社会の未来を拓くネットワーク情報共有空間 : 2.情報共有空間のためのウェアラブルコンピューティング
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(2) 2 情報共有空間のためのウェアラブルコンピューティング • ファッション性:装着する機器は被服の一部として ファッション性を有することになる.目立つものはも ちろん,目立たないものもファッションである.. • ユビキタス情報・機器利用:身の回りに存在するユビ 図 -2 左から,腕時計型の加速度センサを用いた入力デバイス,指 輪型のポインティング装置,頭に装着するハンズフリー型ポ インティング装置.前者 2 つは両手に装着することで文字入 力などの複雑なデータ入力を実現している.後者は両手が使 えない状況でのポインティングや文字入力を実現する.. キタス情報やユビキタス機器,サービスなどをより高 度に利用できるようになる. 上記に加え,人々のコミュニケーション能力の拡大と いうポイントが考えられる.いつでもどこでもコミュニ ケーションをとることができるという点は,本稿のテー マである情報共有空間の観点から重要である.上記のポ. けることで,ユーザ自身の顔の表情を撮影できるよう. イントをコミュニケーションという観点から捉えなおす. にしたり,眼球の周辺に装着してユーザの視線を検出. と以下のように表現できる .. できるようにしたりする装着型カメラもある.. • 手軽なコミュニケーション:いつでもどこでも,何か. • 装着型入力デバイス:キーボードやマウスを腰につけ たり,手に巻きつけたりする.腕時計型の加速度セン サを用いた入力デバイスや指輪型のポインティング装 置,頭に装着したハンズフリー型ポインティング装置 なども開発されている(図 -2).ズボンや服にボタン. 3). をしながらでもコミュニケーションができる.. • 長時間のコミュニケーション:生活や仕事の中で長時 間にわたってコミュニケーションができる.. • 現場でのコミュニケーション:生活や仕事の現場でコ ミュニケーションができる.. やロータリーエンコーダ,タッチセンサを装着した. • ファッションによるコミュニケーション:ファッショ. り,靴に加速度センサを入れたりすることも有効であ. ンは本来人と人のコミュニケーションの一部を形成す. る.入力デバイスが提供する主な機能として, メニュー. るものである.ウェアラブル機器はその機能を拡大し. 選択,ポインティング,文字入力,センシングの 4 つ. たり,機能に多大な影響を及ぼしたりするものである.. が挙げられ,それぞれデバイスに求められる要件が異 なる.. • 生体センサ:心拍,体温,脳波などさまざまな生体信. • 情報利用によるコミュニケーション:いつでもどこで も情報を取得してコミュニケーションの中で活用で きる.. 号が非侵襲型のセンシング機器を装着して検出できる.. これらのコミュニケーションの基礎となるのがウェア. 血糖値など,さらに多くの生体情報が常時測定できる. ラブル情報共有空間である.以下ではこの点について詳. ようになると,日頃の健康管理に特に有用である.. しく述べる.. • 位置センサ:GPS(global positioning system)のよう なグローバルな位置情報をとれるようなものから,赤 外線や超音波を用いたローカルな位置情報センサなど,. ウェアラブル情報共有空間. ユーザの位置を検出するセンサが多数利用できるよう. 人々に共有される情報は,大きく分けて次の 2 通りの. になってきている.. ものがある.. • その他さまざまな入出力装置:IC タグなどの環境情 報を取得できる装置は,状況情報共有空間を構築する 上で有用である.LED や EL チューブ,振動,力覚 フィードバックなどの出力も考えられる.. • 実空間情報:黒板やレジメなど実空間の実物体によっ て提供される空間. • コンピュータ空間情報:インターネットやデスクトッ プのようなコンピュータによって作り出される空. これらの機器を用いてコンピュータを着用利用するこ. 間(サイバースペース)内で提供されるディジタル. とによって,いつでもどこでも何をしているときでもコ. データ. ンピュータが利用でき,生活空間における人々の能力を. これらは従来別々のものであり,机上でチャットをす. 増強できる. ウェアラブルコンピューティングのポイ. る場合は,実空間情報はデジカメで撮るなどしてディ. ントは以下のようにまとめることができる.. ジタルデータに変換し,実空間で会議をするような場合. • 手軽さ:いつでもどこでも情報活用などのコンピュー. は,コンピュータ空間情報はプリントアウトしたり,プ. タ機能が利用できる.. • 長時間利用:生活や仕事の中で長時間にわたって利用 できる.1 日以上にわたる継続的な利用も考えられる.. • 現場利用:生活や仕事の現場で利用できる.. ロジェクタで投影したりすることにより,相互に変換し て利用する必要があった. ウェアラブルコンピューティングによって提供される 情報共有空間はこれらを統合するものである.典型的に IPSJ Magazine Vol.48 No.2 Feb. 2007. 129.
