Title
狂犬病ウイルスM遺伝子が関与する病原性発現機序の解明(
内容の要旨(Summary) )
Author(s)
三田, 哲朗
Report No.(Doctoral
Degree)
博士(獣医学) 甲第279号
Issue Date
2009-03-13
Type
博士論文
Version
URL
http://hdl.handle.net/20.500.12099/33591
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氏 名(本籍) 学 位 の 種 類 学
位
記 番 号学位授与年月
日 学位授与の要件 研究科及び専攻研究指導を受けた大学
学 位 論 文 題 目審
査 委 貞 (21) 三 田 哲 朗(兵庫県) 博士(獣医)獣医博甲第279号
平成21年3月13日学位規則第3条第1項該当
連合獣医学研究科 獣医学専攻岐阜大学
狂犬病ウイルスM遺伝子が関与する病原性発現機序の解明
主査岐阜大学
教
授 杉 山 誠 副査帯広畜産大学
教 授 鈴 木 宏 志 副査 岩手大学 教 授 品 川 邦 汎 副査東京農工大学
教 授 本多
英 一 副査岐阜大学
教
授 福 士 秀 人 論 文 の 内容
の要
旨狂犬病は致死的な神経症状を起こすウイルス性人獣共通感染症である。治療法は未だに確
立されておらず,発症した人や動物は100%死亡する。一方,本症はワクチンでの予防が可能であるが,経済的理由から流行地帯である発展途上国での普及が困難な状況である。従っ
て,本症の制御のために,治療法並びに安価なワクチンの開発が世界的に望まれている。し かし,治療法を確立するために必要な狂犬病ウイルスの病原性発現機構については未だ不明な点が多く残されている。また,安価なワクチンを開発するためには,本ウイルスの病原性
発現,特に弱毒化機構の解明が重要な情報となる。以上を背景に,申請者は,狂犬病の制御 を念頭に本ウイルスの病原性発現機構について研究を行った。 狂犬病の原因病原体である狂犬病ウイルスは,狂犬病ウイルス固定毒の西ヶ原株は,脳内 接種によりマウスに致死的感染を引き起こす強毒株である。一方,西ヶ原株を鶏胚線維芽細 胞で100代継代することにより確立されたNi-CE株は弱毒で,マウスに非致死的感染を引き 起こす。これまでにNi-CE株のゲノムに西ヶ原株由来のN,P,M,GあるいはL遺伝子を挿入し たキメラウイルスの解析から,西ヶ原株のN,Pあるいは粧遺伝子を持つキメラウイルスが強 毒となることを示されている。そこで本研究では,これらのウイルス病原因子のうち,M遺 伝子が関与する病原性発現機序の解明を試みている。 第一章では,西ヶ原株とNi-CE株の病原性の違いに関与するM蛋白質上のアミノ酸の同定 を試みた。両株のM蛋白質間には,2つのアミノ酸変異が存在している。すなわち,西ヶ原 株はM蛋白質の29位にアスパラギン酸(D),95位にバリン(Ⅴ)を保有するのに対し,Ni-CE 株のそれぞれのアミノ酸はグルタミン酸(E)及びアラニン(A)に変異している。そこで,-183-N卜CE株のゲノムに西ヶ原株のM蛋白質29位あるいは95位のアミノ酸を保有する変異株[そ れぞれCE(M;29D)及びCE(M;95V)]を作出し,マウスへの脳内接種によってこれらの株の病原 性を検討した。その結果,CE(M;95V)の感染は致死的であったのに対して,CE(M;29D)の感染 は非致死的であった。以上より,M蛋白質95位のアミノ酸は狂犬病ウイルスの病原性決定因 子であることを明らかにした。 第二章では,ウイルスの病原性に関連する粧遺伝子が両株のCPE誘導の違いにも関連する
かどうかを検討した。まず,西ヶ原株のゲノムにNi-CE株のN,P,M,GあるいはL遺伝子を挿
入したキメラウイルスと,同様にNi-CE株に西ヶ原株の各遺伝子を挿入したキメラウイルス
をマウス神経芽細胞腫由来のNA細胞に接種し,各ウイルスのCPE誘導能を確認した。その結 果,CPEを起こさない西ヶ原株のゲノムにNi-CE株由来のM遺伝子を挿入したキメラウイル スはCPEを誘導した。一方,CPEを起こすNi-CE株のゲノムに西ヶ原株由来のM遺伝子を挿 入したキメラウイルスはCPEを誘導しなかった。以上より,両株のCPE誘導能の違いにM遺 伝子が関連することが明らかとなった。さらに,CPE誘導の違いに関与するM蛋白質上のア ミノ酸の同定を試みた。西ヶ原株のゲノムにNトCE株のM蛋白質29位あるいは95位のアミノ酸を保有する変異株[それぞれNi(M;29E)及びNi(M;95A)]を作出し,第一章で作出した変
