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「東京都の自治体隣接域における地区計画の影響分析」

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(1)東京都の自治体隣接域における地区計画の影響分析. <要旨> 近年、地区計画制度(都市計画法第 12 条の 4)を活用する自治体が増えており、策定数 も増加している。比較的自治体規模の小さい区市町村が集まる東京都では、各行政域の外 周部まで土地利用が進んでおり、自治体間の隣接域にて実施される地区計画も少なくない。 地区計画による地価等の資産価値への影響やその外部性を研究した事例は多い。本稿で は、自治体の隣接域で実施される地区計画に着目し、それが地価に与えた影響及び他の自 治体までの影響を分析することを目的とする。 ヘドニック・アプローチによる実証分析を行い、東京都において自治体内部域と隣接域 で実施される地区計画の効果に差異があることを示した。規制緩和型の地区計画について は他自治体との交渉などの取引費用が発生しているため、緩和による収益性が内部域に比 べ下がっている可能性があり、また規制強化型の地区計画については隣接自治体へ影響を 及ぼす可能性があることを示した。この結果を踏まえ、自治体隣接域において実施する地 区計画のあり方について、交渉によらない中立的な立場である広域自治体が介入すること や、自治体間における費用負担制度が必要であることを提言とした。. 2013 年(平成 25 年)2 月 政策研究大学院大学 まちづくりプログラム MJU12601. -1-. 秋山 健.

(2) 東京都の自治体隣接域における地区計画の影響分析. 目次 1. はじめに ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・3 1-1 研究の目的と背景・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・3 1-2 先行研究と本稿の位置づけ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・4 2. 地区計画制度の概要 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・5 2-1 地区計画制度の背景及び種類・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・5 2-2 地区計画の内容及び策定手続き・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・6 2-3 地区計画の実現手段・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・7 2-4 東京都の地区計画の策定状況・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・8 3. 地区計画制度についての理論分析及び問題点 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・9 3-1 地区計画策定による地価への影響・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・9 3-2 合意形成活動における問題 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・11 3-3 自治体領域における問題 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・11 4. 隣接域における地区計画の影響に関する実証分析・・・・・・・・・・・・・・・・12 4-1 問題意識及び検証する仮説 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・12 4-2 検証方法・推計式及び説明変数 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・13 4-3 推計結果及び考察 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・16 5. まとめ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・18 5-1 政策提言 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・18 5-2 今後の課題 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・19. 謝辞 参考文献・参考資料・使用データ. -2-.

(3) 1.はじめに. 1-1 研究の背景と目的 地区計画(都市計画法第 12 条の 4)は、それぞれの地区の特性に応じたきめ細かなまち づくりを進めるための制度であり、都市全体の観点から適用される地域地区制度と個々の 建築物に対して制限を加える建築確認制度の、中間領域をカバーする地区レベルのまちづ くりを担う制度として位置づけられている。地方分権や中心市街地活性化、コンパクトシ ティなどまちづくりの分野で大きな転換点の先を見据えた政策の考え方にも合致するもの であり、今後さらに重要性が増すとされている都市計画手法といえる。この制度は建築物 の形態や規模に関する規制を強化または緩和する制度としてだけでなく、公園や道路など の公共施設の将来的な位置及び内容を定めることにより、地域の整備手順としても活用さ れている。こういった独自規制の導入により地区内における効用の増大が期待されている。 地域地区や地区計画等の土地利用規制は、規制がなかった場合に用途や高さの混在によ って生じる外部性を制御するために課せられている1。また、地区計画は地方公共財である 公園や道路等の社会資本を供給させる制度であり、公共事業を通じて土地利用の誘導を図 ることも可能となっている。キャピタリゼーション仮説によると、社会資本投資などの政 策にかかる費用と便益は、ある一定の条件の下では、地価に帰着するとされている2。規制 が適正に課せられていれば土地利用を効率化するので地価を増進させることになり、逆に 適正でない場合は、土地利用が非効率化され地価を下落させることになる。また、また土 地利用には近隣外部性を発生させ、社会資本についても一定の地域にその便益が広がると いう、一種の外部性が発生しているといえる。地区計画におけるそれらの効果は地区外の 周辺域まで及ぶ可能性があるとされている3。 都心部の既成市街地では地区計画を活用した市街地整備が進められており、年々、計画 策定数が増えている。比較的自治体規模の小さい区市町村が集まる東京都では、それぞれ 自治体域の外周部まで土地利用が進んでおり、自治体の隣接域にて実施される地区計画も 少なくない。本稿では、自治体の隣接域で実施される地区計画に着目し、それが地価に与 えた影響、また、他の自治体までの影響を分析することを目的とする。 本稿の構成は次のとおりである。2 及び 3 節では地区計画制度の概要、東京都の計画策定 状況及び地区計画制度の理論分析について記す。4 節では東京都の自治体隣接域における地 区計画の影響についてヘドニック・アプローチによる実証分析を行う。その結果、自治体 内部域と隣接域で実施される地区計画の効果に差異があり、さらに隣接自治体へ影響を及 ぼす可能性があることがわかった。この結果を踏まえ、5 節では自治体隣接域において実施 する地区計画のあり方について提言を行う。. 1 2 3. 荒井(2007)参照。 肥田(1997)参照。 杉浦(2012)参照。. -3-.

