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銀行持株会社に関する法規制について

著者名(日)

浅野 裕司

雑誌名

東洋法学

43

2

ページ

1-29

発行年

2000-03-15

URL

http://id.nii.ac.jp/1060/00000432/

Creative Commons : 表示 - 非営利 - 改変禁止 http://creativecommons.org/licenses/by-nc-nd/3.0/deed.ja

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︻論  説︼

銀行持株会社に関する法規制について

はじめに

東洋法学

 持株会社は、一九四七年に制定された﹁私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律﹂︵以下、旧独禁法 という︶九条によって、禁止されていた。一九九七年六月、同法の一部が改正され、同年一二月一七日に施行さ れた︵以下、改正独禁法という︶。旧独禁法九条一項では、﹁持株会社は、これを設立してはならない﹂と規定し、 さらに同条二項では、﹁会社は、持株会社となってはならない﹂と規定していた。これに対し、改正独禁法九条 はこれを緩和し、同条一項は、事業支配力が過度に集中することになる持株会社を設立してはならないと規定し た。このことが、一般に持株会社解禁とされている。  一九九七年に﹁銀行持株会社の創設のための銀行等に係る合併手続の特例等に関する法律﹂︵以下、銀行特例 法という︶が制定され、金融機関による持株会社の創設を円滑にする措置も講じられた。また、 一九九七年に

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銀行持株会社に関する法規制について ﹁持株会社の設立等の禁止の解除に伴う金融関係法律の整備等に関する法律﹂︵以下、整備法という︶が制定され ている。これは、持株会社の解禁に伴い、銀行、保険、証券を子会社とする持株会社につき、経営の健全性の確 保、投資者保護などの観点から、その監督上の措置を講ずる必要性があることなどに鑑みて、銀行法、保険業法、 証券取引法およびその他の関係法律の規定の整備を図るためのものである。銀行法、保険業法、証券取引法など の改正を関係各法律の改正によることなく、整備法という一つの法律により行っている。また、銀行持株会社の みならず、保険持株会社など金融持株会社に関連する法律を広く整備する点に特徴がある。  一九九九年に商法の改正があり、大きく三つの点が改正商法で指摘できる。持株会社の解禁に伴い、持株会社 の創設を円滑にするために、株式交換および株式移転の制度を新設した。また、親子会社において親会社株主の 保護を図るため、子会社の業務内容などの開示を充実させている。さらに、金融資産について時価評価を可能と した。改正商法は、純粋持分会社の創設を容易にするための制度を整備し、子会社の株式を一〇〇パーセント保 有する会社を完全親会社と位置づけている。  独禁法の観点から持株会社は、持株会社、純粋持分会社、事業持株会社に分類される。改正独禁法九条三項に より、持株会社は、子会社の株式の取得価額の合計額の会社の総資産額に対する割合が一〇〇分の五〇を超える 会社とした。純粋持分会社は、旧独禁法では禁止されていたが、それ自体として具体的な営利事業を遂行するわ けではなく、株式保有を基礎に他の会社を支配して、保有株式の利益配当や転売による利得を得ることを目的と するものである。事業持株会社は、旧独禁法でも認められていたが、事業会社が持分会社を兼営するものである。

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 銀行持株会社が子会社として傘下におくことができる範囲は、普通銀行、長期信用銀行、信託、証券、投資顧 問に限定し、保険会社ば除外されている。事業会社に対する持株比率は、合計において一五パーセントに制限さ れている。銀行を傘下におかない証券持株会社あるいは保険持株会社については、事業会社に対する持株比率は 制限がない。  米国では、一九七〇年に﹁銀行持株会社法﹂が改正され、単一銀行持株会社も規制の対象に加えられた。﹁銀 行業務と密接に関連する業務﹂と認めた業務は﹁レギュレーションY﹂として公表されている。またグラス・ス ティガル法の規定を撤廃する﹁金融サービス現代化法案﹂が基本合意に達している。  以上のような諸点を考慮して、銀行持株会社を中心に素描を試みることにしたい。大方の御批判、御叱正を仰 ぐことができれば幸甚である。 銀行持株会社設立に関する法規制

東洋法学

 わが国の金融制度の根幹をなす銀行法は、全面改正され、一九九八年一二月一日から施行された。銀行法にお ける銀行の子会社規定の整備が行われ、銀行および銀行持株会社が金融に関連する業務を営む多様な子会社を保 有することを広く認めている。また、改正独禁法により解禁された持株会社が、将来的に銀行の業務展開方法の 一つとして利用されていくことを想定し、持株会社および銀行持株会社についても、定義規定により概念が明確 にされている。

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銀行持株会社に関する法規制について  銀行法において﹁銀行持株会社﹂とは、銀行を子会社とする持株会社であって、五二条の二第一項の認可を受 けて設立され、または同項もしくは同条三項ただし書の認可を受けているものをいう︵二条二項︶。同法五二 条の二第一項の認可とは、銀行を子会社とする持株会社の設立をしようとする者や、銀行の株式の取得などによ り銀行を子会社とする持株会社になろうとする会社に対して、監督当局が与える認可である。また、五二条の二 第三項ただし書の認可とは、特殊な事由によって銀行を子会社とする持株会社になった会社が、その後も引続き       パよ 銀行を子会社とする持株会社として存続しようとするときに、当該会社に対して、監督当局が与える認可である。  銀行法二条八項は、子会社について規定しているが、持株会社の子会社が銀行の発行済株式総数の一〇〇分の 五〇を超える数の株式を所有し、持株会社が銀行を孫会社としている場合や、持株会社と他の子会社が共同で銀 行の発行済株式総数の一〇〇分の五〇を超える数の株式を所有している場合などであっても、当該持株会社は銀       パこ 行を子会社とする持株会社となる。銀行持株会社が必ずしも銀行を直接の子会社としている必要はない。  改正独禁法によると、子会社の株式の取得価額の合計額の会社の総資産の額についての割合が一〇〇分の五〇 を超える会社が、持株会社に該当することになるので、銀行を子会社とする持株会社の総資産の中で、子会社で ある銀行の株式の取得価額が大きな割合を占めていることは必要としない。  持株会社の総資産に占める子銀行の株式の割合がごくわずかな場合でも、銀行を子会社とする持株会社となる。  銀行特例法による銀行持株会社設立については、三角合併制度といわれる方法で、既存の金融機関が実質的に 子会社となって持株会社を設立するものがある。これによれば、A銀行がその子会社B会社を設立する、B会社