(3) 特集. 社会の未来を拓くネットワーク情報共有空間. は仮想現実感(augmented reality)や複合現実感(mixed. reality)のアプローチがよく知られているが,これは実 空間と仮想空間の情報を重畳していずれかの空間内に提. • 対面型情報共有空間は,現場にいる人たちの間で利用 するものであり,マルチメディア情報を利用したり, 情報を保存したりするという機能が考えられる.. 示するものである.仮想物体が実空間に見えたり,実空. • 非同期型情報共有空間は,さまざまな情報を蓄積する. 間情報を自動的にコンピュータ内に取り込んだりするこ. 情報空間の一種で,コミュニケーションをとる人たち. とが,ユーザが気づかないレベルで行われるようになる.. の関与のタイミングが同時でないケースを考えるもの. また,実空間と仮想空間のどちらが主であるかにより,. である.現場で利用されるブログや情報蓄積ツールが. 形成される空間や必要となる技術が異なるものとなる.. 考えられる. 情報共有空間としては分散かつ非同期のものも考えら. ● マーケットとしてのウェアラブル情報共有空間. れるが,ウェアラブルコンピューティングで特異な利用. ウェアラブル情報共有空間は,マーケットとして捉え. 方法は考えにくいため,本稿の以下の部分では特に触れ. る場合には,業務用と民生用に分けて考えるのがよい.. ないこととする.以下では,これらの分類に従って,ウェ. 業務用途のウェアラブル情報共有空間は,サービスや商. アラブルコンピューティングによってどのような情報共. 品を提供するための空間であり,主としてサービス,ビ. 有空間が構築できるかについて述べる.. ジネスの現場で提供される.営業・セールス,消防・警 察,ファーストフード,コンビニ,警備,介護,道路工 事・建築現場,航空機や船舶の修理,引越し・宅配など. 分散型ウェアラブル情報共有空間. が有望なアプリケーションである.あるいはファッショ. 離れた場所にいる人たちの間での情報共有には HMD. ン性という観点をうまく取り入れると,テレビ番組では. をはじめとするウェアラブル機器が有効である.ウェア. 報道レポータ,司会,ディレクタなど,イベントでは司会,. ラブル機器により以下のようなことが可能となる.. 音楽,キャンペーンガールなどに,競技では選手,監督,. • 遠隔から指示を受ける.遠隔の情報を得る.. スタッフ,メディア,観客などでの利用が可能である.. • 遠隔に通知する.遠隔に情報を与える.. 一方, 民生用途のウェアラブル情報共有空間とは,人々. これらの用途は,業務用では,前章で述べたようなさ. の日頃の生活の中で利用されるものである.携帯電話が. まざまな現場で有効である.たとえば緊急医療のよう. ここ 10 年,若者たちを中心に,人々のカジュアルなツー. な現場で,遠隔にいる専門医が現場にいる人の装着する. ルとして浸透していったのと同じように,これから数年. ウェアラブルカメラの映像情報を見ながら指示を与える. のうちにウェアラブルコンピューティングが急激に浸透. ことや,新人の教育で,遠隔にいる教官が指導を行っ. していくことが想定される.重要な用途として以下の 3. たり,教材やマニュアルを見せながら現場訓練を行っ. つの方向性が考えられる.. たりすることが考えられる.米国ではウェアラブルコン. • 便利,快適:ユーザの日常の生活を便利で快適なもの. ピュータが陸軍などの軍事用途で利用されているが,現. にする.家電のリモコンや携帯電話,情報機器をいつ. 場情報の取得と指示や情報の伝達が主な用途である点で,. でも装着して利用することで,生活が便利で快適なも. 消防・警察や自衛隊,ガードマンなどが利用する場合と. のになる.. 類似している.学校教育や語学学習,ドライバースクー. • 安全,安心:ユーザをいつでもどこでもコンピュータ. ルでも現場での教育で有効である.これらの業務用での. や保護者,警備会社などが見守ることができるように. 遠隔と現場の情報のやりとりのためには,現場や遠隔の. なる.犯罪防止や災害時の緊急通信などに有用である.. カメラ映像やマニュアルなどの情報をどのようにディス. • 豊か,楽しさ:携帯電話の主用途がエンタメ系コンテ. プレイに提示するかが重要である.入出力装置やその操. ンツ利用にあるように,暇つぶしなど日頃の生活を豊. 