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災害対応における国際協力の新展開 (特集 東日本大震災と国際協力)

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災害対応における国際協力の新展開 (特集 東日本

大震災と国際協力)

著者

豊田 利久

権利

Copyrights 日本貿易振興機構(ジェトロ)アジア

経済研究所 / Institute of Developing

Economies, Japan External Trade Organization

(IDE-JETRO) http://www.ide.go.jp

雑誌名

アジ研ワールド・トレンド

192

ページ

10-14

発行年

2011-09

出版者

日本貿易振興機構アジア経済研究所

URL

http://hdl.handle.net/2344/00004152

(2)

大災害が発生すれば、 人命救助 ・ の 大 災 害 で は 国 境 を 越 え た 救 東日本大震災では、 政府間ルー 日 に は 韓 国 と シ ン ガ ポ ー ル が、 伴 う 救 助 隊 な ど が 続 々 と 来 日、 災 三 県 お よ び 東 京 都 で 活 動 し た の は 発 災 四 日 後 で あ っ た ⑴ 。 たが、受入れ体制の不備を理由に 対 応 が 遅 延、 断 念 す る に 至 っ た。 そもそも、 緊急援助チームが食事 ・ 就寝等はすべて自己完結機能を有 し て い る こ と が 理 解 さ れ て お ら ず、海外からの来賓同様の接待を しようとしていたことが間違って いたのである。例えば、当時の兵 庫県の地域防災計画では「災害時 の国際協力」という項目について は、海外での大災害が生じたとき に見舞い状の電信をすること、の みが記されていた。このときの反 省から、平成七年に改定された国 の防災基本計画、それ以後の各地 域防災計画では「外国からの支援 の受入れ」を明記して、善意ある 申し出をなるべく受け入れるよう に改善されてきた。   海外からの物資の支援に目を転 じてみよう。七月二七日現在の政 府間ルートで物資を送ってきたの は六二の国・地域・国際機関であ る ⑵ 。 特 に ア メ リ カ は、 米 国 際 開 発庁からの緊急物資の他に放射線 防護服や大型機材などの福島原発 事故への支援物資を多く供与して いる。中国からガソリン、ディー ゼル各一万トン、タイの発電機二 基など大きく報道された物資もあ る。私は、阪神大震災の時にいち 早く関空に毛布を満載してきたモ ンゴル機を忘れることはできない が、今回も三月一四日に早々と二 五 〇 〇 枚 の 毛 布 を 持 っ て 飛 来 し た。毛布だけに限っても、 その後、 台湾二〇〇〇箱、タイ三万六〇〇 〇枚、インド二万七〇〇〇枚、カ ナ ダ と デ ン マ ー ク 二 万 五 〇 〇 〇 枚、ロシア一万七〇〇〇枚、イン ドネシア一万枚…等々、今度は覚 えることができないほど多種類で 多量の物資が届けられた。政府間 を通しての寄付金については、実 に九一カ国から一七五億円以上を 受 領 し た( 七 月 二 二 日 現 在 )。 阪 神大震災の時は四三カ国から公的 な支援を受領したので、如何に今 回の外国からの支援が増えたかが 分かる。多くの発展途上国の人々 が何らかの活動によって集めた募 金が、現地の日本大使館に預託さ れ た も の も 多 く 含 め ら れ て い る。   私も現地事情を知っているラオ スでは、政府からの寄付として当 国では異例の八〇〇万円が早い段 階 で 日 本 大 使 館 を 通 じ て 送 ら れ た。多くの家庭が貧困ライン以下 で生活している同国であるが、庶 民の募金も活発になされ、平均年 収を超える額の義援金を届けた市 民もいるという。四月七日、国立 文化会館でチャリティ・コンサー トとバザーが外国を含む多くの民 間団体の主催で開催され、深夜ま でテレビ中継と電話による募金が 行われた。この催しでは、ラオス に帰国している元日本留学生の多 くが自発的にボランティアを買っ て出たという。一晩で集まった額 は約六〇〇万円に達し、日本赤十 字社に送られた。東日本大震災の 被災者と日本を励ますこのような 世界各地のエピソード集が、外務 省 の ホ ー ム ペ ー ジ で、 「 が ん ば れ

