北 陸 大 学 紀要 第
18
号 (1994
) pp.25〜41
1
国 際 経 済
の
秩
序
と オ
ル
ド
ー
学 派
鉢 野 正 樹
*Die
Ordnung
der
internationalen
Wirtschaft
unddie
ORDO
−
Schule
Masaki
Hachino
*Received
October
25,
1994
ZUSAMMENFASSUNG
§
1
,
Seit
dem
Ende
des
lezten
Weltkrieges
fing
die
ORDO
−
Schule
mitdem
Verlag
des
Jahrbuches
ihre
Tatigkeiten
an.
Das
Jahrbuch
,
ORDO
,hat
als seinzweites
Titel
,。
Jahrbuch
fiir
die
Ordnung
der
Wirtschaft
undGesellschaft
“.
Es
drUckt
den
sozio
−
6komischenStandpunkt
der
Schule
aus.
§
2
.
Die
ORDO
−
Schule
bekennt
sich zuden
Freihandel
.
Der
Freihandel
steht aufder
Bewtihrung
der
Goldwahrung
undder
komparativen
Kosten
.
Heute
kann
man
ihn
doch
nicht mehrdarauf
aufrecherhalten.
Weil
die
Goldwahrung
schon verlorenist
unddie
GUltigkeit
der
komparativen
Kostenlehre
vermindert sich wegender
freien
Bewegung
der
Arbeit
unddes
Kapitals
unterden L
’
i ndern.
Deshalb
willdie
ORDO
−
Schule
den
Freihandel
erneut aufden
flexibelen
Wechselkurs
,
den
Multirateralismus
unddie
freie
Bewegung
der
Arbeit
unddes
Kapitals
setzen.
§3
.
Die
ORDO
−
Schule
spricht nichfUr
die
,
,
institutionelle
Integration
“,
sondernfUr
die
,,funktionale
Integration
“
.
Nach
ihrer
Meinung
stelle sichdiese
mitder
marktmti β
igeren
LOsung .
Dagegen
lehne
sichjene
an autoritatenHarmonisierung
an
.
Die
ORDO
−
Schule
hat
die
皿inder
MachtUbung
lieber
,
(
Key
Words
:freie
Bewegung
der
Arbeit
unddes
Kapitals
,flexibeler
Wechselkurs )
一
問
題 設定
「オル ド
ー
学 派 」 (Ordo
−Schule
)とは,1948
年に経 済 学 者の ワ ル ター ・
オ イ ケ ン と法 学 者の フ ラン ツ・
ベー
ム と が共同
で創
刊し た年報
誌r
オル ドー
』(
ORDO
)に結集
してい る学 者集
団 によっ て今 も形 成 さ れて い る経 済 学の系 統をい う。 『オル ドー
』は,
1948
年の創 刊 以 来,1994
*外 国語学部
Hokuriku University
NII-Electronic Library Service Hokurlku Unlverslty
2
鉢 野 正 樹 年の 時 点で四五巻を数え る。 「オル ドー
』 四十
数 年の 歩み は,戦後
西 ドイッ , そ して東 西 ド イ ツ統一
後の1990年
以 降は ド イッ史に重な る。「オル ド
ー学派
」の特
徴 と して,
三 っ の 点が指 摘で きる。
一
っ は,
こ の学 派は年 報 誌r
オル ドー
』が 「経 済と社 会の秩序
の た めの年 報 誌 」 (Jahrbuch
fUr
die
Ordnung
undGesellschaft
)
を副
題 として いることか らもわかる よ う に, シ ュ ン ペー
ター
の用 語を借 りれ ば 「純 粋 経 済 学 」で な く,
「経 済 社 会 学 」 の立場に立っ % 経 済と社 会と は, 人間
生 活の中
で密 接に関 連 して い る とい う認識
をもち,例
えば 人 間 生活
の物 質
面 は経 済
, 精 神 面は社 会とい っ た人 間 生 活の二分 法は と ら ない。 人 間 生 活の 両 面をバ ラン ス さ せ な が ら,
問 題へ の接 近 をはかる。一
例 を あ げれば, 年 報 誌 『オル ドー
』 に は他の経済
専 門 誌に比べ る と , 数 式や図 表や図 式が極 端に少な い。 これ は, こ の 学 派が人
間 生 活を物 質 面 と精 神 面の 両 面か ら 研 究 対 象に し て い る こ と と無関
係で は な い。 オ イ ケ ン が経 済 政 策の原理 と し た 「経
済 政策
は機
能
的,
かつ 人間
的で な くて はな ら ない 」2)とい う標
語 も , 「オル ドー
学
派」 の経済
と と もに社 会
を,
物 質と ともに精 神を とい う 「経 済 社 会 学 」の立 場を端 的にあ ら わ して い る。二 つ に, 「オル ド
ー
学
派」 に結 集 する学者
は,
人 間に とっ て自
由の価値
はな に もの に も か え が たい とい う価 値 観を共 有 する。 こ の価 値 観は, 自 由の最 大の敵が権 力で ある との共 通 認 識で強化
さ れ る。自
由とい うの は, こ の学派
の共 通認識
に とっ て は,決
し て好
きな よ う に,好
き な こ と が, 好 き な と きに で き る とい っ た, 俗に い う身 勝 手をい うの で は ない 。 自 由の 濫 用とい う表
現は,
しば し ば権 力を もっ 方が権
力を もた ない方の気
ままな行 動を非 難 するときに使
わ れる。 し か し,権
力を もつ方
の 振る う裁
量権
が, その かげに権
力 をもつ者
の気
ま ま な行動
を か く して い る こと も見 逃 されて は な ら ない。 自 由の価 値は,
一
度は権 力の前で慄 然と し た者に よ っ て発 見さ れ,今
も権
力の恐ろ し さを知 る者
に よ っ て 認識
さ れつ づ け てい る。自
由 を,権
力の侵
犯か ら守 る最 後の砦が,
秩 序で あ る とい う共 通 認 識をこ の学 派はもつ 。 年 報 誌 「オル ドー
』の誌 名 「ORDO
」(
秩序)
は, なに よ りもこ の共 通 認識
を 鮮明
に示 して い る。三 つ に, 「オル ド
ー
学派
」 は経
済 政策
に三つ の 目標
をもっ て いる。 そ れ は, 市 場を開 放 する,
