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保育園2歳児クラスに見られる模倣の特徴 : 仲間関係の発達との関連に注目して

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Academic year: 2021

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保育園 2 歳児クラスに見られる模倣の特徴

―― 仲間関係の発達との関連に注目して ――

竹 下 千 春 *・菅

眞佐子 **

An Analysis of Imitations Observed among Children

in a 2-year-old Class of a Day Nursery

―― Focusing on the Development of Peer Relationship ――

Chiharu TAKESHITA and Masako SUGA

キーワード:仲間関係の発達、2〜3 歳児、相互模倣、テーマの共有、保育者の役割 問 題 と 目 的 保育所や幼稚園は、生まれて間もない子ども たちが同年齢の仲間や親以外の大人である保育 者と出会い、様々な経験を積み重ねながらその 後の自分の基礎となる部分を形成していく場で ある。人間関係においても、とりわけ乳幼児期 の経験がその後の人生に与える影響は大きいと 言えるだろう。 無藤 (1997) は、人と人との関係を「人は同 じ場所にいて、表情や身振り・動作を真似し合 うことが人との間の関係の基本だということで ある。」と述べ、対人関係形成の基盤が模倣に あることを指摘している。模倣はまた、ヒトが 種として固有に持つユニークな行動であること が近年数多く報告されており (井上 (中村)・外 岡・松沢,1996、Tomassello, Kruger, & Ratner, 1993、明和,2005)、コミュニケーションや相 互理解、仲間意識の構成といったヒトの発達過 程全般においてそれが果たしている役割につい

ても、認知科学、脳科学の領域まで巻き込んで 議論が盛んに行われることとなっている (di Pellegrino, Fadiga, Fogassi, Gallese & Rizzolatti, 1992、Meltzoff & Gopnik, 1993、川 田,2005、 佐伯,2008、2010)。 子どもの発達における模倣の役割については、 これまでも Piaget から始まる認知発達研究の 文脈において議論が長く行われてきた (Piaget, 1945) が、このような模倣への学際的な関心の 高まりもあって、近年では、幼児期初期の子ど もたちの仲間関係の構築についても模倣の果た す機能との関連で議論されることが増加してき ている (砂上・無藤,1999、森,1999、鯨岡, 2006、鈴木,2007、2009、瀬野,2010、2011)。 そこで本研究では、ヒトが種として固有に備 えている模倣という行動が、人間の人格形成の 基盤となる乳幼児期においてどのような意味を 持つのかという点について検討していきたい。 具体的には、子どもたちが実際に集団生活を 送っている保育現場においてどのような模倣が 表れているのか、観察を通して明らかにし、そ れらの模倣が人との関わりや遊びの深まりなど、 子どもたちの生活の中でどのような役割を担っ ているのかという観点から探っていきたい。 * 京都市立崇仁保育所 ** 滋賀大学

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方 法 1.研究手続き 1 ) 研究協力者 京都市内の私立保育園 2 歳 児クラス全 35 名 (4 月〜7 月生まれの高 月齢児クラス 17 名、8 月〜2 月生まれの 低月齢児クラス 18 名)。 2 ) 観察期間 2012 年 5〜7 月、2012 年 11 月 初旬〜11 月下旬、の期間。期間中、おお むね週 1 回観察を行い、合計で 10 回の観 察を行った。 3 ) 観察方法 自由な遊びの場面を中心に、 子ども同士や保育者との関わりが見られ た部分に注目して主な動きやことばをメ モする形で筆記記録した。状況によって は、デジタルカメラで写真やショート ムービーの撮影をし、記録に残した。観 察終了後、できるだけすぐにそれらの記 録を合わせメモを拡充し、フィールド ノーツとして残した。観察者は子どもが 関わってきたときのみ最小限応じる立場 をとるように努めた。 2.事例の抽出 全 10 回のフィールドノーツから、他者の言 動が何らかの形で再現される「模倣」が起こっ ていると思われる場面 (一人の子どもが延滞模 倣をしているように見られた姿から、子ども同 士もしくは保育者の関わりによって模倣がクラ ス単位に発展しているものまで)、合計 86 件を 抽出し事例とした。 結 果 と 考 察 1.観察された模倣の種類と特徴 本研究では、特定の模倣のタイプに焦点化し て観察するのでなく、自由な遊びの場面を中心 に子ども同士や保育者との関わりを記録し、そ の中から、何らかの形で他者の言動を再現して いると認められる「模倣」の事例を抽出しよう とした。そのため、抽出された全事例 86 件に は、この年齢の子どもにみられるいろいろな種 類の模倣が併存していた。 そこで、観察された事例についてまず大きく 2 種類に分けて整理することにした。一つは子 ども同士の間で模倣が起こっているもので、保 育者が直接介入していない場面において、側に いる友だちの言動をまねしたり、あるいは延滞 模倣として生活の一部を再現したりするような 姿であった。これらは低月齢クラス、高月齢ク ラス共に数多く見られた。また、もう一つは、 保育者のかかわりが何らかのきっかけとなって あらわれる模倣である。こちらは前者のタイプ と比べると低月齢クラスでの発現が多いように 思われた。 またさらにそれぞれの種類の模倣についてみ たとき、前者の、子ども同士の模倣については、 誰かが始めた遊びが他の子どもを巻き込むよう にして拡がっているものから、ままごとやごっ こ遊びのように何らかのテーマが共有されてい ることによって同じ言動が見られるものまで、 大きく分けて 4 つのタイプの模倣があるととら えられた。後者の、保育者の関わりがきっかけ となって表れる模倣についても、保育者の言動 そのものがモデルとなって子どもたちに模倣さ れていくものから、保育者のちょっとした一言 がきっかけとなって子ども間での模倣が拡がっ ていくものなど、大きく分けて 4 つのタイプが 認められた。 以下に、これら 8 つのタイプの模倣について 代表的な事例をあげて示す。事例中の下線部分 は、子ども間での模倣のきっかけとなっている 言動や、現象として模倣があらわれていると思 われる箇所、下線部分は保育者の言動が子ども たちの模倣のきっかけとなっているように思わ れる箇所を示している。また、一つ事例のなか に複数のタイプの模倣が重なってあらわれてい る場合も多く、各事例をどれかのタイプだけに 限定して分類すること自体が困難であった。そ のため、以下で事例数に言及されている場合に は重複する場合も含めて計数されている。なお、 事例中、高月齢児クラスの子どもは「A 子」、 低月齢児クラスの子どもは「a 子」のように、 大文字・小文字で区別して表記している。