災害対応

おける国際協力

新展開

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日 本!   世 界 は 日 本 と 共 に あ る 」 として公開されている。   外 国 か ら の 寄 付 金 は 直 接 に 日 本 政 府 に届 け られ る 他 、 さ ま ざ ま な 民 間 の ル ー ト で 集 め ら れ る 。 そ の 最 大 の ル ー ト は 、 各 国 の 赤 十 字 な ど で 集 めら れた お カ ネ が 日 本 赤 十 字 社 ( 日 赤 ) に 送 金 さ れ る も の で 、 七 月 一 〇 日 現 在 約 二 三 〇 億 円 に 達 し て い る 。 日 赤 で は こ れ を 海 外 救 護 金 と 呼 び 、 現 金 で は な く 物 資 に 変 え て 被 災 者 に 届 け る 。 海 外 の 寄 付 者 が直 接 日 赤 に 送 金 し た 場 合 は ( 七 月 一 〇 現 在 、 約 一 〇 億 円 )、 日 本 国 内 で の 赤 十 字 募 金 と と も に義 援 金 と し て 配 分 さ れ る ⑶ 。 海 外 か ら 日 赤 に 届 け ら れ た 額 は 、 国 内 分 と 合 わ せ た 日 赤 全 体 の 募 金 額 の 約 一 割 に 相 当 す る 。 先 進 国 か ら 最 貧 途 上 国 ま で 、多 く の 人 々 が 実 に 様 々 な 同 情 の 気 持 ち で 日 本 の ( 政 府 で な く ) 被 災 者 へ 贈 っ た 浄 財 で あ る こ と を こ こ で も 確 認 し て お き た い 。

●支援が高まった理由

  国 境 を 越 え た 人 的な 救 助 隊 活 動 は 有 効 な 救 助 犬 を 使 用 す る ス イ ス 、 フ ラ ン ス 等 の 欧 米 諸 国 で 実 績 が 積 ま れ て き た 背 景 が あ る 。 ま た 、 わ が 国 も 一 九 八 七 年 以 後 、 救 助 お よ び 医 療 チ ー ム だ けに 限 っ て も 七 〇 回 以 上 の 派 遣 実 績 が あ る よ う に 、 そ の 専 門 性 を 生 か した 実 力 と 実 績 が 各 国 に お い て 積 ま れ て き た 。 し か し 、 欧 米 諸 国 だ け で は な く 、 今 回 は ア ジ ア 諸 国 か ら 人 的 支 援 を 広 く 受 け 入 れ て い る 。 イ ス ラ エ ル 、 イ ン ド ネ シ ア 、 ヨ ル ダ ン 、 タ イ か ら は 医 療 チ ー ムも 入 り 、 規 制 の 厳 し い わ が国 で も 非 常 時 に お け る 公 的 な 医 療 行 為 が 外 国 人 に よ っ て な さ れ た の で あ る 。 特 に 重 視 し た い の は 、 阪 神 大 震 災の 時 に は 実 現 し な か っ た 隣 国 で あ る 韓 国 、 中 国 か ら の 救 助 隊 が 早 い 段 階 に 円 滑 に 入 国 し た こ と で あ る 。 こ の 背 景 に は 、 一 九 九 八 年 の 四 川 大 震 災 の 際 に 日 韓 両 国 の 救 助 隊 が 大 き な イ ン パ ク ト を 中 国 政 府 お よ び 国 民 に 与 え 、 そ の 意 義 が 三 国 間 で 共 有 で き る よ う に な っ た こ と を 指 摘 し た い 。 も ち ろ ん 、 こ れ 以 外 の さ ま ざ ま な 民 間 人 、 N G O 等 によ る 人 的 支 援 活 動 が ま す ま す 活 発 化 し て い る こ と を 忘 れ て は い け な い 。   救 援 物 資 ・ 寄 付 金 が 多 数 寄 せ ら れ た 要 因 の ひ と つ に は 、 メ デ ィ ア の 多 様 化 と グ ロ ー バ ル 化 と い う 現 象 も あ る 。さ ま ざ ま な 形 態 の メ デ ィ ア を 通 し て 世 界 中 の 出 来 事 がオ ン ライ ン で 情 報 伝 達 さ れ る 時 代 であ る 。 特 に 、 町 、 家 、 車 そ し て ヒ ト を 飲 み 込 ん で ゆ く 津 波 の 映 像 の イ ンパ ク ト は 人 々 の心に 刻 み 込 ま れ る 。 さ ら に 、 避 難 所 で 苦 難 に 耐 え な が ら も 穏 や か に 振 舞 う 東 北 地 方 の 被 災 者 の姿に 心 を 打 た れた 外 国 人 が 多 い と 言 わ れ て い る 。 こ の よ う な 映 像 や 写 真 が世 界 中 の 人々 を 動 か し た こ と も 事 実 で あ ろ う 。   最 後に 、 救 援 物 資 や ( 特に ) 寄 付 金 を 寄 せ た国 が 多 数 に な っ た 背 景 に は 、 わ が 国 がO D A に よ る 支 援 を 脈 々 と 行 っ て き た こ と に 無 関 係 で は な い こ と に 言 及 し た い 。 「 困 っ て い る 時 は お 互 い 様 」 と い う ま さ に 互 恵 ・ 共 助 の 精 神 の 表 れ で あ る 。 わ れ わ れ は こ の よ う な 状 態 を 嘗 て 「 国 際 的 な 社 会 的 互 助 関 係 」 と 呼 ん だ ⑷ 。 山 形 辰 史 氏 は 本 号 で 「 水 平 協 力 」 と 呼 ぶ 。 単 な る 一 時 的 な O D A へ の 「 恩 返 し 」 だ け で は な い と い う 含 意 も あ る 。 こ の こ と は わ が 国 の 大 災 害 の 歴 史 で 体 験 し てい る 。 ま だ 途 上 国 で あ っ た 一 九 二 三 年 の 関 東 大 震 災 に お い て 、 実 に 三 一 カ 国 か ら 二 二 〇 〇 万 円 の 義 援 金 ( 当 時 は 義 捐 金 と 呼 ん だ ) を 受 領 し た が 、 こ れ は 国 内 の 義 捐 金 四 八 〇 〇 万 円 の ほ ぼ 半 分に 匹 敵 す る も の で あ っ た ⑸ 。 日 本 が O D A を ま だ 行 っ て い な い 時 代 に こ れ だ け の 義 捐 金 を 受 け た と い う こ と は 、 大 災 害 時 の義 援 金 は O D A に 対 す る 「 恩 返 し 」 だ け で 行 わ る の で は な い こ と の 歴 史 的 な 証 左 で あ る 。

