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茨城大学教育学部附属養護学校における

       教育実習の現状と問題点

点点鉱山騰楚嚢吉岡

      は  じ め に

 茨城大学教育学部附属養護学校は,同附属小・中学校に,昭和39年度から同43年度にかけて設置 された各校3学級ずつの特殊学級を母体として,同52年度に設置された。しかしながら,同年度と次 年度の2か年間は新校舎建設期間ということで,従来の特殊学級をそのまま借用していたが,新校舎竣 工に伴ない,本54年度4月当初から,小・中・高の3学部が同一校舎にはいり,養護学校として一体 化された教育活動を開始するに至ったという経過からすると,実質的には,本校は本年度新設になる学 校であるといえよう。 (高等部は53年度から設置。)

 学校規模は,小学部3学級(定員24名),中学部3学級(定員24名),高等部2学級(定員20 名),教官数22名(校長(併任),養護教諭を含む)というのが現状であるが,昭和55年度は完成 年度ということで,高等部x学級(定員10名)の増設と教官4名の増員が予定されている。施設は,

管理棟,各単部下,特別教室棟,作業実習棟および教育工学棟から成る校舎,別棟の屋内体育館,運動 場および農園を主としている。設備や備品等については,「新設校」にみられる「釘9本,材木1本」

から調達し始めなければならないという状況と類似しており,一定水準に到達させるには時間が必要で

ある。

 このような背景のもとで本年度の教育実習が実施されたが,養護学校としての教育実習のあり方につ いては,本校として一応のまとまりのあるものを作りあげるのには,なお若干の時間を必要とする感が ある。もちろん,精神薄弱教育を主とする特殊教育実習は,特殊学級時代から実施してきているのでそ れなりの蓄績はあるのであるが,養護学校教育の義務制が実施されたことも含めて,早急に本校として の教育実習計画の基本的パターンを策定すべく,鋭意努力しているところである。従って,教育実習に 関する課題は,大小さまざまなものがあるが,その中のいくつかについてここでは述べることにする。

      1 教育実習生の類別と実習期間等

 本年度の場合で述べれば,教育実習を実施した実習生の類別と期間等を時期の順に示すと次のようで

ある。

A.養護学校教員養成課程学生,4年次,20名,第1学期の6月,4週間(4単位)

 B。臨時養護学校教員養成課程学生,15名,第2学期の9月初旬,2週間(2単位)

 C。小・中学校教員養成課程学生,4年次,5名,第2学期の10月中旬,2週間(2単位)

   (Cの学生は,養護学校教諭2級免許状取得希望者で,いわゆる副専攻実習生である。)

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126 炎城大学教育学部教育研究所紀要,第12号,特集

 ここでは,学部学科側からは実習年次,時期,期間が,養護学校側からは実習生数,年次,時期,期 間が検討課題となるが,しかしそれらは単に形式的な意味においてではなく,教育実習が進行する過程 において生ずる諸事象という具体的・内容的なことがらと密着している課題であることは当然である。

そこで,Aの学生,いわゆる主面童生に焦点を置き,かれらの標準的な履修経過を追いながら,以下に 課題のいくつかをみていくことにする。

      2 教育実習開始以前における課題

 現行の教蕎職員免許法によれば,その第3条において,特殊教育面校(唐・聾e養護学校)の教員は 盲・聾または養護学校の教員の免許状のほか,特殊教育学校の小学・中学・高等各部に相当する学校の 教員の免許状,すなわち,いわゆる基礎資格または基礎免許状を有しなければならないと規定されてい る。養護学校教員養成課程のカリキュラムは,学部4年間の在学期間の中でこの要件を満足するように 作られている(いわゆる先進諸国の中では唯一の最短期間である)。主専攻生は大学入学の時点で小学 校コースと中学校コースに分かれているが,これは基礎免許状の種類を規定する。両コースとも第1年 次においては主として一般教養科目を履修し,第2年次は基礎資格の取得に必要な専門科目と専攻の専

.門科目とに履修の重点がある程度移動し,第3年次以降は専門科目の履修が全面的になる。第4年次に おいては,卒業研究の遂行が最重点となる。小・中学校教員養成課程学生の場合は,上述の基礎資格取 得に必要な専門科目の履修によって卒業資格を得られるのにくらべ,どうしても主専攻生の履修には負 担増が避けられない。また,特殊教育に関する専門科目の大半は,小e申・高の各学校における履修科

目等と必らずしも直結しないので,その履修には困難が生じ易い。もちろん主專出生は,こうした困難 を克服しながら学習と研究に励んでいるが,上述の,いわば制度的な問題を背景として生ずることがら

