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環境保全と大学教育

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Academic year: 2021

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巻頭言

環境保全と大学教育

環境管理センター長

   高木茂明儂学部)

 現在の世界総人口は57億程度と推定されており,1800年に10億を切っていた人口が1900年には15億と急 激に増えて現在に至っている。このまま人口増加が続けば21世紀中頃には100億に達するものと推定され ている。日本人口は現在1億2千万であるが,鎖国で食糧自給自足の江戸時代には3千万に過ぎなかった。 世界の食糧供給に目を向けると,一人一日2500ca1を穀物だけから摂取すると仮定して必要量は800g/日/ 人,300㎏/年/人であり現在の世界の炭水化物食糧生産量(20億トソ)はこれを何とか満たしている。こ れは地球上の人々に食糧がうまく分配されればの机上の計算であるが,実際には食糧難の国々が存在して いる。これが50年後に100億の人口に達したときにはどうなるであろうか。D.メドウズらは人口・食糧問 題のみならず環境汚染,工業生産を含めた21世紀についてのシミュレーション・スタディにより,現状の ままの経済成長路線を世界が進めて行けばかなり近い将来に地球は破滅するという結論を得ている。すな わち,環境の汚染が増大して良質の食糧は減少し人類だけでなく地球が破滅していくというのである。こ れを防ぐためには①経済成長に伴う様々な不用排出・廃棄物の量を減らすこと,②資源を浪費しないこと, ③人口問題への配慮が挙げられる。しかし①,②は現在の公害防止,環境保全における大方の行動様式で は問題の解決に至らないと考える。すなわち,汚染物質の排出量を削減しても経済成長に伴い絶対:量は増 加し,資源の有効利用・リサイクルをはかり生物資源の利用を推進したとしても現実にどこまで有効な手 段がとれるか疑問が残る。さらには人口はこのまま放任すれば激増の道をたどり,少ない食糧資源を奪い 合う紛争も起こるであろう。このように地球の将来を見ていくと,現在の豊かさと便利さを求める人類の 欲望が環境汚染の問題を引き起こしていることが分かる。大学人としてこの問題を考えるとき,これから の若い人達の意識改革を教育面で進めて行く必要がある。すなわち,工業を中心とするあるゆる産業活動 と社会活動において廃棄物を削減する新しい方法と手段の開発の必要性を説き実行するのである。例えば, 化学工業において原材料を目的の製品に仕上げる過程で使用される多種多様な化学薬品や派生する不要成 分は,その多くが製品に付随することなく廃棄物となる。現在の応用化学教育では目的の製品を作る,目 的物質を得ることに主眼を置いて教育指導しているが,この考え方を変えて資源を出来るだけ活用しなが ら廃棄物を減らす製造・調製法をどのようにして開発すれば良いかを研究し教育することが大切であろう。 化学分析においても同じことが言える。定性,定量の簡単な分析から高額機器を用いた複雑な分析に至る まで,目的は物質の同定,定量,構造解析など多様であるが,いずれも分析結果を得れば良く,用いた試 薬や反応生成物はすべて不要となり廃棄される。現在,大学の化学教育において廃棄物を無害なものにし て周囲に放出することが実行されているが,廃棄物を減らすための新しい製造法・分析法の開発研究等は あまり顧みられない。学術研究や産業活動においてメリットが無いからである。しかし,科学や知識の向 上のみに目を向けて,豊かさや便利さだけを追及する社会の破滅が近い将来に予想される今日において,

一1一

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例え産業の一時的な停滞があったとしても環境汚染の無い安全な産業社会を作り上げることは大切であろ う。環境ISO(ISO14000)の発効やECOテクノロジーの考え方はこの一端を担うものと考える。これらの 研究・教育にかかわる事柄を一朝一夕に構築することは難しく,また速やかに環境破滅の現状を回復させ るものにはならないかも知れないが,21世紀に地球が破滅の道をたどるのを少しでも遅らせ,回復の方向 に向けるためには是非必要な手段と考える。これは文系・理系を問わず基礎から応用に至る教育・研究に 携わる教職員の皆さんに環境を踏まえた発想の転換をお願いするものである。

一2一

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