 義

いたか?

  外 国 か ら の 義 援 金 を 含 め 日 赤 に 集 ま っ た 義 援 金 は 七 月 末 現 在 で 二 四 〇 〇 億 円 に達 す る 。 共 同 募 金 分 を 含 め る と 三 〇 七 〇 億 円 に な る 。 被 災 者 へ 配 分 さ れ た の は 、 四 カ 月 過 ぎ た 段 階 で 未 だ 四 割 に 留 ま る と い う ⑹ 。   日赤による義援金の配分が遅い のは今回限りではない。実は、阪 神大震災の際には第三次配分が終 了するまでに二年数カ月がかかっ た。その時の批判に応えて、日赤 被災3カ月後の大船渡(筆者撮影)

災害対応における国際協力の新展開

(4)

「迅速 「公平性」 を掲げた。 は、 全 壊、 半 壊、 焼 失 住 者 に 限 ら れ る の で、 と い う 手 続 き を 経 る。 う 意 味 で の「 公 平 性 」 の確立が望まれる。   さ ら に 、 海 外 か ら 日 赤 に 送 られ て く る 寄 付 金 は 、 七 月 一 〇 日 現 在 で 一 〇 億 円 の み が 現 金 支 給 の 義 援 金 に 振 り 向 け ら れ た と 上 で 述 べ た 。 大 部 分 の 二 三 〇 億 円 は 現 金 支 給 で は な い 「 海 外 救 援 金 」 と い う カ テ ゴ リ ー で 現 物 支 給 さ れ る こ と に な っ て い る 。配 分 先 を 決 め る 頃 に は 、 多 く の 被 災 者 が 仮 設 住 宅 ( 応 急 仮 設 住 宅 を 含 む ) に 住 む 時 期 に な っ た の で 、 そ の 八 割 超 は 薄 型 テ レ ビ ( 三 二 型 )、冷 蔵 庫 ( 三 〇 〇 リ ッ ト ル )、 全 自 動 洗 濯 機 、 電 子 レ ン ジ 等 の 家 電 六 点 ( 計 約 二 〇 万 〜 三 〇 万 円 ) に 一 律 に 決 ま っ た と い う 。 避 難 所 や 自 宅 で 暮 ら す 人 に は支 給 さ れ な い ⑺ 。 世 界 中 の 人 々 、 と り わ け 途 上 国 の 人 々 が 被 災 者 の 苦 悩 に 同 情 し て 募 金 し た 汗 と 涙 の 結 晶 が こ の よ うに 使 用 さ れ た と 報 告 でき る だ ろ う か 。 小 額 で も 、 被 災 者 に 広 く 一 律 に 現 金 支 給 した 方 が 世 界 中 の 真 心 を 受 け る こ と に な る の で は な か ろ う か 。 家 電 な ど は 国 内 の 支 援 金 で 別 途 調 達 す べ き で あ ろ う ⑻ 。

