Title
現代インフレーション論の再検討
Author(s)
仲宗根, 誠
Citation
沖大経済論叢 = OKIDAI KEIZAI RONSO, 1(1): 1-29
Issue Date
1975-03-31
URL
http://hdl.handle.net/20.500.12001/6663
現代インフレーション論の再検討
仲宗根誠
ルーeooCZ777Z7zatZo〃○ずr7ze肋eorfesoデルu)ZがZatfo〃
byMakotoNakasone もくじ はじ肋に…..………・………・…・………・・・・・…・・2 1完全雇用と物価変動メカニズム・………・…………・4 1.貨弊数量説における物価変動メカニズム・………・………・4 2.ケインズ「一般理論」における物価変動メカニズム・………・・8 3.フィリップス曲線に示きれた物価変動メカニズム・…………・・12 11不完全競争市場と物価変動メカニズム・………・・18 1.コスト・プッシュ・インフレーションの論理・………・…・18 2.セクトラル・ディマンド・インフレーションの論理…………213生産性上昇率格差インフレーションの論理..………・…26
むすび………・…・………・…28 1はじめに
現代インフレーション論がはじめて新しいインフレーション論として話題 (1) にのぼったのは1950年代のことである。アメリカにおいて1950年代 の2回の不況期に物価は下落することなく騰貴した。従来の理論では不況期 には物価は下落するものとされているから,不況期にも物価が下落しないで むしろ騰貴することは新しい現象であったのである。それ以降,今日に至る 雀で不況期の物価騰貴現象がつづく。アメリカで華華しく新しいインフレー ションが論議された1950年代後半に,日本でも不況下の物価騰貴現象が 見られる。不況下物価騰貴という事態は,1960年では先進諸国で一般に 見られる現象となる。もう一つ新しいインフレーション論が問題にした点は, 1960年代の消費者物価の急騰に主る消費者物価騰貴率と卸売物価騰貴率 の乖離現象であった。一 汁.?左引-匁全 かかる新しい経済現象に直面して新しいインフレーション論カミ生れながら も,1960年代における経済政策の最優先目標が物価安定ではなく,`低失 業水準と経済成長政策であったのである01920年代の経済政策の最優先 目標が物価安定であり,1930年代には不況克服としてインフレーション 政策がとられ,その後,完全雇用の達成が経済政策の重要目標であった。 1950年代には経済成長を最優先目標としながらf物価安定と完全雇用という政策目標をほぼ実現していたの増ある。しかし,1950年代後半以降
新しい物価騰貴現象に直面し,完全雇用お主び経済成長の実現を政策目標とすれば,物価は急騰し,デフレーション政策を実施しても,失業が増大する/戸
ばかりで物価は続騰するという具合になり,経済政策の目標相互間の二律背 (3) 反が問題となるo 1960年代後半以降にたると,アメリカの国際収支の赤字,ドル危機など,国際通貨体制の危機と世界的インフレーン。ンが一段と話題に左(豊。こ
れまで各国の物価騰貴にズレがあったが,各国の景気循環の波も,物価騰貴 も同時に進行するという形態で世界的規模での物価騰貴が深化しつつある。 -2-各国の物価騰貴が,非同時的発生から同時的発生へと変ったばかりでなく,
従来の如く消費者物価騰貴率が卸売物価騰貴率を上回るということではなく,
逆に卸売物価の急騰が著しく卸売物価騰貴率が消費者物価騰貴率を上回ると
いう新しい乖離現象が見られる。1970年代には,実質成長率は低下し,
失業率は増大しているにもかかわらず,物価騰貴がその騰貴率や速さにおい
て加速化の傾向をしめす。1960年代に比べ,一段と激しくたった不況下
(5)物価騰貴の原因をめぐって,スタグフレーション論の論争が再現される。ス
タグフレーションが世界的な規模で発生していることが現代インフレーション論の問題となっている。過去の世界的インフレーションが大戦や金の発見
と関係して生じていたのに対して,現在の世界的インフレーションは,貨弊
制度や通貨制度と関係して発生している。現代インフレーション論をめぐる論争の過程で,分析の焦点となった点を
大雑把に整理すれば,インフレーションの本質論であり,その原因論であり,
その発展過程のメカニズム論であり,最後に,その影響お主び代価論である。
この小論では,現代インフレーション論を,貨弊お上び通貨の経済実体への
影響がどうであるかという,貨弊および通貨の役割を通して若干検討してみ
たいと思う○ エ注ユ.W,L、Thorp&R・EoQuandt,r/ze肥u)血fZatfo"コ
ユ959,G.Ack1ey,’1AdnlinisteredPricesandTheエnnationaryProcess,'1伽erZc伽ECO"oWZcRe-
DZ〃,May1959,AoKUhn,’1MarketStructureand
Wage-push工nnation,'1吻伽s亡rZaZα"αLaborHe-
Za士Zo〃彫りZeu),Jan・ユ959,R、Jose工den,wCost-pushversusDemand-puユュェnf1ation,iVozfr"αZ○ず
PoZZtfcaZEco"o〃,Febol9592.H、G・Johnson,i1ABurveyofTheoriesoE辺na-tion,'vinEssagsm肋"e亡〃y比o"o耐zcs,施Ho
G・Johnson,PPoユ08-115 3.A.W・Philユips,wmheRe1ationBetweenUnemp1oy- mentandtheRateof、OhargeorMoneyWageRates -3-intheUnitedKingdom,ユ86ユーユ957,11恥o"o777zca,
Nov・ユ9584.R・Hinshaw,ed.,肋プZatfo〃AsaGZobaZP]pob形加,
ユ972,n.0ユaassen&P・Baユin,ed.,Stabi1izati-onPo1iciesin工nterdependentEconomics,ユ972. PartⅣ.PP、299-321↓経済企画庁編,「世界のインフレーション」,昭和46年,三木谷良一,現
代インフレーションの一般的特徴と日本的特殊性,,,金融ジャーナル, 1971年5月号. 5.Rothschiユd,K、W・’’1Stagf1ationand工ntensif、ied 工nnationAPremitiveIIypothesis,'(E℃o"o'77ZcJD法 ZWaZ,Dec・ユ972 則武保夫,。スタグフレーションの論理構造,”経済評論第20巻第4号, <〆I完全雇用と物価変動メカニズム