が,教育実習に反映してくることも皆無ではない。それは,時として,心添出生が、養護学校における 教育実翫履修する条件輪姦しているカ、という課題に結びつくのであるP

 周知のように,精神薄弱教育を行う養護学校には,子どもたちの特性上,少数め教科書しかない。し かも,これらの教科書を適用できない子どもも在籍している。従って,「ちえ遅れ」という障害をもつ 子ども1人ひとり の実態をよく把握したうえでないと,なにを,どのようにして指導するかを考えるこ とができず,当然指導案も作ることができなくなる。教科書には頼れないのである。つまり,子どもの 実態を適確に把握することが,適切な指導と表裏一体の関係にあるのだが,実態把握については臨床的 に指導することが必要なのに,そのための時間を具体的に学部の時間割上に設定することは,上述の理 由によって不可能事に近いのである。専門科目の授業内容の構成において若干の時間を割いているのが 現状であり,そのための指導が,事実上,4週間の教育実習期間で行われているのである。このことは 当然,実習期間(時間数)の延長の必要論という,ひとつの解決案を生じさせることになる。しかしな

がら,そのような方策は,現行の教育実習が二重履修を前提としているので影響が拡大こそすれ,縮少 されないことを考えると適切なものとは云い難いであろう。

 以上の課題は,副専攻生の場合,事前の,特殊教育に関する専門科目の履修の少なさのために,より 拡大されがちであることを付言しておく。

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青岡 茨城大学教育学部附属養護学校における教育実習の現状と問題点 127

       3 教育実習実施期間における課題

 教育実習実施期間においても,子どもたちに対する教育活動の停滞は許されないことであるのは当然 である。しかしながら,当該実習期間における教育活動の流れの中に,養護学校としての教育活動の流 れや特徴などを,実習生が体験できるように配慮された,小・中・高古学部別の教育計画(実習計画)

が用意されている。

 まず,配当される実習生の入数であるが,従来から主専攻生の20名という人数が,同一期聞に配当 されるものとしては最大のサイズである。養護学校は3学部から成るので,算術平均的に2学部に7名 ずつ,残りの1学部に6名を配当することを原則としているが,各学部は一応3学級編成なので,この 点からすれば,総人数18名であれば各学級に2困ずつという配当が可能になるので,この方が望まし いように思われる。それは,学級の児童生徒の定員が,8名と10名と少数なので,学級配当実習生の 番数が多くなると,学級集団のふん囲気が崩れがちになり,子どもたちも落ち着かなくなる傾向が出が

ちになること,および,指導教官の指導の密度が希薄になることなどのためである。他方,実習生の側 からすると,最初にも述べたように,主専攻生は,小学校コース (定員10名)と申学校コース(定員

10名)とに分かれているが,上述のように3学部にそれぞれ7,7,6と配当すると,たとえば小学 校コースの学生であっても中・高いずれかの学部へ配当されることになるので,実質的にはとも角,形 式的にはかなりの不安を与えているようである。もちろん,実習期間の経過に伴ない,子どもの様子が 理解されてくるにつれ,この種の不安は滅少していっているので,この点姐解決できることである。要 は学校への最大配当人数が,20名程度を維持できるか否かがむしろ課題となろう。

 さて,実習生は各学級に配当されて,いよいよ実習生活が具体的に開始されるが,精神薄弱教育にお いては,朝,子どもたちと出会った時点から,下校で子どもたちの姿が見えなくなる時点までの間が,

すべて指導場面になるという特徴が極めて強い。換言すれば,教官はもちろん実習生においても,瞬時 といえども子どもから目が離せないという,極めて緊張度の高い状況の中で,毎日の指導が債み重ねら れている。このようにして把握された子どもの状態に,さらに家庭から提供される情報,校医や大学研 究室から提供される情報等が謄みあげられて,個々の子どもの実態や発達の経過が把握され,今後の指 導方針が具体的に策定され,指導が実施されていくのである。そのような過程にはいる手始めとして,

実習生は,まず眼前にいる子どもを知るために,子どもと仲良しにならねばならない。本校の子どもた ちは,この点では極めて卒直な対応をする者が多いが,これまでのところ特に難点は生じていない。

 実習開始日(第1日目)の朝,子どもたちと対面しての挨拶から始まり,指導教官の示範授業中にお ける子どもとの間接的接触,休み時間の遊び,給食時の接触そして下校の見送り等々を通じて,個々の 子どもについて情報を集め,それぞれの子どもを知る活動へはいっていくことになる。本校の子どもた ちは,小人数ではあるが,ちえ遅れの程度,併せもつ障害,興味等々の相違が著るしく,実に多様な個 性の持ち主の集団であるので,個々の子どもの特に顕著な傾向等については比較的早く把えられるが,

その子を知るということについてみるとそれだけでは不十分であり,もっと多面的に,かつより深く子 どもの諸傾向を把握する必要があるのである。子どものある具体的な行動の意味をどのように理解する かということが,大切になるのである。しかしながら,それは,実は大変な難事であることは云うまで もない。では,実習生は全然それがやれないのかというと,それは事実に反することになる。主専攻生 は,第2・3年次の間に,そのために必要な基本的なことがらについては,学習しているのであり∫従

