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陸棲ラン藻の環境適応機構

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Academic year: 2021

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陸棲ラン藻の環境適応機構

著者 吉田 尚之

著者別名 Yoshida, Takayuki

雑誌名 博士学位論文要旨 論文内容の要旨および論文審査

結果の要旨/金沢大学大学院自然科学研究科

平成21年6月

ページ 1‑8

発行年 2009‑06‑01

URL http://hdl.handle.net/2297/26900

(2)

氏名 学位の種類 学位記番号 学位授与の日付 学位授与の要件 学位授与の題目 論文審査委員(主査)

論文審査委員(副査)

吉田尚之 博士(理学)

博甲第1045号 平成20年3月31日

課程博士(学位規則第4条第1項)

陸棲ラン藻の環境適応機構

坂本敏夫(自然科学研究科・准教授)

櫻井勝(自然科学研究科・教授),東浩(自然科学研究科・准教授),

山口正晃(自然科学研究科・准教授),金森正明(自然科学研究科・講師)

Abstract

ThecyanobacteriumNDstoccommuneisadaptedtotheterrestrial enviromnentandhighlytoleranttoultravioletradiation(UV)and

desiccation・Itisshownthat凡communeaccumulatesscytonemineand

mycospoline-likeaminoacids(MAAs)thatabsorbUV-AandUV-B,

respectivelywhenNbcommuneissubjectedtoUV、Inthisstudy,

localizationofUV-absorbingpigamentsinNbcomImme,changesof trehalosecontentandleveIsoftranscriptofthegenesfOrtrehalose

methabolizingenzymesrespondingtodesiccationandbiochemical propertiesoftheseenzymeswereinvestigated・Scytoneminelocalizedin

theextracellularmatrixandMAAslocalizedincellsandextracellular

matrix・lMcommunecoloniescontainedscytonemineanditslevelwas

equivalenttochlorophyllcontent・IntheEPS-depletedcells,MAAwas

accumulatedanditslevelwasequivalenttochloropyllcontent.'Ihese

resultssuggestthataccumulationofUV-absorbingpigmentsis

necessaryfDradaptationtoterrestrialenvironment.」McommIme

accumulatedtrehaIoseasacompatiblesolute・PhotosyntheticactiviIyof

lMcommmedecreasedwhenNcommunewasdesiccated・Levelsof

transcriptsofgenesoftrehalosesynthesis(n.eYanmreZ)andtrehalose hydrolysis(IreH)inlMpImcrifiomIelAMM-ISdecreasedsimultaneously

-1-

(3)

after6hofdehydration・Trehalaseactivitydecreasedinthepresenceof

50mMNaClinvItro,andwasstronglyinhibitedbyTIisbuffer・These

resultssuggestthattrehaloselevelisregulatedmainlybychangeof

trehalaseactivity.

要旨

陸棲ラン藻NMDCCOmmme(イシクラゲ)は地球上の陸地に広く分布し、数 珠状に連なった細胞が細胞外多糖類(EPS)に包まれたコロニーを形成している。

lMcomm肌eは陸上に生息しているため、紫外線に対する防御機構や強い乾燥 耐性を持っている。凡commmeは紫外線照射によって、紫外線吸収色素であ

るスキトネミンやマイコスポリン様アミノ酸(MAAs)を蓄積することが知られて

いろ。本研究では、lMcommmeが陸上環境に適応した機構を解明するため

に、lVcommⅢeコロニー内での紫外線吸収色素の局在と乾燥ストレスに応答

したトレハロースの蓄積の機構について調べた。

まず、lMcommmeコロニーに含まれる紫外線吸収色素の量とEPS除去細胞

に含まれる紫外線吸収色素の量を比較した。スキトネミンはEPSと細胞内に、

MAAsは細胞内に局在していた(Tablel)。細胞内に含まれているMAAsはク ロロフィルとほぼ同程度で、コロニーに含まれるスキトネミンの量はクロロフィ

ルと同程度であった。光合成色素と同程度まで高濃度に含まれることから、紫外

線吸収色素の蓄積が陸上への適応に必要であることが考えられる。

凡commmeの乾燥と水和過程において、含水量に対する光合成活性とトレ

ハロース含有量の変化を調べた。乾燥の過程では、コロニーに含まれている水が

減少するにしたがって光合成活`性が減少し、同時に、トレハロース含有量が増加 した(Fig.1)。水和の過程では、コロニーに含まれている水が増加するにつれて 光合成活性が上昇しトレハロース含有量が減少した。

