東日本大震災とライフライン被害
著者名(日)
鈴木 崇伸
雑誌名
工業技術 : 東洋大学工業技術研究所報告
号
35
ページ
5-9
発行年
2013
URL
http://id.nii.ac.jp/1060/00006163/
Creative Commons : 表示 - 非営利 - 改変禁止 http://creativecommons.org/licenses/by-nc-nd/3.0/deed.ja東日本大震災とライフライン被害
鈴木 崇伸* 1.はじめに 2011年3月に起きた東北地方太平洋沖地震は,日本 で観測された最大規模の地震であり,地震後の大津波に よる被害と原発事故という史上に例のない大災害となっ た.近年の地震学の進歩により,仙台沖では地震の発生 確率が高まっているとされていたが,事前に予想された 震源付近から始まった断層破壊は,想定を超えて進行し, マグニチュード9.0というエネルギー的には100倍以上 も大きな地震となった.想定外のエネルギーは東日本全 域を大きく揺らしただけでなく,大津波を引き起こして 東日本の太平洋岸を破壊した.太平洋に面して建設され た発電所の多くが被災し,とりわけ東京電力の原子力発 電所では炉心溶融という大事故に至ってしまった. 3月11日に起きた地震と一連の余震や大津波による 混乱は東日本大震災と名付けられ,復興に向けての取り 組みが進められている.震災は経済活動から国民生活全 般に影響する内容であるが,本稿ではライフライン被害 に注目して分析結果をまとめる.原発事故も直接の原因 は津波による施設の浸水とされ,浸水による電源喪失が 冷却機能の停止に影響した.都市ライフラインは都市機 能を支える水道や下水,電力やガス,電話や放送などの インフラ群の総称である.原発の例を引くまでもなく, 都市ライフラインは人々の生活や経済活動に欠くことの できないサービスであり,特にヒトやモノが密集する都 市において,水の供給と排出,エネルギーの供給情報 通信,物流などの機能低下は多大な支障をもたらす. 本稿は,都市ライフラインの一般的な被害と事前対策 の特徴と,東日本大震災の都市ライフライン被害の概要 を紹介している.今回の震災の教訓をもとに次の震災に 備える必要がある.なお本稿の著述にあたり,文献1の 内容を一部引用している.2.都市ライフラインの地震被害の一般的な特徴
(1)ライフライン事業 ライフラインという言葉はよく用いられるが,定義は あいまいな部分も多い.水道,電気,ガス,電話といっ た供給・処理系のサービスから,交通,医療,廃棄物といっ た都市基盤全般まで含めて用いられることもある.土木 学会の都市ライフラインハンドブックでは,「高密度化 した都市圏での生活空間を築き,市民の生活を守る諸シ ステムの総称」とされている.本稿では,供給・処理系 のライフラインを都市ライフラインと呼ぶこととし,分 析の対象にする. 都市ライフラインの事業者は特定のサービスを提供す ることを目的に設立された公益企業であり,地域独占が 原則となっている.その経営は事業法によって細かく決 められており,監督官庁の影響が強く,通常の会社経営 とは異なっている.サービスを享受する市民あるいは企 業は,事業者との間に契約を結び,サービスの提供を受 ける.その契約約款では通常,災害によるサービス中断 は免責事項とされている. 都市ライフライン事業者は社会生活に及ぼす影響が大 きいことから,災害対策基本法において防災機関として 指定され,行政と協力して災害対応に当たる責務を負っ ている.具体的には防災業務計画を公告するとともに, 災害対応の事前準備を行っている.社会システムの基本 要素であり,サービスの中断をできるだけ防止し,やむ を得ず中断するときも影響を最小限にすることが求めら れる.事業者は,平常時には需要家ごとあるいは地区ご とにサービス状況を監視し,故障があれば即座に対応す る保全体制をとっているが,自然災害時には故障が同時 多発するために,災害対応は平常時と異なる体制となる. 災害が起こる前に対応策を準備しているのがライフラ イン事業者の特徴である. (2)構造的な特徴 都市ライフライン施設は主として「公共料金でつくら れた施設群」であり,供給系ライフラインは構造的には 以下の共通した特徴がある. ・サービス提供エリアごとに拠点をおきサービスを提供 している ・膨大な線状の設備で接続されている ・サービスごとに独自のネットワークが構築されている ・長い年月をかけて構築され新旧の施設が混在してサー ビスを提供している ・人手を介さず装置群によりサービスを提供している ・独立した装置群ではなく依存している ・主として道路の地下に埋設されている東日本大震災とライフライン被害
