アジア・アフリカ地域における資源開発の政治経済 学分析(中間報告)
著者 頼 俊輔
雑誌名 明治学院大学国際学部付属研究所研究所年報 =
Annual report of the Institute for International Studies
巻 18
ページ 45‑46
発行年 2015‑12‑01
その他のタイトル Political Economy of Development Based on Natural Resources in Africa and Asia
URL http://hdl.handle.net/10723/2585
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アジア・アフリカ地域における資源開発の政治経済学分析
賴 俊 輔
植物油拡大の政治経済学的分析:植物油が機会と戦争と人間の資源として急拡大した1世紀 アジア・アフリカの資源問題の政治経済学的分析プロジェクトにおいて、京都大学の平賀氏を 招き、植物油の政治経済学的分析についてお話を伺った。植物油は世界で急速に需要を伸ばして おり、特にアジア地域における消費の伸びがめざましい。中国では大豆の搾油量が 30 年前に比 して45倍、パーム油の輸入量は中国とインドでそれぞれ413倍と21倍となっている。中国やイ ンドを始めとする途上国・新興国では、所得の向上に伴って食用油の消費が伸びていると推測さ れる。日本でも、この 50 年間、一人あたり油脂消費量において、動物油をはるかに上回る食用 油の消費が確認できる。
植物油の消費拡大により、肥満が増加傾向にあり、先進国よりも途上国でそれが顕著に見られ ている。肥満は、ぜいたくの結果と思われがちであるが、貧困層が手にする加工食品やファスト フードには大量の植物油が使われており、貧困層に植物油消費の弊害が出ている。メキシコでは 成人の肥満率が32.8%で、国民の7割が太りすぎか肥満状態にあり、6人に1人が糖尿病で、年 間7万人が死亡しており、また、アフリカでの肥満も急増している。
食用油拡大の背景として、途上国における購買力の増加があるが、その他にも、食品供給側の 戦略も指摘出来る。『フード・トラップ』(マイケル・モス、2014 年)では、食品会社がいかに して消費者の嗜好をつかみ、消費を拡大させてきたかが書かれており、特徴的な手法として、油 脂・砂糖・塩を効果的に食品に混入させることで、それを実現している。
平賀氏の報告は、従来の植物油研究が上流部門(農家の原材料生産)に焦点が当てられてきた のに対し、素材としての植物油がいかにグローバルなコモディティとなり、植物油の流通部門を いかに変化させているか、いわば下流部門の分析となっており、植物油部門の全体像を理解する 上できわめて有効であった。今後は、植物油を分析する方法論を詰めていくことが主要な研究課 題となるし、また、個別の植物油(パーム油、大豆油、落花生油など)の上流から下流に至るバ リュー・チェーンをどのように分析するかも今後追求すべき課題として挙げておく。
途上国における水道事業民営化の検討:カンボジア・プノンペンの「奇跡」から
1980 年代以降、世界的に市場経済の活用が叫ばれる中で、公共的な管理の下にあった水道事 業が民営化される事例が増えてきている。非効率的な「官」や「公」ではなく、効率的な「民」
に運営を任せた方が、水道事業が効率的に運営できるとの考えが背景にある。これまで、先進国、
途上国の別を問わず、主要都市の水道事業が民営化の対象となっている。
日本の水道事業運営は自治体により運営されており、主要な指標である無収水率はわずか数パ ーセントと、世界でもトップクラスの水道運営実績を誇っているが、人口減に伴う水需要減の一
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方で設備の更新にかかる費用が増加することが予想されており、民間委託による業務の効率化が 叫ばれている。
他方、こうした水道民営化の潮流に抗する動きが出てきていることも見逃せない。広く知られ ているのは、ボリビアのコチャバンバ市の水道民営化の事例である。民営化後の水道料金の上昇 が貧困世帯への生活圧迫を招き、大規模な抗議デモが発生し、軍隊や警官隊との衝突の結果、死 者が出るに至った。その後、民営化計画は撤回されている。
また、最近では、民営化をした水道事業が再公営化される事例が増えてきている。2000 年に は再公営化事例は 3 件であったのが、2014 年には累計で 180 件に達している。Transnational
Institute によると、再公営化される事例に共通しているのは、企業による劣悪な経営、投資不足、
料金値上げ、企業への規制・監督の難しさ、財務の透明性の欠如、人員削減とサービス水準の低 下、などである。再公営化の事例は、これまで民営化中心に進められてきた水道事業運営を巡る 議論の潮目が変わりつつあることを示している。
本プロジェクトでは、様々な資源問題のなかでも、市民の家計、健康状態に大きな影響を与え うる水道に焦点を当てて分析を進める。2015 年 3 月には、カンボジアの首都プノンペンを訪問 し、プノンペン水道の経営について調査を行った。プノンペン水道は、民営化ではなく、公社化 することで事業運営を劇的に改善した、途上国では希有な事例として知られている。今後、民営 化・再公営化の議論を踏まえ、プノンペン水道の調査研究を継続して行うことにより、途上国の 水道事業のあり方について理解を深めることが出来ると考えられる。