作の方法など,現場のニーズにあったものが必要になる. かで楽しいものにするために有用である.. ものと考えられるが,さまざまな用途を考慮したプラッ トホームが必要になるものと考えられる.. ●コミュニケーション手段としての. 一方,民生用途は携帯電話の延長として捉えるのが自. ウェアラブル情報共有空間. 然である.ここ数年で,人々は携帯電話を用いて離れて. ウェアラブル情報共有空間は,コミュニケーションの. いても通話やメールができるようになった.ここで携帯. 手段という観点から,以下の 3 種類に分類できる.. 電話の通話機能に関しては,インカムを用いれば,歩き. • 分散型情報共有空間は,遠隔地にいる人と現場にいる. ながらや作業中など,いつでも何をしているときにでも. 人が情報を共有するものであり,携帯電話や遠隔会議. 利用できる点に注目してほしい.これは携帯電話が通話. システムの機能を拡張するものである.. 機能に関してウェアラブル化が進んだということである.. 130. 48 巻 2 号 情報処理 2007 年 2 月.
(4) 2 情報共有空間のためのウェアラブルコンピューティング. 図 -3 打合せ中に HMD を利用することを想定したシーン.双方 が HMD を装着し,図面や数値データなどを共有する.. 図 -4 業務用のディスプレイ服.NPO 法人「チームつかもと」の 活動の中で,バイクレースのキャンペーンガールが利用 した.. 通話以外の機能,特にディスプレイを利用したメールや. 持つコミュニケーションチャネルの 1 つとして,HMD. Web などの機能が最近広く使われるようになってきて. の画面や LED の点滅,音,ディスプレイ服などを利用. いることを考えると,インカムを HMD と組み合わせ. した以下のような新しいコミュニケーション形態が生ま. ることが有望と考えられる.具体的には,ビデオ電話や. れる.. メール,チャットなどのような遠隔にいる人との情報共. • 映像などのマルチメディア情報の共有・蓄積.マルチ. 有が有望であり,以下のような状況が想定できる.. • 高齢者や子供,赤ん坊が遠隔地にいる保護者などとコ ミュニケーションをとる.被保護者と保護者の双方が ウェアラブルコンピュータを利用することを想定する. 現実的には,いずれかで据え置き型の機器を利用する. メディアプレゼンテーション.. • 音声合成や映像合成を用いたユニバーサルでマルチ モーダルなコミュニケーション.. • 医療,商店,レストラン,コンビニなどでのあらゆる 対人サービスにおける情報サポート.. ことも考えられる.いつでもどこでも保護者が被保護. 営業などで情報を参照したり,音声やマルチメディア. 者を見守ることができる.. 情報を活用したりすることは有効である(図 -3) .キャ. • 子供の教育やしつけに利用する.前の例と同様,子供. ンペーンガールがディスプレイ服を着て来客にコンテン. や親がウェアラブルコンピュータを利用することで,. ツを見せたり,イベント会場の案内にディスプレイ服と. 日頃からの教育やしつけができるようになる.. HMD を利用したりするというような用途も考えられる. • 在室の高齢者が生体センサを着用する.これにより,. (図 -4) .. 遠隔地にいる家族が常時彼らの様子を知ることができ. ウェアラブル情報共有空間の業務用途として最も典型. るようになる.. 的な利用例の 1 つが医療現場である.問診やカルテ・専. 基礎技術としては,映像通信,画像解析などの技術を. 門書などの医療情報参照,患者と医師の情報共有,患者. 基礎として,遠隔とのコミュニケーションを可能とする. の意思表示,スタッフ間の情報共有,患者の待ち時間中. インタフェース,特にハプティックインタフェースのよ. の暇つぶしなど,多くの有効な用途が考えられる.筆者. うな,音声,映像だけでない情報共有の方法が今後重要. のグループでは,特に歯科医療でウェアラブル機器を利. になってくることが考えられる.情報共有空間の構築上,. 用するプロジェクトを行っている(図 -5).歯科医療は. 空間や操作の対称性については特に考慮する必要がある.. 現場で問診と施術を同時に行うため,医師と患者が使い. 空間が現場にいる人と遠隔にいる人とで極端に異なるも. やすい位置にディスプレイや情報機器を設置することが. のである場合,コミュニケーションのミスマッチが生ず. 難しい.そのため,HMD のような装着型の情報機器が. る可能性がある.システムとしてそれを解決するか,ユー. 