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1 ) 子ども同士での模倣 ① 誰かが始めた遊びや行動が、伝染するよう に他の子どもにも拡がっていくタイプ 〔事例 1 積み木タワーの周りを走る〕 2012. 6. 27 2 歳児 高月齢クラス 場所:保育室 お昼寝から起き、おやつを食べた後、好 きな遊びを見つけて保育室で遊んでいる。 A 子・B 男・C 男:積み木をタワーのよ うに積みあげ、2 つできたタワーの周りを 3 人で走り出す。C 男が前を走る A 子に追 いつくと、A 子が C 男を振り返って笑う など、3 人ともよく笑っている。 D 男:積み木タワー作りには参加してい なかったが側におり、3 人が走り出すと輪 に混ざって一緒に走り出す。ニコニコしな がら楽しそうに走る。 E 子:キャーキャーと笑いながら積み木の 周りを走っている 4 人の側にやってきて、 しばらくの間「お部屋は走りませーん」と 言い続けるが、止まる様子のない 4 人の輪 に走って近づいてくる。そのまま輪の間に 割り込んで一緒に走り出す。 F 男:4 人が走り回る前からタワーのすぐ 側で保育者の膝に座り絵本を読んでもらっ ている。絵本を読み終わると、走り回る 4 人の間を縫うように通って本棚に絵本を直 しに来る。保育者の方へもどろうと歩き始 めるが、再び 4 人の間を通り始めると、ラ ンニングするような足取りになって、確認 するように保育者の方を見た後そのまま走 る輪に加わっている。「待ってー待ってー」 と言って笑いながら前を走る子どもの後を 追いかける。 しばらく 6 人でぐるぐると走っている。 A 子、B 男、C 男は、積み木を上に上に積み 上げようとして立ち上がっていき、タワーが出 来るとそのままタワーの周りをぐるぐると歩き 始め、徐々に走り出す。すぐに近くにいた D 男も輪に加わり一緒に走り出すが、4 人ともニ コニコと笑いながらとても楽しそうな様子であ る。その後 E 子がやってきて、「お部屋は走り ません」と大きな声で繰り返し 4 人に向かって 言うが、走り回ることに夢中になっている 4 人 は止まることなくぐるぐると走り続け、驚いた ことに今度は E 子もその輪に加わって走り始 める。そこに偶然 4 人が走っている間を通り抜 けようとした F 男までが加わって、子どもた ちは大きな渦となって走る。「走る」という行 為が幼児にとって慣れ親しんだ行為であり、そ れ自体が楽しいことであるだけでなく、同じこ とをして楽しむ仲間がいることでよりわくわく するものとなっていくことが感じられる。鯨 岡・鯨岡 (2004) は、子どもは五感 (身体)を 通して力動感を感じており、遊びはこの力動感 の変化に基づく感性的な体験を中心とした活動 であると述べている。そしてその力動感は子ど もから子どもへと容易に感染、浸透していくと 述べている。この事例の子どもたちの姿には、 その場の楽しい雰囲気や動きのリズム、「そわ そわ」「どきどき」「わくわく」するような気持 ちの高まりが身体に染みこんできている様子が 感じられ、まさに、鯨岡・鯨岡 (2004) が述べ る「力動感が自分の身体に浸透してきて、いつ のまにかそれをしてしまう」姿が表れていると いえよう。 このようなタイプの模倣は、観察された全 86 事例中 25 事例と最も多かった。そしてそれ らに共通して見られるのは、1 事例を除いた全 ての事例において、同じ動きをするという形で 模倣があらわれていることであった。特に、誰 かが走ると他の子どもも走る、積み木を放り投 げると同じように放り投げる、というように比 較的ダイナミックな動きである場合が多いよう に感じた。また、その動きがたくさんの子ども たちに拡がって、大きなまとまりでの模倣に発 展しやすいという点でも特徴が認められた。 ② 生 活 場 面 の 一 部 (着 替 え、食 事 な ど) が 「延滞模倣」として再現されているタイプ 〔事例 2 包丁を使ってトントン切る〕 2012. 7. 11 2 歳児 低月齢クラス 場所:保育室 17 時頃、保育室で自由に遊んでいる。 ままごとコーナーで遊んでいる子どもが多