貨 幣 を 安 定 さ せ る,
貿 易 を 自 由にすることの三 っ で ある3)。 以 上三っ の 目標
は,戦
後 西 ド イッ の 経済
政 策の 基本方
針で も あっ た。 こ の経 済 政 策は, エ アハ ル ト によ っ て実 践さ れ, 以 降 今日 に い た るまで変わ っ て いない% いず れの政 策 も, 自 由を 目的とする と,
こ の た め の手
段と な る。 な ぜな ら,市場
を開放
する た めの反独 占
,反
カ ル テル政策
は,市場形
態 を独 占市場
と寡 占
市 場か ら競 争 市 場へ と移 行さ せ る。 こ の移 行が成 功 すれ ば,
生産
者に とっ ては経 済 活 動の 機 会 がふえ,
消 費 者にとっ て も選 択の範囲
がふえ る。 これに よっ て,
自 由の度 合 もふ え ること に な る。貨
幣 を安 定させ る政策
は,
政 府に よ る景 気 政 策 (例えば,
財 政 支 出の増 加,
減 税 政 策,
中 央 銀 行の 国 債の 買い上 げ, 低 金 利 政 策, 平 価の切 下げ な ど)に民 間の 経済
活 動が過 度に期 待 し,
また過 度に依 存 するこ とを防 止 する。 自 由は,
自立の ない とこ ろで は育た な い。 政 府が,
国民
経済
の中
心 にな ればな る ほ ど民間
の経済活
動か ら は自 由が失われる。 貨 幣 を安 定さ せる政 策は, 貨 幣に関 係 する政 府の裁 量 権を制 限し,
政 府の民 間の経 済へ の過 度の干 渉を防 止 する。貿
易 を自
由にすれば, 生 産者
に は外国
の 市 場へ の ア クセ ス が開か れ,
こ れ に と もな う ビ ジネ ス ・ チ ャ ンスが もた ら さ れ る。 消 費 者に とっ て も,
外 国の商 品 とサー
ビ スが ふ える ことでそ れ だ け選 択の 範囲
が広め ら れ る。 さ らに, 資
本と労働
の移 動 も自
由と なれ ば, 貿易
の 自 由は自
由26
N工 工一
Eleotronlo Mbrary国際経 済の秩序とオル ド
ー
学 派3
の度合
を一
段
と高
め る。 「オ ル ドー
学 派 」の 三つ の経 済 政 策は, これら を国 際 経 済に適 用 すると市 場 統 合 と通 貨 統 合 と国家統
合に矛盾
な く展 開で き る。 な ぜ な ら,自
由経済
と開放経済
を と る国 民経済
が た が い に 接 近 し あえ ば, 統 制 経 済 と封 鎖 経 済で は絶 対 あり え ない市 場 統 合と通 貨 統 合と国 家 統 合とは矛盾
な く成 立す る か らで あ る。 それほ ど,統合
か らは,相当
の利
益が期待
さ れ る。確
かに,統合
を完
成さ せる に は,
国 民感情
や民 族 意識
をは じ め多
くの障害
が あ る。 しか し, 近代 (1500年 )
以 来いわ ゆ る国 民 国 家に よ っ て 分 断されて きた市 場や貨 幣や国 家そ の もの が,
例えば,
ド イッ とフ ラン ス の 市 場が統合
さ れて ヨー
ロ ッ パ 市 場と呼ば れ,
ドイ ッの マ ル ク とフ ラ ン ス の フ ラ ン と が統 合されて新 通 貨ECU
と呼 ば れ,
ド イッ とフ ラン ス と が統 合 されてEU
(欧 州 連 合 )と呼
ばれ る よ うにな れ ば,
その利
益は計
りしれ ない 。 ヨー
ロ ッ パ の統 合は,
「単一
欧 州 議 定 書 」 (1986
年2
月17
日 と28
日,
ル クセ ン ブル グ とハー
グ で調印)
で単
一
市場
の完成
を, 「欧州
連合条約 (
マー
ス ト リヒ ト条約)
」(
1992
年
2
月
7
日, マー
ス トリヒ ト で調 印 )で通 貨 統 合 と政 治 統 合 を,
それぞれ 目 標にする こと は周 知の こ とで ある。 「単
一
欧
州議
定書
」は,国境検
問の廃
止を含
めた非 関税障
壁の廃
止(
域
内関
税の 廃 止はすで に1968年
に完
了),単
一
通貨
の発 行に備
えて の準 備,共
通経済
政策
と して労 働
環境, 地域 開発
, 研 究・
技 術 開 発,
環 境に関 す る規 定 を 加え た。
こ れに と もない,
「欧 州 経 済 共 同 体 設 立 条 約(
ロー
マ条約)
」(
1957
年
3
月
25
日,
ロー
マ で調印)
に は,
必要箇所
で条項
が加え ら れ た。 「欧
州 連 合 条 約 」で は,
通 貨 統 合と して は欧 州 中 央 銀 行の設 立,
単一
通 貨ECU
の発 行,
政 治 統 合 と して は 「欧
州 連合
」の結成
,共
通外
交 政策
, 共通防衛政策
な ど が規定
さ れ た。 これに と も なっ て,
同 じくロー
マ 条 約の 改 正が行 われ た。市 場 統
合
, 通貨統合
,政
治統合
か ら期待
さ れ る統合
の利
益は, 以下
の諸 点
か ら明かで あ る。一
っ に,市場
統 合 は企業
にとっ て市場
の相
互乗
り入 れ がで きるの で多
くの国
の市場
へ の ア クセ ス と ビ ジネス・
チ ャ ン ス を 可 能に し,
消 費 者に とっ て も選 択の 範 囲 を 拡 大 する。 二 つ に,
通 貨 統 合は,旅
行 者に とっ て は煩 雑で あ っ た両替,
為替相場
の安
定の た めに と ら れて き た国家
間の 金 利の調 整,
国 際 収 支の安 定の ため に必 要 と される貨 幣 発 行 (マ ネー
サ プ ライ)の国ご との調 整な ど を不 用にす る。 三つ に, 政 治統合
も,外
交 と防衛
が統 合さ れ れ ば,
例え ば ド イッの敵
は フ ラン ス の敵, ド イ ッ の友は フ ラ ン ス の友と な っ て, 戦 うときに は共 同の軍 事 行 動 をと ら せる こ とにな る。外交
と防衛
と財政
と が統合
さ れ れば, ドイッ連邦
が そ うであ る よ うに,政治統合
は国 家 統 合とい っ て過 言で ない 。 国 家 統 合は, 国 家 間の 対 立,
紛 争, 戦 争を回 避さ せ るの に最 も有効
で ある。 国家統合
が, も し実
現され る な ら ばそ の利
益 は計
り し れな い 。ヨ
ー
ロ ッ パ の統合
につ い て は, 以上で述べ た よ うに 「オル ドー
学派
」の 経済
政策
と,統合
に よる利 益の いず れか らみて も,
「オ ル ドー
学 派 」に とっ て 異 論が ないはずである。 しか し,
ヨー
ロ ッ パ の統合
の 現状
と動向
に関して は,初期
の 「欧
州石炭
鉄 鋼共
同体
(パV
条約)
」(
1957
年
4
月18
日,
パ リで調 印 )か ら 「欧 州 連合
条 約 (マー
ス トリヒ ト条 約 )」の今日に い た る まで 「オ ル ドー
学派
」か らの批判
が た え ない。 「オル ドー
学 派 」は,
EEC
か らEC
をへ てEU
へ とヨー
ロ ッパ の 統 合 を 推 進 し た立 場 を, 「制度 的統 合
」(
institutionelle
Integration)
