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テンニェスの社会哲学の基礎としての意識論 : 記憶論の視角からみた本質意識論の再構成

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Academic year: 2021

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(1)関西学院大学審査博士学位申請論文. 題目:テンニェスの社会哲学の基礎としての意志論 記憶論の視角からみた本質意志論の再構成. lementaryS t r u c t u r eo ft h eTheoryo fW i l li n 英文題目: TheE T o n n i e s 'S o c i a lP h i l o s o p h y :R e i n t e r p r e t a t i o no fNaturalW i l lfrom t h eViewpointo ft h eTheoryo fMemory. 指導教員:鎌田康男教授. 総合政策研究科博士課程後期課程. 2009年 3月修了 D2009西 津 真 則.

(2) 博士論文概要書. テンニェスの社会哲学の慕礎としての意志論 一一記憶論の視角からみた本質意志論の再構成. D209. 西 津 真 員 IJ. 論文の基本構想 従来のテンニェス研究は、本質意志と選択意志のこつの意志論を、選択意志論の枠 組みの中で評価することに集中してきた。それゆえ、本質意志と選択意志との区日J f は 暖味となり、主著の中核をなす意志論からテンニェスの類型論を検討する研究の展開 が国難になった。そうした影響が、従来のテンエェス研究のなかで、類型論の過小評 価に繋がり、次いで、意志論全体に対する誤解に満ちた不整合な解釈が与えられてきた。 こうして一般には、テンニェスの類型論を浪漫主義的全体主義や不完全なマルクス主 義共同体論と見なす評価が定着することになった。本研究は、従来のテンニェス研究 から派生的に生じる典型的な記憶の問題を意志論の視点から論じることを試みる。そ のためには、意志論全体と記憶論、および本質意志論と選択意志論とを整合的に位置 づける記憶論の構想、を獲得するための統一的な解釈が必要となる。こうした解釈の流 れは、これまでの先行研究における記憶論ならびに本質意志論に対する整合性を欠く 解釈枠が、どのような論理により形成されており、また、テンニェスの共同体論、な らびに社会哲学の全体像を整合的に解釈するためにどのような理論的解釈が必要であ るか、というこつの間いに導かれるものである。また、本稿では、意志論の哲学的議 論が集中的に扱われている、テンニェスの遺稿 DieTatsached θsW ollens ( 意志の事 実)を取り上げる。このようにして更新されるテンニェスの記憶論は、伝統社会と近 代社会との交錯を経た、現代社会のなかで、失われつつある人間の共生関係について、 新たな理解と気づきとをもたらす可能性をもっ. O. また、本研究の意義は、共同体論と. 政策研究との関係、に対して、新たな視座を切り拓くものとなろう。. 本研究の骨子は、以下の三つの要件に基づ、くものである。①記憶論の視点から意志 論を理解することのなかった従来のテンニェス研究史とその問題点、②本質意志論の 詳細な検討、および意志論の全体構想、からの整合的な記憶論の提示、③意志論の全体 構想、において示される新たな記憶論が、近現代の自己利益追求の欲望に駆動された社.

(3) 会に、相互信頼に基づく共生関係を生じさせるための条件となること. O. 以上により、. 本研究は、テンニェスの記憶論の再構築に基づき、現代の共生社会の成立条件を展望 する可能性を示すものである。. 1 1.

(4) 目次. 序払 口問 第一章. 一九世紀末における人文精神諸科学の諸状況とテンニェス一一遺稿に みる意志論研究の枠組み一一. 第二章. ・ 一 ... .... 8. 先行研究における記憶と本質意志との関係. 第一節. 本質意志論に関する従来の解釈(一) ••• ••• ••• 2 1. の解釈. 志論に関する従来の解釈(二). 節. 志論解釈 第三節. :心理行動. 対応する. ••• .••.•. 32. 本質意志論に関する従来の解釈(三). 釈... 第三章. :行為の原因性としての. :本質意志論の「弁証法. j. 的解. ••• ••. 38. テンニェスのゲマインシャフト論における記憶と本質意志. 第一節. 記憶の作用による本質窓志のあらわれとしての実在性. 第二節. 本質意忠論における行為と知性との関係. ……… 58. 第三節. 本質意志論における行為と記憶との関係. ・ ー … .. 第四章. 一 -一 -…. 45. 65. 記憶論の視角からの意志論の再構成:主著『ゲ、マインシャフトとゲゼ ル シ ャ フ ト 』 と 遺 稿 『 意 志 の 事 実 Jと の 比 較 を め ぐ っ て. ……… 73. 第一節. 遺稿の成立史. 第二節. 遺稿における意志論の全体像. 第三節. 遺稿における記憶論:了解の構造と本質煮京. 第四節. 選択意志と記憶. 結論. … .…. 75. …・ー… 90. ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 95. ……… 104. 文献表. ••••••••• 112. 付録資料. a t s a c h ed e sW o l l e n s(意志の 遺 稿 DieT. ~. 15. 鴫. 5. (抜粋訳) ••••••••• 117.

(5) 序論l. 社 会 学 の 始 祖 の 一 人 と 目 さ れ る ブ ェ ル デ ィ ナ ン ト ・ テ ン ニ ェ ス ( 1855-1936) は、主著『ゲ、マインシャフトとゲ、ゼ、ルシャフト一一純粋社会学の基本概念--~. (Ferdinand TonnIes: Gemeinschaft und Gω e l l s c h a f t : Grundbegr~グè der reinen. S o z i o l o g i e .1887) の な か で 、 ゲ マ イ ン シ ャ フ ト と ゲ ゼ ル シ ャ フ ト と い う こ つ の 人. 間関係の類型を呈示している. O. 前者、ゲマインシャフトは、共感と同情とを共. にすることで他者と有機的に関わる、人間存在の様式を指す。また後者、ゲゼ ルシャフトは、契約と協定とに基づく観念的機械的な仕方で他者と関わる人間 存在の様式を指す。 主著において、テンニェスは、ゲマインシャフトからゲゼルシャフトへの移 行を、体制論の根拠となる意志論から診断しつつ、さらにゲゼルシャフトにお けるゲマインシャフトの復活という共同存在の未来構想を示した。しかし、従 来のテンニェス研究では、研究の関心は体制論の表面的分類に集中し、テンニ ェスの意志論の全体構成をふまえた体制論の検討がなされることはなかった。 それゆえ、今日に至るまで、テンニェスの描いた、ゲマインシャフトの復活に 託された社会の将来構想、に関する評価も、その理論的基盤である意志論との関 係から考察の対象として取り上げられることがなかったのである. O. こうして、. 彼の理想は、強度の同一性を押しつけてくる旧体制の復活とすり替えられ、そ. 1. テンニェスの原典からの引用は、 Ferdinand T凸n n i e s : Die T a t s a c h ed e sW o l l e n s .( 1 8 9 9 ). 9 8 2 .お よ び F e r d i n a n dT o n n I e s : H r s g .J u r g e n Zander ,B e r l i n : Duncker u . 日umblot, 1. G e m e i n s c h a f t und G e s e l l s c h a f t : Grundbeg Jr fi e der reinen S o z i o l o g i e . 1( 8 8 7 )D a r m s t a d t : W i s s e n s c h a f t l i c h eB u c h g e s e l l s c h a f t,1 9 7 9 . による 原典を引用参照する際、 DieT a t s a c h ed e s O. . d . W .G e m e i n s c h a f t und G e s e l l s c h a f t=.G u .G.と略記する W o l l e n s T. o. Die T a t s a c h ed e s. W o l l e n sは、本論中では、遺稿ニ『意志の事実 J とし、拙訳を用いた。また現在、 DieT a t s a c h e 匂 f1 l l e n sには、参照しうる翻訳が存在しないため、本論中では、参照、笛所を明記した d e s. ーと、適宜、拙訳を用いた。また必要に応じて、脚注に原典を付した。 なお邦訳からの引用は、テンニエス『ゲマインシャフトとゲゼルシャフト:純粋社会 の基本概念(上)、(下). j. 杉之原寿. 4. 訳、東京、岩波書版、 1979年による。邦訳を. 引用参照する擦は、了ゲマインシャフトとゲ、ゼルシャフト(と)、(下 また、引用文中の(…)は中路を、は筆者による補足を. 2. )j と略記する。.