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がその子会社C銀行を設立する、C銀行がA銀行を吸収合併する、A銀行の株主にはC銀行の新株を割当て、こ の株式をB会社に現物出資する、B会社はA銀行の株主にこの現物出資に対する新株を発行する。以上のように、 既存のA銀行は新設のC銀行と合併することにより消滅し、その子会社であったB会社がC銀行の持株会社とな り、A銀行の株主は銀行持株会社であるB社の株主となる。この制度が三角合併制度といわれる。さらに、既存 の金融機関が消滅し、新たな金融機関が発生することを逆三角合併制度といい、既存の金融機関が存続する形態       パら の合併制度を正三角合併制度という。こうした三角合併制度は、米国の制度を導入したものとみられている。  銀行法二条一一項にいう銀行持株会社に該当するためには、単に、銀行を子会社とする持株会社であるだけで は要件を満たしたことにはならず、監督当局による銀行法五二条の二第一項の認可を受けていることが必要とな る。これは、整備法一条からみても、銀行持株会社は、銀行を子会社とする持株会社で金融再生委員会の認可を 受けたものをいい、株式会社でなければならない︵銀行法五二条の三第二項︶。  銀行持株会社については、一九九八年の金融システム改革法により、銀行に関する規定整備に対応した法整備 が行われた。すなわち、銀行持株会社グループに係る大口信用供与など規制の整備、銀行持株会社の子会社への 保険会社などの追加、連結ディスクロージャーや連結自己資本比率規制などの対象への関連法人などの追加、貸 借対照表、損益計算書および説明書類の公衆への従覧の義務化などが規定された。  銀行持株会社に係る合併などの認可については、銀行法五二条の一九において規定している。銀行持株会社を 当事者とする合併については、それが銀行持株会社を存続とするものである場合、当該合併の相手方次第では、

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銀行持株会社に関する法規制について 子会社である銀行の経営管理のあり方またはグループとしての財務の状況が大幅に変化することも考えられるの で、その健全性を確保する観点から金融再生委員会の認可に係らしめることとされている。銀行持株会社を当事 者とする営業の譲渡または譲受けについても金融再生委員会の認可を必要としている。  銀行法五二条の一九に規定する認可が必要とする合併とは、吸収合併のうち、一以上の銀行持株会社を合併の 当事者とし、そのうちの一つが当該合併後も銀行持株会社として存続するような合併である。新設合併による場 合の銀行持株会社の設立については、銀行を子会社とする持株会社の設立をしようとする場合の認可︵銀行法五 二条の二第一項︶が必要となる。また、非銀行持株会社同士の合併で、存続会社が銀行を子会社とする持株会社 になるケース、また、銀行持株会社と非銀行持株会社の合併で、非銀行持株会社が存続会社として銀行持株会社 になるケースなどでは、存続会社は、銀行を子会社とする持株会社になろうとする会社として、金融再生委員会 の認可を受けなければならない︵銀行法五二条の二第一項第三号、施行令一六条の二第二号︶。  銀行持株会社を当事者とする営業の全部または一部の譲渡または譲受け︵当該営業の譲渡または譲受けをした 銀行持株会社が、その譲渡または譲受け後も引続き銀行持株会社であるものに限る︶は、政令で定めるものを除 き、金融再生委員会の認可を受けなければ、その効力を生じない︵銀行法五二条の一九第二項︶。銀行持株会社が 営業の譲渡などの結果、銀行を子会社とする持株会社でなくなる場合については、銀行法五三条三項第二号の届 出が必要となり、非銀行持株会社が営業譲渡の結果、銀行を子会社とする持株会社になる場合は、銀行を子会社 とする持株会社になろうとする会社として、金融再生委員会の認可を受けなければならない︵銀行法五二条の二

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第一項、施行令一六条の二第三号︶。銀行持株会社を当事者とする営業譲渡または譲受けのうち、傘下の銀行に対 する経営管理のあり方やグループの財務状況などに大した影響を与えないものについては、これを認可の対象と する必要性に乏しいので、こうした営業譲渡または譲受けは、政令により認可の対象から除外することとされて いる。施行令一六条の三では、譲渡または譲受けの対象となる資産または負債の額が、いずれも銀行持株会社の 総資産または総負債の額の二〇分の一以下であるものについては、金融再生委員会の認可を要しないものと定め     パ ロ られている。  なお、金融機関についての営業譲渡については、検討すべき問題点もある。金融機関の破綻処理方法の一つに 営業譲渡がある。破綻金融機関が保有する貸出資産や預金などの負債を受け皿金融機関に譲渡するものである。 過去の事例では、九七年の拓銀破綻の際には、中央信託と北洋銀行に営業譲渡された。また、米国リップルウッ ド・ホールディングスヘの譲渡が決定した長銀の場合は、長銀の株式をリップル社が買取る株式譲渡方式を採用 している。破綻金融機関は、営業譲渡すると資産や負債がゼロとなり、最終的に清算される。資産の所有者名義 なども書換えられるため、受け皿機関に事実上吸収される形になる。株式譲渡の場合は、受け皿機関の子会社と して法人格が存続する。しかし、破綻に伴う預金者の混乱を回避することを考慮すると、経営不振に陥った金融 機関について、債務超過などが明確になる前でも破綻処理の準備に着手できるようにして、破綻後の営業譲渡な どを迅速化する必要がある。処理の遅れから債務超過額が膨らみ、結果的に預金者負担が重くなる可能性もある。  改正商法は、株式交換および株式移転制度を設けた。これは、独禁法九条は、持株会社の創設方法について定

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銀行持株会社に関する法規制について めたものではなく、銀行特例法による持株会社創設方法は創設後の法律関係の処理が複雑であり、円滑な手続を 設定する要請があった。そこで持株会社の設立などの組織再編が円滑に行われるために、株式交換および株式移 転の制度の新設となった。従来、持株会社を創設する方法として、三つの方式があった。すなわち、旧法の枠内 によると、ω抜穀方式とされる、持株会社をめざすA会社が子会社︵B会社︶を設立し、これに対して現物出資、 事後設立あるいは営業譲渡により営業一切を譲渡する、⑧買収方式とされる、持株会社となるべきA会社を設立 し、この会社が既存のB会社の株主から株式を公開買付などにより取得する、⑥第三者割当増資方式とされる、 持株会社となるべきA会社を設立し、この会社が既存のB会社の株主に対して第三者割当増資を行い、B会社の 株式の現物出資を求める、などの方法である。  ①の抜殻方式は、現物出資は商法一六八条の二のいわゆる変態設立事項にあたるため、商法一八一条に基づき 裁判所に検査役の選任を求めなくてはならず、その調査に費用と時間が掛かり、さらに、財産について個別的に 譲渡手続をとらなければならないという問題がある。ωの買収方式は、買付けに応じない株主が出ることが考え られ、完全子会社の設立を達成できないおそれがある。⑥の第三者割当増資方式は、ωの方法による場合と同じ く買付けに応じない株主が残存して完全子会社設立の目的を達成できないおそれがある。このように旧法の枠内 で持株会社を設立しようとすると、実務上も親会社は大胆な改善策も打ち出せず、発展性に困難が伴う。そこで、 簡易な持株会社を設立するための制度が要望され、米国で既に採用されている株式交換制度が導入され、商法の      パ レ 改正となった。これらの点については後述する。

