<論文>経営財務と経営学 : 経営財務の枠組とその
方向づけ
著者
小椋 康宏
著者別名
Ogura Yasuhiro
雑誌名
経営論集
巻
27
ページ
67-87
発行年
1986-03-31
URL
http://id.nii.ac.jp/1060/00005779/
Creative Commons : 表示 - 非営利 - 改変禁止 http://creativecommons.org/licenses/by-nc-nd/3.0/deed.ja経 営 財 務 と 経 営 学
一 経営財務の枠組とその方向づけ
小 椋 康 宏 67 1 問題 の所 在 わが 国に おけ る企業 体 は,経 営 の国 際化^)(internationalizationofmanage-merit,internationalizationofbusiness ) とと もに 新し い 変 革 の時 代に 入って きてい ると考 え ら れる。 と くに1980 年 代 も半ば を過 ぎ た現 在, 企業 経営 の変 革は以 前 に も増 し て強い 要求 とな っ て表 われ て きてお り, 実 践家は 実践面に おいて, わ れわ れ学 者に とっては そ め理 論面 にお い て, そ のすみや か な解明 を余儀 なくさ せ られて きてい る とい って よい。 し この ような変 革 は,企業 体制 , 経営 体制 の変 革を 意 味 し てお り, そ の現象 は21世 紀 へ の経 営体制(manageraentsystem )を めざし て の変 革 の過 程であ るといえ よう。 そ して, これら の 情況 の中 で国 際的 な経 営 学を 明確に する必 要 性が 急務 とな ってい るといわ なけ れば な らない。 加 え て 経営学 の一 領域 と し ての経営 財務 の領 域の 中で も新し い課 題 が提 起 され, かつ そ の問題 解決に 大 きな努力 が払 わ れて きてい る と考え るこ とがで き よ う。 さて,以 上 の よ うな理 解は, 経営 財務 が経営 学 の体系 の中 でど の ような位 置づけ とな ってい る のか を考え る必 要性 を生 み出し て きてい る。 また,今 日 の経営 財務 研究は ど の よ うに 考え , 整理 す れば , わ れわ れが主 題 とし なけ れ ば なら ない経営 学 と の関 連を つ なぎ と め ておけ るのか とい う問題 で もある。 わ れわ れ の基 本的 考え 方 では, 経営 財 務 自体が 経営 学 と離 れて 独 白の体系 を 考 えて い く とい うこ とで はな く, 経営学 の体系 の中 に 経営 財務を 位 置づ げ る こ とが重要 な のであ る2)。 この よ うな問 題を 解 決す る過 程 とし て,本 稿 では次 の ような形 で展開し て みるこ とにし たい。 第1 に, 経営 財 務 研究 の流 れに関 し ,企業 体制 ,経営 体 制 の発 展 と関 連づ け なが ら,現 在的 視点 から整 理をし て みたい。 第2 に, 経営の国際化がなぜ経営学に大きな影響を与えてきている のか,加えて,国際 的経営者の育成がなぜ要請せられてきているのかを 明らかにしたい。 第3 に は,経営体制変革の中で,当面 の経営課題の一つとし て「 日本的 経 営 財 務 論 」の研究 が重要であることを考えてみたい。第4 にそ れらの展開過程から, 経営財務の枠組 とそ の方向づけは一体どのような ものとし て考えることが妥 当なのかを検討してみたい。そして,最後に,経営財務 と経営学の課題を経 営財務の枠組とその方向づけ の展開の中で考えてみるこ とにする。 2 経営財務研究の流 れ 経営財務と経営学 の課題を とりあげ るうえで, まず経営財務研究 の流れが どのように展開し てきたか,主 としてアメリカを中心に みてみることにする。 経営 財務研究の方法を考えるにあた り,筆者は, アメリカ経営財務研究の流 れの中から三つ のもの①企業金融論的財務論,(D 管理論 的財務論,③意思決 定論的財務論,をと りあげ ,それに実践経営学的 財務論を加え た形で,次の ような図でもって説明し てきた呪 企業金融論的 管 理 論 的 財 務 論 意 思 決 定 論 的 財 務 論 実 践 経 営 学 的 財 務 論 1900 年 1940 年1960 年1970 年1985 年2000 年 − 1 1 − I I − 1 1 1
本 草 〉
図1 経営財務研究の流れ ここにい う三つの財務論は,今 日の経営財務研究を考える うえで重要なベ ースとなってい る。 また実践経営学的財務論4)は,わ れ われが構築したけれ ば ならない経営学に有効な働きかけをしてい る。 また, ①の企業金融論的財経営財務と経営学69 務 論は, コー ポレ ーシ ョン・ フ ァイ ナ ンス(corporationfinance)とし て,長 期 の資 本 調 達(long-termfinancing )の問題 を 中心に そ の研 究 がな されて き た のであ る。 デ ュ ーイ ソ ダ(A.S.Dewing ) の「会 社財 務 論 」5)や ガ ス マ ソ とド ゥ:ゴ ール(Guthmann,H.G.&H.E.Dougall )の「 会 社 財務論 」戸は, こ の財務論 の基 本的型 を示 し た 研究 であ った とい って よい。企 業 金 融論 的財 務 論 が1900 年 代か ら1950 年 代に 至 る まで の展 開は,企 業 体制 の急速 な発 展過 程 におけ る資 本調達 問題 に と くに関 心 が払 わ れてい たこ とに よる。 企業 体制 の 発 展は ,企業 体 の内 部に おけ る管 理者 お よび経営 者へ とそ の間題 が 展開 する。 管理者 お よび経営 者 から接 近 した い わゆ る「 財 務管理 論 」は管 理論 的 財務論 とし てそ の生 成 展開 が始 まるこ とに なる7)。 企業 金 融論的 財務 論は,1950 年 代 前後 から の管理論 的財 務論 の生 成 ・発展 に かかわ らず, そ の後,重 要な展 開 を示 すこ とにな る。 筆 者は, そ の ような 展 開は,い わゆ る「多 国 籍 企業 」お よび「 国 際企業 」 とあい まった 企業 体制 の出現 が, こ のタ イプ の財 務論 の再 展開 を もた らした と考 え てみ たい。多 国 籍企業 の財務 論 とし て の展 開は ,次 項 で示 す経営 の国 際 化 と密接不 可 分 の関 係にあ るこ とに な り,企 業 体制 が新 しい 意味 で の「 経 営 体 」を示 す展 開 とも な ってい るこ とに 注意 す る必 要 があ る。 多国 籍企業 の国際化 は ,い わ ゆ る国際的 経営 財務論 とし て展開 す るわけ で あ るが, 企業 金 融論的 財 務論 の題 材とし ては,そ の国 際環 境論 と し て 展 開 を試 みてい る のが見受 け ら れ る。 た と え ば,こ二イ トマ ン とス ト ーン とル
