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宇 宙 国 際 法 に お け る協 議 制 度(2・ 完) '

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(1)

商 学 討 究 第34巻 第3号

宇 宙 国 際 法 に お け る協 議 制 度(2・ 完)

'

中 村 恵

I H 皿 W V W W 皿

は じめ に

「宇 宙 条 約 」 にお け る協 議 制 度

「宇 宙 救 助 返 還 協 定 」 に お け る協 議 制度

「月 協 定 」 に お け る協 議制 度(以 上 第34巻 第2号)

「放 送 衛 星 法 原 則 」 にお け る協 議 制 度

rリ モ ー トセ ンシ ング法 原 則 案 」 にお け る協 議制 度 協 議 制 度 の 意 義 と機 能

む す び(以 上 本 号)

V「 放 送 衛 星 法 原 則 」 に お け る協 議 制 度

1放 送 衛 星1}に 関 す る 法 原 則2,は,1972年 の 総 会 決 議2916(XXVII) 以 後,宇 宙 法 律小 委 員会 を 中 心 に作 成 作 業 が継 続 して い た が,1982年12月 の国

連総 会 は,賛 成107国 対 反 対13国(棄 権13国)で 同 法 原 則 を 採 択 し た31。 こ こ で は,採 択 た れ た法 原 則 の うち,協 議 に 関す る原 則 につ いて 検 討 す る こ と にす る 。

まず 「 協 議 の義務 と権 利」 原 則 で あ るが,国 際 直 接 放 送 活動 一 般 に っ いて の,

原 稿 受 領 日1983年10月31日

1)放 送 衛 星 の 特 徴 に つ い て は,拙 稿 「宇 宙 活 動 と 国 家 主 権 一 放 送 衛 星 を め ぐ る 法 的 問 題 の 分 析 一 一 」 『一 橋 研 究 』,第3巻 第2号,14‑16頁 を,参 照 さ れ た い 。 2)こ の 法 原 則 の 正 式 名 称 は,PrinciplesGoverningtheUsebyStatesofArti‑

ficialEarthSatellitesforIntemationalDirectTelevisionBroad、

castingて 「国家 に よ る人 工 衛 星 の 国 際 的 テ レ ビ ジ ョン 直接 放 送 へ の 使 用 を 律 す る原 則 」),で あ る。

3)AIRES/37/92.

〔69〕

(2)

ZO宇 宙国 際 法 に お け る協 議 制 度(2・ 完)

協 議 の 義 務 と権 利 を 規 定 して い る 。 同 原 則 は,次 の よ う に 規 定 す る 。

人 工 衛 星 に よ る国 際 直 接 テ レ ビ放 送 活 動 を 実施 して い る いか な る 発信 国又 は 受 信 国 も,同 一 活 動 を行 な って い る他 の 発 信 国 又 は 受 信 国 の 請求 が有 る場

  コ

合 は,当 該 活 動 に関 しか か る発 信 国 又 は 受信 国 とた だ ち に 協 議 に入 らな けれ ば な らな い 。(以 下 略)(傍 点 筆 者)

次 に 「国 家 間 の 協 議 及 び 協 定」 原 則 で あ るが,国 際 直 接 放 送活 動 を,国 際電 気 通 信 連 合 の 関 連 規 則 に 適 合 す る協 定 に基 づ か せ る こと,及 び そ の ため の調 整 手 続 と して 協 議 を実 施 す る こ とを,規 定 して い る。 同原 則 は,次 の よ うに規 定 す る 。

人 工 衛 星 に よ る国 際 直接 テ レ ビ放 送活 動 を実 施 しよ う とす る国 は,当 該 放 送 の受 信 国 に 対 し遅 滞 な くそ の 意 思 を通 告 しな けれ ば な らず,当 該 受 信 国 の

   