(6) こに浪漫的、懐古的、保守的といった、差異性に対する抑圧的支配の代名詞が 与えられることになる. しかし、差異性に対する抑圧的支配を強化し、共感と. とにより結合する人と人との相互関係、を、自己利益追求という目的の手段 へと画一化せしめたのは、ゲマインシャフトの対極に位置するゲ、ゼルシャフト 的行動様式である. O. すなわち. 従来、テンニェスの共伺体論が、!日体制的なら. びに家族的封建的支配の共同体論と読み替えられた原因には、彼の共同体論の 構想、と相互関係にある意志論が、ことごとくゲゼルシャフト的意志の形態、 し1 換 え れ ば 、 選 択 意 志 論 に 引 き つ け ら れ て 解 さ れ て き た と い う 学 説 史 上 の 問 題. がある. D. そのような従来のテンニェス研究は、ゲマインシャフト約社会形態を. 表現する本質意志のあり方、とりわけ本質意志に関与する思惟(=記憶)に関 する統一的な評価が与えられていないことから発生する解釈上の問題に特徴づ けられている. O. すなわち、本質意志論の構想、と関係する思惟であるところの「記. 憶 j に関する評価の欠如が、テンニェスの意志論の全体像を曇らせ、さらには 志論と裏表の関係にある社会形態論をも不明瞭なものとしたのである O そう した解釈傾向が、本来テンニェスが意図していた道とは異なり、テンニェス研 究の全体に閉塞感を与えていると言っても過言ではない。その一つの大きな原 因には、ゲマインシャフトとゲゼルシャフトとの体制論の検討に際して、本質 意志と選択意志との区別が暖昧なままに進められてきたことが考えられる。テ ンニェスの共同体論の存在意義に関わる、意志論への不明瞭な解釈像は、本質 意志論の解釈の不明瞭さに起因するものである. O. こうしたゲマインシャフトとゲゼルシャフトの体制論が、認識主体と認識対 象の棺互関係に基づいて構想された意志論から切り離されて解釈されることに より、ゲマインシャフトの復活への道筋は、閉ざされることになる. O. 否、それ. ばかりか、テンニェスの真の意図とは逆さの方向で、ゲマインシャフト像は、 |日体制を象徴する家族的、封建的実体と同一視されるようになり、ペシミズム とも、浪漫主義とも、封建的とも、またナチズムの民族思想、と問ーのものであ るとも評価されてきた。そうした様々なレッテルは、総じて、テンニェスの共 同体論は成立しないという決めつけのもとに与えられたものである。ここに求. 3.

(7) められているのは、テンニェスの社会哲学の基礎が整合的に評価される際、一 つの同じ課題として、従来、テンニェスに与えられてきた様々な解釈がどのよ うな理論的背景のもとに生成してきたのかという原因分析を伴う、否定的評価 それ自身の整合的な解消を示すということである. G. 『ゲ、マインシャフトとゲゼルシャフト』の主題には、テンニェスの共 体論のもつ独自の意義が示されている. それによれば、『ゲマインシャフトとゲ. O. ゼルシャフト』では、共同体論は、昨E 瓦肯定の関係、だけが研究の対象としてと りあげられる J 2考察のなかに成立する. ここには、共同体論は成立しないとい. O. う否定的態度からテンニェスの思想を見るのではなく、共同体論が成立すると すれば、それはどのような形で検討されるべきなのか、と共生の可能性を模索 し続けることが求められているのだ。そうであるならば、共同体論は成立する という前提に立って議論を進め、その歩みを止めないでいられるような理論的 課題はどこにあるのかと、テンニェスをみる自が変わってくるのではないだろ うか。さらに、テンニェスの呈示した共生の可能性の模索と、テンニェスの思 想に触れるわれわれ自身との関に、共有可能なものはあるのか、という間いに 変わってゆく. O. そうした間いを導き手として、筆者は、従来形成されてきたテンニェス像の なかで、本質意志が選択意志と混同して築き上げられてきたものであることに気 づくに至った。つまり、従来の解釈枠のなかでは、主著の中核をなす意志論か ら、テンニェスの類型論が整合的に検討されることがなく、どの解釈において も、テンニェスの意志論は選択意志として理解される傾向があるということで ある一一この問題は、第二章. 第一節で論述するように、テンニェスの意志論. が行為の原因性と解釈されてきたことによるものである. O. また、「人々の意志は、. 相互にさまざまな関係を結んでいる J として、主著の論述を始めるテンニェス の煮密を汲み取るならば、そこには人間関係に関する社会形態や体制論を論ず る前に、意志論を評価しなければならないとの示唆が与えられていると考えら れる 2. O. そうした流れをふまえれば、ゲマインシャフトとゲゼルシャフトとの体. [jゲ、マインシャフトとゲゼルシャフト. JJ p .34.G(. 4. u ..G S . 3 ) ..

(8) 制論の評価に歪みを引き起こしている意志論からテンニェスの. 体論ならび. に体制論は出発すべきである、という方向性が自ずと示されることになる. O. そ. の指針の上に、従来の意志論解釈が、選択意志の傾向に引き寄せられているこ とを加味すれば. さらに狭義の研究の方向は、本質怠志の概念. に絞られるべきである. O. を追うこと. このような指針の下でなされる論究により、はじめて、. 選択意志の形成条件としての本質意志という、二つの意志の関係が明確にされ、 その見地から、ゲゼルシャフト的諸形態、の生成条件としてのゲマインシャフト という、二つの体制論の関係が明らかになる. O. こうした問題組織を念頭におく. ことで、本稿の問題構成も定まることになる。それは、意志の構造を解明する ことが、意志を基盤として構成されるテンニェスの社会哲学の全体像を解明す る手だてとなる、ということである. O. さらに限定してゆけば、本質意志は意志論の全体構造のなかで、どのように ゲマインシャフトの形成に寄与するのか、という問題が導き出されることにな る. O. そのような問題設定のなかで、本質意志のみならず、本質意志と選択意志. との両概念を同時に扱うことのできる、参照軸はどこにあるのか、というさら に進んだ問題を設定することが必要となる 神的生命の原理 J. O. そうした流れの中で、記憶は「精. として、生ける者と死者とを結び、つける 4という、 f記 憶 J と. 3. f本質意志 j とについてのテンニェスの言及に着目するならば、そこに従来解. されてきた支配的な同一性を相手に押しつける歪曲された. r(本質)意志. J とは. く異なる形で再構成された意志論が見出されることになる口従来、テンニェ スの主著における「記憶」は、選択意志の枠組みの中におかれ、行為の遂行に 役立つ手段として理解されてきた。その最も代表的な理解のひとつとして、 田浩は次のように述べている. O. という意志形態によってテンエエスのいいたかったことは、人間が様々 な状況に直面したとき、いかに行動すべきかをその都度ーから考えるのではな. u ゲ、マインシャフトとゲ、ゼルシャフト(上) l J 4. p p .1 8 0 f .G(. U.. .G S . 8 2 ) .. U ゲ、マインシャフトとゲゼルシャフト(下) l J p .1 5 8 ( .G u . .G S . 1 8 7 ) . 5.

(9) く、記憶のなかに蓄えられている知識を基準にして、適切かっ敏速に判断する と し 1 うこと J. 5. ここで吉田の述べる記憶は、一定の目的実現のために、最も効率のよい方法を、 必要なときに取り出してくる情報という意味で理解されている. O. しかし、吉田. の解する、目的実現のための手段としてみられた「記憶 j は、テンニェスが本 志論において語る「記憶 j とは同じものではない。主著における「記憶 j は、たとえば、時間を超えた存在に呼びかけ、共に生きることを可能ならしめ る「生ける者と死者 j とを結び、つける接点とされている. D. このことは、人間の. 記憶的想起の営みが、目的実現のために選び取られ、そして役立てられる情報 手段として用立てられる記憶とは全くかけ離れた意味を有することを示してい る. O. こうした点に、テンニェスの記犠論の構想に対する評価が解明されていな. し、研究課題として残されている. O. そうした問題意識を前提として、本稿は準備された。その上で、まず筆者は、 本稿、第一意で、テンニェスの意志論の成立背景について、テンニェスの遺稿. DieT a t s a c h ed e sW o l l e n s( 意志の事実)から獲得される記壊と意志との相互関係 に言及する. O. なお遺稿は、主著の成立からゆ年あまりかけて構想された著作で. あり、しかも主著の延長線上に、体系的かっ独立的に描かれた意志論であるに も拘わらず、従来のテンニェス研究のなかでは考察の対象とされることがなか った。ここでは、遺稿を扱う意義と問題構成、ならびに、主著と遺稿との比較 を可能にするための素材を呈示する. O. 次に、第二章では、従来のテンニェス研. 究の枠組みの中で、本質意志論と記憶論とがどのように論じられてきたかを、 志と記憶という論点に絞り込み、説明を加える おける記憶と本. との関係を取り上げる. O. O. また、第三章では、主著に. そして、第四章では、意志論と. i eT a t sαc h ed e s 記溶論との関係が哲学的に分析されたテンニェスの遺稿である D 意志の事実)を参考に、主著と遺稿との比較検討を行う。そのような W o l l e n s( 田浩『ブェルディナンド・テンニエス:ゲ、マインシャフトとゲゼルシャフト 京、東信堂、 2003年 、 p .76 6. J. 東.