(Eite陽an,D.K. &A.I.Stonehill ) は , 国際金融制 度(internationalmonetarysystem )と, 外 国為替 市場(foreignexchangemarket )の問題 を 考え てい る8)。 また,= ド リゲッ とカ ータ ー(Rodriguez,R.M. &E.E,Garter バ ま, 国際的 財 務 上の環 境につ いて, 多 国 籍企業 とい うものを ベ ース にし た うえ で, 国際金 融 や外 国為 替市 場 の問 題 を 取 り扱 ってい る のであ る9)。 ところ で,意 思 決定 論 的 財 務論 は,工950年 代後 半か ら現 在に 至 る まで,財 務論 の変 革 と もい って も よい ほ どの展開 を みて きた。 意 思決定 論的 財 務論 の 基 礎構造 は,い わゆ る企 業 体 の価 値 であ る「 株価 」を 中心に 組み立 て られ て きてい ると考 え て よい であ ろ う。 図2 は, ブ リガ ム(Brigham, 。E.F.)の最 近 著で示 さ れてい る もの であ るm 。/こ の図は, 外 部 の制 約, 全 般的 経済 活動 の 水準, 税 金 の水準, 株式市 場 の状 態 とい った もの の関 係を図 示し てい る。一
外部 の制約1. 反ト ラスト法2. 環 境上 の規制3. 製品と作業場 の 安 全性 の規制4. 雇用上 の実施規 則5. その他 経営者によって指揮 される戦略的意思決 定L 生みだされる製品 やサービスの型2. 使用される設備の 型3. 債務による相対的 な資金利用4. 配当政策5. その他 経 済 活 動 の 水 準 と 法 人 税 の 水 準 期 待 収 益 性 キ ロ ン ヤ ー グ フ ミ ユ イ シ タ ツ の リ ス ク の 程 度 株式市場 の状態 株 価 図2 意思決定論的財務論 の基 礎構造( 株価に影 響を与え る主要 要因の要約) 出所:E.F.Brigham,FinancialManagement,4thed.,TheDrydenPress,1982,p.19. 番 左 側 め 箱 に 示 さ れ る一 連 の 外 部 制 約 の も と で 経 営 者 は 一 連 の長 期 の 戦略 的 意 思 決 定 を 策 定 す る。 こ れ ら の 戦 略 的 意 思 決 定 は , 全 般 的 経 済 活 動 の水 準 お よび 法 人 税 の水 準 に そ っ て , 企 業 体 の 期 待 収 益 性 , 利 益 の タ イ ミン グ, 配 当 の 形 で 株 主 に 対 す る利 益 の 移 転, 投 資 利 益 お よ び 配 当 に 固 有 な 不 確 実 性( リ ス ク) の 程 度に 影 響 す る。 収 益 性 , タ イ ミン グ , お よ び リ ス クす べ て が 企 業 体 の 株 価 に 影 響 を 与 え る の で あ る。 意 思 決 定 論 的 財 務 論 は , 以 上 の よ うな 中 味 を 有 し て い く の で あ る が , モ ジ リ ア ー ニ, ミ ラ ー(Modigiliani,F.&M.H.Miller ) 以 来 の研 究 の 流 れ11)( 筆者 は とりあ えずこれら0 研究も意思決定 論的財務論にい れてい る)が 経 営 財 務 研 究 に 影 響 を 及 ぼし て き て い る 事 実 を 評 価し て お き た い 。 こ の よ う な 研 究 の総 活 は' ―Tープ ラ ン ド と ウェ ス ト ン(Copeland,T.E.&J.F.Weston ) の 「 財 務 理 論 と 会 社 政 策 論 」12)の 中 に み る こ とが で き る。 そ し て , モ こ で は こ の十 数 年 間 の 新 しい 財 務 領 域 に おけ る理 論 を 批 判 ・ 検 討 し て い る わ け で あ る。 こ れ ら の研 究 は , 経 営 の 国 際 化 , 財 務 の 国 際 化 , 具 体 的 な 実 践 活 動 の 中 で は , 国 際 的 経 営 財 務 とし て 利 用 で き る の で は な い か と考 え る。 さ て , ア メ リ カ 経 営 財 務 研 究 の 流 れ が ど の よ うに 変 革 し て き て い る のか , 財 務 職 能 の変 革 の 概 要 を 示 し て み よ う( 表1 参 照 )。 こ こ で は , ウェ ス トン の 説 明 お よび ブ リ ガ ムの 説 明 を 援 用 し な が ら , 整 理 し て み た 。 こ こ で 注 目す べ き点 は , 新 し い 経 営 体 制 の 変 革 と と もに , 新 し い 課 題 が 提 起 さ れ て きて い る
経営財務と経営学71 こ とであ る。 エ イジ ェソ シ ーの理 論 といった 具体的 な トピ ッ クスが指 摘され てい るが, グ =−バ ル化し た 経営 体制 の中 で, 新しい 理 論づ け が 要求 され る であろ うとい うこ とであ る。 表1 財務職 能の変革の概要 A. 期 間 B. 経 済 と 産 業 の 展 開 c. 財務領域の内容に与えた影響 190G年前後1920 年代1930 年代1950 年代前半1950 年代後半1960 年代前半1960 年代後半 ニ1970年代 1. 合同運動1. 新しい産業 の勃発2. マーケティング・ライン を進めるための合併3. 高い利幅1. 厳しい景気後退2. 再組織 と破産の波3.1930 年代のニュー・ディ ールの規制1. 急速な拡張2. 金融政策の復位3. 戦後景気後退の不安1. 改善された投資機会2. 増大する技術革新の歩み3. 新しい産業4. 成長に対する株式市場の プレミアム5. 大型電子計算機6. 国際貿易と国際収支の平 均の考察の重要性が増大1. 投資機会の拡大2. 貿易摩擦3. 第1 次・第2 次石油危機 1. 資本構成2. 主なエピソード的資本調達1. 財務構造2. ある種の計画設定 と統制3. 流動性の考察1. 不健全な財務構造 の誤り2. 支払能力と流動性3. 財務的再建4. 社会的統制1. 現金の流れ対収益性との強 調2. 財務比率分析を強調しなく なったこと3. 内部の財務管理諸手続きす なわち売掛金,現金予算の 予測 の利用1. 投資機会の資本予算分析2. 投資 の可否を決定するため の資 本コスト分析3. 売上高の成長に関係なく利 潤の成長を増大するための 計画設定と統制4. 集中データ処理 とシミュレ ーシ ヨソ技術5. 主要な金融機関と価格水準 変動に関する強調6. 国際的経営と財務1. ポートフォリオ理論の応用2. 資本資産評価モデル(CA-PM )の適用