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︵1︶ 木下信行編﹁改正銀行法﹂︵日本経済新聞社、一九九九年︶二八∼一一九頁。 ︵2︶ 木下・前掲書、一一八頁。 ︵3︶ρ内Φξ俸↓げoヨ℃ωoPO・壱oH蝕9ω曽民○浮Rげ琶器ωω︾ωωo。壁け一。β3一● ︵4︶ 木下・前掲書、一五二頁。 ︵5︶ 元木伸﹁平成一一年商法改正案の概要﹂企業会計八月号四九頁以下。改正商法の法律案要綱については、法務省  民事局参事官室﹁商法等の一部を改正する法律案要綱の概要﹂ジュリスト、一九九九、三、一五、一四〇頁以下。   金融持株会社については、川浜昇﹁金融持株会社について﹂ジュリスト、一九九七、一一、一五、三七頁以下。馬  淵紀壽﹁金融持株会社︵改訂版︶﹂東洋経済新報社、一九九七年一一月。 二 改正独禁法の要点と持株会社制度

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 改正独禁法九条一項は、﹁事業支配力が過度に集中することとなる持株会社となってはならない﹂とし、また 同条二項は、﹁会社︵外国会社を含む。以下同じ。︶は、国内において事業支配力が過度に集中することとなる持 株会社となってはならない﹂とする。同条一項は新たに持株会社を設立する場合、二項は事業会社が持株会社に       パこ 変わる場合を扱っている。いずれの場合も、持株会社が禁止されるのは、﹁事業支配力が過度に集中することと なる﹂場合である。言い換えれば、この状態にならなければ、持株会社は違法にならない。それでは、﹁事業支 配力が過度に集中する﹂とは何かについて、改正独禁法九条五項は、以下のように規定する。﹁第一項および第 二項において事業支配力が過度に集中することとは、持株会社および子会社その他持株会社が株式の所有により 事業活動を支配している国内の会社の総合的事業規模が相当数の事業分野にわたって著しく大きいこと、これら

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銀行持株会社に関する法規制について の会社の資金に係る取引に起因する他の事業者に対する影響力が著しく大きいことまたはこれらの会社が相互に 関連性のある相当数の事業分野においてそれぞれ有力な地位を占めていることにより、国民経済に大きな影響を 及ぼし、公正かつ自由な競争の促進の妨げとなることをいう。﹂。ここには、禁止する持株会社の三つの類型が掲 げられている。﹁持株会社および子会社その他持株会社が⋮⋮著しく大きい﹂、﹁資金に係る⋮⋮影響力が著しく 大きい﹂、﹁これらの会社が⋮⋮それぞれ有力な地位を占める﹂場合である。第一類型は、大企業グループ型ある いは財閥型と呼ばれ、旧財閥復活の禁止をイメージしている。第二類型は、大金融グループ型と呼ばれ、大きな 都市銀行が中心になった、いわば金融資本主義による独占を内容とする。第三類型は、わが国の巨大メーカーが 関連業界をしたがえ、巨大企業グループを結成する場合を対象としており、大金融機関が他の金融機関を支配す る場合も含む、とした。  改正独禁法は、監視手続を設け、持株会社、子会社の総資産額の合計が、三千億円を超える場合には、毎事業 年度終了後にこれらの会社の事業報告を求めることとし、また、この場合に該当する持株会社の新設について届 出を求めている︵九条六項・七項、施行令八条﹀。また、公正取引委員会は、﹁事業会社が過度に集中することとな る持株会社の考え方﹂︵九条ガイドライン︶を公表し、三つの類型にあたる場合を具体的に示している。九条およ び九条ガイドラインは、﹁持株会社﹂概念に加えて、これより広い﹁持株会社グループ﹂︵九条五項︶および﹁実 質支配子会社﹂︵九条ガイドライン︶の概念を導入し、実質子会社を、持株会社比率二五パーセント超五〇パーセ ント以下で持株会社比率が最も高い会社と、持株会社グループを、持株会社+子会社+実質支配子会社と定義し、 10

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この持株会社グループについて事業支配力の過度集中をもたらすか否かを判断する。  九条ガイドラインは、第一類型について、持株会社グループの総資産合計額︵但し、金融会社は除く︶が一五 兆円を超え、かつ、五つ以上の主要な事業分野のそれぞれにおいて、別々の総資産三千億円超の大規模な会社を 有する場合とする。ちなみに、一五兆円という規模は、三菱、住友などの六大企業集団の最小規模より低いレベ ルであり、旧財閥や六大企業集団の持株会社化を念頭においている。第二類型は、総資産額が一五兆円を超える 大規模な金融会社︵この基準を満たすのは都市銀行と上位の生命保険会社といえよう︶と金融または金融と密接 に関連する事業以外の事業分野で総資産額三千億円超の大規模な会社を有する場合である。持株会社グループが 金融会社と一般事業会社の両方をもつ場合であり、金融会社による産業支配に備えたものである。第三類型は、 相互に関連性を有する五以上︵産業の規模が大きい場合は、会社の有力性の程度により三以上︶の主要な事業分 野︵出荷額六千億円超︶のそれぞれにおいて、別々の有力な会社︵シェア一〇パーセント以上または売上高上位 三位以内の会社︶を有する場合である。持株会社グループが自動車メ:カー、鉄鋼、タイヤなどの関連メーカー をもつような場合である。また、六大企業集団がグル:プ内の複数の金融会社を金融持株会社として再編する場 合も、第三類型に該当する場合がありうる。逆に九条ガイドラインは、次の四つを事業支配力の過度集中をもた らさない持株会社としている。ω純粋分社化の場合、ωベンチャー・キャピタル︵定義は九条の二第一項一〇号︶ の場合、㈹金融会社の相互参入の場合︵新規設立に限る︶、㈲持株会社と子会社の総資産合計額が三千億円以下          パら の場合︵小規模の場合︶、などである。 11

