「青 森 県 小 泊 村 の 地 誌 的 考 察 」
佐 藤 均
< は じめ に>
青森県 北 津聾郡小泊村 は山村振興 法 適用地域 と して指定 され てお 9, 漁村 と しての性格 と山 村 と しての性 格 との両方 葱兼 ね備 えたい わ ゆる臨海 山村 と しての典型 的な姿 を示 してい るO 当 村 に おいては交通 の俵 が悪 く他 地域 また は他 文化 圏 との交通 が不十分 なた めに村 の性 格 は い き おい孤 立的 な もの とな 9が ちで あ るO 生活環境 面か らみて も厳 しい 面が多 く,海 V C面 した漁村 で あ りなが ら漁業 だ けで は生 活が成 9立 たず, 農 巣 林 業 に も従 事せね ばな ら覆い こと, さ ら v cこれ ら第
1次産業 V Cつ け加 えて 出稼 ぎ, 日雇 い と多角 的 v c経 営 してゆかねば な らない とい う 厳 しい実 態 が ある
.小 泊村 は総面積 の
87%も占める国有林 に かかわれ, 軒 先国有林 村 と呼 ば れ て か D, それ が村 を大 き く特 徴 づけ る一 要 因 とな ってい るo 閉鎖 的を 臨海 山村 と して今 日ま で成長 して きた小 泊村 で あるが, 津軽 国定公園 に指定 され る こととな 9観光 資源 の開発が改 め てク ロ‑ズア ップされ て きてい る. そ の 意 味 で小 泊〜竜飛 間 の縦貫道路 の建設が 進 め られてい る ことは今後 の村 発展 のた め V C大 きな プ ラス とな ろ う. 以 上 の よ う な ことか ら小 泊村 は ある転換期 V C立 って い る といえ ようO
( Ⅰ )
小 泊村 は標高
100m以上 の山岳地帯 が総 面積 の
67%も占めて か D,村 落 と, i 耕地 は残 Dのわずか 21K h 2 に追 いや ら れ, 平地 は小 泊川流域 V Cわずか に開け て い る.下前地 区v lかい ては家屋が平坦 地 に立地 してい る ところは: 全 くな く傾斜
30度 もある斜 面
vc‑ ば 9つ くよ う
VC階段状 をな して密集 してい る. ここV C2068人 とい う過 密 と も思われ る人 口が集 中 して い る.
その た め地すべ 9, がけ崩 れ, 大 規模 を火災 を どの被害 が多発 して か 9安 全 対策が早 急 に望 ま れ てい る. 気候 は積 雪 も割合少 な く, 気温 も小 泊村 仲 を流 れ る対 馬海流 のため青森県平均
‑34‑
(10℃ )
エ
91度 ぐらい高 く在 ってい る. しか し折戸付近 の海岸部 で は強 い北 西風 のた めに 飛 砂 の筈が ひ ど く,冬
VCは吹 きた
でPが で きや す く, 交通途 絶 e )原 因 とな る ことが 少 を くな い.
人 口は
6000人前後 V C落 ちつ いてい るが若年層 の村外 流 出が増加 して 野 P, 幼児 の 自然増 加 老 齢屑 の長寿命化 がその穴 うめ を してい る状態 である. 人 口の停滞 v c戟 べ世帯 数 は一 定の伸 び を示 して お 9,
1世帯 当 9
4.6人 と小家 族化 が進 ん で きて いる.
虹)
第一 次産業以 外 の産 業 の振興 が望 め夜 い当村 では水産業 菅軸 v c農林業, 出稼 ぎな どV Cよって 生活が支 え られている.耕地 の狭 少を当村 では農業 よ9水産業 の万 V Cウ ェイ トが重 くかか って い る. そ のた め水産業 に従事 してい るかた わ ら自給用 と して米, 野菜,豆類 を どを作付 してい る例 が多 くみ られ る。小泊沖 は地上 す る対馬 暖流, 南下 す る リマン寒 流, 太平洋 か ら陸奥湾 を 通 って流入 して くる親潮, 黒潮 の錯綜 v Cよ 9水産 資源の豊 富を漁場 に恵 まれて か 9,江 戸時代 の昔 か ら漁業 と ともに村 の歴史 が形成 され て きた といえ よう.最近 の漁獲高 をみ ると金額 面で は昭和
46年
に20億 円 奇突破す る とい う発 展
ぷPをみせ てい るが数量 的 には, や や乱獲 気味 (表
1) 漁 家 数 (世帯 ) 昭和
43年11月
1日のた め昭和
総 数
l個t経 営 人 体 247 ㌧竺 動 力
146 呈 78 i漁
.I船 外 竺
T船 (隻 ) L 漁 獲 金 額
lき 動 力船
160134,790万 円 r
651
漁 業!
L 世 帯 握 手
:.
