瘍. れる.腫瘍本体は hemangiopericytoma 様であり悪. 性腺に発生する胚細胞系腫瘍 germ cell tumor と. 性度が高い. 頭蓋では頭蓋骨や脊椎などに発生する.. 同一の腫瘍が,頭蓋内ではトルコ鞍上部と松果体部. Osteosarcoma:紡錐形,類円形または多角形腫瘍. に多く発生する.稀に基底核,視床領域にもみられ. 細胞からなり,類骨および骨性マトリックス形成を. る.この腫瘍群には数種類の組織型があり,それぞ. 認める.. れ単独で発生することもあるが,複数の組織型が同. Chondroblastoma:通常は長管骨骨端に発生し頭 蓋骨はきわめて稀であるが,ときに中頭蓋底の本腫. 一腫瘤内に混在していることもある.頭蓋内腫瘍の 約 3% を占める.若年者に多く,男性に多い.. 瘍の報告がある.骨の巨細胞性腫瘍との鑑別が重要. A)Germinoma:胚細胞腫. である.. 最も頻度の高い胚細胞系腫瘍である.Seminoma. 5)Hemangiopericytoma:血管の腫瘍. や dysgerminoma に類似した腫瘍である.腫瘍組織. 中枢神経系の血管成分からなる腫瘍は脳動静脈奇. は血管に富む結合織性間質により,小葉状に区画さ れる傾向がある.間質にはリンパ球の浸潤がみられ,. 形などの奇形的要素の強い疾患も含まれる. 海綿状血管腫(capillary hemangioma,cavernous. 大型の腫瘍細胞と共に two-cell pattern を示してい. hemangioma) ,静脈性血管腫などは良性,中間的腫. る.リンパ球を多数認める症例もある.免疫染色で. 瘍は hemangioendothelioma,悪性度の強い症例は. は胎盤性アルカリフォスファターゼ(PLAP)が腫瘍. angiosarcoma,Kaposi sarcoma などである.その他. 細胞に局在している.. にhemangioblastoma,hemangiopericytomaなどが. B)Embryonal carcinoma:胎児性癌. ある.. 胎生外胚葉の細胞配列に類似した上皮様ないし充. 6)Rhabdomyosarcoma:横紋筋の腫瘍. 実性の構造を作る腫瘍である.頭蓋内では他の組織. 横紋筋肉腫は我が国では比較的多い腫瘍で特に小. 型と混在して出現することが多く,純粋型は稀とい. 児に多い腫瘍である.頭蓋内に発生する本腫瘍はき. われている.大型の上皮様細胞が不完全な腺管構造. わめて稀であるが,脳表に近い部位に発生し,その. やシート状の細胞集団を作る.腫瘍細胞は cytokera-. 発 生 母 地 は pericapillary mesenchymal cell な ど が. tin が陽性である.. 考えられているが不詳である.組織学的診断には免. C)Yolk sac tumor:卵黄囊癌. 疫組織化学的腫瘍マーカーが応用されている.ビメ. 卵黄囊の胎生内胚葉に類似の形態を示す腫瘍であ. ―119―.
(16) 22. り,endodermal sinus との類似性から endodermal. lary type の 2 型がある.. sinus tumor とも呼ばれている.組織像は多彩で,内. 1)Adamantinomatous type:エナメル上皮腫型. 皮様あるいは上皮様の細胞が網眼状,小囊状,管状,. 若年者に多く,境界鮮明な石灰化を伴う囊胞性腫. 乳頭状あるいは充実性に増殖している.小囊状構造. 瘤が形成される.囊胞内にはきらきらと輝く微細な. の中心に血管を持ち周囲を上皮様の腫瘍細胞で覆わ. コレステロール結晶が含まれている.組織学的には. れた構造は Schiller-Duval body といわれている.免. エナメル組織様で基底細胞を認め,wet keratin と. 疫染色では腫瘍細胞に α-fetoprotein(AFP)が陽性. 呼ばれるケラチン,石灰化を認める.腫瘍に接する. である.. 脳組織にはしばしば著明なグリオーシスがみられ, Rosenthal 線維が観察される.. D)Choriocarcinoma:絨毛癌. 2)Squamous papillary type:!平上皮乳頭型. 胎盤の trophoblast に類似の形態を示す悪性腫瘍 であり,頭蓋内に純粋型として原発することは稀で. 成人に多くみられ,石灰沈着の乏しい充実性の腫. あ る.Syncytiotrophoblast と cytotrophoblast が 混. 瘤を形成する.組織学的には,よく分化した重層!. 在して増殖し,出血を伴い易い.免疫染色では syn-. 平上皮が網目状に増殖している.Wet keratin,石灰. cytiotrophoblast に human chorionic gonadotropin. 化などは少ない. 3)Xanthogranuloma of the sellar region:トルコ. (HCG)が証明される.. 鞍部黄色肉芽腫. E)Teratoma:奇形腫. 頭蓋咽頭腫の亜型ともいわれているが特殊な病態. 3 胚葉性の構成成分からなる腫瘍であり,未熟な 形態を示すものは未熟奇形腫 immature teratoma,. か.. それぞれの成分がすべてよく成熟分化しているもの. 6.Metastatic tumors. は成熟奇形腫 mature teratoma である.腫瘍を構成. 更に中枢神経系腫瘍として WHO 分類のみではす. する成分としては,表皮,毛囊,皮脂腺,汗腺,平. べてを網羅できないので,日本病理学会との共同企. 滑筋,脂肪組織,神経組織,軟骨,骨,気管支など. 画である脳腫瘍取り扱い規約から更に日常診療で遭. がある.成熟奇形腫の一部の成分が悪性化する場合. 遇する脳腫瘍がある. おわりに. が あ り,こ れ は 悪 性 転 化 を 伴 う 奇 形 腫 teratoma. このように中枢神経系腫瘍はその発生部位の性格. with malignant transformation と呼ばれる. 5.Tumor of the sellar region. 上から腫瘍分類が複雑であるので充分な注意と知識. A)Craniopharyngioma:頭蓋咽頭腫. の整理が重要となる.脳腫瘍の病理診断は腫瘍の発. 頭蓋咽頭腫はトルコ鞍部から第 3 脳室にかけて発. 生部位の詳細が大きな決め手であり,詳細な病歴や. 生する良性腫瘍である.エナメル上皮腫型 adaman-. 手術所見さらには画像所見を参考に診断する必要が. tinomatous type と!平上皮乳頭型 squamous papil-. ある.. ―120―.
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