情報の特質 と情報活用要件 に関す る研究
(その
1
:情 報学 の必 要性 )出 川 淳
はじめに
本稿 は 「情報の特質 と情報活用要件 に関す る研究」のその 1として、従来の 情報 に関す る研究成果や考 え方等 を鳥取 して問題点な どを明 らかにす るととも
に 「情報学」の必要性やその研 究の方向性 を示す ものである。
第
1
章では,「情報学」 の考 え方 を提唱 してい る。 これは,21
世紀 に訪れ る であろう新社会 (情報イヒ社会の次の社会)では,高度 に洗練 された情報の有効 活用が必須要件であるとした場合,情報の有効活用の方法 な どを研究す るため の最 も根本的 ・普遍的な研究体系 を示す ものである。第
2
章では,先人達の情報 に関す る研究成果 を鳥轍 している。 また,引 き続 く第3
章では,先人達の情報の捕 らえ方の課題 を明 らかにすることによって, 情報学の必要性 を確認 している。なお,「情報の特質 と情報活用要件 に関す る研究」 は,紙面 の制約 よ り本稿 を含 めて数編の論文で構成 される。各編での主な内容 は以下の通 りである。
第 1編 (情報学の必要性) :本稿 1.情報学の考 え方
2. これ までの情報 に関す る主な研究
3
. これ までの情報 に関す る研究の課題〔
1 71 〕
17 2
商 学 討 究 第47巻 第4号 第2
編 (純粋情報現象の抽出)4.
情報 に関わる現象の同時複合性5
.一般的な複合的情報現象の分析6
.純粋情報現象の抽出第
3
編 (情報属性 と情報活用要件の明確化) 7.純粋情報現象の分析8.情報属性 について 9.情報活用要件 について
第 4編 (情報活用要件の既存学術分野か らの検証 ・考察)
1 0 .
制御理論か らの検証11
.生理学か らの検証第
5
編 (個別現象 における情報有効活用の研究手順 とポス ト情報化社会 につ いて)1 2 .
個別現象 における情報有効活用の研究手順 について1 3.
ポス ト情報化社会 について第 2編では,現実社会で発生する様 々な現象 (いわゆる情報に関わる現象)は, 情報学的観点か らす ると極めて複合的な現象であるという前姪 に基づいて,悼 報学的に独立 した11の情報現象 (以降,純粋情報現象) を抽出 している。 この 現象群 は,我 々人間が情報 を扱 った り活用す る場合 に,発生 しうる最 も基本的 な現象 を示す ものであ り,一般的にはこの
1 1
の純粋情報現象の複数が同時に発 生す るのである。第
3
編では,純粋情報現象の分析か ら,情報その ものの もつ3
種類の属性情 報 と,情報活用者たる人間が備 えなければな らない1 3
項 目の情報活用要件 を明 らかにした。3
種類の情報属性 とは,人間が情報 を管理す る場合 に,いわゆる 情報本体 に付随す る情報 として管理 しなければならない ものである。第4編では,既存 の学術分野の研究成果か らの示唆 としで情報活用要件の検 証 を行 っている。取 り上げた学術分野は制御工学 と生理学である。
情報の特質と情報活用要件に関する研究
17 3
第5
編では,実際の個別領域での情報問題の解決や情報の有効活用 のための研 究 フレームを示す とともに,21
世紀 に訪れるであろう新 しい社会 (いわゆるポ ス ト情報化社会) について考察 している。なお,本研究は 「情報学」の考 え方 に基づ き,分野や情報の内容 を特定せず に, そ もそ もの普遍的な要件 としで情報の特質や有効活用要件 を明 らかにす ること
を目的 としているが, これは個別分野での情報有効活用の要件等 を明確 にす る ための準備的な研究であ り,本研究成果 に基づ く,個別分野の よ り具体的 ・実 践的な研 究が必要 となることは言 うまで もない。
1
.情報学の考 え方( 1 )
『情報』 とい う言葉 について『情報』 とい う言葉が 日本 に登場 して,既 に約
1 0 0
年 の歳月が流 れ ようとし ている。 最初 に 『情報』 とい う言葉 を用 いたのは,森鴎外 と言われているが ど うや ら本当は もっ と以前か ら使 われていた ようである。 『情報』が 日本で造語 された ものかは不明であるが,どうも最初 の意味は,軍事的な用語 としての 「敵 情 の報告」の略語であった ようで,「情 けに報いる」ではなかった らしい。1)もし『情報』とい う単語の定義が 「敵情の報告」とい う正 しく認識 に基づいて, その後の利用が進んでいれば,我 々はこれほ どまでに 『情報』 とい う言葉 に惑 わされることはなかったに違いない。おそ らく,現在情報 と呼ばれているもの の多 くには,別の言葉が用意 されていた ことであろう。
『情報』 とい う単語が どの ような変遷 を‑て,現代 のような使 われ方 に至 っ たかはさてお き, とにもか くにもその使 われ方 は "いいかげん"である。た と えば,『高度情報化社会』とか 『家庭 の情報化』,『企業の情報戟略』,『情報資源』,