1980 年代前 4 5 多国籍 企業 の展開 ドルの価値 が下が る 1 。 イソフレーシJ ソの増 大 およびその取 り扱い方2. 金融機関に対す る規制緩 和3. 財務的意思決定分析へ の コンピ ュータ利用 の飛躍 的増 大4. コンピ ュータに関し,モ の ハード ウェアや テレコ ミュニケーシ ョソ領 域の 技術開発お よび ソフトウ ェアのパ ッケ ージ の開発5. ベンチャーの勃 興お よび 買 収・合併 の波 3 4 1 2 3 4 オ プ ツ ヨソ ・ プ ラ イ シ ン グ ・ モ デ ル(OPM ) の 適 用 さ や 取 り評 価 理 論(APT ) の 適 用 ポ ー ト フ ォ リ オ ・ マ ネ ジ メ ソ ト エ イ ジ ェ ソ シ ー理 論 の 開 発 デ ー タ ・ オ ー バ ー ・ ビ ット の 研 究 レ バ レ ジ ・ バ イ ア ウ ト の 利 用 5. 年 金制 度 の管理 出 所:Weston,J.F.,TheScopeandMethodologyof ≒Finance,Prentice-Hall,1966,p.23. お よび, 主 とし て以下 の文献 を 参 考にし , 加 筆 し た。Brigh-am,E.F.,FinancialManageinent,TheDrydenPress,4thed.1985,pp.3 ∼19. 3 経営の国際化と経営学 企業体制・経営体制の発展は,そ の発展自体の過程の中に必然的に経営の 国際化を もたらしてきてい ると考え る。具体的には,国 際企業や多 国籍企業 の発展の中にみることができ,最近におけ る日本企業 の海外での現地生産の 急増からもその概要を伺 うことができよう。 また,各企業体のそうい った変 容は,いわゆる経営の国際化とし て理解でき,国際経営(internationalman-agemen 七)とし て経営 の実践活動の中に展開されてい る。 きて,経営 の国際化は,実践経営学的立場からど0 ように考えておく必要 があるであろ うか。基本的考え方 とし ては,経営活動が匡I内的レベ ルから国 際的レベルへの展開を示し てい ることにあ る。これは とりもなおさず経営活 動 の グローバル化で 琵 境下におけ る経営体と環境主体との関係の中でみてお く必要があると考える。
1111111111 −11141 −11111 χ 経営 財 務 と経営 学73 図3 グ ロ ー バ ル 化 し た 環 境 下 に お け る 経 営 体 と 環 境 主 体 と の 関 係 /**"* ■-" " ㎜- ㎜- 四 四-訃 柚 発 展 方 向 ㎜ ㎜ ㎜ −"" へX − ハ ルI し | し た 丿環 境1 1 1 1 1 1 I I j 心________________-W- 四-WW- 四WIW--W--Wl 〃W--W ノ (注) 目標は経営指針,( )内は主体者,×は対境関係 図3 は, 経 営体 と環 境主 体 との関 係を 表 わし た もの であ る。 こ こ で い う 「 経営 体 」は 企業 体制 の発展 過程 の中で 展開さ れて き た ものであ り, 機能主 義(functionalism)の理 念に基 づ く経営体制 で あ り, 多 く の環 境主体 に対し て も開 かれ た経 営活 動を なす 経営 体制であ るとい え る。 経営 体は, 環 境主 体 の新た な変 容に対 応し なが ら発 展す る。 また 経営 の国 際化は, 経営 体 の新し い 体制 を作 りだし , 環 境主 体そ の もの の変 質を もた ら し てきて い る。 径営 体 と環 境主 体 と の関 係は,い わゆ る「 対境 関係 」13)と呼 ば れる もの であ る が,対 境関 係で取 り扱 われ る具体的 課 題 は,以 前 に 七まし て重 要 な ものであ り,実 践経営 学的 立場 から の財 務論 の構築 のために もき わ めて重要 な 中身を 有し てい ると考え る。 図3 で は, 経営 体 と対 境関 係を もつ 環 境主 体 とし て多 く の ものが考 えら れ るが, そ の中 か ら銀 行お よび 株主を 環境主 体 とし て と りあげ てい る。 た とえ ば, 環 境主 体 とし て の銀 行は ,そ れ自体 の立場 か らは , 経営 体を 指 向し , 株 主集 団 もそ れ自 体 の発 展を 指 向し てい るとい うこ とで あ る。 また ,経 営 財務 に関 連0 あ る資 本市場 , 金融 市場 は,さ らに一 層, グ=・―バ ル化す る ことに より, 具 体的 に は, ニ ュ ―ヨ ー ク市場 と東 京市場 の一 体化 が進 行す る可能 性 を もつ ことに な る14)。
図3 で示 され る よ うに ,経 営 体は 独 自 の存 在 として 社会 の中で認 知 されて い るのであ り,そ れ 自体 の行動 原理 を もつ 組 織体 であ る。 経営 体 は,「経 営 体 の維持・発 展 」を 経営 目的 とし, 新 た な経営 社会 す なわち 経営 体制を築 く ○ であ る。 他方, 株主 集団 ,銀 行, 証 券会 社お よび 保険 会社 とい った環 境主 体は ,そ れ自 体の国 際化(基本的には経営の国際化)が急 速に進 展し つ っ あ る と ころに最 近 の重要 な特 色があ る と考 え てみ るこ とが で きる のであ る。 さて, 経 営 の国 際化は, 国 際的 経営(いいかえれば日本的経営)の重 要性を 示 唆し てい るといえ る。多 国 籍企業 の出 現 が経営 活 動を 国際化 し てきたこ と はい うに 及ば ない が,経営 の国際 化は ,多 国 籍企業 とい った企業 体制 の展開 と十 分 な係 りを もってい る と考え る こ とが で きる。 ラ グゞ ソ, レ クロウとブ ース(Rugman,A.M.Lecraw,D.J.&L.D.Booth )は,そ の著「 国際的 経 営 」 の中で, 「多 国籍企業 の経営 活 動 は 『国際 化』 の過 程に よって説 明され る」15)と述 べてい る。 経営 の国 際化 の過程 が重 要な 側面 であ る と彼 らは理 解 し てい るのであ る。 ラ ダマソ等は, 「 国際経営 の重要 な領 域は,多 国 籍企 業 の効 率的経営 とい う最 終目 標に対し て評価 され るべ きで あ る 」16)とい 舜 に , 国 際経営 の領 域 の原則 を説 明し て い る。 こ の図 の中 で, 上 半分は 環境変 数 と会 社変 数 と の間の主要 な区 分 噺表 わし て い る。 環 境 の変 動 要因は ,会 社 の外 部 の外生変 数 であ り, 他方 ,会 社 の特 定 の変 動要 因 は,会 社 の内部 の内 生変 数 であ る。 下 半分は ,多 国籍 企業 が経営 職 能を 組織 す るのに 必要 とされ る一 連り 要素 が示 さ れてい る。 これ か ら もわ か る よ うに , 財務(finance) も 国 際経営 の展開 で重 要な 職能 とし て 位 置づ け ら れ,財 務 そ の ものの国際化 も 経営 の国際 化に 付随し て発 展を とげ る必要 があ る。 ところ で, 経営 学を ど の ように と りあげ るこ とが 適切 であろ うか。 経営 の 国 際化 の中 で,' もっ とも重 要 な点 は ,い わゆ るマネ ジ メ ント・ アプl==・−チに よる方 法論 であ る。 そ こには , 今 日, 国際的 に 通用し うる学 問 とし て の経営 学 の要請 を生 み出 し てい るのであ る。 われ われ は, 経営 学を 実践 経営学 とし て展 開し て きた。 山 城章 教 授は, 実 践 経営 学的 アプ ロ ―チを 重 視し ながら, 次 の よ うに「 実践 経営学 」とし て経 営 学を 説 明され る のであ る17)。
