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「商業集積に対する空き店舗活用補助事業の有効性に関する研究」

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商業集積に対する空き店舗活用補助事業の有効性に関する研究

<要旨> 全国の商店街などで空き店舗が増加していることを背景に、1990 年代後半以降、全国の自治体 において空き店舗に対する入居補助事業が実施されている。こうした空き店舗活用補助事業は、 商業集積による正の外部効果を期待して行われているものである。しかし、空き店舗活用補助金 は商業集積を妨げる経済学的メカニズムを内包している可能性がある。通常、店舗の出店には多 額の費用がかかり、そのことが一定水準以上の資本や市場競争力を備えていない店の参入を排除 する自然のスクリーニング効果をもたらしている。しかし、空き店舗活用補助金は出店コストを 下げるため、スクリーニング効果を打ち消し質の低い店舗の参入を容易にしてしまう可能性があ る。本稿はこうした問題意識のもと、補助金給付が参入する店舗の質に与える影響について、店 舗の質の代理指標にCGM(Consumer Generated Media)の一種である食べログの評価点を用いて 計量分析により検証した。分析の結果、賃借料に対する補助は質の高い店舗を集める可能性があ ることが実証された。一方で、賃借料に対する補助額が多額になるほど、質の低い店舗の参入す る余地の高まることが実証された。この結果を踏まえ、補助の審査の過程で質の低い店舗を排除 するために、審査において存在する店舗の質に関する情報の非対称を緩和させる具体策を提言し ている。

2016 年(平成 28 年)2 月

政策研究大学院大学 まちづくりプログラム

MJU15607 相馬 一紀

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目次

1 はじめに ... 1 2 商業集積に対する政策の実施状況 ... 1 2.1 商業集積の概況 ... 2 2.2 商業集積に対する政策の変遷 ... 2 2.3 空き店舗活用補助事業の政策の概要 ... 3 3 空き店舗活用補助事業に関する理論分析 ... 5 3.1 空き店舗活用補助事業の経済学的根拠と限界 ... 5 3.2 空き店舗活用補助事業がもたらす影響についての問題意識... 6 4 空き店舗活用補助事業が店舗の質に与える影響の実証分析 ... 6 4.1 仮説と分析の方法 ... 6 4.2 食べログデータの使用に関する留意点 ... 7 4.3 分析モデル及び変数の内容 ... 8 4.4 分析の結果 ... 12 4.5 考察 ... 13 5 空き店舗活用補助事業が地価に与える影響の実証分析... 16 5.1 仮説と分析の方法 ... 16 5.2 分析モデル及び変数の内容 ... 16 5.3 分析の結果 ... 17 5.4 考察 ... 17 6 政策提言 ... 17 7 おわりに ... 18

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1 はじめに

1990 年代以降、規制緩和により大規模店舗の郊外立地が進んだことを背景に、全国の多くの中 心市街地の商店街が衰退し、空き店舗が増加している1。この状況を受け全国多くの自治体で、商 店街の空き店舗に対する入居支援として、初期費用や賃借料の一部補助事業が行われている。こ うした補助事業は、中心市街地に商業を集積させることによってまちの魅力を向上し賑わいを創 出することを目的としており、一市あたり年間1000 万~4000 万円の予算が投じられているとい われている2 こうした空き店活用補助事業によって魅力的な店舗が集積すれば、来客が増え、賑わいが生ま れると考えられる。しかし、空き店舗活用補助事業が店舗の出店コストを引き下げることによっ て、本来目的としていた魅力的な店舗が集まるのではなく、むしろ補助なしでは出店できなかっ たような質の低い店舗が集まってしまうのではないだろうか。 本稿はこうした問題意識のもと、補助が参入する店舗の質に与える影響について、店舗の質の 代理指標にCGM(Consumer Generated Media)の一種である食べログの評価点を用いて計量分析 により検証した3。これまで空き店舗活用補助事業に関する先行研究としては、空き店舗対策事業 が来街者数等に与えた影響を考察するもの(吉岡ほか,1999)や、空き店舗対策事業の運用実態と課 題の社会調査を行ったもの(鈴木ほか,2015)がある。さらに、空き店舗への出店が円滑に進まない 理由を考察した研究(居城ほか,2008)があるが、空き店舗活用補助事業が参入する店舗の質に与え る影響をミクロ経済学的に考察し、計量分析を行った研究はない。なお、本稿は空き店舗活用補 助金を使って出店した店舗を貶める意図はなく、あくまで経済学的視点から想定される空き店舗 活用補助事業の影響を実証することを目的とするものである。 分析の結果、賃借料に対する補助は質の高い店舗を集める可能性があることが実証された。一 方で、賃借料に対する補助額が多額になるほど、質の低い店舗の参入する余地の高まることが実 証された。 本論文の構成は以下の通りである。第 2 章では商業集積に対する政策の実施状況を示し、第 3 章では空き店舗活用補助事業がもたらす影響を理論分析により示す。そして、第4、5 章では理論 分析に基づき、空き店舗活用補助が店舗の質に与える影響、地価に与える影響についてそれぞれ 実証分析を行い、第6 章では実証分析の結果に基づく政策提言を行っている。

2 商業集積に対する政策の実施状況

本章では商店街における空き店舗の現状と空き店舗補助事業について整理する。また、中核市 に対するヒアリングを基に、空き店舗活用補助事業の実施状況についてまとめている。 1 前田(2001)を参照した。 2 足立(2010)の調査による。 3 株式会社カカクコムが運営する飲食店情報サイト(http://tabelog.com/)。実際にお店を訪れた人による評価に基づき、お店に 対する評価点がつけられる。

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2 2.1 商業集積の概況 経済産業省の商業統計における定義による と、「商業集積地区」は、 都市計画法第8 条 に定める「用途地域」のうち、近隣商業地域 及び商業地域であって、商店街を形成してい る地域をいう。この商店街とは、小売店、飲 食店及びサービス業が近接して 30 店舗以上 あるものとされている。平成19 年度(2007 年 度)の商業統計表によれば、こうした商店街は 全国に12,568 ヶ所存在している。 また、中小企業庁が平成24 年度(2012 年度) に行った商店街実態調査報告書によると、図 1 のとおり、商店街における空き店舗は増加 傾向にある。こうした状況を受けて、多くの 自治体において空き店舗活用補助事業が行わ れている。 2.2 商業集積に対する政策の変遷 本項では、商業集積に対し行われてきたさまざまな保護政策について、その流れを振り返って いく4。商業集積に対する保護政策は、組織化した商店街に対して行われてきた。そもそも商店街 の黎明期は第一次世界大戦後の不況期である。この時期、多くの離農者が都市に流入し、零細の 小売・サービス業が増大した。零細の小売・サービス業者は、百貨店に対抗するため集積し、商 店街として組織化した。 組織化した商店街は、政府に対し規制・保護を求めていく。こうした動きの中で、1956 年、百 貨店に対して規制を加える新百貨店法が成立した。また同年、圧力団体「中小企業政治連盟(中 政連)」が結成され、翌1957 年には、中小企業の権益を強化する中小企業団体の組織に関する法 律(中小企業団体法)が成立した。 さらに1962 年、商店街振興組合法が成立する。同法は商店街で結成した組合に法人格を与える とともに、政府が必要と認める場合においては組合に対して補助金を交付できる旨が明記された ものであった。また、1960 年代から 1970 年代にかけての、スーパーマーケットの大量出店と、 それに対する各地で商店街による反対運動の結果、1973 年に、大規模小売店舗法(以下、大店法) が制定され、大型小売店舗の立地に制限がかかった。 補助金政策に関しては、1962 年の商店街振興組合法の施行以降、アーケード設置やカラー塗装 などのハード面の整備に係る補助が中心であったが、1980 年代に入ると、コミュニティ・マート 構想(商店街を単なる買い物施設にとどまらない人々のふれあいや交流の場とするもの)が生ま れ、補助の内容もハード面に加え、コンサルティング支援等のソフト面に係るものが設けられる 4 加藤ほか(2006)、新(2012)、満薗(2015)を参考にした。 図1 1 商店街の空き店舗数及び空き店舗率の推移 出典:中小企業庁 平成 24 年度商店街実態調査報告書