ある区域の利用者を前提に,サービスを提供するため の設備を先行投資して整備し,後になって投資分を回収 するというのが都市ライフラインの基本的構図となって いる.サービスを提供するのは拠点から利用者を結ぶ線 状設備であり,地区ごとの拠点もネットワーク化されて いる.サービスの提供はほとんど自動化されており,人 手を介することがないように構築されている.それぞれ が都市基盤であることにより,相互依存性は極めて高い. たとえば水道はパイプとポンプが不可欠であるが,電気 がなければポンプが停止し断水する.同様に電話は電気 装置の集合体であり,一部が停電しただけで通信不能と なる.また道路の地下に平行して敷設されていることか ら,各設備の被害個所が特定地区に集中する点も依存性 の一側面といえる. 利用者にとって目に触れることの少ない施設群によっ て提供されるサービスは完全にシステム化されており, 日常生活に組み込まれている.利用者にとって,故障が 発生しない限り,ライフライン施設はブラックボックス であり,水道の蛇口や排水口,ガスの供給口,電気や電 話のコンセントあるいはスイッチが見えていれば事足り る社会となっている. (3)地震被害の特徴と対策 構造が類似しているために,ライフラインの地震被害 もよく似た特徴となる.主な特徴は以下のとおりである. ・新旧の設備が混在しているため,古い設備が被害にな りやすい ・ネットワークでサービスを提供しているため,一部の 被害が全体に波及する ・都市全体にネットワークを形成するために地盤の悪い ところを通過することとなり,一部の地域に被害が集 中する ・被害の有無よりもサービス停止する時間が問題とな り,早期復旧や代替サービスに重点が置かれる ・社会システムの基本要素であり,サービス停止の影響 が拡大し2次災害の問題が発生する 古い設備が一部に組み込まれ,複雑にシステム化され, また地盤の影響を受けやすいといった特徴から,地震被 害のある程度の発生は避けられないのが現状である.こ れまでに発生した大地震や水害により,どのような支障 が起こるかはおよそ想定しうる.特に1995年の兵庫県 南部地震は近代的な大都市直下で起きた大地震であり, 都市ライフラインも甚大な支障を被り,市民生活も混乱 した.こうした災害の教訓は次の災害への備えに活かさ れている. 都市ライフライン事業者は,過去の災害を教訓に災害 対応の方針を決めている.災害対応の一般的な方針は以 下のようにまとめられる. ・各種設備の防災性能向上(ハード面の対策) ・災害時の緊急コントロール(ソフト面の対策) ・被害の応急対応と早期復旧(マンパワーの対策) ハード面の対策は,設備の取り換え,強化であり,特 に古い設備の更改や重要設備の二重化は有効とされる. しかし,長い年月をかけて作り上げた施設群は短期間に 取り換えることはできず,緊急度・重要度などで優先順 を決め,年度予算の範囲内で徐々に設備強化が進められ ている.また設備の二重化は余剰設備をもつことにもな り,信頼性と経済性のバランスで決めることになる. ソフト面の対策は被害が起こることを前提に最悪の事態 を避ける行動を事前に決めている.被害の波及や2次災 害などの想定に基づいて,被害を最小化する工夫が考え られている.例として,都市ガスは地震被害の大きな地 域では即座に供給停止を行うこととしており,電話は通 話要求が急増した時には重要通信を確保するために,発 信規制を行うこととしている.マンパワーの対策は日常 業務から災害対応業務に切り替えて行われる.災害対応 業務はマニュアル化され,応援体制や資機材の準備など も事前に行われている. 災害対応の方針を具体化するために,被害予測が行わ れる.起こりうる事実を明らかにした上で,ハード,ソ フト,ヒューマンの対応策を当てはめていく.災害が想 定通りならば,大きな混乱もなく対応できることになる が,実際には想定通りになることはなく,現場の状況に 応じて準備された災害リソース(ヒト,モノ,カネ)を 活用して対応することになる.ある程度の被害とサービ スの支障は起こるものとして,その影響を最小化するの が都市ライフラインの防災の現状であり,利用する側に も影響回避の要請がなされている.水や電池の備蓄や, 災害時の電話利用自粛などが例と言える.3.東日本大震災のライフライン被害