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い。 a 男:最初は牛乳パックで作られたままご と用の椅子に座って、ままごとのコップを 使ってままごとのジュースを飲んでいる。 立ち上がって流しの方へ行く。まな板の上 に何も乗せず、包丁でトントン切る。布で 作られた芋をまな板にのせて包丁で切って いる。芋を鍋に入れ再び何も乗っていない まな板をトントン叩く。ままごとコーナー には他の子どももいるがこの時は 1 人で遊 んでいた。 その場で見たことや聞いたことではなく、別 の時間に別の空間で見たことをそこで表現して いる、延滞模倣に分類されるような模倣をこの タイプとした。この事例で、a 男はコップから ジュースを飲むふりや、まな板に食べものをの せて包丁で切るふりなど、日常生活の中でなじ みある行為を「ふり」によって再現している。 この「ふり」あるいは「見立て」という行為は、 その行為の表象が形成され、自分の頭のなかで そのイメージを思い描くことができるように なってくることで表れてくる (岡本,1982、小 野寺,2009)。一般的には、この「ふり遊び」 が徐々にテーマ性を持った集団でのごっこ遊び へとつながっていくと捉えられているが、この 事例の時期には子どもたちの間でのテーマの共 有にはまだ至っていない。この事例を観察した とき、ままごとコーナーではたくさんの子ども が遊んでおり、エプロンや三角巾を身につけ、 お皿に食べものをのせたり、コップに飲み物を 注いだり、流しの前に立ったりと、それぞれが せっせと動き回っていた。しかし、コーナーに やってくる子どもは入れ替わり立ち替わりして おり、みんなでテーマを共有するごっこ遊びと いうよりは、思い思いのふり遊びをしている子 どもの集まりであると感じられた。 このクラスでは、この事例の他にもマットに 並べた人形に布団を掛けて、寝かしつけるよう にトントンしたり、何も入っていないコップに スプーンを入れてかき混ぜ、食べるような仕草 をしたりと「見立て」「ふり」が遊びに取り入 れられている場面が数多く観察されている。普 段自分が大人からしてもらっていることや、日 常生活の中での何気ない動作なども、子どもた ちにとっては楽しい遊びになっているようであ る。そう考えると、生活経験の豊かさが遊びに も反映しているのかもしれない。また、そうし た遊びから得た経験を手がかりに実際の生活場 面でできること、やってみたいことを増やして いっているとも考え得るのではないだろうか。 このタイプの模倣は、次に述べる③タイプと 重なって表れることが多かった。ごっこ遊びな ど、イメージやテーマが遊びの中の重要なポイ ントとなっている場合には、こうした「ふり遊 び」もよく展開されているように感じられた。 ③ ごっこ遊びなど、テーマの共有に伴って模 倣があらわれているタイプ 〔事例 3 ロッカーにのぼる〕 2012. 6. 27 2 歳児 高月齢クラス 場所:保育室 お昼寝から起き、おやつを食べ終わった 後、各々好きな遊びを見つけて遊んでいる。 G 子・H 男・I 子はそれぞれごっこ遊び用 のスカートを履いて一緒に遊んでおり、こ の数分前に 3 人揃って別の子どもたちの遊 びに参加するなど、何か共通のテーマを 持って遊んでいる様子である。 G 子:窓際のロッカーの方へ行き、隙間 に足を入れてロッカーによじ登り窓の外を 見る。 H 男:G 子がロッカーにのぼり始めたのを 見て、同じように隙間に足をかけよじ登る。 I 子:G 子、H 男と同じようにロッカーに のぼる。(この時、3 人で何かを話してい たのかは不明。) その後ロッカーから降りて、押し入れ下の 人形置き場、ままごとスペースの方に移動 する。H 男が移動すると G 子・I 子も後に 続いて一緒に移動してくる。 H 男:牛乳パックの長椅子に座って電車 に乗っている設定で遊ぶ。 G 子・I 子:H 男の隣に並んで座る。 (何かを話しているが、内容は不明。) H 男:椅子から立ち上がり別のところへ 行こうと提案する。

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G 子・I 子:H 男に続いて移動する。 遊びのテーマそのものがそこにいる子どもた ちにすでに共有されている場面で見られる模倣 のタイプである。「自分たちは○○ごっこをし ている」という思いがすでに共通のものとして 子 ど も た ち の 間 に あ り、だ か ら「自 分 も A ちゃんがしていることと同じことをする」と いった様子がうかがわれる。 このタイプの模倣も 86 事例中 25 事例あり、 ① タイプと同様に数多く見られた。しかし、 ① と比較すると、このタイプでは同じ言葉を 発している割合がより多い。また、① の模倣 は、誰かが「〇〇しよう」と提案したり、遊び に誘ったりしているわけではなく、誰かが始め たことを別の誰かが真似をして、いつの間にか 同じ遊びが共有されている。しかし、この③タ イプの模倣では、事例 3 に示されるように、G 子の後に続いてロッカーにのぼる、H 男に続 いて椅子に座る、H 男が遊びを提案する、と いった、ある程度構造化された遊びの中での、 リーダー・フォロワー的な関係の萌芽が認めら れる。模倣のタイプが変わっていくことが、同 じ遊びをしている仲間関係のなかでの互いのと らえ方自体にも変化を与えていくことがうかが われる。 本研究では、こうした意図的なテーマを子ど もたち同士が共有し遊びを進めていく姿は高月 齢クラスでより頻繁に観察され、低月齢クラス では観察時期後半になってから頻繁に観察され るようになった。保育者の介入がなくても子ど もたち同士で同じイメージを持って遊びを展開 していくことは、高月齢クラスにおいて、低月 齢クラスよりも早く可能になってきていること が示唆される。 ④ その他 (真似をしようとするが拒否され失 敗しているもの、トラブルから言い合いに なっているなかで模倣がみられるものなど) 〔事例 4 c ちゃんこれやってるから嫌だ〕 2012. 7. 4 2 歳児 低月齢クラス 場所:保育室 パズルで遊んでいる子どもたち。c 子と d 子は 2 人で同じパズルをしている。 b 子:「〜(不明)」と何かを言いながらパ ズルのパーツを c 子たちの方へ差し出す。 c 子:「c ちゃんこれやってるから嫌だー。」 d 子:「d ちゃんこれやってるから嫌だー。」 それぞれ b 子の方は見ないで、2 人で一緒 にやっているパズルを続ける。 観察中、まねしようとするが拒否される場面、 ものの取り合いなどで同じことばを言い合う場 面、「こんなことできるか?」と同じようにす ることを他児から催促されて行う場面などもあ り、それらをこのタイプに分類した。 この事例では、c 子と d 子は二人で一つのパ ズルをしており、b 子の要求に対して共に拒否 するような姿を見せている。拒否する際には d 子が c 子と同じ言葉を言ったり、c 子の気持ち に共感したりしている様子が見られ、同じセリ フを同じように言うことで、2 人の仲間意識が 高まっているかのように思われる。もともとこ の事例が観察される前から二人は保育室の中で 一緒に遊んでおり、少し前には部屋の中では走 らないように保育者から一緒に注意されている。 それがきっかけになり、パズルをする前から二 人の仲間意識は強まっていたとも思われる。強 い仲間意識から同じセリフで他児の行動に同じ ように反応をし、またそのことが仲間意識を いっそう強めることとなっているように思われ る。 2 ) 保育者の関わりがきっかけとなって表れる 模倣 ⑤ 保育者による何らかの関わりがきっかけと なって、特定の子どもの言動や遊びが拡 がっていくタイプ 〔事例 5 ぬいぐるみが「えーん、えーん」〕 2012. 6. 20 2 歳児 低月齢クラス 場所:保育室 17 : 25 頃、保育室での自由遊びを切り上 げて、部屋を片付けホールへ遊びに行くこ とになる。部屋の中は、ままごとや電車や ぬいぐるみなどたくさんのおもちゃが出さ れている。保育者が片付けを促し始め、子