「 実 践的 学問 方法をしば し ば,KAE の表式 を も って説 明す るo ・K は,knowledge,A はability,E はexperience で あ り,知 識 ・能力 ・経 験 の
外部環境 の要素 貿 易理論,外国為替の理論 経済的:労務,資本,技術, 外国為替,収 支均衡 非経済的:政治的,社会的お よび文化的システム 政治的 国家的:貿易の規制,投資, 税金,外国為替規制 国際的:IMF,GATT , 国際 連合事務局 および行動基準 生 産 国際的経営の領域 経 営財務 と経営学 多国籍 企業 の変動要因 多国 籍企業 の理 論 外国直接投 資の理 論 参入基準 の選択 多国籍企業 の業績 政治的リ スクに対 する方針等 多 国 籍 企 業 の 職 能 領 域 財 務 政府規制 に対 する 多国 籍企業の反応 価 格移転 税 金計画 外 国為替の危険 経営 マ ゞ ケ テ ィ ン グ 多 国 籍 企 業 の 統 制 , 組 織 , 戦 略 計 画 75 労 務 図4 国 際 経 営 の 主 要 課 題 ( 出 所:Rugman,A.M.,Lecraw,D.J ,andL.D.Booth,op.cit.,p,6. )
= =K ⑤ E 一 一 knowledge =ability =experience = 知識 = 能力 こ 経験 こ 原理 実践 実際 表式 である。これは,『原理 と実践と実際』の関係を表示し た ものである。 ……この知識は,自然 科学的には, 普遍性を有する因果の法則 としてとらえ られるのであるが,実践科学においては,これを知識とし て把握するとして も , こ れ を 原 理 (principles ) と 解 す る の で あ るo ・φ・・・・し か し こ の 基 礎 と な る ; もの,つま り実践性発揮に役立つ基礎となるものは,K だけでなくE もまた そ うである。K とい う知識とE の実際経験の両者を基盤にした上で,実践能 力が啓発せられ うる。 ……つ まりA という実践能力を啓発することができる ところまで研究をすすめるのが,研究 の態度であ り,またこれが学問的研究 である。……経営学 の研究特色は,このようにKAE のA とい う実践能力を 主軸とした,学問的研究をおこな うものであるから実践経営学 と よぶわけで あ る。」 一 山城教授 の主張される実践経営学は,そ の経営主体を基本 として,原理と 実 際とを合一する方法とし て実践学を強調されるのである。 この ような考え 方は,次項でも関連を もつ「 日本的経営学」成立をめざし ての研究方法へと 展開するであろ う。 経営の国際化は,新たな経営体(グローバル化した影 哉体)を作 り だ しつっ ある。経営体は,作業職能,管理機能,経営機能の全経営職能がすべてそ の 道 のプロアエッショナ片に よって担当せられるところ の集団であ りにそれは, グローバル化した主 体的な経営 体でなければならない。 経営財務に係 りを も つ 財務管理者,経営者はそ のような経営体を支える構成 メンバ. ■の一人なの である。企業 体制発展の中での「 経営体」が主 体的役割を演じ,そ の経営体 の立場から経営財務を考え,展開するのである。そこでは,経営学は,「実 践的アプロ ーチ」が強調され,実践学的経営学が提唱されることに なる。 さて,このような実践的アプロ ―チを強調する経営学は,いわゆるアメリ カで展開し た経営学にみることができる。アメリカ経営学の潮流の一つであ るH. クーンツ(H.Koontz )らのプr=・セス学派は,マネジメントの一般原理,
経 営 財 務 と 経 営 学77 図5 その他の種々の組織化した知識 から引き出されるシステム と しての経営理論と経営科 学( 出所:Koontz,H.,O'Donnell,C.andH.Weihrich,op.cit ・,p.62) 一 般経 営 論 の 研 究 を 重 要 視し , そ の 積 み 重 ね を 行 な っ てい る。 ク ーソ ツ, オ ド ソ ネ ル , ヴ ァイ リ ッ ヒ(Koontz ,H. ,O'Donnell,C.andH.Weihrich) は , ア メ リカ 経 営 学 の 流 れ の 中 に 多 様 な ア プ ロ ーチ が あ る こ と を 認 識 し な が ら, 実 践 的 ア プpt ―チ の 立 場 を と る18)。 ク ーソ ツ らに よれ ば , こ の 実 践 的 ア プa ーチ の本 質 は , 図5 に 示 さ れ る。 こ の図 解 が示 し て い る よ うに , 実 践 的 経営 学 派 は , 管 理 す る のに 特 有 な 科 学 や 理論 の 中 心 的 核 の存 在 を 認 識 し , ま た , そ の 他 多 様 な 学 派 と か ア プ ロ ーチ か ら重 要 な 貢 献 を 引 き 出 し て い る ので あ る。 サ ー クル が 示 し てい る よ うに , 実 践的 ア プ1==・− チ は , こ れ ら の多 様 な 領 域 に お い て 重 要 な全 知 識 に 関 心を も
だ な い ば か りで な く, 管 理 す る の に 十 分 有 用 で あ り, 特 有 な も の で あ る と考 え られ て い る も のに も関 心 を も っ て い ない の で あ る。 衆 知 の よ うに , タ ーソ ツ ら の 経 営 研 究 方 法 は , 経 営 管 理 過 程 学 派 (mana-gementprocessschool ) と 呼 ば れ て き た し , 「 古 典 的 学 派 」,「 伝 統 的 学 派 」と も 呼 ば れ て き て い る19)。 そ の 中 で, 彼 ら の実 践 的 ア プ ロ ーチ は , マ ネ ジ メ ン ト の 原 理 が 普 遍 的 な も の とし て 理 解 し , モ の マ ネ ジ メ ン ト の機 能 を 分 析 す る こ と に よ っ て , 一 層 明 ら か な も のに し てい る の で あ る。 ク ーソ ツ等 は , マ ネ ジ メ ン ト機 能 を(1)計 画 化 (planning ),(2)組 織 化(or-ganizing