●国際協力への新しい芽生え

⑴  復興・防災には外国の知恵も活 かそう   私は、地域安全学会の一会員と して、アメリカ・韓国・台湾の関 連 学 会 ⑼ と の 東 日 本 大 震 災 共 同 調 査団に加わり、六月二一日から三 日間、岩手県の久慈から陸前高田 までの三陸沿岸の被災地をほぼす べて回ることができた。単に視察 したのではなく、地域安全学会が 二年前に大船渡で大会を開催した こともあり、県当局や各市町の全 面的協力を得て、外国人一九名を 含む約五〇名の効率的な視察とヒ アリングができたのである。そし て最終日には盛岡に帰って夜遅く まで調査結果の取りまとめと提言 を行い、県の担当者にも熱心に聴 いてもらった。まだ、混乱と多忙 を極めているこの時期にこのよう な研究者集団を丁寧に受け入れて もらった理由は、岩手県の復興計 画(案)を聞いて納得できた。そ の な か で、 「 海 外 を 含 む 研 究 者 や 学会を積極的に受け入れ地域開発 や先端研究を進める」旨のことが 含まれており、今回の国際共同調 査団受け入れがその第一号として 位置づけられていたのだ。今回の 調査団には内外の復興計画の専門 家が多く含まれており、提言には 妥当なもの、ユニークなものなど が多く含まれていた ⑽ 。   四 川 大 震 災 か ら の 復 興 に 際 し て、中国はいくつかの市について は世界から自由な計画案の公募を 行い、実際にそのなかから選ぶと いうこともなされた。外国からの 干渉に厳しく対処する中国にとっ ては、四川大震災後の外国から学 ぶという姿勢は非常に異例であっ た。 その方面の研究が遅れていた、 地 方 自 治 体 に 計 画 立 案 能 力 が な か っ た と 言 え ば そ れ ま で で あ る。 しかし、日本も外国の施策や経験 か ら 謙 虚 に 学 ぶ こ と も 必 要 で あ る。例えば、すでによく紹介され ている四川大震災後に中国政府が 用いた「対口支援」 ⑾ は、ちょうど 私が四川省に調査に出かけていた 発災一カ月後に発表され、そのア イデアに驚いたところ、現地の学 者から、内陸部発展で従来から用 岩手県の復興計画に関する国際共同ワークショップ (写真提供:地域安全学会)

(5)