請 求 が 有 る場 合 は,た だ ち に 同 国 と協 議 に入 らな けれ ば な らな い。

人 工 衛 星 に よ る国 際 直接 テ レ ビ放 送 活 動 は,前 項 の 条 件 が 満 た され,国 際 電 気 通 信 連合 の 関 連規 則 に 適合 す る協 定(又 は取 り決 め)に 基 づ き,か つ 本 原 則 に 準 拠 した 場 合 に 限 り 実 施 さ れ る 。(以 下 略)(傍 点 筆 者)

こ の よ うに 本 法 原 則 に は二 つ の 協 議 に 関 す る 原 則 が 含 ま れ て お り,そ れ ぞ れ, 国 際 直 接 放 送 活 動 一 般 に っ い て,ま た 当 該 活 動 を 開 始 す る場 合 に つ い て の,紛 争 回 避 手 続 と し て の 協 議 義 務 を 規 定 して い る 。,

2こ こ で は,「 放 送 衛 星 法 原 則 」 中 の 協 議 に 関 す る 原 則 の 成 立 経 過 に っ い て,検 討 す る 。

1972年8月,ソ 連 は,国 連 事 務 総 長 宛 の 書 簡 で,直 接 放 送 衛 星 に 関 す る 条 約 案4}を 公 表 し,同 案 が 国 連 で 審 議 さ れ る よ う に 求 め た 。 こ の ソ 連 提 案 を 受 け た 1972年 の 国 連 総 会 は,決 議2916(XXVII)を 採 択 し,こ の 条 約 案 に 直 接 触

4)U.N.Doc.A/8771.

この 条 約 案 の 第5条 は,外 国 向け 直 接 放 送 に つ い て は,受 信 国 の 同 意 が 必要 であ

る と して い た。

(3)

商 学 討 究 第34巻 第3号 71

れ る こと な く,宇 宙 空 間 平 和 利 用 委 員 会 に対 し,「国 際 協 定 を 締 結 す る 目 的 で 直 接 テ レ ビ放 送 衛 星 の 使 用 に 関 す る原 則 を 作 成 す るよ う要 請 す る」 と,勧 告 し

た 。

この 決 議 以 後,宇 宙 空 間平 和 利 用 委 員会 の下 部組 識 で あ る 直接 放 送 衛 星 作 業 部 会(後 に 宇 宙 法 律小 委 員会 の作 業 部会 へ と改 組 さ れ た)に お いて,法 原 則 案 作 成 作 業 が 行 な わ れ た 。 同 作 業 部 会 に は,新 ソ 連 案5},ア メ リ カ 案6),カ ナ ダ ・ ス ウ ェ ー デ ン 共 同 案7},及 び ア ル ゼ ン チ ン 案8,,の 各 原 則 案 が,提 出 さ れ た 。

こ れ ら の 案 文 に は か な り の 差 異 が 有 っ た が,

、 け る ア メ リカ 代 表Bennettの 発 言91以 後,

1975年 の国 連 総 会 第1委 員 会 にお ア メ リカ が 若 干 の 歩 み 寄 り を 示 し,同 年 の宇 宙 法律 小 委員 会 第2作 業 部 会 で は,両 案 並 記 や カ ギ カ ッ コ付 きの

5)U.N.Doc.A/AC.105/WG.3(V)/CRP.1.

こ の新 ソ連 案 は,外 国 向 け 直接 放 送に 対 す る,事 前 同 意 原 則(第5条),及 び 事 前 協 議原 則(第8条 第1,2項)を 規 定 して お り,受 信 国 の 国 家 主 権 の保 護 を,強 調 す る 案文 で あ る と言 え よ う。

6)ibid./CRP.2.

この ア メ リカ 案は,上 述 の 新 ソ連 案 の よ うな 事 前 同 意 原 則 や 事 前 協 議 原 則 を 持 た ず,直 接 放 送 に 関す る情 報 流 通 の 自 由を 基 本 と した 案 文(第4条)と,見 る こ とが で きよ う。 なお1紛 争解 決の ため の 協議 に 関 す る規 定(第10条)が,含 ま れ て い た 。 7)U.N,Doc.A/AC.105/WG.3/L.4.

