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ASEAN 域 内 経 済 協 カ の 政 治 経 済 学

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学 位 論 文 題 名

博 士 ( 経 済 学 ) 清 水 一 史

ASEAN 域 内 経 済 協 カ の 政 治 経 済 学

学位論文内容の要旨

  本 論 は 、 未 だ 本 格 的 な 研 究 の 存 在し な ぃAS EANの 域 内 経済 協 力 (経 済 統 合) を 、 総 合 的に明ら かにす るもので ある。

  ASEANは 、 そも そ も 政治 的 要 因か ら 設 立 され 以 後 政治 協 力 体と し て 機能 し て いた が 、 1976年 の 第1回 首 脳 会 議 と 「ASEAN協 和 宣 言 」 か ら 、 地 域 経 済 協 力 ・ 経 済 統 合 あ る ぃ は 域 内 経 済 協 カ を 、 政 治 協 カ に 付け 加 え た 形で 開 始 した 。1976年 から の 域 内経 済 脇 カは、「 国連報 告」を基 にした 集団的輸 入代替 重化学工業化を基本戦略として行われた。

同 戦 略 は 、ASEAN各 国 の 直 接 投 資 規 制 的 な 外 資 政 策 の 上 に 、 大 規 模 重 化学 工 業 の生 産 配 置 、 その た めの大 規模消費 市場、及 び資金 調達の三 位一体 を集団的 に実現 し、重化 学工 業 化 段 階 に お け るASEANの 輸 入 代 替 工 業 化 を 達 成 し よ う と す る も の で あ り 、 同 時 にA IPを 核と し て 相互 依 存 性の あ る 域 内市 場 を 創出 し 、 加盟 各 国 の発 展・ 成長を 支援する も の で あ った 。 しかし ながら、 同戦略を 具体化 した諸政 策は、 ほとんど 成果を 生まず、 同時 に 、 相 互依 存 性を有 する域内 市場の創 設とい う目標も 達成で きなかっ たので あった。 その 原 因 は 、相 互 依存性 の欠如、 外資政策 等の発 展・成長 のため の政策の 不一致 にも求め られ た が 、 何よ り も、各 国間の経 済的利害 の対立 に基礎を 置く緊 張を解決 しえな かったた め、

す な わ ち、 域 内経済 協カの成 果を配分 するた めの、あ るいは 所得の再 配分・ 資本の再 配分 と い う 機 能 を 有 せ ず 、 各 国 の 利 害 が ぶ っ か り 合 う 構 造 に な っ て い た こ と に あ っ た 。   ASEAN域 内 経 済 協 カ は 、1987年 第3回 首 脳 会 議 と 「 マ ニ ラ 宣 言 」 を 契 機 と し て 、 そ の 域 内経 済 協力戦 略を集団 的輸入代 替重化 学工業化 戦略か ら集団的 外資依 存輸出指 向型 工 業 化 戦略 へ と大き く転換し た。この 戦略転 換は、集 団的輸 人代替重 化学工 業化戦略 の挫 折 と域内経 済協力 基盤の決 定的変 化により 求めら れたものであった。新た′よ域内協力基盤 は 、 電 子 ・ 電 気 機 器 を 中 心 と し た 新 たな 成 長 部 門の 台 頭 とい う1970年 代後 半 か ら始 ま る 世 界 経済 の 構造変 化、そし てそれに 対応し た多国籍 企業の 国際的分 業の急 速な展開 、ま た そ れ を更 に 急 速に カu速し た プ ラ ザ合 意以 降の円高 ・ドル 安を背景 とするNIE゛Sそして AS EANへ の 直 接 投 資 の 急 増 、 と い う 世 界 経済 の 歴 史的 変 化 要囚 を 背 景と し て 生成 し た が 、それは 、多国 籍企業による新たな域内分業とそれによる域内iい場の相互依存性の生成、

並 び に 、 イ ン ド ネ シ ア を 始 め と す るASEAN各 国 の 外 資 政 策 の 転 換 に よ る、 各 国 の発 展

・ 成 長 のた め の政策 の…致と いうもの であっ た。以上 の基盤 の変化の 上に策 定された 集団 的 外資依存 輸fn指i司型.I二業化戦略fよ、1980年代後半から各国毎に始ま,った外資依存か つ 輸 出 指 向 型 の 工 業 化 戦 略 を 、AS EANが 集団 的 に 支援 ・ 達 成す る と いう こ と を主 内 容