『情報産業』 など,少 し考 えれば誰で も十や二十の単語 は簡単 に思い付 きそ う である。 しか し, これ らの単語が 「何 を意味 しているのか」「どの ような意味 で情報 とい う言葉が使 われているのか」明瞭なものは殆 どない。つ ま り,『情報』
とはこの一世紀,特 にコンピュー タ技術 や通信技術 の進歩が著 しい最近の
3 0
年17 4 商 学 討 究 第
47巻 第
4号図表
1. 1 次 の 時 代 に関 す る主 な研 究 結 果
研 究 者
内 容E.B.パ
ー 近づ きつ つあ る情報時代 にお いて,特徴 的 な機械 は情報処理機器 であ カー り,それ は人 間の身体 的エ ネルギーで はな く,人 間の情報処理 を増
させ るo その相違 は重要 な もので あ るo なぜ な ら,エ ネルギー は身 よ りむ しろシ ンボル を操作 す るため に用 い られ るか ら,情報機器 で シ ンボル を表現す る際 に,身体 的表現 は ます ます少 な くなるので,エ ネ ルギーや物 質の消 費 は任 意 に少 な くす るこ とが で きるか らで ある○ こ の ことが意味 しているの は,エ ネルギー と物 質 に関 して,変化 の少 な 需 品雪雲 考警 言b YL f. も3 )情報時代 で は無 限の経済成長が理論 的 に
∫ .エ イ ケ 情報時代 は情報 の無 限かつ継続 的成 長 に よって, またその成長が知識 クランツ の無 限かつ継続 的成長 を意 味す る とい う随伴 条件 に よって特徴づ け ら
れ うるo情報 は測定 され る もの として疑 い な く成長 す るが,他方,知 識 は必ず しも成長 しない○情報 の分 配 は知識 を変質 させ るほ どには知 識 を動か さないo そ して, こ う した変質 は,社 会 の社会 的 .政治的 . 苧歪宗警 莞豊 藍 5
3T,その構 造 の内部 で機 能す る もの と して最 もよ
∫ .ボ ー ド モ ノの もつ有用性 によって具体 的 な欲求が充足 されてい るのではな く, リヤール モ ノが もってい る記号 的価値 の消費が充足 感 を与 えて くれ る社会 に 一 換 した こ とを強調 す るoつ ま り,消 費社会 において は,意味欲 を充 た す 「 差異 表示 的価 値」 の原則 が,モ ノに も概 念 に も行動 に もあては ま る もので あ り 「どんな もの で,その使用価値 ,客観 的意味,公 的言三 、 冨J i 5言警官 き詣 富 召謹 , ,
票 2'(,いつ も潜在 的 に記号 として交換 さ
D.
ベル1 9 6 0 年代 後半 か ら,欧米 や 日本 で,高度産業社 会 を把 握 す る ことば と して 「ポス ト工業社 会 」( Po
st ‑ i nd us t r i a ls o c i e t y) の言葉が使 われ るよ うになったo これ は,農業社 会 ( 前近代) か ら工業社 会 ( 近代)‑ と 移行 したあ とに くる新 しい社 会 の段 階 を意 味す る○具体 的 には,重厚 長大型 .エ ネルギー大量消 費型産業 に よる財 貨生産経済 か らサー ビス 産業 .知識産業 .情報産業 な どが富 を創 出す る中軸 とな り,専 門職や 技術 階層 がパ ワーの中心 となる社会 をイメージ しているoポス ト「 産業」
主義 の ように,産業主義 的 な原理 それ 自体へ の懐疑 を示す議論 もあ る 芸ミ 砧遠雷 h =鮎 警讐÷ 闇 莞 諾 ㌘ 島 語 法 b 2 声 う社 組
A.トフ ラ農業社会 を第 1 の波 ,工業社会 を第 2 の披 とし,第 3 の波 は,おお よそ
1 9 5 5 年か ら 65 年 にか けて アメ リカに到着 した と述べ てい るo この第 3 の波 の文 明 に とって,最 も基本 的で決 して枯 渇 しない原材料 は情報 で あ り,大量 の情報 が コンピュー タを利用 したネ ッ トワー クに よって効 票霊宝雷管ま き孟 0 9, %芸' 撃 た 謂 蒜 ㌫ 器 岩講 話 b 6 L n票
勧P.F.
ドラ第 1 段 階 は 1 7 80 年 か ら 1 8 80 年 の 1 0 0 年 間であ り,産業革命 とともに,I
ツカー 本家 と労働者 の階級 闘争 を生 み 出 した. 第 2 . 段階 は ,1 8 80 年 か ら第二
次世界大 戦 までで, この間 にプロ レタリアの中産階級 ブルジ ョアへ の
転換 がお こ り, 共産主義が敗北す る○そ して,第二次対戦後 の第3 段 階 は,
情報の特質と情報活用要件に関する研究
17 5
間,多 くの人をなん とな くその気 にさせ る "便利 な言葉"に成 りさがって しまっ たのである。(2) 情報化社会 について
かつて多 くの学者が,「次の時代 は どの ような時代 になるか」あるいは 「な るべ きか」 「なった らよいか」 とい う研究 を行 った。有名 なもの としては,
D.
ベルの 「脱工業化社会」,
A.
トフラーの 「第3
の波」,P. F.