(10) 流れの中で、本稿は、テンニェスの本質意志論の再構成を通して、テンニェス の社会哲学の基礎づけを試みることを目指す。なお、本論の主張を根拠づける. a t s a c h ed e s恥 l l e n s (意志の事実)の邦訳を、本論文 重要資料である、遺稿 DieT と関わりのある主要部分に限定して(. S 5ト55) 付した。. 7.

(11) 第一章. 一九世紀末における人文精神諸科学の諸状況とテンニェス一一遺稿に. みる意志論研究の枠組み一一. 一九世紀末の社会学の創生期にあって、フェルディナント・テンニェスの『ゲ マインシャフトとゲゼルシャフト~ (第一版. 年、第二版 187. 18. 年)は、様々. な社会学諸理論に対して基礎的な思考のフレームを提供した。ゲマインシャフ トとゲゼルシャフトとの対概念からなる共同体論は、古代中世伝統社会と近代 利益社会の歴史文化的文脈に却しつつ、人間存在の様式を意志論の立場から表 現した試みである. O. この二つの理念型は、思想史的な文脈においては、実体性、. 実在性、存機体論などの哲学的問いのうちに連なり、また哲学の営みに新たな る表現を与える試みであったと評価されている. O. 飯田哲也によれば、主著『ゲ. マインシャフトとゲゼルシャフト』には、テンニェスが. 時代に摂取した、. デカルト、スピノザ、ライブニッツ、カント、へーゲル、ショーベンハウア一、 ニーチェなどの思想、の摂取の跡が残されているという 60 特に主著における意志 論の構想は、. ドイツ観念論の意志論の受容とその批判的解消の見地に築き上げ. られているといっても過言ではない。 こうした一九世紀末の人文諸科学は、なおも個別性と共同性との相互関係を 措定する課題を、前の時代から継承していた。個別性と共同性との相互関係を 再構築する動きは、一九世紀半ばに至るまでに、社会契約説やドイツ観念論と して実験的に論じられていた。近代においては、古代中世伝統社会を理論的に 支えた形而上学的実体論の崩壊に伴い、それまで公向の存在を担保してきた神 的存在に替わる共同体論が要請された。そのような要請は、まず人為による共 体の構築を試みた社会契約諸説として登場し、次に、人為にもとづき共同体 を構築する方法から出発しながらも、人為性を限りなく削ぎ落とそうとするド イツ観念論の緒論のなかで模索された。この模索は、一九世紀末に、ヴィンデ ルヴァント、リッカートらにより、歴史主義と合理主義との対決を調停しよう. 6. 飯田哲也『テンニース研究:現代社会学の源流』京都、ミネルヴァ書房、 1 9 9 1年 ,p . 2 85 8 幽. Jf自. 8.

(12) とした文化哲学の流れのなかで、了解の構造をめぐる論争へと引き継がれるこ とになる. O. また、ヴントはもちろんのこと、一般にフロイトを含む心理学にお. いてさえ、その主観的な心理学の枠組みのなかに、常に社会的集合心理へのア プローチが取り込まれていたに古典的社会学理論においては、個と共同との関 係を主題的に取りあげることが、当時の共通関心事であった。 この意味で、テンニェスの局時代の学問への関心は極めて広汎である ヴントの意志論は主著の着想、に取り込まれているといわれている. O. 8. 特に. O. またゲゼル. シャフト論については、マルクスによる資本主義社会の分析から受けた影響が 大きいとされ、研究史の中ではマルクスの資本主義分析とテンニェスの独自性 との境界線が薄れていると指橋するものもあるた当時のテンニェスの社会哲学 への共鳴、理論の親近性、その影響範囲は広いc 概して初期理論社会学におい ては、一様に『ゲマインシャフトとゲ、ゼルシャフト』に近しい理念裂が構想さ. ブロイト f集 団 心 理 学 と 自 我 の 分 析 J ~フロイト著作集』. 7. 小比木啓. 、. 叩ム4. /¥rι. 京都、人文書院、 1996年 、 p .1 9 5・245参照. 精神的共同体の内部、および言語、神話および慣習の発展過程のなかで、われわれ は個人の意識内にある心的複合体の連関とは本質的にちがう精神的連関と相互作用を みることができる。しかもそのような連関は個人意識と同じ現実性をもっている 意味でわれわれは民族共同体の表象と感情の連院を『集合意識. O. この. Gesamtbewusstsein、. 通の意志傾向を『集合意志、~ G esamtwille とよぶ。その場合われわれは、これらの概念. が 個 人 の 意 識 過 程 と は 何 か 別 な も の で あ る と い う こ と を 忘 れ で は な ら な い 。 JWilhelm Wundt:Grundl 岡山 d e rP s y c h o l o g i e .L e i p z i g :A.Kroner ,1922,C1 9 1 3 .S . 3 8 4 . (ヴント「第四篇 心的発展. 第二十一章. 精 神 共 同 体 の 発 展 J ~心理学概論~ 1896 年。『原典で読み解く. 心理学入門~ p . 4 2 4 . ). この箇所はヴントとテンニェスとがほぼ向時期に共通して、意志を個別的な層と 的な層との相互関係から読み解こうとした試みを示すものである(ただしテンニェスの 『ゲ、マインシャフトとゲゼルシャフト』の初版は 1 8 8 1年、第二版は 1887年であるから、 ヴントの全体意志論との先後関係は微妙である)。日本の先行研究のなかでは、両者の 影響関係についての詳細な比較検討がなされていないが、ヴントの心理学とテンニェス の社会学との切り分けの難しさについては指摘されているところである. O. またやはりそ. の議論はおおむねテンニェスの論理は、主観性の側から共同体の構造を説明するものと. 、 、. ~. E 子1. ノJ. 田浩『フェノレディナンド・テンニエス:ゲマインシャフトと 、2 003寺 三 、 p .1 0 6 .. 9. ノレシャフト J. 東. 理解されている。 9.

(13) れ、問題関心が共有されていた。デュノレケームの. r自殺論 Jにおける自己本位. 的、集団本位的、アノミー的自殺の類型、ジンメノレの『社会的分化論』におけ る全体性と個別性とによって分節化される社会的水準論、さらに M. ウェーバー の近代化論での共同. 関 係 ( Vergemeinschaftung) と 利 益 社 会 関 係. ( V e r g e s e l l s c h a f t u n g ) の理念型を通観したとき、テンニェスの呈示したゲマイン. シャフトとゲゼノレシャフトとの対概念との共通性は看過できないものがある 01 このようにテンニェスが同時代へ与えた影響、そしてテンニェスが受けた影響 は枚挙に暇がない。また現代社会学のなかでも、主観的行為論の立場から秩序 形成を模索したパーソンズの『社会的行為論』では、研究の主題として取りあ げられているのは M. ウェーパーで、あり、テンニェス論は補遺としての位置づけ にすぎないものの、そこにはテンニェスの理念型を行為論として読み替えよう とするパーソンズの基本的な意図が内示されている. O. 11. このようにテンニェス. の受容史を主な社会学理論に限り、大局的に把握してみても、彼の影響範囲は 広範に及び、そして複雑かっ E 大である。. 01. ウェーバーは、「共同社会関係 j の 概 念 規 定 を 、 一 定 の 行 為 に 対 す る 構 成 員 の 主 観 的. 共属感情のなかに求めた。また、「利益社会関係」の概念を、利害誠整と合理的協定と に動機づけられた行為により結合する人間関係と規定している ンニェスの. O. この二つの類型は、テ. 『ゲ、マインシャフトとゲゼルシャフト Jにもとづき想、超された構想、であ. るとウェーバー自身述べている. O. ここでウェーバーは、共同社会関係(ゲマインシャフ. ト)の成立を感情に基づくものとみなし、また利益社会関係(ゲゼルシャフト)の成 を行為による形成のなかに見ている. O. この意味で、ウェーパーにより示された二つの人. 間関係の類型は、テンニェスによるゲマインシャフトとゲゼルシャフトとからなる一つ の類型とは、内容的に近い関係にあるといえる。マックス・ウェーパ~. u 社会学の基礎. 概 念 J 阿閉吉男、内藤莞爾訳、東京、恒星社厚生閣、 1 9 9 9年 、 p p .62・6 6 . なお松井克浩によれば、『社会学の根本概念』を著すまでの初期ウェーバーのゲ、マイ ンシャフト概念は、テンニェスにおけるゲ、マインシャフト概念とは異なるという。ウェ ーバーにおける共同社会関係の概念、は、主観的行為者の予想や意味付与が、他の主観と 同じ意味連関のうちに潜在的に属し、しかも客観的に妥当する意味としては理解されな い 状 況 を 指 す 。 松 井 克 浩 『 ヴ ェ ー パ 一 社 会 理 論 の ダ イ ナ ミ ク ス 諒 解 j 概念による『経 済と社会 Jの再検討 J 未来社、東京、 2007年 、 p .9ト 1 0 6 . 11. T a l c o t tP a r s o n s : The s t r u c t u r e ofs o c i a la c t i o n. αs t u d yi ns o c i a lt h e o r yw i t hs p e c i a l. r e f e r e n c et o a group ofr e c e n t Europeαn w r i t e r s . vo .1 2,New York. p p . 6 8 6 6 9 6 .. 1 0. F r e eP r e s s,1 9 6 8,.