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拙稿﹁独占禁止法第九条の改正と持株会社解禁﹂東洋第三五巻第一〇号一四頁以下。 泉水文雄﹁持株会社﹂法学教室一九九九年七月号一了三頁。谷原修身﹁独禁法九条の改正と問題点﹂。 三 独禁法改正による持株会社設立解禁と商法改正  平成一一年八月、﹁商法等の一部を改正する法律﹂が成立し、一〇月施行となった。平成九年六月の独禁法改 正により、これまで禁止されてきた純粋持株会社設立が解禁され、経団連などが商法上の整備を強く要望してい た。今回の商法改正は、株式交換と株式移転の両制度が柱である。経営の効率化や国際的な競争力の向上をめざ して企業グループを形成するために有効な法的手段とされる。両制度とも、子会社の株を保有して経営を指揮す       と る持株会社︵完全親会社︶と完全子会社の関係を円滑に創設できるようにした。  改正商法は、持株会社の創設がその最終目的であるが、その目的達成のために完全子会社の設立が考えられ、 その方法として株式の交換が考えられる。なお、完全親会社および完全子会社とは、互いに親子関係にある会社 において、その持株比率が一〇〇パーセントであるものをいう。  これまでの持株会社の設立方法としては、商法に基づくものとして、ω抜け殻方式、ω買収方式、㈹第三者割 当増資方式、という三つの方法と﹁銀行持株会社の創設のための銀行等に係る合併手続の特例に関する法律﹂に よるものがある。  改正商法は、完全親会社を創設するため、持株会社設立の方法として株式交換と株式移転の二つの方法を挙げ 12

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ている。  株式交換については、﹁会社はその一方が他方の発行済株式の総数を有する会社となるため、株式交換をする ことができる﹂とし、その効果として、株式交換によって完全子会社の株主の有するその会社の株式は株式交換 契約書に記載されている株式交換の日に完全親会社となる会社に移転し、その完全子会社となる会社の株主は、 その完全親会社となる会社が株式交換に際して発行する新株の割当てを受けることにより、その日にその会社の 株主となるとしている。このようにわが国の商法は株式交換契約という方法によって完全親子会社関係の創設を するという制度を認めることにした︵商法三五二条一項︶。  株式交換契約書については、会社が株式交換をするには当事者会社が株式交換契約書を作成し、株主総会の承 認を受けなければならないとしている︵三五三条一項︶。株式交換契約書の記載事項︵三五三条二項︶は、親会社 の定款変更︵同条二項一号︶、完全親会社となる会社が発行する新株の種類等︵同条二項二号︶、完全親会社となる べき会社の資本に関する事項︵同条二項三号︶、親子会社創設交付金の内容︵同条二項四号︶、株式交換契約書の承 認総会の開催日︵同条二項五号︶、株式交換の日︵三五三条二項六号︶、株式交換の日までに利益または中間配当を するときはその限度額︵同条二項七号︶となっている。  三五三条二項の株式交換契約書には現物出資に関する条項がなく、組織法上の問題のみが取り上げられている。 これは、株式交換制度について現物出資と捉えるか企業結合の一種と捉えるかにより、株式交換契約書の内容が 異なる点には注目する必要があるであろう。株式の譲渡制限と親子会社制度の創設については、完全親会社とな 13

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銀行持株会社に関する法規制について るべき会社に関して株式譲渡制限の制度が採用されており、完全子会社となるべき会社でその旨の制度を採用し ていない場合には、この会社の株式交換契約書の承認決議は株式譲渡制限制度を採用するのと同じ決議方法をと らなければならない。この決議方法は三四八条に定められている。完全親会社となる会社が株式交換に際して、 定款を変更して、株式の譲渡制限を使用する場合にも、同様である︵三五三条三項∼七項︶。  株式交換に必要な書類の事前開示︵三五四条一項︶、株主の買取り請求権︵三五五条︶、新株の発行に代わる自 己株式の移転︵三五八条︶、完全親会社の資本増加の限度額は、完全親会社となる会社の資本は株式交換の日に 完全子会社となる会社に現存する純資産額に、その会社の発行済み株式の総数に対する株式交換により、完全親 会社となる会社に移転する株式の数の割合を乗じた額から次の金額を控除した額を限度としている。つまり、子 会社の純資産額︵公正なる会計慣行にしたがい算出された額︶のうち、親会社が有していた子会社の株式を除い た残りの株式の割合に乗じた額から親子会社創設交付金および新株発行に代えて引き渡した自己株式の額︵会計 帳簿に記載した額の合計額︶を限度として親会社の資本を増加することができる。さらに上記の増加の限度額が 増加する資本の額を超える分は資本準備金として積み立てることを要することになる。たとえば、親会社が子会 社の株式を既に四分の一保有している場合には、子会社の純資産額に四分の三を乗じたものが親会社の資本の増 加分となるということである。この場合において、株式交換に際して額面株式を発行していた場合には、一株の 金額に発行した株式の総数を乗じた額は必ず資本に組み入れなくてはならない︵三五七条︶。  簡易株式交換制度の要件は、完全親会社が株式交換に際して発行する新株の数が親会社の発行済み株式の総数 14

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の二〇分の一を超えない場合︵この場合においては、親会社が保有する自己株式で子会社の株主に移転される株 式を含む︶には、株式交換契約書の承認総会を開催する必要がない。但し、完全子会社となる会社の株主に金銭 の支払いを決めた場合において、その金額が最終の貸借対照表により完全親会社となる会社に現存する純資産額 の五〇分の一を超えるときは、この制度を利用することはできない︵三五八条一項︶。  株式交換契約書の記載事項︵三五八条二項︶、株主に対する公告又は通知︵三五八条三項、四項、五項︶、株主の 株式買取り請求権︵同条五項︶、簡易株式交換手続によれない場合︵同条八項︶、事後開示手続、株券失効の手続 ︵三五九条二項V、事後開示手続︵三六〇条一項︶、完全親会社の取締役等の任期︵三六一条︶、株式の併合に関する 規定の準用︵三六二条︶、株式交換無効の訴え︵三六一二条︶、を定めている。  株式移転による完全親会社の設立については、株式移転とは一般的に株券に表彰される株主たる地位の移転を いう。改正商法にいう株式移転とは、完全親会社設立のための株式移転をいうものといえる︵三六四条一項︶。  株式移転の効果︵三六四条二項︶、株主総会の承認事項︵三六五条︶、株式交換制度の規定の準用︵同条二項︶、 株式移転に関する書類等の事前開示︵三六六条︶、完全親会社の資本の限度︵三六七条︶、株式移転無効の訴え ︵三七二条︶、親会社の株主による株主総会議事録等の閲覧︵二四四条、二六〇条四項、二六一二条四項︶。  資産の評価については、時価主義を採用している。金銭債権・社債・国債等の評価は、金銭債権をより高い代 金で債権金額で買い入れたときは、相当の増額をすることができ、市場価格のある金銭債権については時価を付 することができる。また、社債、国債、株式のうち、市場価格のあるものは原則としてその取得価額を付し、時 15