ドラッカーの 「ポ ス ト資本主義社会」などである。 (図表1. 1参照)いずれの研究 も社会や技術の動向や方向性 を一面的ではあるものの的確 に捉 えてお り,示唆す るところは大 きい。 もちろん,彼 らの考 え方が全て同 じとい うわけではないが,彼 らの描いた未来社会 において 「知識」や 「情報」が中心 的な役割を演ずるとい う意味では,共通 していると言って もさしつかえない。
『情報化社会
( Thel n f o r ma t i o nSo c i e t y)
』 とい う言葉 は 日本で生 まれ,い まや米国で も定着 しつつあるようである。 D.ベルや トフラー, ドラッカーの 唱えた未来社会 も 『情報化社会』 とい う言葉 に収赦 しつつある。 2)しか し,そ の実態に関するイメージは大勢の研究者がそれぞれの専門性 を活か して研究 を 鋭意進めているが,いまだに様 々であ り混沌 としている。(3) 情報学 について
『情報学』 とい う言葉 はあま り聞 きなれず,社会的に広 く認知 された学問体 系 になっているわけで もない。 しか し, 『情報学』 の必要性 を訴 えた学者 は既
に何人かいる。
ここでは,北川敏男氏の提示 された情報学のフレームについて紹介する。 5)
北川氏は,情報学の研究フレーム として,次の
5
つの研究視軸 を提案 してい る (表1. 2
参照)。北川氏は,図表
1. 2
に示 した5
つの研究視軸( P
,S
,E
,L
,G)
の稔17 6
商 学 討 究 第47巻 第 4号図表
1. 2
北川氏による情報学の研究視軸研究視軸の分類 必要 とした研 究内容
第 1研究視軸 :情報処理過程 ・入力情報処理
( P: Ⅰ n f o r ma t i o npr o c e s s i ngp r o c e s s )
・予備的情報処理・構造化処理
・情報蓄積
・情報検索
・情報流通
・情報利用
第 2研究視軸 :情報論理空間 ・構 造部分空 間
( S t r uc t ur es ubs pa c e ) ( S: Spa c eo fi nf o r ma t i Vel og i c s )
・機能部分空 間( f unc t i o ns ubs pa t e )
・設営部分空 間
( f e a s i bi l i t ys ubs pa c e )
第3
研究視軸 :情報表現形式 ・音声 ,図形 ,画像 ,シンボル ,サイ ン,文字( E : Ⅰ n f o r ma t i o ne Xpr e s s i o nf o r m)
・広義の言語体系 (自然言語、数学言語、計 算機言語、音楽、絵画言語)第
4
研 究視軸 :情報処理現象 にお ・生物知能 いて発揮 される知能階位 ・人 間知能( L: Ⅰ nt e 1 1 i ge nc el e Ve
l) ・機械知能・社会知能
第
5
研 究 視 軸 :知 能 階 位 の発 生 ・各知能水準 における均衡状態 と均衡化( ge ne s i s )
と転イヒ( e qui l i br a t i o n)
∴情報論理空 間の形成過程合積空間
(PxSxE xLxG)が 情報学 として実践 されるべ き視座 を形成す
るとしている。 北川氏の考 え方 は1 9 6 0 ‑7 0
年代 にかけての研究成果であ り,当 時 目前 にせ まった 「情報化時代」を見据 えて全方位 的に展 開された ものであ り, 現代 において もその必要性 は衰 えていない。 む しろ,当時 より増大 している とも言 える。 氏 は情報学の形成のためには,以下の事柄が当面の課題であるとし ていた。
・情報処理過程 (P)を通 じて対象 を明確化す る。
・対象の中に包含 しきれない もの として作用化の概念 をもっで情報現象 を分 析 し,情報論理空間 (S) と知能階位 (L)の関係の明確化す る。
・5つの研究視軸 に基づ く情報学 を根幹 とす る社会科学的接近 させ る。
情報の特質と情報活用要件に関する研究
177
北川氏が提唱 された情報学のフレームは, コンピュータ技術や通信技術 が現 在 とは雲泥の差があった当時 としては実 に見事ではあるが,情報処理過程 を通 じて対象 の明確化 を試みた点に課題が残 った と考 え られる。 つ ま り,何 らかの 容器 に納め られた情報 (北川氏 はこれをデータと呼んだ) を対象 としたため, 情報の もつ属性 に関す る研究がたちゆかな くなったのである。氏 は 「データ論」としてデータの有効性 を明確 にす る必要性 を訴 えてお り,信頼度や交信度,結 合度,広範度,適切度などがデー タの有効性 を示す尺度 として有効 としている が,情報処理過程の分析か らは, これ らの有効性 を抽 出す ることは難 しく,む しろ情報論理空間や知能階位 に関わる情報現象 を通 して検討すべ き課題であっ た と言 える。
情報 を実際に扱 うためには,多 くの場合,何 らかの形態でそれ を保有す るこ とが必要 とされるが,必ず しもすべてではない。 また,北川氏 も必要性 を指摘 した情報有効性 の尺度 もまた,形態的にみれば情報 になって しまう。
筆者 も,北川氏 と同様 に,情報化社会や
2 1
世紀 に到来するであろ う次の時代 をきり拓 くためには,情報 を中心 に据 えた 『情報学』 なる ものの必要性 を強 く 感 じる。 また情報学 はそれ 自体 として存在す るための ものではな く,社会科学 への接近 まで達成 して,は じめて役 にたつ とい う認識 も同 じである。ちなみに, 北川氏 は,『情報学』をI nf o r ma t i c s
と呼ばれている。筆者 もこれにな らって 『情 報学』をI nf br ma t i c s
と呼ぶ ことにす るが,情報学 を確立す るためには,最初 に, 情報の持つ性質や特性 を明 らかにす ることが必要だ と考 える。既 に述べた ように,北川氏 は情報処理過程か らこれを試みたが,本研 究では各種 の情報現象 を 分析 し帰納的なアプローチで研究する (具体的な内容 は,本稿 に引 き続 く第
2
蘇,第3
編)0なお,北川氏 は情報学 として前述 したような
5
つの研究視軸 を提唱 されてい るが ,本研究ではその内容 を図表1.3