1.貨弊数量説における物価変動メカニズム フィソシャー(LFiBher)の交換方程式MV=PTは,私達に二つ のことを教えている。-つは貨弊の世界と実物の世界がどの主うに均衡する かを極めて抽象化した形態で示していること,もう一つは貨弊の供給が増加 すれば,それに比例して物価は騰貴し,また逆に,物価騰貴によって貨弊供 給が増加するであろうということである。フィソンャーによれば,貨弊の供 給が増えれば,生産物や生産要素に対する総需要が総供給を上回り,物価は 騰貴するであろう。なぜなら貨弊の流通速度Vと総取引量Tが一定であるからo かくして貨弊供給の増加は物価騰貴をもたらすことによって貨弊の世界と実 物の世界とを均衡にするというのが数量説の論理である。しかし,なぜ貨弊 の供給が増加するのに,貨弊の流通速度は一定であるのだろうか。貨弊はど のような内容のものか。取引量はどのような内容のものか。 ハーパラ(0.Haber1er)は貨弊供給の増加があれば,その流通速 (6) -4-度は変動するだろうし,また有効需要の変動をもたらずであろうと言う。 すなわち総需要の拡大なしにインフレーションはありえたい。貨弊供給の増 加なしに,流通速度の変動もおこりえないし,また総需要の拡大もないと主 張されている。しかしフィッシャーの取引型数量説では,貨弊の流通速度は 慣習的,制度的,技術的諸要因に主って,長期的には一定であるとされる。 ところで,貨弊の流通速度がいつまでも一定である筈はないとすれば,数量 説の論理は修正しなければならないだろう。ハーパラーによると,貨弊の流 通速度は景気上昇過程ではつねに上昇するが,景気下降過程では下落し,第 一次大戦後のドイツの悪|生インフレーションの時にはvは上昇したし,恐慌 (7) 時や第二次大戦中にはvは下落したと。つまりインフレーションが昂進して いるとき,将来に対する不安が大きいときなどには,公衆はできるだけ貨弊 を物に換え上うとする。そのとき貨弊の流通速度は否応なしに増大するであ ろう。いわば,フィッシャーの考えた世界は,戦争,恐』院,インフレーショ ンなどのない極めて平穏な世界であるといえ主うo景気循環過程に貝Iしてみ ると好況期における物価騰貴メカニズムを説明するにすぎない。また,もし, ハーパラー教授がいうエうに,好況期にはVが増加するのであれば,Mが一 定もしくは増加するなら,有効需要は増加するので物価は騰貴し,不況下で Vが低下すれば,MがVの低下を相殺するほど増えなければ,有好需要は減 少し,物価は下落するだろう。かくして常にvが一定であると仮定するかぎ り,数量説では不況下の物価騰貴のメカニズムを十分に説明できないといえ るo 貨弊供給の増加があれば,生産物に対する有効需要は増加しよう。生産 物に対する有効需要の増加があれば,企業は生産を拡大し需要増加を充足す れば主いのだが,それができないというのである。なぜなら'生産要素が完 全雇用の状態に達しているからであると。生産物に対する有効需要力増大し たからといって,おいそれと生産の拡大をu、とすれば,企業は高い賃金 を払わなければ新たに労働力を雇用しえない。なぜなら労働力市場は労働力 過剰の状態ではなく労働力不足の状態にあるから。他方,幾ら需要があるか -5-
らといっても,現在の資本設備では生産の拡大は望めたいので,企業は新し い資本設備を導入しようとするだろう。しかし,企業は自己資本に余力がた ければ借入れをしなければならないし,また自己資本で新しい資本設備の導 入ができたとしても,それが嫁働して生産の拡大につながるまでの日時がか なりかかるばかりでなく,将来に対するリスクをかなり大きく予測すれば, 莫大な資本コストを見積らねばならないだろう。かかる高労働コスト,高資 本コストをかけて生産した生産物が,企業が期待する価格で売れるのでなけ れば,つまりケインズのいう生産物に対する有効需要がなければ,企業は生 産要素に対する有効需要を増やさない。だから,完全雇用下の価格は,企業
が現在の生産技術で,あるいは資本設備一定の下で生産したとき,その生産
物の価格が企業の期待利潤を満足させる主うな価格のことであるといえ上う。 完全雇用の状態に達しているにもかかわらず,もし企業が新らたに生産要素 を需要して生産した生産物の価格は企業の期待利潤を十分満足させるもので はないだろう。だから,企業は高い生産コストを払ってまで生産を拡大しよ うとはしたいだろう。生産要素が完全雇用下にあるにもかかわらず,貨弊供 給の増加があれば,少い生産物をたくさんの貨弊がおいかけるという状態, いわば過剰需要の状態ができ,物価が騰貴する。すなわち,物価騰貴の原因 は完全雇用達成後の貨弊供給の増加にもとめる。 フィソシャーのいう貨弊供給量とは,ストックとしての貨弊,通貨ではな く,フローとしての貨弊,通貨である。いわば遊休貨弊(=資産貨弊)では なく,取引貨弊(=活動貨弊)である。価値貯蔵手段としてではなく購買手 段,支払手段としての貨弊の機能をみる。貨弊の世界に対応する実物の世界 における総取引量の内容もストックとしてのものでなく,フローとしてのも のを考える。貨弊で何を買うが,購売力があれば何を需要するかといえば, 生産物,生産要素,金融資産などをその購買対象とするが,生産物がいつ生 産されたものであるかどうか,生産要素が新らしく雇用されたものであるか どうか,金融資産が新らしく創出されたものであるかどうかを問わないばか (8) りでなく,貨弊の購買対象となったものが無差別に総計されているにすぎな 6蝿総取引量には流通市場で実際に取引された生醐,生産要素,金融資産
が無差別に混在し,かかる取引のために使われる貨弊のみがMとして考えられ る。貨弊供給の増加はすべて取引貨弊として需要される。無差別に混在した 総取引量と一般物価水準が実物の世界を構成しているが,一般物価水準が生 産物価格,賃金率,禾仔率とどのような関係にあるか,および生産物価格そ のものの内容が吟味されたいとすれば,現代インフレーション論が問題とす るoPエとwPエの乖離現象お上びそれに伴なう諸問題をも考察することは 困難であろうo 貨弊の購買対象となった生産物とはいっても,ある一定期間に新らたに生 産された生産物=国民純生産物ではなく,ある一定期間に経済主体間で取引 された生産物のみである。だから,ある一定期間に新らたに生産された生産 物のうち取引されなかったもの,つまり在庫は含れない。貯蓄に対応する投 資は存在したい。このことは,フィッシャーの数量説の世界は成長のない静 態的な世界であるといえ主う。 フィソンャーの取引型数量説に対して,マーンャル(A・MarBhaユユ) の残高型数量説,つまり,M=kOPがある。kは公衆の流動性選好率=貨弊保有率型,・は国民純生産物である。公衆は貨弊的国民所得。Pのうち一
定の割合を貨弊で保有し上うとする。したがって貨弊供給の増加があれば, 公衆の流動性選好率叱が一定で,且つ国民純生産物oが一定であれば物価Pは 騰貴するであろう,フィッシャーの場合と同様に,完全雇用が前提とされ, 生産物の供給は増大したいものとされて,購買力の増加は専ら物価を騰貴さ せると⑱貨弊供給の増加は,取引型数量説では,取引貨弊として活用される 過程を通して物価への影響をみるのに対して,残高型数量説では,フローと しての貨弊の役割主Dも,むしろ,ストックとしての貨弊の役割を通して物 価の影響を考察しているといえよう。また取引型数量説が総取引量を流通市 場だけで把握しているのに対して,残高型数量説は,ある一定期間に新らた に生産された国民純生産物のみを貨弊の購買対象としている○二つの数量説 に共通する点はいずれも完全雇用の世界における貨弊と実物の世界の均衡を -7-描写していることであろう。また完全雇用を前提とした場合,貨弊の変動は, 貨弊が活動貨弊として使われるかどうかを通して,あるいは貨弊が遊休貨弊 として公衆に保有されるかどうかを通して物価への影響を及ぼすということ であろうoかくして数量説に生れば,持続的または累積的な物価騰貴がおこ るのは,完全雇用カサでに達成されているにもかかわらず,貨弊の供給量を累積的に増 加しつづけるからであるということになろう。vやkが一定,お主び完全雇 用という前提のもとで,実物の世界にではなく,貨弊の世界に物価騰貴の原因 をもとめる。