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3 ようになった。 このように、戦後一貫して規制や補助金等の商店街を保護する政策がとられてきたが、1980 年 代末の日米構造問題協議を機に流通規制緩和が進むこととなった。こうした流れのもと、1991 年 と1994 年に規制緩和を目的とした大店法の改正が行われた。さらに 1998 年には大店法が廃止さ れ、大規模小売店舗立地法(以下、大店立地法)が制定された。大店立地法は大型店の出店に際 し周辺環境への配慮義務を規定したため、大型店の郊外への出店が進むことになった。一方、同 年、空洞化していく中心市街地の活性化を目的として、中心市街地活性化法が制定された。本法 の制定により、地方自治体において中心市街地活性化基本計画が策定され、計画に基づく様々な 活性化事業が展開されることとなった。 商店街の空き店舗活用補助事業の多くは、中心市街地活性化基本計画における事業の一つに位 置づけられている。1990 年代以降の大型店舗の郊外立地が進んだことを背景に商店街の空き店舗 が増加したことを受け、1990 年代末から全国で空き店舗活用補助事業が展開されていった。 2.3 空き店舗活用補助事業の政策の概要 空き店舗活用補助事業の政策の概要を把握するため、中核市 44 市5に対して電話によりヒアリ ングを実施した。本項ではその結果について示す。なお、本論文で対象とする空き店舗活用補助 事業は、商業集積形成のための個店の入居支援を目的としたものとする。したがって、商店街自 身が事業主体として空き店舗を活用するための補助や、商店街による空き店舗を埋めるための活 動費に対する補助は対象外とする。 空き店舗活用補助事業は、入居時の改装費など初期費用に対して補助を行うもの、一定期間月々 の賃借料に対して補助を行うもの、初期費用、賃借料両方に対して補助を行うものに大別される。 市ホームページやヒアリングによって中核市の空き店舗活用補助事業を調査し、表 1 のとおり分 類した。 表1 中核市における空き店舗活用補助事業の分類 政策の分類 都市名 初期費用に対する補助 盛岡市、宇都宮市、前橋市、高崎市、柏市、八王子市、長野市、高 槻市、倉敷市、福山市、久留米市、宮崎市 賃借料に対する補助 旭川市、郡山市、岐阜市、豊橋市、豊田市、高松市、高知市 初期費用・賃借料に対する補 助 函館市、青森市、秋田市、川越市、越谷市、船橋市、富山市、金沢 市、大津市、東大阪市、姫路市、尼崎市、西宮市、下関市、松山市、 大分市、鹿児島市 空き店舗活用補助事業を実施している中核市は、44 市中 36 市であった。また、実施していな い8 市のうち 3 市は、かつて実施していたが効果が上がらないなどの理由からやめてしまったと の回答を得た。 また、中核市に対して、表2 の内容についてヒアリングを実施した。 5 いわき市を除く中核市44 市(2015 年 11 月時点)。いわき市は、東日本大震災の被害を受けた中小企業者に対し補助を行って おり、本論文で対象とする補助制度と背景・内容が大きく異なるため、ヒアリング対象外とした。

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4 表2 中核市に対するヒアリング項目 分類 内容 事業の概要 ・開始時期 事業の実績 ・どれくらいの店舗に補助を行ったか ・どのような業態が多いか 事業運営の実態 ・補助を受けられるのに受けずに出店する事例があるか ・予算に対して補助申請が競合した場合どう対応しているか ・補助金(賃借料補助)がなくなるとすぐに撤退してしまう事例があるか 図2 は、事業の開始時期についての回答を集計したものである。1990 年代後半以降、中核市に おいて順次空き店舗活用補助事業が行われていることがわかる。また、補助実績に関しては、図 3 のとおり多くの中核市が平均して年間 10 件以内の補助件数であるとの回答を得た。さらに、補 助を受けている店舗に多い業態として飲食店という回答が多数を占めた。 表3 空き店舗活用補助事業運営の実態 質問事項 主な回答のまとめ 補助を受けられるのに受け ない事例があるか ・補助の審査期間が長く、待てないため補助を使わず出店 (補助金受領の機会費用が高い) ・手続きが面倒で補助を受けない場合がある ・空き店舗に該当しない好立地に場所に出店 ・補助の存在を知らず、申請のタイミングを逃した 予算に対して補助申請が競 合した場合どう対応してい るか ・補正予算を組んで対応 ・先着順 補助金(賃借料補助)がなく なるとすぐに撤退してしま う事例があるか ・補助店舗が撤退する件数は市によって様々 ・補助がなくなるとすぐ撤退する事例が多かったことから賃借料補助 を取りやめた 図 2 中核市における空き店舗補助事業実施累計 出典:中核市へのヒアリングに基づき筆者作成 ※事業実施の36 市中 33 市から回答を得た 図3 中核市における年間平均補助件数 出典:中核市へのヒアリングに基づき筆者作成 ※事業実施の36 市中 27 市から回答を得た

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5 また、空き店舗活用補助事業運営の実態として、表3 のとおり回答が得られた。なお、表 3 に は本稿の研究に関連する店舗の出店、補助申請及び撤退に関する回答をまとめている。この結果 から、補助を受けられる区域において出店する店舗は必ずしも補助申請を行うわけではなく、様々 な理由により補助を受けずに出店する事例があることなどが分かった。