に示す様 に,「普遍的原理」と「個別現象 に 関わる原理」に分類 し,さらに,情報その ものに関す る側面 (以降では 『情報軸』)と,情報を活用する人間あるいは組織に関わる側面(以降では,『人間軸』)に分類 して検 討することを提唱する。なお ,北川氏は情報形態の略語 を
E( Expr e s s i o n)
とされた17 8 商 学 討 究 第 47 巻 第 4
号 が,本稿ではM( Me d i a )
として以降表記す る。図表
1. 3
情報学の体系化普遍 的原理
( 狭 義の情報学) 個別現象 に関わる原理
情報軸 情報 自身の もつ特質 情報空 間 情報形態 (S) ( M)
人 間 ( 情報活用者)軸 情報 を活用す るための要件 知能階位 の発 生 と転移 ( G)
図表
1. 3
において,普遍的原理 とした部分 は,いわば 「狭義の情報学」 と も呼べ る部分である。 つ ま り,情報の もつ特質や情報 を活用するための要件で ある。 個別現象 に関わる原理 とした部分 は,種 々の社会現象の密接 に関連 した もので,具体的には,北川氏の提唱 している情報空間( S)
や情報形態( M)
, 知能階位の発生 と転移( G)
や知能階位( L)
がそれぞれ,情報軸,人間軸に 対応す ると考 えられる。北川氏の情報処理過程 (P) は,図表
1. 3
においては,情報 に関す る普遍 的原理の人間軸に相当する。 つ まり,一般化 された情報処理過程 は,当然のことなが ら,人間が情報 を有効 に活用す るための要件 と言える。
(4) 情報学の現在 までの展開について
現時点において,既 に述べた様 に 『情報学』 とい う言葉 は,必ず しもひとつ の学問体系 として広 く認知 された ものにはなっていない。次章で一部を紹介す るが,多 くの学者が,『情報化社会』 とい う言葉 に代表 される社会現象 として 情報問題 にとりくんで きたことは事実である。しか し,冒頭 に述べた様 に,「情 報 とは何か」あるいは 「情報化社会 とはどんな社会か」 とい う最 も基本的な命 題 を問いかけ られた とき,社会的にコンセ ンサスの取れた明確 な答 えや ビジ ョ
ンを答 えることはで きないのが事実である。
これ も繰 り返 しになるが,筆者 は,情報 自身に対する解明や基本的な研究が
情報の特質 と情報活用要件 に関する研究
17 9
立ち後れた点に大 きな原因があると考 える。 これを裏付 けるひとつの事実を紹 介す る。1 9 7 1
年に科学技術庁計画局が実施 した 『技術予測報告書』 における情 報技術 に関する項 目の予測 と結果である。6)この予測 は,デルファイ法 を用いて極めて大がか りに行 われた。情報技術 に 関連する予測項 目は,
1 1
1項 目あ り,内訳 は図表1. 4
の通 りである。図表
1.4
情報技術 に関連 した予測項 目の内訳 予測の内容は 「それぞ分 野 項 目 数
社会 .経済か らの要請項 目
4 1
項 目 情報技術か らの要請項 目5 2
項 目 基礎技術 か らの要請項 目1 8
項 目れの技術項 目が概 ね何年 ごろに実現するか」 とい うものである。 さらに, 以下の様 な付随的な分析 も行 われている。
・実現で きない とした場合 その原因は,
「 A :
技術的な困難 さ」,「B
:社会 的な制約」,「
C経済的な制約」
の3
つの どれに該当す るか。・実現 にむけた国策 として重要な ものは,
「 A :
研究開発資金の確保」,「B
:研究開発人材の養成」,「C :
研究開発体制の整備」,「 D
:その他」,「E
:無記入お よび不要」の うちの どれか。・実現 に対するコメ ン ト (重要な研究課題 など
)0
ここで
,1 1
1項 目全 てを紹介す ることはで きないが,図表1. 5
に情報 に深 く 関わると考 えられる6
項 目の予測結果 を示す。図表
1. 5
に取 り上げた項 目は, どれ も1 9 8 0
年代の広範か ら1 9 9 0
年代の初頭 にかけて実現 され るだろうと,1 9 7 1
年当時 に予測 されたにも関わ らず、実際に は1 9 9 6
年時点において も,実現 されていない ものが多い。これ らの
6
項 目は,どれをとって も当時の予測 として,技術的困難 さ(図表1.
5
における 「非実現の理由」のA)
は,それほど高 くない。にも関わ らず,実 現で きなかったのである。 この原因は,情報通信の工学的な技術 的困難 さとは 別の困難が存在 していたため と考え られる。それぞれの項 目に,当時のコメン トとして予想 される技術的な課題などが列挙 されているが,その中にも当時 "ぼ180
商 学 討 究 第47巻 第4
号図表 1. 5 1971年 に お け る技術 予 測 結 果 (情 報 に深 く関 わ る もの) 技 術 項 目 実現時期 非実現 の理 由 (%) 国策 (%) コ メ ン ト 図書 .資料の要約 .抄録
1 9 8 8 A :28 A :2 2
重要性 の判断が難 しい○を自動的に行 う装置の実
‑ B :1 ち :1 6
内容 を理解す る人工頭脳 用化1 9 9 4 C :2 C :2 0
が必要oD :3 D :7 E :3 8
式の開発が必要資料 の分類 .コー ド化方 文書 の保存 .検索 .取 り1 9 85 A :3 A :40 COMの低廉 .小型化o
出 しがゼロ ックス程度の・ ‑ B :0 B :8
ビデ オ フ ァイ ル の量 産 コス ト .手軽 さで行 える1 9 88 C :4 C :1 5
舵 .低廉化○ようになる
D :1 D :4 E :3 7
大 容 量、 安 価 な 光 メ モリーの出現○無人図書館 (全蔵書が ビ
1 9 87 A :2 A :3 6
デー タ整 理 技 術 の 高 度 デオ .テープ、マイクロJ ‑ B :2 B :4
化oフイル ム な ど に収 容 さ
1 9 9 0 C :1 0 C :2 3
シス テ ム の経 済 性 が 間 れ、閲覧者 は個人端末装D :3 D :5
題、安価 なデー タフ アイ置で 自由に検索で き、必 要部分がデ ィスプ レイ表
示 される)が実現す るo
E :3 6
ル、端末装置の開発 完全 なシソー ラスによっ1 9 87 A :2 A :3 3
デー タの 収 集 .整 理、てある程度 自動的に検索