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128 茨城大学教育学国教育研究所紀要,第12号,特集

って一応の準備体制を保待しているのである。それがなぜ機能しないのであろうか。

 いくつかの理由が考えられるが,2っほど述べてみる。ひとつは,子どもたちのド話しことば」の聞 き取りに関係する。本校の子どもたちは,言語発達の遅れ(ちえ遅れの微温のひとつ)にくわえ,構音 障害等で発音の不明瞭な者がかなり多く,従って子どもたちが表出した言語の内容を把握できないとい うことである。質問に対し,子どもがこちらがその意味を直ちに了解できるように答えてくれない,あ るいは,発音すらよく聞き取れないというのでは,確かに子どもを知るうえでの情報を子ども自身から 得ることは難しくなる。もうひとつの理由としては,子どもを知るための基本的手掛りはもっているの に,それらをうまく使えないことであるが,これは1.で触れたことと大いに関係する。それは,そのよ

うな手掛りを実際に応用した経験をもたずに,一足跳びに実習にはいってしまうことによるものと思わ れる。すなわち,実習期間にはいって最初の応用をすることで,実習生からすると不慣れのために,そ の作業をうまくこなせないことになる。結果は第1の理由と同様になる。そうなると,子どもと対応す る個々の場面で,子どもの行為に対しどう対応したらよいかということについても,実習生なりの判断 ができないことも生じてくるし,また指導案を作成する際に,題材設定の理由が作れなくなったり,授 業の流れの中での個々の子どもへの対応が不十分になったりすることにもなってしまうのである。

 このような課題は,放置できないことである。その解決策を探れば,やはり時間が必要ということに なりそうである。実習期闘にはいると,4週間の中で,観察・参加・実習というすべてのものを履修す ることになるので,実習期間の大部分のところで,この3っの活動が平行して進行することにならざる を得ないという面が出てしまうのである。すなわち,たとえば実習第1・2週は,いろいろの講話と翻 意にじっくりと時聞を投入し,第3・4週で参加と実習を行うことにすれば,かなりの改善が可能にな

るかもしれないが,現状では,配当入数,研究授業時数標準,子どもの側の状況等からみて相当な難事 と思われる。他方,学部側においても,時間割の中で,あるいは事前オリエンテーションにおいて解決 を図るということ依,上記1.で述べたように,現状では不可能事に近い・しかしながら,なお検討を継 続し,一刻も早く実現可能な解決策を見い出さなければならない。

 以上の課題は,主専攻生以外においても,事情は全く同様である。

       4 教育実習終了後の課題

 小・中学校教員養成課程学生は第3年次において教育実習を行うので,実習終了後から第4年次にお いて,実習期間中に体験し修得したことがらを,その後の履修に反映させ,確認したり深化させたりす る機会を多くもっことが可能である。それに対し,主専攻生の場合は,第4年次において専攻の教育実 習をするので,そのような機会を,いろいろの專門の授業を通してもっことはほとんどできない。それ は第4年次なるがゆえに,聴講している授業は,まずは履修基準を満足するのに必要なもの(特殊教育 専門科目は経験上塵隠である),次いで他の資格取得に必要なもの(副専攻科目の授業)であるからで ある。従って,s月上旬に既にテーマを提出して研究を進めている卒業研究だけが,いわば主専攻に関 する専門科目ということになる。卒業研究は,各自指導教官の指導を受けながらも,自主的かつ主体的 に科学的研究を進めていくものなので,教育実習で体験し修得したものが主専攻生にどのように影響し ているかを,必らずしも明確に把握できないが,指導教官と主専攻生の個別的指導場面における会話,

あるいはその後の卒業研究の進め方等から,たとえばちえ遅れの子どもの行動を現実的かつ具体的にと

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吉岡 茨城大学教育学部附属養護学校における教育実習の現状と問題点 茎29

らえられるように変ったことから,テーマの把握のし方がより鮮明になったり,実験や調査の方法を具 体的に無理なく考えることができるようになったため。研究が円滑に進行するようになったりすること

などが観察されている。

 主專攻生以外の学生は,実習終了後も通常は特殊教育専門科目を聴講する機会があるが,副専攻の者 に対しては,例外的な者以外はそれだけであるので,詳細については不明である。

      おわ り に

 冒頭に述べたように,何分にも養護学校として各学部が一体となって実施した教育実習は本年度が最 初なので,大小さまざまの課題があることは事実である。しかしながら,実習生が,個人差はあれ,自 主的かっ主体的に実習に取り組んでおり,中には,今すぐに現場へ出ても一人前の指導者としてやれそ うなぐらいに,素晴らしい指導案を作成し,入念な教材研究をし 適切な授業を行う者の存在すること

も事実である。

 本年度から養護学校教育が義務制となり,全く医療の対象である以外の障害児はすべて就学すること になり,養護学校在籍児の障害の程度の重度化,ならびに子どものもつ障害の多様化・重複化は著るし いものがある。従って,われわれは即興坑生に対する期待を大きくし,それが過大とみられるかもしれ ない要求へと結びついていくということになってしまうのであろうqいずれにしても,学部と附属養護 学校とが一体となって,よりよい教育実習体制を確立するよう努力してゆかねばならない。

参考文献

1)吉岡 伸 他:教育実習(住田勝美 他:精神薄弱教育の研究,第9章,第2節,1970,

       金子書房)

参照

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