と呼
び, こ れ に対
して自
らを 「機 能 的 統 合
」 (funktionelle
Integration
)
と呼ん で自他
の 区 別をっ ける5冫 。 この 区 別 は,
エ アハ ル トが1954
年にパ リで開かれた国 際 会 議で の 演 説で 用い た もの で ある% エ ア ハ ル トは 「欧 州 石 炭 鉄 鋼 共Hokuriku University
NII-Electronic Library Service Hokurlku Unlverslty
4
鉢 野 正 樹 同 体 」を 例 に し て ,
各 国 か ら
独
立 し た「最
高 機
関 」(
Haute
Autorit
6
) を 制 度 として 設 立 して,
こ こか らの上 意 下 達 方 式で 統 合 をはか る の は誤 りだ と主 張 した。 エ アハ ル トの意 見で は,各
国が協
調 するの は, 企業
が自由
に取引
で き る国際市場
の環境 (
国際
秩 序 )の形 成に と ど め, あ とは企 業の 自 由 行 動に ま か せ るのが よいという
ことであっ た。 こ の 立場
を, エ アハ ル ト は 「機能的統合
」と名
づ け た。鉄鋼
の よ うな設
備投資
に密接
に か か わ る産 業で は,
企 業の 投 資 決 定が国 際 市 場の 価 格に依
存 するの か, そ れ とも 「最高機
関 」の 計 画に依存
するの か は,
経 済 効 率を決
め る上で重 要で ある。エ アハ ル トと
同時代
の レ プケも, 『オル ドー
』10
号 (
1958
年)
の中
で 「欧州経済
共同体 (
EEC
)
」 を 「欧 州 経 済 協 力 機 構 (OEEC
)」と比 較 して,
以下
の よ うに論 じ た。rEEC
が,内
に向
かっ ての統合
の プ ラス を,外
に向
か っ ての統合
の マ イ ナス に よっ て しか 買い取 れな かっ た とい う,
統 合の閉ざ さ れ た形態
の ま さに典
型と な っ た とい うこ と,
これに対
してOEEC
の例が教え ている よ う に,
統 合の開 か れた形 態 は,
橋 渡 しを し,
結 び 付 け を し,
門 戸を どこ に向か っ て も閉ざ して いない こと が, こ の研 究の主題であ る」 V) この批 判の姿 勢は,
「欧 州 連 合 条 約 」 後の ヨー
ロ ッパ の統 合 を 論 じた 『オル ドー
』44
号 (199
3
年 )の ワル ター ・
ハ ム の論 文に も う けっ が れて い る。 ハ ム は,EC
の行政機
関で あ るEC
委
員 会に 占め る計 画 経 済へ の偏り を批 判して,
以下
の よ うに論 じ た。 「ヨー
ロ ッ パ へ の フ ラ ン ス の 計 画 主 義の 推 進と方 法に関して は,
すで にEEC
の は じめか ら激 しく厳しい論 争が あっ た。 フ ラン ス の計
画 主義
の意 図は,
エ アハ ル トの 反対
によっ て成功
し な か っ た。 しか し,
『産 業 政 策』, 『研 究 と技 術 進 歩 』,
『社
会 政 策』 などの標 語 によ っ て ヨー
ロ ッ パ連
合条約
には計
画主義
の 意図
が くみ こま れてい る」8) 「オル ドー
学 派 」は,
決 して ヨー
ロ ッパ の統 合そ の もの に反 対して い る の で は ない。 た だ, そ こ に い た る方法
に 異論
を唱えてい るの で ある。 こ の学派
の批判
の 理由を解
明して ゆ け ば,E
EC − EC − EU
へ い たる ヨー
ロ ッ パ の統合
へ の認識
を深め, 日米
の経済摩 擦
の 理解
に も役
立 ち,
ア ジァ の統 合にも有 益な知 見が えられる こ と を期 待 して 以 下の論 述をす すめ ることにする。 二「
オル ドー学 派」
の国 際 経 済
へ の スタ
ン ス(
一
)
自由貿
易 の 歴史 国 家が国 際 経 済にどの ように対 応 する か につ い て は, 保 護 貿 易と自由 貿 易の 二 っ の 立 場が あ る。 「オル ドー
学派
」は,自由貿易
の立場
に立つ 。 それは,戦後
西 ド イ ツ の経済政 策
の基本 方
針
を定
め たエ アハ ル トの貿易政策
が関税
の 廃 止通
貨
の自
由交換
(3
)多
国 主義
か ら 成っ て い た ことに よっ て も明かである9)。 こ の立 場は,
第二次 大 戦が1920
年一
30
年 代の保 護 貿易
の失敗
に よ る という反省
に基づ い て い る。 戦 後の, 特に1960
年 代の世 界の経 済 発 展は, 自 由 貿 易の結 果である とい う 認 識 は広 く支 持 さ れてい る。 しか し,自
由貿易
は, 理論
と して もす ぐれ,実践
で も成功
の歴史
を もっ にも か か わ らず,時
と して保
護貿易
によっ て くっ が え さ れ, あ るい はま きか え さ れつ づ けてい る。1970
年
代に は,
発 展 途 上 国の国 益 保 護の要 請か ら,
また,1980
年 代 後 半に は先 進工業 国の間で も特に ア メ リカの国際収支
の 不均衡
か ら保護貿易
へ の 旋 回が生じてい る。28
N工 工一
Eleotronlo Llbrary国 際 経 済の秩 序とオ ル ド
ー
学 派5
エ ル ン ス ト・
ボ イ ス の 『オル ドー
」11
号 (1959
年 ) 掲 載の論 文は,
ヨー
ロ ッ パ で 自 由 貿 易が 盛んで あっ た19
世紀半
ば を, む し ろ特殊
な時代
で あっ た と位置
づ けてい る 】°) 。 ホイ ス は,
19
世
紀 半ばは中 世に形 成 され た制 度 的 束 縛を最 終 的に一
掃 し た時 代で あっ た とい う1% こ の 結 果,
人 間の活 動は多
方面
に わ たっ て解 放さ れ た が,
自 由 貿 易 も,
こ の よ う な中世
の制度
か らの 解 放 の一
環と して位 置づ け られ るべ きであるとい う「2〕 。 ホイス の見 解を,
以 下で紹 介 して おこう。「
19
世紀
とい う時
代は,
ヨー
ロ ッ パ 封 建時代
の終
りで あり,
個 人の解 放 と貿 易
の自
由の 時 代 で あ っ た。19
世 紀の半ば には, ヨー
ロ ッ パ で中 世の最 後の遺制が とりの ぞ か れ た。 ド ナ ウ王 国 で の農民
解 放や ッ ン フ ト組 織の廃 止が思い出さ れ る。営
業の 自由が,
経 済 活 動の一
般
原 則とな った。 この ような
19
世 紀 半ばの 展 開は, 非 制 度 化の 過 程 (einProze
βder
Entinstitutionalisierung
)と呼ぶ に ふ さ わ し い。 こ れは個 人が
何
世 紀に もわ た る束 縛か ら解 放されて, 自
己固有
の経済
的 展開
の ため に自
由 をかちとっ た時代
で あっ た。 こ れ は, 人類
の歴史
において未曽有
の ことであっ た」13)ホイス が人
類史
上,未曽有
と表
現 し た自
由貿易
の 時 代 は.