(14) だが、古典的理論社会学における理論相互の影響関係、が濃密であるのに比べ て、現代におけるテンニェスの社会哲学、殊にゲマインシャフト論への評価は、 当に低く見積もられていると言わざるをえなし ¥12 ここにはテンニェスの教科 的な理解が存在する. O. それによれば、まずテンニェスは、現に存在しない過. の遺物を懐古し、現に機能しているゲ、ゼ、ルシャフト的利益社会を否定する主 張を唱えたという意味で、ゲマインシャフト的. 体にすがる懐古約浪漫. 者とみなされている叱このような従来のテンニェス像は、テンニェスの議論を 現実の制度や組織を含む社会的関係体において読み解こうとしても、そこには ゲゼルシャフトからゲマインシャフトへと戻る道筋が示されていないという理 由から導き出されている. O. こうした誤解に満ちた従来のテンニェス像のなかに. は、テンニェスは、もともとゲマインシャフトとゲゼルシャフトとの関係を明 瞭に説明することに失敗したとの評価も存在する 140 また、テンニェスのゲ、マイ ンシャフトとゲゼルシャフトとの連続性は、進化論的な方向で解釈されること もある そうした解釈の一伊!として、山本啓による近代自然法の解釈を挙げる D. O. 山本が、テンニェスの議論を進化論的に解釈していることは、次の箇所におい て確認できる. 1 2. O. 鈴木幸寿「し 1 ま 、 な ぜ テ ン ニ エ ス か ( [百本大学〕社会学科創設 70 周年記念、号)、. 9 9 1年、 p . 2 8 . 『社会学論叢』、日本大学社会学会、 1 13 杉之原寿一『テンニエス~ (人と業績シリ…ズ. 9) 有斐問、東京、 1 9 5 9年、 p . 5 2 .な. らびに、吉田浩 f テンニエス~ p . 3 4 . 1 4. 十回によれば、まずゲ、マインシャフトに関して、意志論の論理から社会的関係表象の. 説明にテンニェスは失敗しているという. O. つまり、精神のゲマインシャフトを体現する. ツンブトまたはギルドは、偶人意志の精神的生命の次元(記憶、良心、天分、勤勉)お よび社会意志の精神的生命の次元(宗教、信仰)から説明できないと結論する 参照)。吉田は、. .p(. 8 3. は外的実体的な社会的関係表象を形成するものであり、従って、. J 志論は常に具体的な社会的実体から説明されなければないと述べている。また逆も然. りで、意志論は具体的な社会的実体を説明できなければならない、というものである. O. 回は、「テンニェスの本質意志論の根本的欠陥は、その焦点がつねに家族におかれて いる点にある j と し て 、 テ ン ニ ェ ス の ゲ マ イ ン シ ャ フ ト 論 が 空 間 の 共 有 に も と づ く 村 落 同体、ないしは精神のゲマインシャフトを十分に説明していない、と指摘している。. 1.

(15) 「共同の規範を苧んだゲ、マインヴェーゼンが生み出されると、ゲマインヴェー ゼンは、自らの創造行為によって実定法の領域へと移行する oJ. 1 5. しかし、この解釈は、以下の近代自然法に関するテンニェス自身の評価と相容 れない。. 「近代自然法は、支配者階級の発展のために働いた後、今度は被抑圧者階級の 綱領として(・ー)自己の労働の結果を要求する権利として、また校猪や健倖に よって獲得された不労所得に対する抗争の武器として展開されるのである … (・ ). W われわれと共に生まれた J. O. ゲマインシャフト的法の記憶が、( .一)活動. を停止してはいるがなお発展のカを保持しながら、庶民大衆の心の奥に蔵され ているからである. O. の理念として、人間の精神の永遠. なぜなら、自然法は. なる、売却不可能な所有物であると解せられる oJ 16. 山本の見解は、テンニェスの共同体論をゲゼルシャフト的方向に引き寄せて見 る従来の解釈傾向を示すものである. O. 伝記的. にも、マルクス. ズムにも、また経済的自由. として、帝国主義にも、ナチ にも組みすることはなかっ. たテンニェス像が一人歩きを始め、ゲゼルシャフトに与する立場から、誤解に 満ちたレッテルを貼られることになる. O. そうして、ついにはテンニェスの意志. 論に基礎づけられた理論の全体像への正当な評価が、研究対象として取り上げ られる機会は極端に少なくなってゆくことになるべしかし、そうした従来のテ ン エ ェ ス 像 を 刷 新 す る 可 能 性 を 与 え る 論 考 が 、 遺 稿 で あ る Die T a t s a c h ed e s. W o l l e n s( 意志の事実)である. G. さて、意志論を主題とする『意志の事実 Jでは、選択意志に対する本質意. 51. 山本啓「唯物史観と社会進化論の交差一マルクス、テンニース、ハーバマス(唯物. 史観の再検討<特集>) 61 71. J ~,思想、よ岩波書庖、 1982 年、 695 号、 p.188.. ~ゲマインシャフトとゲゼルシャフト(下 )j p p.152f( .G .u .G S . 1 8 4 ) .. 鈴 木 「 テ ン ニ エ ス Jp p.29fお よ び p p . 3 6 .f f. 1 2.

(16) の優位な関係が、主著よりも簡潔明瞭に述べられている。また、遺稿における と記憶との関係に着目することにより、ゲマインシャフトの復活という社 会の将来構想は、意志論のなかで検討されるべき問題としての位置づけを得る ことになる. C. そのような見通しのもとで、本稿は、私的経済的欲望に支配され. た現代の人間環境においても、普遍的かっ恒常的に存続するゲマインシャフト の萌芽と可能性とが見出されうるものであると考え、またその可能性を照らし 出すための道筋のひとつである意志論を、遺稿において考察するものである. O. 本論文では、 1 8 9 9年に遺稿として残されたテンニェスの『意志の事実 Jにお ける意志論の構想、をもとに、ゲゼ、ルシャフトの制約としてのゲ、マインシャフト の整合的な基礎づけを目指す。ここで整合的な基礎づけとは、意志議に内在的 にゲマインシャフトとゲゼ、ルシャフトとの関係を示すということである ニェスの. O. r意志の事実』は、主著『ゲ、マインシャフトとゲゼルシャフトJl. テン (. 8 8 1年、第二版 1 8 8 7年)における意志論の基本構想、を継承するものであり、 版 1 そこに大きな変更は認められない。 しかし、遺稿において、さらに徹底されているのは、「認識における心的状態 J が「煮志の事実 J に よ り 支 え ら れ て い る と い う 構 図 で あ る は. d . W . の事実とは、「意志されていない(・…)最初の事実があり、(…) されているものがあ〔り. S 5 )1. o. 意志. [第二に〕記憶. J (…)そうして認識され、記憶された事実にとっての. 意志が、第三の事実として、意志の遂行をなす J ( T . d . W . S5 2 ) そうした記憶を 介在して生成する意志の流れの全体のことを指す。『意志の事実 Jでは、意志の 流れのなかで、主観と客観との相互槙係が一定の心的状態の均衡として保持さ れるのは、記憶を媒介として持続的に認識されると考えられる. O. また心的状態. の均衡が前提となり、意忘は、その力を一定の表象の獲得を目指して駆動され ることが可能になる o [i意志の事実』の次の引用箇所において、テンニェスは、 心的状態の均衡に先立つ認識の心的状態が、個別的な意志の発動を可能とする 思惟の活動を準備すると述べている. G. 1 3.

