Title
Virological and Pathological Studies on Reactivation of Canine
Herpesvirus( 内容の要旨 )
Author(s)
奥田, 恭之
Report No.(Doctoral
Degree)
博士(獣医学) 甲第006号
Issue Date
1994-03-14
Type
博士論文
Version
publisher
URL
http://hdl.handle.net/20.500.12099/2060
※この資料の著作権は、各資料の著者・学協会・出版社等に帰属します。氏 名(本籍) 学 位 の 種 類 学 位 記 番 号 学 位授 与 年 月 日 学位授 与 の 要件 研 究科 及 び専 攻 研究指導を受けた大学 学 位 論 文 題 目 審 査 委 員 審 査 協 力 者 奥 田 恭 之 (東京都) 博士(獣医学) 獣医博甲第 6 号 平成6年3月14日 学位規則第4条第1項該当 連合獣医学研究科 獣医学専攻 岐阜大学 Virologicaland PathologicalStudies on
Reactivation of Canine Herpesvirus
主査 岐 阜 大 学 教 授 平 副査 帯広畜産大学 教 授 後 副査 岩 手 大 学 教 授 岡 副査 東京農工大学 教 授 甲 副査 岐 阜 大 学 教 授 上 橋 本 晃(北海道大学教授) 哉 仁 助 次 幹 克 幸 雄 雄 井 藤 田 野 田 論 文 の 内 容 の 要 旨 犬ヘルペスウイルス(Canine herpesvirus 以下CHVと略す)はヘルペスウイルス科のα-ヘルペス ウイルス亜科に分類されているが、属の分類はいまだ明らかではない′、、本ウイルスは、新生子犬では全身 性の出血と壊死を特徴とする致死的疾病を引き起こす。幼犬および成犬では軽度の呼唄器症状を示す非致 死的感染にとどまるが、し、わゆるkennelcoughの一因とも考えられている.、一方、妊娠犬では、胎児の 流産や死産を引き起こすことが最近明らかにされた.)CHVは、1965年Carmichaelらによって全身性の 出血と壊死を呈して死亡した新生子大の腎臓培養から最初に分離された(、以後本ウイルスは世界各国で分 離され、本感染症が広範に分布していることが知られるようになった、わが国■Pは、1978年橋本らが新 生子大の出血と壊死を特徴とする致死的感染症からCHVを分離し、わが国においても本感染症の存在が 知られるようになった′、. 著者は我々の研究室の一連の研究成果、1)cHVによると推定される再発性の死・流産、2)cHVに よる死・流産耐過大の腹痛変、3)妊娠犬における実篤美的垂直感染の成立などから、他のヘルペスウイル スと同様にウイルスの性質として潜伏感染しうることを推測してきた.、 今回、著者は潜伏感染状態からウイルスを再活性化させ、再排出経路や潜伏部位などを明らかにするた め、また、その再活性化が他のヘルペスウイルス同様に繰り返されるか否かを明らかにするため、以下の 実験を行った.、 1_ 自然感染の死・流産耐過成犬におけるウイルスの再排出 某ビークル犬繁殖コロニーにおいてCHV感染による死・流産が一時期に頻発する症例に遭遇した′〕こ れらの雌成犬は流産後何ら症状を示すことなく、実験開始前の6カ月間にわたり、ウイルスは分離されな かった。入手した7頭のうち、5頭に600mgのプレドニゾロンを5日間連続投与し、ウイルスの分離を 試みた(〕その結果、いずれの犬もCHVによると考えられる症状は示さなかったが、5頭中4頭において プレドニゾロン投与開始後5日から21日の間の数日間に鼻粘膜、口腔粘膜、眼粘膜および腱粘膜の分泌 物からウイルスが検出された「、、また、剖横材料の鼻粘膜および扁桃からも分離されたし,病理組織学的には
