( 東 女 医 大 誌 第54巻 第10
号
)
頁 1002-1013昭和59年10月J日本ウズラに発見された糖原病
I
I
型(成人型〉に関する研究
一組織学的,生化学的,酵素学的研究および臨床神経学的検討-東 京 女 子 医 科 大 学 脳 神 経 セ ン タ ー 神経内科学教室(主任:丸山勝一教授〉村 上
博 彦
( 受 付 昭 和59年8月2日〉Studies on Type 11 Glycogen Storage Disease (Adult type) Discovered in Japanese Quails -Morphological
,
biochemical and enzymologicalstudies and neurological evaluationsー Hirohiko MURAKAMI
,
M.D. Department of Neurology(Director: Prof.Shoichi MARUYAMA), Neurological Institute, Tokyo Women's a Mdical College Several ]apanese quails presented dysfuction of wings in about six months after hatching Musc1e fibers contained many vacuoles filled with PAS-positive materials. Contents of vacuoles disappeared after digestion with diastase, suggesting the pres巴nseof glycogen. The variation in fiber size was also demonstrated.Electronmicroscopy disc10sed many glycogen partic1es between myofibrils. There were many in -c1usions such as myelin figures, aggregates of glycogen partic1es and autophagic vaculoes.
Glycogen content in all tissues examined was markedly increased
,
amounting to about twenty times more than that of normal in femoral and heart musc1es and to two hundred times more than that of nomal is liver. The lactate production in vitro by the anerobic glycolsis was normal as well as the activity of glycolytic enzymes of the a妊ectedmusc1e.Acid maltase was mesured with maltose or 4-MUG as substrates. The activity was reduced to1/ 3-1/20 of control values in skeletal musc1es, heart and liver of the a妊ectedquail.However, there was no
change in the activity of neutral maltase and other lysosomal enzymes of these tissues.
Isozymes of maltase was analyzed by an electrophoresis on the cellulose acetate membrane. Three isozymes of maltase w巴redemonstrated. Two of them were acid maltase and one was neutral.The ac
-tivity of neutral isozyme was presented in the a丘ectedquails. However, the acid isozymes of maltase was much reduced on enzymogram.
These studies indicated that disable quails suffered from the adult type of glycogen storage disease type 2.
This mutant quail might be a useful disease model for human glycogenosis type 2.
序 論 対象および方法 成 績 目 次 1.組織学的,組織化学的所見 2. 電子顕微鏡的所見 3.組織グリコーゲン含量 -1002ー 4.嫌気性解糖 5.ライソゾーム酵素活性 6. maltase(α-1,4-g1ucosidase)活 性 7. maltaseのpH依 存 性 8.電気泳動による acid maltaseお よ びneutral maltaseのisozyme分析 9.血 清maltase活 性