‑ B :0 B :7
フ ァイルの作成 に時間を で きる特許デー タバ ンク1 9 88 C :0 C :2 7
要す る○がつ くられる○
D :1 D :4 E :3 3
キーワー ドの体系化○関係者 にとって安価 で 自
1 9 87 A :1 A :2 8
社会的要請の大 きさが間 由に検索で きる判例 .法‑ B :4 ち :1 0
題o律 デー タ .バ ンクがつ く
1 9 88 C :2 C :2 4
情 報 の整 理 .更 新 が 困 られる○D :1 D :7 E :3 5
墜L公的機関に各種統計デー
1 9 86 A :0 A :2 8
官庁 .地域社会のデー タ 夕 .バ ンクがつ くられ,‑ B :5‑ ち :1 0
バ ンク(ⅠDP)の完成
いつで も個人が 自由に検1 9 8 8 C :3 C :2 4
▼●索で きるシステムが実現
D :1 D :7
経済性 と個人の機密保持んや り" と認 識 され て い た 困難 さが 表 現 され て い る。 具 体 的 に は, 「重 要 性 の 判断」,「内容 を理 解 す る人工 頭 脳 」,「資料 の分 類 ・コー ド化 方式 の 開発 」,「デ ー タ整 理技 術 の 高度化 」, 「デ ー タの収 集 ・整 理 」, 「キ ー ワー ドの体 系化」, 「情 報
情報 の特質 と情報活用要件 に関す る研究
181
の整理 ・更新が困難」,「データの標準化」な ど (図表1. 5
のコメン ト部分で 下線 を付 けたもの)である。つ まり,情報そのものの研究が立ち後れたため, 実現 にいた らなかった と考 えることがで きる。 つ ま り,情報整理技術やその体 系化の技術 などが予想通 りに発展 しなかったのである。2
. これ までの情報 に関 す る主 な研 究( 1 )
報に関する研究動機情報 に関す る研究は,米国だけでな く日本で も古 くか ら行われている。その きっかけや研究の 目的は様 々であるが,概ね図表
2. 1
の通 りである。図表
2. 1
情報に関する研究動機研 究 動 機 . 目 的 研 究者 たちの専 門分野 次の世代 の産業や社会が どの ようになるか 経済学者,社会学者 組織 や企業 の経営 を支援す るための コンピュータシステ 経営学者 ム (経営情報 システム :
MⅠ S( Ma na ge me ntⅠ nf o r ma t i o n
Sys t e m) )
は どの ようにあるべ きかこの ように,実際 に研究 にあたった研究者 は経済学者や社会学者,未来学者 など多岐にわたってお り,この頃か ら,いわゆる 「情報問題」が学際的なテー マであったことが うかがえる。以降の節で, これ らの様々な研究者たちの著名 な研究成果 と情報 に対す る考 え方や定義 を紹介する。
(2) 経済学者,社会学者等の研究
以下 に,主な経済学者,社会学者等の研究成果の概要 を紹介する。
◆マ ッハルプ
( 1 9 6 2
,『知識産業』)マ ッハルプは知識 を商品 として捉 えるための経済学的なアイデ ィアと,情報 の扱い方に関する色 々な問題点 を提起 した。7)
◆梅禅忠夫
( 1 9 6 3
,『情報産業論』)182 商 学 討 究 第 4 7 巻 第 4
号梅樺忠夫 は,経済社会のなかで情報が重要性 を増 し,情報が大 きな価値 をも つ情報財 として,生産財やサー ビス財 と同 じように情報 を生産 し販売す る企業 が社会の中で意義 をもつ ようになると謳 っている。8)
◆ ドラッカー
( 1 9 6 9
, 『断絶の時代』)ドラッカーは,知識 とい う言葉 を用いた。つ ま り,次の世代 を 「ポス ト資本 主義社会」 と定義 し,そ こでは知識が重要な資源 になるとしている。 つ ま り, 知識 を提供で きるのは人間であ り, これは電気やお金 と同 じように 「働 かせた ときにのみ存在す るある種 のエネルギー」 と考 えたのである。 また,知識 とは 人間が 目的に応 じて提供 した情報 とも述べてお り,人間の もつ情報や知識 をい かに有効 に活用するかは,それ 自身 「テクノロジー」であるとした。3)
◆ベル
( 1 9 7 3
,『脱工業化時代 の到来』)ベルは,次の世代 の社会 を 「脱工業化社会」 と呼び, 『脱産業社会の 1つの 軸がテクノロジーであ り, もう一方の軸が基礎資源 としての知識である と述べ た。 また,知識 とテクノロジーは,社会制度 に具体化 され,人間によって表現 される。要す るに,私達 は,知識社会 について語 ることがで きるのである』 と した。3)
◆ ボラ ト
( 1 9 7 7
, 『情報経済学 一定義 と測定』)ボラ トは情報が商品であるとい う立場 を,最 も明確 に打 ち出 した。彼 は,経 済学的な立場か ら,情報 を物理的なもの と捉 え,情報 をパ ッケージ化す ること が最 も適切 な指標であるとした。3)
◆ トフラー
( 1 9 8 0
, 『第3
の披』)トフラーは 「第
3
の波」とい う言葉で,「情報 に基づ く高度 に電子化 した社会」の到来 を予言 した。 このベース にある考 え方 は,「文 明に とって,最 も基本 的 で決 して枯渇 しない原材料 は情報であ り,大量の情報が コンピュー タを利用 し たネ ッ トワークによって効果的に活用 される」 とす る ものである。
4 )
◆今井賢一
( 1 9 8 4
, 『情報ネ ッ トワーク社会』)今井賢一は,次世代社会 を,情報通信系 の社会資本 をイ ンフラとした,情報 の生産,伝達 を原動力 としたネ ッ トワーク型組織 によって編成 される社会であ
情報の特質 と情報活用要件に関する研究
183
る とした。のちに, この考 え方 は,金子郁容 とともに 「ネ ッ トワーク組織論」に発展 してお り,人 と人 とが直接 に接触す る交流 とそ こで発生す る情報 とその 流 れや影響 の広が りに注 目している。 7)
彼 らの情報 に対す る考 え方 をまとめる と,図表
2. 2
の通 りである。表
2.2
著名 な経済学者や社会学者の情報 に対 する考 え方研究者 情報に対する考え方
マ ッハルプ 誰かが知っていること8)
梅禅忠夫
人間と人間との間で伝達されるいっさいの記号系列8)ドラッカー 人間が目的に応 じて提供できるもの3) ベノレ 脱産業社会の基礎資源3)