いられていた手法の応用であると 聞いて納得できた。 考えてみれば、 日本版対口支援は自主的に(悪く 言えば乱立的に)一部で進行して いる。関西広域連合の内部では重 複しないように府県ごとに振り分 けて支援しているが、 仙台、 石巻、 大船渡等には重複した支援が見ら れる一方、例えば支援の無い大槌 町には比較的財政力のある政令都 市が全面支援するというようなこ とが考えられないだろうか。なか でも、東京・神奈川・埼玉の三都 県は福島県を全面的に支援する必 要があるのではなかろうか。中国 と同じ強制力を実施することはで きぬとは言え、有効な行政間の支 援ペアリングを今からでも総務省 で検討してもらいたいものだ。 ⑵  災 害 サ イ ク ル と「 兵 庫 行 動 枠 組 み 」   図 は い わ ゆ る 災 害 サ イ ク ル を 示 す 。 災 害 発 生 → 応 急 対 応 → 復 旧 → 復 興 → 防 災 ( 備 え ) → … と い う 循 環 を 抽 象 的 に 示 し た も の で あ る 。   通 常 は 「 復 旧 ・ 復 興 」 と い う 表 現 が 良 く 使 わ れ る 。 し かし 、 復 旧 と い う の は 目 に 見 え る 構 造 物 ( 家 屋 、 道 路 等 々 ) を 元 の 状 態 に 戻 す こ と を 意 味 す る が 、 復 興 は 目 に 見 え な い 非 構 造 物 を 含 め て よ り 良 い 状 態 に 発 展 さ せ る こ と を 言 う 。 し た が っ て 、 復 興 の 基 本 は 人 間 が 災 害 か ら 受 け た 不 自 由 か ら の 解 放( い わ ゆ る 人 間 復 興 ) で あ る 。 ミ ク ロ 的 に は 、 災 害 に よ っ て 突 然 に 受 け る 身 体 の 不 自 由 、 住 居 の 不 自 由 を 緩 和 し 、 生 活 の 再 建 が 必 要 と な る 。 マ ク ロ 的 に は 、 被 災 地 域 の 経 済 面 の 再 建 と 発 展 が 必 要で あ る 。 し た が っ て 、 復 興 に は 一 様 で な い 被 災 状 況 に 応 じ て 自 助 、 共 助 、 公 助 の す べ て の 災 害 対 応 が 必 要 で あ る 。   ところで、わが国の自然災害へ の対応を規定する基本法は一九六 一 年 施 行 の 災 害 対 策 基 本 法 で あ る。しかし、この法律は明らかに 防災中心であり、 条文を見ても 「防 災」 「応急対策」 「復旧」はあるけ れども「復興」は対象にされてい ない。復興過程が長引くような大 災害のたびに、行政に混乱が見ら れ、その場限りの特別措置法の立 法、財源をめぐる混乱が生じ、結 果としてミクロとマクロの復興が 遅れることになる。阪神大震災の 場合、復旧はスピード感を持って 進められたが、復興はほとんど地 元で自立的になされたので長引い た。東日本大震災では、復旧(特 に瓦礫処理) が遅れ気味であるが、 復興はさらに見通しが立っていな い。このような混乱が生じる大き な理由は、復興に関する基本的な 法規定がないからである。   多 様 な 災 害 リ ス ク を 抱 え な が ら、現在のような経済状態を達成 し た こ と は わ が 国 の 誇 り で あ る。 その過程で、構造物をより堅固な ものにすることによって防災があ る程度達成されてきたことも事実 である。しかし、阪神大震災にお ける高速道路や神戸港の崩壊、東 日本大震災における大防波堤崩壊 や仙台空港の被災、新築住宅さえ も押し流す津波の猛威は、構造物 中心の防災対策の不十分さを証明 した。その反省として、津波対策 としての「逃げる」ことを教える というソフト面を防災対策に加え ることで終わってはならない。重 要なことは、大災害発生後の復興 対策で相変わらず混乱が生じてい ることだ。財源を含む復興制度を 明確に示す「災害復興基本法」の 制定が望まれる。   近時、わが国は国際機関を通じ た国際防災協力に力点を置いてい る。特に、二〇〇五年に神戸市で 開 催 さ れ た「 国 連 防 災 世 界 会 議 」 において、二〇一五年までの国際 社会における防災活動の基本的な 指針となる「兵庫行動枠組み」が 採択され、ある意味でそのトップ ランナーの役目を担っている。 「枠 組み」は建築物耐震化、気候変動 への対応、災害対策の充実・強化 等で国際防災協力を進めようとい う内容であるが、最近は「復興に かかる費用を削減するために事前 の予備的な防災投資を」という経 済学的な効率性の考えが重視され ている。さらに、災害復興過程に おける災害予防の観点を取り込む 視 点 か ら、 「 国 際 復 興 支 援 プ ラ ッ トフォーム」が神戸市に拠点を置 いて活動をしている。また、世界 銀行内に「防災グローバルファシ リティ」 を設置し、 日本等のドナー が 拠 出 し て 災 害 リ ス ク の 高 い 低・ 中所得国における開発戦略に防災 「災害対策基本法」 「災害救助法」 「兵庫行動枠組み」 発災 救援 復旧 復興 防災 (事前の備え) 図 災害のサイクルと対応