し か し長く続か な か っ た。 こ の点
につ い て もホ イ ス の見 解を紹 介 しよ う。「
19
世紀
の半 ばに は,自
由貿易
が国際的
レ ベ ル で生 産要素
の最
適 配分
を もた らすとい う命
題 は完 全にあて は まっ た。 生 産 要 素の 利 用が人 為に よ っ て歪め ら れず, 自然の 摂 理に よ っ て の み決
め られ た。 し か し,
今日か ら回顧
し て み る と,19世紀半
ばは,中世
的束縛
の世界
か ら現代 国
家
に よ る生 活の制度化
に転
じ る までの単
な る移行 期間
に過 ぎ な か っ た。中世
の束縛
に代
わっ て, 国 家の束 縛 (国 家 干 渉 )が は じ まっ た か らで ある」14) ホ イス の見解
に し た が えば,自
由貿易
が国際経済
の秩序
と して実践
さ れ た歴史
は保護 貿易
に 比べ るとき わめて短い。 保 護 貿 易は,
マー
カ ン テ ィ リ ズム の時 代に実 践 さ れ たの で 約三百 年(
1500
年頃
一
1800
年 頃)
の歴史
をもつ 。保護貿易
の理論
は,国家
を 豊か にするの は金 銀の蓄積
であ り, 金 銀の蓄 積は貿 易 差 額によっ て決 ま る と説 く。 貿 易 差 額を ふ やすた めの典 型 的な貿 易政策
は,高
い関税
で あっ た。 ス ミ スは, マー
カン テ ィ リズム の 保 護 貿 易を厳 しく批 判 し た 15) 。 ス ミス に よ れ ば, 貿 易 差 額 に よ る金 銀の蓄 積は国 家を豊か に せず,
物 価を高 くするだ けで ある。 金 銀の蓄 積は,貨
幣 供 給 をふや し利
子 を 下 げるの で生 産者
に とっ て有利
にな る と後
に指摘
さ れ ることには な る が,物
価 も高 くする。 物 価が高 くな れ ば,
輸 出がへ り輸 入が ふ え るの で,
再び貿 易 差 額はへ り,
金 銀の蓄積
も失われる。 こ の た め,貿易
差額
はス ミス に よれ ば国家
を 豊 かにするの で な く,高
い物価
によ っ て消費者
の生活
を貧
しくする だけであ る。 さ らに, 貿 易 差 額を ふやそ うと して関 税 を 高 くす れ ば,
得 を するのは外 国の生 産 者 との競 争 か ら守 られて独 占 的に国 内 市 場 を 支 配 する生 産 者だ けであ る。消費者
は,外
国か らの 供給
が高
い 関 税でせ き と め ら れ るの で, 高い価 格を まぬ がれない。ス ミ ス のマ
ー
カ ン テ ィ リ ズム の批判
を裏
返せば,自由貿易
の 理論
にな る。貿易
差額
をな くし て 貿 易 均 衡を実
践 すれ ば,
金 銀の蓄 積によ る物 価の騰 貴は起 こ らない。 物 価が安 定 す れ ば,
消 費 者の生 活は安 定 する。
高い関 税 を な くす れ ば,
外 国か らの供給
の 増 加に よっ て,消費者
に は 安い価 格が あ ぐ ま れ る。ス ミス の 自 由 貿 易の理 論は
,
以 上で わ か るよ うに生 産者
よ り は消費者
に とっ て受け入れ や す い理論であ る。 これ は反 面, 生 産 者にとっ て は受け入れ に くい理論で もある。 これ に反 して,
Hokuriku University
NII-Electronic Library Service Hokuriku University 6 鉢 野 正 樹
保
護貿易
の理論が,自
由貿易
の理論
につ きま と う生 産者
に不 利という欠点
を衝
い てい るこ と は 否 定で き な い。 た だ し, 生 産が消 費の た めに あり, 経 済 活 動の 目的は生 産でな く消 費にあ るこ とが明かで ある以上,
理論と して はス ミス の方がマー
カ ンティ リズム よりはすぐれて い る。 そ こ で,自
由貿易
を支
え る二本
の支柱
であ る金 本 位 制と比 較 生 産 費 説 を, 以下で概説
してみ よ う。(二 )
自 由
貿
易を 支え た金本
位 制 国 家が金 本 位 制を採 用 する と,
一
定量 の金は一
定 量の貨 幣と交 換さ れ る。 例え ば,
日本 とア メ リカ の 二 国 を 仮 定 す れ ば,
日本で は1
オ ン ス の金が100
円に,
ア メ リカ で は1
ドル に とい う よ うに交
換 さ れ る。 この場
合, 日本
とア メ リ カ との貨幣
の交換
比 率は同じ1
オ ン ス の金をベー
ス にする と,
購 買 力 平 価 説の い うよ うに1
ドル =100
円に な る 。 日本
とア メ リカで,
商 品やサー
ビス が貿易
さ れ る と き,購
入さ れ た商
品やサー
ビス の支払
い は , 金を輸 送 する よ り為 替の 発 送 によ る方
が便利
であ る。 為替
の需 要は, 相 手の商 品や サー
ビス へ の需 要と と もにふ え,
逆 に為 替の 供 給は商 品やサー
ビス の 供 給によ っ て ふ え る 。この た め,
例
え ば 日本
の方
が ア メ リ カ か ら より多 くの商 品やサー
ビ スを購
入 する と,
支 払い に必 要な ド ル為 替が供 給 を 需 要が上ま わ るの で値 上が りする。1
ド ル =100
円の ド ル為 替が,
例
え ば1
ドル=
120
円へ と値上 がりする 。 し か し, 金本位制
の下
で はこの よ う な為替
相 場 は持 続 しない。 な ぜ な ら,
日本の輸 入 業 者は120
円だ して1
ドル の ドル 為 替 を 買 っ て ア メ リカ の輸
出業者
に1
ドル の支払
いを するよ りは, 日本
の中央銀行
で100
円 をだ して1
オ ン ス の 金に換
え, これ をア メ リ カに輸送
す る方
が得
だ か らであ る。 ア メ リ カの輸 出業者
の方
で は,