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にしていた。同戦略iよ、BBCスキームの実践に見られるように、一面では着実な進展を 見せている。集団的外資依存輸出指向型工業化戦略のもとでは、集団的輸人代替重化学工 業化戦略を挫折に導いた原因のいくっかは協力基盤の変化とともにクリア〜された。すな わち 、多国 籍企 業の域内分業による域内市場の相互依存性の生成、並びに、ASEAN各 国の外資政策の転換による、各国の発展・成長のための政策の一致によってである。しか しながら、集団的輸入代替重化学工業化戦略を挫折に導いた最人の原因は、今なお残って いる。すなわち、各国間の経済利害を巡る対立という問題が残っており、その解決がー層 迫ら れてい るに もかかわらず、今なお、ASEANは、所得の再分配・資本の再配分とい う機 能を持 って いないのである。ASEAN域内経済協カは、新戦略の採川により域内経 済協力戦略を世界経済の構造変化に適合的な戦略ヘ転換したにもかかわらず、このようナょ 重大な問題を孕んで、いるのである。

  このようなASEANの展開に対して、統合理論はどのような関係を有するであろうか。

◎従来の有カな統合理論(バラッサ)において指摘される統合における段階性は、否定さ れる。すなわち、統合においては、市場統合が達成された後に、共通政策が達成されるの ではなく、市場統合は、同時に共通政策(所得の再配分・資本の再配分のための)を必要 とする。◎統合は、たとえ上記の共通政策が市場統合と同時に達成されたとしても、セカ ンドベスト解としてのみ選択される。すなわち、統合は、他のベスト解が達成されなぃ場 合にのみ、追求される。◎統合は、実際にはきわめて強く歴史性・構造性に規定されてぃヽ る。それゆえに、統合理論は、歴史的構造的規定を強く受ける。@統合理論は、個々それ ぞれに独立して作られて潟り、全体としてはパッチワークとしてのみ存在する。そして 個々の統合理論は、統合の一部分の合理性を、他の条件から独立させた上で説明している にすぎない。それゆえに、EUの経験を基礎にした統合理論の有効性は著しく狭く、統合 を掴みきるには、理論と実証の両面からの分析―政治経済学的分析一が必要である。

  最 後 に 、ASEAN域 内 経 済 協 カ の 性 格 に 総 合 的評 価 を 与 え よ う 。ASEANは 、所 得 の再配分・資本の再配分に代わる部分を域外に求めており、また市場も域外に求めて船り、

そのため、AS EAN域内経済協力・経済統合は、域内での環境整備(域内経済協力・市 場統合)と対域外環境の整備の両方を同時に必要とするという、特殊な性格を有する。し た が っ て 、ASEAN域 内 経 済 協 カ の 条 件 は き わ めて 歴 史 的 を も の で あ り 、ASEAN域 内経済協カを、簡単に途上国の域内経済協力・経済統合のモデルとするわけにはいかなぃ。

ASEAN域内 経済 協カの今後の方向は、その歴史的条件から、きわめて不確実である。

し た が っ て 、 ま たAS EANは 、ASEANよ り も 経 済 的 に よ り 合 理 的 な 地 域 経 済協 力 体・経済統合体が組織されてくるならば大きく動揺し、その地域経済脇力体・経済統合体 に引き付けられる。アジアにおける冷戦の終結と1990年代前半のアジア太平洋経済の 構 造変 化 が 、AS EANの 動揺 に拍 車を かけ ている こと に注 目し なけ れば なら なぃ 。

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学位論文審査の要旨

主査    教授    佐々木隆生    副査    教授    宮本謙介 副査    教授    米山喜久治    副査    教授    吉田文和 副査    教授    所    哲也(北海道武蔵女子短期大学)

学 位 論 文 題 名

ASEAN 域 内 経 済 協 カ の 政 治 経 済 学

  清水一^史「 ASEAN域内経済協カの政治経済学」は、ASEAN(東南アジア諸国連合)の域内 経済協ブJの端縮から現花ま での展開過程を分析し、歴史的段階を碓定しつつ、各段階にお ける域内経済協力戦略の性格と結果を評価し、域内経済 協カをめぐる緊張関係とダイナミ ズムを明らかにした研究である。

  本 論文 は、 序論 を含 む7章 から なる が、 序論 では 、ASEAN研究が現代 世界経済の解明に とって有する意味をI明らか にし、ついで、これまでの研究成果が著しく政治学的研究に傾 斜し、また経済学『r、Jりf究が政治学的研究の水準に対応していないことを指摘するとともに、