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銀行持株会社に関する法規制について 価が著しく低く、かつ、それが容易に回復しないような状況が認められるときは、時価を付さなければならない。 また、市場性のない場合は、取得原価主義をとることを原則とするが、債権金額より低い金額でこれを買い入れ たとき、その他、相当の理由があるときは相当の減額をすることができる︵二八五条の四第一項、三項、第二八五 条の五第二項︶。株式の評価︵二八五条の六第二項、三項︶、利益配当及び中間配当の制限︵二九〇条六号︶。その他、        パら 親会社の子会社の調査権、検査役の子会社調査権限などが規定されている。 ︵1︶ ︵2︶  元木伸﹁平成一一年商法改正案の概要﹂企業会計、一九九九年八月号四九頁以下。川井潤﹁株式交換制度による 持株会社設立の実務的課題﹂ジュリスト、一九九九、五、一−一五、一九九頁以下。法務省民事局参事官室﹁親子 会社法制等に関する問題点﹂︵平成一〇年七月八日︶。前田庸﹁商法等の一部を改正する法律︵案︶の解説︵上︶﹂ 商事法務一五一七号。  改正商法の法律案要綱については、法務省民事局参事官室﹁商法等の一部を改正する法律案要綱の概要﹂ジュリ スト、一九九九、三、一五、一四〇頁以下。弥永真生﹁親子会社関係創設のための株式交換と企業会計上の問題点﹂ 商事法務一五〇三号。同﹁資産の時価評価の導入について﹂企業会計、一九九九年八月号、六九頁以下。元木伸・ 前掲、五二頁以下。 16 四 持株会社解禁と産業再生法  平成二年八月六日、﹁産業活力再生特別措置法︵産業再生法︶﹂ 租税特別措置法﹂が成立し、同年一〇月一日施行となった。 と関連した税制優遇措置を盛り込んだ﹁改正

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 独禁法改正で持株会社が解禁され、産業再生法が成立したので、分社化手続きが大幅に簡略化される。  産業再生法は、企業の再編を促す事業の再構築策のほか、国の委託研究で発生した特許権を企業側に与えるこ とやベンチャー企業の育成を狙った金融支援を三本柱としている。  中小・ベンチャー企業の支援策は九月に施行した。いずれも二〇〇三年春までの時限措置である。  租税特別措置法の一部改正は、設備廃棄に伴う欠損金の繰り越し期間の延長などの税制優遇措置が盛り込まれ ている。  産業再生法は、国内の事業再編の促進・創業者支援・技術開発の活性化の目的に沿った経営に取り組もうとす る企業に対して、同法と同時に成立した租税特別措置法の一部改正に盛り込まれた税制優遇措置などが受けられ る仕組みである。このため、優遇策を受けたい企業が、それぞれの業界を主管する大臣に二〇〇三年三月末まで に﹁事業再構築計画﹂を提出し、国はこの計画が適当か否かを﹁認定基準﹂をもとに判断する。産業再生法は、 認定基準について、﹁生産性を相当程度向上させる﹂などの七項目を定めている。しかし、これだけでは表現が あいまいであるため、省令をもって総資産に対する利益率︵ROA︶や、従業員一人当たりの付加値額などがど れだけ改善が見込めるかといった数値目標を設ける。さらに、﹁事業再構築計画が雇用に影響する場合には雇用 者の意見を十分聞く﹂との付帯決議が採択されている。努力目標以外に、認定基準の中に﹁関係労働組合などと 必要な協議を行う﹂との表現が盛り込まれる。  産業再生法などでは、企業が債務や不採算分野を切り捨てたり、新事業を効率的に興すための施策が盛り込ま 17

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銀行持株会社に関する法規制について れた。金融機関などが企業の抱える債務を株式の株式の形で受け取る﹁債務の株式化﹂ 伴って企業が増資する際の登録免許税を軽減し、システムを使いやすくする。 五 持株会社と連結納税制 制度について、株式化に  連結納税は、グループを構成する各企業の利益と損失を合計し、算出されたグループ全体の利益に課税する制    パと 度である。  子会社が親会社に製品を売るなどのグループ内取引で生まれた利益には課税されず、グループ外に販売して初 めて課税対象になる。さらに、黒字会社の利益が赤字会社の損失で相殺される結果、減税効果が生じる。フラン スでは、連結納税が一ニパーセントの税収減につながったと試算されている。  企業グループを一つの企業とみなして課税する連結納税の利点は、特に企業を分社化する場合に現われる。現 行制度であると、黒字部門を引き継いだ会社の税負担は重くなるが、赤字部門の継承会社と合算する連結納税で あれば、ほぽ同様な税負担で済むことになる。分社化による経営責任の明確化と、意思決定のスピードアップが、 日本企業が国際競争力を高めるために不可欠と判断されており、それが連結納税の導入を経済界が求めている理 由ともなっている。独禁法の改正で持株会社が解禁となり、また産業再生法が成立し、分社化手続きが大幅に簡 略化され、企業会計も平成一二年三月期からは連結決算が中心となる。しかし、企業法制、会計、税制の三条件 がそろわない限り、分社化経営を軌道に乗せることは難しい。そこに連結納税の導入が急がれた理由がある。連 18