日本か ら送ら れて きた1
オ ン ス の金 をア メ リカ の 中 央 銀 行に もっ て いけ ば1
ドル をえ られるから,1
ドル の ドル為替
を送ら れ るのと変
わ り が ない。 金の輸 送 費と して,
仮に1
オ ン ス10
円を要 し た と して も,
日本の 輸 入 業 者 は110
円で1
ド ル相
当の支払
いが で きるのであるから,120
円
だ して ドル為替
で支払
うよ りは得
で あ る。 この た め,外
国為
替に金の輸 送が代 替 さ れるの で,
ド ル と円との交 換 比 率は上 限で輸 送 費 を 入 れて も1
ドル =110
円ま でで,
120
円まで は上が ら ない 。以上の 関 係は, ア メ リ カの 方が 日本より商 品やサ
ー
ビス を より多 く購 入 する と き は 日本の 方 に輸 出の超 過が生 じて,
先の例とは逆に,
ドル為 替が1
ドル = ・100
円よ りは下 落 して, 例
え ば80
円に値
下が りする。 こ の場合
, 日本
の輸 出業者
はアメ リカから1
オン ス の金 を輸送
して も らっ た方
が,
1
ドル の ドル為替
を送っ て もらうよ り も,
ドル 為 替で は80
円な の に,
金で は100
円 を 受 け取 れるので得である。 輸 送 費 と して1
オ ン ス 当り10
円 支 払 っ て も,
金の輸
送で90
円 受け取
る方
が,1
ドル為替
で80
円 受 け 取る よ りは得で あ る。 こ のた め, ドル為 替の下 落 も下 限で は,
金の輸 送で 代 替されるので1
ドル=
90
円 以 下に は下が ら ない。こ の よ うに, 金
本位制
で は, 為 替 相 場は輸 送 費10
円を無 視 すれ ば1
ドル=
100
円の固 定 相 場 が実
現 する。 以 上の こと か ら わ か る よ うに,
金 本 位 制は為 替 相場
を 安 定させ るには極
め て有
効 な制 度で ある。
それ だけで なく,
上 記の 例で も明か な よ うに,
金の輸
送は商品
とサー
ビ ス の輸
入超
過 の国か ら輸 出超
過の国へ と移 動 する。一
般に,
商 品と貨 幣が逆 方 向に移 動 す るよ うに,
金 も輸 入 超 過の国か ら輸 出 超 過の国へ と商 品やサー
ビス とは逆 方 向に移 動 する。
こ の ため,輸
出超
過 の 国で は金の増加
に と も な う貨幣発
行 (マ ネー
サプライ)の増 加によ っ て物 価が高 くな り,
逆に輸 入 超 過の国では物 価が低 くな る。 こ の結 果,
商 品とサー
ビ ス の方 向は,
金の移 動の30
N工 工一
Eleotronio Library国 際 経 済の秩 序と オル ド
ー
学 派7
効 果に よっ て輸 入 超 過の国か ら輸 出 超 過の国へ と逆 転 する。 これによっ て, 国 際 収 支の均 衡は自
動 的に回復
さ れ る。 金本位
制は為替
相場
の安
定に とっ て も, 国際収支
の均衡
の 回復
に とっ て も, 実に理想 的な国 際 経 済の 秩 序とい え る。(
三)
経済
段階
の似
か よっ た国家
間の貿
易の利益一
絶対
生 産費
説一
貿 易 国を イ ギ リス とス ペ イ ン の二国と し,
貿 易 品を小 麦 と ブ ドー
酒の 二 品 目と仮 定 す る16) 。 イギ リス の小麦
は国
内の ブ ドー
酒
に対して も, ス ペ イ ン の小麦
に対
して もいずれに対
して も優
位 という意 味で, 絶 対 優 位と仮 定 する。 ブ ドー
酒につ い て は, ス ペ イ ンのブ ドー
酒が ス ペ イ ン国
内の小麦
に対
して だけで な く イギリス の ブドー
酒
に対
して も優位
とい う意味
で,絶対優位
で あると仮 定 する。両国
の 間で貿易
が な い間
は, イギ リス が小麦
を労働 1
人当
り2
単位
, ブ ドー
酒
を1 人当
り1
単位
それ ぞ れ生 産 する と仮定
し よ う。小麦
とブドー
酒の1
単位
は同
じ価値
を もっ と仮定
す れ ば,
イギ リスで は労 働の生 産 性が,
小 麦が ブ ドー
酒の2
倍と な る。 生 産 費 は生 産 性の逆 数で あるか ら,小麦
は ブ ドー
酒
の 生産費
の音
と な る。生産性
と生産費
の い ずれ を と っ て も, イ ギ リス で は小 麦は ブ ドー
酒に対 して比 較 優 位で ある。 同 じ よ うに,
ス ペイ ン で は ブドー
酒が労 働1
人 当 り2
単位
,小麦
は1
単
位を生 産す る と仮定
し よ う。 そ うする と,
ス ペ イ ンでは イ ギ リスと は逆 に, ブ ドー
酒が小 麦の生 産 性の2
倍と な り生 産 費が者
と な る。もし
両国
で貿易
が ない と,小麦
につ い ては イギリス とス ペ イ ン両国
あ わ せ る と労働
2
人
にっ い て3
単 位, ブ ドー
酒にっ い て も労 働2
人につ い て3
単位
が生 産される。 も し,
イ ギ リス で,
小麦
が国
内の ブ ドー
酒よ り,
ス ペ イ ン の小 麦よ り絶 対 優 位で ある ので,
ブ ドー
酒の生 産 をゼロ に して1
人
の労 働を小麦
へ と移動
さ せ れ ば , イ ギ リス の小麦
は2
単位
か ら4
単位
へ と倍増
す る。 同 じよ うに,
ス ペ インで も,
ブ ドー
酒が絶 対 優 位で あるので,
小 麦の 生 産 をゼ ロ に して ブ ドー
酒
の生産
へ労働
を移動
さ せ れば,
ブ ドー
酒
の 生産
は2
単位
か ら4
単位
へ と倍増す
る 。 こうすれ ば, 両 国 あ わせて3
単 位の小 麦は4
単 位 とな り,
3
単 位の ブ ドー
酒は4
単 位 とな る。 こ の上で,
両 国が貿 易 すれば,例
えば, イ ギ リスは生 産 し た4
単位
の小麦
の う ち2
.
