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27

効率的市場の諸特性

斎  藤    進

はじめに      3節では,それの強い条件を明らかにし・第2節 第3節で依拠した前提の証明と,さらに効率的市

企業の投資評価は,一般に投資収益を当該企業       場のこの2種類の条件が株価に対して持つ意味を のリスク・クラスに適用される割引率で資本還元      第4節で明らかにしよう。以上が本論文の構成で

する方法で行われる弱?静卿興・リスク ある。

・クラスの割引率が投資収益の確率分布を正確に

反映しているとする考え方である。        1.効率的市場の理論

リスク・クラスの割引率は・証券市場で決定さ   ここでは,効率的市場の理論を概観し,さらに れ・それは・そのリスク・クラスに属する負債ゼロ  効率的市場の持つ意味を明らかにしよう。

企業の株式に適用される割引率である。それ故・   Fama〔5(1970),9(1976)〕によれば,

この割引率は負債ゼロの企業の株価の確率分布を  効率的市場の理論は以下のとおりである。まず,

反映していることになる。さらに,株価の確率分  各投資家が獲得した情報は価格の確率分布として布が投資収益のそれを正確に反映していれば・結  集約され,市場の衡均価格は蒋粂あ砧格あ動喬億

局,この割引率を投資評価に利用することに何ら  を基礎に決定される。従って,市場の衡均価格は 問題はない。      各投資家が手にした,即ちその意味で市場にとり

だが,株価の確率分布は・投資収益だけでなく  現在利用可能な情報から推定された将来価格の確 多様な投資家の思わくにも依存している・従って  率分布に基づき決定されることになる。かかる確 株価が投資収益の確率分布を正確に反映するため  率分布に関し効率的市場が定義される。つまり,

o ■ ● ● ● ● ● ●  ● ●  ・

には,多様な投資家の思わく的行動から生ずる麗  市場の均衡価格が常に利用可能な全の情報を反映 乱的要因が排除されなければならない。そこで,  している市場を効率的市場と呼ぶ。市場の均衡価 市場にこれら要因の排除機能が存在するとすれ  格が常に利用可能な全の情報を前提とすることは ば,それは,どのような市場のメカニズムにより  均衡価格形成の基礎となる将来価格の確率分布が 可能となるのか。また,これら要因が排除されな  常に利用可能な全の情報を反映していることと同 ければ,上記の割引率による投資評価は公正なも  じである。それ故,換言すれば,効率的市場は均衡 のでなくなり,従って,投資が公正に評価されな  価格の形成に用いられる将来価格の確率分布が全

くなり,最適な資本配分も達成しえなくなる。こ  の利用可能な情報を反映している市場であり,さ      ●       ●  ●  ■  ●  ●  ●  ●  ●  o  ●  ・

のことは,市場の麗乱的要因の排除が行われてい  らに正確に述べれば,効率的市場は利用可能な情

●  o ■  ●  ● ● ●    ● ● ● ●  ● o ● ●  ■ ● ●  ■ ●  ●

るか否の結論に,最適資本配分の達成の可能性が  報を全て用い,かつその情報の将来価格に対する

●  ●  ●  ●  ■  ●  ●  ●  ●  ●  ●  ●  ●  ●  ■  ●  ●  ●  ●  ●  ●  ● 依存することを示している。      意味を将来価格の確率分布に正確に反映させる市      ● ● 。 ●      注1)

我々は,効率的市場の理論を手掛りとして,市  場である(以降,これをE−M仮設と呼ぶ)。

場のこの撹乱要因の排除の市場条件を明らかにす   このE−M仮説は,将来価格の確率分布に関す る。第1節で,効率的市場の理論を概観し,第2  る仮設であり,E−M仮説の市場への現実妥当性 節で,効率的市場の成立する弱い条件を示す。第  は,均衡市場における将来価格の確率分布の観察

(2)

28       茨城大学政経学会雑誌  第37号

結果に依存する。しかし,将来価格の確率分布は  する諸仮定の集合に分解可能であるはずである。

観察不可能であるから,E−M仮設を論理的に等  そこで,分解された諸仮定は,観察可能な命題を 価な観察可能な命題に翻訳する必要がある。論理  導出する際に用いた市場や投資家に関する仮定と 的に等価な関係は,必要十分の関係であるが,  斎合的であるか,もしくは斎合的であったとして E−M仮設の観察可能な命題への演繹は,市場で  も市場や投資家の仮定以上の情報を持っているか 成立する価格に関する同義な命題へ翻訳すること  明確にされなければならない。これの明確化によ を意味している・従つて,この翻訳は,E−M仮  り効率的市場の理論の実証における理論的妥当性 設以外に市場や投資家に関する仮定を必要とし・  が確保されうるし,さらに,経済分析における効率 それ故,E−M仮設と観察可能な命題とは・同義  的市場の理論の位置を知ることができる。当然,

の関係(必要十分の関係)ではなく,観察可能な  これまでに上記のことが明確化されていれば,我 命題はE−M仮設以外に多様な仮定の複合仮設か  々は本論文で問題化する必要もないが,我々の知 ら支持されることになる・Fama〔5(1970)〕  る限り体系的な形でこの問題が解明されていると によれば・この鶴察可能輪題は3つないし4つ 思われず・それ故,我々は敢えてここに明確化を に分類されるが・その一つを示すと,「市場に  試みるのである。

E−M仮設が妥当すれば・       我々の問題はE−M仮設と観察可能な命題を演 E(P,+1)〉乃       繹する際に用いた諸仮定との理論的関係を明確化 が成立する・ここで,mま糊の証糊格, することであったが・これはE−M仮設の分解と

・E(P,+1)は好1期の期待証券価格である」であ  E−M仮設以外に利用された諸仮定の明示化を通 る。      じて達成されよう。本論文では主としてE−M仮

この観察可能な命題は複合仮設により支持され  設を支持する諸仮定の明示化を行う讐4)そこで,ま ているので,それが現実的に棄却されたとして  ずE−M仮設の意味を明確化する。