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結対象にする子会社の範囲、中小企業の軽減税率など会社の規模で税率が違う制度の運営方法、個別企業ごとに 限度額が設けられている減税措置の取り扱い、法人事業税など地方税への連結適用の可否など、急ぎ検討すべき 項目は多岐にわたる。勿論、連結納税によって、合法的租税回避が大規模に行われることのないようにしなけれ ばならない。たとえば、巨額の累積損失のある企業を買収し、連結対象に加えれば、納税額を大幅に圧縮するこ とができる。大企業では、子会社に孫会社を加え、千社を超える連結を組むことが予想される。末端の孫会社ま で、監視できる税務調査体制を整えることも重要であるし、納税回避を許さない制度にする必要がある。 ︵1︶ 中西敏和﹁株式交換制度の実務的対応﹂企業会計、一九九九年入月号、六八頁。 六 米国における銀行持株会社法の概要

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 米国における銀行持株会社に対する直接的な法規制は、一九五六年の銀行持株会社法︵ωき犀=○一島轟 Oo目冨昌︾9がある。同年、米国連邦議会は、連邦準備制度︵日富司9段巴勾ΦωR奉︶に対し、複数銀行持 株会社︵目巳亭訂爵ぎ巨凝8ヨ冨艮8︶についての全面的な規制権限を与えた。この連邦準備制度は、 一九 一三年の連邦準備法︵閃8R巴胃8震話︾9︶により、より効果的な銀行監督の仕組みなどをうちたてることを 目的として、銀行規制業務の重要な地位を占めるものであった。そして、一九七〇年には、単一銀行持株会社 ︵9中9艮ぎ窪轟8日B良霧Vや複数銀行持株会社を問わず、全ての銀行持株会社に対して、権限をさらに拡 19

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銀行持株会社に関する法規制について 張した。  一九五六年銀行持株会社法は、銀行持株会社とその子会社による非銀行業務が一部を除いて禁止された。しか し、同法は、州にまたがって業務展開をする銀行持株会社の禁止に主眼がおかれていたので、傘下に一つの銀行 しか抱えていない単一銀行持株会社を通じて証券業務を行うことが可能であった。  一九五六年銀行持株会社法は、一九六六年に一部改正され、銀行持株会社による銀行の買収と銀行持株会社同 士の合併に対しても、一九六六年銀行合併法が銀行合併に対して適用しているのと同一の規範が適用されるよう になった。  一九五六年銀行持株会社法の主要な問題点は、銀行業に関連のある分野に対する銀行持株会社の活動範囲に関 するもので、論争のかなりの部分が、同法四条︵C︶項︵8︶号に集中した。この条文が、銀行持株会社に対し て、銀行の株式および一定の他の組織体の株式のほかに、連邦準備制度理事会の命令などによって、銀行業ある いは複数の銀行を経営または支配する事業に、正当に付随している業務と同じく、特段に密接な関係を有するも        パき のであると認定した会社の株式などの保有を許可していた。  一九七〇年銀行持株会社法︵↓ぽ閃き犀鵠o姦轟Ooヨ冨昌︾9︾旨①民ヨ①段ω︶の立法過程で改正された四 条︵C︶項︵8︶号の解釈権限を連邦準備制度理事会に与えることにより、これらの問題は解消した。抜本的改 正法といえる同法は、連邦法規制の対象を複数銀行持株会社に限定せず、一九三三年以来初めて単一銀行持株会 社を複数銀行持株会社と同じレベルで連邦法規下においた。以後、両者を区分する法的根拠はなくなった。同法 20

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は、これらの銀行持株会社が営みうる非銀行業務の範囲、すなわち、所有・支配しうる非銀行子会社の業務範囲 にも修正を加えた。容認可能な非銀行業務︵もR巨隆亘①昌9−げき評一轟8江く置8︶に関する新しい認定基準が 導入され、それ以外の非銀行業務については、一九六八年六月三〇日を基準日とする一〇年間の既得権が付与さ  パこ れた。同法により、銀行持株会社はまず、進出先の州法により明示的に許容されている場合に限り、本拠州以外 の州の銀行の取得を許容されることとされた。また、その非銀行子会社の業務範囲が銀行業務に密接関連・正当 付随業務に限定されることとなった。これは、二段階のテストからなる。第一は、当該業務が一般に﹁銀行業務 に密接に関連する業務﹂かどうかである。連邦準備制度理事会の﹁レギュレーションY﹂が許容される定型的な 業務を規定している。第二は、当該業務が個別事例において﹁銀行業務に正当に付随する業務﹂かどうかである。 その判断に当っては、﹁不当な資源集中、競争減退、不公正な競争、利益相反や不健全な銀行業務といった起こ りうる悪影響を上回る、利便性、競争促進や効率性向上といった公共の利益を合理的に期待できるかどうか﹂が        パゑ 考慮に入れられる。  米国の銀行持株会社については、一九三三年銀行業法︵↓ぼ一Wき匹轟︾9︶について触れなければならない。 それは、多くの銀行業務改革を盛り込んだ総括的立法という点で画期的なものであったからである。同法は、グ ラス擁スティーガル法︵9器ω−ω房品巴一︾9︶と呼ばれている。同法は、銀行持株会社に対する連邦準備制度に よる規制のための条文を含んでいた。同法で銀行持株会社の規制機関となった連邦準備制度理事会︵↓箒 ω8巳9のoく①旨oお9跨Φ司8R巴園①ωR<①ω器9ヨ︶は、当然のことながら、銀行業と﹁商業﹂の分離に敏 21

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銀行持株会社に関する法規制について 感な連邦銀行規制機関となった。一九三三年法では、銀行の議決権付株式の五〇パーセントを超えて直接・間接 に所有する法人を銀行持株会社と定義していた。このため、多くの場合、持株比率をわずかに下げる操作をすれ ば、銀行持株会社とはみなされず、したがって、連邦法規制を免れることができた。また、同法は、連邦準備制 度加盟銀行だけを対象としていたために、銀行持株会社はその銀行子会社を非加盟州法免許銀行に転換させれば、 連邦規制の適用を免れることができた。同法二〇条は、連邦準備制度加盟銀行が証券業務に﹁主として﹂従事す る法人などとの間で系列関係を持つことを禁止している。したがって、銀行持株会社は、証券業務に﹁主として﹂ 従事しない系列証券会社を通じて証券業務の拡大を行うことが可能であった。  一九八五年に、銀行持株会社シティコープが連邦準備制度理事会に対して、傘下に非適格証券業務に﹁主とし て﹂従事しない証券子会社を設立したい旨の申請を行った。その後、多くの銀行持株会社が同様の申請を行った。 そして、連邦準備制度理事会は、一九八七年四月から五月にかけて、銀行持株会社の証券子会社に対して、CP、 一般財源債、資産担保証券、モーゲージ関連証券の引受け・ディーリング業務への参入を認可した。この証券子 会社は、﹁セクションニ○子会社﹂と呼ばれている。その際、連邦準備制度理事会は、銀行持株会社とセクショ ンニ○子会社、銀行持株会社傘下の銀行とセクションニO子会社の間に二八項目の厳格なファイアー・ウォール を設定した。但し、この認可は、これらの証券業務からの収入は証券子会社の総収入の五パーセント未満で、そ れぞれの証券の国内シェアの五パーセント未満とするという前提で認可された。非適格証券業務に﹁主として﹂ 従事しない証券子会社しか﹁グラス・スティーガル法﹂では認められていないという判断からである。米国証券 22