この カ ナ ダ ・ス ウ ェ ーデ ン共 同 案 は,両 極 端 に対 立 す る上 述 の 新 ソ連 案 とア メ リ カ 案の 間 に,何 らか の 妥 協 点 を 見 出 そ う とす る もの と考 え られ る。 確 か に この 案文 は,受 信 国 の 同 意 権 と参 加 権 を 規 定 して い る(第5条)が,宇 宙 空 間平 和 利 用 委員 会 に お け る ス ウ ェ ー デ ン代 表 の 発 言(U.N.Doc.AIAC.105/PV.159,

162.)に よ れ ば,こ の 案 文 に お け る同 意 権 は 各 国 の 国 内 テ レ ビ放 送 制度 が 採 用 して い る よ うな 免 許 制 度 と,ま た 参 加 権 は 同 様 な 調 整 手 続 と,理 解 す る こ とが で き,上 述 の 新 ソ連 案 とは か な り趣 の 異 な った もの と言 え よ う。 な お この 案 文 は,電 波 の も れ 出 し(spill‑over)の 場合,、及 び この 原 則 が 遵 守 され な い 場合 の,関 係 国 間 の 協 議 に つ い て も規 定 して い る(第7,10条)。 この よ うに カ ナ ダ ・ス ウ ェ ー デ ン共 同 案 は,発 信 国 で あ る大 国 と の 関 係 に お け る事 前 同 意 権行 使 の 困 難 性 を 考 慮 し,受 信 国 であ る小 国の利 益 を,参 力[権を中心 に して,保 護 しよ う とす る もの と 考 え られ る。

8)U.N.Doc.AIAC.105/WG.3(V)/CRP.3.

この ア ル ゼ ンチ ン案 だ けが 条文 形 式 を と らず,25項 目か ら成 る 「問 題 の解 決 と解 決 案 」 を 含 ん で い た 。

9)U.N.Doc.AIC.1/PV.2049,p亙.21‑24.

Bennett発 言 の主 要 部分 は,次 の と お りで あ った 。

「新 しい宇 宙技 術 が もた らす 潜 在 的 な 衝 撃 に 対 して,受 信 国が 持 っ 憂 慮 の うち 正

当 な もの(1egitimateconcerns)に つ い て は,発 信 国 と して も,具 体 的 な保 証 を

(4)

72 宇 宙 国 際 法 にお け る協 議 制 度(2・ 完) 原 則 が 多 い もの の,一 応 案 文 の一 本化 が な され た エOl。

前 述 の2原 則 の う ち 「協 議 の 義 務 と権 利」 原 則 は,A案 ・B案 並 記 で,A案 は,新 ソ連 案第8条 第2項 及 び カ ナ ダ ・ス ウ ェ ー デ ン共 同案 第7条 に基 づ いて 作 成 され,意 図 され な い 地 域へ の 直 接 放 送 電波 の発 信 と な る場 合 の,協 議 の権 利 及 び 義務 を規 定 して い た。 一 方B案 は,こ の作 業 部 会 で 独 自 に作 成 さ れ た も の で,直 接 放送 活 動 か ら生 ず る問題 に 関 して の一 般 的 協 議 にっ いて 規 定 して お り,現 在 の 案文 に よ り近 い もの で あ っ た。 同様 に 「同 意 と参 加」 原 則11}は,各 国 間 の意 見 対 立 が 最 も激 し く,A案 ・B案 並 記 で あ っ た 。A案 は,カ ナ ダ ・ス

ウ ェ ー デ ン共 同 案 第5条 に基 づ いて 作 成 され,外 国 向 け 直 接 放 送 は,受 信 国 の 同 意 に基 づ いて 実 施 し,同 意 した受 信 国 は,適 当 な 取 り決 め に 基 づ き活 動 に参 加 す る権 利 を有 す る と され て いた 。一 方B案 は,ア メ リカ 案第4条 に 受 信 国 と の 協 議 制 度 を 加 え て 作 成 され た もの で,直 接 放 送 は,表 現 の 自由 に 関 す る規 則 と両 立 す る規制 た 服 して 実 施 され,か つ,受 信 国 の 同意 は不 要 だ が,受 信 国 と 'の 充 分 な 協 議 に 基 づ き実 施 され る とな

