佛坂 博正1)、吉田 日出輝1)、岩村 匡2)、 高瀬 千鶴子2)、松本政典1)
Non-linearCT Window
-basicstudyandclinicalapplication-
Hiromasa Bussaka1)、 Hideteru Yoshida1)
Tadashi Iwamura2)、Chizuko Takase2)、M asanori Matsumoto1)
Abstract:Theimagesofcomputedtomography(CT)havebeendisplayedinthelinearwindow,
whichhavegraylevelinproportiontotheCTvaluebetweentheupperandlowerleveLNarrow linearwindowisneededforthegoodvisualization,butcannotdisplaytheobjectsovertheupper levelandunderthelowerleveLTherefore,radiologistshavetoobservemanyimagesindifferent display,andhavetoprintmanyfilms・Toresolvetheseproblems,non-linearwindowdisplaywas applied
Non-linearwindowdisplayhavegraylevelaccordingtothepatternofnon-1inearcurvewithin thewidewindowwidthObjectsofveryhighandlowCTvaluecanbedisplayedinthegoodgray levelinoneimage・Itcanhelpradiologiststoobservelessimagesandprintfewerfilmsthanlinear windowButnon-1inearwindowdisplayhaveseamartifactbetweentwoobjectsofslightdifferent CTvalue・Somemodificationwasnecessarytoreduceseamartifact,butwasnotperfect・Forthe goodvisualizationofnon-linearwindow,furtherstudywasnecessary.
K2yWOrdS:Non-linearwindow,Computedtomography,
I.はじめに またはdoublewindowdisplay4)があり、ひと
つの画面にふたつの異なるWindow条件の画像 を同時に表示することができるが、その応用は限 局される。
そこで、今回は頭部、、胸部、腹部CTに応用で きるnon-linearwindowについて基礎的検討を行 い、臨床的応用を試みて改良を加え報告する。
CT検査においては、spiralCTやmulti- detectorCTの普及によって1日あたりの検査件 数は増加し、1検査あたりの撮影枚数も増えた。
胸部CTでは肺野条件と縦隔条件で観察するので、
読影枚数はさらに増加する。同時に、焼付けるフイ ルム枚数の増加も著しい’)。そこで、これらの 問題点を解決する方法のひとつとして、CT画 像表示におけるnon-linearwindow2)の応用が 考えられる。
non-linearwindowは、CT値とCT画像をプ リントしたときの写真濃度を単一の直線関係にす るのではなく、様々に設定することができる。そ のひとつの方法として、dual-windowdisplay3)
Ⅱ.対象および方法
1)基礎的検討:
図1a.に示すように、CT値が-800,-130, 0,+90、+450,+1300(それぞれの物質は、食 パン、オリーブオイル、水、希釈したガストログ ラフインのふたつの濃度および家畜の肋骨を含む)
のファントムを5mmスライス厚でスキャンして 検討した。non-linearwindowは、CT値のヒス トグラムを検討して設計した。使用したCT装置 1)熊本大学医療技術短期大学部診療放射線技術学科
2)竜山内科リハビリステーション病院放射線科
-47-
は日立CT-W2000RADIXで、撮影条件は120k V、250mA、2secスキャンである。
non-linearwindowの設定方法は、以下のよう にした。まず、横軸に、画像内に必要とするCT 値の範囲を256レベルに分割し、複数の異なるグ レイスケールが必要な範囲を2~3に分割した。
次に、縦軸には、画像の黒化度を黒から白の256 レベルに設定して、異なるCT値をもつ複数の物 質がひとつの画面で表示されるnon-linearwin- dowを作成した。そして、どのような曲線が適
しているかについて検討した。
2)臨床的検討:
頭部、胸部、腹部のCT画像を、linearwindow とnon-linearwindowで表示し比較検討した。
