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第17期火災予防審議会第2回地震対策部会 議事概要

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Academic year: 2021

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第22期火災予防審議会総会(答申)開催結果概要

1 開催日時 平成 29 年 3 月 29 日(水) 14 時 00 分から 15 時 30 分まで 2 場所 東京消防庁本部庁舎7階特別会議室(東京都千代田区大手町一丁目3番5号) 3 出席者 委員(25名、五十音順) 青柳 一彦、市古 太郎、糸井川栄一、伊村 則子、大佛 俊泰 加藤 麻樹、唐沢かおり、熊谷 良雄、小林 恭一、小林 輝幸 鈴木 恵子、関口 和重、関澤 愛、 高橋 寛 、田中たけし 玉川 英則、中林 一樹、西澤真理子、長谷見雄二、平田 京子 廣井 悠、 藤野 珠枝、古川 容子、松尾亜紀子、森山 修治 ⑵ 東京消防庁関係者(13名) 消防総監、予防参事、予防部副参事(予防技術担当)、予防対策担当係長、防災参事、 震災対策課長、係員(7名) 4 議事 人命安全対策部会(答申(案)説明) 地震対策部会(答申(案)説明) ⑶ 質疑 5 配布資料 ⑴ 資料1 -人命安全対策部会- 答申(案) 「オリンピック・パラリンピック施設等における防火・避難対策」 ⑵ 資料2 -人命安全対策部会- 答申(案)の概要 ⑶ 資料3 -地震対策部会- 答申(案) 「地域特性等を踏まえた防火防災訓練のあり方」 ⑷ 資料4 -地震対策部会- 答申(案)の概要 6 議事概要 ⑴ 開会 ⑵ 議事 ア 人命安全対策部会(答申(案))について [長谷見部会長] 人命安全対策部会の諮問タイトルは「オリンピック・パラリンピック施設等における防火・ 避難対策」となっている。それに対し、2020年の大会中に火災の発生を防ぎ、万一、火 災、地震、水害、テロ等の災害が発生しても「被害の拡大を抑え、来場者が安全に避難でき る防火・避難対策」について検討をしてきた。 諮問の具体的な本文部分でも触れられているが、オリンピック・パラリンピックは国際的 なイベントであり、それが、短期集中的に行われるという特徴がある。更に国民的な行事に

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なるので、子供からお年寄りまで、さらには外国人も多く参加する。また、パラリンピック もあるため、障がいを持つ方も多く参加すると予想されている。 大空間を持つスタジアム等を使用することに加え、短期集中的なイベントであることか ら、期間限定の仕様、仮設など、施設がこれまであまり例のない使用のされ方をすることが 予想されている。 また、外国人が多くいるという状況の中で、日本独特の災害として、地震だとか、集中豪 雨の発生に備えなければならない。 以上のようなことに対する対策を考えてかなければならない。 まずはハード面の対策が必要となる。非常に大規模の施設であること、大会用に特殊な改 修がされた場合に、防火安全性を保つためにはどうするか、施設に設置される設備について も合わせて考える必要がある。 多数の外国人や障がい者が参加することを踏まえた災害発生時の情報伝達や避難誘導方法 についても対策が必要である。 さらに、火災以外のいろいろな災害に対する対策も考えなければならない。 ハード面の対策とソフト面の対策に分かれているが、ハードである施設の設計や建設はす でに進んでいた。そのため、諮問は約2年前の平成27年5月25日にされ、その年度は部 会3回、小部会4回でハード面の対策を検討した。その結果を平成28年2月19日に中間 報告として発表し、設計中、建設中のものに活かしてもらうようにした。 今年度は主にソフト面の対策を検討してきた。部会5回、小部会3回を行い、本日の答申 に至っている。火災を起こさない、広げないための防火関係の対策、避難関係の対策、火災 以外の災害に対する対策、いろいろな対策に実効性を持たせるために全体の組織体制をどの ようにやっていくべきか、ということについて検討をしてきた。 審議するにあたり、調査や研究を行ってきた。 競技場などの大規模施設での過去の火災事例の調査、スタジアム以外で起こったものを含 めた群集事故事例調査、オリンピックなど過去開催されている海外における基準の調査、群 集という状態でどのような避難行動をするのか、どういった特徴があるのかを検討するため に、避難訓練コンサートや避難行動の実験、シミュレーションを行って検討をしてきた。更 に、外国人旅行者に対するアンケート調査、既存の競技場などで実際に災害が発生した場合 の防火管理体制や災害への対応体制の調査を行ってきた。 まず、過去の競技場や観覧施設における火災事例を調べると、死傷者の発生している火災 では、係員の避難誘導が無い、火災が発生しているという事実の伝達が無い、といった共通 点があった。また施設の管理状況としては、出口が閉鎖されていたため避難ができなかった という事例があった。更に、出火原因を見ると、どこでも喫煙できる、ゴミのような可燃物 が集積されているなど火災になり易い状況であった。火災が大きくなった要因は建物の構造 である、屋根、床や座席が木材や樹脂でできており、燃え易い状況であった。 群集事故事例を見ると、出入り口で起こっていることが多く、入場時、退場時問わず発生 していた。間違った情報に起因している場合もあった。また、事故になる前には観客席から 出入り口までの通路部分や階段で人の滞留が発生し、転倒等が起き大きな事故へつながって いる状況であった。人員の整理が行われずに無秩序に観客が流入することに起因している事 故もあった。 ではそれらに対して海外ではどのような基準を持っているのかを調査した。イギリスの基 準、ドイツの基準、ブラジルで昨年行われた際の基準などについて調査を行った。基準には 興奮した観客による破壊行為に対応する設備の設置、椅子の難燃化、全体の管理を容易にす るために監視カメラの活用、飲食店の火気規制などについて規制があった。