も・その事実を持ってE−M仮設は現実に妥当し   まず均衡において価格は唯一・つに定まるから,

ないと結論することはできない。なぜなら・命題  将来価格の確率分布も一義的に定まる。市場につ 棄却の事実がE−M仮設の現実的非妥当性による  いてE−M仮設が妥当していれば,その一義的な のではなく・その他の仮定の非妥当性に原因する  確率分布は,全の利用可能な情報を利用し,かつ 可能性が存在するからである・では逆に・それの  これら情報の持つ将来価格に対する意味を正確に 受容が・E−M仮設の現実妥当性を保証すること  反映している。従って,制度上の変更や新たな情 になるか。少なくとも,この保証には複合仮設が  報の出現がなければ,均衡が成立した後で市場が 相互に論理的に無矛盾であり・かつE−M仮設が  将来価格に適用する確率分布は,均衡価格に用い 観察可能な命題に対して無意味でないことの二つ  たそれと同一になるであろう。他方,市場が効率 の条件が満されなければならない。そこで,我々  的でないとすれば,均衡に用いた将来価格の確率 は,これら条件が満されるか否か考えることにし  分布は,利用可能な情報の一部だけを利用してい よう。具体的な議論に移る前に,我々がこれらを  るか,もしくは,全の情報を用いているとしても 問題とする理由を述べておこう。        それの意味を正しく反映していない。それ故,他

E−M仮設は明らかにある市場(=通常は資本  の条件を一定としても,均衡が成立した後に市場 市場)全体に適用される仮設である。市場全体に  が用いる将来価格の確率分布は均衡価格のそれと 適用される仮定の典型的な例は完全市場のそれで  必ずしも同一にならない。なぜなら,未利用の情 あるが,完全市場の仮定の場合,それは市場を構  報を利用したり,全の情報の意味を正確に反映す 成する諸仮定の集合で置換することができる。  る将来価格の確率分布を新たに形成することが可

E−M仮設の場合も,それは市場の構成要素に関  能だからである。そこで,現在を診,将来を +1

(3)

斎藤:効率的市場の諸糊生       29 で衷わし,将来価格を鑑潔)さらに,将来価格 従って,z、と乙。・の共分散は

珈の櫛鍛蹴(以降P・ d・f)を[・]で表 E(ムZ…)一∫∫[瓦一E(P・1φ・一・)ln・・一 わせば,上記の議論は次のようになる。      E(Pδ+11φ )]/(瓦,瓦司φ −1)

∫(P、+・iφの        [1]         4P属Pl・・

[・コのφ・は醐に利用可能な全の晴報を表わ   一∫[瓦一珊φ・一・)〕∫{∫[ハ・・

し,∫(・1・)はφεのP .1に対する意味を正確       φ に反映しているとすれば,[1]は効率的市場で         一E(君+・1φの]P(ハ・11φ ) 用いられる将来価格のμ ∫を示している。一般         4乃+1}η(φ −bP )4φ に,均衡価格は期待将来価格の関数となるから,         ω(P ∫φ 。1)4乃

       ==OE−M仮設が妥当する市場では[2コで示す期待

将来

ロ麟鷺欝綬撫響1緯撒φεが与えられた基では,つまりφ以上の新たな      が効率的である限り,任意のZ¢とZ虚+・につい情報が入手しえないとすれば,市場は均衡が成立      ても成立する。それは,上の証明でφをφ+。−1

した後も[1コのρ.払∫を用いるから,      としP、+1を乃+,と読み換えることより容易に知    Zホ+1=:1) 手r−E(1%÷11φ)        [3]

      られる。

@   E(Z,+1)=0         〔4コ       さて,乙とZ+.の共分散がゼロであることはとなる。[3]の乙+1は均衡の期待将来価格を上      瓦の観察値を用いてP.,を線型的に推定しよう

回る将来価格であるが,これを均衡の期待価格を      としても,それが無意味であることを意味してい 上回る利得と呼べば,効率的市場では,投資家は      る。従って,乃の観察値を線型的に利用したり,

この期待値をφεに基づいてプラスにすることは      さらにP の統計的な相関性を利用した取引シス できない。換言すれば情報φεに基づきこの利得      テムは,効率的市場では収益的に何ら貢献しな の期待値をプラスにする取引計画は,効率的市場      い。例えば,証券市場でよく見られるフィルタリ

では存在しない。このことはZ .・が公正なゲー

@       ング・ルールや罫線によるルールなどは,これら ムfair gameであることを意味するから, E−M

@       システムの例であるが,それらは,証券市場が効仮設が妥当する市場は情報φ についてfair game

@       率的市場であれば,収益的には何ら貢献するとこ

である。 うがないのである。

 さらに,効率的市場が常に成立っていれば,       以上のごとく効率的市場においては,均衡の期Z8+1は常にfair gameである。そこで,乙とZl+1      待将来価格を上回る期待利得が常にゼロであり,との共分散は以下に示すようにゼロとなる。−1

      しない。この点は十分注意すべきである。つまり部分集合として含み,それ故,φ孟={φ¢一・,君,φ

η(φ 1φε司,乃)4φ  [6〕  家がそれぞれ富を最大化しようと行動する結果・

(4)