(4) 1-2 先行研究と本稿の位置づけ 先行研究と本稿の位置づけを論じるため、事例として以下を挙げる。 和泉(1998)は、東京都千代田区を対象に緩和型地区計画(街並み誘導型、用途別容積型) をかけられた地区は利用可能容積増大効果により地価を上昇させたことを指摘している。 また、単に地域コミュニティの維持、活性化や大都市住宅問題の緩和のみならず、地球環 境負荷軽減のための職住近接型都市、コンパクトシティの実現という観点からも、当地区 計画は有効な政策手段であるとしている。 森田(2005)は横浜市を対象にの公示地価データを用い、敷地規模のばらつき、平均建物高 さや空地面積等の詳細な住環境データを収集して分析を行っている。それにより、敷地規 模が一定未満の場合、地区計画規定項目の中で壁面後退距離が延びることによる地価上昇 を指摘している。 津田(2010)は東京都 23 区を対象に、壁面後退規制を含めた道路空間整備の地区計画が地 価に与える影響を分析し、壁面後退規制によって、地域差はあるものの低層住宅地及び商 業地で地価が有意に上昇したことを示している。 谷下、長谷川、清水(2009)は東京都世田谷区を対象に、景観規制が戸建住宅に及ぼす影響 として地区計画や建築協定により上乗せ規制をかけられた地区は、最低敷地面積制限があ る場合には住宅価格は高く、制限がない場合は低い、さらに容積率制限がある場合にはさ らに下落することを示した。地区計画周辺部への影響については、そもそも計画が住環境 の悪化への対応策として決定・締結されていることにより、住宅価格が低くなると示して いる。 杉浦(2012)は横浜市の住居系用途地域を対象に、地区計画や建築協定による規制かけられ た地区はおおむね地価が上昇するものの、取引費用の存在や規制による土地利用の硬直化 によって地価が下がる可能性があることを示している。さらに外部性のコントロールの効 果がスピルオーバーしており、地区外の周辺地域の環境改善に寄与している可能性を示し ている。 黒澤、松岡 (2011)は、東京都 23 区の区堺における地区計画について、ヘドニック・アプ ローチ等の実証分析は行ってはいないが、景観などの都市の連続空間に着目し、ヒアリン グ及び現地調査により比較、分析の事例研究を行っている。 以上、地区計画による地価等の資産価値への影響を研究した事例は多いものの、自治体 隣接域における地区計画及びそれによる他自治体へ影響について実証分析したものは見当 たらない。このような影響を明らかにすることは、今後都心部などにおいて増加し続ける と予想される、中でも自治体外周域での地区計画策定への状況判断などに有益であると考 える。. -4-.

(5) 2.地区計画制度の概要 2-1 地区計画制度の背景及び種類 地区計画は、旧西ドイツの B プランをモデルとして 1980 年に創設された都市計画の 1 種である。B プランは、開発等が禁止されている地域における禁止解除の手段として位置づ けられているが、我が国の地区計画制度はそのような機能を持たない。ただし、詳細計画 という機能を持つという点では共通点を有しており、一般的な詳細計画を持たなかった我 が国の都市計画制度の中で、地区計画は地域特性や住民の意向を反映したまちづくりを行 うための重要な手段として活用されている。制度創設以来、その時々の需要に応じ、様々 なタイプの地区計画が追加されてきた。地区計画の種類については表 1 にまとめる。 表 1 地区計画の種類4 概要. 種類. 地区施設や建築ルールを定め、地区特性に応じたき め細かなまちづくりを進める(地区計画の原型). 用途、容積率、建蔽率、高 さ、壁面位置、敷地面積、建 築面積、色彩、意匠、緑化率 等. 密集市街地において公共施設の整備と延焼の防止、 避難のための特定防災機能を確保. 地区計画に準じる 防火上の構造制限含む. 歴史的風致の維持、向上と土地利用の整合を図るた めふさわしい用途等を誘導規制. 用途、容積率、建蔽率、高 さ、壁面線、敷地面積等. 沿道地区計画. 道路交通騒音の著しい幹線道路沿道において騒音障 害の防止とふさわしい土地利用を促進. 地区計画に準じる 遮音構造、開口率含む. 集落地区計画. 集落地域において営農と調和した良好な居住環境の 確保と適正な土地利用の実現. 地区計画に準じる 一部は適用無し. 誘導容積型. 公共施設の不足している区域で容積率を活用し適切 且つ合理的な土地利用規制を促進. 目標容積率、暫定容積率. 容積適正配分型. 区域を区分して容積率の最高限度を定めることによ り、区域内の合理的な土地利用の実現を図る。指定 容積率による総容積の範囲内で適正に総容積を配分. 容積率、壁面位置、敷地面積 等. 高度利用型. 低・未利用の状況にある地区について、空地を確保し 容積率、建蔽率、壁面位置、 つつ、土地の高度利用と都市機能の更新を図る。空 建築面積等 地を確保する代わりに、容積率を嵩上げ. 地区計画(基本型). 規 防災整備地区計画 制 強 化 歴史的風致維持地区計画 型. 規 用途別容積型 制 緩 和 街並み誘導型 型. 4. 規定項目. 住宅部分の割合に応じて、指定容積率を割り増すこ とにより、住宅スペースの供給増加を誘導. 容積率、壁面位置、敷地面積 等. 高さ、配列、形態をを整備することにより、スカイ ラインの美しさや街並みの整然さを確保する。前面 道路幅員による容積率制限や斜線制限を適用しない. 容積率、壁面位置、高さ、敷 地面積等. 再開発等促進区. 低・未利用地となっている区域に対して都市基盤施設 の整備と再開発等を一体として行う前提となる詳細 高度利用に必要な公共施設、 な計画を定める。用途制限の適用除外、地区計画で 用途、容積率、建蔽率、壁面 定める容積率の最高限度を適用、空地確保による斜 位置等 線制限の適用除外. 開発整備促進区. 第二種住居地域、準住居地域または工業地域におい て大規模集客施設の整備を誘導. 大規模集客施設の用途と敷地 の区域. 立体道路制度. 都市計画道路の整備と合わせ、道路の上空または路 面下において建築物等を一体的に整備. 道路内の建築制限を緩和. 河村(2009)を参考にし、筆者作成。. -5-.