注6.G.Haberユer,吻玉Zα秘o"-工士Scα"seSα"αczzres,
AmericanEnterpriseAssociation,ユ96ユ。p、47 7.G.Haberユer,血プZatZo〃α"cZt/ze肋to"s,The 工nstitateofEconomicArrairs,1972,pp、7-8 A.S・Shaaユamはインフレーションの投資への影響を分析する論文 で,インフレーション期には金融資産より実物資産か選好され.流動性構 瑠造に影響を及ぼすと主張される。wThe工mpactoゼエnfユationontheCoXnposition
OrPrivateDomesticエnvestment,nZlVFta汁
HZPezbVo1.9,Ju1yユ962. 8.新庄博,「新版金融論」,有斐閣,昭和40年第1章 9.矢尾次郎,憤弊的経済理論の基本問題」,千倉書房,昭和37年第1章10.A.H・Hansen,肋"etaryr/zeorZ/α"α耐scaZPo-Zfcl/,小原敬士,伊東政吉訳。憤弊理論と財政政策」。有斐閣.昭和38年
zケインズ「一般理論」における変動メカニズム ケインズ(』.M,KeyneB)は,貨弊供給の増加があっても,必らず しも物価は騰貴しないと言う。貨弊数量説では,貨弊供給の増加は,それに 比例して物価を騰貴させるとするのに対して,ケインズは物価を騰貴させた いと主張される。前者では貨弊供給の変動の価格効果のみが主張されている のに対して,ケインズでは需要創出効果ないし所得効果が強調される。また, 前者が完全雇用を前提とした好況期の世界であるのに対して,後者は不完全 8雇用を前提とした不況の世界である。ケインズに上れば,労働力市場には多 量の失業者があふれ,資本設備は遊休化している上うな状態化では,貨弊供 給の増加は,生産物に対する需要を高め,ひいては生産要素に対する需要を 拡大し主う。かくして需要増加に対応して,生産は拡大し,生産物の供給は 増加するので,貨弊供給の増加はつねに物価を騰貴させるものではないと言 う。要するに,数量説ではM弓MV=D ̄〉Pであるのに対して,ケインズで
はM一参Mv司一要、(雇用量)<聰産鬘)となる。
貨弊の供給が増えれば,利子率は下落し,利子率が下落すれば投資需要が 拡大し,投資が増えれば生産要素に対する需要も増え,国民所得が増加する であろう。かかる貨弊の作用過程において貨弊供給の増加が直接価格効果を もつというのではたく,所得効果をもつということを論証するために,ケイ ンズは流動性選好理論と投資乗数理論の二大支出を確立し活用したことは周 知の通りである。ケインズは所得の形成,支出を通して価格の運動を考察す る。そのことは数量説が流通市場だけで貨弊の役割を考えたのに対して,ケ インズが生産,流通の両面で貨弊の役割を考えていることを示すものである}B1
qID 貨弊と物価の関係を図をもって示すことにしよう。貨弊供給が増え れば有効需要はDOからD1に増加し,物価は騰貴したいで国民純生 産物がXoからXlに拡大するoまた完全雇用に達していないので, 貯蓄に対応する投資が不足である。だから貨弊供給の増加によって投 資が貯蓄を超過してしまうことはたく,実質所得の増加をもたらし, 物価を騰貴させたい。完全雇用へ近づくにつれて,貨弊供給の増加は有効需 要を増やすばかりでなく物価を騰貴させる。この段階の物価騰貴をケインズはSomi innationと呼bSSo完全雇用達成後において貨弊供給の鋤ロは生産物|/Ci寸する有 効需要をD2,,3に増大させるだけであって,生産物の供給は拡大したいので, 物価のみがp2からp3ヘ騰貴する。この段階では投資はつねに貯蓄を上回 9り,生産物の供給は一定である ので,過剰需要となり,物価は 騰貴するoとの段階での物価騰 貴をケインズはtrue-in至一 ユationと呼ぶ。貨弊数量説 が妥当するのは完全雇用達成後 であって完全雇用達成前ではな いと。景気循環過程に則してみ ると,不況期から回復期まで (第1図で示すとOからX1を で)は,通貨供給の増加は生産 物や生産要素に対する有効需要 を高めはするが,物価を騰貴 「』 」 )0 正同dQVよ~,C刀』,811211皿江冒lfi『芦I 第1図 させない。好況期には(第1図で示すとX1からXr まて),貨弊供給の増加は生産物や生産要素に対する有効需要を増やすだけ でなく物価騰貴の誘因となる。好況期の頂点=上方転回点にあるとき,貨弊 供給量の増加は物価騰貴のみをひきおこす。かくして数量説は,好況期の頂 点にあるとき,つまり,完全雇用下にあるとき,貨弊の変動が物価に及ぼす 効果を分析しているのに対して,ケインズは特|/□iく況期から回復期にいたる, いわば不完全雇用下における貨弊変動の役割を分析している。 ケインズの乗数理論は,投資の所得創出効果のみをとらえ,投資の生産効 果を無視する。なぜなら,通貨供給の増加カミ財政支出を通して生産物に対する有 効需要を高めるなら,財政支出という購買力は,一方には生産要素に対する 有効需要を高め,国民所得を生み出すけれども,他方では生産物を生産しな いからである。かかる財政部門やサービス産業など不生産部門への通貨供給量の 増加は生産要素に対する有効需要を高め,購買力としての貨弊国民所得を形 成するけれども,その部門に雇用された労働力はgoodsとしての生産物を 10
生産し左唄゜だから投資乗数論でいう投資力政府やサービス産業などの不生
産部門への投下であるとすれば,その投資は購買力としての貨弊国民所得を 生み出すという意味での所得効果はあっても,販路を心配しなければならな い主うなgoodsとしての生産物を生産するという意味での生産効果はない。 もし投資が物的生産部門へ投下されるとすれば,所得効果のみでなく,生産 効果を発揮するので,不況下の過剰生産は吸収されたいであろう。だから, ケインズが考えた投資は生産効果はたく,所得効果のみがあるもので,投資 資金がどのさうな産業に投下されるかといえば,それは物的産業部門ではな く不生部門であるといわねばならないだろう。かくして不生産部門への資金 の流入は生産効果のない所得効果を生み出し,ひいては価格効果を生み出す。 その部門の拡大は過剰生産を吸収しうる滞貨処理産業の拡大につながる。政 府の経済的役割の拡大は,かかる不生産部門が注す童す現代資本主義経済に 組み込まれていくことを意味しよう。 かくして,通貨供給の増加力莞全雇用達成前であれば,物価は騰貴したいけれ ども,その達成後であれば物価は騰貴するとケインズはいうけれども,完全 雇用達成前であっても,もし通貨供給量の増加力坏生部門へどしどし流れて いけば,物的生産部門へは一切供給されないとすれば,物価は騰貴しよう。 なぜなら,物的生産部門の拡大はgoodBとしての生産物を生産すると同時 に,購買力としての貨弊国民所得を生み出すが,しかし不生産部門の拡大は, 販路を心配しなければならない主うな生産物は生産されず購買力としての貨 弊国民所得のみを形成するからである。かかる不生産部門が拡大すればする u ほど現代資本主義経済の枠組として需要創出機構が定着していき,不況にな っても急速に需要は減少しないことになろう。このことが景気後退期になっ ても物価が下落しない制度的な基本的要因であるのではないだろうか。 注11.矢尾次郎,前掲書,第2章,第7章参照。矢尾次郎,睡貨弊と経済,”則武保 夫,藤田正寛編,[現代金融論の新傾向」,東洋経済新報社,昭和49年 12.F.D・Roseveユt9TheAttelnPttoReachnon-工nna- 11tionarymユユEmpユoyment,iiinEco"oWzcso示肋ges