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どもたちも徐々に片付けを始める。 b 子:マットに寝かせてあったぬいぐるみ を持って、丸テーブルでパズルを片付けて いる保育者のところへ行く。 保育者:b 子が持ってきたぬいぐるみを受 け取り、そのぬいぐるみをじっと見た後耳 を近づけて、「えーん、えーん……あら、 お人形さん泣いてはるわ。でも〇〇さん家 (b 子の名字) の b ちゃんがちゃんと連れ て帰ってくれはるから大丈夫。b ちゃん、 なおしてきてあげて。」と言って b 子にぬ いぐるみを渡す。 b 子:ぬいぐるみを持ったまま別のぬいぐ るみを取りに行く。 e 男:マットにあったぬいぐるみを保育者 のところへ持ってくる。 保育者:e 男のぬいぐるみを受け取り「えー んえーん。あら、こっちも泣いてはる。迷 子になっちゃった? △△さん家 (e 男の 名字)の e 君に連れて帰ってもらいましょ うね。」と言って e 男にぬいぐるみを渡す。 d 子:マットに置いてあった別のぬいぐる みを保育者のところへ持ってくる。 保育者:d 子のぬいぐるみを受け取り、b 子・e 男にしたようにぬいぐるみに向かっ て「遊ぶだけ遊んだのに、ほったらかし? あ か ん な ぁ。」と 話 しか け、d 子 に「d ちゃん片付けてあげてくれる?」とぬいぐ るみを渡す。 f 男:ままごとのコップを口にくわえ静か に丸テーブルに近寄ってくる。 g 子:最初は保育者の側で見ているが、自 分もぬいぐるみを取りにその場から離れ マットの方へ行く。 a 男:大きな声で「えーんえーん」と言い ながら保育者のところへぬいぐるみを持っ てくる。保育者がぬいぐるみを受け取ると すぐにその場を離れまたマットの方へ行き 別のぬいぐるみを取りに行く。 b 子:ぬいぐるみをたくさん抱えて「えー んえーん」と言いながら保育者のところへ 来る。 e 男:ぬいぐるみを両手に持って保育者の ところへ来る。大きな声で「えーえーえー えーん」と言いながらぬいぐるみを差し出 す。 d 子:片付けてあったと思われるままごと 用の枕やおむつを取り出してきて、保育者 の側にきて「えーんえーん」と言っている。 〈中略〉 a 男:再び大きな声で e 男と同じように 「えーえーえーえーん」と言いながら別の ぬいぐるみを持ってくる。保育者 A が d 子に話しかけており反応出来ないでいると ぬいぐるみを置いてまたマットの方へ行く。 d 子:ぬいぐるみを片付けに行く。 e 男:両手に持っていたもう片方のぬいぐ るみを出してきて「えーえーえーえーん」 と言って保育者に差し出す。気付いてもら うまで「えーえーえー」と言い続ける。顔 もしかめて自分も泣いているような顔をし ている。 保育者:「何々? え! ずーっと待ってん のに、すぐ片付けてくれはらへんの?」 g 子:「えーえーえーえーん」と言いなが ら両手いっぱいにぬいぐるみを抱えて保育 者 A のところへ来る。 a 男:枕を持って「えーえーえーえーん」 と保育者のところへ来る。 保育者:「はいはいはいはい」と言いなが らぬいぐるみを e 男に返す。a 男の持って きた枕を受け取り「あ! これも a ちゃん に片付けて欲しいってー」と渡そうとする。 e 男:保育者から渡されたぬいぐるみを片 付けに行く。 g 子:「えーんえーん」と言いながらぬい ぐるみを差し出し動かすが他の子どもの声 が大きく気付かれない。 a 男:保育者の差し出す枕は受け取らずに その場に落ちていたままごと用の布のおに ぎりを拾い「えーえーえーえーん」と保育 者に渡そうとする。 〈中略〉 b 子:大きな声で「えーえーえーえーん」 と言いながら布のキュウリを差し出す。 この事例では、b 子が保育者のところへぬい ぐるみを持ってきたとき、保育者は片付けて欲

