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私の原価計算の研究

著者

神馬 駿逸

雑誌名

経営論集

30

ページ

1-4

発行年

1988-03-14

URL

http://id.nii.ac.jp/1060/00006361/

Creative Commons : 表示 - 非営利 - 改変禁止 http://creativecommons.org/licenses/by-nc-nd/3.0/deed.ja

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目 1. 2. 3.

私 の 原 価 計 算 の 研 究

駿

次 原 価計 算との出会い 原価計算上 の問題点 結 び 1. 原価計算との出会い 私の原価計算との出会いは,昭和15年頃神戸商大在学中,林健二先生の原 価計算論 の講義 であった ように記憶している。その講義内容は,勿 らシュマ レソバッハ(E.Schmalenbach )の「原価 と操業度」(KostenundBescha-ftiung-grad )の説明に終始し ていたので, 原価計算は仕事量と原価の関係を 研究するものと考え ていた。 ところが,昭和17年川崎車両K.K. に入社し, 倉庫課勤務の辞令を貰い, そこで材料会計,材料保営業務に従事することになったが,これが原価計算 実務の始まりといってよい。そこでは,各種の材料費計算法,材料副費およ び材料の受払数量 の計算法等を理解し たが,それがその後の原価 計算研究の 下地になったことであ る。 さて,原価計算において重要なことは,その消費量を正確に把握するごと であるが,個数にてそ の受払数量を把握し うるものは問題 でないが,重量, 容量にて受払する場合,これをどのように正確に把握す るか,たとえば,鋼 材,木材等の受払数量 の測定はどのような方法によるか等原価計算文献では, ほとんど論述されていない。こ の受払数量の正確な把握は,原価計算の出発 点であるにかかわらず,これを無視し,勿ら材料消費価格の計算法 のみを論 述し ていることは,原価計算の狙いを見落しているといってよい であろ う。 その後,昭和21年頃会社 の原価計算業務に従事す ることになり,そこで実 際の原価計算に出会 うことになった。それは学校での講義とは全く異なり, 主として製品等の給付単位原価 の計算であった。学生時代 の原価計算の講義

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2 内容が担当先生 の研究テーマであ り,それを講義 されたので,原価計算を誤 解し ていたようである。学校のカリキ:z,ラみの講義内容は,一般的な原価計 算の解説にとどめ,専攻 の研究テ ーマは,別 途に行な うのが適切であろ う。 ところで,私は学校の先生になるために原価計算を研究したのではない。 会社 の原価計算実務についてい る以上,原価計算上の誤謬,誤解をなくし, よりベタ ーな原価計算法を導入し,原価計算上からの問題点を見出し,これ を解決し, もって経営能率の増進に役立たせ んがために多くの原価計算文献 を渉猟し,原価計算を研究してきた のであ る。 そこで,配慮したことは,極力工場 に入り,工場 におけ る製品の生産方法, 生産工程,作業内容等の理解につとめ るとともに,現場技術者 の教を うけ る よう心がけ,実状 に即す る原価計算を実施す ることであった。その結果,原 価計算の文献ではこれまでほとんど指摘されていない多くの間題点を見付け だし た。そ れを思いつくまま,いくつかの点を列挙し てみよう。 2. 原価計算上の問題点 ◇ ‥ 第1 は,直接作業時間(現場では直接工数 または人工とい う(1 人工は,し1 人1 日10労働時間))は誰がどのようにし て時間を把 握するかとい うことで あ る。 これについてわが国の原価計算文献 では,殆んど論述されていない。 この直接工数 には間接工数,アイドル・タイムが含まれがちになるので,正 確な直接工数 の把握が重要性をもっているが,それは,さらに製造間接費の 配賦基準に選択 され ることからして,そのあたえ る影 響は,極めて大であ 仏 これを無視することはできない。 ト 第2 は,部分品 と外注加工費め区別。外注加工費ぱ,通説としては親会社 (発注会社)が下請会社等に材料を支給して加工させ る場合 の支払加工 賃 代 をい うと解 されてい るが,材料支給 の有無は関係ない。それは,戦時中また ぱ戦後 の一時期 において重要物資統制令によ寺 下請会社等が重要資材の入手 困難な時 に親会社が重要資材を支給し たことにあ るが,外注加工費は,親会 社 が自社 の日程計画,コスト等の関係等からして自社 で製作せず,下請企業 等 にその製作を依頼し,それにたいす る購入代 の支払 を意味するもので,材 料支給の有無は無関係である。現実は,下請企業等が材料持ちで加工品を製 作し,納入す るのが通例である。つまり親会社で製作可能であるが,諸々の 状態を勘案し て下請企業等に発注するのであ る。そし てこの外注見積直接工