臨床例のnon-linearwindowは、基礎的検討で 得られた方法をまず利用したが、読影の障害にな るアーチファクトを減少させるために若干の変更
を加えた。
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図1c、ファントムの画像のdouble-wmdow表示
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図1b・ファントムの画像のCT値ヒストグラム
-48-
non-linearwindowでは3種類のグレイスケー ルで表示したので、肺野条件、縦隔条件および 骨条件の3つの異なる条件で観察することができ た。骨皮質と骨髄の間にアーチファクト(sea、
Ⅲ結果
1)基礎的検討:
CT値のヒストグラム(図1b)を参考に、dou- blewindow表示(図1c)とnon-linearwindow 表示(図1.)を示した。doublewindowはウィ
ンド幅(WW)とウインドレベル(WL)を300/+
20(縦隔条件)、1000/-800(肺野条件)に設定 した。non-linearwindowは、横軸の幅を2800、
中心値を+200に設定し、傾きを3分割して表示 した(図1e)。3分割は、縦隔条件と肺野条件の 他に、骨条件も同時に表示されるようにするため である。
doublewindowでは、肺野条件と縦隔条件で 観察することができた。
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図2b,頭部CTのnon-linearwndow
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図2e、頭部CTのnon-linearwndow(変更後)
-49-
artifact)がみられたが、ひとつの画像に異なる 条件を表示できるので、この方法を臨床例に応用
した。
2)臨床的検討:
頭部CT:頭部CTでは、脳実質と頭蓋骨の病変 を観察することが必要になるので、ヒストグラム (図2a)を検討し、それらが同時に表示される ような、on-linearwindowを設定した(図2b)。
脳実質と頭蓋骨は別々に表示した画像と同じ情報 を得ることができたが、頭蓋骨内板に接して seamartifactが観察された(図2c)。
次に、seamartifactが生じないようにnon- linearwindowを改良した(図2.)。改良した non-linearwindowでは、seamartifactは消失
したが、脳実質はやや黒く表示され、骨の描出能 は低下した(図2e)。この表示方法は、頭部外
傷などの臨床例に実用できる範囲だが、完全な表 示法とは言えない。
胸部CT:胸部CTでは、肺野と縦隔が同時に表 示されるような条件を設定するために、ヒストグ ラム(図3a)を基にnon-linearwindowを設
鱗 図l3c・胸部CTのnon-linearwindow ',ill1,1
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図3..胸部CTのnon-linearwindow(変更後)
図3a,胸部CTのヒストグラム
白255
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-130+17OCT値 胸部CTのnon-linearwndow
0 -1300
図3b, 図3e、胸部CTのnon-llnearwindow(変更後)
-50-
seamartifactは、頭部CTでは頭蓋内板に接 して白黒の線状構造として観察される。白い線状 構造はくも膜下出血との鑑別診断が困難となり、
黒い線状構造は気脳症の診断が困難となる。胸部 CTでは胸膜に接して白い線状構造として見られ、
定した(図3b)。胸膜に接してseamartifact が発生したので(図3c)、このアーチファクト を生じないようにいくつかの条件をあてはめたが、
肺野を白黒逆転させて表示する条件が最も適して いた(図3.,e)。しかし、肺血管のなかにリ ング状アーチファクトが観察された。変更前より 観察しやすくなったが、肺野の状態は白黒逆転す るので読影に馴れるまでに時間を要し、肺血管の なかに発生したリング状アーチファクトは塞栓症 などの診断が困難になると思われる。肺野条件、
縦隔条件および骨条件の3つの異なる条件を表 示する3分割のnon-linearwindowは、脊椎や 肋骨の表示にアーチファクトが多く、臨床応用は 困難であった。