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しいという思いを持ちながらもそれを直接伝え るのではなく、ぬいぐるみの気持ちを代弁する ような言動で b 子に関わった。ぬいぐるみに 耳を近づけ、「なになに……」と言いながら、 本当にぬいぐるみから話を聞くかのような「ふ り」をしたのである。b 子は、保育者のその振 る舞いに興味をひかれ、保育者の意図に反して、 もう一度同じことをしてもらおうと、ぬいぐる みを片付けにはいかず新たに別のぬいぐるみを 取りに行く。これに続いて、保育者のその対応 を見ていた e 男が b 子と同じようにぬいぐる みを拾って保育者のところへ持ってきはじめ、 保育者が同じように対応をすると、何度もぬい ぐるみを持ってやってくる。それ以降、同じよ うにぬいぐるみを持って保育者のところへ来る 子どもがどんどん増えていき、そのうちに、a 男は保育者がしていた様子をまねするように、 自分で「えーえーえーえーん」と言い始める。 すると、a 男のその姿をみた e 男、b 子が今度 は同じような口調で「えーえーえーえーん」と 言いながらぬいぐるみを差し出しはじめ、a 男 が大きな声でアピールしているのに負けじと、 大きな声を出して保育者に近づいていく。また、 流れのなかで、始めは一つずつ持って行かれて いたぬいぐるみは、徐々にその数が増え、事例 中盤頃からは b 子が一度に 3 つのぬいぐるみ を抱えていたり、e 男が片方のぬいぐるみを差 し出した後、すぐにもう片方の手に持っていた ぬいぐるみを差し出したりするような姿になっ ていく。さらに興味深いことに、b 子や a 男は 「泣かない」おにぎりやきゅうり、d 子は片付 けてあった枕やおむつなどまでわざわざ引っ張 り出してきて、「えーえーえーえーん」と泣か せながら持ってくる。 「人形」だから「泣いている」というイメー ジの中での遊びだったものが、保育者と子ども の間で見立てが繰り返されるなかで、保育者と の見立ての共有がますます楽しくなり、力動感 がどんどん高まり、その中で「見立て」自体も 拡大を見せている。 このように、ひとりの子どもへの保育者の関 わりがきっかけとなって、同じ言動が他の子ど もたちにも拡がっていくタイプの模倣は 24 事 例観察され、しかも、そのうちの 22 事例は低 月齢児クラスでの観察であった。保育者が遊び を提案したり、展開したりしているような場面 でよく見られたが、保育者自身がその遊びに直 接関わっていない場合でも、例えば誰かを注意 したことがきっかけとなってその子どもの言動 が拡がっていく、というような場面も見られた。 保育者を軸として、子ども同士が共通の思いを 持ち、同じ行動をすることでつながり始めてい ることがうかがわれる。 ⑥ 保育者の言動そのものが子どもたちに模倣 されているタイプ 〔事例 6 電車にバイバイ〕 2012. 6. 20 2 歳児 低月齢クラス 場所:保育室 保育者がままごと遊びをしていた子ども たちに「電車見にいこっか」と提案し、保 育 者 が 部 屋 の 角 に 座 っ て「電 車 来 る か なー?」と待っていると、ままごとや他の 遊びをしていた子どもたちがかばんを持っ て電車を見ようと集まってくる。この日は 午前中、実際に散歩で近所の駅まで電車を 見に行っている。 f 男: 保育者の方を見ながら長くつなげ た電車を走らせてくる。 保育者:f 男が電車を走らせてくると「あ、 電車来た来た。バイバーイ」と言いながら 電車に手を振る。 d 子、h 男:保育者と同じように電車に向 かって手を振る。 i 男:同じく電車で遊んでおり、f 男が保 育者たちの前を過ぎていった後で、電車を 走らせて来る。 保育者:i 男の電車が走って来るのを見て 「来 た 来 た」と 言 い な が ら 拍 手 を す る。 ちょうど電車が目の前に来た時、「何両編 成? あ! 赤電車! 緑電車!」と言いな がら手を振る。 j 男:保育者の「何両編成?」に対してか、 「j (名前)ー、j (名前)ー、2 個」と言いな がら、指で 2 を作って保育者に見せに来る。 保育者:j 男の手を触りながら「2 つ? 2 つも来たの?」と言う。〈中略〉

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d 子:「1・2・3・4・5・6・7・8・9……」 と言いながら過ぎていく電車を指さしなが ら数えている。 保育者:過ぎていく i 男の電車に「バイ バーイ」と言いながら、d 子に「何両やっ た?」と聞くが d 子は答えない。「わかん なかった? 早すぎてわかんなかった?」 と言って「1・2・3・4……」と数え「7 両 編成です。」と言う。その後再び「来るか な〜次〜」と言いながら次の電車を待つ。 〈中略〉 d 子:保育者が i 男の電車に向かって「バ イバーイ」と言ったのを聞いて「バイバー イ」と言う。保育者に「何両やった?」と 聞かれるが答えられず。「わかんなかっ た?」と言われ頷いている。 h 男:保育者の「来るかな?次?」を聞い て e 男が電車を線路に乗せたのを見て、 「あー! 来た来たー!」と線路をのぞき込 み指さす。 d 子:h 男の「来た来た」を聞いて「来た 来た」と言いながら指さす。 保育者:子どもたちの「来た来た!」を聞 いて「来た!」と言う。〈中略〉 e 男の 電車が過ぎていく時に「バイバーイ」と嬉 しそうに手を振る。 過ぎていく電車を見ている子どもたち。 〈中略〉 保 育 者:b 子 の 電 車 に 反 応 し「1 両 編 成ー!」と拍手し、「バイバーイ」と手を 振る。 k 男・l 子:保育者が手を叩くのを見て同 じように拍手する。 a 男:b 子の後をついて電車を走らせに来 る。保育者を見ながら笑っている。 保 育 者:a 男 の 電 車 に「あ っ! ま た 来 た!」と言い、電車を走らせる a 男や線路 のほうを見ながら「カーンカーンカーン カーン」と言って、手でグーパーを作って 右手と左手と交互に閉じたり開いたりしな がら踏切のようなことをする。 子どもたちも保育者と同じように、グー パーを作って「カーンカーン」とやってい る。 h 男:「1・2・3・4・5」と指さしながら電 車の両数を数えて、保育者の方を見る。 保育者:数える h 男に「4 つ 4 つ! 4 両 編成です。」と言う。 d 子:「バイバーイ」と手を振る。 子どもたちも保育者と同じように、グー パーを作って「カーンカーン」とやってい る。 b 子:「バイバーイ」と手を振る。 本事例が観察される少し前から、かばんを 持って保育室の中を歩きまわる d 子と l 子の姿 が見られていた。保育者が「どこに行くの?」 と尋ねると、d 子が嬉しそうに「電車見に行く の」と答える。その後、徐々にかばんを持って 歩いたり、走ったりする子どもが増えてきた頃、 保育者はままごとのコーナーに流し台やテーブ ルなどのままごとのセットを準備し、ままごと 遊びに発展するような環境を作り出している。 また、保育者自身が「お母さんたち帰ってこな いわ」などと言うことで、遊びのテーマを確立 していっているような印象も受けた。本事例は、 そうして子どもたちと保育者がままごと遊びを している中で、保育者が「電車見に行こっか」 と提案したことから展開されていく。実際、こ の日は午前中に近くの駅までお散歩に行って電 車を見てきており、その経験が手がかりとなっ て d 子が「電車見に行くの」と言ったり、保 育者が「電車見に行こうか」と提案したりして、 遊びにつながっているのではないかと考えられ る。また、ちょうどすぐ隣では大きくつなげた 線路で電車を走らせて遊んでいる子どもたちも おり、保育者がきっかけを作ったことで、電車 で遊ぶ子どもたちとままごとをしていた子ども たちとが結びつき、クラス全体が一つの遊びで つながったように見えた。走ってくる電車を見 ている子どもたちは、初めは、保育者のとなり に座って見ているという様子だったが、保育者 が嬉しそうに「電車来た来た。バイバーイ。」 と手を振ったり、拍手をしたりすることで、次 第に自分も手を振り始め、拍手をし始める。ま た、過ぎていく電車には保育者と同じように 「バイバーイ」と言うようになり、電車が走っ てくると嬉しそうに「来た来た」と言いはじめ