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数 を 完成品 見積直 接工数 か ら控 除し た ものが完 成品 社 内見積 直接 工数 であ る。 な お ,購 入 部分品 は自社 で製作不 可 能 か仕 様書 等 に よってそ の使 用を指 定さ れ てい る物品 で見 積直接工 数 の算定 に は含 ま れない 。 第3 は,造 船・ 車両 工業 で は,繁 忙期 に は本工 ,臨 時工 ,社 外工 の三 本立 て に なるが,そ れ ぞれ のチ ャージ率を 如 何 よ うに算定 す るか とい うこ とで あ るが,原価 計 算文 献 で一, 二 論述 さ れて い るが, 誤 解 され てい る ようであ る。 こ れ につい ては,何 れか の機会 に私 見を 披渥 す るこ とにし たいレ 第4 は, 各 部門 の作業内 容と 標準 原価 につ い てで あ る。 車両工 業 は総合機 械工 業 であ り, あ らゆる作業 を含 んでい る とい って よい。 ところ で,原価計 算文 献 では,た んに機 械工業 の原価 計算を 論 述す るにと ど ま り,各 部門 の作 業 内容 まで論及し た文献 は皆 無 であ る。 た とえば ,鉄工 部門を 例 にと ると, そ こ ではバ1 ) 用 途別治具,(2) … … 組 立 バ3 ) …… 蟻 装,(4) …… 歪取, ⑤ スポ ット作業 バ6 ) ユニオ ン・ メ ルト,(7) 鍍 鋲,(8) 穴 明,(9) 切断, 的 部品製 作等 の作業 が行な われ るし , また鋳 物 部門 で は,各工 程別 に極め て多 数 の作 業が 行 なわれてい る。(鋳 物 作業 につ い て は, 拙著 ,「鋳物 企業 の 原 価 計算」 で論述し てい る。) この よ うに各 部門 で は,種 々の作業 が行なわれ てい るが,そ の作 業内 容の理解 な くし て は, 原 価 標準 の設 定 は不 可 能であろ う。 また管理 原価 計算 の実施 にあた っ て は, 標 準 原価 計算 の採用 が 必要であ る。 標準原価 計算 は,市場 生 産タ イプ の企業 で は相当数採 用 され てい る よう であ るが,個別 生 産 タイプ の企業 で は, そ の採 用 は不可 能 視され てい る。し か し, 作業 内容を 理解すれ ば,そ れ に もとづ い て 作業別原 価 標準 カ ードを 作 成 し, これを 組合 せ ることに よって製 品 別 標準原 価を 算 定し, これを原価管 理 に利用す ること が可能 であ る。 た だし , こ の原 価 標準設 定 作業 は,車両工 業 で は一千 に もお よぶ作業 に分 解 され, そ の労費 を 要す る こと極 めて大であ るので, 標準原価 計 算採用 の メリ ット とそ の労費 とを 比較 評量 し てそ の採 否 を 決 定す るこ とにな るが,標 準原 価 計算制 度 を採 用す ると, さ らに原 価差 異 分 析 の業務 が追加 され るこ とを忘 れて は な らない 。し か るに原 価計 算基準 は, 標 準 原価計 算制度 のソ リ ッドの一 つ とし て「 事務 の簡 素化」 を あげ てい るが, これ は原価 標準 の設 定お よび原 価差 異 の分析 作業 を無 視し た皮 相的見 解とい って よく, 現実を 無 視し た もの であろ う。 さ らに, 原価 計算 基準 は標準原 価 の一 種 とし て予 定原 価 をあげ てい るが, こ の予定原 価 は, 相 当水増し された 甘い 原価 水 準 に設定 さ れ, 作業 原価 が明

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4 らかに され てい ない のが通例 であ る。 私 の体験 から す れ ば, あ る製品 ( 湘南 型 電 車) の見 積 直接 工数 (数社 の平 均) は,14,000H ∼15,000H であ っ た のにたいし て, 標準 原価 計算採用 の某社 のそ れ は,9,000H であ った こ とを 記憶し てい る。 これ か らし て,見 積直接工 数(予 定 直接 工数 と考 えて よい) は標 準 のそ れ に比 べ てほぼ30 %程 度水増 になっ てい る こ とで, 私 は, 常 々予 定直接工 数 は種 々の政 策 がと りいれ られ て約30 %程 度水 増 に なって い ること を主 張し て き た が, こ の予 定直接工 数, ひい て は予 定原 価 で は充 分 な原価 管 理 の成果 を期 待 す るこ と はできない であろ う。 けだ し ,そ れ は利益計 画 の達 成 可能水 準 に設 定 され がち であ るからであ る。 3. 結 び 以上,私の実際におけ る原価計算の体験から,思いつ くままに若干 の問題 点を指摘し てきたが,私の原価計算の研究は,まず工場にはい り,工場の実 態の理解につとめ,それに原価理論を適用す る方法をとってきた。しかるに わが国の原価計算文献 の多 ぐは,工場 の実態を理解せず,具体性に欠け,抽 象論,空想論の展開に終っているものが多い。原価計算は工場 の実相を反映 したものであってこそ経営に役立つ原価計算とな りうるのではないか思考し てい る。 これを要す るに,原価計算を専攻する人は,機を みて工場を見学す ること もよいが,それはその工場 の表面的理解をえ るにすぎず,その焦点を把握す ることはできない。それより工場に少なくと も数年間勤め,工場 の実態を理 解し,他方原価計算文献を熟読,玩味してその原価理論を摂取し,これを実 態に適用し ていく研究態度をとるべきであると思考する。それが私の原価計 算の研究態度である。参考になる点があれば幸である。

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