さらに、lMcommmIeに近縁で実験室で培養可能なNpmcIiiimnelAM

M-15を用いて、乾燥過程でのトレハロース含有量の変化を調べた。乾燥により

-2-

(4)

トレハロース量が増加し、風乾した試料ではSJumol/召乾重量以上のトレハロー

スが蓄積していた。トレハロース代謝系酵素の遺伝子はゲノム上に近接してい

る。トレハロース合成酵素遺伝子(【reYZ),分解酵素遺伝子(【reH)の転写産物量は 乾燥処理6~12時間で減少した。凡plmctズfiDrmelAMM-I5粗抽出液中のト

レハロース合成活性は0.5U/gprotein、分解活性は50U/gproteinであっ た。トレハロース合成活性はS0mMNaClを加えても影響されなかったが、分

解活性は約20%まで活性が減少した(Fig.2)。Tris(hydroxymethyl)

aminomethane(略称:TIis)はトレハロース合成酵素の活性に影響を与えな かったが,分解活性を強く阻害した(Table2)。大腸菌で大量発現したトレハ ロース分解酵素の活性は、NaCIおよびTIisで阻害されることから、非ストレス 条件下でトレハロース分解酵素の活性が高く保たれており、乾燥または塩ストレ ス条件下でトレハロース分解酵素の活性が阻害をうけることによって合成と分解

のバランスが合成へと大きく傾くことにより、トレハロースの蓄積を行う機構が あることが考えられる。今後は、トレハロース分解酵素の阻害剤についての研究 ス分解酵素の阻害剤についての研究 を行っていく必要がある。

-3-

(5)

Tablel陸棲ラン藻NDstoccommuneにおける色素およびウロン酸の

含有量

NLconmmnecells凡commImecells withEPS withoutEPS

Chloropllyll

(mg/gdryweight)

0.9±0.s 7.6±3.0

Carotenoids

(Ing/gdryweight) 06±0.2 2.6±0.s

MAAs

(、g/gdryweight)

4.8±8.5 7.9±10

Scytonelnine

(Ing/gdryweight) 1.0±1.2 1.0±0.7

Uronicacid

(Ing/gdryweight)

310±190 0.04±0.01

EPSはコロニーを機械的に破砕した後紙フィルターでろ過することにより除去し

た。クロロフィルとカロテノイドはメタノールで抽出し、分光学的に定量した。

MAAsとスキトネミンはメタノール抽出物をHPLCを用いて定量した。硫酸加

水分解物中に含まれるウロン酸をカルバゾール法により比色定量した。

-4-

(6)

Table2トレハロース代謝系酵素に対する緩衝液の影響

MブTreHactivity (×103U/gprotein)

Trehalaseactivity

(U/gprotein)

Mts+Mthactivity

(mU/gprotein)

25mMHEPES-NaOH

(pH7.5) 29.6 24.9 477

25mMTES-NaOH

(pH7.5) 54.0 25.8 446

25mMTris-HCI

(pH7.5) 8.8

25mMTris-HSO

24

(pH7.5)) Notmeasured Notmeasured

25mMHEPES-NaOH

+5mMTIis-HCl

(pH7.5)

Notmeasured

ラン藻lMplmclifiDmelAMM-15株の無細胞抽出液および大腸菌で大量発現 し精製したトレハロース分解酵素MブTreHを用いて酵素反応溶液に含まれてい る緩衝液の影響を調べた。デンプンを基質とし2段階の反応の結果生じたトレハ