5
単位
を残
して, ス ペ イ ンに1
.
5
単
位 輸 出 すれ ば よい。 そ うすれ ば,
イギ リス は貿 易な しの2
単 位よ り小 麦の消 費をO.
5
単 位,
ス ペ イ ン も1
単 位より小 麦の 消 費を0
,
5
単 位そ れぞ れふやすこ とに な る。同
じ よ うに,
ブ ドー
酒 もス ペ イ ンが生 産 し た4
単位
の うち2
.
5
単位
を残
して,
1
.
5
単位
を イギ リス に輸 出 す れば,
ス ペ イン は貿 易な しに比べ る と2
単 位 より0
,
5
単 位,
イギ リス で も1
単 位 よ り は消 費 をO
.
5
単 位そ れ ぞれふ やすこと になる。 も しこ の通 りに な れ ば,
イ ギ リスが小 麦を,
スペ イ ン はブ ドー
酒を分 担 して生 産 し,
両 国の間
で国際
分 業が成 立 する。 こ の結果,
小麦
で いえばイギリス の労働
の 生 産性
は,労働
が ブ ドー
酒か ら小 麦に移 動 することで, ブ ドー
酒の労 働の1
単 位か ら小 麦の労 働の2
単 位へ と増 加 する。 こ の ため,
生 産 要 素の適 正 配 分が実
現 する。 貿易
に よっ て小麦
, ブ ドー
酒
と も に合計
す る と,3
単位
か ら4 単
位へ と増 加 するの で, 貿 易によ っ て生 産 も増 加 し たことに なる。(四) 経 済 段 階の 異なる 国家 間の
貿
易の利益一
比 較生産費
説一
絶 対 生
産費
説は,
レ ベ ル の似か よ っ た国 家 間の貿 易の利 益 を 説 明 する。 これに対 して,
比較
生 産 費 説は,
条 件 設 定 を 拡 大 して国家
間に経済段 階
の格
差が あっ て も, そ れ ぞ れの国内
で比較Hokuriku University
NII-Electronic Library Service Hokurlku Unlverslty
8
鉢 野 正.
樹劣位
の 産業
か ら比較
優位
の産業
へ と生産資源
を移動
さ せ,
比較優位
の産業
で生 じ た余剰
生産
を 貿 易に よ っ て交 換 しあ う方が,
貿 易のない よ りは利 益が ある こ とを証 明 しよう とする。 そ こで,
先
の モ デル の数値
を比較
生産費説
に あ わせ て変更
し, 比較
生 産費説
の説
明を し よ う 1%
比 較 生 産 費 説で は, 国 家 間に経 済 格 差を設 けるの で, 小 麦と ブドー
酒の生 産につ い て,
いず れの生 産で も,例
えば経済段階
の高
いス ペ イ ン の方
が, イギリスよりは優
れて い ると仮定
し よ う。 例と して, イ ギ リス では小
麦が労 働1
人 当 り4
単 位,
ブ ドー
酒が労 働1
人 当 り2
単 位 生 産 さ れ ると仮定
し よう。 ス ペ イ ン で は,小麦
が労働 1 入 当
り6 単位
, ブ ドー
酒
は労
働1
人当
り8
単位
生 産さ れ る と仮定
し よ う。 こ の仮 定で は,
ス ペ イ ンは小 麦で も,
ブ ドー
酒で もイ ギ リス の生 産 性を上 回 っ て い る。 これ を, ス ペ イ ン は イギリス よ りも経済段階
で は ま さっ てい ると解釈
し よう。 比較
生 産費説
は, こ のよ うな場 合で も, 国 内の比較
優 位の生産
に生産
要 素を移動
さ せて比較優
位の生 産
を増 加 し, 余 剰 生 産 をた がいに輸 出,
輸 入 する方が有 利であると説 明 する。 例 え ば,
イギリス のブ ドー
酒 の生
産をゼロ に して, 労 働1
人
を小 麦に移 動さ せ れ ば, イ ギ リス の小麦
の 生 産は8
単 位と なる。 ス ペ イ ンの 方で も,
こ の理 論の意 味 を鮮 明にする ため に小 麦の生 産をゼ ロ に し な いで労働
を0
.
5
人 だけ移動
するこ とで数値
を変
え る と,小麦
は3
単位
, ブドー酒
は12
単 位
生 産 さ れ ること にな る。 生 産 要 素の移 動によ っ て,
両 国の小 麦と ブドー
酒の生 産に は,
以 下のような変 化 が 生 じ るD 貿 易のな い場 合には,
両 国あ わ せて小 麦は イ ギ リス4
単 位とスペ イン6
単 位で10
単 位,
ブ ドー
酒 もイ ギ リス2
単 位 とス ペ イ ン8
単 位で10
単 位で ある。 労 働 を 移 動させた結果
は,小麦
は イ ギ 1 丿ス8
単 位 とスペ イ ン3
単位
で合わ せて11
単
位と なり, ブ ドー
酒は イ ギ リス0
単 位とス ペ イ ン12
単 位で合わせ て12
単 位 とな る。 こ の結
果,
例えばイ ギ リス で は生 産された小麦
8
単 位中
3
.
5
単位
をス ペ イン に輸 出
し,4
.
5
単
位 残せ ば貿
易を し ない と きの4
単 位に比べ る とO
.
5
単 位だ け 小 麦をよ り多 く消 費で きる こ とにな る。 ス ペ イ ン も,6
単 位か ら6.5
単 位と0.