30      茨城大学政経学会雑誌己第37号

各投資家の将来価格の推定が相互に影響され,遂  の利用可能な情報が市場の均衡価格に反映される に均衡価格と過去の価格とが線型的に独立とな  には,市場に多数の投資家が参加しうることが必 る,その投資家相互の影響の仕方をE−M仮設は  要である(論理的には,情報を持つ全の投資家の 規定している。その意味では,ある投資家の推定  参加が必要)。ここで,投資家は能力的に利用可 が他の投資家により影響されるその限において,  能な情報の一部しか収集・処理しえないと言う 投資家の将来価格の推定は規定されている。それ  時,各投資家が全て等しい情報量を持つことを意 故,これは影響の仕方についての前提,つまり投  味しない。ある投資家は多数の人員を動員して大 資家相互の情報伝達の程度,また,投資家の情報  量の情報を収集するかもしれないし,他の投資家 授受による市場全体としての推定の修正の方法な  はそれが不可能かもしれない。このような情報量 どに関する前提を必要とする。これらの解明は以  の投資家間の不均衡は現実に存在するし,ここで 下の節に譲るとして,ここでは,E−M仮設から  も当然それを前提としている。ただ,多数の人員 導き出された2つの条件,即ち,「均衡の期待将  を動員しても利用可能な情報の全を収集しえない 来価格を上回る期待利得はゼロである」,さらに, のである。

「各期の価格の共分散はゼロである」を効率的市 ●  ●  ●  ●

場の弱い条件と呼ぶことにする・以下,若干・我   2.E−M仮設の弱い条件と

々がこの2条件を弱い条件と呼んだ理由と,その      市場の条件ことから導き出される若干の結果を述ぺよう。

先の2条件は,E−M仮設が成り立つことを前   各投資家が利用可能な情報の一部を持って市場 提として導き出された。従って,この2条件が成  に参加する場合・市場が効率的であるには少なく 立することは,必然的にE−M仮設が成り立つこ  とも多数の投資家が参加しうることが必要であっ

とを意味しない。例えば,なんらかの理由で市場  た。そこで多数参加した市場において,各投資家 に少数の投資家の参加しか認められず,なおかっ  は・個別の情報を授受し・その結果,将来価格の 先の2条件が市場で成立しているとすれば,それ  推定を修正する。では・どのような情報伝達の は利用可能な全の情報を利用していると言えな  程度や将来価格の推定の修正(これらを市場の情 い。もっとも,少数の投資家が利用可能な全の情  報処理メカニズムと呼ぶことにする)がE−M仮 報を収集・処理しえると仮定するか,全の人に費  設の弱い条件を満すのであろうか。以下では,ま 用ゼロの情報伝達が許されており,この少数の投  ず,各投資家の将来価格の推定を論じることによ 資家もその例外でないと仮定されれば別である  り・上記の問題解決の端緒を探ることにする。

が。これら特異な仮定が現実に妥当すると思われ   前節の議論によれば,効率的な市場において投 ずそれ故,我々は,市場参加に際して投資家の  資家は将来価格に関し自由な予測を形成してよ 情報量に関し現実的な仮定を設ける必要がある。  かった。そこで・将来価格は,一般に・経済全体 従って,2条件が成立しても,E−M仮設が成立  の状況さらにその一部である当該企業の競争状 するためにはその他の仮定を必要とし,このよう  況当該企業の種々の意思決定さらに取引上の情 な理由から我々はそれを弱い条件と呼んだ。    報に影響される。各投資家は,これら3要素を考

通常,将来価格に関する利用可能な情報は老大  慮して各自の予測を形成することになる。そこ であり,1人の投資家がそれらを全て収集.処理  で各投資家が自由な予測を形成するとの意味を,

するのは不可能である。従って,各投資家はその  若干明らかにしておく。その際・各投資家は上 情報の一部しか能力的に収集・処理しえない。そ  記3要素の識別,さらに,それらの将来価格に与

こで,投資家は,利用可能な情報の一部しか情報  える影響の仕方を判断する能力を持っていると仮 量として持っていないから,将来価格について全  定する。

(5)

斎藤,効率的市場の諸特性      31

∫+1期に企業より瓦判の支払いがあったとす  いる。この情報は,先の∫による予測からの将来 れば,明らかに瓦.、に対する +1期の価格疏1 価格の乖離の程度を判断させる資料となる。つま

●  ●  ●  o  ●

(これを実質的価値と呼ぶ)は,瓦.1と等しい。  り,理駈の各自の判断からは別個に,過去の価格 避弗=瓦+、       の動行,他の投資家の行動などの情報から,将来 ここで,笛+1は,当該企業が発行する株式への配  価格の鳶+1からの乖離を各投資家は予測する。

当と,かりに企業が解散したとして株式に対し支  従って,理+1からの将来価格の乖離の判断は,5の 払れる資金との合計額である。配当は,内部留保  情報とは無関係に取引上の情報にのみ基づき下 が存在しないとすれば,∫+1期に企業が稼得した  されると考えられるので,5についての確率分布 営業利益より利子支払を控除した純利益そのもの  (それは環1の確率分布にもなる)とこの乖離の

注8)       注10)

である。また,評1期の資産の売却価値は, +1 程度の確率分布とは確率的に独立となる。乖離の       」

勛ネ降のその資産の収益性に依存している。純利  程度をεで示せば,εについても各投資は,独自 益や資産の売却価値は,ともに一般的な経済状態  の方法によって確率的判断を下すことができ,そ や当該企業の競争状況(これら2つを経済的状態  れ故,εについての判断は各投資家ごとに異なる

と呼ぶ)に依存するし,さらに,純利益は各経済  と考えることができる。従って,投資家の予測は 的状態で企業がどのような意思決定を行うかにも  通常

依存している。       乃+・乞:=Pみ・汁εε いま,ある経済的状態が出現したとしよう。そ       題渇*(s)+ε

の時,この状態下で企業は利益を最大化すぺく努  として示すことができ,各投資家が異る予測をし

注9)

力を行うであろう。この利益最大化のため企業が  ている事を示すために各項に添字を付ける。ゴは 行う意思決定の総体を4で示すとすれば,濁.・は  第ぎ投資家の判断であることを示す。

X戎=瓦.、(&の       [7]   これまでの議論を用いて本論のテーマである効 となろう。ここで,5は一般的な経済状態の集合  率的市場における情報処理メカニズムを解明しよ 8の要素である。[7コは,彦+1期に企業が支払い  う。