災害対応における国際協力の新展開

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例えば、 グ ロ ー バ ル フ ァ シ リ ティにおける信託基金を長期に大 幅に積み上げ、すべての国が構造 物の復興資金に使用できるような 方策を模索すべきであろう。国際 協力を進めながら、国内の復興制 度も拡充する必要がある。 ⑶  日中韓三国の災害対応協力促進を   三 国 の 首 脳 が 毎 年 会 談 す る サ ミットは、四川大震災後の二〇〇 八年から始まった。第一回目が太 宰府で開かれ、一周して今年度は 東京で開かれた。特別に一日割い て先に福島に三首脳が集合したこ とは大きな成果であった。このサ ミットは、四川大震災を契機に始 まり、緊急援助隊の相互受け入れ と時期が重なっており、重要な会 談トピックスのなかに必ず災害対 応の協力が盛り込まれている。災 害後の緊急援助のような目に見え る形の相互協力を積み上げていく ことは、人命救助に資するだけで なく、政治や経済を含む安定的な 近隣の国際関係の維持に貢献する ものだ。緊急援助から初めて、さ らに多様な災害対応に関する協力 関係を築くことが重要であろう。 ( と よ だ   と し ひ さ / 広 島 修 道 大 学 教授) 《注》 ⑴ 以 下 、 阪 神 ・ 淡 路 大 震 災 ( 阪 神 大 震 災 と 略 称 ) に 関 す る 記 述 は 、 豊 田 利 久 ・ 瀬 川 智 子 ( 一 九 九 八 ) 「 緊 急 援 助 に お け る 国 際 協 力 ― 阪 神 大 震 災 の 被 災 地 で 学 ん だ こ と ― 」『 国 際 協 力 論 集 』 第 五 巻 三 号   二 一 ― 四 四 ペ ー ジ に よ る 。 ⑵外国政府から贈られた物資およ び寄付金の情報は、外務省ホー ム ペ ー ジ htt p:/ /w w w .m ofa .go . jp /m ofa j/s aig ai/ pd fs/ bu ss isie n. pdf による。 ⑶海外から日赤へ流入した寄付金 額については、読売新聞(七月 一九日)参照。日赤と中央共同 募金会に寄せられた義援金は七 月末時点で三〇七二億円(日本 経 済 新 聞( 八 月 二 日 )、 う ち 共 同募金分が(ホームページによ れば)約六〇〇億円(七月二二 日現在)となっている。 ⑷豊田・瀬川(一九九八)参照。 ⑸ 豊 田 利 久( 一 九 九 七 )「 関 東 大 震災との比較でみた被害と復興 過程の特質」神戸大学震災研究 会編 『神戸の復興を求めて』 (神 戸新聞総合出版センター   五― 一二ページ参照。 ⑹日本経済新聞 (八月二日) 参照。 ⑺読売新聞(七月一九日) 。 ⑻これは、わが国の災害救助法で 未 だ に 頑 な に 踏 襲 さ れ て い る 「 現 物 支 給 の 原 則 」 と い う 厚 生 労働省の「哲学」に即している ものであろう。国内でも時代錯 誤となっているこの原則が外国 で通用するとは思えない。 ⑼ 具 体 的 に は、 米 国 地 震 工 学 会、 韓国防災学会、台湾危機管理学 会である。 ⑽少なくとも、復興構想会議の抽 象的な議論よりも、より具体的 で、行政にとって耳の痛い内容 も出された。追記すれば、復興 構想会議の提言では、 「被災者」 という言葉がなぜか使われない ほどに「上から目線」で書かれ ているが、岩手県の復興計画で は「被災者に寄り添う」という 表現もあり、被災現地からの声 をくみ上げ、早く財源措置を施 して復興へ進むことを願ってや まない。 ⑾財政力がある非被災地の県や市 が激甚被害を受けた県や市と一 対一のペアリングを中央政府の 指導で決め、三年間にわたって 支援地の予算の一%を非支援地 につぎ込み、民間部門も伴って あらゆる面の復興を完遂させる 試み。 陸前高田にて(筆者撮影)

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平成 7 年(1995 年)1 月 17 日に発生した阪神・淡路大震災を契機