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群集の避難誘導をどのように行うかの検討については、まず避難訓練コンサートについて 紹介する。 避難訓練コンサートは実際にコンサートを行っている途中に火事が発生したというアナウ ンスを流し、実際に観客を避難させるといったものである。係員が避難誘導を行っている一 方で非常放送が鳴っている状態になり、それらが錯綜して非常に聴きにくくなるということ が起こった。また、スライドの写真にも出ている通り、縦通路の部分に滞留が生じた。こう いった場所で何か事故が生じると大きな被害に至る。さらに、訓練であっても「早く動 け!」といった怒号が飛ぶことがあった。会場からではロビーの部分でも滞留がみられる場 合もあった。 こういった状況下で整然と混乱を起こさずに避難させるためにはどのようにすべきか、と いうこと対して、まずは、非常放送と係員の避難誘導のセリフに工夫が必要である。次に、 縦通路のように必ず滞留が起こるような場所には特別に対策をとることが必要である。更 に、避難時には不安に感じる人が多いことから、不安にさせない、イライラさせないといっ たメンタルにも考慮した対応が必要となる。 次に避難に関する実験やシミュレーションについて紹介する。実験は実際に東京都にある スタジアムの観客席で観客がどのように動くのかということを実験した。 群集歩行の実験では群集になって歩行する速度は、群集の中の遅い人の歩行速度に近くな るということがわかった。また、スタジアムでは上段の観客席ほど傾斜が強くなるが、そう いった強い傾斜の下りでは群集歩行速度が遅くなることがわかった。避難時間は遅い人の歩 行速度で決まってくるということがわかった。 避難誘導の実験では非常放送や係員指示の有効性について検討した。非常放送だけでは避 難させるのは難しいが、係員が指示をすることでほぼ全員が避難をした。係員が避難指示を することが重要であることがわかった。 外国人旅行者へのアンケートは空港で出国する外国人旅行者に対して実施した。図が載っ ている誘導灯のピクトグラムはよく認知されている。アジア、ヨーロッパ、アメリカなど出 身地域ごとにわけると、災害時の行動や情報をどう取るかということに、出身地域による傾 向の違いがみられた。また、地震を心配している旅行者が多い状況であった。そういった災 害に遭遇した時などの緊急時の情報は図面や絵入りのものを望む声が多かった。 既存競技場の防火管理体制についての調査では次のことが明らかとなった。まず、競技場 という施設があって、施設を管理する関係者がいて、その管理下に防災センターがあって防 火管理者がいる体制である。イベントを行う場合はイベント主催者がいて、何らかの原因で イベントを中止するといった場合は防災センターではなくイベント運営本部で判断する。観 客に対する案内や指示もイベント運営本部で行う。災害発生時には防災センターで消防用設 備などの防災設備を操作し、観客への対応はイベント主催者が行う。以上のように競技場全 体の指揮命令系統はなかなかはっきりしない状況である。これにも対策が必要だという議論 となった。 これまでのことから、提言としては、出火防止や火災の拡大を防止するための防火関係の 対策、人を有効に避難させるための対策、火災以外の地震、水害、津波、テロに対する対 策、更に、それら全体を支えるものとして、施設の防火管理を実施する体制とイベント運営 者の体制を確実に行える全体の構成を作ることが必要となる。 この提言の対象となるのは、ハードとしては設計者や施設関係者になる。また、ソフトにつ いては施設関係者や大会運営者、全体渡って消防機関といった方々が対策を実施していかな ければならない。