),(3)ス タ ッフ 化(staffing ), 伴 統 率 化 (leading ),(5)統 制 化 (contro-lling
) の5 つ に 分 け て , そ の マ ネ ジ メ ン ト の 実 践 活 動 の 中 で 展 開 し て い る の で あ る20)。 彼 ら のい う 実 践 的 な 立 場 が , わ れ わ れ 自 体 の 経 営 学 を 大 き く展 開 す る うえ で 必 要 な も の と 考 え る の で あ る。 山 城 教 授 の主 張 さ れ る 「 実 践 論 的 経 営 学 」 と , ク ー ソ ツ 等 の主 張 す る「 経 営 学 」 が 全 く一 致 す る も の では な い が , 実 践 性 を 強 く 理 解 す る こ とに よっ て , 互 い に 補 強 し あ い , 関 連 的 な も の とし て, そ れ ぞ れ 乃 経 営 学 の 体 系 を 考 え る こ とが で き よ う。 経 営 の 国 際 化 は , 新 た な 経 営 体 を 作 りだ し つ っ あ る が , そ れ に も まし て, 経 営 体 を リ ー ド す る 経 営 者 の 役 割 が 必 要 であ ろ う。 ま た , 筆 者 は , こ の 経営 者 を 「 国 際 的 経 営 者(新 経営者)」21)と 呼 ぶ こ とに し , そ の 国 際 的 経 営 者 の育 成 が 現 実 の課 題 とし て 提 起 さ れ な け れ ば な ら な い と考 え る の で あ る。 4 日 本 的経 営財務 論 の生成 と 課題 経営 財 務 と経営学 の関係を もっと も よく説 明す るた め に は,い わゆ る日本 的 経営 財 務論 の研究 が必 要 であ ると考え る。 われ われ は , 実践論 的 径営学 の 方法 を と りな がら, 日本的 経営 財務論に 対す る理 解 とし て 次の ような考え 方 を 示し た。つ ま り,「 日本 の企業 体 の中に あ る経 営財 務 問 題を 国 際的一 般原 理 とし て展 開し つつ あ る経営 財務原 理 と比較・ 検 討し な が らそ の中に あ る問 題点 を 明 らかにし , 次い で 経営主 体 の立 場か ら, 経営 者 の実践 活動に そ の中 身を 適用し , 応用 でき うる原 理を開 発 するこ とであ る 」22)と。 日本的 経営 財 務論 が 構築 さ れる必 要 があ るのは , まさし く経営 の国 際 化 にあ る と考え ら れ るO
rII111111 ︲11 −1 − − L 社 長 経 営 財 務 と 経 営 学79 図6 典 型 的 な 経 営 組 織 に お け る 財 務 の 役 割
出所:Brigham ,E.F.,FinancialManagement,4 七hed.,TheDrydenPress,1985,p.7.
日本的 経営 財務論 を主 張 す る理 由は ,い わゆ る「 日 本的 経営 論 」23)の生 成 とそ の本質 が 明ら かに な りう つあ るが,しヽまだ欠 落し た 問題 点 があ る のでぱ ない かとい うこ とに あ る。 つ ま り, 日本 企業にお け る 財務問 題 がい まだ十 分 に 明らかに されてい ない とし うことであ る。 し た がっ て, 日本的 経営 財務論 を 提起し , 展 開す る必 要 が生 れて きてい る とい うこ と で あ る。 こ こ数年 来 め財務 の国際 化(internationalizationoffinance)は, 財 務 革 命(revolutionoffinance ) ともい われ る状況を 示し てい る24)。 今 後は 財 務 め テ クノ ロ ジ ー (technologyoffinance ) の開 発 と実 践が飛 躍的 に展 開 す るで ある うし ,そ れ ら の影響に よう て新し い 経営 体制 へ の変 革が示 される こ とに な るか もし れ なV^o ところ で, 筆 者は, す でに 日本的 径営 財務論 の課題 と方 向 とし て,5 点を 中 心に問 題 点を 指 摘し て きた24)。 ここでは, 再 度,そ の問 題点を 列記し なが ら,少し ば か り掘 り下げ てみた い。 (1) 経営 財 務組 織 第1 の問 題 とし ては, 財 務部 と経理 部 の組 織上 の位 置づ けを ど うす るか の
問 題 であ る。 筆者 は, こ の両部 門を 明 確に区 分し た 組 織構 造を アフ リカ型 の ト レジ ャラ ーとコン トp ーラ ーに 対 応 させた 形 で位 置づ けて み るこ とが適当 てぱ ない であ ろ うか。 ち な みに, ア メ リカ型 の典型的 な経営 財務 組 織は 図6 の よ うに な ってい る。 こ の図 で とくに重 要 なこ とは, 取 締 役会(boardofdirectors ), 社 長( )re-sident ), 財務担当 副社 長(vice-president-finance)の ライン 関係 は もちろ んで あ る 拡 財務担 当副社長 がト レ ジ ャラ ー(treasurer) と コV ト ロ ーラ ー(con-troller )を 部 下に もち管 理し てい るこ とであ る。 また トレジ ャ ラ ーは, 企 業 体 の現金 や市場 性有 価証 券 の管 理, 財 務構 造 の計画, 資 本 調達 のた めの株式 や 社 債 の販売お よび会 社 の年 金資 金 め 運用に 対し 直接 的 責任を もってい る。 トレ ジ ャラ ーの もとに は, 信用 担 当管 理 者, 在 庫担当 管 理者, 資 本予 算担当 管 理 者かお り, 他方 , コン ト= − ラ ーは ,会 計 部門や 税 務 部門 の活動に責 任 を もつ こ とに なる。 こ こでい うト レジ ャ ラ ーや コソ ト ロ ーラ ーの職務につ い て は, 筆者 が 行な った アン ケ ート調査 結果 の中 で,財 務 部 と経理 部 の日本的 特 質を 一 部表 わし てい た こ とを つ け 加え てお きたい25)。 な 牡 こ の 財務部 と経 理部 との区別 は, 財 務職能(financefuncton )の基 礎 お よびそ の分化を 考え る うえ で重 要 であ り, また 経営 の国 際化 と りわげ 財 務 の国際 化 の中で決定 的に 重 要 な課 題 であ る と考 えて お きたい。 (2) 最 適資 本 構成 第2 の問 題 とし て は, 最適資 本構成 の問題 を ど う位 置 づけ てお く かとい う こ とで あ る。 