(17) 「意志の心的状態のなかで、心的活動の変化、そして心的活動のなかで、再変 化が起こる. G. だが意志の心的状態は、認識の心的状態を前提としており、認識. の心的状態は、第一に、再生によって、活動的な表象へと変化する口その後は じめて、決意が可能となる あるのだ。. O. ここで決意の活動は、意志を形成する前提として. し1 換えれば、決意の活動は、さらに活動の可能性を思惟すること. を含むということである. O. 個体に固有の心的活動からおよそ確定した未来に向. けて、意忘された行為は、その行為の成就ないしは作用として生じる. O. こうし. た思惟の基礎をなしているものが、共通の生と力の感情である oJ.T( d . W .. S5 2 ). 18. そして、テンニェスによれば、 f認識における心的状態 j には、「主観と客観と の相互関係 j としての「表象のうちに J 自己と他者との相互関係が意味されて いる. O. このことは『意志の事実 Jの次の二つの箇所に言及されている. O. 「対象の知覚ないし表象の類に関することを男j r の視座から捉え直すならば、そ れぞれの観念を伴い、対象の知覚や表象には快の婆素が含まれるということで ある o (・・・)表象が適意として落ち着きどころを得るのは、対応する知覚と他の 感覚が適意のなかで溶ち着きどころを得ているからであり、従ってそのような ものとして表象が記憶されているからである o J ( T . d . W .S1 4 ) 91. 1 8. Es f i n d e ta l s oe i n e Verwandlung p s y c h i s c h e rT a t i g k e i ti n den psychischen Zustand d e s. Wollensunde i n eRuckverwandlungi np s y c h i s c h eT a t i g k e i ts t a t t .Derp s y c h i s c h eZustandd e s Wollensh a ta b e rdenp s y c h i s c h e nZustandd e sKennensz u rVoraussetzunιdieserverwandelt s i c hz u n a c h s tdurchd i eReproduktioni ne i n ea k t u e l l eV o r s t e l l u n g,danne r s ti s td i eT a t i g k e i t d e sB e s c h l i e s e n s moglich,d i eh i e ra l sd a s Wollen b i l d e n dv o r a u s g e s e t z tw i r d ;s i ea b e r i n v o l v i e r tf e r n e rd i eMeinungd e sKonnensd i e s e rT a t i g k e i t,d . h .d a su b e r h a u p to d e rz ue i n e r bestimmtenkommendenZ e i ta u sd e re i g e n e npsychischenT a t i g k e i td i eg e w o l l t eT a t i g k e i ta l s d e r e nVollendungo d e rWirkungs i c he r g e b e .D i e s e rMeinungl i e g td a sa l l g e m e i n eLebens und 幽. K r a f t g e f u h lz uGrunde.S . l0 5 . 19. m i tWahrnehmungo d e rV e r s t e l l u n ge i n e sGegenstandes w i rwurdenl i e b e rs a g e n :m i tj e d e r ぅ. 1 4.

(18) 「人が人としてあるために重要なことは、意志が生との関連においてまさに制 約されているということである. O. 換言すれば、関心や目的との関連において制. J (T. d.W.~53) 約されているのである o. 20. さらに「認識における心的状態 j が「意志の事実 j に支えられているとは、 自己と他者との共同関係が、本質意志に基礎づけられているということである 210 本質意志は、「思惟を含む意志 j とされる。この命題には、表象関係の認識に関 与する意志のはたらきが表現されている. そうであるならば、「怠志の事実 j に. O. の自発性を通して. は、表象の相互関係の織りなす世界が 現れる作用が認められる. O. いまここに立ち. そうした自発性が、個別的な衝動としてあらわれ、. 他者を巻き込み、やがて他者に巻き込まれる語りの渦へと高まってゆく様は、 本質意志の三つの形式一一適意、習慣、そして記憶一ーのなかに説明されてい る この f 自発的なものとして理解 J 22されるべき存機的生命こそ、本質意志が、 O. 差異性を損なうことなく、個別性を全体へとつなぎあわせることで形成される 人と人との関係の相関的流れであり、その流れこそ習慣や儀礼のなかに痕跡を 残す了解の構造にほかならなし'1. 2 3. そしてその了解の構造の一つの表現形式は、. 表象の相互関係と意志の事実との交錯点に現れる、表象としての記憶であり、 また意志としての記憶である. O. I d e e,d i ee i nL u s t“Elementi ns i c he n t h a l t .・ (・ ・ ) V o r s t e l l u n g e ng e f a l l e n,w e i ld i eentsprechenden WahrnehmungenundanderenEmpfindungeng e f a l l e nhaben,indema l s os o l c h ee r i n n e r twerden. S . 5 3 . 20. Bedeutendf u rdenMenschena l sMenscheni s td a sWollendurchdenZusammenhangmit. demLebens c h l e c h t h i n ;d .i ,m i tdenI n t e r e s s e nunddenZwecken.S . 10 7 . 2 1. Ferdinand T o n n I e s :S o z i o l o g i e im System d e rW i s s e n s c h a f t e .n S o z i o l o g i s c h eS t u d i e n und. K r i t i k e n,ZweiteSammlung J e n a :V e r l a gGustavF i s c h e r 1926,S .24 .l ラ. 22. ラ. r有 機 体 の 生 成 が 自 発 的 な も の と し て 理 解 さ れ な け れ ば な ら な い の と 同 様 に 、 本 質 の生成も自発的なものである。~ゲマインシャフトとゲゼルシャフト(上 )JJ p .1 6 8. .G( u . .G S . 7 5 ) . 2 3. ~ゲ、マインシャフトと. ノレシャフト ド (. ) J Jpp.183f(.G. 1 5. u . .G S . 2 0 1 ) ..

(19) 少なくとも日本の人文科学の領域では、社会学者デュノレケームは、テンニェ スよりも、その名を馳せている. O. 彼は、初期理論社会学の成果の一つの到. を「社会的事実 J の概念をもって示した。「社会的事実 J とは、個別性と全体性 との間にある相関的流れそのものである. O. それは「集合表象という(・ー)諸個. 人の意識が結合しなかったならば生まれてこないような精神的状態 J すなわち. Ir{国人の本位から由来する精神的状態の上にさらに付加された精神的状態の E 大な総体 J ける多 J. 24とされる. O. これはテンニェスにより「多における一、またはーにお. 2 5とされる実在的有機的生命そのもののことである. O. このテーゼは、一. 九世紀後半に覚醒した社会学、心理学の問題意識に共通して宿っている. O. その. 問題意識のなかで、いまここにある個人の端緒は、先行する共同性の文化的宗 教的営みのなかで生成するものとして捉えられ、各人のなきあとの痕跡も人と 人との相関関係のなかで表現されるものと考えられる. O. こうした相関性の流れ. のなかに人間の諸関係を捉える思想は、例えば、アルヴァックスの集合的記憶 論、初期フロイトの精神分析学的方法ならびに無意識の発見、ユングの集合的 無意識、ウェーバーの存在と当為の区分、ないし価値文化論、ブーバーの対話 関係であり、やがてはハイデガーの世界内存在、和辻の空間的志向性に基づく 文化論、アレントのリアリティ論、それらの応用形態として押し出されてくる ポストモダンの緒論、なかでもレヴィナスの他性と同一性との緊張関係へとつ ながっている. O. 相手の存在を自己との相互関係の中に、すなわち「潜在的エネルギー j のな かに見ようとする思想は、テンニェスの主著のなかで、「認識における心的状態 j と「意志の事実 j の二つの事実の聞に関与する、知性の質的相違に対応する意 のあり方を振り分ける参照点となっている. O. 「絶対的かっ棺対的な意味を物差しにすることで、富有のカから出た意志の恒 変さがそれらしくあらわれる. 2 4 2 5. デュルケーム. r自殺論 J. O. 可視的に像として表象されうる重要な. 宮島喬訳、東京、中央公論社く中公文庫>、. U ゲマインシャフトとゲ、ゼノレシャフト. Jp .3 4.G(. 1 6. .u .G S . 3 ) .. 1 9 8 5年 、 p . 3 9 2 f ..

(20) のうちに大きな位置を占める. 不変さは、. O. そしてそれゆえに意志の恒常不. 変さは、意識から他のものを押しのけ、しかも恒常不変さは意識からたやすく 押しのけられることはないc それゆえ、意志の恒常不変さは、心の無意識の領 域においても存続することで、まもなく絶え間ない準備へと歩み出る. O. 形式の. 力は、意志の質の力であり、安定さと重大さであり、潜在的なエネルギーであ . W . ~5 3 ) 26 るo J .T( d. この相関性への接近方法には、同時代の他の思想家と一線を画すテンニェス の独自性が示されている. O. というのも、ここでテンニェスの意志論には、. ドイ. ツ観念論的意志理解を引きずる「因果性としての意志j とは異なる相が示され ていることが見て取れる えたカントによれば 身を規定する能力 J. 27. O. ドイツ観念論のなかで意志の基礎定義の出発点を. 意志は、表象に対応する対象を生みだすように「自分自 とされる. G. これこそテンニェスにより説かれた選択意志で. あり、すなわち選択意志と表象との関係、として、選択意志に従属する形態であ ることが示されているのだ。ここで「表象J というターミノロジーに相応しい 言葉を用いるならば、「機械的形成物 J. 2 8である. O. また f意 志 j というターミノ. ロジーに近づけるならば、概念(観念)による構築である 志論の内実は. O. すなわち、選択意. 概念的知性に駆動された主体が、他者の多様な差異性を目的実. 現のための表象へと抽象するエゴイズムへの反省のもとに展開されているのだ。 選択意志論を支柱とするカント倫理学とその系列は、「汝の格率が普遍的な法. 26 N achdemMased e ra b s o l u t e nundr e l a t i v e nBedeutungi s td a sBeharrend e sWollensa u s. e i g e n e rK r a f tw a h r s c h e i n l i c h .DasBedeutende,s omogenw i rb i l d l i c hv o r s t e l l e n,nimmte i n e n grosenRaumimBewustseine i n,a u sdeme sd a h e ra n d e r e sv e r d r a n g t,unda u sdeme sn i c h t l e i c h tv e r d r a n g tw erdenkann;daherb l e i b te s,auchimunbewustenG e b i e t ed e rS e e l e,naheund i ns t e t e rB e r e i t s c h a f th e r v o r z u t r e t e n .一 一 DieKraftderFormi s td i ed e rQ u a l i t a td e sWollens, s e i n eF e s t i g k e i to d e rE n t s c h i e d e n h e i t,s e i n e Energie¥SS.107f. ラ. 27. カント『実践理性批判 J 波多野精一¥宮本和古、篠田英雄訳、東京、岩波書届く岩. 波文庫>、 28. 1998年 、 p.4 .l. Uゲ、マインシャフトとゲゼルシャフト(上) 1 7. ~ p .34.G(. u . .G S . 3 ) ..