I404賃額別 世 帯数 漁業労
10未満 万
円 ‑30障10 oo 二10500まlZ 円
4 2 年 を ピ
ーク に下 降
線 をた どっ
てい る.特
に小 泊近 海
の漁場 は不
振 v c落 ち入 9, 沖合 でC J操業 を余 儀 な くされ ているため漁獲数量 は伸び悩 み の状 態 が続 いてい
る. 漁家奴 は
651戸 で あるが個人 経営体 は
247戸 で他 は雇 われ漁業 労働 者 と して働 きに出
てい る世帯 で ある. 個人経 営体 において は無 動 刀船 と小 型動 刀船 (
5トン未 満 )菅 もつ ものが
大部分 で非常 に小 規模 の経 営体が多 い. 先述 の如 く沖合 漁業 が余儀 を くされ てい る今 日,無 動
プ }船, 小型船 では操業が 幽難 を極 め, かつ危 険 菅伴 を う ようにな って くるので, 早期 近代 化が
望 まれ てい る ものの小 規模零細経営体 に とって は思 うにまかせ ない現状 で ある. 漁業従事者世
帯 では年 間
100万 円以上
eJ収入 は 困難 で漁業 不振 の と きは出稼 ぎ, 日雇 い夜 どv Cよ 9収 入不
足 を補 っている. 次 に村経済 官支 え て ゆ く漁業 におけ る今後 の課題 につ いて考 え よう
.先述 の
よ うv c漁獲金額
にあ> いては急敵 を増 刀陀 み て いるが, これ は魚価格 の高騰 V Cよる もので,数量
の増加 に よるものではない. 金額 の伸び に よ 9魚民 の生活
VCゆ と Dがで きて きた わけではな く,
諸物価 c j著 しい上 昇, 近代化 へ の設備 投資 な ど支 出 も増大 しているので ある。 ここで注 目 した
いの ほ, 金額 の伸び V C比べ, 数量 の伸 び悩 み の状態 で あ るo 今ま でのた だ 「獲 る」 だけで あ っ た方式 を 「育 て る漁業」 と して進 めて ゆ く必要 が あ 9 , その意 味 でア ワビ, ホ クテの養殖, ア カザ ラ月 の放 流な ど今後推 進 されて ゆか ねば在 らない と思 われるO また 沖合漁業 が進 む V Cつ れ て, 漁船 が大型化 近 代化す るのは必至 で あるが, 小泊, 下 前両 港 v cは造船設 備 が を く,港湾 の竣漠 と共 v c考 え て ゆ くべ き点 といえ よう. 次 v c農 業 v Cつ いて述 べ よ うO耕地 の少 をい当村 V C おいて農業 は各農 家 の生活 を潤 す だけの力 を もちえを い。 そ のため農業 V C従 事 してい る者 は女 子 の大部分 と比較 的高 年齢 層 の男子 で, 若 年 男子 の就 業 は特 v C減 少 してい る. それだけ農業 v c 対 して 悲観 的 副 次的産業 と しての意識が 堆 くな って きて い る よ うで ある
.水 田は小 泊川流域
v
cわずか
VC開け, 畑 は山地 の斜 面 を切 り開いた小 区画 の ものが 多 い.農家数
392戸の うち専 (表 2 ) 農 家 数
(1970‑ 1971)業農 家 は
5戸 だけ で他 は兼業
VC総
392l 数 戸)
(ha) 85耕 規 模別 地
85 87 LO 1.5未 満 〜
87 〜 L1 O〜
1,5〜2
.0*#
332 I;36 18 ; 5 … 1
専 業
兼業 別 専
5業 兼 業
ー計
l 農 が主 兼 が主
よ り生計 をたてている。 農家 1 戸 当 Dの平均 耕地 所有 面積 は
n286ha
とお よそ農 業 経営 とはいいが たい.そ の よう夜中 で比萩 的 明 るい素材 と覆 ってい るのが近 年 V Cおけ る畜 産 の振興 で ある。 肉用 牛, 豚 の飼育が盛 ん V Cを って お 9, ‑戸 で多数 を 抜 か うよう
VCを って きた。 小 泊村 の場 合, 放牧用 共用林野 の開発の余地 がまだま だ あ 9,畜産 物 の消費市場 の 開発, 流通 機 構 の確 立 価 格変 動 に対す る対策 の確立 な どの点が解決 され れば, 村 経 済 の一 端 を坦 う産業 と して成長 す る ことが可能 と覆 ろ う。豊 富な林 産資 源 をもつ小泊村 で
あ るが, その大半 が 国有林野 で ある
。これ らの林野 は伐 採地, 放 牧地, 薪 炭原 野 と しての利用, 母 沢地 区v Cおけ る水源滴 蕃機 能 の維 持増進 や土 砂流失 の防止 の役割 を果 た して か 9, さ らに村 民 V Cとって欠 かせ 貴 い収 入源 と して小泊村 国有林 を管 轄す る市 浦営林署 の作業員 と しての雇用 が ある. これ も通 年 雇用 な ら条件 も良いが, 定員外 作業員 と しての雇用 v C覆 る と条件 も厳 し く, 村 民 の好 敬 場 とは を P えず, 若年層の流 出を食 い止 め るだけ の職場 とはいえず老 齢者 の作業員