α"cZHDZceCO冗亡roZ,ed.,』.E・Pohユman,1972.PP 78-82.ポールマンはその図が非現実なものと指摘し,現実的なものとして S曲線が成長とともに,また,失業率の低下とともに変化するものとして描い ている。 13.新庄博,前掲書,第2章,仲宗根誠,曝国民所得の形成,”沖六諭叢,第10 巻第2号 '4.伊東光晴,「新しいインフレーション」,河出書房,昭和41年,伊東教授Iま 新しいインフレーション力現代資本主義の構造に深く根ざすものとし,寡占市 場とケインズ的政策の定着を現代資本主義の二大支柱ととらえ,そこに,現代 インフレーションの根源をもとめられる。川合一郎教授は,新しいインフレー ションの発生基盤として,①財政の比重増大,②サービス業の拡大,③消費者 信用の発展をあげられる。「信用制度とインフレーション」,第1章参照のこ と。 3.フィリップス曲線に示された物価変動メカニズム 貨弊数量説においても,ケインズ「一般理論」においても,ともに完全雇 用を基準として貨弊供給の変動がいかに物価の変動メカニズムに影響をおよ ぼすかを考察していることは前述の通りである。フィリップス(A・W・Phi- エエiPB)においても,完全雇用を基準として貨弊賃金率,失業率,物価騰貴率の相互関係を実証分析され!客。ブイⅢブスの場合,完全雇用という状
態は失業率が何筋であり,物価騰貴率が何拓であるかを具体的に,且つ歴史
的に明示しようとされた。すなわち,イギリスにおいては,生産性上昇率が”であれば,物価が安定するような失業率は2夢であり,賃金上昇率が
安定する功な失業率が5耆鰯である゜アメリカにおいては物価を安定させ
るには7~8筋の失業率は必要であると。これに対してサムエルソン (p、A、SamueユBon)とソロー(R・M・Soユow)は失業率が5~6 96に維持されるなら物価は安定し,もし失業率が4筋に維持されるなら物価 川 は約2筋騰貴するであろうと。しかしフィリップスは4挺の失業率なら物価 m は約4筋騰貴するであろうと。この主うに完全雇用という状態を失業率で.と るとしても,完全雇用を失業率496とするか,5~6兜とするか,あるいは 127~8妬とするかは,国々によって,時代に主って,各学者,政策当局者のq3 価値判断のいかんにエって,幾通りにも完全雇用の状態が考えられるといえよう。 つぎにフィリップス仮説は完全雇用を基準としてインフレーションの存在 を判断するという点においてDemand-Puユユエnmationと同一で ある。その理由を考えることにしよう。フィリップ曲線lにおいて,今,物 ★★ 価騰貴率がゼロである上うな状態力s,完全雇用の状態であるとするなら,U がその点である。(第2図)また貨弊賃金率の上昇率がゼロであるような状 態が完全雇用点であるとすれば,U★がその点である。もし畝が完全雇用 第2図 の状態であれば,フィリ
ソプ曲線lにおいて労働W4
力に対する有効需要の増 加は失業率をますます弓lW3 下げ,U★からU粒へ移 動し,その結果貨弊賃金w2 率は上昇するけれども,それによって著しいインw】
フレーンョンはおこらな い。もしU★★が完全雇用 の状態であれば,U★★よ り右側に失業率があれば 2 1 「1 匹」 0 Ⅱ U 労働力市場は不完全雇用の状態にあり,ケインズの仮説と同様に貨弊供給の 増加は労働力に対する需要をU☆からU★★ヘ増やし,貨弊賃金率もa(Wi) からb(W2)ヘと上昇するけれどもインフレーションは発生しない。 もし脱を越えて労働力に対する需要があれば,失業率はロ*★からU2 ヘとますます低下し,貨弊賃金率もb(W2)から0(W3)ヘと上昇 する。しかし貨弊賃金率の上昇は物価をP・からPユヘ騰貴させる。す なわち,失業率が高ければ高いほど貨弊賃金率の上昇は低く,失業率が低け 13れば低いほど貨弊賃金率の上昇が高いというのがフィリップス仮説の論理で ある。失業率が低下するにつれて貨弊賃金率の上昇が高くなるということは 労働力市場における労働力に対する需要圧力が強くなり,労働力供給を上回 り,貨弊賃金率は上昇する。つまり,貨弊賃金率は,労働力市場が不完全競 争市場であるかどうかではなく,労働力市場における失業率の大小、と労働力 に対する需要と供給できまる。労働組合があるかどうかではなく完全雇用の 状態であるかどうかによって,労働力供給が一定であるかどうかが判断され る。もし完全雇用の状態であれば,労働力供給は一定であるので,労働力に 対する需要が増えれば貨弊賃金率が上昇し,物価は騰貴する。だから労働者 が労働力市場を支配しているから,失業率が高くても物価騰貴率に劣らずに 貨弊賃金率の引上げが可能であり,低失業率であればあるほど貨弊賃金率の 引上げが可能であるとするOoBt-puBh説の論理とは違うoフィリップス 曲線は失業率か高ければ高いほど,労働組合は貨弊賃金率の引上げは困難で あることを示し,かくしてフィリップス仮説は,OoBt-PuBhエ、歪ユat ionではなく,むしろDemand-Puユユエ、ゼユationであるといえよ ぃ うo 120 しかし,後にフィリップス曲線は価格騰貴期待曲線として移動し,また不
況下に鮒る価格騰貴を論証するときに移動す響ものとして考察される゜ケ
インズに主れば不完全雇用下では物価は騰貴しないとされたが,不完全雇用 下でも物価騰貴が期待されれば,つまり物価騰貴期待が大きければ大きいほ ど,フィリップス曲線は右へ右へと移動するだろう。物価騰貴か期待されて フィリップス曲線がエからⅡヘ移動したとすれば,労働力.市場は完全雇用の 状態耐から不完全雇用の状態U1ヘ変動しながら,貨弊賃金率はb(W2) から。(W3)ヘ上昇する。物価も騰貴する。しかし不完全雇用の状態U1にあるので,そこでもし政府がインフレーション政策によって完全雇用Uや
を維持し主うとするなら,さらに貨弊賃金率は.(W3)からe(W4)へ
上昇し,物価騰貴をもたらす。もし失業率がU2であるときに物価騰貴が期
待され,フィリップス曲線がエから正へ移動したとすれば,失業率はU2か 14らU蛙へ移動し,貨弊賃金率はW3からW4ヘ上昇し,物価はHからP2 ヘ騰貴する。超完全雇用は物価騰貴期待が働き,現実に物価が騰貴すること によって解消されるということ。つまり物価騰貴期待が大きければ大きいほ ど,完全雇用に向って,あるときには失業率も,物価騰貴率も上昇するとい うことを意味する。 剛 フィリップス曲線では生産技術は一定であるとされているから,完全雇用 下での貨弊賃金率の上昇は価格引上げに主って吸収されざるをえないだろう。 労働力Nと資本設備Kの関係が一定であれば,年と投資が行なわれると労働 力に対する需要が増え,それに対応して労働力供給も増えなければならない だろう。失業率が高ければ高いほど,投麿の拡大に伴なう労働力需要の増加 を失業者によって賄うことができよう。もし失業がたく完全雇用の状態であ るなら,投資の拡大は労働力に対する過剰需要となり,貨弊賃金率は上昇し それは価格へ転嫁され,物価を騰貴させるであろう。物価が騰貴すれば労働 者は貨弊賃金の引上げを要求し,それを容認した企業は物価を引上げる。か くして生産技術一定のもとでは完全雇用達成後は,物価騰貴の期待は大きく 賃金物価の悪循環が続く。 しかし,もし生産技術が一定でなければ,Ⅳ/Kの比率を引下げることに 上って,フィリップス曲線はエからⅢヘ移動させることが可能となるであろ う。すなわち,新しい技術を採用することによってフィリップス曲線を左へ 移動させることができれば不況下物価騰貴を解決することができるであろう。
