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杉本豊久先生とさまざまな場で 池 上 惠 子

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Academic year: 2021

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杉本豊久先生とさまざまな場で

池 上 惠 子

いつまでもお若いと思う杉本豊久先生が定年をお迎えとは、歳月の速さ を思いつつ、さまざまな場面を思い出しています。

1983年度、JACETのあらゆる集まりに私はほぼすべて参加して、小さ な発表もいたしました。それは、所属の学会を整理するべくJACETを退 会するためにとった行動でした。そこに、お名前の記憶はなかったのです が、こまめによく働く爽やかな明るい若い方がいらっしゃいました。1984 年度が始まってしばらく経ったころ、学内の英語担当者懇親会があり、「先 生とはすでにお目にかかっています」との挨拶をいただきました。杉本先 生だったのです。

学部は異なっても、入試問題作成ではしばしばご一緒しました。先生が 出題委員長だったときは、実に誠実に役目を果たしていらっしゃいまし た。全学部共同作業の採点は毎年のことでした。短期大学部で私が指導し た学生が文芸学部に編入し、英語学あるいは英語教育を学ぶために、はじ めの頃は中村 敬先生や吉田正治先生のゼミに入っておりましたが、後半 はしばしば杉本ゼミに入れていただきお世話になりました。たいそう楽し いゼミであったと聞いています。社会のさまざまな分野へ巣立った共通の 教え子は、かなりの数にのぼります。

あるとき、研修でグラスゴー大学にいらっしゃると知り、Jeremy Smith

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教授を紹介しました。彼は、若いながら業績豊富で大活躍の歴史英語学の 第一人者で、社会言語学的視点をもっています。言語の多様性、方言研究 など専門分野での杉本先生との共通点に加えて、どことなく似ているの で、きっと気が合うと思ったのです。ある日、「Toyo とはパブでサッカー の話などでもりあがっているよ」とJeremy からメールが届きました。専 門の話題はもちろんのこと、きっとよい時をいっしょにお過ごしだったの でしょう。

杉本先生が関心をおもちの諸点は、英語が均一な言語に留まらず、世界 中で分化する現実について、混成言語やクレオール化を手がかりに実証的 に研究することを基本として、何らかの理論化が期待できるはずです。言 語研究にはさまざまな分野や研究方法がありますが、先生のテーマはたい へん大きな、しかも多様な問題を抱える重要な分野です。ただし、たとえ ばクレオール(化)の定義はときに難しく、その応用にも異なる立場があ ります。私の専門分野の中英語期の言語変化を、クレオール化とする見解 を含むご論文を拝見した記憶があります。確かに、結果から見れば中英語 期を経て初期近代英語になるあたりの英語はある種の混成言語に見えま す。たぶん口頭で、多少の議論をしたと思いますが、クレオール化と断じ ることには異論がありますし、歴史英語学の立場では、そのようには考え ません。もう少し、きちんと議論する場があればよかったのかもしれませ ん。もちろん、先生のご研究の根幹と多くの成果は、大いに評価される堅 実なものです。

研究はどれをとっても一人にできることには限りがあり、時代、世代、

地域を越えて大勢の研究者の小さな成果が積み重なって全体像に迫るもの ではないでしょうか。ときに有力な誰かがそれぞれの時代での定説となる

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ような大著を出版して、次世代に受け継がれ、いずれ批判され、再考され ます。何ができたかできなかったかではなく、問題意識をもって取り組ん だことが、一人の研究者には大切なのだと思います。退職後も研究が続く 場合があるのは文系分野の定めかもしれませんが、定年というのは一つの 大きな区切りです。教育や学校行政の現場から解放され、研究生活と人生 を振りかえるときでもあります。

65歳というのはいかにもお若い年齢です。新年度も科目を担当なさり、

成城大学のためにご尽力いただけるとのこと、嬉しく存じます。そして、

さまざまな特技や豊かな趣味をおもちの先生ですから、これからまた何か すばらしいことが始まるでしょう。はじめてお目にかかったころの活動力 を失わないまま、さらに良き日々をお過ごしください。

さまざまな場でのご厚誼に心より感謝して、ご退職を心よりお祝い申し 上げます。

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