経 営者(実践家)に とって 目 標最 適資 本構成 を 考 え てお くこ とが 経営 意 思 決定過 程で の財 務基 準 とし て 重 要で あ る とい うこ とであ る。 最 適資 本構 成に 関す る経営財 務理論26)で は, あ る一定 条 件0 も とで は, 最 適資 本構 成 は存 在し ない とい う命題 が議 論 され, アメ リカ経営 財 務学会 で支 持 されて きた。 そ れは ,最 適資 本構成 とい うものは ,業 種 別あ るい は個 々の企業 体別 に と って,そ の基準 が何 パ ーセ ソト が適当 で あ る とい う定式 化 は理 論的に 説 明 で きない とい うこ とであ る。 さて, 日 本 の企業 体 の 財務管 理 者 が資 本構成 につ い て どの よ うな意識 構造 を もって きた のか。 筆 者に よる アン ケ ート調査 結果 か ら は,次 の よう な手 掛 りを 得 た。 そ れ は,多 く の財務 管 理者 は, 自己 資 本比 率を 上げ る方 向を考 え, 具 体的に は当 該 会社 の現在 の数 値 を10 % 程度 上回 る比 率 , 具体的 には30 %∼
経営財務と経営学8150 % の方 向を 考え ようとし て きてい るこ とであ る。 ア ン ケ ート調査 結果以後 の2 年 間の 実数値 におい て, 日本企 業 の 自己 資 本比率 が高 まりつっ あ ること に注 目し てお きたい。 日本 企業 のこ の ような変 容は, 財務基 準 とし て の目 標最 適資 本構成 が必要 であ る とい うこ とを 示す ものであ る と考 え る こ とがで きる。 もちろ ん, 経営 実践 とし ては, 業種に よってあ るい は個 別 の会 社に よっ て, また個 別 の会社 にあっ て も成長 時 であ る か低成長 時 であ る かに よって , モ0 日 標とすべ き資 本構成 の違い がで よ う。 し かし なが ら,資 本構成 が, 経営 活 動 の財 務的側面 におい て , 資 本調達 や資 本 コスト の面 と関 連を もつ こ とに な れば , 目 標最適 資 本構成 は, 経営 者に とって もっ と も必 要 とすべ き財 務基 準 と もなろ ‰ 経 営者は ,資 本構成 の変革( 目標最適資本構成の設定)を 財 務戦略 の重要 な 側面 とし てみ る必要 があ り,次に と りあげ る資 本 コス ト論 と も関 連させ ながら積 極的に 取 り組み, かつ経 営意 思決定 過 程に 組 み込む 必 要があ る と考 え る。 (3) 資 本 コスト論 第3 の問 題 とし ては, 資 本 コスト論 の企 業 経営 へ の 適用 の問 題であ る。 資 本 コスト は資 本調 達 と投 資 決定 とを 結 びつ け る概 念 とし て経 営 財務 の理論 の 中で重 要 な役 割を果し て きた。 筆者 は, 資 本 コス ト概 念を 伝 統的 な加重平均 資 本 コス ト説を 手掛 りとし て,実 践学 的 経営 財務論 の枠 組 みの中 で体系づ け てきた27)。 資本 コストは ,概 念的 に は投資 プ ロジ ェ クトの採 否 を意 思 決定す る基 準で あ り, 目標 とす べ き利 益率 である とい い かえ る こ とも で き よ う。 資 本 コスト は,単 に 事後的 に把 握され る もので はな く, 事 前的に 把 握され なけ れば なら ない こ とを意 味し てい る。 こ のこ とは,資 本 コス トが す ぐれ て経営 体に おけ る 経営 機 能に 関 連し た も のである と考 え る こ とがで き る。 しか 七 な がら, わ が国企業 体 の経営 者 が資 本 コ スト 論を 経営 財務的 意思 決 定過程 の中で十 分, 理解 され てい る ので あろ うか疑 問 を もた ざるを得 ない。 筆者の アン ケ ート調査結果 か ら もわか る ように ,資 本 コストに 関す る財務管 理 者の意 識 構造 は明 確で ない。 た とえ ば, 最 近に おけ る海 外 で発行し た転換 社 債の短 期間に 株式 へ の転換に よって生 じ てい る経営 問 題28)は, そ の一 部 と し ての資 本 コ スト論 が経営 者に理 解 され てい ない 証左 であろ う。 資本 コ スト論 は, 経営 者 の意 思 決定 用 具 とし て,重 要 な意 味を有 し てい る
と考え る。 また , 今後 ます ます 強 まる と予 想 され る財務 の国 際 化 の中 で, こ の資 本 コ スト論 は 経営 者 の財務 的 意思決定 過 程 の中へ組 み込 まれ る必 要があ る と考 え る。 (4) 配当 政策 第4 は ,配 当政 策 の間 題 であ る。 日本 の企 業 体では, い わ ゆ る「 日本型安 定配当政 策 」29)がい ぜ ん とし て多 い 実態 が明 らかに され てい る とい うことで あ る。 この実態 は , 財 務数 値(たとえば配当性向が低い,1 株当りの配当額が低 く,したがって配当利回りが異常に低い)に おい て も, 日本 の企 業 体 の 財務管理 者 の意識 構造に お い て もそ の よ うに 考え られ てい る点に 注 目し て お く必要が あ る。 配 当政 策は, 伝 統的 な見 方 とし て, 分配論(配分論)とし て 位 置づけ て きた。 配 当政策 が対 環 境主 体 とし て の 株主 集 団 と の関 係で なさ れる 経営 意 思決定す なわち 経営機 能 の具 体的 活動 とし て みて きた。 そ れは, 分配論 とし て の配当 政 策 が対境 財務 の問 題 とし て重 要 な位置を 占 めてい る とい うこ とであ る。 配当 政策 が, 経営 意 思 決定 過 程 で分配論 とし て 具体化 され る とき, 目 標配 当 性 向(targetpayoutratios )とし て具体的 基 準が必 要 とさ れて ぐ る。 こ の 点 は 日 本企 業 の 経営 者 が 明確 な情 報を対 株主 集 団に 提 供 する必 要 があ る ので は ない か と考 え る。 以上 の点 は, 経営 の国 際 化,資 本市 場 の国 際化 が急速 に進 ん でい る ところ で もあ り, 基 本的に は, ア メ リカ型 の配 当性 向主義 に よる配当 政 策 への転換 が強 ま りつ つあ る とみる こ と もで き よう。 配当 性 向主義 に よる配 当政 策 の理 論 化 は, 再度, 株 価 極大化 との関 連で 考え る必要 もで て きてい る と考え るこ とがで き, 日本企業 の経営 者 の経営 行動 の変 更を 余 儀 なく させ るか もし れ なl ヽ。 (5) 財 務戦 略 首5 は 財 務戦 略 の問 題 であ る。 財 務 戦略 の一 つ とし て「 借金 経営 」 と「 無 借 金 経営 」の問題 が重 要 視され る とい わなけ れば なら ない。 これ は, フ ァイ ナソ シソ ダ・ ミッ クス(financingmix )30)の問 題 で あ り, 最 適資 本構成 決定 の問題 で もあ る。 日本企業 の資 本 構成 ○状 態 が, 最近そ の指 標 とし て 自己資 本 比率 の上昇 が み られ る よ うに な って きた31)。 この 傾向は 今後 も続 く と予想 さ れ るが, 経営