考察 1.組織学的検討 2. 生化学的検討 3.臨床神経学的考察 a)ヒト糖原病II型とウズラについて b) maltase活性測定法の検討 c) maltaseの酵素学的検討 d)動物モデルとしての臨床上の有用性につい て 総括および結論 文献 序 論 翼の機能障害を主徴とする日本ウズラ(Japa -nese Quail, Coturnix coturnix japonica)の突然 変異種が日本生物科学研究所・小淵沢養鶏所で発 見された.筋ジストロフィ一類似の症状を呈する ことから,動物モデ、ルとしての有用性を検討する 目的で,このウズラの骨格筋,心筋,肝臓などを 組織学的および生化学的に検索した.筋組織に著 明なグリコーゲンの蓄積およびmaltase (α-1,4 -glucosidase)の欠損を認め,糖原病II型の自然発 症モデルで、あることを確認した. ヒトの糖原病II型は,乳児期に発症する致命的 な疾患であるが,最近,小児・成人に発症する症 状の軽微な“遅発型"と呼ばれる症例が報告さわし, この臨床病型の差異に関して種々の検討が行なわ れている. 本 研 究 で は , こ の 糖 原 病II型ウズラを用い, maltaseの活性測定における基質の相違による特 性,感度などの問題点を検討した.また,電気泳 動 法 に よ る ウ ズ ラ のmaltaseのisozyme分析を 行ない,ヒトのmaltaseisozyme分析の結果と比 較検討した.更にisozyme分析を中心に,本モデ ル動物の臨床神経学における意義を考察した. 対象および方法 日本生物科学研究所(日生研〉より,発症した ウズラと正常ウズラの提供を受けた.発症ウズラ は,階、化後6カ月頃から翼の挙上が出来ないこと で識別される.脚の機能,体重などは変化なく, 正常ウズラとの交配が可能で、あり,受精能力は保 たれている.初期には,オスのみに6羽の発症が 確認され, 日生研でRocked-Wing系(RW系〉と 仮称され,継代飼育の努力が払われ,現在までに 数十羽の発症が確認されている. 今回の検索には,発見のキヅカケになった6羽 のうち 1羽,“NO.9280ウズラ"とその後に作製さ れた発症ウズラ 9羽および正常ウズラ12羽を用い た. 断頭濡血したウズラより,浅胸筋,前広背筋, 後広背筋,前腔骨筋を採取し,直ちに, -160o Cイ ソベンタン液で凍結し,組織化学的検索用とした. 一部小片は電子顕微鏡用にグ、ルタールアルデヒド 固定をし,カコジレート緩衝液洗機後
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S
0
4
で後 固定した.組織化学的検索として, hematoxylin and eosin (HE), modified Gomori trichrome, NADH-TR,
menadionlinkedα-glycerophos-phate dehydrogenase (MAG), oil red0
, PAS, A TP ase, acid phosphatase, acetylcholinester -ase, alkaline phosphate, phosphorylase, phos -phofructokinase染色を行なった. 生化学的検索には,浅胸筋,深胸筋,大腿筋, 心筋,肝臓を採取し,直ちに液体窒素中で凍結し, 分析時まで-80o Cに保存した.組織中のグリコー ゲン含量は, Kepp凶le町r&De白cker戸1り)の方法で た.嫌気性解糖によるinvitroでの乳酸生成能は, Schmid & Mahler2)の方法に従い検討した.解糖 系の主要な酵素として, phosphorylase, phos -phoglucomutase (PGlu-M), phosphog-lucoisomerase (PGlu-1), phosphofructokinase, aldolase, pyruvate kinase CPK), lactate dehy -drogenase (LDH)の活性を測定した3) 酵素活性 の測定には, 9倍容のTris-EDTA緩衝液(0.05M Tris, 5mM EDT A, pH 7.5)でホモゲナイズし, 80,000g, 30分間遠心した上清を用いた. また,解糖系に副次的に関与し,ライソゾーム に含まれる各種酵素の活性を測定した.maltase (α-glucosidase)
,
β-glucosidase,
α時 galactosidase,β-galactosidase,β田glucuronidase の活性をSoyamaら4)の方法に従い,合成基質4 -Methylumbelliferyl化 合 物 を 用 い る 方 法 で 測 定 した.試料は, 9倍容の蒸留水でホモゲナイズし, ライソゾームを破壊するため, freezing & thaw -一1003ingを3回おこなった.9, OOOr.p.m., 20分間遠心 し,その上清を分析に用いた.蛍光の測定には, Farrand社のModelA4 Fluorometerを用いた.