ボラ ト パ ッケージ化可能な物理的なもの3)
トフラー 人間にとって最 も基礎的で決 して枯渇 しない資源4)
今井賢一
形式ない し構文だけを示す 「形式情報」 と人間社会のネットワーク やコミュニケーションのなか創造 されその内容の意味が重視 される( 3 )
経営学者 の研究( M ISの研究)
次 に,過去 の著名 な経営学者 の研 究成果 を紹介す る。
◆ マ ク ドナフ
マ ク ドナ フ
( Mc Do no ugh)は,組織経営 のための コンピュー タシステム (
経 営情報 システム :MI S( Ma na ge me ntl nf br ma t i o nSys t e m))
の問題意識 か ら 出発 して,19 6 3
年 に既 に次の棟 に述べ てい る。 9)情報 とい う言葉 とデー タとい う言葉 を区別すべ きである とす る。 情報 は人 間の問題解決の活動 においては じめて現 われ るものであ り,特定 の問題, 特定の状況 と離れては存在 しない。 これに対 して,デー タは人間が利用す ることので きるメ ッセージで,特定の問題状況 に関 して まだその価値 を評 価 されていない ものである。 いいかえる と,情報 とは特定の問題,状況 に 関 して評価 されたデー タである と考 え られる。 人間はある問題 にぶつか る と,デー タの集積 のなかか らその間題 の解決 に助 けになる ものを見つ け出
184 商 学 討 究 第 47 巻 第 4
号す。 この とき彼 はデータをその問題に関 して評か しているのであ り,いわ ばデータを情報に変換 してお り,あるいはデータか ら情報 を選別 している のである。
この考え方は,組織経営のためのコンピュータシステム (情報 システム) に 関す る分野では,最近の米国の教科書的な書籍10)に も明示 されるな どしてい るので比較的広 く浸透 しているといってよい と思われる。
◆デアデ ン&マタフアーラン
デアデンとマクフアーラン (
∫De a r de n & F. W. Mc Fa r l a n)
は,MI S
の観点 で研究を進め,企業経営 に必要 とされる情報 には,色 々な性質の ものを含んで いるとして1 9 6 6
年 に図表2. 3
の様 に分類 している。 9)図表
2.3
デアデンとマクフアーランの情報分類情報分類 それぞれの情報 に対す る考 え方
行 動 情 報 と非 行 動 行動情報 :その情報 を受取 った ものが何 らかの行動 を とる こ
情報 とを要求す る情報
非行動情報 :行動 を必要 としない情報
経 常 的 情 報 と非 経 経常 拍情報 :定期 的に繰 り返 して発 生す る情報 常 拍情報 非経常 的情報 :定期 的な発生が前提 とな らない情報 文 書 情 報 と非 文 書 文書情報 :文書 . ( 電子媒体 を含 む) による情報 情報 非文書情報 :文書 によらない ( 主 に口頭 の)情報 内 部 情 報 と外 部 情 内部情報 :企業や組織 の内部で発生す る情報 戟 外部情報 :企業や組織 の外 部で発生す る情報 歴 史 的 情 報 と将 来 歴史的情報 :過去 の情報
◆小川 正博
( 1 9 9 3
,『企業の情報行動』)小川正浩 は,環境 に適応 しなが ら生存す る企業情報 システムの検討 において, 効率性 と創造性 とい う観点か ら分類 している(効率的情報,創造的情報,図表 2.
4
参照)。この両者は,必ず しも明確 に区分で き̲るものではない としなが らも, 本質的な違いは 「受け手の解釈が必要か否かの度合である」としている。また, 環境の変化 などによって,効率的情報 と創造的情報 はそれぞれ転化する可能性情報の特質と情報活用要件に関する研究
185 '
をもつ とし,む しろ状況 に応 じていかに転化 させ ることがで きるかが,実際の 企業情報 システムの課題である ともしている。8)図表
2.4
小川の情報分類 (効率的情報 と創造的情報)効率的情報 示す意味および記号内容をあらかじめ明確に規定可能であり, 受け手と送 り手による解釈の相違が発生 し得ない情報
創造的情報 意味が多様であ り,その自由な解釈から新たな意味を創造 し てい くもので,解釈や転化の過程がさらに新たな創造的情
( 4)
工学者 の研究 (工学的技術 の確立)工学的技術 の確立のために情報 (とよばれるもの) を取扱 わなければな らな かったのは,主 に制御技術 お よび通信技術 である。 著名 な研 究者 は,ウイナー
( N. Wi e ne r )
とシャノ ンである。 以下 に彼 らの研究成果 などを要約す る。◆ ウイナー
( 1 95 4
, 『人間機械論』)ウイナーは,情報 を人間だけの もの として限定せず,人間 と同様 に機械 など にみ られる制御行動 の概念 として,情報交換 を共通的に解明 しようとした。 ま た,彼 は,固体相互 間の コミュニケーシ ョンだけでな く,固体内部間の コミュ ニケーシ ョンにも注 目した。
8 ), l l )
彼の研究成果は 「サイバ ネティクス」 と呼ばれる概念 を創 出 し, また,その 成果 「ウイナーズ フィルター」は後のカルマ ンによって 「カルマ ンフィルタ‑ 」
として完成の度合 を高めた。
◆ シャノン
( 1 9 48
, 『通信のための数学理論』)シャノンは,不確実性の増大 ・減少 とい うエ ン トロピーの概念 を用いて,情 報の物理的な計量 を可能 にする とともに,情報 の標本化や量子化 に関す るいわ ゆる情報理論 を確立 し,現代のデジタル通倍 に多大 な貢献 をな した。コンピュー タな どの分野で当た り前 の ように用 い られてい るビッ トの概念 の発案者 であ る
。 l l )・ 1 2 )
186
商 学 討 究 第47巻 第4
号ウイナーや シャノンは情報 を図表
2. 5
の ように捉 えている。図表
2. 5
ウ イナーとシャノンの情報 に対する考 え方ウイナー われわれが外界に対 して自己を調節 し,かつその調節行動によって 界に影響 を及ぼしてい く際に,外界 との間で交換 されるものの内容を 指す言葉である
シャノン 情報とはいってみれば幾つかの選択 し得る状態の中からある
1
つの'、3.