(1)被害の総括 今回の東日本大震災では,大津波と原発事故に注目が 集まったため,これまでの大地震に比べてライフライン被害の注目度は比較的低い.今回の震災では,大津波に よる被害と原発事故の枕詞として想定外という用語が多 く用いられたと感じている.事故の予見性はライフライ ン事業者にとって重大な事業判断材料である.平時であ れ災害時であれ,ライフラインの停止は市民生活への影 響が大きく,起こりうる不具合に対して適切な対応が望 まれる.対応とは事故防止の努力だけでなく,不具合の 可能性を情報公開し,社会のコンセンサスを得ることも 含まれる. 表1都市ライフラインの地震後対応 事業者 対応方針 水道 流す,配る,復旧する 都市ガス 止める,復旧する 電話 止める,つなぐ,復旧する 下水 流す,復旧する 電力 止める,復旧する 鉄道 止める,逃す,復旧する 原発では地震などの外乱により,定常運転ができなく なった場合には「止める,冷やす,閉じ込める」という 対策が準備されているので安全であるというコンセンサ スがつくられていた.その適否については本稿では述べ ないが,原発の用語に倣って,各ライフライン事業者の 対応方針を表1にまとめてみた. 水道は可能な限り水を流し,断水地区は給水車で対応 することが基本となっている.水を流すのは水を止めて しまうと破損個所が見つからないからである.給水車の 対応は数日後となるため,利用者で必要最小限の水を確 保することが要請されている.都市ガスは2次災害防止 のために被害の大きな地域では供給停止することを基本 方針としている.揺れの大きさを検知するセンサーを各 所に配置することにより,自動的にバルブ遮断するシス テムとなっている.利用者との切り分け点に感震遮断機 能をもったマイコンメータを設置して,揺れで家が壊れ てもガス漏洩がないネットワークをつくっている. 電話と電力も止めることが基本とされる.電話は災害 対応機関などの重要通信を確保することが要請されてお り,一般ユーザの利用を制限する仕組みが作られている. また通信途絶地域が発生した場合には,応急機器を使っ て早期復旧する準備がなされている.電力は需給バラン スが崩れると広域に停電とする仕組みとなっている.都 市部の被害により需要が急減するあるいは発電所の被害 により供給が急減するような状況では,電圧,周波数が 不安定になるため,停電させて安定化を図ることとして いる. 本稿のライフラインには含めていないが,鉄道も対応 方針が決まっており,列車を安全に停止し,乗客の安全 を確保することを第一としている.結局都市ライフラ インで地震後に意図的に止めないのは水道だけであり, そのほかのライフラインは止めることを周知して,社会 のコンセンサスができあがっていると考えられる.被害 が軽微で各ライフラインが問題なくサービスを提供して いるのであれば,緊急対応に至らない程度の災害という ことになる. 次項より,東日本大震災の混乱について述べるが,各 ライフライン事業者とも,想定してきた最大級の被害に 対応し,混乱を最小限に収めたといえる.このことは阪 神の教訓が役立った成果といえる.各事業者は阪神レベ ルの被害想定を行い,阪神の混乱を繰り返さないように 努力をしてきた.その準備は経済的なこともあり100% ではないが,限られたリソースを最大限有効に利用する 仕組みを作っていた.しかしながら,経験のない大津波 と原発事故では大きく混乱したのが今回の震災の総括で ある. (2)阪神・淡路大震災との比較 東日本大震災の都市ライフラインの被害数は復旧が完 了した後に確定する.ここでは速報値として発表された データを阪神・淡路大震災の数字と比べて,今回の震災 の特徴を考察する. 水道は阪神の2倍の断水が発生した.断水が発生した 範囲も広く,東北のみならず,東京圏でも断水地区が発 生した.大きな揺れが広い範囲を襲ったことが原因であ るが,東京湾岸では埋立地の液状化により被害が拡大し たことが指摘されている.液状化は緩い砂地盤が強い揺 れを受けることにより強度を失う現象であるが,住宅だ けでなく地下に埋設した管の被害も大きくなる. 