(21) 員Ijであるかのように行為せよ. J29と、神的存在への拠り所を失いつつあった近代. 市民社会にて要請される普遍的規範を示しながらも、そうした道徳性の原理は、 知により選択された見取り図に向かつて力を発揮する行動様式と重なるところ に確立されている. その行動様式のなかで、他者がもっ「一切の性質の差異 j. O. は、「純粋に量の差異 j に置換されることになる 30 それは、分かち合うことの なかに成り立つ、寡黙で傷つきやすさを湛えた互いの棺互理解や約束(T.. d.W. ~. 5 0 ) 31、親密性、地域性、伝統文化を否定し、また捨象し、十把一絡げの同一性. を支配的に棺手に搾しつける暴力である. O. テンニェスによれば、そうした主観. による客観の操作を駆動するのは、選択意志とされる一一殊に効率性と迅速さ をもって自己利益を追い求める呂的合理的な功利約気質のなかに、他者を単な る物件とみなすエゴイズムの現代的傾向が指摘されている 32 これが選択意忠の 思考行動様式である. O. そう考えれば、上から目線の支配的同一性を振りかざす. 抑圧的思想、の持ち主であり、<ナチズムの「血と大地. j. の思想、の代弁者>とみ. なされてきたテンニェス像は、もはや甚だしい歪曲にすぎないことは言うまで もないであろう. 29. 3 3. むしろ、テンニェスは、. カント『道徳、形而上学原論』. ドイツ観念論の呪縛を解き、「精神. 篠田英雄訳、東京、岩波. く岩波文庸>、. 1998 、 1f. p . 8 5 . 30 3 1. ~ゲ、マインシャフトとゲゼルシャフト(上) ~ p .200.G( u ..G S . 9 2 ) .. A l se i ns lt 1i schweigend V e r s p r o c h e n e sg i t1 a l l e s,was a l ss e l b s t v e r s t a n d l i c hi n den. S50,. g e n g e n s e i t i g e n Beziehungender Menschen v o r a u s g e s e t z t und e r w a r t e tw i r d .( T . d .W. S . 1 0 3 . ) .. ならびに、主著の以下の箇所を参照した。「了解はその本質ヒ暗黙のものである。な ぜなら、了解の内容は、言葉では尽くしえないものであり、無限なものであり、概念的 把 握 を 許 さ な い も の で あ る か ら o J ~ゲマインシャフトとゲゼ、ノレシャフト(上) ~ p p .62f .G( u ..G S . 1 9 ) . 32 3. ~ゲマインシャフトとゲ、ゼノレシャフト(下) ~ p .79.G(. クリスティアン・グラーフ・フォン・クロコウ. デガ~. u ..G S . 1 4 1 ) .. f決断:ユンガー、シュミット、ハイ. 高田珠樹訳、東京、柏書房くパルマケイア叢書 1 1、 >. 1999年 、 p p . 1 3 2仔.. らびに、新明王道『ゲマインシャフト J東京、恒星社厚生関、 1 9 7 0年 、 p p . 6 3 f .. な. rテン. ニェス自身ナチズムによってゲマインシャフトの観念が政策的に利用されるのに対し て危慎の念をもっていたことは事実である。しかし彼のゲマインシャフト論のなかに彼. 1 8.

(22) 的状態の巨大な総体」という表象の世界を支えつつ、またその全体としての複 雑な世界に協働する意志のもとに繋ぎ止められうる人間の共生の可能性を模索 する思想の系譜のなかに立っているのだ。 その可能性の模索こそ、まさしく本質意志論の内実をなす。テンニェスの社 会哲学では、意志が時間性の根源とみなされる. O. それゆえ、自己と他者との相. 関関係、は、現在の相において一度たりとも複製されることのない瞬間の出 の連続が過去の棺に呑み込まれ、過去の相において現れるものとして、そこか ら取り出されてくるものと考えられる 34. 表象 j というターミノ口ジーに相応. しい言葉をあてるならば、それは有機的実在性ならびに了解の構造である た「意志 j というターミノロジーに近づけるならば、記憶のことである. O. O. ま. それ. は、死していまはなくとも、過去の世代から現在へと連続的に汲み与えられて いる歴史文化的共生の出来事をたぐり寄せる方法(本質意志論)であり、将来 における人と人との関わり合いの問題を、いまここに立つ現在の人間の知的態 度が引き起こす問題として診断する方法(選択意志論)である. O. 従って、テンニェスの本質意志論は、他者の意志を侵害して、自己の意志の みを肯定するエゴイズムの引き起こす近現代の人と人、人と自然との共生関係、 の賞味を潤い直すための有力な方法論であるといえよう. C. それは、他者を主観. の操作対象としてみることで、他者の存在を連関無き永遠なる他者へと疑める エゴイズム的生(ゲ、ゼルシャフト)から、自己の意志も同じーっの意志に巻き 込まれた実践的存在として出来事を共に担う(ゲマインシャフト的). r同情 J. と. 「共感 j への転回を希求する思想である 350 そうしたテンニェスの「意志の の内実こそ、. と表象としての世界の接面をなす f記 憶 J. 象としての. 記憶と、意志(想起)としての記憶一ーであり、また寡黙な了解の言語に属す. の意図のいかんにかかわらず保守的反動主義によっても利用され得る論理が含まれて いたところに問題があったのである o J 34. r本 質 意 志 は 過 去 的 な る も の に も と づ い て お り 、 生 成 し つ つ あ る も の と 同 様 、 こ の 過 的なものから説明されなければならない。~ゲマインシャフトとゲゼルシャフト. (上)~ .p 1 6 5.G( u . .G S . 7 3 ) .. rゲマインシャフトとゲゼルシャフト(上) 1 9. ~ . p. 59f( G . u . .G S . 1 7 ) ..

(23) る記憶への知性の態度が、意志論の構成を、本質意志と選択意志との二つの形 式にわけるアウトラインとなっている. O. それゆえ、従来、不明瞭なものと解されてきたテンニェスの意志論の構造は、 志論と選択意志論とのそれぞれの構想のなかで姿を変える記憶の位置づ けを追うことで、より整合的に解釈されると筆者は考える. O. こうした「記憶 J. を荷においた意志論の再解釈を通して、二つの意志は整合的に区別され、それ により意志論に基礎づけられた体制論の構成一一ゲ、ゼルシャフトの生成の制約 としてのゲマインシャフトーーは明確な位置関係を得るに至るだろう。否、少 なくとも、テンニェスの体制論の構想に関して、「純粋 J に理論的に議論するひ とつの共通口が見出されうることを筆者は期する. 20. O.