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業協会は、この認可が﹁グラス・スティーガル法﹂違反であるとして裁判所に提訴したが、一九八七年六月には        ハゑ 連邦準備制度理事会の主張が認められた。  金融業務の自由化を目指す制度改革の論議が、一九九九年に本格化し、米国一〇六議会においてリーチ下院銀 行委員長は包括的な金融制度改革法案を同年一月六日に提出した。これとは別に、持株・子会社方式線引をする 一九九九年現代化法案が上院銀行委員会を同年三月四日に、下院銀行委員会法案は、三月一日に通過した。両院 の案は、銀行に証券業務、保険業務、投資銀行業務を認め、一九三〇年代に業務の垣根を設けた﹁グラス・スティー ガル法﹂を廃止するという大枠は同じであるが、垣根撤廃を子会社方式で進めるか、金融持株会社方式を主にす るか、などの点で開きがあった。上院案は、総資産一〇億ドル以下の銀行に限って子会社業務を認め、他は金融 持株会社とした。一方、下院案は、総資産一〇〇億ドル未満の銀行には、子会社方式での参入を、一〇〇億ドル 以上の銀行には金融持株会社方式を採用した。また、少数人種への融資など、社会政策上の観点から金融機関に 義務付ける業務も両院案で違い、上院案は比較的緩く、下院案は厳しい内容となっている。  一九九九年一〇月二二日、グラス・スティーガル法の規定を撤廃する﹁金融サービス現代化法案﹂について、 米国議会両院と米国財務省の調整が決着し、基本合意に達した。この結果、米国金融機関の相互参入や、垣根を 超えた合併に対する最大の障壁が取り除かれ、米国金融界の規模の拡大が加速される見通しとなった。  現代化法案は、銀行業務の自由化が主眼であるが、具体的には次のような要点となっている。ω銀行は、一定 の範囲内の子会社︵子会社の資産合計が銀行本体の総資産の四五パーセント以下が五〇〇億ドル以下︶を通じて、 23

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銀行持株会社に関する法規制について これまで禁止されていた証券引受などの業務に参入できる。③銀行は、持株会社を通じて、保険業務を行うこと ができる。⑬銀行は、持株会社で不動産開発業務ができる、などを柱としている。これまで、こうした主要点が 合意に達していたが、低所得者層地域に対する一定の融資を義務付けた地域再投資法︵CRA︶について縮小を 求める共和党と推持・拡大を主張する民主党の対立が続いていた。また、参入方式に絡む監督権限の対立から、 子会社方式を推す財務省と持株会社方式を望む連邦準備制度理事会の調整が難航していた。六六年ぶりの規定撤 廃により、制度面では、日米欧がほぼ同じになり国際的に異業態間の金融再編が展開されるものとみられる。  現代化法は現状の追認との見方もあるが、独占禁止法と並んで規模を拡大するうえでの足かせがはずれる意義 は小さくない。法制面では、幅広い金融業務を提供できる﹁ユニバーサルバンク﹂が認められている欧州はもと より、九六年からのビックバンで自由化が一気に加速した日本より遅れていた。 24 ︵1︶         4  3  2  カーター・H・ゴレムベ、ディヴィツ・S・ホーランド著、馬淵紀壽訳﹁アメリカの銀行制度﹂︵日本経済新聞 社、一九八一年︶。馬淵紀壽﹁アメリカの銀行持株会社︵一九九一年︶。匡曽浮$ωUΦ妻讐二冨旨きα一Φき艮85 ↓箒℃歪αΦ旨一巴国畠三勉賦go胤ω9 。昌屏ミ︵一〇漣︶。  馬淵紀壽﹁金融持株会社︵改訂版︶﹂東洋経済新報社一九九七年、一二四頁。川浜昇﹁金融持株会社について﹂ ジュリスト、一九九七、一一、一五、三七頁以下。  馬淵・前掲書、九三頁以下。谷原修身﹁アメリカの銀行持株会社に対する法規制﹂経済法学会年報一七号︵一九 九六︶。  相沢幸悦﹁アメリカの金融持株会社の実態と日本の金融持株会社のあり方﹂企業会計一九九九年八月号、三二頁。

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い①惹昼d嘗巴国OoB需自江9d呂Rω8鉱o昌一。①○︷浮①ωき犀=o一9轟Ooヨ冨昌>9逡切き匹轟じい ミ。 。.刈。 。刈︵一8刈︶。U餌く律ω。=。一ご邑ンぎ9国ΦひQ琶畳o霧譲曽ω↓o。ω自8Φ裟仁一白冨ω艮﹃U。8αΦ・︷∪8・ω一什 一拐貫き8“︾霞ω8蔓9浮①早o暮一Φωo︷跨Φqωの評爵一鑛H且島叶曙ぼ匪。一。。 。。ω四鼠田ξ一8。ω﹂8。 。’ U一旨鼠.甲評冨9巨鼠OF竃&R巨N一轟国き8巨ω協け①Bψ一。。。 。”。 。﹂oぎ甲↓昌一〇さ冨o昌①富蔓勺○一一昌 劉四仁一①ω讐 一■OOO Q“Q o。 七 実務界における金融持株会社の動向

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 一九九九年は、大手銀行・保険の企業統合が続いている。同年八月には、統合を目指す第一勧業銀行、富士銀 行、日本興業銀行の三行が、合併ではなく持株会社の設立という道を選択した。三行の貸出金などを合計した総 資金は、一四一兆円にのぼり、世界的にもドイッ銀行を超える巨大金融グループの誕生となる。持株会社は、改 正商法の株式交換制度を利用して、二〇〇〇年一〇月に設立する。三行は、持株会社を設立後、二〇〇二年春を めどに三行のそれぞれの業務機能を分解し、大きく分けて小口取引、法人取引、市場・海外業務の三つの銀行子 会社と証券の計四つの子会社に再編・統合する計画を示した。持株会社方式を選択したのは、子会社の整理統合 や新規事業を行う新会社の設立が容易で、スピードのある経営が可能とされるからであろう。しかし、そのため には、持株会社の首脳が欧米流に強力な指導力を発揮することが不可欠である。経営の実権をだれが握るかでも、 三行が対立することが予想され、三行の提携が第二段階の機能別再編・統合に進むには、乗り越えるべき課題は 多いと考える。 25