3 空き店舗活用補助事業に関する理論分析

3.1 空き店舗活用補助事業の経済学的根拠と限界 ここでは、空き店舗活用補助事業の経済学的根拠とその限界を考察する。経済学において補償 原理を仮定するならば、資源配分の効率性の観点から、政府による市場介入が正当化されるのは いわゆる市場の失敗がある場合に限られる6。また、補助による介入が正当化できる場合として考 えられるのは、正の外部性がある場合である。正の外部性がある場合、財の供給が望ましい水準 に比べ過少になるが、補助によって適切な供給量を実現することができる。逆に市場の失敗が存 在しない市場に対して補助による介入が行われると、補助の支出額以上の余剰の増加は得られず、 死荷重を生んでしまうことになる7 こうした観点から空き店舗活用補助事業を考察すると、空き店舗活用補助事業は、補助金によ り都市の中心市街地における空き店舗に対する出店を促進し商業の集積を形成することにより、 賑わいの創出を図ろうとするものである。補助によって商業の集積が実現すると、商店主間では 来客が増えて、広告宣伝活動の生産性が向上し、消費者は取引費用の一種であるサーチコスト(交 通費、移動の機会費用、お店の探索コスト)が下がる。このような、商業の集積によって各々の 取引費用が効率化・削減できる効果は、集積の経済と呼ばれる正の外部性である。 しかしながら、集積の経済をもって直ちに補助が正当化できるとはいえない。商業の集積によ る正の外部性が生じるものには、中心市街地の商店街以外にもショッピングモールや商業ビルな どさまざまなものがあるが、これらは、補助を受けることなく立地している。補助を受けなくて も自然に商業の集積が実現するのであれば、補助は必要ない。むしろ、自然に商業の集積が実現 するものを、補助によって特定の場所に誘導することは、商業にとっての最適な立地を妨げる政 府の失敗ともいえる。 では、どのような場合に、中心市街地の商店街に補助を支出することが正当化できるのか。規 制改革推進のための3 か年計画(2007 年 6 月 22 日閣議決定)における議論によると、既存の中心 市街地と郊外とを比較したとき、一般的に中心市街地が勝っているのは、上下水道などのインフ ラの整備状況である。一方、中心市街地に不足しているものは、駐車場などが考えられる。この とき商業集積を、既存インフラを活用できるが駐車場整備などの投資も必要な中心市街地に作る 場合と、新たにインフラ整備が必要な郊外に作る場合とを比較したときに、中心市街地のほうが 少ない費用で実現できるのであれば、その費用の差額は正の外部性といえるため差額の範囲にお いて補助を行うことが正当化できるといえる。つまり、空き店舗補助事業は際限なく正当化でき るものではなく、その範囲は限定的なものである。 6 福井(2007)6 頁 市場の失敗とは、公共財、外部性、取引費用、情報の非対称、独占・寡占的競争である。 7 八田(2008)156 頁

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6 3.2 空き店舗活用補助事業がもたらす影響についての問題意識 前項で、空き店舗活用補助事業はインフラ費用が節約できる適切な場所に商業の集積を形成す る場合において正当化できるものと整理した。補助によって集客力のある魅力的な店舗が集積す れば、集積の経済による正の外部効果が期待できる。しかし、補助は本来政策の目的としている 魅力的な店舗の集積に寄与していない可能性がある。 補助がない状態の場合、店舗の出店・経営には一定の金銭的負担を伴う。このことは、競争力 や経営体力のない質の低い店舗の出店を排除する効果を持つ。経済学の理論で、情報を持たない 者が情報を持つ者に対し情報を自発的に明らかにさせ、タイプごとにふるい分けを行うことをス クリーニング8と呼ぶが、出店・経営に一定の金銭的負担を伴うことは、質の低い店舗の出店を諦 めさせるため、店舗の質を明らかにする自然のスクリーニング効果をもたらしているといえる。 しかし補助が行われると、出店・経営に伴う金銭的負担は下がる。するとスクリーニング効果 が弱まり、補助なしでは参入することができなかった質の低い店舗の安易な参入を招いてしまう と考えられる。その結果、仮に空き店舗が埋まったとしても、参入した店舗は集客力に乏しく、 集積の経済による正の外部効果は生じないのではないだろうか。

4 空き店舗活用補助事業が店舗の質に与える影響の実証分析

4.1 仮説と分析の方法 前章の問題意識から、空き店舗活用補助事業は出店に伴う金銭的負担を下げ、質の低い店舗の 参入をもたらしているのではないかと考えられる。そこで、補助を受けて出店している店舗は補 助を受けていない店舗に比べて質が低いのではないか、という仮説を設定し分析を行う。 この仮説を実証するため、店舗の質に関する情報を被説明変数、補助に関する情報を説明変数 とし、補助が店舗の質に与える影響について最小二乗法(OLS)により分析を行う。 まず分析を行うにあたり、店舗の質の代理指標に何を使用するかが問題となる。理想的な方法 を想定すると、質が高い店舗は多くの来客により売上を伸ばしていると考えられるため、店舗の 純利益を質の代理指標とすることが考えられる。しかし、店舗一つ一つの純利益の情報を収集す ることは困難である。そこで、本分析では、CGM(Consumer Generated Media)の一種である食 べログの評価点を、店舗の質の代理指標として用いることとする。 また別の代理指標として、食べログの口コミ件数を用いた分析、さらに食べログ以外のデータ を用いた分析として、短期間で閉店した店舗は質が低いと考えられることから、一定期間内に閉 店したかどうかを示すダミー変数を用いた分析も行う。なお、長期間営業を続けている店舗は質 が高いと考えられるため、別の指標として営業期間も考えられるが、補助事業の始まった時期が 比較的近年であり、補助を受けている店舗は補助を受けていない店舗に比べ営業期間が相対的に 短いと考えられるため、営業期間は除外した。 分析範囲はデータ提供を受けた函館市、練馬区、八王子市、岐阜市、豊橋市、大分市とし、分析 単位は各都市における補助実施区域及びその周辺区域に直近5 年以内(2010 年 10 月以降)に出 8 マンキュー(2005)679 頁。スクリーニングの例として、自動車保険を扱う会社が顧客のリスクに関する情報を明らかにする ため、異なる保険契約を提示し顧客に選択させることを挙げている。乱暴なドライバーは、免責がなく高い保険料の契約を選 択するのに対し、安全運転をするドライバーは、免責が大きいが安い保険料の契約を選択する。すなわち、異なる契約を提示 し相手に選択させることによって、契約者の運転に関する私的情報を明らかにさせている。

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7 店した飲食店とする。なお、出店した飲食店の情報は、各自治体の保健所から提供を受けた新規 営業許可リスト及び食べログのホームページから把握した9 4.2 食べログデータの使用に関する留意点 ここでは、店舗の質の代理指標に食べログのデータを使用することの留意点として、メリット、 デメリットをそれぞれ述べる。 (1)食べログを使用するメリット 食べログを使用するメリットは、店舗の質を測るために必要となる消費者の店舗評価データが 膨大に存在することである。食べログは2016 年 2 月時点でおよそ 82 万店舗、1,130 万件の口コ ミが登録されている。これだけの店舗の評価に関するデータが集約されているものは他に存在し ない。そのため、店舗の質を測るためのデータとして、最も有益なデータセットであると考えら れる。 (2)食べログを使用するデメリット及びその対処 食べログを使用するデメリットとしてまず想定されるものはバイアスの存在である。高級レス トランをはじめとする客単価が高い店は、質が高いと評価される傾向があると考えられるように、 食べログの評価には店舗の類型などによる様々なバイアスが存在すると想定される。これに対処 するため、客単価や店舗のジャンルなど、バイアスをコントロールする変数を加え分析を行う。 続いて想定されるデメリットは、やらせ投稿の存在である。2012 年、新聞報道により食べログ における業者によるやらせ投稿の存在が取り上げられた10。これに対し、食べログではユーザ監 視、実在性の確認・表示、やらせ業者通報窓口の設置を行いやらせ投稿の排除を行っている。し かし、こうした対策により一定の効果はあったものと想定されるものの、やらせ投稿が完全にな くなったとはいいきれない。ただし、やらせ投稿は補助受給の有無と関連性が低いと考えられる ため、本稿では統計的に独立であると仮定し分析を行うこととする。 9 保健所では、新規に出店したものだけでなく、店舗の設備の一部変更や代表者の変更なども新規営業許可として扱われる。 そのため、保健所の新規営業許可リストにある飲食店について、食べログの掲載情報から出店日を確認し、出店から5 年以上 経過している店舗を除外することにより、5 年以内に出店した飲食店を把握した。 10 日本経済新聞(2012 年 1 月 4 日)