5
単 位だ け多
く消
費で きる。 ブ ドー
酒につ い て も,
ス ペ インで生 産された12
単位中
3
単位
をイギリス に輸 出
し9
単
位を残せ ば,
貿 易 し ない と きの8
単 位に比べ て1
単 位だけよ り多 く消 費で き る。 イ ギ リス で も, 2
単位
か ら3
単 位と1
単 位だ け多
く消 費で きる。比較
生 産 費説
の モデ ル で も, 貿 易さ えすれ ば イ ギ リスは小
麦に, スペ インは ブ ドー
酒にとい っ た国 際 分 業が成 立 する。 労 働の生 産 性 も,
イギ リス の ブ ドー
酒の労 働は小 麦に移 動 して2 単 位
か ら4
単 位へ と , ス ペ イ ン の小麦
の 労 働 もブ ドー
酒に移動
して6
単位
か ら8
単 位へ と増 加 する の で,
資 源は有 効に利 用され る こ とに な る。 貿 易に よ る生 産 効 果 も,
両 国あわ せ て小 麦10単位
か ら11単位
, ブ ドー
酒10
単位
から12
単位
と上 昇 してい るの で,経済
成 長へ の プ ラス の 効果
も 証 明さ れ る。 比 較 生 産 費 説は,
以上の ように貿 易の利 益を (1
)貿 易は,
消 費を増 加さ せ る。 し た がっ て ,国
民 所得
を 増 加させ る。 貿易
は, 生 産 を 増 加 さ せ る。 し た が っ て,経済成長
を 高 くす る。 (3
)貿 易は,
資 源の利 用を有 効にする。 し た が っ て,
資 源 配 分を適 正にする,
と 三 点に わ た っ て証 明 する。 (五) 自 由 貿 易は価 格 効 果 を 保 証 す る が 雇 用 効 果 を 保 証 しない自由貿易
は, 以 上の ように ス ミス の 理論
で も,金本位制
で も,比較生産費説
で も 理論
と して はす ぐれて い る。 た だ し,
理論と してす ぐれて い る自 由 貿 易 も,
そ の利 益を確 実にする た めの 32 N工 工一
Eleotronlo Llbrary国 際 経 済の秩 序とオ ル ド
ー
学 派9
条 件が常
に備え ら れ る か とい う とそ うで は な い。例え ば
,
固定相場制
は金
の移動
が あ れば自動的
に維持
さ れ るの で理 想 的な制度
で あ る が, 金 本 位 制 が 廃 止 さ れた今日で は自 由 貿 易の条 件と は ならない。 比 較 生 産 費 説にっ いて も,
国 家 間 の 資本
や労働
の移
動は前提
に して い ないの で,資本
と労働
の 移 動が 自 由 とな りっ っ あ る今日の 国 際 経 済におい て経 済 段 階に格 差のある国 家 間ではあて は ま らない。 ス ミス の理 論にっ い て も,
国家
間で輸
入 を双方と もに増 加さ せ る との合 意が な け れば 無 条 件で は成 立 し ない。 自 由 貿 易をス ミ ス の理 論で再 検 討 する と,』
確かに,
貿 易 差 額を な くして貿 易 均 衡へ と転 換さ せ れ ば,輸
入がふえ国 内の供給
が増 加 するので,価格
が下が っ て消 費 者へ の 価 格 効 果は保 証さ れる。 しか し,
こ の反 面 輸 入が ふ え ることで, 国 内の生 産 者によ る供給
が国 外か らの 生 産 者の供給
に よっ て 代 替 さ れ る の で , 輸 入が ふ え た商 品な り,
業 種な り,
産 業な りで は雇 用がへ ら さ れ る こ とにな る。 ス ミ ス は, こ の よ うに して生 じ る産業構
造の 変 動は,
国 内の他
の商品
な り,
業 種な り,
産 業な りの雇 用の増 加によっ て補正 さ れるとい う。 し か し,
こ の補正 がス ムー
ズ に さ れ る ために は,輸
入 増 加が, 必ず輸 出
増 加に よ っ て カ バー
されな くて は な ら ない 。 し か し,
輸 入の増 加が輸 出の増 加に よ っ て カバー
さ れるとい う保 証はない。国
内
の供給
が増 加 する ケー
ス と して は,
輸 入と よ く似
た効 果は,
独 占市場
が開
放さ れて競 争 市 場に移 行し た と きにあ ら わ れ る。 独 占 企 業の 供 給 制 限が解 除さ れ れ ば, 競 争 企 業によ る供 給 の増加
が見
込まれ る か らで あ る。 し か し,
こ の場合
に は,
供 給の増 加にと もな う生 産の増 加や 雇 用の増
加は,国外
では な く国
内におい て生じ る。 これに反 して,
輸 入が増
加 する場合
に は, 国 内で の 供 給の増 加で増 加 する の は,
国 外の生 産で あ り,
国 外の雇 用で ある。 こ の た め,
ス ミ ス の 自 由 貿易
の 理論
に し た が っ て貿易
差額
を 解消
して輸
入 を 増 加させ る と, 消費者
の ため の 価 格 効 果は保 証されるが,
生 産 者のた めの雇 用 効 果は保 証 さ れ ない。し た が っ て, ス ミス の
自由貿易
に は 「半 分 真理」(
Halbwahrheit
) とい うべ き欠点
が あ る。 自 由 貿 易が理 論 と してはす ぐれて い るの に, 実 践で は保 護 貿 易に し ば し ばくっ が え さ れ るの は こ の た あである。自
由貿
易が その 固 有の 欠 点を克 服 するに は, 二 っ の条 件が必 要であ る。一
っ は, 輸 入超
過の 国か ら輸 出超 過の国に資 本と労 働が移 動 する よ うな秩序
をっ くるこ とで ある。 二っ は,
輸 入の増
加が一
斉
に起 こ るよ う な秩序
をつ く るこ とであ る。貿 易
に参
加す るすべ て の国家
が輸 入 を一
斉に増 加さ せ れ ば,
輸 出の増 加 も同 時に起こることにな る。第
二次
大戦
後の世 界経済
の秩序
を検 討 して み ると,GATT
とIMF 体
制に は自
由貿
易 を輸
入 の一
斉拡大
によっ て再
建 する方向
が, ヨー
ロ ッ パ 共 同 体には自由貿
易を資本
と労 働の移動
によっ て維 持 しよ う とする方 向が見 受け られる。 ま ず,
自 由 貿 易 を 輸 入の一
斉 拡 大に よっ て再 建 しよ うと し たGATT
とIMF