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る。途中からは、子どもたちの方から保育者に 向かって「ご飯食べて待っとこ」と提案したり、 走ってきた電車を指さして「また来たでー」と 伝えたりするような姿も見られる様になってい く。保育者が何度も何度も繰り返し同じことを 言い、楽しそうにする姿を見て、子どもたちも 遊びの中に引き込まれていくようである。また、 電車を走らせてくる子どもは、保育者たちに 「電車来た来た」と言ってもらうのを期待して いるかのように、繰り返し走らせて来ては得意 そうな顔をして通り過ぎていく。まさに保育者 が遊びの舵取り役となってそこでの子どもの姿 を捉え、つぶやきを拾ってはつなぎ合わせると いうことを繰り返し行う中で、子どもたちが主 役になりながらも、テーマのある遊びへと引っ 張っていっている様子が感じられた。このクラ スではこの時期、保育者が中心にありながらも、 子ども同士の遊びがつながり始めている様子が 読み取れるエピソードが、本事例以外にもたく さん見られている。 このような事例における模倣は、遊びが展開 するなかで保育者が示す動作やことばそのもの を子どもたちが模倣していくという点に特徴が 認められ、「保育者の言動そのものが子どもた ちに模倣されているタイプ」としてまとめた。 このタイプは、また、次の⑦タイプと重なって いる場合もあり、絵本の読み聞かせ場面で保育 者と一緒に絵本のセリフを読んだり、保育者の 動きをまねしたりする姿も見られた。 ⑦ 絵本の読み聞かせや保育者とのふれあい遊 びなどの場面で模倣が見られたタイプ 〔事例 7 とりかえっこ〕 2012. 7. 4 2 歳児 高月齢クラス 場所:保育室 昼寝から起き、おやつを食べて保育室で 自由に遊ぶ。保育者の前に集まって、明日 のプールに備えての説明を聞いたあと、絵 本「とりかえっこ」を読む。。 保育者 A:「あそびにいってくるよ ぴ よ」「ぴよぴよ」 保育者 A:「ねえねずみさん、なきごえ とりかえっこしようよ。ぴよ、ちゅう。」 鳴き声のところではそれぞれ動物を指さす。 「ぴよぴよ」ねずみを指さす。 子ども (声を合わせて):「ぴよぴよ」 保育者 A:「ちゅうちゅう」ひよこを指さ す。 子ども:「ちゅうちゅう」 保育者 A:「ねえぶたさん、なきごえ と り か え っ こ し よ う よ。ち ゅ う、ぶ う。」 「ちゅうちゅう」ぶたを指さす。 子ども:「ちゅうちゅう」 保育者 A:「ぶうぶう」ひよこを指さす。 子ども:「ぶうぶう」 保育者 A:「ねえかえるさん、なきごえ とりかえっこしようよ。」 〈中略〉 保 育 者 A:「ね え い ぬ さ ん な き ご え とりかえっこしようよ」「けろ」ひよこを 指さす。 子ども:「けろ」 保育者 A:「わん」犬を指さす。……⑩ 子ども:「わん」 保育者 A:「けろけろ」犬を指さす。…… ⑪ I 子:「けろ」I 子の後ろに座る別の保育者 B を振り返る。 保育者 A:「こっちは?」ひよこを指さす。 ……⑫ C 男:「ぴよ」 A 子(?):「ぴよ」 I 子(?):「わん!」 保育者 A:「おっ」子どもたちの方を見な がら嬉しそうに。 J 男:「わん!」 G 子:「わん!」 K 男:「わん!」 保育者 A:「わん、わん」 保育者 B:「すごーい。よう分かってる。」 I 子:「わんわん」 他の子ども:「わん」 保育者 A:「にゃあーう」「たべちゃうぞ」 I 子:「にゃー」 他の子ども:「にゃーあ」 I 子:「たべちゃうぞ」後ろに座る保育者 C を振り返る。

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J 男:「たべちゃうぞ」身体を伸ばして前 で本を読む保育者 A の膝に乗りかかる。 保育者 A:「うーわんわん」 I 子:「うーわんわん」 L 男・J 男・他の子ども:「わんわん」「わ んわん」 保育者 A:「にゃあうーおどろいたー」 I 子:「おどろいたー」後ろに座る保育者 C を振り返る。 この事例では、絵本を読む保育者のセリフを 子どもたちが真似する様子が顕著に表れている。 この事例以外にも、絵本の読み聞かせ場面で保 育者と一緒に絵本のセリフを言ったり、保育者 の動きを真似たりするというエピソードは高月 齢クラス、低月齢クラス共にいくつか観察され ている。これらの模倣は、遊びの中でその時そ の場で偶然生まれた言動が拡がっていく場合と は異なり、子どもたちが普段から慣れ親しんで おり、ある程度パターン化されているものを再 現しているような印象を受ける。すでに出来上 がっているものを見本通りにしているとも言え るだろうか。 ここでは、絵本の内容自体が繰り返し構造に なっていること、保育者が絵を指さしながら 「これは?」などと尋ね、子どもたちからの反 応を期待するような対応をとっていることが、 結果として保育者の言葉を模倣して楽しむとい うことにつながっているのではないかと考える。 やり取りのパターン (ルーティン) が出来上 がってくると、保育者が絵を指さなくても I 子 や J 男が筆頭となって保育者の後に続いており、 さらにそのあとをほかの子どもたちが続くとい う形態が維持されている。 このように一定のルーティンのなかで保育者 の言動を子どもたちが模倣し取り込んでいくも のをこのタイプととらえた。このタイプの模倣 では、絵本の内容に関して誰かが指を指したり、 何かを言ったりしたことが他の子どもにもまね されていくような場面や、ある子どものつぶや きに保育者が反応したことがきっかけとなって 他の子どもにも拡がっていくような場面もあわ せて観察されている。このタイプの模倣からは、 ルーティン的構造に支えられながら、やはり保 育者が軸となって、子どもたちの間につながり が創られていくことがうかがわれる。 ⑧ その他 (他児の真似をしようとしたが保育 者によって遮られたもの、保育者が子ども の真似をして遊びが拡がったようなものな ど) 〔事例 8 かえるぴょん見ててねー〕 2012. 7. 4 2 歳児 低月齢クラス 場所:保育室 保育室で自由に遊ぶ。パズルなどの遊び が途切れ始めたころ、保育者が牛乳パック を裏返して遊ぶ新しいおもちゃ( 以下かえ るぴょんと記す。)を出す。 b 子:丸テーブルの上に裏返したものを置 き、向かいにいる保育者に向かって「見て てねー」と言い、手を離してかえるぴょん を跳ばしてみせる。 保育者:「b ちゃん見ててねー」b 子と同 じような口調で言った後、自分のかえる ぴょんを跳ばす。 b 子:「見ててねー」再び跳ばす。結構高 く跳ぶ。 保 育 者:b 子 の か え る ぴ ょ ん を 見 て 「おっ! あっはは」と笑う。 b 子:床に落ちたかえるぴょんを見た後、 顔を上げて保育者を見ながら「いたっ」と 言う。実際には当たってはいないがおでこ を押さえて笑う。 保育者:「いたっ」と言って b 子と同じよ うにおでこを押さえる。「当たってません がなー」と b 子に笑いながら言う。 b 子:保育者をじっと見て笑う。 事例 8 は、保育者が子どもの言動を模倣して いるものである。b 子は、c 子が周りの保育者 や友だちに「見といてや」と言いながら何度も 牛乳パックのかえるぴょんを跳ばして見せてい る側にいた。そこで自分も同じようにやってみ よう、見ていてもらおう、と思ったのか、保育 者に「見ててねー」と声を掛けて跳ばし始める。 すると、保育者も b 子に「見ててねー」と言っ て跳ばしてみせる。また、b 子が床に落ちたか