maltase Cα-1,4-g1ucosidase)には, ライソゾー ムに存在し, pH 4.0に 至 適 活 性 を 持 つacid maltaseと,主にミグロソームおよび可溶性分画 に存在し, pH 6.5に 至 適 活 性 を 持 つneutral maltaseの2つが区別されている.このmaltase の活性は, Engel & Gomez5
)の方法に従い, maltaseの 水 解 反 応 を 利 用 す る 方 法 お よ び Soyamaら4)の方法に従い,合成基質 4-Methylum-belliferyl-α-D-glucopyranoside C4-MUG,
Koch-L
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ght社〉を用いる方法で測定した.maltaseのisozyme分 析 を Mehler & DiMauro6 )の方法を一部修正して施行した.セル ロース・アセテート膜 CSuperSepraphore, Gel -man Instrument社〉に酵素活性測定に用いた上 清をアプリケーターCSepratek-4,Gelman Instru -ment社〉で添付した. 電気泳動には, リン酸カリウム緩衝液CO.04M, pH 6.5)を用い, 6mAで90分間泳動した.泳動終 予後直ちに, pH 4.0およびび、pH6.5~.にこ調整した 2mM川fの4 衝液に浸した別のセルロ一ス.アセテート膜を重 ね合わせた .3TC, 60分間インキュベート後,更 にpH10.7の0.2Mグリシン・炭酸ナトリウム緩 衝液で飽和した積紙CWhatmanpaper, Whatman 社〉を重ね,反応を停止させ,直ちに紫外線ラン プ下で紫外線フィルターを用い,写真撮影を行 なった. 成 績 1.組織学的,組織化学的所見 最も顕著な変化は,筋線維に最大3μm径の多く の空胞をHE染色でみることであった(図1,D入 胸筋は最も強く侵され,多くの筋線維は脂肪組織 に置換していたが,残存線維には多くの空胞を認 めた.次に前広背筋,後広背筋,前腔骨筋の順に 侵され,前腔骨筋では空胞はわずかにしか存在し なかった. 筋線維の大小不同は浅胸筋に強く,前広背筋に 軽度存在した.責食反応を伴う壊死線維は見出し 得なかった.上記空胞は, PAS染色で強く染め出 され(写真1, E),ジアスターゼ消化試験で消失し, グリコーゲンの著明な増加を示唆した. 次に特異的なことは,酸フォスファターゼ染色 で多数の強陽性の部分が全ての筋線維にみられた ことであった(写真1,F). 線維内空胞は酸フォス ファターゼに軽く陽性であり,強陽性の部分は空 胞 と は 別 に 存 在 し た .phosphorylaseお よ び phosphofructokinase染色では対照筋との聞に 染色性の差は認められなかった.
2
.
電子顕微鏡的所見 電子顕徴鏡的には,多数のグリコーゲン頼粒を 筋原線維聞に認めた(写真2
).このグリコーゲン 穎粒は多くは集塊をなして存在し,膜で被われて いないものが多かったが,時に膜に被われている ものも存在した. ミトコンドリアなどには変化は 少なく,また筋節の配列の乱れもごく少数の筋線 維を除いては存在しなかった. 次に特徴的なのは,線維内にミエリン様小体, グリコーゲン頼粒の集塊, autophagic vacuoles が集合した部の存在であった(写真3).このよう な部は,組織化学的にみた酸フォスファターゼ陽 性の部と一致すると思われた. 3.組織グリコーゲン含量(表1,表2) 湿重量当りのグリコーゲン含量は, NO.9280ウ ズラの大腿筋,浅胸筋,心筋および肝臓のすべて で,著明な増加が認められた.NO.9280ウズラの 表l 組織グリコーゲン含量(1) Control NO.9280 大 腿 筋 0.66 mg/g 11.24 mg/g 浅 胸 筋 1.85 6.72 d心 筋 0.63 13.66 肝 臓 0.44 84.33 表 2 組織グリコーゲン含量(2) Control Disease 大 腿 筋 2.4土0.4mg/g (6) 10.5:t1. 8 mg/g (5) 浅 胸 筋 4.1:t0.9 (7) 12.3:t2.6 (6) dレ 筋 1.6:t0.3 (5) 15.4:t2.6 (6) 肝 臓 0.6:t0.3 (7) 43.8:t12.0 (7) mean士S.E.( )は例数 -1004ー浅胸筋は,著明な萎縮を示し,脂肪組織による置 き換りがみられ正常ウズラの約3.5倍の増加を示 すのみであった.しかし,大腿筋や心筋では正常 の約20倍,肝臓は約200倍にも達した(表1).そ の後の多数例での検討においても,発症ウズラで は浅胸筋で正常の約3倍,大腿筋で約4.5倍の増加 を示した.また,心筋では約10倍,肝臓では約70 倍の増加を示し,骨格筋より,心筋・肝臓へのグ リコーゲンの蓄積が著明であることが確認された (表
2)
.
4
.