電気は,太平洋岸に設置した発電所の多くが津波によ り被災し,早期に再稼働できないことが停電範囲を拡大 させた.電力不足の長期化にともない,東北電力,東京 電力管内では計画停電が実施され,社会の混乱を増幅さ せた.電源回復の遅れは他のライフラインにも波及し, 断水や電話の不通を招いた. 都市ガスは阪神と比べて被災規模は小さく,停止件数 はおよそ半分であった.都市ガス事業を行っているおも な都市は,仙台市,いわき市,日立市などであるが,揺 れの特に大きかった東北地方では阪神地区ほど都市ガス が普及していなかったことによる. 通信については後で詳しく述べるが,固定電話で190
東日本大震災とライフライン被害
万回線が停止しT携帯基地局は1万2千局が停波した. 固定電話の被害数は阪神の約10倍でありT携帯基地局 の被害数は阪神のおよそ100倍となっている.津波被害 に加えて,広域に長時間停電した影響を受けている. 下水は太平洋岸に設置した最終処理場が津波により大 きな被害となった,阪神では液状化の影響により東灘処 理場が長期稼働停止となったが,今回の震災では14か 所の処理場が長期稼働停止と見込まれている. 表2 阪神淡路大震災と東日本大震災のライフライン被害の比較 区分 1995阪神 2011東日本 水道 約123万戸が断水,全国各地から約18000人の応援を得 ト2月末に仮復旧が終了 地震i直 電気 関西電力管内で約100万戸が停電(地震直後は一時的に Q60万戸).約1週間で復旧 東北電力:地震直後に約486万戸が停電.3月20日時点 ナ約24万戸が停電 結椏d力:地震直後に約405万戸が停電,1日後には約 U0万戸に減少.2日後は26万戸,1週間で復旧 ガス 大阪ガス管内で約86万戸が供給停止.他の事業者の応 № 加え約3ヶ月で復旧 地震発生翌日の供給停止件数は全国で約46万件,仙台 sでは全国からの応援を受けて約1ヶ月で復旧 通信 電源被害等により約29万加入,配線系の被害で約19万 チ入があったが,2週間で復旧 固定電話は3社合計で約190万回線が停止.携帯電話は 賴n局が約12000局停波,2週間で応急復旧を完了 下水 処理能力に影響のでた8処理場のうち7処理場は早期に シ復旧を実施.東灘は長期停止 太平洋沿岸を中心に52の処理施設が被災し,14施設で キ期樹動停止の見込み さて兵庫県南部地震のマグニチュードは7.3,今回の 地震は9.0である.地震のエネルギーで比べると約350 倍,断層の面積で比べると約50倍の開きがある.マグ ニチュードに加え、都市の直下と遠く離れた海底下とい う地震の性質と,大きく揺れた範囲の都市人口の条件に より,ライフラインの被害の傾向に差異が出た.水道と ガスの供給設備は都市に集中するため,大きく揺れた範 囲の都市人口が少なかったことから、およそ倍半分の差 異となったと考えられる.一方,電話と電力は都市人口 に関係なく広域にネットワークを形成する.利用者は都 市部に集中するが.ネットワークは東日本全体に分布す る.そのため広域で起きた大きな揺れと津波の影響が顕 著に表れて,被害数が1オーダー大きくなったといえる. (3)通信の混乱状況 水道や都市ガスに比べて,電力と通信の被害がけた違 いに大きかったが,電力は主に発電所被害が原因であり, 津波の影響を含めた発電所の耐震化が教訓となるであろ う.ここでは広域で起きた通信の混乱について分析をす る.通信支障の原因には3つの要因がある.まず通信施 設自体が故障して利用できなくなることがあげられる. ビル内の通信施設、アンテナ、通信ケーブルのいずれか が故障すれば通信はできない.さらに利用者が所有する 端末機器が故障しても通信はできない.第2に停電の影 響がある.通信サービスは電気装置の集合体で成り立っ ている.通信事業者の装置も利用者の端末機器も商用電 源が途切れれば基本的に利用できなくなる,停電が長時 間に及ぶ場合、バッテリー切れ、発電機の燃料切れ、可 搬型電源の配備遅れなどにより通信不能となる. 写真1 津波と火災で被災したNTT田老ビル(宮古市)姦
」≠F底ny’