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まずは防火関係の対策として、出火防止対策や火災を大きくしない対策として、8項目提 言している。火気管理を徹底する、いろいろなものが可燃物として想定されるがその管理を 徹底する、演出で使用される火気管理の徹底、観客席に使用される椅子は燃えにくいものを 使用するといったことが必要になる。 万が一、火災が発生した場合でも、それをいち早く捉え対応する対策も必要になる。オリ ンピックのようなイベントであるからITVカメラ等が設置されている。そこからの情報を 活用することが必要となる。また、いろいろな人がイベントに係わってくるため、そういっ た人たちへの対応要領の習熟が必要となる。 消防機関の活動を支援する対策も必要となる。火災がより進展した場合には消防隊が入っ てきて活動することになる。そういった段階では同時に避難も実施されていると考えられ る。避難と消防隊との動線が重複しないように計画することが必要である。 次に避難関係の対策については、かなり多くの外国人や障がい者などが競技場を利用する ことを考慮する必要がある。 まずは、いままでのオリンピック・パラリンピックでも策定されてきた、アクセシビリテ ィガイドを基本とし、避難計画を作成することが必要となる。災害や事故に関する情報提供 は日本語と英語による最低2言語によって行う必要がある。ピクトグラムは認知度が高いの で活用していくべきである。避難誘導に関する情報提供には大型ビジョンやデジタルサイネ ージを活用することが重要である。 群集事故の防止対策としては、定員を順守し、階段などの事故が起こり易い場所に過度の 滞留の発生をしにくくするといったことが必要となる。また、観客が混乱しないように、不 安にならないような手法を含めて誘導方法を確立し、災害時には係員に対し、情報がきちん と伝わる状態を確保する必要がある。 火災以外の災害としては地震を心配している外国人が多い状況である。施設や設備の耐震 性について確認しておくことが必要となる。耐震性があるならば、地震時に慌てて避難する 必要はなくなる。こういった情報を事前に周知する必要がある。また、災害の種別によって は観客を外に出さない方が良い場合もあるので、災害種別によって対応要領を作成し大会用 消防計画に盛り込む必要がある。 いろいろな対策をまとめるものとして、先に説明したように、イベントの運営者と建物の 管理者とをまとめていくことが必要である。オリンピックに関しては、施設にいる管理権原 者が災害対応の意思決定をできる体制を確立することが必要である。また、関係する機関の 責任区分を明確にし、その上で互いに十分に意思疎通ができる体制が必要となる。指揮命令 体制を整えて、職員、係員、ボランティア等、多くの係わる人たちに周知する必要がある。 最も重要なことは競技場の中で全てを判断できる体制である。イベントを運営する組織委 員会の本部というものがあるだろうが、いちいち会場以外のところに判断を仰ぐようなこと をやっていると対応は遅れる可能性が高い。そのため競技場の中で判断ができる体制とする 必要がある。 競技を止める権限を持つのはイベントの運営者であるので、オリンピックを考えると大会 運営者の組織委員会が管理権原者になるべきである。それで防災センターを管理下に置き、 避難誘導や防災設備の操作が齟齬のないように行われ、防火管理者が中心となって、一体と なって対応できる体制にすることが必要である。 このような体制を上手くやっていくためには、オリンピック前に、事前に計画を立て、テ ストイベントなどのイベントのたびに実際に運営してみて訓練を積んでいくことが重要であ る。これを繰り返し、計画内容を見直し、機能的なものにアップデートしていくことが重要 である。