(6) そして今日ではその種類・型も多岐にわたり複雑化してきたため、先年法改正がなされ 再編整備が行われた。地区計画制度の体系は、地区計画、防災街区整備地区計画、歴史的 風致維持向上地区計画、沿道地区計画、集落地区計画の 5 種類で、規制項目に対して地域 地区より強化して制限するものを総称して「地区計画等」と称している。基本となる規制 強化型地区計画5をはじめ特例的な活用として、誘導容積型、容積適正配分型、高度利用型、 用途別容積型、街並み誘導型の規制緩和型地区計画がある。また、これらの地区計画には 容積適正配分型と高度利用型を除き、再開発等促進地区(沿道地区計画についても同様に 定めることができる)または開発整備促進区を定めることができることになっている。. 2-2 地区計画の内容及び策定手続き 地区計画について都市計画に定められる事項は、種類、名称、位置、区域等のほか、当 該地区計画の目標、当該区域の整備開発及び保全に関する方針、地区整備計画がある。な お、地区計画には目標及び方針のみのものがある。地区整備計画に定める事項としては、 地区施設の配置及び規模、建築物の用途の制限、容積率の最高限度又は最低限度、建蔽率 の最高限度、建築物の敷地面積又は建築面積の最低限度、壁面の位置の制限、壁面後退区 域における工作物の設置の制限、建築物等の高さの最高限度又は最低限度、建築物等の形 態又は色彩その他の意匠の制限、建築物の緑化率の最低限度、垣又はさくの構造の制限な どがある。その他、現に存する樹林地、 草地等で良好な居住環境を確保する. 地区計画 原案. ため必要なものの保全に関する事項、 公聴会・説明会による住民の意見反映. その他土地利用の制限に関する事項 がある。. 地権者の意見、利害関係者の同意. 東京都における地区計画策定の手 続きを図 1 に示す。地区計画について. 地区計画. 案. は、区市町村が定める都市計画の一般 都知事協議. の策定手続きに加えて原案の作成段 階で、公聴会や説明会による住民の意 案の公示及び縦覧. 見収集、その原案に係る区域内の土地 意見書の提出. 所有者等一定の利害関係者の意見を 求めて作成することが義務づけられ 区市町村都市計画審議会付議. ている(都市計画法 16 条 2 項)。これ 都市計画決定. は区域内の土地所有者等に具体的な 制限・負担が課せられるため設けられ ているものである。区市町村は、地区 5 6. 図1. 都内地区計画策定の手続き6. 一般型地区計画とも呼ばれるが、本稿では、規制緩和型との比較のため規制強化型地区計画と呼ぶ。 東京都都市整備局及び各区市町村 HP を参考に筆者作成。. -6-.

(7) 計画手続条例の中で、住民・利害関係者が地区計画等の案の内容としたい事項を申し出る 方法を定めることができる。原案をまとめ、地区計画の案として都知事協議より同意を得 た後、案の公示及び縦覧を行う(都市計画法 17 条 1 項)。期間内であれば住民は地区計画 の案に対して意見書を提出することができる(都市計画法 17 条 2 項) 。このような合意形 成活動を経て、各区市町村が主体となり地区計画の都市計画決定及びその運用を行う。. 2-3 地区計画の内容の実現手段 地区計画の内容の実現手段として、前述したものをまとめると土地利用・建築規制手法、 地区施設の整備、緩和型地区計画を用いる緩和的手法がある。 土地利用・建築規制手法として、地区整備計画が定められた区域内で開発許可が必要と される開発行為を行おうとする場合、地区計画に定められた内容が開発許可の基準として 働き、予定建築物等の用途又は開発行為の設計が地区計画に定められた内容に即していな ければ許可が受けられない。また、地区計画が定められた区域内で建築確認を必要とする 建築行為を行おうとする場合、区市町村が、条例(地区計画建築条例)で、地区整備計画 の内容として定められた「建築物の敷地、構造、設備又は用途に関する事項」を建築基準 法の制限として定めれば、それが建築確認の基準として働き、その内容に抵触するときは 確認がなされないことを通じて、その実現が担保される。地区計画が定められた区域内で 開発許可や建築確認を必要としない開発行為や建築行為を行おうとする場合(条例で建築 確認等の基準としていない場合を含む) 、その行為に着手する日の 30 日前までに、区市町 村長への届出が義務付けられており、区市町村長は、その届出に係る行為が地区計画に適 合しないと認めるときは、設計の変更その他の必要な措置をとることを勧告することがで きる。 地区施設の整備として、地区計画で定められた地区施設の配置及び規模に当たる部分に ついては、都市計画事業のような実現手段が予定されていない。ただし、道路についての みは道路位置の指定及び予定道路の指定という手段が用意されている。 道路の実現手段を除き、「地区施設」については、一般の都市施設の都市計画と違って、 その整備のための事業の実施が予定されているわけではない。その実現は、開発行為等が 行われるに際し、開発者が道路として整備することなどを通じて行われる仕組みとなって いる。その理由は、地区施設が主としてその地区住民によって使用されるためである。つ まり受益者負担ということになる。しかし、その整備費用負担については、地区計画の上 で施設が位置している土地の地権者がそのすべてを負担すべきものとは思えず、広く街区 内の地権者の間で負担される必要があると思われる。. -7-.

(8) 2-4 東京都の地区計画の策定状況 東京都においては年々策定数が増加傾向にあり、区部で 342 か所、多摩地域で 345 か所、 計 687 箇所策定され7、地区計画面積 13758.4ha、地区整備計画面積 12633.9ha となってい る。地区計画区域の大部分で地区整備計画が策定されている。地区計画数の推移について、 図 2 に示す。2000 年に入り、区部及び多摩地域ともに毎年概ね 10 か所以上の計画が策定 されている。 また、隣接地区計画は 152 箇所存在している。区部及び多摩地域の隣接地区計画数につ いては、表 2 に示す。地区計画の内訳であるが、規制強化型が 573 か所、緩和型が 114 区 か所と強化型の方が多い。. 図 2 地区計画数の推移(1982~2012 年)8. 表 2 隣接地区計画数9 全体 地区数. 規制強化型(基本型) 隣接数. 地区数. 隣接数. 規制緩和型 地区数. 隣接数. 区部. 342. 78. 249. 64. 93. 14. 多摩部. 345. 74. 324. 67. 21. 7. 計. 687. 152. 573. 131. 114. 21. 7. 再開発等促進区は除く。 平成 24 年 3 月時点。東京都都市整備局 HP 及び東京都都市整備局 東京都都市計画地理情報システムデ ータ内容を参考に筆者作成。 9 平成 24 年 3 月時点。規制強化型地区計画については基本型のみ。規制緩和型については誘導容積型、容 積適正配分型、用途別容積型及び街並み誘導型。東京都都市整備局 東京都都市計画地理情報システムデ ータ内容及び各区市町村 HP を参考に筆者作成。 8. -8-.