異株CE(M;29D)及びCE(M:95V)と共に,各棟のCPE誘導能を調べた。その結果,西ヶ原株とは 対照的に,Ni(M;95A)はCPEを誘導することが示された。また,Ni-CE株とは対照的に, CE(M;95V)はCPEを誘導しなかった。以上の結果より,M蛋白質95位のアミノ酸は西ヶ原株 とNi-CE株の病原性の違いだけでなくCPE誘導,すなわち細胞病原性の違いにも関与するこ とを明らかにした。 第三章では,西ヶ原株及びNi-CE株のCPE誘導能の違いにアポトーシスが関与するかを調 べた。西ヶ原株及びNi-CE株をそれぞれ感染させたNA細胞を用いてTUNEL染色を行い,アポ トーシス細胞の割合を比較した。Ni-CE株感染細胞におけるアポトーシス細胞の割合(18.1%) は,西ヶ原株感染細胞(9.2%)より有意に高かった(Pく0.01)。この結果から,両株のCPE誘 導能の違いにアポトーシスが関与していることが明らかとなった。また,M蛋白質95位のア ミノ酸がウイルスのアポトーシス誘導能に及ぼす影響についても検討した。すなわち,第二 章で作出された変異株のアポトーシス誘導能をそれぞれの親株と比較した。Ni(M;95A)感染細 胞におけるアポトーシス細胞の割合(15.8%)は,西ヶ原株感染細胞(9.2%)より有意に高か った(Pく0.01)。また,CE(M;95V)感染細胞におけるアポトーシス細胞の割合(11.9%)はN卜CE株感染細胞(18・1%)より有意に低かった(Pく0.01)。次に,Ni-CE株あるいは強毒復帰した
CE(M;95V)を感染させたマウスの脳切片を用いてTUNEL染色を行い,各棟感染脳におけるアポ トーシスの程度を比較した。その結見Ni-CE株感染マウスの脳におけるアポトーシス細胞数は,CE(N;95V)感染マウスより多いことが示された。これらの結果から,Ni-CE株M蛋白質
95位のアミノ酸がウイルスのアポトーシス誘導能に関連していることを明らかにした。 以上の成績から,狂犬病ウイルスM蛋白質95位のアミノ酸は,病原性及びアポトーシス誘 導能を決定していることが明らかとなった。また,ウイルスのアポトーシス誘導能と病原性 は負の関係にあることが確認された。これらの知見は,本症の治療法や新しい狂犬病ワクチ ンの開発に有用な情報となると考えられる。一184-審
査 結 果 の要
旨 本研究では,狂犬病ウイルス固定毒株の病原因子のうちM遺伝子が関与する病原性発現機 序について解析し,ウイルス側の決定因子が同定され,さらに決定因子とウイルスのアポト ーシス誘導能及び病原性との関連性が示された。 第一章では,マウスへの脳内接種によって致死性を示す西ヶ原株と示さないNi-CE株の病原性の違いに関与するM蛋白質上のアミノ酸の同定を試みた。両ウイルスのM蛋白質上で違
いがみられる29位あるいは95位のアミノ酸に変異を加えた株をマウスに脳内接種し,変異 株の敦死感染性を調べた。その結果,Ni-CE株のM蛋白質95位のアミノ酸Alaを西ヶ原株の アミノ酸Valに置き換えたCE(軋95V)株は,マウスに致死的感染を起こした。このことより, M蛋白質95位のアミノ酸は狂犬病ウイルスの病原性決定因子であることを明らかにした。 第二章では,M遺伝子が両株のCPE誘導の違いに関連するかどうかをマウス神経芽細胞腫 由来NA細胞により検討した。CPEを起こさない西ヶ原株M蛋白質の95位にCPEを起こすNi-CE 株のアミノ酸Alaに置き換えたNi(M;95A)株はCPEを誘導し,逆にCE(M;95V)株はCPEを誘 導しなかった。このことより,M蛋白質95位のアミノ酸が南棟のCPE誘導,すなわち細胞病 原性の違いに関与することを明らかにした。 第三章では,西ヶ原株及びN卜CE株のCPE誘導能の違いにアポトーシスが関与するかを TUNEL染色により調べた。Ni-CE株感染NA細胞では,アポトーシス細胞の割合が西ヶ原株感 染細胞より有意に高かった。さらに,Ni(M;95A)感染におけるアポトーシス細胞の割合は,西 ヶ原株感染細胞における割合より有意に高く,CE(M;95V)感染細胞における割合はNi-CE株感 染細胞より有意に低かった。また,Ni-CE株あるいはCE(N;95V)株を感染させたマウスの脳で は,Ni-CE株感染マウス脳内のアポトーシス細胞数がCE(M;95V)感染マウスより多いことが示 された。以上より,N卜CE株M蛋白質95位のアミノ酸がアポトーシス誘導能に関連している ことを明らかにした。 以上の成績より,狂犬病ウイルスM蛋白質95位のアミノ酸は,病原性及びアポトーシス誘 導能を決定していることが明らかとなった。また,ウイルスのアポトーシス誘導能と病原性 は負の関係にあることを確認した。これらの知見は,狂犬病弱毒生ワクチン及び本病の治療 法の開発に有用な情報となると考えられる。以上について,審査委員全員一致で本論文が岐阜大学大学院連合獣医学研究科の学位論文
として十分価値があると認めた。 学位論文の基礎となる学術論文1)題 目:Amino acid at position950f the matrix proteinis a cytopathic
detern)ina.nt of rabies viruS
著 者 名:Mita,T.,Shimizu,K.,Ito,N.,YaTnada,K.,Ito,Y・,Sugiyama,M・and Minamoto,N.
学術雑誌名:ViruS Research
巻・号・頁・発行年:137(1):33-39,2008