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8 4.3 分析モデル及び変数の内容 (1)分析モデル 分析は次に示す推計モデルを用いて行う。 モデル1 自治体  店舗    ε コントロール変数 β        賃借料補助額 β        賃借料補助ダミー β        初期費用補助額 β        初期費用補助ダミー β        =β  食べログ評価点          m r krm rm k rm rm rm rm rm 4 3 2 1 0 モデル2 自治体  店舗    ε コントロール変数 β          賃借料補助額 β          賃借料補助ダミー β          初期費用補助額 β          初期費用補助ダミー β          =β  口コミ件数          m r krm rm k rm rm rm rm rm 4 3 2 1 0 モデル3 自治体  店舗    ε コントロール変数 β           賃借料補助額 β           賃借料補助ダミー β           初期費用補助額 β           初期費用補助ダミー β           =β  一年以内閉店ダミー          m r krm rm k rm rm rm rm rm 4 3 2 1 0 これら 3 つのモデルについて、データ収集時点での最新の食べログ評価点、口コミ件数を用い たクロスセクションデータにより分析を行う11 (2)変数の内容 被説明変数、説明変数(トリートメント変数、コントロール変数)の内容は、それぞれ表 4~6 の とおりである。 11 データ収集は、2015 年 12 月から 2016 年 1 月にかけて行った。

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9 表4 被説明変数の説明 変数名 単位 内容 出典 食べログ評価点 店舗の評価点 食べログHP 口コミ件数 店舗に対する口コミ件数 食べログHP 一年以内閉店ダミー 開店から1 年以内に閉店した場合「1」、それ 以外を「0」とするダミー変数 保健所 飲食店廃業 リスト 表5 説明変数(トリートメント変数)の説明 変数名 単位 内容 出典 初期費用補助ダミー 初期費用に対する補助を受けている場合「1」、 それ以外を「0」とするダミー変数 市・区提供データ 初期費用補助額 万円 店舗に対して支出した初期費用額 市・区提供データ 賃借料補助ダミー 賃借料に対する補助を受けている場合「1」、 それ以外を「0」とするダミー変数 市・区提供データ 賃借料補助額 万円 店舗に対して支出した1 ヶ月あたりの賃借料 補助額 市・区提供データ 表6 説明変数(コントロール変数)の説明 変数名 単位 内容 出典 客単価(昼、夜)12 初期費用に対する補助を受けている場合「1」、 それ以外を「0」とするダミー変数 市・区提供データ 口コミ件数13 店舗に対する口コミ件数 市・区提供データ 駅からの距離 m 賃借料に対する補助を受けている場合「1」、 それ以外を「0」とするダミー変数 食べログHP 席数 店舗の席数 食べログHP ジャンルダミー(和食、洋食、 中華、エスニック、酒場、喫 茶店・スイーツ、ラーメン) 食べログの店舗情報に記載しているジャンル を和食、洋食、中華、エスニック、酒場、喫 茶店・スイーツ、ラーメンの6 つに分類し、 それぞれのジャンルごとに作成したダミー変 数。それぞれのジャンルに該当すれば「1」、 しなければ「0」とする。 食べログHP に基づ き作成 ジャンルダミー×客単価(夜) の交差項 ジャンルダミーと客単価(夜)の交差項 食べログHP に基づ き作成 公示地価対数 2015 年における店舗の最寄りの公示地価の 対数値 国土数値情報サービ ス14 ナショナルブランドダミー 全国展開を行っているチェーン店であれば 「1」、それ以外は「0」とするダミー変数 食べログHP に基づ き作成 開店日 店舗が開店した日(1960 年 1 月 1 日から開店 日までの日数) 保健所 飲食店営業 許可リスト 12 食べログにおける客単価は価格帯として登録されている。したがってデータ分析では中央値を用いることとした。(例: 「1,000 円~1,999 円」の場合 1,500 円として分析を行う。) 13 モデル 2 では被説明変数として使用するため、説明変数としてはモデル 1、3 のみで使用するものである。 14 国土交通省による国土数値情報を提供するサービスである(http://nlftp.mlit.go.jp/ksj/)。