フィリップス曲線を左へ移動させる方法として,従来は専ら技術革新を遂行
することによって行なわれた。しかし今日では企業が寡占ないし独占の段階
にまで成熟してきたばかりでなく,その結果新しい技術を開発し導入するま でには莫大な資金と多くの時間を必要とする段階に至っては新技術の導入が 極めて難しい。しかも新技術の開発やその採用が-企業の能力では極めて難 しくなってきた。かくして新技術の採用によって貨弊賃金率やその他生産費 の上昇を吸収することが難しくなってきている。だから企業は生産費の上昇 を安易に価格へ転嫁する方法をとる。かかる行為を容認するかのように,政 15雁や中央銀行は価値尺度や価格標準機能を果しうる唯一の商品即金を離脱し
望人為的に購買力を創出できるドル本位制の下で,自国通貨を需要に応じ
て幾らでも創出できる主う管理通貨制を通して,生産費の価格転嫁ができる 条件をつくり出しているといえよう。他方では所得政策を導入して,無理に 政治的に,フィリップス曲線を左へ移動しようとする。フィリップス曲線を 左へ移動させる方法としては,何らかの形で貨弊としての金と通貨が連結さ れる貨弊制度を確立すること,不生産部門の縮少,物価安定期待の創造など が考えられる。 これまでどのさうな条件を具備した時に物価は騰貴するかを,貨弊数量説 や,ケインズの物価論や,フィリップス仮説を通して考えてきた。いずれの 場合にも,完全雇用を基準として物価が騰貴するかどうかを判断している。 完全雇用達成後に物価が騰貴するということから,いずれの仮説もディマン ド・プル・インフレーションに類型化できよう。つまり物価騰貴の原因は生 産物や生産要素に対する過剰需要にもとめる。過剰需要がどうして存在する かといえば,①生産技術が一定であるから,②金を完全に離脱したドル本位 制,つまり金為替本位制の乱用の結果として生れたドル本位制のもとで,自 国通貨を操作できる国内管理通貨体制が存在するからであろう。かかる制度 のもとでのインフレーション政策に上って,政府やサービス部門の規模の拡 大に主る自律的需要創出機構が現代資本主義経済の枠組に組み込れているこ とであろう。すなわち,政策当局による管理通貨制の乱用こそ好況不況に関係なくインフレーションI政策の持続的遂行を可能とし,不生産部門の拡大を
生み,需要創出機構を現代資本主義経済に組み込んだ根本原因であり,今日 の不況下物価騰貴の本源であるといえるのではないだろうか。国際的にはア メリカの金為替本位制の乱用であり,その結果としてのドル本位制であると いえよう。かかる貨弊おエび通貨制度がフィリップス曲線を不況下において も物価騰貴期待を生み右へ移動させるものと考えられる。 16注15.A.W・phiエユipB,TheRe1ationBetweenUnem- pユoymentandtheRateoどChangeoどMoney WageRatsintheUniteBKingdom,1861~1957 ’ECO"o/77zca,Nov、1958 16.p、A・Samue1BonandR・M・Soユow,GQAnaユyticaユ ABpectBoでAnti-Inど1ationPoユicy,’(A液erZ-cα〃ECO"o耐cReひZezA)s,Mayユ960 17.A.W・phiエユユPS,qQEmp工oyment,InrユationandGr- owth,,,比。"o油Zca,Feb、1962 18.M.D・IBrockize,GQFuユエEmployment,Growth,and priceStabi1ization,’WeZ刺fr土Sc/zArckZ", B伽α84,1965.その論文の中で,Brokieは完全雇用の目標と して3%,経済成長率5%という条件のもとでは,物価騰貴率年1.5%以下は 避けられないと。いわゆる政策目標相互間の関連を具体的数字をあげて説明さ れる。
19.ハーパラー教授は,労働者の市場支配が貨弊賃金率と失業率へ影響を及ぼさな
いものとしてフイリツプ曲線をとらえている。その理由としてつぎの2点をあげられる。①失業水準が高ければ高いほど労働組合の地位はますます弱くなり,
WagePuBhがますます弱くなろうと。逆に失業水準が低ければ低いほど労働組合の地位はますます強くなり,WagePuBhはますます強くなろう。
つまり労働需給によって貨弊賃金率は変動を受けるものである。②フィリップ
ス曲線は長期にわたって貨弊賃金率と失業率との関係が安定した関係にあると
いうことを前提としている。 0.Haberler,血f、Zα秘o〃α"α亡/ze肋Zo"8,1972,PP、 25-27.20.J.M、Meade,r/zeco刀亡roZZeaEco"o〃ユg71pp、
363~377.21:飯田経夫,嵐雇用,賃金,物価の関係と所得政策,,,飯田経夫編,「賃金と物
価」,日本経済新聞社,昭和43年22.G.Routh,GorheReユationBetweenUnempユoym-
entandtheRateofOhangユoEmoneyWage
rateB.’EeO〃O)7TLCα,Nov、1958ルースはフィリップスが産業構造,産業の地域分布,生産技術など制度的要素を暗黙の前提とされていると
指摘する。23PauユBakeweユユ,JR.,肋f,Zatfo〃Z〃士/ze肋ftecjlSta-亡es,TheCaxtonPrinters,LTD.,ユ958
17その論文でベイクウエルはインフレーションは金本位制の放棄に起因すると主
張される。インフレーションの程度または範囲は通貨を要求次第に交換しうる
政府の能力,または金あるいは要求次第金と交換できる通貨で支払いうる銀行
の能力によってきまると。ヒンシヨウ教授は世界インフレーションの原因を。ドル本位制”にもとめられる。R・Hinshaw,ed.,肋'Zα流。〃
AsaGZobaZProbZe",1972.'2. ジャック・リュエフは現行金為替本位制の矛盾の中に世界的インフレーションの根源をもとめられる。長谷川公昭,村瀬満男訳,「ドル体制の崩壊」,サイ
マル出版会,1973.PP、28~29,P、35~36,P、38.金の価値
尺度機能の麻庫を主張される方もいる。高須賀義博,「現代価格体系論序説」
岩波書店,昭和40年,P、233.波多野真「インフレーションと国際通貨」
新評論,1973,P、42,69,72.Ⅱ不完全競争市場と物価運動メカニズム
1.コスト・プヅシュ・インフレーションの論理 ディマンド・プル・インフレーションは完全競争市場を前提に,完全雇用 を基準として生産物や生産要素に対する過剰需要の存在を判断し,その過剰 需要の存在に物価騰貴の原因をもとめるのに対して,コスト・プッシュ・イ ンフレーションは不完全競争市場を前提に生産物や生産要素の供給を困難に する生産費の上昇に物価騰貴の原因をもとめる。ディマンド・プル説では, 生産物や生産要素の供給は一定であるにもかかわらず,何らかの要因で需要 が増大し,過剰需要が生ずるのに対して,コスト・プッシュ説では生産物や 生産要素に対する需要は一定であるにもかかるらず何らかの要因で供給が減 少し,過剰需要が生ずる。いずれも生産物や生産要素に対する過剰需要が発 生するけれども,前者が需要側に,後者が供給側に,それぞれ物価騰貴の原 因をもとめる。 生産物の供給が一定であるにもかかわらず,生産物に対する需要が75ミぜ増 大したのだろうか。フリードマン(M・Friedman)に上れば,政策当局 が通貨を国民所得の増加率以上に持続的に供給するから過剰需要が発生するのだIZ'|・だ州政府当局は通貨供給量の増加率を国民所得の増加率の範囲