体 制か ら検討
してみ よ う。 三戦 後
の国 際 経 済
へ のオ
ルドー 学派
の ス タン ス(
一
) 国 家 間の対 立 が 自 由 貿易を 崩 壊 させた一
戦争
の 反省輸 入を ど れ だ け ふ や して も
,
輸 入 代金 を支払
え る だけの輸 出がで き る な ら国 家にとっ て 輸 入 を制 限 する理 由は ない。 しか し,一
旦 国 家 間に対 立が生じ て し ま うと,
相 手 国 家に利 益 とな る 輸出
に門 戸を開く国家
は ない。 こ う して, 国家
が一
斉に輸 入を制 限 し は じ め る と, 輸出
の 門 戸Hokuriku University
NII-Electronic Library Service Hokurlku Unlverslty 10 鉢 野 正 樹 は
一
斉
に閉
ざ さ れ る。 しか し,輸出
の封鎖
が耐
え が たい と判
断さ れ る と き,第
1
次
大戦
(1914
−
18
)と第2
次 大 戦 (1939−
45
)との戦 間 期の よ うな ブロ ッ ク経 済が形 成される。 貿 易が した い相手国家
か らの輸
入に は特別
に低
い 関税
を認め,対
立 する国 家か らの 輸 入に は差 別的高
関 税に よっ て輸
入を阻 止 する。 これは, ブロ ッ ク経 済の 内 部だ けで貿 易の利 益を守
ろ う とするもの で あっ た。 しか し,
イギ リス を 中 心 と するポ ン ド地 域,
ア メ リカを 中 心 とする ドル地 域,
フ ラン ス を中
心と す るフ ラン 地域
な どの ブロ ッ ク経 済の形 成は, これ ら地域
と植
民 地を も た ない ドイ ツ,
イ タ リア,
日本な どの国 家 との対
立 を一
層 深め る だけで あっ た。オ イ ケ ン は,
戦
間 期に生
じ た世 界 経 済の こ の よ う な事
態を 「1930
年
代の失敗
」と名づ けて い る。 戦 後の国 際 経 済の再 建は,
オ イケ ンの い う 「1930
年 代の失 敗 」 を 反 省 することか ら出
発し た。 「1930
年
代の失 敗 」とい う オ イ ケ ン の認識
は, 広 く み ら れ る認識
で あ る。 た と え ば, 志 田 明は1930
年 代の国 際 経 済にっ い て, 以 下の ように述べ てい る。「
1930年代
の世界的
な大不
況に対処
して,多
くの国
ぐに には,輸入制
限や関税 障
壁の強化
あ るい は為替切
下げ な どの 近隣窮
乏化的
な政 策を採
用し た が,
それは他 国の報
復 的な貿 易制
限措
置 を 誘 発 し,
世 界 貿 易は縮 小 し,
世 界 経 済は崩 壊の危 機に瀕 した。 こ の ような苦い 経 験か ら第
2
次大戦後
生ま れ たのが,国際
通貨
基
金 (IMF
)ガ ッ トGATT
(関 税 と貿易
に関 する一
般 協 定 ) で ある」18)ヨ セ ブ
・
モ ル スバー
ガー
とア ンゲロ ス・
コ ティ オスも,1920
年代
と30
年代
の経験
が戦後
の西 ヨー
ロ ッ パ 諸 国で生 か され たこと を 『オル ドー
』 第41
巻 (1990
年 )で,
以 下の ように述べ て い る。「多 くの西 ヨ
ー
ロ ッ パ諸
国の エ リー
ト達は,
自 国の自
給 自足 体 制 と孤 立 主義
と を緊 密な政 治 的 経 済 的 協 力に よ っ て 克 服 しよう と した。 戦 間 期 中の世 界 経 済の自
給自
足 体 制, 自国
の 全体
主義 的国家体制
,戦争経済
に よ る否定的経験
が自由
な体制
の広
まりに役立
っ た」 19) 「1930
年 代の失 敗 」の原 因は,19
世 紀の終 りか らは じまっ てい た イギ リス を とり ま く,
フ ラ ン ス, ド イッ,
ア メ リ カ な ど に よ る植
民 地を め ぐ る国家
間の対
立にあ っ た。 イ ギ リス は18
世 紀 の半ばに は じまる産 業 革 命に よ り, 19
世 紀の半ばまで は他 国 を 引 き 離 してい た が,19
世 紀の半 ばに は, フ ラン スや ドイッやア メ リ カの 工業水準
も イ ギ リス に近
づ い た。 この結
果, 列 国の関 心はおた が い の貿 易で利 益 を あ げるよ り,
原 料と市 場と住 居 を 約 束 する植 民 地の獲 得へ と移っ て い っ た 。 こ う して生 じ た経済紛争
を,武力
で解決
しよ う と し たの が第
1
次
大戦
で あ っ た。 し か し, 問 題 は一
度
の戦争
で は解決
さ れ な か っ た。第
1
次大戦後
に も残
され た国家
間の対
立を抜 きに して は,
上 述の志 田 明や,
ヨ セ ブ ・ モ ル ス バー
ガー
や,
ア ンゲ ロ ス ・ コ テ ィ オ ス の い う 「近隣窮
乏化
」や 「自給 自足体制
」や 「孤
立主義
」な どの 国家
の行動
は説 明っ か な い 。 国 家 と 国 家 との対 立が,
各 国に保 護 貿 易の立 場 を と らせ たの で ある。国家
は貿易
によっ て,経済
関係
を深め れ ば深め る ほ ど, レ プ ケの い う 「市場
と価格
と支 払の 共 同 体 」 をっ くり出 すm) 。 国 内 経 済 として 日本を例にす れば,
北 は北 海 道か ら南 は沖 縄まで,
地域性
の強
い野菜
など を除
け ば テ レ ビ な どの商品
は どこ の市場
で も売
買さ れ, 同じ商
品は原 則 と して同一
価 格で売買
さ れ,支払
い も円とい う単一
の貨幣
で されて い る。 この ように,
国 内 経 済で は,
市 場 も,
価 格 も,
貨 幣 も一
っ で あっ て,
北 海 道 と沖 縄で は別々の テ レ ビが売られる別個
の市場
, 価格
も そ れ ぞ れ別個
の価 格,
支 払いも別個
の貨幣
とい うこと は ない。 こ のた め,
国 内 経 済は完 全に レ プケの い う 「市 場 と価 格 と支
払の共 同 体 」である。
同じよ うな 「市 場 と価 格34
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Eleotronlo Llbrary国際経 済の秩序と オル ド