-76-ウイルスの排出部位と考えられる鼻粘膜および扁桃の単核細胞浸潤、また、延髄に軽微な囲管性細胞浸 潤、延髄カンヌキにグリア細胞による小結節が観察された()また、神経細胞の変性および脱落が三叉神経 節および腰仙神経節に観察されたことから、これらがウイルスの潜伏部位あるいは増殖部位の一つである と推察した(〕 2.実験感染させた成犬および幼犬におけるウイルスの反復排出 ビークル成犬5頭および雑種幼犬5頭を用い、実験的にCHVを接種し潜伏感染後、それぞれ3頭にプ レドニゾロンを連続投与しウイルスの再排出を試みた()さらに、この再排出が繰り返し起こりうるか否か を確認するため、ウイルスの再排出停止から1カ月あるいは3カ月後、潜伏感染状態にあると考えられる犬 に再びプレドニゾロンを連続投与し、ウイルスの反復排出の模索を行った′)その結果、初回および2回目 のプレドニゾロン処理後に、3頭中2あるいは3頭にウイルスの排出を認め、潜伏感染したウイルスは反 復して再活性化され、再排出することを明らかにした。意力価のウイルス排出はいずれも鼻粘膜から得ら れ、処理2回目のウイルスカ価は1回目の力価よりも低く、排出期間も短い傾向を示した.、 これまで、神経系への潜伏感染およびウイルスの再排出が起こるヘルペスウイルスとして、家畜の
Aujeszky's disease virus,infectious bovine rhinotracheitis virus,feJine herpesvirus,およぴequine rhinopneumonitis virusが、ヒトのherpes simplex virusやvarice"a and zoster virusなどが知られて
いるr,しかし、CHVでは、今まで感染発症後回復した動物からのウイルスの再活性化および再排出は知 られていなかった。今回、著者は初めて免疫抑制作用を持つプレドニゾロン投与によりウイルスを再排出 させ、潜伏感染の状態を明らかにした。組織学的観察から増殖部位は扁桃あるいは鼻粘膜、潜伏部位は三 叉あるいは腰仙神経節であることが考えられた′)また、潜伏感染におけるウイルスの再活性化は成大のみ ならず幼若犬においても同様に成立すること、また、その再活性化は反復繰り返されることも明らかにし た∫、 成大のCHV感染症は、多くの場合軽度の呼唄器症状あるいは無症状に終わるが、新生子犬あるいは妊 娠犬が感染した場合には新生子大の死亡や胎児の死・流産を起こすため、愛玩犬ブリーダーや実験用犬繁 殖コロニーにおける経満的な損失は甚大になる、今回の生体レベルの研究成績は、本疾病の予防、治療お よび制御に役立つとともに、将来の分子レベルでの潜伏感染機序の解明のための基礎データとして極めて 重要であると考えられる′、. 審 査 結 果 の 要 犬ヘルペスウイルス(Canineherpesvirus 以下CHVと略す)はヘルペスウイル ス科のα-ヘルペスウイルス亜科に分類されているが、属の分類はいまだ明らかではな い。本ウイルスは、新生子犬では全身性の出血と壊死を特徴とする致死的疾病を引き起 こす。幼犬および成犬では軽度の呼吸器症状を示す非致死的感染にとどまるが、いわゆ るkennelcoughの一因とも考えられている。一方、妊娠犬では、胎児の流産や死産を 引き起こすことが最近明らかにされた。CHVは、1965年Carmichaelらによって全身性 の出血と壊死を呈して死亡した新生子大の腎臓培養からに最哀別こ分離された。以後本ウ イルスは世界各国で分離され、本感染症が広範に分布していることが知られるように なった。わが国では、1978年橋本らが新生子犬の出血と壊死を特徴とする致死的感染 症からCHVを分離し、わが国においても本感染症の存在が知られるようになった。 岐阜大学家畜微生物学講座および家畜病院における一連の研究成果、1)CHVによる と推定される再発性の死・流産、2)CHVによる死・流産耐過犬の腺病変、3)妊娠犬 における実験的垂直感染の成立などから、他のヘルペスウイルスと同様にウイルスの性 質として潜伏感染しうることを推測してきた。 本研究では潜伏感染状態からウイルスを再活性化させ、再排出経路や潜伏部位などを 明らかにするため、また、その再活性化が繰り返されるか否かを明らかにするため、以 下の実験を行った。 1.自然感染の死・流産耐過成犬におけるウイルスの再排出 一一77