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10 都市ダミー(函館ダミー、練馬 ダミー、八王子ダミー、岐阜 ダミー、豊橋ダミー、大分ダ ミー) それぞれの都市に属していれば「1」、それ以 外を「0」とするダミー変数 保健所 飲食店営業 許可リスト データ欠損ダミー(客単価 (昼、夜)、駅からの距離、席数) それぞれの変数が欠損している場合「1」、そ れ以外を「0」とするダミー変数 食べログHP に基づ き作成 表7 変数の基本統計量 変数名 単位 観測数 平均 標準偏差 最小値 最大値 観測数 平均 標準偏差 最小値 最大値 食べログ評価点 947 3.107 0.148 2.980 3.820 - - - - -口コミ件数 947 6.949 9.192 0 87 1,626 4.367 7.699 0 87 初期費用補助ダミー 947 0.0285 0.167 0 1 1,626 0.0271 0.162 0 1 初期費用補助額 万円 947 3.731 23.13 0 200 1,626 3.534 22.50 0 200 賃借料補助ダミー 947 0.0285 0.167 0 1 1,626 0.0344 0.182 0 1 賃借料補助額 万円 947 0.153 1.040 0 14.23 1,626 0.229 1.474 0 25 客単価昼 円 947 0.0497 0.0702 0 0.900 1,626 0.0350 0.0635 0 0.900 客単価夜 円 947 0.225 0.200 0 1.250 1,626 0.185 0.198 0 1.250 駅からの距離 m 947 320.5 226.9 0 1,264 1,626 338.3 241.9 0 1,273 席数 947 27.21 38.85 0 260 1,626 26.16 40.41 0 330 和食ダミー 947 0.195 0.397 0 1 1,626 0.200 0.400 0 1 洋食ダミー 947 0.157 0.364 0 1 1,626 0.149 0.356 0 1 中華ダミー 947 0.0433 0.204 0 1 1,626 0.0283 0.166 0 1 エスニックダミー 947 0.0971 0.296 0 1 1,626 0.0836 0.277 0 1 酒場ダミー 947 0.377 0.485 0 1 1,626 0.431 0.495 0 1 喫茶店スイーツダミー 947 0.127 0.333 0 1 1,626 0.112 0.315 0 1 ラーメンダミー 947 0.0655 0.247 0 1 1,626 0.0418 0.200 0 1 和食ダミー×客単価夜 947 0.0594 0.167 0 1.250 1,626 0.0446 0.146 0 1.250 洋食ダミー×客単価夜 947 0.0396 0.130 0 1.250 1,626 0.0292 0.112 0 1.250 中華ダミー×客単価夜 947 0.00644 0.0367 0 0.450 1,626 0.00415 0.0301 0 0.450 エスニックダミー×客単価夜 947 0.0181 0.0715 0 0.900 1,626 0.0149 0.0692 0 0.900 酒場ダミー×客単価夜 947 0.107 0.161 0 0.900 1,626 0.0962 0.155 0 0.900 喫茶店スイーツダミー×客単価夜 947 0.00861 0.0445 0 0.700 1,626 0.00741 0.0420 0 0.700 ラーメンダミー×客単価夜 947 0.00401 0.0199 0 0.350 1,626 0.00249 0.0155 0 0.350 公示地価対数 947 3.559 0.782 1.409 5.447 1,626 3.458 0.791 1.409 5.447 ナショナルブランドダミー 947 0.0549 0.228 0 1 1,626 0.0455 0.208 0 1 開店日 947 41,173 1,708 7,306 42,327 1,626 41,263 1,402 7,306 42,339 函館ダミー 947 0.117 0.322 0 1 1,626 0.145 0.352 0 1 練馬ダミー 947 0.133 0.340 0 1 1,626 0.103 0.304 0 1 八王子ダミー 947 0.307 0.462 0 1 1,626 0.268 0.443 0 1 岐阜ダミー 947 0.140 0.348 0 1 1,626 0.159 0.366 0 1 豊橋ダミー 947 0.0665 0.249 0 1 1,626 0.0707 0.256 0 1 大分ダミー 947 0.235 0.425 0 1 1,626 0.253 0.435 0 1 モデル2 モデル1

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11 表7 は、変数の基本統計量を示したものである。なお、モデル 1~3 はそれぞれ被説明変数が異 なるため、分析に用いるデータ観測数が異なっている。モデル 1 は食べログ評価点を被説明変数 とするため、分析対象区域内に5 年以内に開店した飲食店のうち食べログに登録されており、か つ評価点のあるものを対象としている。モデル2 は食べログの口コミ件数を被説明変数とするた め、分析対象区域内に5 年以内に開店した飲食店のうち、評価点の有無を問わず食べログに登録 されている店舗すべてを対象としている。また、モデル3 は、分析対象区域内に 5 年以内に開店 した飲食店すべてを対象としている。 変数名 単位 観測数 平均 標準偏差 最小値 最大値 一年以内閉店ダミー 2,585 0.0619 0.241 0 1 初期費用補助ダミー 2,585 0.0201 0.140 0 1 初期費用補助額 万円 2,585 2.508 18.66 0 200 賃借料補助ダミー 2,585 0.0248 0.155 0 1 賃借料補助額 万円 2,585 0.160 1.216 0 25 客単価昼 円 2,585 0.0222 0.0535 0 0.900 客単価夜 円 2,585 0.117 0.181 0 1.250 口コミ件数 2,585 2.771 6.507 0 87 駅からの距離 m 2,585 213.5 252.2 0 1,273 席数 2,585 16.57 34.76 0 330 和食ダミー 2,585 0.130 0.336 0 1 洋食ダミー 2,585 0.0936 0.291 0 1 中華ダミー 2,585 0.0178 0.132 0 1 エスニックダミー 2,585 0.0530 0.224 0 1 酒場ダミー 2,585 0.272 0.445 0 1 喫茶店スイーツダミー 2,585 0.0704 0.256 0 1 ラーメンダミー 2,585 0.0263 0.160 0 1 和食ダミー×客単価夜 2,585 0.0284 0.118 0 1.250 洋食ダミー×客単価夜 2,585 0.0184 0.0903 0 1.250 中華ダミー×客単価夜 2,585 0.00261 0.0239 0 0.450 エスニックダミー×客単価夜 2,585 0.00940 0.0554 0 0.900 酒場ダミー×客単価夜 2,585 0.0608 0.132 0 0.900 喫茶店スイーツダミー×客単価夜 2,585 0.00466 0.0335 0 0.700 ラーメンダミー×客単価夜 2,585 0.00157 0.0124 0 0.350 公示地価対数 2,585 3.517 0.728 1.409 5.447 ナショナルブランドダミー 2,585 0.0290 0.168 0 1 開店日 2,585 41,327 1,169 7,306 42,347 函館ダミー 2,585 0.0913 0.288 0 1 練馬ダミー 2,585 0.0932 0.291 0 1 八王子ダミー 2,585 0.294 0.456 0 1 岐阜ダミー 2,585 0.100 0.300 0 1 豊橋ダミー 2,585 0.164 0.371 0 1 大分ダミー 2,585 0.257 0.437 0 1 モデル3

(14)