(9) 東京都の地区計画策定状況を図 3 に示す。都心部または郊外部にかかわらず、全体的に 地区計画の策定範囲が広まっている。特に千代田区、中央区、世田谷区、足立区、八王子 市、日野市、稲城市、多摩市においては、自治体面積の 2 割以上が地区計画面積であるな ど、その積極的な活用体制がうかがえる。区部においてはすべての自治体、多摩地域にお いては檜原村及び奥多摩町を除き、1 以上の地区計画を実施している。. 図 3 東京都の地区計画策定状況10. 3.地区計画制度についての理論分析及び問題点 3-1 地区計画策定による地価への影響 地区計画策定にかかる主なコストとしては以下が挙げられる。住民については意見の収 集などの合意形成活動、土地及び建物の整備費用がかかり、自治体については原案の縦覧、 説明会、コンサルタント契約などの合意形成活動、地区整備計画及び条例化された場合の 建築指導などのモニタリング、公共施設費及び住民への助成などである。 地域地区や地区計画などの土地利用規制は、規制がなかった場合に用途や高さの混在に よって生じる外部性を制御するために課せられている。また、地区計画は地方公共財であ. 10. 平成 24 年 3 月時点。ArcGIS(ESRI 社)を使用し、東京都都市整備局 テムデータより筆者作成。. -9-. 東京都都市計画地理情報シス.

(10) る公園や道路等の地区施設を供給させる制度であり、それら公共施設整備事業を通じて土 地利用の誘導を図ることも可能となっている。 現状の最低限の条件を一律で規定する一般規制手法である地域地区では、計画策定に時 間がかからなく幅広い用途やニーズなどその変化に対応できるが、策定地域内の詳細なニ ーズには十分に反映させることは難しいとされている。そのため、地方自治体及び住民に より地域情報を正確に把握することができれば、地区計画による規制の強化または緩和を 実施することにより地域の詳細なニーズに近づけることが可能となる。荒井(2007)によれば、 理論的には適切な土地利用規制によって地価は上昇し、不適切であれば規制前から下落す る可能性も十分にあるとしている。 地区計画による規制の強化は、その地区の住環境や防災性に寄与するが、利用可能な床 面積を減少させ、収益性を低下させる可能性も考えられる。規制の緩和は、逆の影響を与 える。また、それら効果は規制地区内にとどまらず、地区外の周辺にも及ぶと考えられる。 規制強化地区内で設置された地区施設の便益のスピルオーバーや規制緩和型地区内での高 層化による圧迫感などの外部不経済である。このように地区計画は地区内及び地区外に便 益と費用をともにもたらす可能性がある。地区計画による土地利用規制が地価に与える影 響についての可能性としては、先行研究の考察も踏まえ表 3 ように考えられる。 表 3 地区計画による規制が地価に与える影響11 正の要因. 地区内. 負の要因. ・容積率、高さ規制、最低敷地面積強化によ る採光、通風などの住環境向上. ・容積率、高さ規制強化による収益性の低下. ・道路、公園、壁面後退などの空間確保によ る街並み景観、住環境、防災性の向上. ・道路確保などの交通量増加に伴う安全性の 低下. ・高さ、意匠、柵などの統一による街並み景 観の向上 地区外 (周辺). ・隣接地区に設置される道路、公園による利 便性、防災性の向上. ・隣接地区に設置される道路などの交通量増 加に伴う安全性の低下. ・容積率、高さ規制緩和により利用可能床面 積が増大することによる収益性の向上 地区内. ・高さ、意匠、柵などの統一による街並み景 観の向上(街並み誘導型). ・建物規模・高さの不統一による住環境及び 街並み景観の悪化. ・土地利用転換の促進 ・都心住宅確保. 11. 地区外. ・隣接地区に設置される空地、多様な施設に よる利便性の向上. ・隣接地区の高層化・建詰りによる圧迫感、 採光、通風などの住環境の悪化. (周辺). ・土地利用転換による防災性の向上. ・隣接地区内への混雑、交通量増加に伴う安 全性の低下. 和泉(1999)、大澤(2011)、谷下ら(2009)及び(2012)、津田(2010)を参考に筆者作成。. - 10 -.

(11) 3-2 合意形成活動における問題 前述したとおり、地区計画策定にかかる主なコストのひとつとして住民及び自治体とも に合意形成活動が挙げられる。住民選好の同質性が高い場合には、このような公共的意思 決定に要する活動にかかるコストは比較的小さいと考えられる。 しかし、地区計画制度は法定都市計画であるため策定にあたっては財産権の制約を伴う ものであり、住民などの地権者や関係者の合意形成を進めるのが難しい側面がある。その ため、住民参加による合意形成は欠かせないとされているが、天野、土肥(1998)によれば東 京都区部では自治体発意の地区計画が当時 7 割を占めているとされており、住民側からだ けでなく自治体側からの計画発意も活発であるといえる。住民参加の方法論は地区計画決 定主体である各自治体に委ねられており、実質的な住民参加の規定は曖昧なものになって いるとされている。 大塚(2009)によれば、地区計画における住民合意に関する分析において、地区計画の案に ついて合意に至る過程には、地区外地権者も含めて関係者への情報提供や、関係者全員の 参加による最終的な意思の確認手続きが行われていることが重要であるとしている。これ らはフリーライダーの排除や閉鎖的なネットワークの中での規範成立をもたらしていると 考えることができる。特に、地区外の広範囲の住民及び事業者が利用する道路変更を伴う 地区計画や緩和型地区計画を決定する場合には、周辺に与える影響が大きいことから自治 体と地区内の地権者だけの検討に留めず、原案の縦覧、広報誌及び説明会等の早期段階か ら広く周知し、意見を聴取することが必要である。また黒岩(1997)によれば、地区計画など のプロジェクトの実施過程で、関係者の間でなんらかの合意形成活動が行われる場合、そ の過程でさまざまな取引費用が発生し、収益性の高く潜在的に持続可能なものであっても 意図せざる取引費用が発生する可能性があり、収益性の低下や持続不可能になる場合もあ るとしている。 都市計画法 16 条第 2 項では、都市計画に定める地区計画等の案は公聴会や説明会による 住民の意見収集、その原案に係る区域内の土地所有者等一定の利害関係者の意見を求めて 作成することが義務づけられているが、実際には地区内の合意形成のみに留まらないこと がある。. 3-3 自治体領域における問題 そもそも都などの広域自治体が区市町村などの地方自治体(基礎自治体)に地区計画の 策定権限を委ねている理由としては以下が挙げられる。地方自治体のほうが詳細な各地域 情報をより多く持っていることから、公共サービスの生産に必要な情報や技術がさほどコ ストをかけずに獲得でき、地域住民の厚生増大を期待できる。また広域自治体が度々住民 等と合意形成活動をするのではなく、地方自治体に任せることによる取引費用の回避及び 節約、個々のプロジェクト調整の円滑化などが考えられる。 広域自治体に財源を一元化し一定の権限を集中すれば、サービスが住民に十分行き届か - 11 -.