睡☆÷・ 写真2津波で倒壊した携帯アンテナ(陸前高田市) 第3に輻藤の問題がある.通信サービスは交換機や サーバ、通信ケーブルを共同利用している.共同利用す ることにより料金が安くなり、多くの人が利用できる仕組みとなっている.災害などにより多くの人が利用し始 めると、設備の容量を超えるため、システムが不安定に なり通信できなくなる,そこで重要通信を確保するため に災害時優先電話の仕組みが整えられ、災害関係機関の 通話を優先し、一般利用者には使用制限がかけられる. 表2に挙げた通信の被害数は第1と第2の原因による ものであり,電話の輻較による被害数は入っていない. 設備被害として主に東北3県で通信ケーブルの切断通 信装置の浸水など発生している,停電の影響はさらに広 範囲に及び,電源の回復と再停電を繰り返す地域もあっ た、携帯電話の基地局は全国に10万カ所以上設置され ている.今回の震災では最大で1万ヵ所以上が主に停電 の影響により停波したが.全国のおよそ1割の利用者が 停波の影響を受けたことになる. さて電話の輻較は定量化の難しい現象であるが,通信 会社は設備の使用状況を監視して,一定レベルを超える と発信規制をかける仕組みとしている.地区ごとの監視 データを総合して規制措置が取られるが,地震当日は東 京を含めて東日本全体で電話が利用できない状態となっ た.設備被害がなくても利用できなくなる輻較が大きな 混乱を招いたといえる.規制は重要通信を確保するため にとられる措置であるが,一般ユーザのために災害時伝 言ダイアルあるいは伝言板サービスが準備されている, 伝言ダイアルは阪神の教訓をもとにつくられたサービス であり.全国に分散配置した伝言蓄積装置に最大800万 伝言を保存できる仕様になっている.今回の震災では 300万伝言以上の利用があ1) .まさに阪神の教訓が生き た結果となった.海外からの利用要望に応えてシステム 変更も行われた.電話が使えない状況での安否確認にお いてtwitterやfacebo〈)kなどのインターネットサービ スに注目が集まっているが,肉声を録音して電話を通じ て声を聞きたいというニーズは高いと言える. 後発で整備された電話の場合,全国の設置希望者に電話 が行き渡り,ダイアル通話が可能になってから30年余 りしか経っていないc地震被害の経験不足から,都市ラ イフラインが停止するリスクが事業者ならびに利用者に 十分認識されていない面も伺える. 日常生活では利用できて当たり前のサービスが災害に より急に使えなくなるというのは想定しにくいことであ る.今回の震災で体験したとしても.利用できて当たり 前の生活に戻れば忘れてしまうのは致し方ない、震災体 験を記憶にとどめ,後世に語り継ぎましょうというには 社会の変化が急速であり,簡単にはいかないと思われる. しかしライフラインの災害対応の基本方針を理解してお けば,混乱防止の一助にはなる.地震後に停電になって 対応が混乱した.あるいは現場と電話がつながらず,情 報把握に手間取ったというようなことを聞くが,穿った 言い方をすると.電話とファックスで現地の状況が把握 でき,指揮命令系統が計画通りに運用できるのならば, それは災害対応というよりも平時の事故対応のレベルと なる.ライフラインの仕組みから見ても,停電・電話不 通の状況でどう行動するかを計画しておく必要がある, 参考文献 U鈴木崇伸 東日本大震災にみるライフライン防災の課題、東洋 大学現代社会研究第9号.pp23.32、2013 2Jひょうご震災記念2U』:紀研究機構−災害対策全書,ぎょうせい、 2(」11 3}十木学会 都市ライフラインハンドブック,丸善,2010 11高田圭郎,ライフライン地震一L学、共立出版、1991 5〕鈴木崇伸:社会技術的観点によるライフライン防災技術び)評 価 相互連関を考慮したライフライン減災対策に関するシンポ ジウム論文集、2009 6)鈴木崇伸’東lil本大震災の通信被害,十木学会誌2()1]年11月 号・, 2011, 4.おわりに 都市ライフラインの構造的な被害の特徴と東日本大震 災の都市ライフラインの被害の概要について述べてき た.当面は都市ライフラインは大地震によって機能停止 することを前提に震災後の対応を考えざるを得ない,施 設を構築してきた経緯と公共料金で運営する経営形態か らみて急激に改善される見込みは小さい.日本という地 震国に水道.ガス、電気.通信などといった都市ライフ ラインが整備されて半世紀足らずである.大都市におい ては古くからインフラ整備が進められているが,地方都 市においては経済成長に合わせて整備されてきた 最も