腹部CT:腹部CTでは、腹部臓器と骨が同時に 描出されるような条件を設定したが、読影に耐え 得る画像は得られなかった。その他、基礎的検 討で使用したnon-linearwindowはseamarti- factが強く、臨床には応用困難であった。しか し、臓器や腸管とfreeairが同時に観察できる ように、ヒストグラム(図4a)を基にnon- linearwindow条件を設定した(図4b)。その 画像では腹部脂肪の間に腸管のガスがよく識別さ れ、腸管の穿孔によるfreeairの検出に優れて いると考えた。しかし、肝臓などの実質臓器はコ ントラストが低下して、腫瘍性病変の描出には適 さないと思われる。
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Ⅳ.考察
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薄いスライス厚で多数のCT画像が撮影される ようになると、読影枚数とフィルム枚数は増加す る。その負担を軽減させる方法として、non- linearwindowの利用が考えられる。
non-linearwmdowはGomoriら2)により報告 されていたが、その後はdual-windowdisplay やdoublewindowdisplayとしての報告3M)が 散見される程度である。その理由のひとつに seamartifactが挙げられる。
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図4c,腹部CTのnon-1inearwindow(変更後)
-51-
少量の胸水貯留や胸膜肥厚が分かりにくい。
このseamartifactが発生する理由は、2つ の異なる条件の境界にあるCT値の構造が白また は黒のどちらかで画像表示されることによる。
CT値が明らかに異なる構造は、non-linear windowを目的部に合わせて条件設定すればよい が、CT値が連続して分布しているときは条件設 定が難しく、境界のCT値が白または黒に画像表 示されてseamartifactとなる。
seamartifactの発生を防ぐためには、non- linearwindowを連続的に設定する必要がある。
図2.のように設定すればseamartifactは発 生しないが、骨の濃度分解能は幅狭〈詳細は不明 瞭である。図3.のようにWindowの傾斜を負 にすると、肺野構造の画像表示が白黒反転する。
図4bのようなnon-linearwindowは消化管のガ スが脂肪組織のなかに観察されるが、画像が全体 的に白く表示されコントラストは低下する。non‐
linearwindowを、Gomoriらのように曲線状に 設定することも可能であるが、本質的な画像表示 には影響があまりないと判断し、今回は検討しな かった。
seamartifactを防ぐもうひとつの方法は、薄 いスライス厚CTの利用である。スライス厚を薄 くしてpartialvolumeeffectがなくなれば、各 臓器や組織のCT値はヒストグラムで明らかな差 となって表示されるので、non-linearwindowの 設定が容易となり、アーチファクトは発生しなく なると予測される。今回は5mmスライス厚で撮 像したが、さらに薄いスライス厚で撮像すると non-linearwindowの画質は向上するであろう。
spiralCTやmulti-detectorCTでは薄いスラ イス厚で撮影することが増えるので、この問題点 は自然に解消されると考える。
non-linearwindowはまだ確立された方法では なく、CRTモニターで観察する程度の利用が考 えられており、フイルムへの焼付けには適してい ないとされている2入3)。また、赤石らは6)小 結石の輝度が低下するので注意が必要であると報 告している。non-linearwindowにはまだいくつ
力圏の問題点が残されているが、今後のCT検査に は必要な表示方法であり、部位別表示法の問題点 についてさらに改良を加えていく予定である。
V,結論
non-linearwindowdisplayの基礎的検討と臨 床応用について初期の報告をした。CT値のヒス トグラムを基にしてnon-linearwindowを設定 すると、複数条件の画像表示が可能であった。し かし、すべての部位に問題なく利用できるnon‐
linearwindowはなく、目的部位に応じた改良が 必要であった。
Ⅵ.参考文献
1)山下康行、中山善晴、門田正責、高橋睦正:
マルチスライスCTの臨床的有用'性と問題点、
臨床放射線45:477-486,2000
2)GomoriJMandSteinerl:Non-linearCT windows・ComputerizedRadiolll:21-27,1987 3)TelloR:Dual-windowdisplayforspiral
CTofthelungAJR162:1249,1994 4)WhiteTjDoublewindowforCTdiaplay・
AJR166:463,1996
5)赤石健、中村和義:非造影腹部CTのノン リニアウィンドウ表示、
日本医放会誌60:S350,2000
-52-