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えるぴょんを拾いながらおでこを押さえて「い たっ」と笑うと、保育者も同じようにおでこを 押さえて「いたっ」と言う。こうして保育者が b 子の真似をするやりとりは、b 子にとって楽 しいものであったようで、その後何度も「見て てね」と言っては保育者からの反応を待つよう な姿が見られていた。鈴木 (2009) は「模倣さ れた子ども」に焦点を当てて、模倣の相互関係 における「ほどよさ」について考察している。 そこでは、他者が自分に似ているという状況を 見せられたり、自分になってくれる他者の存在 を感じたりして、自分のイメージが他者にもあ ることを共有していくことで、自己理解や自己 肯定感へとつながることが示唆されている。本 事例では、保育者が自分の投げかけに同じよう に返してくれたことで、b 子は自分の行為が保 育者にも共有されている心地よさを感じ、その 後何度も関わりを求めたのではないだろうか。 2.模倣の特徴からみた 2 歳児クラスの子ども たちの育ち 1 ) 動作による模倣と仲間意識の芽生え 本研究で観察した 2 歳児クラスにおいては、 大きく分けて 8 つのタイプの模倣が見られた。 これら全体をみたとき、まず、この 2 歳児クラ スの模倣における大きな特徴としてとらえられ たのは、他者と同じ動きをするという動作的な 模倣がとりわけ多く見られているということで ある。1 ) の子ども同士の模倣においても、2 ) の保育者の関わりがきっかけとなって表れる模 倣においても、言語が伴う場合も含めて、動作 の模倣が圧倒的に多数であった。発達初期の子 どもではその身体性の高さが指摘されており、 ここで観察された子どもたちにおいても、他者 との関わりがまず身体レベルで豊かに行われて いることがうかがわれる。 一方、このような「同じ動きをする」という 他者との関わりには、身体の双方向性 (鈴木, 2009) が内包されており、「同じ動きする」こ とを通して子どもたちは互いの存在を感じ合い、 そのことが、ともにある仲間としての意識や親 密性の芽生えにつながっていくと考えられる (無籐,1997、榎沢,1997)。 動作の模倣を通じて仲間との関係が強まって いく過程は、本研究では、① として先に挙げ た、誰かが始めた遊びや行動が伝染するように 他の子どもにも拡がっていくタイプの模倣にお いて、とりわけよく表れていた。このタイプの 模倣では、「積み木のタワーの周りを走り出す (事例 1)」のように、誰かが始めた行動や動作 を近くにいる子どもが次々と模倣し、動きに加 わっていく。加わる子どもが増えるとともに遊 びが大きな渦となって広がっていき、動きその ものもどんどんダイナミックになっていくとと もに、一緒に動いている子どもたちの気持ちも どんどん高揚していく。このような現象は「遊 びの伝染」とも呼ばれており (山本,2000、瀬 野,2010)、その遊びに参加している子どもた ちの間には強い情動的な結びつきが感じられる。 原初的な形ではあるが、集団としての仲間意識 が成立しているとも考えられる (山本,2000)。 このように子ども同士が相互に動作を模倣し合 う「相互模倣」は、本研究のタイプ①において も 25 事例観察されており、この 2 歳児クラス の子どもたちは、相互模倣をたくさん経験する ことを通して、仲間としての相互のつながりを つくりつつあることがうかがわれる。 2 )「相互模倣」から「テーマの共有」へ 一方、本研究の 2 歳児クラスにおいては、③ 「ごっこ遊びなどテーマの共有に伴って模倣が あらわれているタイプ」の模倣も、25 事例と 多数観察されている。③ では、ごっこ遊びの テーマが子どもたちに共有されたなかで模倣が 行われており、ことばの模倣がより顕著になる など、テーマ性の高まりとともに模倣の内容も ①の相互模倣とは異なってきている。子どもた ちの仲間関係においても、① ではみんなが一 緒に一つのことを共有するいわば「横並び」の 関係であったのに、リーダーやフォロワーと いった立ち位置の違いが見られ出しており、互 いにアイデアを出し合い遊びを創り上げていく いわば「向かい合う」関係ができつつあること がうかがわれる。このタイプの模倣は本研究で も高月齢クラスでより早くから観察されており、 この 2 歳から 3 歳の間に、こういったテーマの 共有が可能になっていく姿が確認されることと なっている。