経済学的には、ASEAN域内経済協力・経済統 合の経済的合理性の評f襾が 研究の中心に置か れるべきであり 、それを基礎に、発展途上国経済統合のモデルとしてのASF,ANの妥当性の 検討がなされる として、本論文の課題を提示している。そして、この課 題に応えるための 方法として、政 治学的研究と経済学的研究の総合と、世界経済の歴史的 構造変化の中に統 合を位遺づけることを提起している。

  第1章から始まる諸章は、1976年から始ま るASEAN集団的輸入代替重化 学工業化の考察に あてられる第!章から第3章 までと、1987年以後求められてきた集団的外資依存輸出指向工 業化 の考 察に あて られ る第4章及び第5章、 現段階でのASEAN域内経済協 カへの総括的評価 を試みる終章の3部から構成されていると考えられる。

  第1章は、ASEAN域l´、J経済協カが、19rt04I‑.代に始まる世界経済の構造変化に対応したNIEO

(新国際経済秋J夢)路線に関連して、国際 連合専門家チームがLAFTA( ラテンアメリカ自 由貿 易地 域) 刑経 済統 合をASEANに提言したことを受け、重化学工業の 輸人代替を集団的 に実現するIヨ的をもって形 成されてきたことを明らかにしている。第2章は、ASEAN集間的

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輸入代 替重化学 工業化 政策の展 開を追い 、中心 的政策で あるAIP(ASEAN共同工業プ口ジェ クト) 、AIC( 同工業 補完協定 )、PTA(特恵貿易制度)がぃずれも挫折に終わったことを 明らか にし、そ の上で 、EC(欧州 共同体 )をはじめとする経済統合の経験と統合理論を基 準に、 加膃園間 の経済 水準・政 策等の非 類似性 や域内相 互依存 関係の欠如などASEANが経 済統合を合理『r、Jとする基礎を有しなかったこと、またそれに加えて、そこから生じる国家 間対立を抑制するための資本再配分・所得再分配政策や統合機構を有していなかったこと、

さらに 統合が加 盟国の 園民国家 としての 確立・強化を目的としていたことを指摘して、域 内経済 協カの挫 折の原 因を明ら かにして いる。第3章fま、域内経済協カを政策面で評価し た前章 を受けて 、域内経済協カの成果を貿易マトリッIクス分析を通じて評価し、域内市場 の相互依存性が集団的輸入代替政策によってはほとんど変化しなかったことをIリヨらかにす るとと もに、他 方、1970イH℃から始まる世界経済の構造変化の巾で展開した多国籍企業に よる国 際分業の 一環を 担う域内 国際分業 が発展 してきた ことを 述べ、ASEAN域内経済協カ の基雛が変化したことを明らかにしている。

  第4章は、は界経済の構造変化に伴う多国籍企業による域内国際分業とASEAN)Jn盟各国の 外資 政策の変 化を受 けて、ASEANが域 内経済協 力戦略を1987年の「マニラ宣言」をもって 転換 し、アジ アNIESの外資依存輸出指向工業化政策の経験をふまえ、集団的外資依存輸出 指向 工業化戦 略を域 内経済協 カの基本 にすえ たことを明らかにしている。第5章は、集団 的外資依存輸Uけ旨向工業化が、1990年代前半までは、三菱自動車工業が提案してASF.ANに 受容されるに至ったBBCスキーム(ブランド別自動車部品補完流通言I.画)によってもっぱ ら担 われたこ とを指 摘し、スキームの中心をなす日系自動車企業のアジア・太平洋地域に おけ る企業内 国際分 業の発展過程を現地合弁企業のヒアリングを含むフィールド・リサー チに 基づいて 明らか にし、最後に、スキームの着実な実践とともに、それが集団的外資依 存輸 入代替工 業化の 性格を有 すること 、ASEANを越えるアジア・太平洋地域での多国籍企 業の 国際分業 の合理 性とスキームとの間に緊張関係が存在することを明らかにしている。