って い た 。

翌1976年 の宇 宙 法 律小 委 員 会 第2作 業部 会 で は,「 協 議 の 義務 と権 利 」 原 則

6

に っ い て一 応 の合 意 が得 られ た。 同原 則 は,前 年 のB案 を基 礎 に作 成 され,直 接 放 送活 動 か ら生 ず る問 題 に 関 して の一 般 的協 議 につ いて 規 定 して い た。 これ に対 し 「同意 と参加 」 原 則 は前 年 の 案文 の ま まで,A案 ・B案 並 記 で あ っ た12⊃ 。 さ らに1977年 の宇 宙 法 律 小 委 員 会 第2作 業 部 会 にお け る作 業 で は,ア メ リカ の 実 質 的 討 議 参 加 は得 られ な か っ た が,非 公 式 討 議13}に基 づ き,一 応 の 案 文 (非 公 式 妥 協 案)14)が 作 成 さ れ た 。 こ の案 文 の うち,前 年 まで 未 合 意 の 「同 意

与 え る 必 要 が 有 る 。」

10)N.N.Doc.AIAC.105/147,AnnexII.

11)こ の 原 則 が,後 述 す る よ う に,1977年 の 審 議 で,「 国 家 間 の 協 議 及 び 協 定 」 原 則 と な っ た 。

i2)U.N.Doc.A/AC.105/171,AnnexII.

13)こ の 非 公 式 討 議 に は,ア メ リ カ の 実 質 的 参 加 が 得 ら れ な か っ た ほ か,西 ド イ ツ,イ タ リ ア,イ ギ リス,我 が 国 等 も,妥 協 案 に 対 し反 対 す る か,も し く は 立 場 を 留 保 し て い る 。

14)U.N.Doc.AIAC.105/196,AnnexII.

(5)

商 学 討 究 第34巻 第3号

と 参 加 」 原 則 は,「 国 家 間 の 協 議 及 び 協 定 」 原 則 と な り,全 文 カ ギ カ ッ'コ付 き な が ら,現 在 の も の に か な り 近 い 案 文 と な っ た 。

1978年 以 後 も,宇 宙 法 律 小 委 員 会 を 中 心 に,法 原 則 案 作 成 作 業 が 続 け られ た が,あ ま り 進 展 は み られ な か っ た 。 こ の う ち 特 に 注 目 さ れ る の は,1979年 の 宇 宙 法 律 小 委 員 会 第18会 期 に,カ ナ ダ 及 び ス ウ ェ ー デ ン が,"CleanText"と 名 付 け ら れ た 新 提 案15)を 行 な っ た こ と で あ っ た 。 こ の 提 案 は,東 側 諸 国 及 び 発

展 途 上 国 の 多 く,一 部 の 西 側 諸 国 の 支 持 も 得 た が,ア メ リ カ 及 び 西 ド イ ッ 等 の 一 部 の 西 側 諸 国 が ,受 信 国 と の 協 定 を 義 務 付 け る こ と は 受 け 入 れ られ な い と い