が多 い.他 の産業 はほ とん ど振 わず漁船機 具 製造業, 国有林 の払 い下 げ を うけての木材木製 品
製造業 と地元資源 V C立 脚 した産業 が み られ る程 度 で ある
.以上 の産 業 だけで村 民 e )生活が成 9
立 って い るわけ ではな く, 近 年
vCかいては出稼 ぎが各産業
VCおけ る収入 の不足 を補 って生計 を
支 えてい る例 が多 くを って きた. そ の背景 には村 内
vCおけ る現金収入源の貧 弱さが ある
.そ こ
で出稼 ぎは現 金収入 の不足 を補 な うとい う目的か ら今 日にかいては家計 を支 え る重要 な収入 源
と
を9つ つ あ 9, 出稼 ぎは一種 の職業 と して考 え られ る よう
VCを って きた. この 出稼 ぎも小 泊
地 区 と下前地 区 とで は もつ意義 が やや異 そ る. 小泊地 区
VCかい ては: , 出稼 ぎ
VC依存 す る度 合が
強 く, 漁業従事世帯 では漁閑期 V C世 帯主 が 出稼 ぎV C従事 す るが農 林業世帯 V Cかいて は世帯主が
農林業 を妻 や老人 にまかせ
て3‑ 12月 に出稼 ぎを して,冬期間は失業保 険 で生活す るとい う 出稼 ぎ依存型 の世帯 が多い. これ に対 し下前地 区におけ る出稼 ぎの ウェイ トは さほ ど高 くをい.
農 林業 が困難な当地区では水産業世帯が大半 で漁業 に対す る依存率 が小泊地区 よ り大 きい.そ こで漁期 の
3‑ 12月は漁業
VC従事 し, 漁閑期 の
12‑ 3月 に出稼 ぎ菅行 ない, 漁業 収益 の不 足 を補在 っているケースが多い。次 に出稼 ぎの先 と職種 をみ る と青森県 が多 いがその部分は八 戸 に集 中 して お 9イカ釣 りと水産加工が主 夜職種 で ある.北海道‑ も水産関係 の出稼 ぎが多 い
(表
3 )出 稼 ぎ 先 と職 種 (昭和
45年度 の例 )
r ‑ I l
・、 種
し 漁 業 建 設 製 造 他
計
青 森
177 22 1 180東
京 37 61 15 1 77北 海 道
21 15 73大 阪
38 13 tl 51工 業
14 】 9 F 23神 奈 川
】 26 24 11 2 52が, ニ シン漁衰 退 と 共 に北海道 ‑の出稼 ぎ者は減少の傾向 菅 示 し,代 って関東, 関西地 区‑ の出稼 ぎ が 目立 って きた。中 で愛知県‑ の出稼 ぎ 職種 は紡績関係 の も ものが多 く, 労働 内容 も軽作業 夜ため V C女子の格好の出稼 ぎ地 と して注 目されて きている.
血)
小 泊村 菅含 む大部分 の臨海山村地域 V Cかい ては, 目前 に広が る 「海」 を生 活資源 と して利用 す る ことは困難 を状態 であ
9, 逆 に地域 の発展 にブレーキ をかけ てV,る ことが少 を く覆い. そ の よ うを地域 の うちで小 泊村 は 「海」 を割合 に有効的 に利用 で きる恵まれた形 の臨海 山村 とい え ようO そ こで恵まれ た水産資源 をいかV C確保 し, 水産業の永続的 を繁栄 を図 ってゆ くかが大 きをポイン トと在 る。 ‑ また小規模夜耕地,政府 V Cよる減反政策 を どか ら農業 V C対 して ある程度 の見切 P がつけ られ, その 日は出稼 ぎに向け られる ように夜 9, その出稼 ぎ奮こ く当 9前の姿 と して とらえ る傾 向が強 く在 って きた. 目を もう一度足元 に向け, 漁村 と して, 国有 林偏重村 と して,農村 と しての小 泊村が もっている性 格を生か した産業 を組み立 ててみ る必要が ある
Oさ もない と, どん どん若 年層が村外 に流 出す る こと, 出稼 ぎ期 間の長期化 夜 どの諸要件 か ら, 小泊村 の存 在観が次第 に失 夜われつつ ある とvlうことは否 め覆い事実 である. か とvlって今 ま での小泊村 の姿 をこのまま存続 させて行けば よい とい うことでは ない.観光 開発, 交通網の整 備 夜 どが進ん でいる今 日, 今 までの孤立 した臨海山村 か ら大 き く脱皮 した村特有 の豊か夜水産 資源,農林資源 菅生か し, さ らに観光地 と しての要素 を折 9込ん だ, 総合的夜見地 に立 った村 政 の運営がのぞ ずれ るO
‑37 ‑
<参考文献>
⊥
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a
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東北地理第
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(1962)「中央 日本 に おけ る漁村 の変容 と漁夫 出労」
地 理学 評論第 35 巻第 1 号
a