経営財務と経営学83 の国際 化 の中 で, 丁借金 経営 」「 無 借金 経営 」を重 要 な財務 戦略 の一つ の型 とし て, 経営 者が 選択 す る 方向 が必 要 と たって くるで あろ う。 筆者は, こ の財務 戦略 の問 題 は, 前述し た「 資 本 コ スト論 」 の基 本的 役割 と密接に 関連し てい なけ れば な ら ない と考 え る。 また , レバ レ ジの理論 が, 日本企業 の今 後 の成長 ・ 発 展に とって有 効 な力を与 え るであろ うと考 えられ る。 日 本企業 の行 動パ タ■―ン拡 アメ リカ企 業 の行動 パタ ーン と異 なる とこ ろ が今 後 も続 く と予 想 され る とす るな らば, 実 際には , こ の財 務戦略 のたて 方 の違い にそ の本 質が存 在し て い る とい え る ので は なかろ うか。 経営 の国際 化は,資 金 調達 の国際 化をい ち 早 く進 めて きてい る が, 今後 は, 投資 決定 の 展開 と も絡み,新し い企 業 の 財務 理論 , 行動理論 の構 築,そ れにっ れ て新し い経営 体制 の確立 がな され て くる である うと考え てお きたい。 5 結び 経 営財 務 の枠 組 と その方向 づ け 以上にわたって,経営財務 と経営学 の関係を,実践経営学的方法に立ちな がら,経営体制の変革の中で検討を加え てきた。 アメ リカにおける経営財務 研究は,いくつかの立場 からそれぞれ の理論が展開されてい るのが実情であ る。1900年前後に生成した アメリカ経営財務研究は,そ の後いくっ かの研究 の分派をみるわけであるが,モ の将来的展望をみれば ,それぞれの経営財務 研究の統一が行なわれるのも近いであろ うとい うことがで きる32)。他方わが 国の経営財務研究 廓 アメリカお よびドイツにおける経営財務研究を導入し ながら,日本的経営財務の独自性を打ち出す方向がみられてきた。 筆者の考 えに よれば,それは日本的経営財務論を構築する方向を意味する。 本稿でぱ, 具体的には日本的経営財務論を構築する過程を示しながら,経営財務の課題 を考えてきた。そこでは,日本的経営財務が国際的経営財務として も通用し うる内容を もつことが重要である。 さて,経営財務と経営学 との関係で あ る が, 筆者 と し て は, 経営財務(managerialfinance) はやは り経営学 の体系の中で整理することが必要であ ると考える。そ のために, まず もっとも必要なことは,経営者あるいは財務 管理者とい う主体をベ ースに経営財務を構築することである。経営主体の明 確化は経営財務研究の経営学的考察にとってももっと も重要であることにな る。
ところ で, こ の よう廠 考 え 方ぱ,実 践 経営学 の方 法に も とづ い た ものであ り,モ の精 緻化に は ,現 代 の経営 体制 がど の ように な っ てい る のかを 理解す る必 要 があ る。 現代 の経 営 体瓢 そ れは 経営 体 の概念 の 精緻 化に つ なが るも の であ り, 経営 体 と社会 との関係( 複数の環境主体の集まりおよびその関係)を 新し い グロ ーバ ルな角 度か ら の展 開で もあ る。 問 か れた 経営 社会 お よび 経営 体は, 国際的 なレベ ル, グロ ーバ ルな レベ ル の中で 実践 活動 が行な われ る のであ り,そ の中 で財 務 の仕事 もマネ ジ メント の仕 事 もプ ロの仕 事 とし て 実践 され るの であ るよ そし て , 財 務 とマネ ジ メン トと の合理 的 結びつ きがそ の実践 活動を 高 め る基礎に な ってい る こ とも理解 す る のであ る。 結 局, 経営 財 務 の枠組 と方 向づ けに 関し て は,主 体者 の役 割 と経営 体 の生 成 とい う面 を ベ ースに し な が 乱 グロ ーバ ルな対 環境主 体を 考 慮に 入 れた枠 組を 考 え る必 要 がある。 / 注 1 ) 経 営 の 国 際 化 の 概 念 的 枠 組 み に つ い て は , 実 践 面 で は 経 営 体 の 実 践 活 動 全 体 の 国 際 化 , 理 論 面 で は 実 践 論 的 経 営 学 の 国 際 化 と い う も の を 考 え て い る 。2 ) 経 営 財 務 研 究 が 経 営 学 研 究 の 一 領 域 と し て 位 置 づ け ら れ る と い う見 解 を ベ ー ス に こ の 問 題 か 解 決 し た い 意 図 に よ る 。 な お 最 近 に 至 る 財 務 管 理 の 概 要 に つ い て は , 以 下 の 文 献 を 参 照 さ れ た い 。Pogue,G.A ・,andK.LalL ,“CorporateFinance:AnOverview,"SloanManagementReview,1974,pp.19 ―'38.3 ) こ の4 つ の 財 務 論 の 筆 者 の 考 え 方 に つ い て は , 次 を み ら れ た い 。 ト 小 椋 康 宏 ,『 経 営 財 務 』( 増 補 版), 第1 章 参 照 。4 ) こ の 研 究 方 法 に 関 す る 筆 者 の 主 張 は , 次 を み ら れ た い 。 小 椋 康 宏 ,『 日 本 的 経 営 財 務 論 』, 中 央 経 済 社 , 第1 章 第3 節 参 照 。5 )Dewing,A.S.,TheFinancialPolicyofCorporations,1sted.,TheRonaldPress,19:19 (5thed.,1953 ).6
)Guthman,H.G. &H.E.Dougall,CorporateFinancialPolicy ,1940 (4thed.,1962. ).7
) 管 理 論 的 財 務 論 は 次 の 文 献 で も っ と も よ く 明 ら か に さ れ る 。Howard,B,B.&M,Upton,IntroductiontoBusinessFinance,McGraw-Hill,1953.
尚 , 管 理 論 的 財 務 論 に つ い て は , 本 稿 で は 問 題 の 指 摘 だ け に と ど め て お き た い 。8 )Eiteman ,D.K.&A.I.Stonehill,MultinationalBusinessFinance,3rd.