嫌気性解糖(表3
, 表 的 このグリコーゲン含量会増加の原因を追求するた めに,骨格筋の解糖系の異常の有無を検討した. Schmid&
Mahlerの方法に従い,大腿筋を用いて in vitroで 嫌 気 性 解 糖 に よ る 乳 酸 生 成 を 検 討 し た.グリコーゲンを加えない条件での乳酸生成 は,正常ウズラ1.6μmolelactate produced/ g/30 min., N o. 9280では, 4.7μmolelactate produced/ g/30min.とNo. 9280ウズラで高値を示した.反 応系にグりコーゲンを加えた条件で、は正常ウズラ 9.0に対して, No.9280ウズラは6.4であった(表 3 ). 嫌気性解糖に関与する主要な酵素の活性を測定 した(表4入正常ウズラ, NO.9280ウズラ,両者 の比活性にほとんど差は認められなかった.これ らの事実より,解糖系の主経路にはほぼ問題がな 表3 嫌気性解糖による乳酸生成Cinvitro) no addition with glycogen (J1mole lactate/ g/30min.) Control N o. 9280 1.6 9.0 4.7 6.4 表4 解糖系の主要な酵素の比活性(大腿筋〕 Contrnl No.9280 Phosphorylase 0.11 U/mg prot 0.17 U/mg PGlu.M 2.59 2.07 PGlu.I 3.88 4.10 PFK 0.32 0.28 A!dolase 0.30 0.15 PK 0.23 0.18 LDH (0.21)* 0.54 *(深胸筋〉 いと考えられる. 5.ライソゾーム酵素活性(表5) 合成基質を用いたライソゾーム酵素活性の測定 法では, p H 4.0における α-glucosidase活性が正 常ウズラ1,114士147nmole 4.MU/g/hに対し,発 症ウズラでは102:
t
25と約1/10に低下していた.一 方, p H 6.5における活性は,正常798:
t
168に対し て,発症ウズラでは1,166士265とほとんど差は認 められなかった. その他, β-glucosidase,α-galactosidase,β即 galactosidase,β-glucuronidaseの活性は正常ウ 表5 ラ イ ソ ゾ ム酵素活性 (nmole 4MU/g/h) Control Disease α.glucosidase 1114:t147 102:t25 (n = 12, 776-2688) (n二8. 52-206) (pH4.0) (pH6.5) 798士168 1166:t265 (n = 12, 340-2530)(n=8, 660-2450) β.glucosidase (n二47,土0-264) (n=45, 土0-146) α.ga!actosidase (n=4106, 53土603-828000) (n = 1402, 36士102-117520) β.galactosidase (n=425, 651:8t340-642860) (n=431, 1820士8700-35190) β-glucuronidase (n=4190, 57土306-634260) (n=4152, 53士205-935130) mean:tS.E.( )は例数及び範囲 表6 maltoseを 基 質 と し たacid maltase活性 Control 〔浅胸筋〉 227 263 〔μmolemaltose/g/minJ No.9280 (大腿筋〉 0 12表7 4 -MUGを基質としたacid& neutral mal-tase活性
(n mole 4-MU produced/mg prot.!h) pH 4.0 pH 6.5 Control NO.9280 Control No.9280 大 腿 筋 24.4 3.3 17 .2 22.8 浅 胸 筋 44.8 3.5 38.9 31.3 '1..) 筋 4.3 1.5 4.5 17.3 肝 臓 50.0t 13.8 50.0t 50.0↑ ー 」 ↑: scale overしたことを示す.
ズラと発症ウズラの間で差異が認められなかっ た 6. maltase(α・1
,
4・glucosidase)活性 (表6,
表7) pH 4.0における maltoseを基質とする測定法 では,正常ウズラ浅胸筋と NO.9280ウズラ大腿筋 を用いたが, No.9280ウズラ大腿筋は2回の測定 で, 0および12μmolemaltose/g/min.と著明な低 値を示した (表6). また,合成基質である4.MUGを用いる方法で, 大腿筋,浅胸筋,心筋および肝臓のmaltaseの活 性をpH4.0とpH6.5で測定した.acidmaltase の活性は,臓器による差はあるが, NO.9280ウズ ラで対照の1/3ないし1/20に低下していた.一方, neutral maltaseの活性は, No. 9280ウズラ心筋で 対照筋の約 4倍に増加していたが,その他の臓器 では両者に差は見られなかった.acidmaltaseお よびneutralmaltaseは,正常およびNo.9280ウ ズラのいずれにおいても,その活性は心筋で低く, 肝臓で最高値を示した (表7). 7. maltaseのpH依存性 (図1,図2) 正常ウズラおよび発症ウズラのmaltaseのpH+
依存性を検討した.maltoseを基質とすると正常 ウズラではpH6.5にピークを示し, pH 4.0で平 坦な単峰性の曲線が得られた.発症ウズラも同様 にpH6.5~こピークを示すが,, pH 4.0では検出感 度ぎりぎりの低値を示した (図1).合成基質4・ MUGを基質とすると,正常ではpH4.5にピーク を持ち, pH 6-7.5の間でほぼ平坦な単峰性の曲 線が得られた.発症ウズラではpH5.5-7.5の間 μmole glucose/g/hr 60 トーー。Control.