12 4.4 分析の結果 分析の結果を表8 に示す。 表8 補助が店舗の質に与える影響の実証分析結果 被説明変数 説明変数 係数 標準誤差 係数 標準誤差 係数 標準誤差 初期費用補助ダミー -0.069 (0.067) -3.176 (2.758) 0.148 (0.103) 初期費用補助額 0.0004 (0.0005) 0.018 (0.020) -0.0009 (0.0007) 賃借料補助ダミー 0.158 (0.050) *** 2.219 (1.602) -0.054 (0.064) 賃借料補助額 -0.017 (0.007) ** -0.203 (0.178) 0.003 (0.007) 客単価昼 0.144 (0.070) ** 12.030 (3.304) *** 0.171 (0.137) 客単価夜 -0.013 (0.070) -3.163 (2.997) 0.003 (0.115) 口コミ件数 0.011 (0.001) *** - - 0.001 (0.001) 駅からの距離 1.97e-05 (2.41e-05) -0.001 (0.001) 2.21e-05 (3.05e-05) 席数 -0.001 (0.0001) *** 0.016 (0.005) *** 0.0003 (0.0002) * 和食ダミー -0.031 (0.023) 1.066 (0.795) -0.010 (0.028) 洋食ダミー -0.006 (0.021) 1.373 (0.790) * -0.014 (0.029) 中華ダミー -0.050 (0.036) -1.466 (1.647) 0.042 (0.067) エスニックダミー -0.011 (0.026) -0.062 (0.974) 0.008 (0.038) 酒場ダミー -0.006 (0.021) 0.223 (0.733) 0.019 (0.026) 喫茶店スイーツダミー 0.004 (0.022) 0.881 (0.840) -0.029 (0.031) ラーメンダミー 0.051 (0.030) * 2.417 (1.371) * 0.067 (0.055) 和食ダミー×客単価夜 0.112 (0.072) 3.355 (2.954) -0.004 (0.112) 洋食ダミー×客単価夜 0.049 (0.075) -1.988 (3.178) -0.004 (0.124) 中華ダミー×客単価夜 0.330 (0.186) 7.272 (9.058) -0.221 (0.374) エスニックダミー×客単価夜 0.125 (0.101) 3.702 (3.989) 0.058 (0.161) 酒場ダミー×客単価夜 0.019 (0.070) -1.646 (2.822) -0.071 (0.109) 喫茶店スイーツダミー×客単価夜 0.040 (0.113) -7.340 (4.609) 0.039 (0.185) ラーメンダミー×客単価夜 -0.879 (0.290) *** 59.830 (15.03) *** -0.510 (0.629) 公示地価対数 -0.002 (0.007) 0.260 (0.292) -0.002 (0.010) ナショナルブランドダミー -0.065 (0.017) *** -1.124 (0.723) -0.018 (0.030) 開店日 2.60e-05 (7.13e-06) *** -0.001 (0.0003) * -3.13e-05 (8.90e-06) *** 練馬ダミー -0.032 (0.020) 1.626 (0.821) ** 0.002 (0.030) 八王子ダミー -0.002 (0.019) 0.059 (0.743) -0.012 (0.027) 岐阜ダミー 0.026 (0.018) -0.308 (0.691) 0.059 (0.027) ** 豊橋ダミー -0.031 (0.020) -1.261 (0.769) 0.002 (0.025) 大分ダミー -0.015 (0.019) -0.169 (0.713) 0.010 (0.025) 昼欠損ダミー 0.025 (0.012) ** -2.745 (0.480) *** 0.029 (0.020) 夜欠損ダミー 0.003 (0.014) -4.498 (0.490) *** 0.022 (0.021) 駅欠損ダミー -0.007 (0.109) 1.303 (2.148) 0.051 (0.025) ** 席数欠損ダミー -0.025 (0.010) ** -0.145 (0.392) 0.017 (0.016) 定数項 1.977 (0.293) *** 27.520 (11.59) ** 1.280 (0.371) 観測数 902 1,572 2,530 決定係数 0.448 0.296 0.030 (注)***、**、*はそれぞれ1%、5%、10%の水準で統計的に有意であることを示す。 食べログ評価点 口コミ件数 一年以内閉店ダミー モデル1 モデル2 モデル3

(15)

13 分析の結果、食べログ評価点を被説明変数と したモデル 1 において、賃借料補助額が食べロ グの評価点に与える影響は、5%水準で統計的に 負に有意となった。一方賃借料補助ダミーが食 べログの評価点に与える影響は、1%水準で統計 的に正に有意となった。この結果をグラフに示 したものが図 4 である。賃借料補助額がおよそ 6 万円までの水準であれば、補助を受けている店 舗の質の推計値は、補助を受けていない店舗の 質の平均値を上回る。しかし、賃借料補助額が高 額になると、店舗の質の推計値は低下していく 傾向がみられる。 なお、口コミ件数、一年以内閉店ダミーを被説 明変数としたモデル2、3 において、補助に関す る変数は有意な結果にならなかった。また、初期費用補助が食べログの評価点に与える影響は、 いずれのモデルにおいても有意な結果が出なかった。 4.5 考察 モデル1 における賃借料補助が店舗の質に与えた影響を考察する。分析結果から、少額の賃借 料補助が質の高い店舗を集める可能性がある一方で、補助金額が高額になると質の低い店が増え、 かつ質の高い店が減るという解釈ができる。この理由を説明するため、(1)補助金額が店舗の出店 の意思決定に与える影響と、(2)高額の補助メニューを提示している自治体の問題点という 2 つの 視点から考察する。 (1)補助金額が店舗の出店の意思決定に与える影響 補助金が店舗の出店の意思決定に与える影響について、表9 のとおり店舗を品質、コストの観 点から4 種類に分類し考察する。 表9 店舗の類型 消費者は、品質とコストのバランスから店舗の質を判断する。品質が良くコストが低い①は最 も質が高く、次いで②、③の質が高い。品質が良くなくコストが高い④は最も質が低い。このと き、出店の意思決定に関連するパラメータを次頁の通り定義する。 コスト 品質 良くない ③ ④  低い  高い 良い ① ② ) (qL ) (qH ) (cL (cH) 2 .9 3 3 .1 3 .2 3 .3 食 べ ロ グ 評 価 点   推 計 値 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 賃借料補助額(万円) 図4 賃借料補助額に対する食べログ評価点推計値

(16)

14 出店の意思決定に関連するパラメータ L H

q

q ,

品質

c ,

H

c

L コスト

s ,

H

s

L補助金 ※H は高い、L は低いことを示す さらに、店舗が出店する条件を以下の式で定義する。なお、

r

(q

)

は、品質に対する収入関数で ある。 店舗が出店する条件式

r

(

q

)

c

0

この条件のもと、表10 の店舗の類型ごとに、補助が店舗の出店の意思決定に与える影響を考察 する。 ①品質が良くコストが低い場合は補助なしでも出店する

0

)

(

q

H

c

L

r

 

②品質が良くコストが高い場合は補助なしでは出店しないが、少しの補助で出店する

0

)

(

q

H

c

H

r

 

ただし

r

(

q

H

)

s

L

c

H

0

③品質が良くなくコストが低い場合は補助なしでは出店しないが、少しの補助で出店する

0

)

(

q

L

c

L

r

 

ただし

r

(

q

L

)

s

L

c

L

0

④品質が良くなくコストが高い場合は補助なし、または少しの補助では出店しないが、多額の補 助で出店する

0

)

(

q

L

c

H

r

 

かつ

r

(

q

L

)

s

L

c

H

0

ただし

r

(

q

L

)

s

H

c

H

0

これらの整理から、少額の補助の場合①の店舗が補助を受けて出店するのに加え、②、③の質 は高いが出店コストがネックとなり出店に至っていなかった店舗が出店する。このため、店舗の 質が高まる。一方、多額の補助の場合④の質の低い店舗が出店するため、店舗の質が低くなると 考えられる。 (2)高額の補助メニューを提示している自治体の問題点 続いて、補助額が多額になると質が落ちることについて、高額の補助メニューを提示している 自治体に注目してその理由を考察する。

(17)