  終章は 、これ までの分 析を受け、まず集団的外資依存輸出指向工業化が、種々の試みに もかか わらず、 輸入代 替的性格 を有す るBBCス キーム以外に見るべき成果が無く、基本的 に達成 されてい ないこ とを指摘 し、第2章と の関連で 、国民統合を目的とする統合という 矛盾し た性格、 対外依 存の大きさと自立性の欠如、緊張関係を調整する手段や機構の欠如 がその 原因とな ってい ることを述べ、そうした困難が発展途上国経済統合一般に存在する ことを 指摘して いる。 そして、最後に、集団的外資依存輸出指向工業化の行き詰まりとと もに、19904J‑.代初頭にqニじたアジア冷戦構造の変化と経済的諸変化Jlf園を含めたアジア の新たな発展局i酊の展開やAPEC(アジア太平洋協力会議)‥がASFAN域内経済協カに再び転 換を要 請してい ること 、北びにそれらの変化が域内経済協カに正と負の二方向に作用して い る こ と を 明 ら か に し 、 緊 張 に み ち たASEAN域 内 経 済協 カ の 将来 を 指 摘 して い る 。

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  東 南 ア ジ ア 諸 国 は 、 政 冶 的 経 済 的 不 安 定 に 直 面 し 、ASEANを 形成 した 。 その 後、ASEANは 、 世 界 経 済 の 発 展 の 極 と な っ た ア ジ ア 太 平 洋 地 域 の 能 動 的 ア ク タ ー と な り 、 発 展 途 上 国 間 協 力 ・ 経 済 統 合 の 成 功 例 と み な さ れ て き て い る 。 だ が 、 内 外 の 研 究 を 通 し て 、ASEAN経 済 協 カ の 支 柱 を な す 域 内 経 済 協 カ に つ い て の 総 合 的 研 究 は こ れ ま で 試 み ら れ て は こ な か っ た 。 本 論 文 は 、19704J‑代 か ら 始 ま る 世 界 経 済 構 造 の 歴 史 的 転 換 の 中 にASEAN経 済 協 力 ・ 経 済 統 合 を 位 置 づ け 、ASEAN域 内 経 済 協 カ が 、NIEOと 先 進 国 経 済 サ ミ ッ ト の 対 抗 に 見 ら れ る 転 換 の 方 向 を め ぐ る 緊 張 の 巾 で 模 索 さ れ て き た こ と 、 ま た そ の 試 み が 政 策 理 念 と 経 済 協 カ の 経 済 的 合 理 性 と の 問 の 緊 張 関 係 に よ っ て 左 右 さ れ て き た こ と を 、 欧 州 統 合 研 究 の 蓄 積 の 上 に 形 成 さ れ た 統 合 理 論 、 多 国 籍 企 業 論 な ど を ふ ま え た 上 で 、 丹 念 な 貿 易 マ ト リ ッ ク ス 分 析 や フ ィ ー ル ド ・ リ サ ー チ に 基 づ い て 明 ら か に し て い る 。 そ し て 、 そ の 結 果 、1987年 の 「 マ ニ ラ 宣 言 」 に 至 る 集 団 的 輸 入 代 替 重 化 学 工 業 化 と 、 そ れ 以 降 の 集 団 的 外 資 依 存 輸 出 指 向 工 業 化 に わ か た れ る 域 内 経 済 協 カ が 、 い ず れ も 成 果 を み る こと なく 終 わっ たこ とを 明ら か にし 、 同 時 に 域 内 経 済 l窃 丿 Jが 次 々 に 転 換 を 迫 ら れ て 行 く 過 程 を 明 ら か に し て い る 。   本 論 文 は 、 以.Lの よ う に 、 は じ め て 本 格 的 にASEAN域 内 経 済 協 カ を 総 合 的 に 研 究 し た も の で あ り 、 研 究 史I| 重 要 な 領 域 を 、 斬 新 な 視 角 と 丹 念 な 分 析 に よ っ て 研 究 し た意 欲 的で 独 創 的 な も の で あ る 。 今 後 、 政 治 的 ア ク タ ー が い か に 政 策策 定を 行 い、 また 正統 化し た のか 、 技 術 や 資 源 な ど 発 展 を 規 定 し た 諸 要 因 と の 関 係 で 統 合 の経 済的 合 理性 を検 証す るこ と など 、 本 論 文 の 研 究 を 深 め る た め の 幾 っ か の 論 点 が 残 さ れ て お り 、 ま た 叙 述 と 構 成 に つ い て は 一 層 工 夫 す る こ と が 望 ま れ る が 、 執 筆 者 の 自 立 し た 研 究 者 と し て の 資 格 と 能 力iま十 分 認め ら れ る 業 績 で あ る 。

  以 上 、 審 査 す る と こ ろ に よ り 、 本 論 文 は 博 士 ( 経 済 学 ) の 学 位 授 与 に 値 す る も の と 判 定 す る 。

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参照

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