.
-
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,
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Disease Maltose 40 20^
〆 、 〆 、〆、
〆 、 〆 〆 、 、 ~I/\.
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- ー・回ーー←ー-・--4 5 8 pH 図 maltoseを基質としたmaltaseのpH曲線 μmole 4 MU/g/hr 1.0 r-i.M!lQ 0.6 / 〆 〆 〆〆
〆 /.
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d ← 。ーー。Control-一
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Disease 0.2 l..-ーーー一ーーーー-' 4 5 6 」ーー一一一ー」7 8 pn 図2 4.MUGを基質としたmaltaseのpH曲線 で平坦なピークを示し, pH 4.0では正常の約1/10 の活性を示した.pH 5.5-7.5の間では両者の活 性はほぼ一致した (図2). こ の 両 基 質 と も , 発 症 ウ ズ ラ に お け る acid maltaseの低下を示したが, 4・MUGの方がacid maltaseに対して感受性が高く acidmaltaseの 検索には有用と考えられる. 8.電気泳動による acid maltaseおよびneu -tral maltaseのisozyme分析 (写真4)Con
t
.
pH6.5
9280
C
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n
t
.
pH4.0
9280
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一
小
•••••••••
写真4電気泳動法によるmaltaseのEnzymogram (基質は4・MUG) -1006-表8 血清maltase活性 (n mole4MU/ml/h) Control Disease acid maltase I 43.2::1:8.6(10) I 4.1:t2.2(9) 口 四 回1malU田 I 38.5:t13.7(10) I 56凶 0.1(7) mean:tS.D.C)は例数 セルロース・アセテート膜を用いた電気泳動で、 は,正常ウズラではpH6.5の反応液で3つの is悶 ozymeが分離された.発症ウズラでは,この 3つ のうち最も陽極側のbandが消失し,最も陰極側 のbandが減少を示した.pH 4.0の反応液では, 正常ウズラは2つの isozymeを認め,泳動度はそ れぞれpH6.5における最も陽極側および陰極側 のbandに一致した.発症ウズラでは,最も陰極側 のbandが ご く わ ず か に 認 め ら れ る だ け で あ っ た. 9.血清maltase活性(表8) こ の ウ ズ ラ の 継 代 飼 育 を 行 な う 段 階 で 血 清 acid maltaseを測定したところ,発症ウズラで著 明な低下が認められた.発見の契機となったNo. 9280ウズラは, 19.6nmole 4-MU/ml/hであった (正常ウズラ82.0nmole4-MU/ml/h).その後の検 索で発症ウズラでは,正常ウズラの約1/10の活性 しか認められなかった.neutral maltase活性は異 常なかった 考 察 1.組織学的検討 1979年,松井ら7),黒田ら8)は同種のウズラを組 織学的に検索し,報告した. 今回,著者が組織学的に検索したウズラの骨格 筋は多くの空胞を有し,空胞内に
PAS
陽性物質 の増加が著明であり, これがジアスターゼ消化試 験で消化されたことから,グリコーゲンの蓄積を きたしていると考えられた.また, acid phos -phatase染色で強く陽性であり, phosphofructo -kinaseお よ びphosphorylase染 色 で 対 照 筋 と 差 が認められなかった. これらは, ヒトの糖原病II 型にみられる vacuolarmyopathyの組織学的所 見に似ている9)川 . 電子顕微鏡的には,多数のmyelin figuresや autophagic vacuolesが存在し, Engelら9), Garancisl!), Pellegriniら12)によって報告されて いるヒトの糖原病II型の所見と類似している.2