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写真で例示しているものは新築されるものである。これ以外にも既存を使用するもの、仮 設のものもある。それぞれについての課題は異なる。収容人員が非常に多いものから小さい ものまである。観客席が屋内か屋外、係員の数、周辺の立地状況によっても対応要領が変わ ってくるため、それぞれに合わせた消防計画とする必要がある。 今後さらに検討が必要な課題としては、大会の内容がまだはっきりしない部分があるの で、それらが明らかになっていく過程で関係機関が協議を進めていくことが必要である。 新しい技術もどんどん出てくるため、特に避難誘導に利用できそうなものは活用を検討す べきである。 そして、オリンピックは東京都以外でも行われ、条例が若干違う場合があるので、競技場 によって対策が変わらないようにすることが必要である。 防火関係の対策、避難関係の対策、火災以外の災害に関する対策、それらの対策を全体と して上手く運営していくための組織体制と消防計画の構築、それらを実施していき、オリン ピック・パラリンピックが無事に滞りなく行われることを期待する。 イ 地震対策部会(答申(案))について [糸井川部会長] 諮問の背景として、「東京の防災プラン」では2020年までに毎年200万人の防火防 災訓練の参加等による災害対応力の向上が掲げられている。また、平成26年10月に公表 された「消防に関する世論調査」によると、56.6%の都民が1年以内に防災訓練等の参 加経験がないと回答している。これを受けて、都知事から防火防災訓練の参加の助長要因や 阻害要因を分析し、訓練への参加を促す実践的、効果的な方法を明らかにし、参加者を一層 増やす具体的な方策について検討することを目的に諮問がなされた。そこで、地震対策部会 として「地域特性等を踏まえた防火防災訓練のあり方」について答申のための作業を進めて きた。 答申の流れとして、まず防火防災訓練の現状と課題を把握するために消防署の担当者への ヒアリング、都民に対してデプスインタビューを行い詳細にわたって阻害要因・促進要因に ついて課題を抽出した。それを受けて、都民1600人に対して実施したアンケートを 分析し防火防災訓練参加の助長要因・阻害要因の仮説を立てた。その上で、防火防災訓練の 実地検証を6消防署で合計12回行った。その後、実地検証の成果を基にどのように防火防 災訓練を実施していけばよいのか一つの案として、PDCAサイクルを基にしたPDCA型 防火防災訓練の手引きを作成しこれらの成果を用いてどのように防火防災訓練を推進してい けばよいのか提言をまとめた。 防火防災訓練の現状として、平成26年中の防火防災訓練の実施件数は12,385件で 実施主体を見ると町会組織が50%、自主防災組織が4%と、町会等が合わせて54%、学 校関連が19%となっている。一方で、参加者が固定化されていることや高齢化が進んでい ることが担当者へのヒアリングで指摘されている。また、防火防災訓練への参加の働きかけ も町会等を中心に行われており、加入してない人には情報が届いていないと考えられること も指摘されている。以上のことから町会に加入していない人、知っていても参加しない人に 対する参加促進方策が必要だと考えられる。そこで、防火防災訓練に関するアンケートを実 施した。アンケートの目的は、防火防災訓練に関する住民の意識構造を解明し訓練参加への 助長要因、阻害要因を明らかにすることである。その上で、働きかけ方法の検討と効果的な 訓練内容作成の参考とする。 アンケートは、都内在住の1,600人を対象に行った。その中で、60歳未満で独身若 しくは夫婦のみの世帯の人、60歳未満で中学生までの子と同居している人、60歳未満