15 表10 分析対象自治体の補助制度 出典:各市・区ホームページ、ヒアリングに基づき筆者作成 表 10 をみると、最も高額の賃借料補助を行っているメニューは岐阜市の大型空き店舗事業で あり、3 年間で最大 900 万円の賃借料補助を受けることができる。この多額の補助メニューが、 店舗の質に影響を与えた可能性について考察する。 まず考えられるのは、大規模空き店舗への多額の補助によって、空き店舗の規模と入居店舗の 経営における適正規模のミスマッチが発生した可能性である。需要が減退し大型店の経営が厳し い場所に多額の補助で無理に大型店舗を誘致しても、質の低い店しか集まらない、または採算が とれず質が低下したのではないかと考えられる。 また、補助審査の主体の違いによる影響も考えられる。岐阜市は、他の自治体と異なり、補助 の審査に職員以外が関わらない15。職員が審査を行う場合、形式要件に沿った以上のことを判断で きず、質の低い店がより参入しやすい状況となっていた可能性が考えられる。 (3)その他の考察 その他の考察として、まずモデル 1 において、賃借料補助が有意になった一方で初期費用補助 が有意にならなかった理由を考察する。 はじめに考えられるのは、初期費補助が出店の判断に大きな影響を与えなかったことである。 一般的に出店の判断は、ランニングコストを考慮し収支が黒字になるかどうかで行われる。した がって出店して客が付くまでの一定の期間補助をもらえる賃借料補助が出店の判断に大きな影響 を与えた一方で、初期費用補助は出店の判断に大きな影響を与えなかったと考えられる。 また、ほとんどの初期費用補助店舗が補助限度額16の補助をもらっており、補助金額で店舗の質 を説明できなかったことも理由として考えられる。 続いて、口コミ件数を被説明変数としたモデル 2、一年以内閉店ダミーを被説明変数としたモ 15 審査は職員が実施するが、別途出店する商店街からの推薦書が必要とされている。 16 補助限度額は多くが100 万円であった。 実施 補助率 補助限度額(円) 実施 補助率 補助限度額(円/年) 補助期間(年) 函館市 2013 ○ 1/2 1,000,000 ○ 1/2 600,000 1 店舗経営に識見を持つ者等で組織さ れる審査委員会 八王子市 2012 ○ - 1,000,000 - - - - まちづくり会社 岐阜市 1997 - - - ○ 1/3 1,000,000 ※大型空き店舗は 3,000,000 3 市職員 豊橋市 2000 - - - ○ 2/3 1年目:1,500,000 2年目:1,125,000 3年目:750,000 3 まちづくり会社 大分市 1998 ○ 1/2 1,000,000 (個人・法人) 1,500,000 (商店街推薦) ○ -空き店舗対策事業: 1,200,000 商店街魅力アップ出 店事業:1,800,000 ※平成24年度に廃止 1 まちづくり会社 練馬区 2006 ○ 2/3 1,000,000 ○ 2/3 1年目:600,000 2年目:360,000 3年目:240,000 3 中小企業診断士 審査関係者 都市名 政策開始時期 初期費用補助 賃借料補助

(18)

16 デル3 で補助に関する変数が有意にならなかった理由を考察する。 モデル2 に関しては、口コミ件数が店舗の質を示す指標として適切ではなかった可能性がある。 また、モデル3 に関しては、補助を受けていて 1 年以内に閉店した店舗の数が少なかったため、 有意な結果にならなかったと考えられる17

5 空き店舗活用補助事業が地価に与える影響の実証分析

5.1 仮説と分析の方法 3 章で述べたとおり、商業集積が形成されることにより取引費用の削減・効率化といった正の 外部性が発生する。また、4 章の分析によって、空き店舗活用補助事業の賃貸料補助が質の高い店 舗を誘致する可能性が実証された。これらを踏まえ、キャピタリゼーション仮説に基づき、店舗 の集積により正の外部性が発生すればその便益は地価に帰着すると仮定すると、空き店舗補助事 業によって商業集積が生まれていれば地価は高まるのではないかと考えられる。 この仮説を実証するため被説明変数を地価とした上で、商業集積である商店街に存在する補助 店舗の数が商店街周辺の公示地価・都道府県地価に与える影響を、パネルデータを用いた固定効 果モデルによって分析する。 また、データ提供を受けた自治体のうち、商店街の範囲を明確に把握できた函館市、練馬区、 八王子市、岐阜市、大分市、鹿児島市を分析範囲とし、各市の商店街から100 メートル以内の範 囲における公示地価・都道府県地価ポイントを分析単位とする。 5.2 分析モデル及び変数の内容 分析は、次に示す推計モデルを用いて行う。商店街の規模や周辺環境などの地価ポイントごと の特性は、固定効果によりコントロールする。 時間 地価ポイント    ε          町丁目ごとの人口密度 β        店舗数 最寄りの商店街の補助 β        =β  地価対数        t i T Ii t it i t it 2 1 0 分析に使用するデータは1995 年から 2015 年までのパネルデータである。公示地価・都道府県 地価に関する情報は国土数値情報サービスから収集したものを用いる。地価ポイントから最寄り の商店街までの距離は、ArcGIS18を用いて商店街区域のポリゴンデータを作成した上で座標情報 により計算した。最寄りの商店街の補助店舗数は、自治体から提供を受けた補助店舗住所を用い て ArcGIS 上のマップに補助店舗の位置情報をプロットし、商店街区域のポリゴンデータと結合 させて作成した。また、区域内の補助店舗数を町丁目ごとの人口密度は、2005 年と 2010 年の国 勢調査のデータから外挿法・内挿法により作成したものを用いた。 また、表11 に分析に使用する変数の基本統計量を示す。 17 分析データにおいて、補助を受けていて 1 年以内に閉店した店舗の数は 3 件しかなかった。 18 Esri 社開発の地理情報システムソフトウェア。

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17 表11 変数の基本統計量 5.3 分析の結果 表12 のとおり、分析結果から補助店舗が地価の対数値に与える影響は 1%水準で統計的に負に 有意となった。最寄りの商店街の補助店舗が増えるほど、当該地価ポイントの地価は 3%下がる 結果となった。 表12 補助店舗数が地価に与える影響の実証分析結果 5.4 考察 空き店舗活用補助事業によって出店した店舗が地価を高めているとする仮説に対して、実証で は、補助店舗が存在する場合地価が下がる結果となった。補助店舗には、4 章の食べログによる 実証分析結果で質の高い店舗を集める可能性が示された賃借料補助を受けている店舗だけでな く、初期費用補助を受けている店舗、また高額の補助を受けている店舗も含まれている。このた め、総体として効果があるという結果は得られなかった。 なお、そもそも補助を受けた店舗が多く存在する地区は空き店舗も多く、地域の商業地として の需要が低下している地区と考えられる。したがって、この結果は補助を受けた店舗が地価を下 げたためではなく、空き店舗活用補助事業が地価下落傾向にある地域において実施されたためと 考えられる。

6 政策提言

本稿では、商業集積に対する空き店舗活用補助事業の有効性を実証するため、食べログを用い た分析、地価を用いた分析の2 種類の方法で分析を行った。食べログを用いた分析では賃借料補 助に質の高い店舗を集める可能性がある一方、その補助額が高額になると質の低い店舗が参入す る余地が増えることが実証された。また、地価を用いた分析では補助店舗の数が地価を上昇させ るとする仮説に対し、補助店舗が存在する場合地価が下がる結果となった。 変数名 単位 観測数 平均 標準偏差 最小値 最大値 地価対数 770 12.93 0.864 10.92 15.23 補助店舗 770 0.935 2.235 0 18 人口密度 人/k㎡ 770 10,000 6,961 572.7 32,329 被説明変数 説明変数 係数 クラスター化標準誤差 補助店舗 -0.030 (0.007) *** 人口密度(人/k㎡) 4.92e-05 (1.51e-05) *** 定数項 13.17 (0.143) *** 年ダミー 観測数 770 ユニット数 51 決定係数 0.824 (注)***、**、*はそれぞれ1%、5%、10%の水準で統計的に有意であることを示す。 省略   地価対数