うる資金額は,経済的状態と企業の意思決定に依   各投資家の将来価格に対する予測は2つの項目 存することを示している。ここで,4は一定,つ  から構成されている。本論文ではε についてのみ まり各経済的状態で変化しないと仮定すれば,  考えることにする。従って,理+1 の影響を排除す

[7コは5のみの関数となる。      るため,理+1の確率分布について市場全体で合意 P銅=澄(∫)       が形成されていると考えよう。もしくは全の投資 そこで・多様な経済的状態3のうちからどの  家が犀+、について同質的な予測homogeneous ex一 特定の経済的状態∫が生ずるか・ 期では正確に  pectationをしていると考える。但し,各投資家 知ることができず・それ故・投資家は8について  は他の投資家が同質的な予測をしていることを知 の情報を用いて確率的に判断するしかない。だ  らないとする。または,ある投資家は市場で成立 が・各投資家は,8について利用可能な情報の全  する価格が1礪+1を反映するとは知らないか,も を用いることが能力的に不可能であり,自からに  しくは信用していないとする。従って,この場合 利用可能な情報を用いて確率的判断を形成するし  各投資家は他の投資家が自分とは異る予測に基づ かない。従って,各投資家が確率的判断の形成に  き行動すると考え行動するであろう。その結果,

使用した情報が異なれば,その結果としての確率  価格はP鉾1の予測値以外の値で定まると考える 的判断も異なってくる。      場合,各投資家はこの乖離を過去の価格の動向や 次に,将来価格は,過去の証券価格の実現値,  他の投資家の行動を参考に推定しようとする。も 他の投資家の行動などの取引上の情報にも係って  しくは,市場の価格がP茜1を反映して定まること

(6)

32       茨城大学政経学会雑誌 第37号

を知らないか,もしくは信用しない投資家は,       κ 届(εilo )}   口1]

P諏を過去の価格動向や他の投資家の行動から推  となる。故に,fair gameであるためには,[10]

定しようとするであろう。従って,同質的な予測  と[11]が等しくなければならず,従って,取引 が成立しても,各投資家は独自の方法でε5を推定  上の情報に基づくε乞の期待値盈(εdo )と保有率 することになる。       κ の加重和がゼロとならねばならない。

そこで,市場参加者の数をNとして,第溜目     Σκ疎εdOf)=0     [12]

の投資家のP距とεとのρ.舐∫をそれぞれ    ただし・κ は第ゴ投資家の総株式数に対する保有

∫(P翫1の, ¢(ε日oの         株式数の比・保有率比率で示している。それ故,

とすれば,第歪投資家のA+1のβ広ノは    κの各投資家についての和は1である。[12]は,

/(蹴・ゆ虚)ti(εdo )     [8]  全の投資家が同程度の保有率であるとすれば・将 である.ただし,。、は第毅資家の取引龍を示 緬格がプラスになると賄する投資家と将来価 している.鯵加者力泊ずからのμ∫にもと 格がマイナスになると鮪する投資家綱搬を ずいて行動しようとすれば即ち,各投資家が独立  り・結局・全体としてはそれらが相互に作用して に行動するとすれば,均衡が成立するときの市場  将来価格の期待値には影響を与えないこと意味し 全体としてのA.、の/(P、.、1φ∂は,P路、の幽諾∫  ている・また・全体としてプラスの評価が多いい がそれを利用する全の投資家に同_であるから 場合・このような評価をする投資家の一部は証券

       刀         保有率を高めるであろうし,また他の一部は,即∫(P…1φ・)イ(踏・1哩き(ε・1°・)〔9コ ち疎、の鮒値よりもE(,、1。、)(〉・)だけ轍

となる。ここで,φ は勉と全のo奮を含む情報を  すると期待する投資家は,この証券を空売りshort 示している。      saleし・身ずからのκ をマイナスにするであろ

市場にE−M仮設が妥当すれば,市場はφ に  う。その結果,市場全体ではE(剣o∂の影響を っいてfair gameでなければならなかった。つま  中立化し,従って,この場合にも[12]が成立す

り,φ の全を知ったとして,それによって均衡の  るのである。

期待将来価格を上回る期待利得を得ることはでき   これまでは,各投資家は独立に行動すると考え ないかった。では,この属性が成立するために  た・しかし・顔・1・)は,実際の他の投資家の行 は[9]に対してどのような条件が必要となるであ  動を観察して修正されると考えられるから,他 ろうか。かりにφ の全を知った投資家がいると  の投資家の ゴ(・1・)と必らずしも独立とならな して,その投資家がそれらの意味を正確にA+1の  い。そこで・第ゴ番目の投資家が他の投資家の行 μ広/に反映させたとする。この投資家のρ.広∫ 動を観察し修正した均衡時点でのε についての

は明らかに∫(Pみ、1 SOt)と同一となる。なぜなら  ク諾∫を偽(ε 幽)とすれば,均衡のμ諾!は

+1期に企業はP轟1しか支払をしないのである     ∫(P +1Jφt)=f(1)轟11SOt)置σ¢(ε、俺)

から。従って,この場合,将来価格の期待値は       ¢−1

[10]となる。       とならなければならない。

E(P轟・ゆ・)一∫P鉾・∫(P㌫・ゆ・)燃〔1・コ 簾1禦禦1こ鰹聯騒繁欝

o  ●  ●  ●  ●  ●  ●  ●  .  ■  ●  ●  ●  ●  ■  ●  ●  ●  ●  ・  ●  ・

加重和となるから,P .1の期待値は,κ を第 投  とすれば,それ以上の娠ε」属)についての修正 資家の証拳保有量とすれば,      が行われない状態をそれは指し示していることに E(P副P )譜Σ俵E(P翫1ψ )+      なる。この場合にも,E−M仮設が妥当するとす

(7)