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で、中学生以上の子と同居している人、60歳以上の人の4つのセグメトを作成した。その 結果、過去の訓練参加の経験に着目すると、訓練に参加したことがある人は37%で未参加 が63%であった。参加経験がある人の参加の要因は、町会に加入しているや隣近所と仲が 良い等地域に溶け込んでいる特徴があった。このような人に対しては、今後も続けてもらう ことがポイントになってくる。対して、訓練未参加者の1,003人に参加意向について着 目すると、83パーセントの人に参加意向があった。理由として、防災の知識を身につけた いや防災訓練は重要といった訓練参加には積極的な意向がある。一方、訓練の情報が手に入 らないといった問題点が指摘された。参加意向がない17パーセントの人について、どうし て参加しないのかという問いに対して訓練はつまらないや参加する理由がない等の考えを持 っていることがわかった。このような人に対しては、訓練の重要性を理解してもらう必要が ある。 アンケートから意識構造分析を行った結果、参加経験のある人は町会に加入しており地域 に溶け込んでいる、結果として訓練の情報が届いている。一方で参加経験のない人は、訓練 は重要と考えているが開催情報が手に入っておらず、参加できていない。このことから、訓 練の情報を知ってもらい、参加してもらえる環境を整えることが重要だと考えられる。訓練 未経験者で参加意向のない人は、訓練はつまらないと思っており、参加する理由がないと考 えている。このことから訓練の重要性あるいは必要性を知ってもらい理解してもらうことが 重要である。また、すでに参加している人も引き続き訓練への参加を続けてもらうことが重 要である。以上の事から、訓練未参加者に、訓練の情報・重要性を知ってもらう、訓練に参 加できる環境を整えて参加をしてもらう、訓練参加者には、訓練の参加を続けてもらうとい った3つの参加促進施策を柱として整理を行った。 デプスインタビューや消防署へのヒアリング調査の結果から、ライフステージによって意 識に差があることが示唆された。そこで、ライフステージに着目してアンケート調査結果を 分析すると子育て世帯のうち、特に未就学児と同居している世帯で訓練参加意向のある人の 割合が高く、訓練参加経験者及び訓練参加意向のない人の割合が低い傾向があり子どもの年 齢が上がっていくと参加意向のある人の割合は減り、訓練参加経験者と参加意向のない人の 割合が高くなるということがわかった。このことから、小さい子供と同居している世帯は、 参加意向が高く、訓練に参加する可能性が高いといえる。 アンケート調査の結果からライフステージよって訓練の意識が違う可能性が示唆された。 これを受けて、6つの消防署で合計12回の実地検証を実施した。その中で、幼稚園・保育 園で行われる訓練は参加率が高いという結果が得られた。幼稚園等で行われた訓練は、参加 率が35~47%、それに比べて共同住宅の訓練参加率は20%位であった。これはアンケ ート調査結果でも同様の傾向であり、幼稚園等の保護者は訓練に対する参加意向が高いが、 既存の訓練に参加できていなかったといえる。上手く機会を捉えて参加しやすい環境をつく ることが参加率の向上につながる。 60歳以上の男性を対象とし非常食をテーマに行った防災訓練では、これまであまり行わ れてこなかった訓練を行ったことで、新規参加率が40%と非常に高かった。注目すべき点 は、半数以上の参加者が地域の安全・安心メールで開催を知り参加したことである。対象者 の関心に合わせた訓練内容が重要であり、また訓練情報の伝達手段もまた重要であり区市町 村と連携した広報の重要性が明らかになった。 八王子消防署での訓練では、国際協会等の他機関と連携することで消防署のみでは開催が 困難な外国人を対象とした訓練が可能となった。また、外国人コミュニティーのリーダーや 外国人が多く住む共同住宅の所有者等、キーパーソンとなる人と連携することが重要であ る。

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訓練を通して、同じ国の人であっても様々な語学レベルの人が混在しており、ひらがなや 英語を併記したコミュニケーションボードなどの資料が有効であることが明らかになるとと もに、日本人であれば常識である119番のかけ方や共同住宅等に設置されている消火器を 非常時に使用しても良いことを知らないことからそれらを周知する必要があることが明らか となった。また、イスラム教徒などを対象とした場合、パンフレット等にキャラクターを印 刷しない、男女は別に実施する必要があるなど対象に合わせて配慮をする必要がある。 このことから対象者層の関心に合わせた訓練を企画することによって、新規参加層を取り 込めることが示唆される。ニーズに合わせた訓練を企画することで訓練未参加者の参加促進 の可能性が高いことが明らかとなった。以上の結果をまとめると、ここに掲げる8つの項目 が実地検証から得られた知見である。幼稚園・保育園で行われる訓練では、機会を捉えて企 画をすると高い参加率が得られる。また、訓練対象者に合わせた訓練を企画することの必要 性や実施した訓練をブラッシュアップしていくことを考慮すると、実際に実施した訓練デー タの蓄積が重要である。あるいは、区市町村と連携した広報や、なんのために訓練を行うか を明確にすること、訓練を推進する人材の必要性などの知見が得られた。既存の訓練では、 屋外で実施する訓練が中心であったが、高齢者や子連れ世代を対象とする場合、室内で実施 することができる訓練が必要であることが示唆された。 このような防火防災訓練をブラッシュアップしていくには、どのようにすればよいかとい うことでPDCA型防火防災訓練を提案した。これまでの防火防災訓練の半数以上は、町会 を対象としており、町会等の要請により訓練の技術的指導等を行っていた。そのため、町会 に加入していない住民には訓練の情報が届いておらず、参加したいという意思はあっても、 いつどこで行われているかわからず参加できない状況であったと推察される。そこで、訓練 をする消防署と対象者である地域の住民、区市町村、幼稚園等の施設、国際協会等の機関の 協力要請を行って連携をとり訓練を推進していく。あるいは、訓練データを蓄積しながら結 果をフィードバックしPDCAサイクルとし訓練内容をブラッシュアップしていくことが重 要である。 訓練未参加者が参加したいと思える魅力ある訓練の企画をするためには、実施された訓練 を評価・カイゼンするためのPDCAサイクルを意識する必要がある。そこで本審議会では 訓練の評価・カイゼン・結果共有を行い防火防災訓練企画のレベルアップを目的としたPD CA型防火防災訓練実施手引きを作成した。 PDCA型防火防災訓練手引きでは、ふりかえりシートを作成し、訓練の企画や工夫の評 価をデータ化し蓄積できるようにした。この訓練データを蓄積し、担当者及び消防署間で共 有することで効果的な防火防災訓練の企画の作成が期待される。ふりかえりシートには、い つどこで訓練を行い、何人の人が参加したかの他に、何を目的として訓練を企画したか、ど のような工夫を取り入れてその効果はどうであったのか、この訓練企画を行ったことでどの ような知見が得られたのか等、詳細に記載できるように工夫している。ふりかえりシートの 訓練計画部分では、どこでどのような訓練を行ったかの他に訓練目的、達成目標、なぜその 訓練を行うかの理由など、訓練企画の趣旨を記載できるようにしている。ふりかえりシート のモニタリング項目では、参加者、新規参加者、次回も参加したいと考えている人の数、友 人などに勧めたいと回答している人の数、参加者が見に付けたいと考えていた知識技術が身 に付けられたか等、数字で評価できる項目を掲げている。 ふりかえりシートにおける訓練の工夫に対する部分では、訓練企画時に取り入れた訓練の 工夫を、内容、日時、場所、広報手段のそれぞれに分け、評価を行っている。また、工夫を 導入したことによる効果と、工夫の取り入れやすさを5段階評価で評価を行う。ふりかえり シートの訓練で得られた知見部分では、訓練の結果得られた知見について項目ごとに整理