(24) 第二章. 先行研究における記憤と本質意志との関係. 第一節. 本質意志論に関する従来の解釈(一). :行為の原因性として解された本. 士山. 意 質. ここでは、従来のテンニェス研究において. 論の定説とされている、行為. の原因性に限定した本質意志の解釈が、本質意志論の全体構成を整合的に基礎 づけるには不十分であることを示す。こうした従来の意志論解釈の関式は、選 択的知性と、本質の聴取とに関わる知性との切り分けが不十分であるために起 こる、テクストの断片的誤読により引き起こされるものである. この読み違え. O. は精神のゲマインシャフトの普遍性が、精神的相における記憶論にその構成の 枢要をゆだねられていることを見過ごしてきたために生じる. O. その枢要とは、記憶がその形成と維持とに関わる実在性に本質意志が係留さ れるという観点にある. O. すなわちポリス的共生の記憶に相当する芸術活動、宗. 教と物語とに託される死者への崇敬 36、理解されたことを分かち合う了解、それ ゆえ広い意味での知の歴史的文化的共存構造 37などの、本質意志論に係留する出 来事の一切は、記憶という知性に支えられているということである 38 ここで記 憶とは、「諸々の観念または衝動が住み込むということを意味する J ie t h o sエ [ ートス J J として、「習慣と同時に特別に形成される普遍的知覚力 ( s e n s u s. communis)J のことである 390 すなわち、本質意志に支えられた精神的ゲマイン シャフトであり、その形式としての記憶のことである. O. このことは、まさに精. 神のゲマインシャフトの全体像に関わる評倍の問題に属している. O. しかし、記憶の視角から構成されるべきゲマインシャフトの全体像は、従来 のテンニェス研究のなかでは重要視されることがなかった。ここに筆者は、従 来の意志論解釈に読替の可能性があるということを表明したいと思う. 36. 37 3 8 39. .o( u ..o SS.31 1 tη . ~ゲマインシャフトとゲ、ゼ、ルシャフト(下)l J p .1 7 .4o( .u.o SS.195 .)t ~ゲ、マインシャフトとゲ、ゼノレシャフト(上)l J p .1 8 0.0( .u.o S . 8 2 ) . ~ゲ、マインシャフトとゲゼルシャフト(上)l J .p 1 8 .0o( .u.o S.82). ~ゲマインシャフトとゲゼ、ルシャフト(上. 2 1. pp. 8 6f. G. また、.

(25) 記憶という知性の一種が本質意志論の全体構成に関わるという観点からゲ、マイ ンシャフト像を読み替える道筋を辿ることにより、本来テンニェスが説くゲマ 対象とし. インシャフトの現代的再現も、絵空事としてではなく、理論的な て議論の遡上に載せることが期待されうる. O. 年代ドイツでは、知性と対象との相互性のなかに意志の働きを認める現. 1920. 象学的方法がテンニェス研究に取り込まれる. O. 社会の成員の内的な椋互作用が. 意識の形成過程のなかに埋め込まれると考えたブイアカント 40、また現象学的社 会 学 の 成 果 を 経 由 し て テ ン ニ ェ ス 研 究 に 踏 み 込 ん だ ワ ル タ ー 41等 が こ の 系 統 に 属する. O. これらの現象学的方法を取り込んだテンニェス研究は、意志論を主観. 性の側から辿ることができる知性として再構成する試みであった。しかし、こ うした流れは、他の存在との相互性の契機を、意識の個別的な形成過程に見出 そうとする心理主義的傾向が強いものであるという評価、すなわち歴史的内容 への接続を欠いた局所的な議論であるとの評価を受けることになる. O. 42. さらにテンニェスのゲマインシャフト論は、ナチスの優性民族の思想、に置換 され、そしてマルクス主義的原始共産体制とのすり替えを経て、戦後のテンニ ェス研究のなかでは. そこに保守反動的、封建的、浪漫主義的というあられも. ないレッテルが貼られることになり、ついには意志と知性の相互関係というテ ンニェス研究に本来的な問題意識は跡形もなく流れ去ることになった 430 例えば飯田によれば、従来、テンニェスは、ゲマインシャフトを優位なもの とし、それによりゲゼルシャフトを否定的に評価しているとみなされ、それゆ えテンニェスには「復古主義(あるいはペシミズム) J というレッテルが貼られ また主著『ゲ、マインシャフトとゲゼ、ノレシャフト Jの翻訳者で. ることになる. 44. ある杉之原. でさえもが、テンニェスのゲマインシャフト論の全体像を次の. ように評イ匝している O. 40. A l f r e dV i e r k a n d t :G e s e l l s c h a j i s l e h r e .1( 9 2 8 )NewY o r k :ArnoP r e s s,1 9 7 5 .. 4 1. G e r d aW a l t h e r :EinBeitragzurOntologieders o z i a lω Gemeinschaften,1 9 2 3 .. 42. 新明正道『ゲ、マインシャフト J東京、恒星社厚生関、 1 9 7 0年 、 p . 1 9 .1. 43. 杉之原寿一『テンニエス J 人と業績シリーズ 9、東京、有斐問、 1 9 5 9年 、 p . 5 2 .. 44 飯田哲也『社会学の理論的挑戦~. p . 6 8 .. 22.

(26) 「来るべきゲマインシャフトがし、かなる社会であるかについては、それを特徴 づける何らの試みもなされておらず. テンエエスによって画かれているゲマイ. ンシャフトの像は、過去的・中世的な色彩を強くもつものであるか、あるいは 抽象的・超歴史的な色彩を多分にもったものであった。この意味において、テ ンニエスは浪漫. と呼ばれても止むをえないであろう o J. 45. こうした評価の流れを直接受け入れた日本のテンニェス研究では、スベンサ ーの社会進化論とジンメルの形式社会学の誠停を目指す高田保馬の『社会と国 家j]. ( 1 9 2 2年)や恒藤恭の. f社会と意志j]. 1( 9 2 4年)に始まり、. 1 9 5 4年に杉之原. 寿ーによる『ゲ、マインシャフトとゲゼルシャフト』の邦訳に辿り着く. O. このテ. ンニェス社会学の受容の流れのなかで、集中的に関心を集めたのは、ゲマイン シャフトからゲゼルシャフトへの体制論的移行についてであり、純粋社会学の 構想、の内在的解釈という道ではなかった。杉之原を筆頭に、ほぼすべてのテン ニェス研究では、本質意志も、選択意志も共に、「行動の原因 j または「行動へ の傾向性 j と理解され、それを掘り下げた解釈の展開は見られない。杉之原は、 次のように述べている. O. 「本質意志にせよ、選択意志にせよ、人間の意志はいずれも『行動の原因』ま たは『行動への傾向性』であって、(…)感情、衝動や欲望をみずからのうちに している J46. そのような「ルーティン化されたテンニエス論」から抜け落ちているのは、テ ンニェスの純粋社会学の構想、の中心であるべき意志論の視角において、彼の社 会学の全体像を再構成する方法である. O. 鈴木幸寿は、「ルーティン化されたテンニエス論 j という. を用いて、主著. 45. 杉 之 原 寿 一 『 テ ン ニ エ ス J 人と. シ リ ー ズ 9、東京、有斐関、 1 9 5 9年 、 p . 5 2 .. 46. 杉 之 原 寿 一 『 テ ン ニ エ ス J 人と. シ リ ー ズ 9 、東京、有斐関、 1 9 5 9年 、 p .1 2 .. 2 3.

(27) のみに限定して行われてきた研究の方法論を批判し、別の方法論を示唆してい る その研究の方向性とは、以下のように集約できる O. O. 例えば、 1875年から 1935. 年 ま で に 刊 行 さ れ た 42冊 に 及 ぶ 著 作 を と り あ げ る こ と で 、 ① 哲 学 研 究 か ら 出 発 したテンニェスの学問的遍歴を辿ること、②社会民主党員であったドイツワイ マール時代からナチスの勃興と、それにより学術活動から閉め出された混乱の 時代状況が、テンニェスの思想形成にどのような影響を与えていたかという問 題、③北ドイツのゲマインシャフト的文化要素の残っていたキール罵辺にとど まり、ミュンヘンやベルリンといった大都市での活動がなかったこと. O. 以上の. 三点がルーティンイヒに路らないためのテンニェス研究の方向の一つだと述べて いる. O. 47しかし、筆者は、これまで論じてきたとおり、テンニェスの. 哲学の. 基盤となる意志論それ自身が整合的に再構成されない限り、このルーティン化 は無限のループを描き、不整合な解釈が生産され続け、さらなる否定的なレツ テノレがテンニェスに与えられることになりかねないと考える. O. さて、意志論解釈のなかで繰り返されてきた、テンニェス論のルーティン化 は、「意志 j が 、 行 為 ( 主 体 ) と の 連 関 の な か で 一 義 的 に 理 解 さ れ る こ と で あ っ た。こうした本質意志論の解釈枠組みは、いわゆる一般のテンニェス受容のな かで、行為論の視角からの意志論へのアプローチとして方法的に が強い。秋元は、まさに意志を行為の{掛から描出している. した印象. O. 「人間の意志は、もともと行動の原因または行動への傾向性としてとらえられ ・ (・ ・ ). るo J. 48. さらにこうした解釈枠組みの回定化により、行為を引き起こす意志の主体が全 体を支えるべきであるという、個人の自覚を契機として成立するゲマインシヤ フト像が. されることになる. D. それは逸脱したテンニェス解釈である. O. なぜ. 47 鈴木幸寿九九ま、なぜテンニエスか~社会学論叢~ [日本大学〕社会学科創設. 周年記念号、日本 48. 秋元律郎. r社 会 学 事. 1 9 9 1年、 p . 2 4 4 0 .. 、弘文堂、 1 9 9 4年 、 p . 8 2 3 .. 24. 70.