斎藤:効率的市場の諸特性       33 れば,独立の場合と同様の条件が成立する。ただ  上記め逆のケースでも,洗練された投資家の証券

この場合には,個々の投資家のεfの期待値がゼ  購入によって価格は上昇し,結局,いずれの場合 ロにならなければならない。この点が先の独立の  も本質的価値と等しい価格で均衡が成立するであ ケースと異なる所である。そのことを以下,Fama  ろう。従って,任意の投資家のε¢の期待値の予

〔4(1965)〕により見ることにする。      測は,洗練された投資の行動により修正されるこ Fama〔4(1965)〕によれば,「…個別証券は  とになり,それ以上,売り買いの行われない均衡 本質的価値(intrinsic value)を持っており…」,か  した時点では,各投資家のε盛の期待値の予測は かる本質的価値は「…その企業の収益予測に依存  全てゼロとなる。ここで,各投資家は,洗練され し,さらに企業収益の予測は経済的・政治的要因  た投資家行動そのものを観察する必要はなく,こ により左右させられる。かかる要因のあるものは  れら投資家の行動から結果する価格の動向を知れ 当該企業個有のものであるし,またある要因は他  ばよいのである。

注12)

の企業にも同様の影響を与える」としている。我   しかし,各投資家のε の期待値の予測が全て 々が先に述べたP壽+1は・利益最大化を志向する個  ゼロになるためには,多数の洗練された投資家が 別企業の意思決定方式と,経済全体に影響する経  存在しなければならないのか。必らずしもこれら 済的状態より決定されたことを想起するならば,  投資家が多数存在することは必要でない。多数の Famaが述ぺている本質的価値が我々の踏、に相  投資家がε乞の期待値が正になると考え行動した 当するように思われる。しかし,Famaが考えて  としても,それを中化させるのに充分な数の投資 いる本質的価値は,我々のP翫と同一ではない。 家かε1の期待値に負の予測して行動すれば,結 なぜなら,「…通常,実際の価格(現存の均衡価  果として,価格は本質的価値に等しい水準で定ま いる…」とFamaが述べている事を考えられば,  各投資家がεεの期待値を修正すれば,均衡では 本質的価値は,P㌫・によって決定される彦期の価  全の邸の期待値がゼロとなる。ところで,各投 値と考えられる・Famaは,この傾向,即ち本質  資家のε虚の期待値がゼロの回りで対称的に分布 的価値と均衡の儲が敏す獺向を知って・・る (易(,、1・∂一一賜(,,1。、鍔な雛定を行う獺家 多数の洗練された投資家魁ε盛の期待値の決定に  がそれぞれ同数いること)していれ賦り上記の中

重大なインパクトを与えると考えている。    立化は近似的に達成しうると考えられる。これは      注14)

Famaの説明を我々のこれまで議論に則して述  将来価格の期待値が実質的価値の回りで対称に分 べれば・いま多数の投資家が当期の価格を過少に  布していることと同等である。そこで,我々は,

評価していると考えよう。つまり・彼らは,他の  この中立化の条件が独立のケースにも近似的に妥 多数の投資家がε葛の期待値を負に評価しているの  当するので,以下の結論を下すことができる。即 で現在の価格が過少評価であると考えているので  ち,各投資家が独立に行動しようと依存的に行動 ある・このように考える投資家は・証券を購入す  しようが,E−M仮設の弱い条件が成立するため るであろうから・証券価格は本質的価値以上に上  の条件は,各投資家の将来価格の期待値が実質的

昇するかもしれない。証券価格が本質的価値以上  価値の回りで対称に分布していることである。       注15)

に上昇すれば,多数の洗練された投資家は手持証 券を売却,さらに空売short saleするであろう。

@      3.E−M仮設の強い条件なぜなら,彼らは本質的価値と均衡の価格が一致

する傾向を知っているから,均衡の価格以上で売   前節の結論が市場に妥当するとして,そのこと ることは,現在の価格と均衡価格の差だけメリッ  がE−M仮設の成立を保証するであろうか。つま トを生ずるので。その結果,証券価格は下落する。  り,前節の結論が市場について成り立つとしても

(8)

34      茨城大学政経学会雑誌  第37号

そのことは・全の利用可能な情報の将来価格に対  特性,即ち,2次以上のモーメントに関して両者 する意味を正確に反映していることになるのか。  は同一になる必要がなかった。従って,前節の結 この問題に答えることにしょう。       論が成り立ったとしても,必ずしもE−M仮設は

Fama〔9(1976)〕によれば,「効率的市場は  成り立とはかぎらない。

資本主義制度の重要な要素である。この制度にお   当然,前節の結論が成立し,かつE−M仮設が いて・その(効率的市場鴇著者)理想型は,そこ  同時に成立するには,[9⊃と[13]とが等しく で定まる価格が資本配分の正確な指針となる市場  なればよい・これは,各投資家がε召について確率

である。即ち・企業が有価証券を発行しそ?活動  的判断を行わないこと,つまり,ある特定の_っの資鋼達を行う場合・その有価証券は公正な価 の値のみを・、の推定値とする場合に達成される。

灘叢二織禦隷憾二欝弩霧そのこと々塀から知れる・[9輔ち個嫌      万合,それら有価証券が公孟な価格を支払うと仮定      πε1ε2εの=n妖εloの  [14]した下で投資家はかかる選択を行いうる…雅 とし,環、の微少区間と濠、の微少区間での確

の引用から知られるように・効鞠市場における 率を求める.[ユ4]につレ・てのこの解を[15]で

価格は,(a)企籍動の公正な評価であり・(b)[・3]につ・・ては[・6コで,さらに,/(蹴、lp、)同時に有価証券が取引される価格にもなってい は・[13]と同一のμ∫であるから洞じく

る。そこで・企業活動の公正な評価であるために  [16]で表わす。

欝鷺灘灘難鷺翁 P(晦憂岬  [15コが成立するためには,先に述べた取弓1上の情報を   F(P㌫、)      [16コ

中立化する情報処理メカニズムが必要となる.か [9]と[13コが等しければ,当然

りに証券の価格に取引上の情報が反映していたと     F(P㌫、)= F(P蒲)P(δ1 ξ2 δの

すれば,それは企業活動の公正な評価と}よなら となり,それ故

ず,さらに最適な資本配分も達成されなくなる。      P(ξ1・ε2・…・εの=1      [17]