う 従 来 か ら の 立 場 を 固 持 し,結 局 合 意 を み る に 至 ら な か っ た16⊃。

し か し198ユ年 の 宇 宙 法 律 小 委 員 会 に,ア ル ゼ ン チ ン,ブ ラ ジ ル,カ ナ ダ,チ リ,コ ロ ン ビ ア,イ ン ド,イ ン ドネ シ ア,イ ラ ク,ケ ニ ヤ,メ キ シ コ,ニ ジ ェ ー ル,及 び ヴ ェ ネ ズ エ ラ の12ケ 国 が 共 同 の ワ ー キ ン グ ・ペ ー パ ー17,18,を提 出 す る と,そ れ 腿 前 に は 採 ら れ て い な か っ た 多 数 決 に よ る決 着 と い う気 運 が 発 展 途 上 国 を 中 心 に 高 ま り,上 述 の12ケ 国 共 同 提 案 に 基 づ い た 「放 送 衛 星 法 原 則 」 が, 1982年 の 国 連 特 別 政 治 委 員 会 で の 審 議 を 経 て,同 年12月 の 国 連 総 会 で 採 択 さ れ た 亘9)。

3こ こ で は,「 放 送 衛 星 法 原 則 」 中 の 前 述 の2原 則 に お け る 協 議 制 度 の 特 徴 を,検 討 す る 。

15)U.N.Doc.A/AC.105/C.2/L.117.

この テ キス トは,前 年 か らの 残 さ れ た 問 題 の うち,「 番 組 内 容 」,「不 法 な/許 容 さ れ な い 放 送 」 原 則 及 び 前 文 中 の 未 合意 の 部分 を すべ て 削 除 し,「 国 家 間 の 協 議 及 び 協 定 」 原 則 に よ り,一 括 妥 協 を は か ろ うとす る もので あ っ た 。

16)一 般 的 協 議 に つ い て 規 定 し,従 来合 意 の で き て い た 「協 議 の 義 務 と権 利 」 原 則 に, 未合 意 の 「国家 間の 協議 及び 協定」 原 則 と の 関係 で,全 文 カ ギ カ ッコが 付 け られ た 。 17)U.N.Doc.A/AC.105/C.2/L.131.

この テ キ ス トは,前 文 を 除 いて,採 択 さ れ た法 原 則 と 同一 の もの で あ った 。 18)従 来 の 法 原 則 案 中 の 「紛 争 の平 和 的解 決 」 原 則 は,平 和 的紛 争 解 決 手 続 の 第1段 階

と して の 協 議 義 務 を 含 ん で い たが,本 テ キ ス トの 「紛 争 の平 和 的解 決 」 原 則 で は , 確 立 さ れ た平 和 的 紛 争 解決 手 続 と い う語 句 に 置 き換 え られ,協 議 とい う文 言 は 削 除

さ れて い る。

19)こ の法 原 則 の 採 択 に は,潜 在 的 発 信 国 た る ア メ リカ,西 ドイ ツ,イ ギ リス ,我 が 国

等 が反 対 し,ま た審 議 に重要 な役 割を 果 た して きた オ ー ス ト リア,カ ナ ダ,ス ウェ ー

デ ン等 が 棄 権 したた め,法 原 則 の 実 効 性 は 大 い に 懸 念 され る。

(6)

74 宇 宙 国 際 法 に お け る協 議 制度(2・ 完)

ま ず 「協 議 の 義 務 と 権 利 」 原 則 で あ る が,国 際 直 接 放 送 活 動 を 実 施 して い る 発 信 国 又 は受 信 国 の,一 方 的 請 求 に 基 づ い た,当 該 活 動 に 関 し て の 協 議 義 務 を, 規 定 して い る。 こ の 原 則 に お け る 協 議 制 度 は,国 際 直 接 放 送 活 動 が,受 信 国 の' 利 益 に 対 す る損 害 と な る こ と を 防 止 し よ う と す る も の と 思 わ れ20⊃,そ の 意 味 で, 紛 争 回 避 手 続 と し て の 協 議 の 権 利 及 び 義 務 と,考 え られ よ う。

次 に 「国 家 間 の 協 議 及 び 協 定 」 原 則 で あ るが,国 際 直 接 放 送 活 動 を,国 際 電 気 通 信 連 合 の 関 連 規 則 に 適 合 す る 協 定 に 基 づ か せ,か つ そ の た め の 調 整 手 続 と して,発 信 国 と受 信 国 に 協 議 を実 施 させ よ う とす る も の で あ る。 前 述 の よ う に, 前 者 の 協 定 に つ い て は,現 在 で も い く っ か の 潜 在 的 発 信 国 が 反 対 して い る が, 発 信 国 と 受 信 国 の 協 議 義 務 に っ い て は,ほ とん ど の 国 の 合 意 す る と こ ろ と 思 わ れ る21)。