ロースを定量しトレハロース合成酵素(Mts+Mth)の活性とした。また、トレ

ハロースを基質とし加水分解により生じたグルコースを定量してトレハロース分 解活性とした。

-5-

(7)

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Trehaloselevel>

(」umol/gdryweight)

ロmDQD一m・フ

、】⑱①国媚・]三已皀二三①Sま咋葛煎濤Ⅳ〒て己1〆恥動剛行堂呼び吟呉剛e翻蠣

Relativeactivity(%)

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Trehaloselevel用

(umol/9.Ⅳweight)

-BDGD一m09

Relativeactivity(%)

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①】、⑮心、①『⑭①ごく四(の円C①曰(の口(

ごく四(の円Co己号の旨( 王め

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させて得た光合成活性を100%とした。y=-Oo1S573x2+10.644x+19.211, 12=0.599、p<OoOOO1oD,乾燥させた時のlMcommuneの光合成活性の変化。

完全に水和させたコロニーをデシケーター内で乾燥させて、光合成活』性を測定し

た。測定後、コロニーを完全に水和させて得た光合成活性を100%とした。y=

た。測定後、コロニーを完全に水和させて得た光合15

0.4272x2+IOo73x+32.384,12=0.613,p<0.0001。

0.9 60 0.8

50 0.7

〈目自①』。■a切目曰)閉渭彦已Q呵昌]]国十巴】国

0.6 4玉呵りワ】11 、)nUnUnU 崗渭彦邑Q⑤①⑰甸曰甸呂①当日 (■『①]①出皀切{、〉

0.s 0.4 0.3

02 0.1

020406080I00

NaCl(、M)

トレハロース代謝系酵素の活性に対するNaC1の影響

Fig.2

lVOstocpⅢctirilmleM-15株の無細胞抽出液を用いて、デンプンを基質として

2段階の酵素反応によりトレハロースを生じる反応を指標としてトレハロース合 成酵素活性(Mts+Mth,○)を測定した。また、トレハロースが加水分解ざれグ ルコースを生じる反応を指標にしてトレハロース分解酵素活性(trehalase,●)

を測定した。酵素反応溶液中にNaC1を加えて活`性を測定し、NaClの影響を調

べた。

-7-

(9)

学位論文審査結果の要旨

本脇文は、陸棲ラン藻叱stocc…une(イシクラゲ)が陸上潔境に適応した機槻を解明することを目的とし、

ストレス防御物夜として働くと考えられる紫外線吸収色素の局在とI乾燥ストレスに応答して適合溶質である トレハロースが瀞\1Mする概柵について、生理生化学的手法により#111析した研究成果を記戦している。

野外に生育する本生物のコロニーには光合成色紫に匹敵する戯の紫外線吸収色素が含まれており、高濃度

の紫外線吸収色素を鱗鏑することが陸上への適応に必要であることが灘察されたら乾燥ストレス処理によっ て、コロニーに含まれている水が減少するに従って光合成活性が減少し〈同時に、トレハロース含有fitが増 加した。この結果は、コロニーに含まれる水の量に応響して光合成活性とトレハロース含有溌を変化させる 適応現象であると考察された。卜以ハロース合成酵素活性は酵素反応液中に含まれている塩濃度に影鞭され ないが、トレハロース分解酵素活性は反応液中に含まれている塩により強く阻害される現象がinvitroの 実験により見いだされた。この結果は、非ストレス条件下ではトレハロース分解酵素の活性が商く保たれて

おり、乾燥または塩ストレス条件下ではトレハロース分解酵素活性が阻害をうけることによって合成と分解 のバランスが合成へと大きく傾き、その結果としてトレハロースを蓄積するという機榊を強く示唆する。こ の発見は~本生物が示す極限的な乾燥耐性の分子機槻についての重要な知見である。

以上の研究成果は当該学問分野における新知見を含むものであり,審査委員会として博士(理学)に値す

ろと判断した。

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