従って,最適な資本配分が達成されるためには,  が成立する。そこで・

誓欝格は取引きの齢ら中立でな}ナればな∫::1綱幽≦1σ一1.之・・、κ)El8]

「利用可能な全の情報の将来価格に対する意味  であるから,[17コか成立するには全のゴにっいて を正確に反映する」とは,上記のような意味を  [18]は等号が成立する場合である。従って,全 持っている。では・前節の結論がこの意味を充分  の投資家はε のみが生ずると考えていることに に達成しているかと言えば,我々は否と答えざる  なる。

をえない・つまり・前節の均衡のA・1のρ・鼠∫  各投資家がこのような点推定をする場合でも前 は,独立のケースについてのみ示せば,     節のfair gameの仮定は同時に満す。従って,各

∫(Pt+11φt)=ニf(P鉾1190t)畳 、(,、1。、)[9コ ε湘互の関係は[18喝a]備すものでなければな

乞81@         らない。

であった・しかし,φ・の全てを正確に利用したと   Σ痢一・    [18.aコ

すればその時のE・・についてのμ∫は  これは,〔・2]の易(・、」・、)一δ、から容易に知れよう。

/(P㌫11φ∂        [13コ  [18−a]の意味は,前節の[12]の説明で期待値を であった。前節の結論は,[9コと[13]の期待  特定のδ重に置き換えることで判明する。それ故,

値のみが同じであって・その他のμ4・∫に関する  ここでは⊂18−a]の意味を述べず,直接結論に進

(9)

斎藤:効率的市場の諸特性       35 む。E−M仮設の弱い条件が成立し,かつE−M  式の単位あたりの価格はP であるから,予算制 仮設が成立するためには,全の投資家が点推定  約として[20]が成り立つ。

をし,さらに各々の推定値が実質的価値の回り     e =砿+ツ +絢A      [20]

で対称に分布していなければならない。我々は,  さらに,第歪投資家は,負債のみ,株式の∫ E−M仮設の弱い条件,第1節で述べた多数の投  購入によって +1期に得られる収入で, +1期 資家が市場に参加すること,さらに本節の結論を  の消費を賄あなければならない。それ故,[21]が

●  ●  ●  ●

合せてE−M仮設の強い条件と呼ぶことにする。  成り立つ。

q.1乞=(1十rx)夕 +亀P彪   [21]

4・証券価格モデルとE−M仮設    2節でP、+、についての第ε投資家のム広/は

2節,3節の結論は,「市場均衡での将来価格      轟(疏.1flφのrr(Pみ11ψ )妖εεIo∂ [8]

の期待値は,各投資家の期待将来価格と証券保有  であった。それ故,乃+・ が確率変数であるから・

率の加重和である」と言った前提に依存してい  α梅も確率変数である。

た。そこで,本節では,この前提が成立すること   そこで,第 投資家の期待効用の最大化は以下 を示す。以下では,少なくとも多数の投資家が参  のように定式化される。

加しうる市場,逆に言えば,投資家の参加を制限    max瓦(乙ri)=E,[u,(Cti,(1十rコ).yi十XiPt+1∂]

するような要因は存在しない市場を想定する。ま    subiect to eFq+y汁κ 乃+1

た,前節までに用いた仮定と同一のそれを用いる  ここで,目的関数を最大化する変数は,磁,施さ が,ただ,以下では2期間モデルを用いる。その  らにκ である。これらの変数を定めることによっ ことが本節で導入される新たな仮定である。    て, 期の消費額と +1期の期待消費額が決定さ まず,企業は 期に負債と株式により資金調達  れるのである。上記の問題の最適化の条件は,

をし,企業活動を開始する。妊1期に企期は解散  [22]をqε,舞,κ さらにλについて偏微分しゼ をし,それまでに稼得した利益と資産の売却額の  ロに等しいとし,整理すれば[23コ,[24],[25]

合計額から負債を支払い,その残りの金額を株主  さらに[26コとなる(λはラグランシュ乗数)。

に対して支払う。株主に対する支払い額は・第2    巧二瓦(Ui)十λ(e −C ry 一κfP言)[22]

節で述べたように・      ∂最(の      一λ:=0      [23]    理.、=避(s)       ∂G

である・さら韻債の利子率はηであり・それ  (1+晒[諜」+・ 圏

は難鑑㌍㌫蹴趨用繋 &臨祠一綱 [25コ

大化を目的としている。第ピ投資家の効用関数は     q=C 汁y汁κ轟        [26]

[・9コであるとし・q・α…はそれぞれ第毅資家 ここで識の関係式を得るため,恥のμ∫

α=研(Ctt, Cti÷1)      El9]  は正規分布とし,さらに, Aと君+1 の期待値の の 期の消費額,好1期の消費額を示している。  関係を明確化するため,君+・ のρ・ねげを規準化 いま,彼は現在の手持資金e君で,次期∫+rの消  する。従って,君+1 の期待値をE蛋(P露・ので・分 費も行わなければならないとすれば・e 期の  散を晦2で示せば,変換[27コによって・∫㌦棚の 消費と∫+1期の消費のための留保分とに分割す  ρ.4ブは,ちの

裏二鳥懸貿騰鎌禦婁肇 η一恥一馳) [27]

株式全体のκ己部分購入することを決定した。株  平均が1,分散が0の正規分布になる。[27]とさ

(10)

36       茨城大学政経学会雑誌  第37号

髪を12:18議認鞭畿潟縢裁[24コ Σx・P・−1÷η[ΣX・Et(P・・…i)