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し、記載することで今後の訓練企画作成時のヒントとして蓄積していく。それぞれの消防署 管轄内でどのような人が住んでいるのか知っておくことが重要である。そのために、未就学 児の子どもと同居している世帯の分布や外国人居住者の分布、60歳以下の単身または夫婦 のみの世帯、70歳以上の方、戸建住宅に居住している方、共同住宅に居住している方、中 学生までの子どもと同居している世帯、40歳以下の単身世帯等の特性をデータベースとし て蓄積し整理している。 答申の流れとして、現状と課題の整理、アンケートの分析、防火防災訓練の実地検証、P DCA型防火防災訓練の手引き等の作成を通じて効果的な防火防災訓練の推進方策の検討を 行った結果を提言としてまとめた。まず、知ってもらう、参加してもらう、続けてもらうと いう大きな3つの課題を提言とした。訓練対象者に防火防災訓練を知ってもらうために、防 火防災訓練の必要性の周知、対象者に合せた広報手段と内容の選択、消防署と区市町村とが 連携した広報、外国人居住者に対する防火防災訓練の展開が必要になる。訓練対象者に防火 防災訓練に参加してもらうために、対象者に合わせた明確な目的の設定、対象者のニーズや 関心に沿った防火防災訓練の構築、訓練対象の責任者や協力を得られる機関との相談の実施 が必要になる。訓練対象者に防火防災訓練の参加を続けてもらうために、参加者のスキルや ステージを踏まえた動機付け、災害イメージを与える効果的な車両や指導資器材の導入、訓 練を指導し推進する人材の育成及び支援への取組みが必要になってくる。 これらの提言を実施していくために、訓練全般に関する事項として防火防災訓練のPDC Aサイクル化の確立と訓練データの蓄積・共有体制の構築が必要である。また、消防職員や 地域住民の訓練指導スキル向上への環境整備が必要である。次に、効果が高くすぐに推進す べき事項として、子供の保護者を対象とした防火防災訓練、区市町村の安全・安心メール等 を活用した訓練の開催告知が有効であるといえる。 ウ 質疑 なし ⑶ 採決 答申(案)について採決が行われ、出席委員全員の賛成により承認された。 ⑷ 答申 中林会長から消防総監に答申が提出された。 ⑸ 閉会

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活動前 第一部 全体の活動 第一部 0~2歳と3歳以上とで分かれての活動 第二部の活動(3歳以上)

定を締結することが必要である。 3

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