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生化学的検討 生化学的分析では,著明な組織グリコーゲンの 増加が認められ,組織学的所見を裏づけた.骨格 筋におけるグリコーゲン利用の主経路は, Emb-den-Meyerhofの解糖系である.この経路の異常 に関し, in vitroでの嫌気性解糖能を検討したが, 発症ウズラに異常はみられなかった.グリコーゲ ンを加えない条件で,発症ウズラの方が乳酸生成 の多いことは,組織内にグリコーゲン含量が多い 事実を反映する所見と考えられる.解糖系に関与 する主要な酵素の活性も,発症ウズラで異常はみ られなかった.このようなことから,発症ウズラ においては, Embden-Meyerhofの解糖系はほぼ 正常に機能しているものと考えられる. 発症ウズラのmaltase活性は, maltoseを基質 とする測定法では,ほぼOに等しい.4-MUGを基 質とする測定法でも, acid maltaseは対照の1/ 3~ 1/20 に低下していた.一方, neutral maltase は,すべての臓器で活性の低下はみられなかった. β-glucosidase,
α-galactosidase,
β-galactosidase,β-glucuronidaseなど他のライソ ゾーム酵素の活性は,合成基質methylumbellifer -yl化合物を用いた測定法では,発症ウズラにおい て正常ウズラとの差異は認められなかった. 以上のことより,この発症ウズラは, pH 4.0に お け るα血1,4-g1ucosidase活 性 , い わ ゆ る acid maltaseの欠損により,グリコーゲンの著明な蓄 積をきたしたものと結論された.3
.
臨床神経学的考察 a)ヒト糖原病1
1
型とウズラについて 糖原病は,全身諸臓器に異常なグリコーゲンの 蓄積をきたす遺伝性疾患で,臨床症状および生化 学的に証明された酵素異常に従って, 6 ~ 7型に 分類されている.そのうち,糖原病II型は,乳児 期に著明な筋力低下,筋緊張低下を示し,心肥大 が特徴的であり,呼吸不全や心不全により死亡す る致命的な疾患である.これは,報告者の名にち なんでPompe病とも呼ばれている13) Hersl4)が本症における acidmaltaseの欠損を証明して以 来,乳児例と発症時期を異にする,臨床症状やグ リ コ ー ゲ ン 蓄 積 の 軽 徴 な 小 児 例15)1ベ 成 人 例9)17)-20)が報告されるようになっている. 現在,糖原病II型は発症年齢の違L、によって, ①“infantile type"(乳児型),②“childhoodtype" (小児型),③“adulttype"(成人型〉の3型に分類 されている.また,②および③を一括して“late -onset type"(遅発型〉と呼ぶこともある.この3 型における臨床症状やグリコーゲン含量の差の発 現機序に関しては,種々の考え方が提唱されてい る.遺伝学的な面からの検討では,典型的な“ 10-fantile type"は常染色体劣性遺伝により遺伝する ことが確認されている.Hudgsonら21)は,“in -fantile type"のheterozygoteが“adulttype"に進 展する可能性を示唆した.一方, Engelら 病型患者の両親の骨格筋のacidmaltaseの活性 を測定し, これが正常者と患者の活性の中間値を とることを示した.このことから,彼らは“in -fantile type"と“late-onsettype"は異なる遺伝子 による疾病で,発症者はhomozygoteであると考 えた. また,“infantiletype"と“late-onsettype" が同一家系に発症することがないことも,この考 え方を支持するものとした.しかし,最近,Koster ら22)は,“infantiletype"と“late-onsettype"が同 一家系にみられたと報告し, この問題は依然,未 解決である, 近年,合成基質4-MUGを用いる maltase活性 の鋭敏な測定法が開発され, この酵素を種々の側 面から検討する手掛りが与えられた.Mehlerら6) は, この方法によって“late-onsettype"で、も acid maltase活性が正常者の 2-12%残存しているこ とを示した.しかし, この残余活性と糖原病II型 の臨床症状および組織学的所見の差異に相関はみ られなかった.また,“late-onsettype"で、は, neu -tral maltase活性は,ほぼ正常に保たれることか ら,neutral maltaseがグリコーゲン蓄積を減少さ せる作用を有する可能性も考えられている.