瓦[∂瓢]一÷・∂囎)[28]   一肋警)]      ここで,Σκ =1であったし,最(Pl+のはPゐβ[∂誰、、・P・+・1]−E ({鶏・)毅豊) の期雛と・醐雛の和であった.そ繊

喫∂響)[29コ 脂}η[E(亀)+Σ禍團

君「÷η陥)      一恥警)][35コ

+嘱∂Q)/灘繊)][3・]藩態謙雪欝欝塞灘籍鰹警ρ

ここで[30]の右辺の6μの乗数は,期待値に対  従って・この加重和としての均衡の将来価格の期 する分散の選択の程度を示しており,それは以下  待値とP㍍の期待値が等しくなるためには・

のように変形される。いま,等しい期待効用を維    Σ緬1(ε・lo∂=0     [12]

持するように,届(君+1∂とσμを変化させたと  が成立することが判明した。

すれば,       ただ注意しなければならない点は,[12コが成

E[∂Ui∂c、+、t x ]鵡(恥)   藻ごを灘義搾こご鷹鴨畿

+E[∂Ut∂c,+、i 「・Xt]晦一・[31]最灘1⊇,論撫畿灘

となる。[31コに[28コと[32]を代入し整理す  σρ〜はPム、の分散σ.*2とε、の分散σ・ε〜の和に れば[33]が得られる。      等しいから,砺乞は

E[∂u,∂o』+、i°「i]一圭∂霧) [32]  ・炉γ砺粗+㎡

∂響1警)/∂灘)一囎ヂ)[33]識認堅二1叢豊箏誓糠!宣二

従って,我々は[34]を得ることができる。   意味で公正な価格を設定していないことになる。

^−1輩η[瓦(P +li)一の響][34]:を窪馬灘諮ζ蟹禦量麓窪

6μをリスクの程度を示すと考えれば,通常,知  分散に対するε蛋の効果を排除した条件が・E−M られている通り[34コの右辺の第1項は乃+1の期  仮設の強い条件であことも明白と思われる。

待値であり,第2項はリスク負担をするに相当す

ると第 投資家が判断したリスク割引額である。    結論にかえて

第1項と第2項の和は・確実性等価額と一般に言   我々は,これまでE−M仮設が成り立つ諸条件 われており,確実駐等価額を確実な利子率で割引  を考察してきた。とりわけ,E−M仮設の弱い条 いた額がP¢であることになる。        件と強い条件を明らかにし,さらに,これら条件

さて,均衡の株価はどうなるであろうか・各投  が満されるとすれば,市場に関し,また市場を構 資家の株式保有率はκ痘=1,2…,2V)であった。  成する投資家に関しどのような前提が存在しなけ そこで,[34]の両辺に筋を乗して,その全の和  ればならないかを明らかにしてきた。以上の議論 を求める。       を踏まえて,以下のことが言えよう。

(11)

斎藤:効率的市場の諸特性       37 E−M仮設が成立つためには,少なくとも市場  る。つまり,株式分割などの情報は,投資家にと に多数の参加者が存在する必要があった。さらに  り何ら有利な情報ではないのである。投資家にと注2の

E−M仮設が成立することは,最適な資本配分を  り有利な情報は,先に述ぺたように,企業の将来 達成することを意味していた。この意味で市場は  収益についての情報である。しかし,株式分割は 多数の参加者を確保しうる市場条件を選択すべき  収益の分配の仕方についての情報であり,何ら企

である。具体的には,高い取引費用・高い税率,  業の将来収益の予測には貢献レない。       1さらに高額な低定取引額などの設定は,参加者の   我々の本論文の議論は,まだいくつかの強い仮

制限に繋かる恐れがあり,可能な限り低額にすぺ  定を前提としていた。それらは,(i)企業の意思 きである。       決定は各経済的状態に対して一定であるとか,(ii)

E−M仮設が現実に妥当するか否かの検証は,  企業の将来収益についての確率的判断が全の投資 通常,弱い条件を用いて行われている。これらの  家について同質的であるとか,さらに,(iii)企業 検証は概ね満足のゆくものであるが,だからと  の将来収益の確率的判断と取引上の予測の確率的注蛤)

言って,証券市場で成立している個別企業の株価  判断か独立であるとかであった。

を用いて,各企業を評価しても良いとは言い難   (i)の仮定を緩和することはそれほど困難でな い。なぜなら,弱い条件が成立していることが同  い。ある経済的状態に依存して意思決定の方式が 時に取引上の情報を全て排除していることではな  変化するとしても,これまでの分析は若干の修正 いから。そこで,我々は,企業の評価に際しては  だより充分に適用しよう。(ii),(iii)の緩和に関 E−M仮設の弱い条件以外の検証の手段を持たね  し,まだ,十分に検討していないので明確なこと ばならない。証券の将来価格は,企業の将来収益  は言えないが,ただ,(ii)については,それを緩 に依存することを想起すれば,我々は,企業の収  和してもほぼ本論文の結論が妥当すると思われ 益動向と,それによる予測の将来収益によって,  る。

弱い条件による検証を補完する必要があろう。企  注1)Fama〔9(1976)〕P.136.

業の収益の動行は,取引上の情報に係らないの  注2)Fama〔5(1970)〕では3つに分類されてい で,この補完の方法は当面考えられる優i力な策で    るが,Fama〔9(1976)〕では4つに分類され あろう。      ている。これら分類の規準は・主に将来価格の確

企業の収益と言えば,そのデーターは有価証券    率分布に対する仮定の強弱に依っている・例えば 報告書から得られるのであるが,近年,投資家に    Fama〔5(1970)〕は・weak・semi st「on齢 有利となる情報を有価証券報告書は提供している    strongの3つに分類しているが,それぞれ確率