(28) ならば、本来テンニェスの思想においては、ーなるものは全であり、全なるも のはーであるという、個々の. を超えた相において先駆けて在る全体性と、. そこにつらなる個々の存在の相互関係にゲマインシャフトの実現の契機が見出 される. O. まさにーなるものが全であり、全なるものはーであるという、実在性. のなかに個と共同性の相互関係、を見出す思想、が、本質意志論に理論的拠り所を 与えているのである. O. テンニェスは、以下の引用に示される通り、ーなるもの. は全であり、全なるものはーと表現される実在性と重ね合わせることで、相互 肯定的な意志関係において結合する人間関係(ゲマインシャフト)を構想して いる. O. 「人々の意志は、相互にさまざまな関係を結んでいる o (-一)棺互肯定の関係、は いずれも、多における一、またはーにおける多を表現している. O. J490. 同様に、自然法の概念規定においても、実在性を全体と部分との相互関係のな かで見る視座が繰り返される. O. 「本質意志の主体は、本質意志の形式と同様に、統一体 ( E i n h e i t ) である. O. す. なわちそれは、統一体内部の統一体であり、諸々の統一体を内に含む統一体で ある o J. 50. また適意と習慣と記憶という意志形式、すなわち自然と人間と、そして世界と してこれらの交わりを映し出す記情からなる意志の. 性を、個の行為への自. 覚という単純な視角から引き出すことは、テンニェスの意志論の全体構想、とは く棺容れない思考方法に基づくものである. O. こうした点での誤解は、ゲマイ. ンシャフトの現代的復活への期待が込められた友愛を、個人の主体的行為によ る実現に求めた飯田哲也の議論にまで及んでいると考えられる p . 3 4 .G( u . .G S . 3 ) .. 49. [Jゲ、マインシャフトとゲゼ、ルシャフト(上). ~. 50. [Jゲマインシャフトとゲゼノレシャフト(下). ~ p .8 4 .G( .u .G. 2 5. O. S . 1 4 7 ) ..

(29) 「テンニースの. 学的人間観にもとづく人間像とは、理論的にはみずからの. 意志によって他者と関係を取り結ぶ主体的・能動的存在としての人間像にほか ならない。 J51. 以上のように、テンニェス研究における、意志論の基礎定義は、次第に行為 の原因性として固定化されるようになる. O. たしかにこの意志の基礎定義は、近. 代特有の意志の理解に射していると考えられる. O. 例えば、 f汝の格率が普遍的な. 法射であるかのように行為せよ j は、カント哲学の実践的要請を端的に表す言 葉であり. 5 2、そこで道徳的意志は行為の原因としての基礎づけを得ている. O. カン. トはそこに、行為の生成のプロセスがみずからの内にあるか、外から借用した ものであるかという自己律法の準拠基準を付け加えるが、実践哲学での意志の 基礎理解は、行為することと意志とを同ーのものと見なす視点のもとに成立し ている. O. の理解のもとでの行為とは、「存在. テンニェスによれば、こうした. するものは実現だけ J. という意志の作用の一つの局面だけを抽出して、評価の. 53. 前面に押し出すものである. O. このように先行研究のなかで積み重ねられてきた、. テンニェスの意志論への評価は、「過去を思い出し、与えられた刺戟にそそられ 内面的連関に従ってかわるがわる浮かび上がってくる無数の表象感覚を思惟に よって保持してゆく J 遠いものである. O. 5 4、そうした. f人間の本質に属するし 1 かなる実在 j からも. テンニェスは次のように述べている. O. 「選択意志は、完成に対して存在するものでもなければ、また能力に対して存 在するものでもない。選択意志に対して存在するものは実現だけである. O. 選択. 意志はこの実現によって行為や仕事のうちに刻みこまれ、この行為や仕事は. 51. 飯田哲也『テンニース研究:現代社会学の源流. .p 233、 お よ び .p. J. 京都、ミネノレヴァ. 8 3五. 52 カント『道徳、形市 t 学原論~. p.85.. 5 3. Iiゲマインシャフトとゲゼ、ルシャフト(上). ~ .p. 54. Iiゲ、マインシャフトとゲゼルシャフト(上). ~ p .220.G( u . .G S . 10 2 ) .. 26. 213f .G(. U. .G. S . 9 9 ) .. 、1 9 9 1jf 、.

(30) 賛されたり非難されたりするであろうが、しかしそれだからといって、賞賛ま たは非難が行為や仕事の背景にある意志にも関係するということは、道徳的な 味においても、また道徳とは何ら関係、のない意味においても決してありえな い。道徳、とは何ら関係のない意味においてもありえないというのは、選択意 が人間の本質に属するし 1 かなる実在でもなしサミらであり、道徳的な意味におい てもありえないというのは、気分や気立や良心にだけもとづく仲間に対する直 接的肯定を選択意志は決して含みえなし 1からである o J. 5 5. ここでテンニェスの語調のなかに見え隠れするのは、その実現に向けて投入さ れる行為の方向を先行的に規定する、普遍性という目的表象の設定の仕方であ る. O. テンニェスによれば、それは選択「意志の先主 J. 5 6という、人為的に選び取. られた決意の問題として、本質意志の多様なあらわれを経由して最後に出てく るものと見なされている. O. 「過去を思い出し、与えられた刺戟にそそられ内面的連関に従ってかわるがわ る浮かび上がってくる無数の表象感覚を思惟によって保持してゆく人間にあっ ては、かの『意志〔選択意志〕の先在性 Jはこの最後の過程においてのみ認め うるのであって、このような記憶活動あるいは想像活動も愛好と嫌悪 (Neigungen u .Abneigungen) という二つの分岐せる組織に依存していると考えられる. O. われ. われは、この点でだまされやすい。なぜなら、あらゆる知的作用が始めて感情 や熱情などを生ぜしめるかのように見えるから o J. 57. 適意、習慣、記憶という意志の形式を経由する精神的ゲ、マインシャフトの形成 過程からみれば、普遍性への意識は、本. と表象との相互関係、すなわち. 実在性の縞の自を経験する過程の最後に自然に浮かび上がってくるものである. p .214.G( .u .G S . 9 9 ) .. 日. 『ゲマインシャフトとゲ、ゼルシャフト(上)j]. 5 6. ~ゲマインシャフトとゲゼ、ルシャフト(土)]j .p 220.G( .u .G S S.102 .)f. 57. ~ゲマインシャフトとゲゼルシャフト. C1J] j p .220( G . u . .G S S . l02 .)f. 27. O.

(31) たとえば良心という徳に関わる意識は、記憶の網の自を経由するものとされる 580 さや. そのようにいえるのは、道徳的良心が、. さという個人意志の性質. により体現されるのではなく、人と人との相互関係のなかで形成される、熱情 的傾向のなかに現れると考えられ. や同情として現れる他者へと向かう本 ているからである. O. 「善良な意志というよりはむしろ意志に力点をおいて善良な意志と言われるも のは、普通、何かある活動または既成の作品のうちに客観性を有している現存 する激しい緊張であって、能力や完全な業績 ( L e i s t u n g ) とは著しく異なるもの である oJ. 59. このような流れの中で、「記憶は本質的にまったく実践理性であり、必然的意見 ( o p i n i on e c e s s i t a t i s ) であり、至上命令である. O. したがってまた、もっとも完全. な形の記憶は、われわれが良心とか天菓とか称しているものと向ーである J. と. 60. 述べられることになるのである O そうした「仲間に対する直接的な肯定 J. 61. は、他者との相互関係のなかに生ま. れるがゆえに、選択意志のなかには含まれることがない。テンニェスにとって は、明断判明さへと抽出されたカント的普遍性への志向も、知性において f 目 的と手段相互間の関係というような単純なカテゴリー j に選り分けられ、「普練 と習熟 j とを要する概念構築、すなわちすでに存立する本質を前提として、本 の生成の後に付け加えられたものとみなされているのだ。. 62. 「概念相互間の関係の確定は、真の思弁的な思惟である言語表象によってのみ 行うことができる. D. 選択意志の形成についても、もしそれが、わたしはしなけ. 5 8. ~ゲマインシャフトとゲ、ゼルシャフト(上) j p p .222f .G(. 5 9. ~ゲマインシャフトとゲ、ゼ、ルシャフト(上) j p .1 9 1.G( u . G .S . 9 9 ) .. 60. ~ゲマインシャフトとゲ、ゼ、ルシャフト. 6 l. ~ゲ、マインシャフトとゲゼ、ノレシャフト(上) j .p. 6 2. ~ゲマインシャフトとゲゼルシャフト. U. .G. S S . l0 1 .)f. (J二 )j p p .221f( .G u . .G S . 1 0 1 ) .. 21 4( G .u . .G S .98 ) .. j .p 219.G( u . .G S . 10 2 ) .. 28.

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