一方, “infantile type"では, neutral maltaseの活性は 著明に低下しているが,臨床症状およびグリコー ゲン含量との相関はみられなかったと報告されて いる5)19) 今回検察した発症ウズラにおいても, maltose を基質とする測定法ではacidmaltase活性がみ られなかったが, 4-MUGを基質とする測定法で はacidmaltaseの活性が正常ウズラの約10%残 存していた.これは, Mehlerら6)がヒトの“late -onset type"で 期,症状が軽度である点も合わせ考えると,発症 ウズラはヒトの“late田onsettype"に似ているもの と考えられる.しかし, ヒトの“late-onsettype" では,グリコーゲンの蓄積は骨格筋に限られてお り,心筋および肝臓では通常認められない19)2ベ 発 症ウズラでは,心筋および肝臓に骨格筋と同様に 著明なグリコーゲンの蓄積を認める点でユニーク である. b) maltase活性測定法の検討 ウズラの maltaseのpH依存性の分析では, maltoseを基質として活性測定を行なった場合, “late-onset type"と考えられる発症ウズラでpH 4_0で活性はほぼOに等しい.かつ, pH 5_5から 徐々に減少を示し,感受性の点からも,わずかな 残余活性を問題にする場合には, maltoseを基質 とする方法は不適当と考えられる.合成基質4 -MUGを基質とした場合にはpH4_0で約1/10の 活性を示し, pH 5_5から急激な減少を示し, neu -tral maltase活性を測定している可能性も否定さ れる.“lase-onsettype"における残余活性の測定 やisozymeの分析,酵素の精製など詳細なacid maltaseの研究に,4 有力な方法になるものと考えられる. c) maltaseの酵素学的検討 近年,電気泳動法や免疫学的方法により,この 酵素の分子レベルでの検討がさかんに行なわれて いる.Dreyfusら加は,電気泳動法により,骨格筋 のacidmaltaseはただ 1つのisozymebandを 示すが, neutral maltaseで は 2つのisozyme bandを示し,かっ両者は移動度に若干の差が認め られ, acid maltaseおよびneutralmaltase活性 には分子レベルで、の相違があると述べている.ま た,腎臓には骨格筋などにはみられない移動度の 少ないもう一つのbandが存在することをも示し 1008ー
村 上 論 文 付 図
I
写真l 正常ウズラ CA-C)と発症ウズラ CD-F)の前広背筋_A,D:HE染色, B,E:
PAS染色,C, F:酸フォスファターゼ染色 Cx 300)
-( c c c , DN × ) 余括的必む吋や鰍 Q 察側組側
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etype"と“late-onsettype"の 骨格筋のacidmaltaseは,正常と若干異なる移動 度を示し,この“aberrantisozyme"が臨床症状な どの差をきたす原因になっていると述べている. これに反し, Mehlerら6)は,同様な方法で骨格筋, 心筋,肝臓ではpH6.5の反応液で3つのbandが 認められ,脳ではそのうちのlつが欠除すること を示した.pH 4.0の反応液では,すべての組織で ただ1
つのbandを示し, pH 6.5の最も陰極側の bandと移動度が一致した.また, 1 例の“infantile type"で、は, acid maltaseのbandが消失し, 3例 の“late-onsettype"では,わずかであるが明らか にbandの残存が認められ,かつ,この両者で正常 者との移動度に差はみられなかったとしている. こ の 両 者 は , “infantile type"に お け る acid maltaseのbandの欠除で区別されると述べてい る.Dreyfusら23)とMehlerら6)の結果の相違は, 前者がpH4.0およびpH6.5の反応を別々の泳動 膜を用いて行なったのに対して,後者が一枚の泳 動膜で泳動後,半分ずつ反応させたことによるも のと考えられる. 今回検索したウズラでは, maltaseの3つのis -ozymeが確認された.そのうち,最陽極側および 最陰極側の2つがacidmaltaseのisozyme,中央 の1
つがneutralmaltaseのisozymeと考えられ た.ウズラの acidmaltaseが2つのbandを形成 した点は, Dreyfusら23),Mehlerら6)が ヒ ト の acid maltaseが1つのbandを示したとの報告と 異なっており,種特異性の可能性が高いが詳細は 不明である.しかし, neutral maltaseのisozyme 活性は発症ウズラにおいても残存していたが, acid maltaseのisozymeは, 1つが全く消失し, 他の1