(12) なくなることが懸念され、住民に最も身近な区市町村こそがきめ細やかな住民サービスの 供給の役割を受け持ち、住民に対する責任を果たしていく必要があるといわれている。し かし林(2006)によれば、反対に「広域自治体は少なくとも地方自治体と同じくらい地域をよ く知っている」という命題を排除することはできず、論理的には地方自治体に可能なこと は職員の雇用方法や人事体系を適切に設計することによって広域自治体にも可能であるは ずであり、むしろ広域自治体は複数の地方の情報を集約し互いに比較検討できる立場にあ るため、情報の集積による追加的な費用効率性の向上も可能性としては排除できないとし ている。 地区計画などの政策における便益のスピルオーバーや外部不経済の問題は、規制地区や 地方自治体の政策が周辺域や他自治体に影響を与えることである。スピルオーバーの場合、 他自治体に便益を与える外部経済が発生することになり、公共サービスが最適な水準より も過小になる。最適な水準からの乖離は外部不経済の場合も同様である。このような外部 性による非効率性の問題は、地方自治体の政策決定者が他の地域に与える便益や費用を考 慮しない点に起因する。当然、空間的な制限により隣接域で実施する地区計画等の政策は、 他自治体に外部性を及ぼす可能性が高いといえる。 土居(2002)によれば外部性を内部化する方法として、ひとつは広域自治体がピグー税(補 助金)を利用して、地方自治体が認識する便益や費用を適切な水準に調整することが挙げ られる。もうひとつは、政策による外部性が及ぶ空間的範囲が公共サービスを提供する自 治体範囲が合致していない場合、広域自治体が政策を管理する。また地方自治体領域を便 益が及ぶ範囲と合致するように決めれば、これに伴う非効率性を根絶することができるが、 現状の地方自治体における行政区域は歴史的な産物であり変更は容易ではない。このよう に地区計画制度において、策定主体が各区市町村である、及び自治体領域が存在するがゆ えの自治体隣接域での問題が考えられる。. 4.隣接域における地区計画の影響に関する実証分析 4-1 問題意識及び検証する仮説 地区計画運用にかかるコストを負担するのは実施自治体及びその地区住民等である。先 に述べたとおり東京都の既成市街地では地区計画策定数が増えており、他自治体に隣接12し て実施される地区計画も少なくない。 そのような中、隣接域で地区計画を策定するにあたり他自治体との協議及び連携の義務. 12 本稿において地区計画が隣接するとは、計画区域が自治体境界線に接しており、且つ自治体間が少なく とも地上部で接していることを表す。海、河川等で自治体境界線または外周域に接しているものは含まな いものとする。. - 12 -.

(13) はない。しかし、各自治体の縦覧や説明会の実施状況において、地権者以外の地区外から の意見も出ることがあるため、隣接域で地区計画を策定しようとする際、他自治体及びそ の住民等とまったく接触しないということは可能性として低いと考えられる。 本稿では、隣接域では内部域より取引費用が多く発生しているという仮説を置く。それ により、内部域と隣接域で実施される地区計画には効果の違いがあるのではないか。さら に、地区計画には外部性があるため、隣接域で実施される地区計画は他の自治体にまで影 響を及ぼしているのではないか。このことを概念図で表現したものを図 4 に示す。. 図 4 隣接している地区計画及び地区計画の外部性の概念図 4-2 検証方法・推計式及び説明変数 本稿ではヘドニック・アプローチにより、制度の効果を検証する。 対象とする地区計画は、以下に該当するものとする。東京都特別区及び多摩地域の各区 市町村で実施されているもののうち、住居系用途地域を含むもの13、地区整備計画まで定め ているもの14。規制強化型地区計画においては基本型の地区計画とし、容積率の最高限度、 建蔽率の最高限度、壁面の位置の制限及び建築物等の高さの最高限度の建物規模及び収益 性に直接影響する規定を含むものとする15。規制緩和型地区計画においては誘導容積型、用 途別容積型、街並み誘導型とする。データの制約上、再開発等促進区は除外する。 また、国土数値情報ダウンロードサービスの 1997 年から 2012 年の公示地価を使用し、 パネルデータを作成した。そのうち対象とするものは、東京都特別区及び多摩地域におけ る住居系用途地域の住宅用途の地点とする。. 13 地区計画区域に第一種低層住居専用地域、第二種低層住居専用地域、第一種中高層住居専用地域、第二 種中高層住居専用地域、第一種住居地域、第二種住居地域、準住居地域を含むものとする。近隣商業地域、 商業地域、準工業地域、工業地域、工業専用地域のみで構成される地区計画は除外した。 14 方針のみ定めてある地区計画は除外した。 15 建築物の用途の制限、建築物の敷地面積又は建築面積の最低限度、建築物等の形態又は色彩その他の意 匠の制限、建築物の緑化率の最低限度、垣又はさくの構造の制限でのみ規定されている地区計画は除外し た。また地区内でさらに複数区域について規定内容が分かれている場合は、その地価ポイントの該当する 区域の規制を対応させている。. - 13 -.