一18-内に抑えなければ,物価騰貴を鎮静することはできないと主張される。しか し,通貨の過剰供給がつねに物価を騰貴させるためには,通貨供給の増加が つねに生産力効果を生まない所得効果ないし需要創出効果しか創出したいもの として活用されるものであるという前提条件が必要であろう。すなわち供給 される通貨が物的産業部門へ流れるのではたく,政府やサービス部門などの 不生産的部門へ流れるものであるということが必要条件とたろう。 また労働力の供給が一定であるにもかかわらず7労働力に対する需要が拡 大するのはなぜか。ケインズによれば,生産物に対する有効需要があるから C51 である。生産物に対する有効需要があるかぎり,そのときの実質賃金率は企 業にとって決して不利ではたく,企業は利潤を期待しγ生産要素を雇用する。 カルドア(N、Kaユdor)によれば,利潤が存在し,増大する限り,労働 力に対する需要は増大し,貨弊賃金率は上昇する。利潤の存在と増加が期待
されれば,投資は拡大し,産出高や生産性が上昇す雷。年々投資があれば,
生産技術一定のとき労働力に対する需要は年々増大しよう。すなわち,労働 力対資本という生産技術関係が一定であれば,投資の増加は労働力に対する 需要を増加させるので,それに応じて労働力の供給も増加しなければならな いだろう。しかし,労働力の供給が一定であれば,生産技術一定のもとでは 投資の増大は労働力に対する過剰需要をつくり出す。かくしてディマンド・ ブル説は生産技術一定および生産量の供給が一定であるという前提をおくも のであるといえ主うo コスト・プッシュ説においても生産技術は与えられたものとされる。コス ト・プッシー説によれば,生産物に対する需要が一定であるのにもかかわら ず,その供給が下落したのは,賃金コストや資本コストなど生産コストが上 昇したからである。そこで賃金コストの上昇は労働者が労働組合という組織 を通して生産性上昇率以上の貨弊賃金率の引き上げを好況不況に関係なく要 求し実現するからであると。労働力市場が完全競争市場ではたく不完全競争 市場である点にこそ,貨弊賃金率が“水増し',して引上げられる根拠をもと める。他方,企業は特別減価償却など各種引当金ないし,準備金などに」わ 19(,7) て利潤の費用化をすることに主って資本コストの、、水増し”を遂行している。 企業はかかる水増しされた生産コストの上昇を直接の契機として,市場支配 力を乱用し,生産調整を図,,生産物の供給量を減らすばかりでなく物価を 引上げる。例えば,有効需要は一定であっても,労働市場では労働者が労働 組合という組織を通して,好況,不況に関係なく一貫して貨弊賃金率の引上 を要求し,企業はその賃金引 上げ要求を容認する結果,生
産物市場では,市場支配力をP
駆使して,生産量の供給をso からSユヘ,さらにs2へ削 減すると同時に価格をPbか P』らPf,さらにPムヘ引上げP2
る。(第3図)その結果とし 以て完全雇用下の産出量X芒もPC
不完全雇用の産出量xlさら には地へ低下せざるをえな い。需要が一定であっても 市場構造が寡占ないし独 占市場であれば,生産物や X2X1XF 生産要素の供給側の市場支配力によって物価は騰貴するというのがコスト・プッシュ説の論理である。
だから,コスト・プッシュ説によれば,貨弊的要因によって物価が騰貴するというのではなく,市場構造が寡占ないし独占市場であるかによって物価が
騰貴するかどうかが決まる。コスト・プッシュ説によれば,不況下物価騰貴 の基本的原因は,企業や労働組合による市場支配力にあるとされるのに対し て,デイマンド・プル説は過剰需要の恒常的存在にその原因をもとめる。不 完全雇用下の成長に満足-せず,政府がつねに完全雇用下の成長を目標として 財政支出を拡大すれば,いわゆるインフレーション政策をとれば,需要はDO -20-からD1ヘ移動し,産出高はX1からXfヘ増大し完全雇用が実現するけ れども,物価はP,’から町へ一段と騰貴せざるをえない。コスト.プッシ ュ説に上れば,いわゆる行き過ぎたインフレーション政策こそ物価騰貴の原 因であるということにたろう。 注
24.M.Friedman,吻玉Zα亡fo"jCm(sesα"αCO"se9zLe"Ce,
PP、1-24. 25.J.M,Keynes,z/zeGe"eraZr/zeo]WofD71PZoy伽e"ち りzteres亡α"cIlVO"ey,chap、3. 26.N・Kaユdor,wECOnOmiCGrowthandtheProbユam oごInゼユation,”ECO〃。、Ca,Aug、1959 27.市場支配力を利用して,企業や労働者がそれぞれ国水増し”の利潤や《q水増し” の賃金を要求する結果として,唾水増し,,のコスト上昇が起き,インフレーシ ョンが発生するものであると都留人教授は「物価を考える」,岩波新書で主 張されている。 2.セクトラル・デイマンド・インフレーションの論理 その説の先覚者はシュルツ(0.LoSchmtze)である。彼は需要が 一定であっても物価は騰貴することを市場の不完全性を考慮に入れ,論証し P ゴ画 )⑨、 PP PP XfXd X X3X2 X1 X 2128’ た。A産業で需要がD1からD2に減少し,その需要分がB産業へ移動する。
その結果,B産業では需要がD1からD2ヘ増加する。B産業では完全雇用
近傍下での需要増加であるため物価は騰貴する。A産業では需要が減少した
にもかかわらず,市場が不完全競争市場であるために,物価は下落したいで,
むしろ騰貴する。かくして総需要か一定であっても,需要が,ある産業から別の産業へ移動することによって一般物価水準は騰貴するであろうと。
その後,シュルツの仮説はSectora1Demandpuユュェn口a- (291BO tionとか,生産性上昇率格差インフレーションという構造的インフレーシ ョンの仮説を生み,現代インフレーション理論分析の一般的仮説となってい るo SectoroユDemandPuユユエnmationでは,生産物市場と 生産要素市場の二つの市場が考察の対象となり,それぞれの市場に完全競争 市場と不完全競争市場がある。完全競争市場では,価格は生産物に対する需 要と供給で決まり,賃金は労働力に対する需要と供給で決まる。いわゆる価 格や賃金の決定は,需給量の変動に対して弾力的に反応し,市場で決定され るという意味でデイマンド。デイターミンド(Demanddetermined) である。他方,不完全競争市場では,価格や賃金の決定は,需要変動に対し て弾力的ではなく市場支配力によって決まるという意味で,コスト・ディタ ーミンド(Oostdetermind)である。企業はフル・コスト原則に上 って価格を決定する。需要の変動に関係なく主要費用に対して一定の禾燗率を積上げることに茎って価格が決定され響。労働者は生産費に対して一定の