これ までの情 報 に関 す る研 究 の課題前章で紹介 した従来の情報 に関す る研究成果 に共通 して言 えることは,世の 中に存在する情報 と呼ばれ るものの全てを研究対象 には していない点である。
これは,彼 らの研究の最終 日標が,情報それ 自体 を解 明す ることではないため とも言 える。 具体 的には,「次の世代 の社会が どうなるか」 であった り,ある いは 「情報 とい う視角か ら経済活動 をどのようにとらえればよいか」,「通信技 術や制御技術 を確立するため」 な どである。 したが って,情報それ 自体 の解明 が一面的になるのはやむをえない ところで もある。
本章では, これまでの情報の捕 らえ方それぞれの もつ課題 を明 らかに し,第
1
章で述べた様 に,狭義の情報学,つ ま り,情報の もつ特質 (情報軸) と情報 を活用す るための要件 (人間軸) (図表1. 3
参照)が極 めて重要であること を確認す る。(1) マ ッハルプ ・梅禅 ・ドラッカーの捕 らえ方の課題
彼 らは概 ね同 じような捕 らえ方 をしているが再掲す ると以下の通 りである。 マ ッハルプ :人間が知 っていること
梅 禅 :人間 と人間 との間で伝達 される一切の記号列 ドラッカー :人間が 目的に応 じて提供 で きるもの
これ らの考 え方 は,情報 を扱 うのは人間である以上,誤 っているわけではな
情報の特質と情報活用要件に関する研究
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い。しか し,情報の範囲を人間が扱 うものに規定 しているだけで,「人間が知っ ている情報 とは どうい うものなのか」あるいは 「どの ように扱 えば有効活用できるのか」 といった命題 には答 えられない。
(2) マク ドナフの捕 らえ方の課題
マク ドナフは,情報 を 「状況 に際 して評価 されたデー タ」と考 えた。これは, 何 らかの 目的に対 して有効活用可能なデータを情報 とす る考 え方であるので, 情報 は 目的に対 して有効 に作用 しない限 り価値 を発揮 しないことを認識 した扱 いかたである。
ただ し,ある目的に対 して有効活用可能なデータが別の 目的に対 しては全 く 価値 をなさない場合, これ は情報 である と同時 に情報 ではない とい うことに
なって しまう。
また,同 じ目的に対 して,異 なる
2
つの情報がそれぞれ異 なる価値 を発揮す る場合, この2
つは単 に情報 とい う言葉で同列 に扱 ってよい ものなのであろう か。この ような実際的な情報活用場面 における扱 い方 は,活用者たる人間に委ね られて しまい,人間が効率的に情報 を活用す るためには不十分 な扱 い と考 え ら れる。
( 3)
デアデ ン ・マクフアーランの捕 らえ方の課題デアデ ンとマクフアー ランは情報 を以下の様 に分類 した。
・行動情報 と非行動情報
・経常的情報 と非経常的情報
・文書情報 と非文書情報
・内部情報 と外部情報
・歴史的情報 と将来情報
それぞれの分類 における課題 を列挙す ると以下の通 りである。
◆行動情報 と非行動情報
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巻 第4
号情報 を入手 した人間が行動 を起 こすか否か とい う観点での分類 であるが,情 報 を得て,それに基づいて更 に検討や分析 をした とい う場合 は,行動 を起 こし たことになるのであろうか。 また,入手 した情報が役 にたたず即座 に破棄 した 場合 は どうなのか。
◆経常的情報 と非経常的情報
情報が定期的に発生す る (経常)か しないか (非経常) とい う分類 である。
この分類 は,人間の情報 に関わる運用活動 に委ね られた分類である。 具体例 と して,ある手法 による数値情報の計測が,定期的に実施 された場合場合 は経常 的情報 とな り,非定期であれば非経常情報 となるのである。 もちろん,定期的 に入手 された数値情報 は,それが蓄積 された結果 として,様 々な統計処理 (時 系列分析等)が可能になるとい う違いが両者 にあることは事実であるが,個 々 の単体情報 に注 目した場合,同 じ手法で入手 された情報 にどの ような違 いがあ るのであろうか。
経常的情報 と非経常的情報の違いが有意 になるのは,複数の情報の集 ま りを 一つの情報 と見た場合であ り,個 々の情報 に注 目した時 にそれほど大 きな差異 はない と言 える。
◆文書情報 と非文書情報
文書 な どの何 らかの媒体上 に保存 されているかいないか とい う観点での分類 である。ある人が頭の中にあるアイデアを他の人 に口頭で説明すれば非文書情 報 とな り,紙 な どに書 き留めて渡せば文書情報 とい うことになる。 要す るに, 口頭や会話 とい う一般的に保存 されないメデ ィアを特別視 した分類 である。 こ の際,相手‑伝達 される内容の正確性 を確保す るために状況 に応 じた適切 なメ ディアを用 いて コミュニケー シ ョンしたか とい う点 を度外視 して,正確 に伝 わった とす るな らば,文書情報であって も非文書情報であって も内容 には差異 はない。
◆内部情報 と外部情報
組織の内部で発生 した情報 と外部で発生 した情報 とい う区分である。しか し, 外部で発生 した情報であって も組織内部で有効活用することは可能な情報は多
情報の特質と情報活用要件に関する研究