し た が っ て 本 原 則 に お け る 協 議 制 度 は,国 際 直 接 放 送 活 動 に お け る 発 信 国 と 受 信 国 相 互 の 利 益 共 同 に 基 づ い て,両 国 の 利 害 を 事 前 に 調 整 し よ う と す る も の と 思 わ れ,か つ 同 時 に,将 来 発 信 国 と な る 能 力 を ほ と ん ど 有 し な い 一 方 的 受 信 国 の 利 益 に 対 す る 損 害 を,防 止 し よ う と す る も の と考 え ら れ る22}。 ま た 本 原 則 は,新 ソ連 案 が 規 定 して い た よ う な 番 組 内 容 そ の も の に 対 す る 実 質 的 な 規 制 で は な く,協 議 と い う手 続 的 な 規 制 の も と に 国 際 直 接 放 送 を 位 置 付 け よ う とす る も の で あ り23),そ の 意 味 で,紛 争 を 事 前 に 回 避 す る た め の 手 続 と し て の 協 議 制 度 と,見 る こ と が で き よ う 。

な お こ の 「国 家 間 の 協 議 及 び 協 定 」 原 則 は,協 議 の 前 提 と して,発 信 国 は 受 20)受 信 国 の 意 思 を 全 く無 視 した 外 国 か らの一 方 的,継 続 的 か つ大 規 模 な 直 接 放 送 は,

受 信 国 の 文 化 的 一 体 性(culturalintegrity)を 保 つ とい う 自由 な統 治 権 を侵 害 す る と い う立 場 を とれ ば,本 原 則 に お け る協 議 制 度 は,受 信 国 の 権 利 に 対 す る 侵 害 を 防止 しよ うとす る もの と,考 え られ る。

な お,拙 稿 「放 送 衛 星 に よ る直 接 放 送 と国 際 法 」 『一 橋 論 叢 』,第85巻 第6号, 1981年,141‑142頁 を 参 照 。

21)1979年 の ア メ リカ の ワ ー キ ン グペ ーパ ー(U.N.Doc.AIAC.105/C.2/L.

118.)も,発 信 国 の 協 議 義 務 を 規 定 して い た 。

22)注20)と 同 様 な 立 場 を とれ ば,一 方 的 受 信 国 の 権 利 に 対 す る侵 害 を 防 止 しよ うとす る もの と,考 え られ る。

23)広 部和 也 「放 送 衛 星 の 番 組 内容 に対 す る規 制 」 『放 送 衛 星一 そ の 法 制 度 的 研 究一 』,

日本 放 送 出 版 協会,1981年,138‑142頁 。

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商 学 討 究 第34巻 第3号

信 国 に 対 し,直 接 放 送 実 施 の 意思 を 「事前 通 告 」 す る と規 定 して い るが,直 接 放 送 活 動 の 影 響 を 判 断 す る機 会 を与 え る手 続 と して 注 目 され る。 また 本 法原 則 中 の 「国 連へ の 通 報」 原 則 は,国 連事 務 総 長へ の 情 報 提 供 を 規 定 して い るが, この原 則 に も,「 可 能 な最 大 限 度 まで」 とい う限 定 句 が 付 け られ て い る。

最 後 に,各 原 則 と も協 議 の方 法 や手 続 に関 す る規 定 が 必 し も充 分 で な い こと は,前 述 の3条 約 と同 様 で あ る 。