マークアソプ率をかけ,力膜して,団体交渉を通して賃金引上げを要求し実 現されるものときれるo B21 ターヴェイ(Ra1phTurvey)やザワッツキー(nK.F,Zawa- B3 dZki)によれば,生産物市場と生産要素市場いずれかが完全競争市場と 不完全競争市場である場合を組み合わせて,四つのタイプにおける物価の運 動メカニズムを解明した。四つのタイプの価格や賃金の諸決定の組み合わせ はつぎの通りである。 22Aタイプでは,物価が騰貴すれば労働者は生活費が増加する。実質賃金を 維持または引上げるために貨弊賃金率の引上げを要求する。企業は賃金引上 げを容認すれば利潤率が低下するので,一定の利潤を維持するために価格を 引上げる。労働者も企業も,つねに,自らの実質所得を維持たいし引上げる ために,力と力の対決を通して貨弊賃金率や生産物価格を引上げるという意 味で,ザワソツキーはこのタイプの物価変動メカニズムを所得獲得競争イン 64 フレーンョンと呼ぶ。つまり,物価騰貴一一(賃金調整フグ)--賃金の上 昇ニーフ(物価調整のラグ)---物価騰貴という物価と賃金の悪循環が延々と 続く。物価調整のラグは賃金調整のラグより短い。なぜなら,企業家はでき るだけ調整のラグを短くし,生産費と物価との関係をコンスタントに維持し ようとし,またそれが可能であるのに対して,労働者は,物価指数が年末に しかできないこと,団体交渉ですぐには妥結したいことなどの理由で賃金調 整にかなりの時間がかかるからである。賃金調整も物価調整も目標通りの調 整はできず,特に賃金上昇率は物価騰貴率より漸次逓減していく。悪循環過 程での不完全調整が幾度か行われていく過程で上昇率がゼロになるという意 味で物価賃金の調整の不完全性それ自体が自動的安定化装置であると主張さ (33 れる。このタイプの物価運動では,需要が存在するかどうかに関係なく物価 23 価格決定方式 賃金決定方式 A夕イブ (所得獲得競争インフレ) OoBt determined OoBtdetermined B夕イブ (過剰需要インフレ') Demand determind Oostdetermined O夕イブ (労働力不足インフレ) OoBtdetemqined Demanddetermined Dタイブ。 (オーフ゛ン・インフレ) Demand dete]Emined Demand determined
は騰貴し,発展し,何らかの形で収束されていくものとされる。労働者も企 業もそれぞれ市場支配力を持ち,賃金や物価がOoBt-determinedに よって決定されるからである。だから不況にたっても物価は上昇しつづける であろうO Bタイプでは,物価が騰貴すれば,一方では利潤率が上昇し企業の所得が
増加する。利潤率の増加は投資を誘引し,生産物に対する有効需要を高め,
それが一層物価水準を引上げるであろう。他方物価騰貴は労働者の生活費を増やし,労働組合は貨弊賃金率の引上げを要求し実現する。労働者の所得の
増加は,労働者の消費性向が企業家のそれより大きいので,生産物に対する
有効需要を増大させ,物価を騰貴させるであろう。また所得の増加に伴ない 政府は租税収入が増え,財政支出を増やせば,さらに生産物に対する有効需 要を高め物価を騰貴させるであろう。すなわち物価騰貴くこ鰐:---企業家の所蝿
貨弊賃金率の引上げ-→労働者の所得増 一一一一>生産物に対する過剰需要一→物価騰貴鶴野
i小hUHX′I この仮説では,不況にたって物価が下落したいのは,労組に上る貨弊賃金 率の引上げによって生産物に対する過剰需要が生ずるからというばかりでなく,不況下物価騰貴自体が企業の一定利潤率を保証するが故に生産物に対す
る過剰需要を生み出すからであるといえよう。その上,政府に主る財政支出 の恒常的増大が続く限り不況下物価騰貴は解消されないだろうということを 示めす。oタイプでは,物価が騰貴すれば利潤率が上昇する。だから,企業は生産
を拡大するために労働力に対する有効需要を増やすけれども,完全雇用下に あるので労働力市場は労働力不足の状態になり,貨弊賃金率が上昇する。貨 弊賃金率の上昇は労働組合の市場支配力のよるものではなく,企業の利潤率 の増大に主ろものである。すなわち,物価騰貴一→利潤率増一→労働力に対 する過剰需要一→貨弊賃金率上昇一→物価騰貴という物価騰貴の発展メカニ 24B7) ズムになる。このタイプは不況下物価騰貴の発展メカニズムを表わしている よりもむしろ好況下の物価騰貴の発展メカニズムを表わしているといえよう。 もし不況下で物価騰貴があっても利潤率が思わしくなければ,あるいは期待 利潤が小さければ,企業は労働力に対する有効需要を増やさないであろうo だから,不況下では利潤率の好転に上る貨弊賃金率の上昇は期待されず,む しろ,企業は一定の利潤率を維持するために,人員整理をして雇用量を減ら したり,資本設備の嫁働率を抑えて生産調整を図るであろう。 Dタイプでは,価格も賃金もともに完全競争市場における価格決定と同じ で,需要と供給の変動に対応して弾力的に動くものとされる。だから,この タイプによる物価騰貴は過剰需要によっておこり,純粋な需要インコレーン ョンといえる。これに対してAタイプに価格や賃金がともにコスト・ディタ ーミンドであるので,純粋なコスト・プッシュ・インフレーションといえる。 構造的インフレーションはかかるタイプのものではなく,BやOのタイプあ るいはより複雑なタイプを示めす。 例えば,生産物市場に価格決定方式が,デイマンド・デイターミンドであ る市場とコスト・デイターミンドである市場があり,生産要素市場にも賃金 決定方式が,デイマンド・デイターミンドである市場とコスト・デイターミ 63 ンドである市場がある場合を考えよう。コスト・デイターミンドによって決 定される賃金や物価が騰貴しなくても,もし,デイマンド・デイターミンド によって決定される賃金や物価が部分市場での過剰需要によってボトルネッ クが生じ,上昇すれば,不完全市場と完全市場との賃金格差の縮少と物価騰 貴が発生するだろう。だから,不況下でも生鮮食料品など農水畜産物に対す る過剰需要があれば,コスト・デイターミント゛によって決定される生産物価 格が一定であっても,一般物価水準は騰貴する。かくして,セクトラル・デ イマンド・プルインフレーションI/qれば,物価騰貴の原因は,農水畜産物 のように完全競争市場にある生産物の供給体制のいかん,大企業の価格政策, 政府に上る各種各様の支持価格政策にもとめられる。不完全競争市場におけ る物価や賃金が生産性のいかんを問わず下方硬直的であるときに,完全競争 25
市場で過剰需要が存在すれば物価や賃金は上昇し,その結果全体として,物 価や賃金が上昇する。だからもし,完全競争市場で過剰需要が存在しなけれ ば物価騰貴はおこらないというのがセクトラル・デイマント゛・プル・インフ レーションの論理であるといえようo 注28.0.L・Schuユtze,viRecentエnnationintheUnited States,IIS加吻HZper,No.1ed.,byJointEco-nomicOommittee,ユ959. 29.熊谷尚夫,画わが国の物価問題と価格理論,”熊谷尚夫,渡部経彦編,「日本 の物価」,日本経済新聞社,第1章. 30.高須賀義博,鴎代価格体系論序説」,岩波,昭和40年,や「現代日本の物 価問題」,新評論,1972年,伊東光晴,断しいインフレーション」,
3ユ.0.Ackユey,Mqlcroeco"oWfcr7zeo期,ユ96ユ,cha]QXV工.