(14) 本稿では、公示地価の各地点が有する観測できない特性の影響を除去し規制実施の効果 を抽出するため、固定効果モデルを採用する。各変数の説明及び基本統計量は表 4 及び表 5 に示すとおりである。ダミー変数の作成には ArcGIS(ESRI 社)を用い、多重リングバッ ファ、インターセクト等の機能により該当地点の抽出を行った。推計式を以下に示す。. ln. ・ ・ ・. :地点 i、年次 t における公示地価(円/㎡) :地点 i、年次 t における説明変数 j の値 :誤差項. 表 4 被説明変数及び説明変数一覧 変数. 説明. 出典. ln公示地価. 公示地価の対数値. 公示地価. 年次ダミー. 2,012年を基準とし、公示地価ポイントが各年 の地価である場合に1をとるダミー変数. 公示地価. 強化型地区計画内ダミー. 公示地価ポイントが規制強化型地区計画の区域 都GISデータ、各自治体HP 内である場合に1をとるダミー変数. 緩和型地区計画内ダミー. 公示地価ポイントが規制緩和型地区計画の区域 都GISデータ、各自治体HP 内である場合に1をとるダミー変数. 他自治体隣接ダミー(隣接). 地区計画が他自治体境界と接している場合に1 都GISデータ をとるダミー変数. 地区計画策定年数(年数). 地区計画が都市計画決定されてからの経過年数 各自治体HP. 強化型地区計画距離 L mダミー. 公示地価ポイントが規制強化型地区計画の区域 外周から0~300m(100mスパンで設定)にあ 都GISデータ、GIS計測 る場合に1をとるダミー変数. 緩和型地区計画距離 L mダミー. 公示地価ポイントが規制緩和型地区計画の区域 外周から0~300m(100mスパンで設定)にあ 都GISデータ、GIS計測 る場合に1をとるダミー変数. 他自治体内ダミー(他自治体). 公示地価ポイントが他の自治体で実施する地区 計画の区域外周から300m以内にある場合に1 都GISデータ をとるダミー変数. - 14 -.

(15) 表 5 基本統計量 変数. 観測数. 平均値. 標準偏差. 最小値. 最大値. ln公示地価. 5,639. 12.6133. 0.5707. 10.7727. 14.8380. 強化型地区計画内ダミー. 5,639. 0.0621. 0.2413. 0. 1. 緩和型地区計画内ダミー. 5,639. 0.0043. 0.0651. 0. 1. 強化型地区計画内ダミー*(隣接). 5,639. 0.0071. 0.0839. 0. 1. 緩和型地区計画内ダミー*(隣接). 5,639. 0.0018. 0.0421. 0. 1. 強化型地区計画内ダミー*(年数). 5,639. 0.6197. 2.9547. 0. 28. 緩和型地区計画内ダミー*(年数). 5,639. 0.0266. 0.5778. 0. 26. 強化型地区計画内ダミー*(年数)の2乗項. 5,639. 9.1130. 56.2485. 0. 784. 緩和型地区計画内ダミー*(年数)の2乗項. 5,639. 0.3345. 11.5297. 0. 676. 強化型地区計画内ダミー*(隣接)*(年数). 5,639. 0.0536. 0.7948. 0. 26. 緩和型地区計画内ダミー*(隣接)*(年数). 5,639. 0.0122. 0.4088. 0. 26. 強化型地区計画内ダミー*(隣接)*(年数)の2乗項. 5,639. 0.6345. 14.1860. 0. 676. 緩和型地区計画内ダミー*(隣接)*(年数)の2乗項. 5,639. 0.1672. 9.1575. 0. 676. 強化型地区計画距離100mダミー. 5,639. 0.0798. 0.2710. 0. 1. 強化型地区計画距離200mダミー. 5,639. 0.0853. 0.2794. 0. 1. 強化型地区計画距離300mダミー. 5,639. 0.0913. 0.2881. 0. 1. 緩和型地区計画距離100mダミー. 5,639. 0.0071. 0.0839. 0. 1. 緩和型地区計画距離200mダミー. 5,639. 0.0151. 0.1219. 0. 1. 緩和型地区計画距離300mダミー. 5,639. 0.0066. 0.0807. 0. 1. 強化型地区計画距離100mダミー*(他自治体). 5,639. 0.0035. 0.0595. 0. 1. 強化型地区計画距離200mダミー*(他自治体). 5,639. 0.0050. 0.0703. 0. 1. 強化型地区計画距離300mダミー*(他自治体). 5,639. 0.0083. 0.0909. 0. 1. 緩和型地区計画距離100mダミー*(他自治体). 5,639. 0.0000. 0.0000. 0. 0. 緩和型地区計画距離200mダミー*(他自治体). 5,639. 0.0016. 0.0399. 0. 1. 緩和型地区計画距離300mダミー*(他自治体). 5,639. 0.0004. 0.0188. 0. 1. 被説明変数に公示地価(円/㎡)の対数値をとり、次のとおりの推計モデル1~5で分 析を行った。. モデル 1・2: 規制強化型及び緩和型地区計画内ダミー、を説明変数として用いる。そ れぞれ他自治体隣接ダミーの交差項から内部域で実施される地区計画と 隣接域との差を分析する。 モデル 3. :モデル 2 の変数と地区計画策定年数の交差項から、地区計画による時間 を通じた効果を分析する。. モデル 4・5:強化型及び緩和型地区計画距離 100~300m ダミー及びそれらと他自治 体内ダミーとの交差項を説明変数として用いる。それぞれの地区計画の 波及効果について、地区計画実施自治体域及び他自治体域との差を分析 する。. - 15 -.