有効であるものと考えた.また,施術中に患者が話すこ. ザがその点を十分熟知して運用するなどの工夫が必要で. とができないため,コンピュータを使って音声出力を行. ある.. うなどして意思表示することは重要な意思疎通のツール となり得る.図 -6 に,筆者のグループで実施したウェ. 対面型情報共有空間. アラブル歯科医療システムの構成を示す.医師はさまざ まなカメラ映像の切り替えをスイッチで行い,患者は音. ウェアラブルコンピューティングは,現場での対面業. 声出力のための画面と医師の示すカメラ映像を切り替え. 務においても有効である.言語,非言語両方の側面を. て利用する構成になっている.このようなシステム構成 IPSJ Magazine Vol.48 No.2 Feb. 2007. 131.
(5) 特集. 社会の未来を拓くネットワーク情報共有空間. 口腔内カメラ 固定型カメラ 映像による コミュニケーション. スイッチ (医師). PC. ジョイスティック 音声による コミュニケーション. スイッチ (患者). パソコン. 図 -5 歯科医院での HMD および入力機器の利用. 協力:しみず歯科医院(大阪府高槻市) .. 医師用 HMD. 患者用HMD. DVD. 図 -6 ウェアラブル歯科医療プロジェクトにおけるシステム構成. 医師,患者双方が画面を切り替えてコンピュータ機能を選 択できる.. 索できれば,会話がより盛り上がることになる.. • 食事やデート,宴会のときなどに映像や音声を利用す る.「昨日こんなことがあってね」といいながら前日 撮影した映像を見せながら話をすれば,宴会やデート を盛り上げるために有効かもしれない.BGM や効果 音などを会話の中で利用することも有効性が高い.. • 障害者支援.視覚障害,聴覚障害,発話障害,認知障害, 記憶障害などで,ウェアラブルコンピュータがユーザ 図 -7 筆者らのグループで神戸ルミナリエでの利用のために作成 した LED ファッション.ゆらぎやセンサ連動などの機能を 有する.. を補助できる.障害者が普段の生活をより自由に送る ために,また活動の範囲を広げるために,ウェアラブ ルコンピュータは有効である.. • 情報機器を利用した新たな屋外ゲームやスポーツ. ウェアラブルコンピュータを装着して子供たちが鬼 により,医師と患者のインフォームドコンセントのため. ごっこなどの屋外ゲームをする.LED やセンサを用. の情報共有空間が構成されている.. いてゲームを演出し,計算機能を用いてゲーム構成が. よく似たケースとして,外科などの手術の現場で医師. できる.. や麻酔技師などの間で情報共有するためにもウェアラブ. • 出会いの支援.ウェアラブルコンピュータを装着した. ルコンピュータは有用であり,実際に医療手術の現場で. 人同士の出会いを演出できる.高齢者社会で高齢者の. もウェアラブル機器を利用する実験が進められている. 対面での民生利用としては,食事や遊びなど,日頃の 生活の中でのコミュニケーションチャネルを増強する. 屋外活動を促進するためにも有効である.. • ひまつぶしなどエンタメ系コンテンツの利用.待ち時 間に友達と共有画面を用いてパズルやゲームを楽しむ.. ツールとして活用できる.ユーザがみな,HMD を装着. また,ファッションは上記のすべての利用例に共通す. しているような状況を想定するなら,電車の中や歩き. るポイントであり,対面型情報共有空間を構成する重. ながらでも画面情報の共有ができるため,交通情報や. 要な要素となる.電飾ファッションやディスプレイ服は,. ニュースなどの情報だけでなく,ショッピングや身の回. 業務用のものから始まり,いずれは民生用として使われ. りのものに関するさまざまな情報が共有できることにな. る可能性がある.これらは自己表現手法の一種として,. る.具体的には以下のような利用方法が考えられる.. 表現力の高いファッションアイテムとなり得る(図 -7) .. • 情報利用.友達や同僚と一緒に画面を見ながらイン. 技術的な観点からは,検索インタフェースやコンテク. ターネットショッピングをしたり,チケット予約,. スト・アウェアネスが重要である.現場でいかにしてリ. ニュース閲覧をしたりすることができるようになる.. アルタイムに必要な情報を得るかという点に関し,新た. また,会話中に会話内容に沿って Web 検索が自動的. なシステム技術が必要である.対面状況で情報活用する. に行われれば,話題に関するさまざまな情報が得られ,. ためのプレゼンテーションツールは,文字や画像だけで. より深い会話ができるかもしれない.時事問題や技術. なく,音声や映像,実世界情報やセンシングされた状況. 用語だけでなく,友達の名前や場所などがその場で検. を取り入れた新しいものとなる.. 132. 48 巻 2 号 情報処理 2007 年 2 月.