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銀行持株会社に関する法規制について  一九九九年一〇月、東海銀行とあさひ銀行は、二〇〇〇年一〇月に共同で金融持株会社を設立したうえで、二 〇〇一年一〇月をめどに業務を地域別、機能別に再編・統合すると発表した。持株会社は、株式移転か株式交換 の方法で設立し、株式の交換比率は一対一をめどに検討している。持株会社設立後、一年かけて業務を再編成し、 首都圏、中部圏、関西圏の三つの地域銀行子会社と、海外業務や市場業務を行う国際資金証券銀行の計四つの銀 行子会社を設立する。さらに、現在、別々に所有している信託銀行子会社や資産運用会社なども合併したうえで、 持株会社の傘下に収めるとする。  一九九九年一〇月、大手損害保険会社の三井海上火災保険、日本火災海上保険、興亜火災海上保険の三社が一ー 二年後をめどに金融持株会社を設立し、経営統合することで基本合意したことを明らかにした。三社統合の最大 の特徴は、銀行の枠を超えて損保の大同団結に発展したことである。  銀行持株会社は、子会社の経営管理を行うこと、およびこれに付帯する業務のほかには、他の業務を営むこと ができない。これは、銀行持株会社と保険持株会社は、純粋持株会社ということになる︵整備法一・四条、銀行 法五二条の六第一項、保険業法二七一条の五第一項︶。銀行持株会社の子会社の範囲は、銀行、長期信用銀行、外国 為替銀行、証券会社、銀行業を営む外国の会社、証券業を営む外国の会社、銀行業もしくは証券業に従属し、付 随し、もしくは関連する業務を営む会社、新たな事業分野を開拓する特定の会社、または、これらの会社を子会 社とする持株会社に限られる︵整備法一条、銀行法五二条の七第一項、銀行法施行規則三四条の八︶。保険持株会社 は、保険会社を子会社とする持株会社で金融再生委員会の認可を受けたものをいい、株式会社でなければならな 26

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い︵整備法四条︶。保険持株会社は、事前認可制の原則、事後認可などの特例が定められている︵整備法四条、保 険業法二七一条の三、二七一条の四、保険業法施行令一二七条の二、保険業法施行規則二一〇条の三以下V。保険持株会社 は、生命保険会社、損害保険会社、証券会社、保険業を行う外国の会社、証券業を営む外国の会社、保険業もし くは証券業に従属し、付随し、もしくは関連する業務を営む会社︵保険業法施行規則二一〇条の七第一項、第二項︶、 あらたな事業分野を開拓する特定の会社︵保険業法施行規則二一〇条の七第三項、第四項、第六項、第七項︶、また は、これらの会社を子会社とする持株会社以外の会社を子会社としようとするときは、あらかじめ、金融再生委 員会の承認を受けなければならない︵整備法四条、保険業法二七一条の六第一項︶が承認を得れば一般事業会社を 子会社化できることになっており、申請があったときは金融再生委員会は原則として承認する︵整備法四条、保 険業法二七一条の六第三項︶。なお保険持株会社には、銀行持株会社に対するような株式取得の制限について整備        ハよ 法は規定していない。これは、整備法上、一般事業会社を子会社にすることができるための措置とみることがで きる。  損害保険会社が持株会社のもとに事業統合することの整合性は、同一業界での競争力強化を目指すもので銀行 と全く関係がないのであれば矛盾はないものと考えられる。しかし、より検討する諸点もあり、時間的にも性急 というわけにもいかないであろう。保険会社の事業再編といっても、個人保険、企業保険など市場別に再編する にしても保険契約の移転は保険業法の改正が必要になる。その時期に税制など、法制が整っているか見極める必 要がある。 27

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銀行持株会社に関する法規制について  問題は、銀行の再編によるグループ化などである。公的資金注入など、不良債権処理問題の焦点をぽかすが如 きになされる合併と、銀行持株会社設立は政策的にも検討の余地を残している。銀行本来の使命は何であるかを 問直す必要もある。  銀行持株会社が認められれば、経営組織の選択の幅が広がり、また、破綻金融機関の救済などの処理も取組み やすくなることもわかる。しかし、経営の健全性確保と投資者、預金者保護はもっとも重要であり、監督上の措 置を含め、慎重に検討を要する。全銀協の倫理憲章にみられる銀行の社会的責任と公共的使命を再確認し、独禁 法の精神に沿った企業活動をとることが求められる。 ︵1︶ 長谷川俊明﹁戦略的企業法務﹂︵経済法令研究会、一九九九年︶七一ー七五頁。 28

おわりに

 銀行持株会社について論究を試みたが、改正独禁法による純粋持株会社の原則解禁から派生する問題はまこと に複雑である。改正銀行法の精神もそうであるが、金融機関の健全性は欠くことは許されない。金融の全面的な 自由化は、当然のごとく、投資者・預金者の完全なる保護が保障されなければならない。  川浜昇先生が論文﹁金融持株会社について﹂︵ジュリスト一二一三量二七頁︶のなかで述べておられるように、 米国の連邦銀行持株会社規制や各州の保険持株会社規制が精緻な規制枠組みに基づき、膨大な規制例の集積をも

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つことを考えると、わが国の実情からも、学究者のほとんどが無関心であるというのは非常に問題である。  ともすれば、金融関連の法律問題は、避けて通りたいと思う者が多いのは、現在でも、わが国の法学者にあり がちな偏見であって、時として論評などで﹁ハゥツウモノ﹂と椰楡するのはその表われである。  今回、多くの資料を参照したが、思うようにまとめて引用するまでに至らなかった。また、参照しなければな らなかった︾旨津霊ω梓い鋤名国ききooFお8国9︵≦崔冨日○缶o冒窃︶などが原稿作成までに問に合わなかっ た。今後また、これらの問題に挑戦していくことにしたい。  特に、銀行法について、水島廣雄先生の御指導を仰ぎながら勉強を続けていきたいと考えている。ここに、水 島先生の学恩に感謝し、敬意を表したい。

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参照

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