(20)

18 この結果から、補助によって質の低い店舗が参入しうるため、審査によってこれを排除する方 策が提言の基本的方針として考えられる。審査では店舗の質に関する情報の非対称が存在するた め、これを緩和する観点から具体策を4 点提言する。 まず1 点目は、スクリーニングによる緩和策である。スクリーニングは、情報を持たない者が 情報を持つ者から情報を引き出す行動を指すが、補助条件にスクリーニングを応用した規定を設 けることで、質の低い店舗を排除する効果が期待できる。具体的には、既に八王子市で実施して いるものであるが、出店後一定期間内に撤退した場合に補助金返還を義務付ける規定を設けるこ となどが考えられる。この規定を設けることによって、経営を続けていく自信のある店舗しか補 助を申し込まなくなると想定される。 2 点目は、オークションによる緩和策である。これは質の低い店を排除するのではなく、最も質 の高い店を選抜するための対策である。具体的には、空き店舗へ入居を希望する店舗を集め、最 大補助額からオークションをスタートし、最も安値の補助金で入居する店舗を補助の対象とする。 ただし、この方法は、同時期に空き店舗への入居を希望する店舗を複数集めなければならない。 出店を検討する時期は店舗ごとにさまざまであるため、実際の運用に向けた課題は多い。 3 点目は、審査の主体を、適切に質を見極められる主体とすることである。審査の主体に関し て、既に多くの自治体でさまざまな工夫が行われているが、少なくとも自治体職員のみによる審 査では、形式要件を満たしているかどうか以上の判断を下すことは困難だと考えられる。 4 点目は、空き店舗の規模と、入居希望店舗の経営におけるミスマッチ解消のために、専門家が 空き店舗の規模と経営の適正規模との適合を判断する審査基準を作ることである。空き店舗の規 模は所与であるが、そこに経営方針、経営体力などからみて不相応な店舗が補助によって入居す ると、採算がとれなくなってしまうことが考えられる。そのため、空き店舗へ出店を希望する店 舗の出店計画に対し、その空き店舗が適切なものなのかどうか判断することが有効なのではない かと考える。

7 おわりに

本稿では、商店街などの商業集積に対する空き店舗活用補助事業に注目し、補助が質の高い店 舗を集める可能性がある一方で、補助額が高まるほど質の低い店舗の参入を招きうることを実証 した。ただし空き店舗活用補助事業は、商業機能が衰退しているエリアに商業集積による賑わい を実現するための一つの手段であるが、3 章で整理したとおり補助が正当化できる範囲は限定的 であり、補助によって抜本的な解決が図れるものではない。 一方、民間主導による商業集積による賑わいを実現するための取り組みの成功事例として、定 期借地権制度を活用した再開発により総合的なテナントミックスのマネジメントを行った高松市 の丸亀町商店街や、まちの再生ビジョンを作りそのビジョンに基づいて空き店舗の有効活用を行 った北九州市小倉のリノベーションまちづくり事業が挙げられる。 これら取り組みの成功要因の一つに、地域の問題点を定量的・定性的に分析した上で、まちを 再生するためのビジョンを構築したことが挙げられる。商業集積による賑わいを形成する上で、 どんな場所でも常に有効な処方箋はない。それぞれの地域の問題点を適切に把握し対処すること がまず求められる。その上で、手段として空き店舗活用補助事業を実施する場合には、6 章で述べ

(21)

19 たような効果的な補助を行うための検討が必要となるだろう。 最後に、本研究はデータの制約から限られた範囲の都市における分析にとどまっており、空き 店舗活用補助事業がもたらす普遍的な効果を計測できているとは言いがたい。また、地価を用い た分析において商店街における空き店舗数や商店数の採用を検討したが、パネルデータの期間に 対応したデータを収集することができなかった。今後の課題として、より鮮明で普遍的な分析を 行うためにこれらの要素を踏まえさらなる実証分析が必要である。

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謝辞

本稿の執筆にあたっては、福井秀夫教授(プログラムディレクター、副査)、原田勝孝助教授(主 査)、中川雅之客員教授(副査)、前川燿男客員教授(副査)から、懇切丁寧なご指導をいただいた ほか、安藤至大客員准教授をはじめ本学内外関係教員の方々からも貴重なご意見及びご指導をい ただきました。心より感謝を申し上げます。 また、ご多忙中にも関わらずヒアリング、データ提供に応じていだたいた練馬区の吉田哲商工 観光課長、中核市の担当部局の職員の皆様に深くお礼申し上げます。 さらに、長期間に渡る派遣を認めてくださり、本稿のデータ収集にも協力いただいた派遣元の 皆様、苦楽を共にしたまちづくりプログラムの同期の皆様、そして全面的に研究生活を支えてく れた家族に改めて感謝いたします。 なお、本稿は個人的な見解を示すものであり、筆者の所属機関の見解を示すものではありませ ん。本稿における見解及び内容に関する誤りは、すべて筆者に帰属することを申し添えます。

参考・引用文献

・前田進(2001)「超商店街づくりの新しいノウハウ 街の復活・発展のための理論と実践」ぎょう せい ・吉岡宏高、大坂谷吉行(1999)「室蘭市における空き店舗対策事業に関する考察-商店街の再編 と活性化をめざして-」『日本都市計画学会学術研究論文集』34 巻 P559-564 ・鈴木裕香子、川﨑興太(2015)「空き店舗対策事業の運用実態と課題-福島県内の市町村を事例 として-」『公益社団法人日本都市計画学会 都市計画報告集』No.14 ・居城俊之、田口太郎(2008)「空き店舗に出店する際の問題点に関する研究-出店に至る過程で の貸し手・借り手の関わりと課題の整理-」『日本建築学会北陸支部研究報告集』51 巻 P347-350 ・足立基浩(2010)「シャッター通り再生計画 明日からはじめる活性化の極意」ミネルヴァ書房 ・新雅史(2012)「商店街はなぜ滅びるのか 社会・政治・経済史から探る再生の道」光文社新書 ・満薗勇(2015)「商店街はいま必要なのか 「日本型流通」の近現代史」講談社現代新書 ・加藤義忠、佐々木保幸、真部和義(2006)「小売商業政策の展開 改訂版」同文舘出版 ・田村正紀(2001)「流通原理」千倉書房 ・福井秀夫(2007)「ケースからはじめよう 法と経済学」日本評論社 ・八田達夫(2008)「ミクロ経済学Ⅰ 市場の失敗と政府の失敗への対策」東洋経済新報社 ・マンキュー,N.G 著・足立英之他訳(2005)「マンキュー経済学Ⅰ ミクロ編(第 3 版)」東洋経 済新報社 ・清水義次(2014)「リノベーションまちづくり 不動産事業でまちを再生する方法」学芸出版社

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