(6) 2 情報共有空間のためのウェアラブルコンピューティング. 図 -8 ユビキタス情報ビューアのイメージ.筆者のデザイン画 (左)と筆者とバッファロー(株)によるデザインモック (右).. 非同期型情報共有空間. 図 -9 ユビキタス情報ビューアの視界のイメージ.実世界に重畳 してさまざまな情報が提示される.. ムインフラストラクチャがない点が問題である. 蓄積型の情報共有は民生利用でも有用である.Web. 非同期型情報共有空間とは,ユーザ間で同時に情報共. 上 で 多 数 の 掲 示 板, ブ ロ グ,SNS(social network. 有するのではなく,蓄積データを用いて時間を経て情報. service)などが存在するように,実空間にも同様の空間. 共有を行うケースのことである.テキストベースの掲示. を構築することで,以下のような利用方法が可能になる.. 板を用いる例が典型的であるが,音声や映像を用いた非. • 家庭内掲示板.生活マナーやしつけ,覚え書きなどに. 同期型の情報共有も考えられる.ウェアラブル機器で非 同期情報共有空間を用いることで,現場情報を現場で共 有できるというメリットがある.業務用途としては,以 下のような用途が考えられる.. • 従業員向けの掲示板.工場の品質改善や就労現場の業 務改善に有効である.就労現場のノウハウ蓄積にも有 効である.. • 客向けの掲示板.レストランやショップで客からの書. 利用する.. • ショッピング情報など場所にリンクした掲示板.ユー ザがさまざまな情報を交換できる.. • ものにリンクした掲示板.ものの使用記録や思い出の 記録などに使える.. • 人にリンクした掲示板.ブログや自己紹介などを掲示 しておくことができる.. • 日常生活記録.物忘れを防ぐ.. き込みを受け付け,従業員サービスの向上や客への情. これらの利用の結果,実世界のさまざまな場所,もの,. 報提供に利用する.. 人などには多くの情報が付与されるようになる.将来的. • プロジェクトメンバのための掲示板.板上でブレーン. に人々の身の回りには数多くの情報があふれかえること. ストーミングするなど,企画,立案,進捗チェック,. になり,人々はウェアラブルコンピュータなしに生活を. 情報交換,確認など,プロジェクト推進,管理に用いる.. 送ることに不便を感じるようになるかもしれない.. • 物品情報の管理.備品管理や生産管理など,さまざま. 技術的には情報フィルタリングや情報操作手法が必要. な物品情報が共有できる.IC タグやセンサなどの情. である.アフィリエイトやコンテンツ内広告など,ビジ. 報も得られれば有効性が増す.. ネスを成り立たせる技術も今後は必要になる.図 -8 に,. • 業務記録.法的記録や業務管理に有効である.近年フォ. このような用途を想定して筆者らがデザインしたユビキ. レンジックコンピューティングが注目されているが,. タス情報ビューアを示す.これらを用いると, 将来,人々. 現場での情報記録にはウェアラブル機器の利用が本質. の日常生活での視界は図 -9 のような情報にあふれたも. 的である.ウェアラブルカメラは業務用情報記録の必. のになるかもしれない .. 4). 須アイテムとなり得るものである. これらのアプリケーションを構築する上では,ウェ アラブル向けのブログとそれを利用するためのインタ. まとめ. フェースが必要である.また,たくさんの書き込み情報. ウェアラブル情報共有空間について,分散型,対面. を適切に管理し,その場その場に応じて必要な情報を適. 型,非同期型に分類して述べた.これらの要点を図 -10. 切に提示するようなメカニズムが必要とされる.このよ. にまとめる.それぞれ情報共有空間としての特性が異な. うなシステムは業務現場の教育や効率改善に有用であり,. り,異なる要素技術やシステムインフラストラクチャが. 今後注目される可能性があるが,現時点ではよいシステ. 必要である.分散型情報共有空間はウェアラブル携帯電 IPSJ Magazine Vol.48 No.2 Feb. 2007. 133.