某ピーグル犬繁殖コロニーにおいてCHV感染による死・流産が一時期に頻発する症例 に遭遇した。これらの雌成犬は流産後何ら症状を示すことなく、実験開始前の6カ月間 にわたり、ウイルスは分離されなかった。入手した7頭のうち、5頭に600mgのプレド ニゾロンを5日間連続投与し、ウイルスの分離を試みた。その結果、いずれの犬もCHV によると考えられる症状は示さなかったが、5頭中4頭においてプレドニソロン投与開 始後5日から21日の間の数日間に鼻粘膜、口腔粘膜、眼粘膜および腫粘膜の分泌物か らウイルスが検出された。また、剖検材料の鼻粘膜および扁桃からも分離された。病理 組織学的にはウイルスの排出部位と考えられる鼻粘膜および扁桃の単核細胞浸潤、ま た、延髄に軽微な囲管性細胞浸潤、延髄カンヌキにグリア細胞による小結節が観察され た。また、神経細胞の変性および脱落が三叉神経節および腰仙神経節に観察されたこと から、これらがウイルスの潜伏部位あるいは増殖部位の一つであると推察した。 2.実験感染させた成犬および幼犬におけるウイルスの反復排出 ピーグル成犬5頭および雑種幼犬5頭を用い、実験的にCHVを接種し潜伏感染後、そ れぞれ3頭にプレドニゾロンを連続投与しウイルスの再排出を試みた。さらに、この再 排出が繰り返し起こりうるか否かを確認するため、ウイルスの再排出停止から1力月あ るいは3力月後、潜伏感染状態にあると考えられる犬に再びプレドニソロンを連続投与 し、ウイルスの反復排出の検索を行った。その結果、初回およぴ2回目のプレドニソロ ン処理後に、3頭中2あるいは3頭にウイルスの排出を認め、潜伏感染したウイルスは 反復して再活性化され、再排出することを明らかにした。高力価のウイルス排出はいす れも鼻粘膜から得られ、処理2回目のウイルスカ価は1回目の力価よりも低く、排出期 間も短い傾向を示した。 これまで、神経系への潜伏感染およびウイルスの再排出が起こるヘルペスウイルスと して、家畜のAujeszky-sdiseasevirus,infectiousbovinerhinotracheitisvirus,feJine herpesvirus,およぴequinerhinopneumonitisvjrusが、ヒトのherpessimp[exvirusや VariceJIaandzostervirusなどが知られている。しかし、CHVでは、感染発症後回復し た動物からのウイルスの再活性化および再排出は知られていなかった。本研究は初めて 免疫抑制作用を持つプレドニソロン投与によりウイルスを再排出させ、潜伏感染の状態 を明らかにした。組織学的観察から増殖部位は扁桃あるいは鼻粘膜、潜伏部位は三叉あ るいは腰仙神経節であることが考えられた。また、潜伏感染におけるウイルスの再活性 化は成犬のみならす幼若犬においても同様に成立すること、また、その再活性化は反復 繰り返されることも明らかにした。 本研究による生体レベルでの成績は、本疾病の予防、治療および制御に役立つととも に、将来の分子レベルでの潜伏感染機序の解明のための基礎データとして極めて重要で あると考えられる。 平成6年1月25日における発表会および提出論文、ならびに基礎となる学術論文 (2編)および既発表論文(6編)を5人の学位論文審査委員が慎重審議した結果、岐 阜大学連合獣医学研究科の学位論文としてふさわしいことを認めた。 -78【