       分布について,ほとんど仮定なし,二変量正規・のか,さらに彼らに有利になるとすれば,どのよ

1撒封灘欝轍簿二t 謙慧轟欝薦醗

確に予測してく鱒データーであるの1こ対し・会  m。〔6(1966)〕は,A1,x、。d。・〔・(・96・)〕

計情報は一般に過去の収益のデーターである。さ       のフルタリング・ルールの有効性を否定した。

らに,将来収益の予測は経済的状態の予測でもあ      Alexander〔2(1964)〕はその結論と同様な結果

ることを考え合せれば,個別企業の過去の収益デ    畑えている。

一ターが経済的状態の予測に極めて重用な資料で  注4)本論文では,市場に関し以下の仮定をする。取 あるとは考えられない。また,それと同様のこと    引き費用や税は存在せず,取引される財は無限に が,収益の配分方式に関する情報についても言え    分割可能である。また,全の投資家は期待効用を

(12)

38       茨城大学政経学会雑誌  第37号

注5)讐鷺篇隷繍即ち株_×注2・)F爾一∫;嚢:二1価[卿)4翫

注6)幣鷲海{一}    一∫欝1ノ(恥)繍

注の

粕 離慧麟孟壼1遡)あ雛}ε轡それに関し一・で

   隔恥・)酬幅鋼榔轟から  瓦[∂誰、、・Pt…]一易[∂畿(島(^…)擁ノ(P,,Pt+ilφt_1)=か(姻ρ(嗣  η)}盈(晒[∂甑]+編罰  η(φ/1φ−1,P。)4φ 注8)内部留保が存在する鵬その内部留保の資金  従っ仏[∂響誓、、・Pt・・1]・・E(髪+1)・

欝繁李認嚇謹野の投資    ∂鵜)+等・∂黙

煽一外・一恥恥

      注23)Fama〔5(1970)〕, Fama&Blume〔6(1966)〕注9)企業の意思決定が経済的状態に依存すると考え       参照。   る方が現実的。この点は斉藤〔13(1974)〕を参      注24)Jensen Micha1〔11(1969)〕参照。  照。ただ,利益最大化の前提を緩和しても本論文

  の結論はそのまま妥当する。      参考文献注10)ε遇が経済的状態に依存する可能性はある。本論

文「結論にかえて」参照。       [1]Alexande「・Sidney S・1961・ P「ice Movements

               in Speculative Markets:Trends or Random注11)第4節参照。

       Walks. 1π伽8ま7∫σ」ルfσ α9θ耀π82注12)Fama〔4(1965)〕P・P・36.

@      (May)

注13) Fama〔4(1965)〕 pp.38.      [2]Alexander, Sidney S 1964. Price Movements

注14)Fam・〔4(1965)〕隙38−39・      i。 Sp。,u1。ti。。 M。,k。t。;T,end。。, R。。d。m 注15)我々の議論に則して洗練された投資家を定義す     Walks. No.2,・In Cootner(ed)

れば・彼は常に島(剣o∂=0と考え行動する投  [3]Cootner, Raul, ed.196生丁加R例40〃z C加一 資家である。      矯6f〃o/S o盈M〃加オP7 θ&Cambridge長 注16) このε乞の期待値は市場に参加する時点でのも     MIT.

の。oI, ojに注意。       [4]Fama, Eugene F.1965。 The Behaviar of 注17)ここでは,洗練された投資家の存在は排除して    Stock Market Price& ノbκ7 αZ oノβ〃εf θs3

いない。洗練された投資家はこの分布の中心にい     38(January)

る。洗練された投資家の行動に係る仮設として  [5]Fama, Eugene E 1970・ Efficient caPita1 E−M仮設,もしくはrandom walkの仮設を考     Markets:AReview of Theory and Empiri一 えよう立場が存在する。Smidt〔15(1968)〕参照。    cal Work 10〃アπα10/F π4駕θ25(May)

注18)Fama〔9(1976)〕P.133         [6]Fama・Eugene R・and Blume・Marshal1・1969・

醐P倫一∫1二鱗丁魁一  ;鷺謝懸驚鶴野

…4ε〃      〔7] Fama, Eugene F., and Miller, Merton.1972.

(13)

1   斎藤:効率的市場の諸特性       39

丁加丁加07y o/Ffπσ σθ. New York:Holt,  [12]Mandelbrot, Benoit.1966. Forecasts of Fu一 Rinehart and Winston.      ture Prices, Unbiased Markets, and Martin一

[8]Eama, Eugene F., and Roll, Richard・1968.     gale Mode1・ ノ伽7π4J oノ.βμs伽8ss 39(Ja一  Some Properties of Symmetric Stable D量st−     nuary)

ributions. ノ伽ア紹 o〃乃θ・4〃2θ 碑醜σ一  [13]斉藤進,1974,「活動選好と企業行動」,茨城

≠ゴs≠fσα ・4sso6fα∫foπ66(June)       大学政経学会雑誌・第33号。

[9] Fama, Eugene F・1976. Foκπ4α∫ゴo 80/Fゴー  [14] Samuelson. Paul A.1965。 Properly Autici一 πσ oθ・Basic Books Inc・, New York・      pated Prices Fluctuate Randomly.,,1 4〃sf一

[10] Hamada・Robert S・1969・ Portfolio Analysis・       °σZ乃4σ〃49θ〃28群R8 θ 6(Spring)

Market Equilibrium and Corporation Fina−  [15]Smidt, Seymour.1968. A New Look at the

uce・ m∂〃7πσJ o/F∫ α θ24(May)        Random Walk Hypothesis. ノoκノ〃αZ o/Fゴー

[11]Jensen, Michal l Fama, Eugene F;Fisher,     πα 毎Zα〃4 Qκ4〃渉伽ガびθ!1紹砂s∫ε3(Sep一 Lawrence;and Ro11, Richard.1969. The     tember)

Adjustment of Stock Prices to New Infor−  [16]Warking. H.1954. A Theory of Anticipa一 mation. ,1π渉θプπα露oπα1 Eσoπωπゴo尺θ〃ゴθ       tory Prices. ∠4溺θ7ゴ σπEωπo翅ゴ Rω∫8

10(February)       48(May)

参照

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