32.R・nrvey,wSomeAspectsof、theTheoryof工nf-ユationinaOユosedEconolny,'1ECO"o777Zcc70""αZコ ユ95ユ.RoTurvey&H・Brems,wTheFactorand GoodsMarkets,wECo"omzca,Feb・ユ95ユ.33.K.K、F・Zawadzki,rhe恥o"。〃zcso矛Z7がZα亡ZoアzazDy
Pzzocessesコユ965なお,生産物市場と要素市場における,デイマン
ド・デイターミンドとコスト・デイターミンドの複雑な組合せにより,インフ レーションの発展メカニズムを分析されている文献として.B、Hanben,AS畝吻Z〃亡/ze助eo期○ずZ7がZα亡Zo"ヅ
ユ968.,J.D・Pitchrord,ASm均○ずcostα加
比川mZ7Z矛Zatfo",1963.
34.K.K、F・ZawadBki,op・Cit.,chaD3
35.K.K、F・Zawadzki,。p・Cit.,cnap、6.
36.K.K、F・Zawad2ki,op・Cit.,chap、4
37.K.K、F・ZaWad2ki,CD・Cit.,chap、5.
38.熊谷尚夫,前掲書,第1章. 3.生産性上昇率格差インフレーションの論理 構造的インフレーションの典型的な仮説として生産性上昇率格差インフレ ーションがあるo高須賀義博教授は,その仮説が成立するための条件として三つあげてい製それは①独占的超過利潤の存在とその労賃への配分,②労
26賃の高位水準化傾向,⑧生産性変化率格差の存在と物的生産性格差の固定化 である。その仮説による物価騰貴の発展メカニズムをみるとつぎの主うにな る。まず,成長過程において高生産性上昇率部門が生じ,生産性上昇率が ̄ 定であった部門との間に生産性上昇率に格差が生ずる。高生産性上昇率部門 に雇用された労働者は生産性上昇の成果の配分を享受すべ〈貨弊賃金率の引 上げを要求する。高生産性上昇率部門の産業ないし企業は労働者の要求を全 面的に受け入れても,それを高生産性の成果で十分に吸収できる限り,価格
を引上げる必要は左概労働力市場では,低生産性上昇率部門に雇用された
労働者は高生産性上昇率部門で実現した高賃金率を目標として貨弊賃金率の 引上げを要求する。低生産性上昇率部門の産業ないし企業では,一定の労働 力を確保するために労働者の要求を受け入れざるをえない。しかし賃金率の 上昇に上って利潤率が減少し,企業の継続が困難になる。そこで低生産性上 昇率部門の産業または企業は賃金コストの上昇を生産性で吸収できないので 価格へ転嫁し,価格を引上げざるをえない。かくして高生産性上昇率部門の 価格が一定であっても,その価格が引下げられたい限り全体として物価は騰 貴せざるをえない。すなわち,生産性上昇率格差の存在一→高生産性部門の 賃金上昇一→賃金の高位平準化運動--→低生産性部門の利潤低下一>低生産 性部門の価格引上げ--→一般的物価水準の上昇という物価変動のメカニズム となるo しかし,不況期において高生産性上昇率部門の労働組合が賃金率の引上げ を実現したとして,低生産性上昇率部門の労働者がそれを目標として賃金率 の引上げの要求をしても実現しうるであろうか。不況下においても,賃金の高位平準化運動がおこるためには'需毫jill出機構すなわち'金を離脱して幾
らでも購買力を創出しうる管理通貨体制と不生産部門の規模の拡大がなけれ ばならないだろう。それがなくては低生産性上昇率部門の産業または企業は 賃金率の引上げを容認できないのではなかろうか。不況が深刻になればなる ほど,高生産性上昇率部門の産業や企業でも,いつまでもその生産物の価格 を一定にして貨勢賃金率の引上げ要求を受け入れることはできないだろう。 -27-かくして不況下における物価騰貴の運動メカニズムの前提には,需要創出機 構が制度として現代資本主義経済の枠組として組み入れているといわなけれ ばならないo 注39.高須賀義博,前掲書,第3章
40.生産』住上昇の成果を企業や組合は価格引下げより賃金引上げと企業利潤として
配分する。その論拠として,Kuhnはつぎのようなことを述べている。企業
者の動機として,①資本と労働は代替的であるよりも補完的であり,需要の下
落があれば,労働者は解雇しやすく機械より労働者を雇用したがる。かくして
短期においては労働力の投入を変えるだけで生産量の調整ができる。②熟練労
働・技術労働の供給限界や労働力の非移動性によって労働力の供給が非弾力的
である。③インフレよりデフレを恐れる。労働者の動機として賃金引上げによ
り貨弊国民所得の増加がある。A、Kuhn,。MarketStructre-reBandWage-Pushlnrユatユon,Z7,Z伽StrfaZα"α
Labo]⑪?eZα亡Zo〃HeDf〃,Jan、1959.
41.則武保夫,国際的インフレーション,,,国民経済雑誌,1971年8月.
むすび
以上の分析を要約すると 。数量説ではⅢ→MV=D→P ・ケインズ「一般理論」ではM→MV=, (所得) (生産量)晨畠蚕:
。コスト・プッシュ・インフレ説では (10→市場支配カー市場構造の不完全性→P ・構造的インフレ説では ⑭→需要の部門間移動や生産性上昇率格差の存在→P ということになろうo 完全雇用水準を基準として物価安定と物価騰貴の発生メカニズムを判断す ることは困難である。不完全雇用下では物価騰貴はおこらないといわれるけ れども,つぎのような条件があれば不完全雇用下でも物価が騰貴する可能性 がある。-つの条件は貨弊(通貨)か物的生産部門にではなく不生産部門へ -28一流れ,生産力効果を生ない所得効果・需要創出効果のみを生み出す上うに資