(16) 4-3 推計結果及び考察 まず、推計モデル 1~3 の推計結果を、表 6 に推計結果を示す。 表 6 推計結果 被説明変数 説明変数 強化型地区計画内ダミー 緩和型地区計画内ダミー. ln公示地価. ln公示地価. ln公示地価. モデル1. モデル2. モデル3. -0.1043 *** (0.0139) -0.1008 *** (0.0151) -0.0715 *** (0.0212) 0.1385 *** (0.0349). 0.1952 *** (0.0422). 0.1174. (0.0892). 0.0309. (0.0613). (0.0634) -0.0940. (0.1468). 強化型地区計画内ダミー*(隣接). -0.0177. (0.0295). 緩和型地区計画内ダミー*(隣接). -0.1516 **. -0.0082 **. 強化型地区計画内ダミー*(年数). (0.0042). 0.0336. (0.0299). 強化型地区計画内ダミー*(年数)の2乗項. -0.0001. (0.0002). 緩和型地区計画内ダミー*(年数)の2乗項. -0.0013. (0.0011). 強化型地区計画内ダミー*(隣接)*(年数). -0.0001. (0.0132). 緩和型地区計画内ダミー*(隣接)*(年数). -0.0385. (0.0423). 強化型地区計画内ダミー*(隣接)*(年数)の2乗項. -0.0002. (0.0005). 緩和型地区計画内ダミー*(隣接)*(年数)の2乗項. 0.0018. (0.0016). 緩和型地区計画内ダミー*(年数). 年次ダミー (省略) 定数項. 12.5060 *** (0.0033) 12.5602 *** (0.0033) 12.5144 *** (0.0035). 観測数 自由度修正済決定係数. 5639. 5639. 5639. 0.6134. 0.614. 0.6211. ()内の数値は標準誤差。 ***は1%, **は5%, *は10%の水準で統計的有意であることを表す。. モデル 2 については、規制強化型地区計画では地区内の地価を 10%下げ、緩和型では地 価を 20%上げる傾向があると、ともに 1%水準で有意な結果となった。規制強化による住 環境向上の便益より、床面積の抑制による収益の低下が大きい。つまり、東京都では平均 的に過剰に規制しており、望ましい水準を超えてしまっている可能性がある。緩和型につ いては、望ましい水準に近づいている傾向があると考えられる。 また、着目したい変数である他自治体隣接ダミーとの交差項については、緩和型では内 部域に比べ地価上昇効果が 15%低い傾向があり 5%水準で有意な結果となった。隣接域で 緩和する地区計画には、他自治体との交渉などの取引費用が作用しており、緩和による収 益性が内部域に比べ下がっていると考えられる。具体的には、規制緩和型地区計画の意見 収集及び公示・縦覧などの合意形成活動の際に、反対する周辺住民に加え他自治体とも協 議をすることになり、その意見も踏まえ望ましい水準まで規制したかったところが妥協案 になっている可能性が考えられる。現状では地方自治体間の交渉によって解決するという 形態はうまくいっていない、つまり外部性を内部化することになっていないことが考えら - 16 -.

(17) れる。 モデル 3 では、先行研究16にもあるが地区計画の策定年数経過による地価への影響を分析 することを目的とした。規制強化型地区計画内において、収益性の低下があったとしても 将来的には住環境の改善によりその影響が相殺されると想定したが、策定年数が経つほど 地価が下がる傾向は有意となったが、変化がマイナスからプラスに転じる結果とならなか った。また、今回の分析ではほかの説明変数には有意性はみられなかった。 次に、推計モデル 4 及び 5 の推計結果を、表 7 に推計結果を示す。 表 7 推計結果 ln公示地価. 被説明変数. ln公示地価. モデル4. 説明変数 強化型地区計画内ダミー 緩和型地区計画内ダミー. モデル5. -0.0985 ***. (0.0151). 0.1956 ***. (0.0422). -0.0975 ***. (0.0152). 0.1961 ***. (0.0422). 強化型地区計画内ダミー×(隣接). -0.0177. (0.0295). -0.0173. (0.0295). 緩和型地区計画内ダミー×(隣接). -0.1516 **. (0.0634). -0.1437 **. (0.0637). 強化型地区計画距離100mダミー 強化型地区計画距離200mダミー. 0.0215. (0.0491). 0.0471 **. (0.0231). 0.0325. (0.0524). 0.0408 *. (0.0234). 強化型地区計画距離300mダミー. -0.0196. (0.0351). -0.0423. (0.0389). 緩和型地区計画距離100mダミー. -0.1259 ***. (0.0532). -0.1258 **. (0.0532). 緩和型地区計画距離200mダミー. -0.0809. (0.056). -0.106 *. (0.0616). 緩和型地区計画距離300mダミー. 0.0229. (0.044). 0.0014. (0.0476). 強化型地区計画距離100mダミー*(他自治体). 0.0387. (0.1749). 強化型地区計画距離200mダミー*(他自治体). 0.2311 *. (0.1369). 強化型地区計画距離300mダミー*(他自治体). 0.1463. (0.1057). 緩和型地区計画距離100mダミー*(他自治体). (omitted). 緩和型地区計画距離200mダミー*(他自治体). 0.1447. (0.1484). 緩和型地区計画距離300mダミー*(他自治体). 0.1761. (0.1262). 年次ダミー (省略) 定数項. 12.5039 ***. 観測数 自由度修正済決定係数. (0.0067). 12.5144 ***. (0.0035). 5639. 5639. 0.6152. 0.6145. ()内の数値は標準誤差。 ***は1%, **は5%, *は10%の水準で統計的有意であることを表す。 (omitted)については隣接域の緩和型地区計画が少ない為、使用データではサンプルが存在しなかった。. モデル 4 については、規制強化型の地区計画外周から 200m の地点で地価を上げる傾向 があり、5%水準で有意な結果となった。緩和型では、100m の地点で地価を下げる傾向が 1%水準で有意な結果となった。地区計画には波及効果があり、規制強化地区外へ防災性の 向上などの便益のスピルオーバーや、地区内の緩和による周辺への圧迫感・日照の妨げな 16. 谷下ら(2012)、杉浦(2012)参照。. - 17 -.

(18) どの住環境の悪化をもたらすことが考えられる。 モデル 5 については、他自治体内ダミーとの交差項との差を比較すると、規制緩和型は 有意ではないが、強化型については 200m 地点で内部域よりさらに地価を上げる傾向があ り 10%水準で有意な結果となった。これについては、他の自治体にまで同じ影響を及ぼし ており、且つ地区計画実施自治体の住民より多くの便益を受けていることがいえる。コス トをかけず、となりの地区の壁面後退などの防災性向上などの便益を受けているというフ リーライドしている可能性が考えられる。隣接域で実施する規制強化型地区計画について は、取引費用が小さいまたは無いことも考えられる。. 5.まとめ 5-1 政策提言 以上、本稿での分析結果より、自治体内部域と隣接域で実施される地区計画の効果に差 異があり、さらに隣接自治体へ影響を及ぼす可能性があることを示した。 隣接域で緩和型地区計画を実施する場合においては、取引費用が発生している可能性が あることが示された。現状では住民や自治体が隣接域で緩和型地区計画を実施する確率が 低いことが考えられる。よって他自治体及びその住民にも意思決定に参加させるべきであ り、原案段階からの自治体間協議を義務づけることも考えられる。しかし必ず取引費用が 発生することになり、住民や自治体の隣接域で地区計画を実施するインセンティブをさら に低下させ、隣接域はどちらの自治体も何もしないという地区計画が実施されない地域に なってしまう。 また、隣接域で実施されている強化型地区計画など便益がスピルオーバーしている場合 には、便益が及ぶ地域の住民に費用を負担させ、供給についての意思決定を委ねるべきで ある。都市計画決定権者が地区計画等の土地利用規制を定めるときには、その地区内だけ でなく周辺も含めた影響範囲全体の効用を分析する必要があると考えられる。 今回の研究より、以下を政策提言として示す。. 自治体隣接域で実施する緩和型地区計画については、地方自治体ではなく交渉によらな い中立的な立場である広域自治体が、外部性をコントロールした上で、地区計画を発意し 策定する、といった政策における広域自治体の介入を強化することが考えられる。 自治体隣接域で実施する強化型地区計画については、便益のスピルオーバーした分の自 治体間における費用負担制度が必要である。計画を実施していない自治体にしてみればコ ストをかけずに済むため、取引費用がかからない可能性があるとも考えられる。よって、 地区計画を実施しない他自治体が便益を受ける分の費用負担を前提とした上での、実施す - 18 -.

