Title
The Position of a Standard Optical Computer Mouse Affects
Cardiorespiratory Responses during the Operation of a Computer
under Time Constraints( 要約版(Digest) )
Author(s)
酒向, 俊治
Report No.(Doctoral
Degree)
博士(医学) 甲第959号
Issue Date
2014-09-10
Type
博士論文
Version
none
URL
http://hdl.handle.net/20.500.12099/50380
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Repository(Form4)学位論文要約
Extended Summary in Lieu of the Full Text of a Doctoral Thesis
甲第
959 号
氏 名:
Full Name 酒 向 俊 治 SHUNJI SAKO学位論文題目
:
時間制約下でのコンピューター作業におけるマウスポジションが呼吸循環応答に およぼす影響Thesis Title THE POSITION OF A STANDARD OPTICAL COMPUTER MOUSE AFFECTS CARDIORESPIRATORY RESPONSES DURING THE OPERATION OF A COMPUTER UNDER TIME CONSTRAINTS
学位論文要約:
Summary of Thesisコンピューター作業の増加は,労働者に眼精疲労,肩こり,上肢痛,腰痛,精神的ストレスなどコンピュ ーター関連障害(computer related disorders)(CRDs)を引き起こすとされており,特に,締め切り間際の 作業などストレス下での作業や作業スピードが要求される作業などでは,作業に伴う精神的ストレスの増加 や自律神経活動への影響が知られている。コンピューター作業の入力作業ツールにはキーボード,タッチパ ッドやマウスがあるが,軽作業とされるマウス作業においても CRDs の報告がある。しかし,多くはコンピュ ーター作業と筋骨格系障害との関連についての報告であり,これに対し,コンピューター作業時の呼吸循環 応答を解析したものは少なく,さらにマウスの操作位置の違いが生体に及ぼす生理応答に関する報告はみら れない。本研究は,コンピューター連続作業時におけるマウス操作位置の違いが生体に与える影響を,呼吸 循環応答を測定することによって,ストレスや疲労との関連性から検討したものである。 【対象と方法】 健常男性16名,平均年齢23.2±6.4歳,平均身長175.3±0.1㎝,平均体重69.6±5.7㎏ ,平均BMI22.7±2.5 ㎏/㎡を対象とした。ノート型パーソナルコンピューター及び光学式有線マウスを机上に置き,高さ移動調整 可能な机と椅子を使用し,机の高さを肘頭部の高さ,椅子の高さを膝関節90度となるよう調整した。マウス の操作位置は,肩関節の外転15度及び屈曲15度とする前腕部を机上に置くdistal position(DP)及びアーム レストを使用しないリスト部位のみを机上に置くproximal position(PP)の二通りを採用した。作業課題は, アルファベットの小文字‘a’から‘z’までを作業時間を通して書き続けることとした。作業は,開始の合 図以降,作業時間内で,できるだけ早く,丁寧に多くのアルファベットを書き続ける様,口頭による注意喚 起を繰り返し行った。作業時間は16分とした。呼気ガス及び心拍測定は,作業開始前60秒から始め,連続し て作業時間終了までの16分間測定した。呼気ガス測定項目は,分時換気量(VE),1回換気量(VT),呼吸数 (RR),酸素摂取量(V.O2),酸素摂取率(V.O2/VE),二酸化炭素排出率(V.CO2/VE),呼吸時間に対する吸気 時間(Ti/Ttotal),呼吸比(Te/Ti)とした。主観的疲労評価は,Visual analog scale(VAS)検査表を用 い,作業前半の8分間と後半8分間のそれぞれのステージ終了時に行った。作業能率は作業時間中に書かれた アルファベットの文字数で評価した。以上の測定及び評価は,DP及びPPのそれぞれのマウスの操作位置で行 った。統計学的検定は,各マウスの操作位置における各呼吸循環指標値の経時的変化には,反復測定1元配置 分散分析を,作業前半と後半におけるVAS値及び自律神経活動の比較には対応のあるt検定を,マウスの操作 位置の違いによる各呼吸指標値の経時的変化には反復測定2元配置分散分析を行った。有意水準は5%未満と した。本研究は,倫理審査委員会での承認を得た後,研究に先立ち参加者全員の文書による同意のもとに実 施された。
【結果】 各呼吸応答指標では,DP,PP の両操作位置において,作業開始後 1 分で V.O2, RR,VE及び Te/Ti(PP を除 く)で有意に上昇し,VT,V . CO2/VE,V . O2/VE,Ti/Ttotal で有意に減少を示した。 DP と PP の比較では,DP は PP での作業に比べ,V.O2,Ti/Ttotal,VE,及び RR で有意に低く,Te/Ti, VT, V.CO2/VE,V . O2/VEで有意に高い値を示した。VAS 値は各マウスの操作位置において,作業後半で有意に高値を 示したが,DP と PP の比較では有意差が認められなかった。心拍数は各マウスの操作位置において,作業の 後半で有意に増加したが,DP と PP の比較では有意差は認められなかった。自律神経活動を示す LF/HF 値は 各マウスの位置において,作業後半で有意に上昇し,DP と PP の比較では,DP は PP での作業に比べ低値の傾 向を示した。作業能率では,DP は PP での作業に比べ有意に高値を示した。 【考察】 本研究では,作業開始と同時に呼吸応答は変化し,吸気時間の短い,浅くて速い呼吸に変化したことが考 えられ,作業開始と同時に酸素摂取のための吸気流速を速めることによる呼吸様式の変化が示された。これ らの反応は,本研究で設定した二つのマウスの操作位置において同様に観察された。 マウスの操作位置比較では,DP での作業では PP に比べ,VT,V . O2/VE,V . CO2/VE,Te/Ti で有意な高値が,RR, VE,V . O2,Ti/Ttotal で有意な低値が認められた。呼吸数の増加,吸気時間及び酸素摂取量の減少はストレス のかかる作業でみられるものであり,よって,この呼吸様式の変化は,PP での作業が DP での作業に比べ, よりストレスをもたらす作業であったことを示唆するものといえる。 DP は PP での作業に比べ,LF/HF 値は作業後半で低い傾向を示したこと,また VAS 値で作業の後半で低値を 示し,作業量において有意に高かったことから,作業による精神的ストレスや疲労を考える上で,DP は PP に比べ,より良好なマウスの操作位置であることが示唆された。 【結論】 ストレス下でのコンピューター作業において,マウスの操作位置によって呼吸循環機能や作業がもたらす ストレスや疲労への影響が異なることが示された。DP の方が PP に比べて呼吸循環機能への影響が少ないこ と,精神的ストレス及び作業疲労が低いこと,作業能率が高いことから,PP より DP での作業の方が望まし いことが示唆された。コンピューター作業において,マウスの操作位置に留意することは作業環境の改善に つながると考える。