(7) 特集. 社会の未来を拓くネットワーク情報共有空間 分散型 業務用. 応用 民生用. 対面型. 非同期型. 緊急 教育. 接客 セールス 医療. 業務改善 物品管理 ショップ テーマパーク. 見守り しつけ. 食事 デート 遊び 出会い ファッション. 日記 自己紹介. 臨場感通信 検索インタフェース 画像解析 コ ン テ ク ス ト・ ア ウ ェ ア 遠隔操作 ネス ハプティックディスプレイ. 技術. 典型システム. ウェアラブルテレビ電話. 文字入力 ランキング フィルタリング アフィリエイト コンテンツ内広告. ウェアラブルプレゼンテー ウェアラブルブログ ションツール. 話から進展するものと考えられ,画像通信技術をベース に業務用から用途が広まるだろう.対面型情報共有空間 はウェアラブルプレゼンテーションツールから立ち上が り,ユビキタス情報ビューアへと進展していくことが想 定される.非同期型情報共有空間は携帯ブログからの自 然な延長としてウェアラブルブログが民生で立ち上がる. 以上のように,業務用から民生用まで,人と人とのよ り豊かなコミュニケーションに向けてウェアラブル情 報共有空間は非常に有望であり,今後急激に市場が立ち 上がるものと考えられる.将来的にウェアラブル機器は,. 図 -10 ウェアラブル情報共有空間の応用と技 術(まとめ). 参考文献 1)塚本昌彦:ウェアラブルコンピューティング,ヒューマンインタフェ ース学会誌 , Vol.5, No.1, pp.27-32 (2003). 2)塚本昌彦:ウェアラブルな生活,映像情報メディア学会誌,Vol.57, No.3, pp.345-347 (2003). 3)塚本昌彦:ウェアラブルコンピューティングによるコミュニケーショ ン支援,電子情報通信学会誌,Vol.89, No.3, pp.199-205 (2006). 4)塚本昌彦,板生知子:ウェアラブルコンピューティングとユビキタス サービス,オペレーションズ・リサーチ,Vol.49,No.4,pp.210-216 (2004). 5)塚本昌彦:ウェアラブル・ユビキタスコンピューティング – 超小型 コンピュータと人,物,実世界のシンビオシス –,情報処理,Vol.47, No.8,pp.836-843 (2006). (平成 18 年 12 月 24 日受付). 人々の生活の重要なパートナーとなり,社会やシステム の中により深く入り込んでくることが考えられる.社会 や環境とともに共存するこれらのコンピュータでの動作 5). 原理は共生コンピューティング(symbiotic computing). とも呼ばれ,新たなシステム原理を求めて,多くの研究 開発が現在進められている.人,もの,空間の新たなコ ミュニケーションの原理の創出が望まれている.. 134. 48 巻 2 号 情報処理 2007 年 2 月. 塚本昌彦(正会員) [email protected] 2001 年より研究の一環として HMD の装着生活を送っている. 1 年以内にウェアラブルが立ち上がるといい続けて 6 年.街を 歩く人々がみな HMD をつける日を夢見て,ウェアラブル・ユ ビキタスシステム,インタフェースの研究を続けている..
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