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このように、この 2 歳児クラスでは、子ども たち同士での動作レベルでの相互模倣がたくさ ん行われながら、より強いテーマ性を持つ遊び のなかでの模倣も徐々に豊かになってきている ことが示されている。それでは、このような模 倣の発達的変化は、何によりもたらされている のだろうか。 相互模倣の発現については、意図的に模倣さ れることももちろんあると思われるが、むしろ その特徴は、「他者の動きにつられて思わず身 体が動いてしまう」という側面にあると言われ ている (鯨岡・鯨岡,2004、山本,2000、瀬野, 2010)。初期に見られるヒトの模倣は他者の身 体に同調・共鳴しようとする志向性により引き 起こされているのではないか、とする報告が近 年数多く行われてきており (Meltzoff & Moore, 1997、川田,2005、杉村他,2011)、本研究で 観察された相互模倣についても、そういった他 者への志向性が基盤となって同じ動きが引き起 こされているという側面が強く感じられる。 瀬野 (2011) は、このような相互模倣を通し て子どもたちは「同じ」であることを体感した り互いの間にコンタクトが成立していることを 確認し合っており、そのことが、子どもたちの 間でより高次のテーマが共有されることにつな がっているのではないかと指摘している。相互 模倣は、また、子どもたちの間に情動の共有を もたらすとともに、後に見られるようになる言 語的コミュニケーションに必要な役割交替やト ピックの共有を可能にする機能を持つことも指 摘されている (Nadel, 2002)。いずれも、相互 模倣を豊かに経験することが友達との間でテー マを共有できるようになる基盤をつくるという 指摘である。 もっとも、テーマ性のあるごっこ遊びを行う ためには、そこで「見立て」を構成する行為や 事象のイメージを思い描くことができなければ ならない。本研究では、②「生活場面の一部 (着替え、食事など) が「延滞模倣」として再 現されているタイプ)」の模倣も多く見られ、 この時期に、生活場面でのルーティン的な行動 (無藤,1997) についての内的表象自体も形成 されつつあることがうかがわれる。このような 側面での発達にも支えられて、この 2 歳児クラ スの子どもたちは、テーマの共有やそれに基づ く模倣が徐々に可能になってきていると考えら れる。 3 ) 模倣の拡がりや変容を支える保育者の役割 このように、本研究で観察された 2 歳児クラ スの子どもたちは、相互模倣を基盤に、友達と のテーマ性のある遊びを徐々に創りだしていっ ている過程にあることが示唆されているが、本 研究では、このプロセスにおける保育者の役割 が随所で認められている。 本研究では、⑤ に示されるように、保育者 による何らかの関わりがきっかけとなって、特 定の子どもの言動や遊びが拡がっていくタイプ の模倣が数多く認められた。事例 7 では、片付 けのなかで「ぬいぐるみを保育者に持ってく る」という b 子の行動が、保育者の発言によ り、次々と他の子どもに拡がっていく。b 子の 行動に保育者の発言が一定のテーマを持たせた ことで、他の子どもはそのテーマを楽しむよう に、次々と保育者に同じ行動をしかけてくる。 このとき、テーマの共有はあくまでも保育者と 子どもひとりひとりの間で行われているのだが、 保育者が核となることで、結果としてその場に いる子ども集団全体で共有される形となってい る。保育者自身がそうなることをある程度意識 している、またはほとんど無意識であったとし ても、自然と一つの軸になって子どもと子ども をつないでいる。そして、保育者を介したこの ような子どもたち同士のいわば「間接的な」つ ながりが豊かに作りあげられていることが、高 月齢クラスを中心に見られたような、自分たち の遊びの世界を共有し創り上げていこうとする 子どもたち同士の「直接的」な向かい合いの姿 につながっていくのではないだろうか。 本研究では、また、⑥や⑦としてまとめられ ているように、保育者の言動そのものがそのま ま子どもたちに模倣され、遊びのなかで使われ ていくことが多数観察された。保育者は、遊び ややりとりに参加しそれを展開していくなかで、 子どもたちがまだ持たない動きや言語表現をそ の場に持ち出してくる。そうすることで、その 遊びややりとり自体がより楽しくなり、子ども 同士の情動共有や親近感に高まりがもたらされ

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る。そしてそれと同時に、そこに示された動作 や言語表現そのものも、遊びややりとりを楽し くする有意義な存在として子どもに認知・経験 され、結果として子どもたち自身の行動パター ンとして取り込まれていくことになる。つまり、 保育者は、子どもたちとともに遊びややりとり に参加することで、子どもたち同士をつなぎ テーマの共有を支えるとともに、私たちの文化 にある遊びの仕方や方向性についてまでも、子 どもたちに伝える役割を果たしていると考えら れる。 さらに、本研究では、⑧にあげられているよ うに、保育者が子どもを模倣する姿も多く見ら れている。模倣されることで、子どもは自らが 受容されていることを感じその他者との情動的 なつながりが強まるとともに、自己の行為が意 識化され自己認識が促されることになる (鈴木, 2009、2011)。子ども同士での模倣が豊かに行 われる前の段階からすでに、保育者は子どもを 模倣することを通じて子どもの自己認識を、ひ いてはそれからつながる他者認識を促している と考えられる。 このように、本研究では、相互模倣からテー マの共有に基づく模倣へと子どもたちの模倣が 変容していく過程を保育者が様々な形で支えて いることが示された。そのような支えのもとで、 本研究の 2 歳児クラスの子どもたちは、「みん なでつながる心地よさ」を基盤に、少しずつ友 だちと自分との違いにも気付き始め、それを受 け入れたり、受け入れられたりし始めているこ とがうかがわれる。本研究では観察対象が 1 ク ラスだけと限定されていることから、このよう な特徴に、そこに関わる保育者や子どもたちの 特性による相違が認められるのかどうか、につ いては、今後の検討がのぞまれるところである。 謝辞 本研究にご協力をいただいた保育園児の皆 さん、保育園の先生方に深く感謝申し上げ ます。 付記 本研究は、第一著者の平成 24 年度滋賀大 学卒業論文に加筆、修正をしたものである。 引 用 文 献

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