(19) る予定の自治体へ発意できる権利制度をつくることも考えられる。 なお、本稿の問題意識とは別だが実証分析の結果より、東京都における現状の規制強化 型地区計画の規定項目には定期的な見直し、または緩い規制から段階的に強めていく必要 がある可能性があると考えられる。. 5-2 今後の課題 本稿の分析では、地区計画の属性の区分については規制の強化及び緩和のみにとどまっ ており、詳細な属性が考慮されていない点がある。また、各自治体は面積・人口・財政状 況等が異なり、その自治体内の各地域によってもそれぞれの行政課題やニーズがある。地 区計画毎の規定内容などの詳細な属性や、その自治体及び住民の選好の詳細なデータを使 用することによって、精度の高い分析結果を得られるものと考えられる。また、他の地域 を含めた広域なエリアの分析を行うことにより、理論の一般化を図る必要がある。これら を加味することにより深い知見を得られるものと考えられる。さらに、前述したとおりス ピルオーバーや外部不経済の問題として、歴史的な産物である現状の自治体領域の存在が 挙げられる。よって幹線道路や河川など地方公共財のスピルオーバーや外部不経済の波及 効果が解消される境界まで、現状区域とのバランスを加味した上で再検討の必要があるこ とも考えられる。そのような波及効果を遮ることを実証する変数を加えることも今後の課 題としたい。. 謝辞 本稿の作成にあたり、北野泰樹助教授(主査)、久米良昭教授(副査)、吉田恭(副査) から丁寧なご指導をいただいたほか、まちづくりプログラムディレクターである福井秀夫 教授をはじめ関係教員の皆様から、お忙しい中大変貴重なご意見をいただきました。この 場を借りて心より感謝申し上げます。 あわせて、東京都都市整備局都市づくり政策部都市計画課の職員の方々には、多忙な日 常業務にもかかわらず、データの提供にご協力いただきました。ここに記し、感謝の意を 表します。また、貴重な研究の機会を下さった派遣元に感謝申し上げます。 なお、本稿は筆者の個人的な見解を示すものであり、筆者の所属機関の見解を示すもの ではありません。また、本稿における見解及び内容に関する誤りはすべて筆者個人に帰属 します。. - 19 -.

(20) <参考文献> 荒井貴史(2007)「土地利用規制の経済学的考察」 『尾道大学経済情報論集 2007』 天野裕、土肥真人(1998)「東京都区部における地区計画策定プロセスの住民参加に関する研 究」『第 33 回日本都市計画学会学術研究論文集』pp.445-450 生田長人(2010)『都市法入門講義』信山社 和泉洋人(1999)「地区計画策定による容積率緩和がもたらす土地資産価値変動効果の計測」 『都市住宅学』第 27 号、pp.143-152 大澤幸憲(2011)「外部不経済の発生を考慮した容積率規制の緩和の検証 -東京都の郊外住 宅地における 7 市の事例-」『都市住宅学』第 74 号、pp.71-79 大塚康央(2009)「地区計画における住民合意に関する一分析 -区域、組織、決定手続きに 着目して-」『大阪市大創造都市研究』第 5 巻、第 2 号、pp.56-76 河村茂(2009)『建築からのまちづくり』清文社 黒岩郁雄(1997)「地方分権化と援助事業の制度分析-取引費用アプローチ-」『経済協力シ リーズ(181) / 援助の実施と現地行政』pp.225-250 黒澤誠、松岡恭子(2011)「東京都 23 区の区堺における地区計画の調査と分析 -8 つの事 例を対象として-」 『東京電機大学未来科学部建築学科 特別研究・設計 論文概要』 杉浦美奈(2012) 「住民発意による土地利用規制が及ぼす影響の分析」 『平成 23 年度 政策 研究大学院大学まちづくりプログラム論文集』 谷下雅義、長谷川貴陽史、清水千弘(2012)「地区計画・建築協定の規制が戸建住宅価格に及 ぼす影響」 『都市住宅学』第 76 号、pp.104-111 谷下雅義、長谷川貴陽史、清水千弘(2009)「景観規制が戸建住宅価格に及ぼす影響 -東京 都世田谷区を対象としたヘドニック法による検証-」『計画行政』32(2)、pp.71-79 津田あゆみ(2010)「地区計画による地区施設道路の整備効果に関する分析」 『平成 21 年度 政策研究大学院大学まちづくりプログラム論文集』 土居丈朗(2002)「入門公共経済学」日本評論社 林正義(2006)「国と地方の役割分担 -経済学的視点と日本の実態-」 『中央と地方の役割 分担と財政の関係に関する共同研究最終報告書』 肥田野登(1997)『環境と社会資本の経済評価』剄草書房 福井秀夫(2007)『ケースからはじめよう 法と経済学』日本評論社 森田学(2005)「地区計画による制限が資産価格に与える効果」Best Value 9. <参考資料・使用データ> 東京都都市整備局 HP (http://www.toshiseibi.metro.tokyo.jp) 東京都各区市町村 HP 国土数値情報ダウンロードサービス 公示地価 国土交通省国土政策局国土情報課 東京都都市計画地理情報システムデータ 東京都都市整備局 - 20 -.

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