経 営財 務 と経営 学85 ed.,AddisonWesley,1982,pp.1 ∼120,9 )Rodriguez,R.M. &E.E.Carter,InternationalFinancialManagement.,3rded.,Prentice-Hall,pp.1 ∼146.10 )Brigham,E.F.,FinancialManagement ―TheoryandPractice,4thed.,1985.,p.19.n ) モジリア ーニ, ミラ ーの一 連の研究は ,資本 コスト, 資本構成,企業 評価,配 当政 策など の面 で重要な 役割を 演じ てきてい る。くわしい文 献は 割愛 する。12 )Copeland,T.E,&J.F.Weston,FinancialTheoryandCorporatePolicy,2nded.,Addison-Wesley,1983.13 ) 対 境関 係の理論,いわゆ る「対境理論 」は山 城教授が 主張せられた 理論である。 以下 の文献をみ よ。 山城章に『現代 の企業 』,森山書店,昭和36 年。14 ) 資本市場,金融市場 などが24時 間(1 日)開かれるな らば(現在,検討段階で あ る)一 層,そ のことが加速され るこ とにな る。15 )Rugman,A.M.,Lecraw,D.J.andL.D.Booth,InternationalBusiness FirmandEnvironment,1985,p.3 前 掲書 前掲書 前掲書 ( 注22),( 注22) ,( 注22), 参 照 。 第6 章 , 第4 章 , 参 照 。 参 照 。 ]。6)Ibid.,-p.5.1.7 ) 山 城章,『経営原論 』丸善,昭 和45 年,66 ∼68 ペ ージ。18 )Koontz,H.,O ′Donnell,C.,andH,Weihrich,Management,8thed.,Me-Graw,Hill,1984,pp.61 ∼64.19 ) クーソツらの 研究方法 のベ ースは ,フ ランスのH.Fayol に 求めることができ る。20 )Koontz,H.,O'Donnell,C,andH.Weihrich,op.cit.,pp.64 ∼66.21 ) 国際的経営者の概 念は,基本的には ,「 専門経営 者」 を 意味するが, ここでは, モ ○実体を超えた も のを考え,開か れた 経営 体を リ ードする担当賎関 として理解 す る。22 ) 小椋康宏,『日本的 経営財 務論 』,中央経済社,昭 和59 年, 序文。23) 日本的経営論の問題提 起は次 の文 献が参考となる。 山城章,『日本的 経営論』丸善,昭和51 年。 次 の最近著は,日本 の会社 の姿を示し てお り,興味深 い。Abegglen,J.C.andG.Stalk,Jr.,Kaish α,TheJapaneseCorporation,BasicBooks,1985.24 ) 日本におけ る上場 会社の うち,金 融収支が黒字の会社は,最近 のデ ータでは3 社中1 社に のぼ って お り,会社内では,いわゆる余剰資 金の運用が行なわれてい る。 24) 小椋 ,25 ) 小椋,26 ) 小椋,
27) 小椋康宏 ,『経営財務 』(増補版), 同友 館,昭和59 年 ,119 ∼141 ペ ージ。28 ) 日本企業 の海 外で発行した転換社債などの急激な 転換に よって,資本 コストが 上昇した り,買占めに よるT.O.B. 問題などがある。29 ) 安定配当政 策は アy リカでもみられるものである厄 それとは区別して,従来 からあった配当 率(額面に対し )の一 定化を さす。30 ) フ ァイ ナソ シン グ・ミ ックスとは資金 調達 の組 み合せ のこ とで,当然,資本 コ ストとの関 連で明確にされなけ れば ならない。31 ) 日本に おけ る上場会 社の平均値においても最近自己資 本比率が20 %を超えて高 まってきてい る。 また,国際企業 といわれる,た とえば トヨタ自動車,松下電 器 産業におい ては 自己資本比 率が50 %を超えている。32 ) 経営財務研 究の統一的研究の必要性を 指摘したい とい う意図に よる。 参考 文献( 単行本 のみ)1Archer,S.H.<S:C,A.D'Ambrosio,BusinessFinance:TheoryandMan-agement,Macmillan,1972.2Brigham,E.F.,FinancialManagement,TheDrydenPress,1977,2nded.1979,3rded.,1982 ,4thed., 工985.3Copeland,T.E.&J.F.Weston,FinancialTheoryandCorporate にPolicy,AddisonWesley,1979,2nded.,1982.4EitemanD.K.&A.I.Stonehill,MultinationalBusinessFinance,Addi-sonWesley,1973,3rded.,1982.5Guthmann ,H.G.&H.E.Dougall,CorporateFinancialPolicy,Prentice-Hall,1940,3rded.,1955,4thed.,1962.6Howard,B.B,&M.Upton,IntroductiontoBusinessFinance,McGraw-Hill,1953.7Koontz
,H.,O'Donnell,C.,andH.Weihrich,Management ,8thed. ,Me-Graw-Hill,1984.8Lessard,D.R.,InternationalFinancialManagement
,TheoryandAppli-cation. べWarren,Gorham&Lamont,1979,2nded.,1985.9Myers,S.C.(ed に),ModernDevelopmentsinFinancialManagement,TheDrydenPress,1976.10Rugman,A.M.,Lecraw,D,J,andL.D.Booth,InternationalBusinessFirmandEnvironment,McGraw-Hill,1985.'nSolomon,E. ,TheTheoryofFinancialManagement,ColumbiaUniv.Press,1963. 『古川 栄一 監訳,r ソロモン財 務管 理論』, 同文 館, 昭和46年)12Weston,J.F.,TheScopeandMethodologyofFinance,Prentice-Hall,1966.( 古川 栄一 監訳, 永島敬識 ・村松司叙訳,『企業財 務論 の方法』, 東洋経済 新報 社,昭和44 年)
経営財務と経営学8713Weston.J.F, &E.F.Brigham,ManagerialFinance,Holt,RinehartandWinston,2nded.,1966, (諸井勝之助訳,『経営財 務パ,n, 東京大学 出 版 会,昭和43,45 年』,7tlied.,1981.14 細井 卓 ,『経営財 務原論 』,丸善,昭和50 年。15 諸井 勝之亦 『経営財 務講義 』,東京大学出版会,昭 和54 年。16 飯原 慶雄 ,『財 務理 論の研究』白桃書 房,昭和55 年。17 諸井勝之助・若 杉敬明編,『現代経営財務論ふ 東京大 学出版会,昭和59 年。18 正 木久司 ,『日本的経営財務論』,税務経理協 会,昭和60 年。19 小椋康宏,『経営財 務』(増 補版 )同友館,昭和59 年。20 小椋康宏,『日本的経営財務論 』中央経済社,昭和59 年。21 山城 章 ]22 工 藤達男 ・小椋 康宏 編,『現代経営学 』レ 白桃書房,昭和60 年。 〔付記〕 本稿は,昭和60年10月5 日,日本経営財務研究学会第9 回全国大会,統一 論題「経営財務と隣接諸科学」の内,「経営財務と経営学一 経営財務の枠組とそ の方向づけ」として報告したものを加筆・訂正したものである。