つもわずかな活性しか認められなかったこ とは, Mehlerら6)の報告に合致する所見と考えら れる.このウズラにおいても, isozymeの異常に よって症状の軽度な“late-onsettype"の糖原病II 型を発症したものと考えられる. d) 動物モデルとしての臨床上の有用性につい て このウズラの継代飼育に関しては,血清acid maltaseの測定が有用なスクリーニング法となっ た.すなわち,血清acidmaltase活性の測定によ り,症状発現前の鮮化後1-2カ月の段階で6カ 月後の発症が予測可能であった.また,血清acid maltase値の低値な雌雄を交配することによっ て,発症ウズラを増加,維持することが可能であっ た.この点からもウズラの糖原病II型が遺伝子の 異常による発症であることが推定される. ヒトに おいては, Soyamaら4)が尿中の acidmaltaseお よびneutral maltaseの測定を行ないpH 4.0/ pH 6.5の比を求め,これがスクリーニングに有用 であることを報告しているが,血清acidmaltase の測定によるスクリーニングは報告されていな い. ヒトにおける血清acid maltase測定による “late-onset type"のスクリーニングは今後研究の 価値があると考える. 以上,今回検索したウズラは,発症時期,症状 の 程 度 , 組 織 学 的 お よ び 生 化 学 的 所 見 , acid maltaseのisozyme分析結果などから,糖原病II 型の“adulttype"又は“late-onsettype"の自然発 症モデルと考えられる.このウズラの胸筋では, 筋径の大小不同や著明な脂肪細胞の浸潤など一部 “dystrophic"な変化を呈した.この種の変化は,ヒ ト の 成 人 型 の 場 合 に も 強 調 さ れ て い る 点 で あ る24) 糖原病のうちで最もグリコーゲンの蓄積の 著明なものは,解糖系の主要な代謝経路に異常の ないこのII型であり,なぜ糖原病II型でこの様な ことが認められるかを含め生化学的に未解決な点 が多い. この糖原病II型“late-onsettype"の自然発症ウ ズラは,本症における臨床病型の差異の検討や酵 素投与など実験的治療に際して,貴重なモデルと なり得ると考える. 総括および結論 翼の機能障害を主徴とする日本ウズラの突然変 異種の骨格筋や肝臓を,組織学的および生化学的 に検索した.maltaseの酵素学的研究を行ない,臨 床神経学における意義を論じた. 1)組織学的には,グリコーゲンを含む多数の空 胞を認め,多くのmye1
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n figuresやautophagic vacuolesが存在し,ヒトの糖原病II型にみられる 所見とほぼ同じであった.2)生化学的分析では,骨格筋,心筋および肝臓 に著明なグリコーゲンの増加が認められた.しか し,嫌気性解糖能および解糖系の主要な酵素の活 性に異常はなかった. 3)acid maltase活 性 が 著 明 に 減 少 し て い た が, neutral maltase活性はほぼ正常に保たれてい た 4)maltaseの活性測定法に関し検討を加え, acid maltasの詳細な研究には,合成基質
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を用いる測定法が有用であることを示した.5)電気泳動法による isozyme分析で, maltase の 3つの isozymeが認められ, うち 2つ が acid maltaseの isozymeと考えられた.このウズラは acid maltaseの isozyme活 性 が 著 明 に 減 少 し て L 、ナこ 6)このウズラ突然変異種は,ヒトの糖原病II型 “adult type"の疾患モテ、ルと考えられる.本モデ ルの臨床神経学的意義について考察した. 本稿を終るに臨み,御懇篤なる御指導,御校聞を賜 りました,東京女子医科大学脳神経センター・神経内 科学教室,丸山勝一教授,竹宮敏子助教授,小林逸郎 劫教授に深甚の謝意を表します. 終始かわらぬ御指導,御校関を賜りました国立武蔵 療養所神経センター・疾病研究第I部,杉田秀夫部長, 高木昭夫室長,埜中征哉室長(現・微細構造研究部部 長),石浦章一博士に深謝いたします. 貴重なウズラの提供を戴き,種々の御指導を戴きま した実験動物中央研究所,野村達次所長,ウズラの育 種などで御協力戴きました,日本生物科学研究所,水 谷誠博士に感謝いたします. 文 献
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