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く,知的所有権 などで活用で きない情報 とい う意味では,組織内で も活用で き ない情報 も多い。情報の発信者や創造者が誰 なのか といいう点は情報の特質を把握するうえで 重要な項 目であるが,内部 ・外部 という分類ではその特質を充分に把握で きな
いはずである。
◆歴史的情報 と将来情報
過去の事柄 と将来の予測 という分類である。 これは単 にその情報が対象 とし ている事柄が過去か未来か というだけの違いである。例 えば,過去の歴史的事 実 を客観的な事実に基づいて推察するの と,将来の事象 を予測するの とどのよ
うな違いがあるのであろうか。将来の予測 に関 しては,その妥当性 をいずれ確 認することがで きるという事 は言 えるが,本質的な違いはない と思われる。
以上述べた ように, これ らの分類 は企業組織 などにおいて情報 を整理すると い う意味で従来か ら行われて きた分類の一部ではあろうが,真 に情報 を有効活 用するためにはあま り妥当な分類 とは考 えられない。情報の特質や有効活用の 要件 を断片的に示 している部分 もあると思われるが極めて不十分である。
(4) ベル ・トフラーの捕 らえ方の課題
ベル と トフラーは情報 を脱産業社会の基礎資源 と位置づけた。情報が人間に 与 えられた資源 として有効活用可能であるとい う点で正 しい と思われる。情報 化社会 という様 な言葉が使われ始めたのは,最近の
2 0 ‑3 0
年程度の短い期間で あるが,人間は太古の昔か ら,蓄積 された情報 (先人たちの知恵など)の蓄積 によって,新技術 を開発 し社会 を発展 させたことは間違いな く,今後 も同様で あろう。情報化社会 という言葉 とほぼ同時期か ら 「情報 は人,物,金 に次 ぐ第
4
の経 営資源」 とい う様な言い方 もされているが,経営資源 として有効活用するとい うことは, 目的に応 じて有効活用で きるようにコン トロール しなければな らな い とい うことである。2 0
世紀末の現時点において,有効活用で きるようにコン1 90
商 学 討 究 第47巻 第 4号トロール している情報の範囲は,企業等でのマーケテイング情報や会計情報 な どが主で,情報全体か らするとごく一部である。
いずれにせ よ,情報 を資源 と見 なす考 え方は正 しい と思われるが,有効活用 のための コン トロールに関 しては何 ら言及 されていない。
( 5 )
ボラ トの捕 らえ方の課題ボラ トは情報 をパ ッケージ化可能なもの とした。 これは,情報 を商品 として 見た場合の定義である。現在では,多 くの情報はパ ッケージ化 され商品 として 流通 しているが,書籍 などをそれよ りずっと昔か ら商品 として流通 しているの も事実である。要するに,情報 には経済財 として流通可能な価値が内包 してい ることを意味 しているだけで,情報 自身の もつ特質やその有効活用 などについ ては何 ら触れていない。
( 6)
今井の捕 らえ方の課題今井は,形式情報 と意味的情報 とい う
2
つの側面で情報 を捕 らえた。つ ま り, 情報の構造的な側面 と,同 じ情報で も場面によって意味や価値が変わ りうると いう側面である。別の言い方 をすると,人間は文字や言語 を使 っで情報 を表現 する場合,何 らかの文法 に従 う。 この文法 に相当す るのが形式情報であ り,そ の内容 に相当するのが意味的情報 と言 って もよいであろう。情報 をどのように表現 し, どのように伝 えるか という問題 を扱 う場合 に形式 的情報は非常に重要な役割 を演ずる。 しか し,情報本来の価値 は意味的情報 に よるものである。 したがって,情報の特質を理解 し,有効活用要件 を明 らかに するためには,意味的情報のさらなる分析や体系化が必要 と思われる。
( 7)
小川の捕 らえ方の課題小川は,情報の送 り手 と受け手の解釈の相違が生 じない情報 を効率的情報 と し,相違が生 じうる情報 を創造的情報 と分類 した。 しか し,その厳密 な分類 の 困難 さは本人 も指摘 している。
情報の特質と情報活用要件に関する研究
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一般的に,数値情報 は効率的情報 に分類 される場合が多い と考 えられる。 こ の理由は,多 くの数値情報 は何 らかの公 に認知 された基準 に基づいて計測 され た情報だか らである。 しか し,同 じ数値情報であって も, 目的に応 じてその価 値 は異 な り,場合 によっては解釈 さえも相違 して しまう。例 えば,気温の情報 である。 多 くの人は,気温情報か ら今 日は暑いか寒いか とい う判断 をす るだろ うが,人によって同 じ温度で も判断結果 は異 なる。 また,基本情報 を統計的に 処理 して,気候や経済 な どの分析 を行 う研究者 にとっては,気温情報 は全 く別 の価値 をもた らす。要するに情報の解釈 は,情報活用者の活用 目的や状況 に依 存す るのであって,情報 自身には よらない とい うことである。 もちろん,多 くの人が同 じ解釈 をす るような情報 もあるが,それはその情報 自身に原因がある のではな く,多 くの人がおかれた状況や多 くの人の価値観がほぼ同 じになって いるためである。
以上の ような点 よ り,情報の特質やその有効活用のためには,不十分 な情報 の捕 らえ方である。