VI「 リモー トセ ン シ ング 法 原 則 案」 に お け る協 議 制度

1宇 宙 国 際 法 の 領 域 に お い て,現 在 国 連 を 中 心 に 作 成 途 上 に あ る法 原 則 は,

「リ モ ー トセ ン シ ン グ 法 原 則 案24〕」 で あ る 。 こ の リモ ー トセ ン シ ン グ25)に 関 す る 法 律 問 題 は,1974年 の 総 会 決 議3234(XXIX)以 後,宇 宙 法 律 小 委 員 会 を 中 心 に 検 討 が 継 続 して い る 。 こ こで は,現 在 ま で に作 成 さ れ た 法 原 則 案26}の う ち, 協 議 に 関 す る 原 則 に つ い て 検 討 す る 。

ま ず 第XIV原 則(全 文 カ ギ カ ッ コ 付 き)で あ る が,リ モ ー トセ ン シ ン グ ー 般 に つ い て の,協 議 の 義 務 と 権 利 を 規 定 して い る。 同 原 則 は,次 の よ う に 規 定 す る 。

リモ ー トセ ン シ ング を実 施 す る国 は,そ の 領域 が探 査 され る国 の 請求 が あ る場 合,国 際 協 力 及 び国 家 間 の友 好 関 係 を増 進 し,か つ この 活動 か ら得 られ る相 互 の 利 益 を増 大 す るた め に,当 該 活 動 に つ い て,特 に デ ー タ及 び情 報 の

  コ

配 布 につ いて,遅 滞 な く協 議 しな けれ ば な らな い 。(傍 点 筆 者)

ま た 第XVII原 則(全 文 カ ギ カ ッ コ付 き)で あ る が,リ モ ー トセ ン シ ン グ 法 原 則 案 の 適 用 か ら生 ず る紛 争 の,平 和 的 解 決手 続 の第1段 階 と して,関 係 締 約 国 間 の協 議 を義 務 付 けて い る。 同 原 則 は,次 の よ うに規 定 す る。

24)こ の 法 原 則 案 に は,現 在 ま で の と こ ろ,正 式 な 名 称 は 付 け ら れ て い な い 。

25)リ モ ー トセ ン シ ン グ の 特 徴 に つ い て は,拙 稿 「 人 工 衛 星 に よ る 遠 隔 探 査(リ モ ー ト セ ン シ ン グ)と 国 際 法 」 『一 橋 研 究 』,第5巻 第2号,1980年,70‑71頁 を,参 照 さ れ た い 。

26)U.N.Doc.A/AC.105/320,AnnexI.

(8)

76宇 宙国 際法 に お け る協 議 制 度(2・ 完)

   

本 原 則 の適 用 か ら生 じた い か な る紛争 も,関 係 締 約 国 間 の 協 議 に よ って, 解 決 され な けれ ば な らな い。 当 該 協 議 に よ り,相 互 に受 諾 可 能 な 解 決 が 得 ら れ な い場 合 は,関 係 締 約 国 の合 意 す る他 の確 立 され た平 和 的 紛 争解 決手 続 に よ り,解 決 され な け れ ば な ら な い 。(傍 点 筆 者)

こ の よ う に,本 法 原 則 案 に は,二 っ の 協 議 に 関 す る 原 則 が 含 ま れ て い る 。 前 者 の 第XIV原 則 に つ い て は,リ モ ー トセ ン シ ン グ 活 動 一 般 に っ い ゼ の,紛 争 回 避 手 続 と して の 協 議 義 務 を 規 定 し て い るbま た 後 者 の 第XVII原 則 は,紛 争 の 平 和 的 解 決 手 続 の 第1段 階 と し て の 協 議 義 務 を,規 定 して い る の で あ る 。

2こ こで は,「 リモ ー トセ ン シ ン グ 法 原 則 案 」 中 の 協 議 に 関 す る 原 則 の 審 議 経 過 に つ い て,検 討 す る 。

前 述 の 国 連 総 会 決 議3234は,宇 宙 空 間 平 和 利 用 委 員 会 に 対 し,リ モ ー トセ ン シ ン グ に 関 す る 法 律 問 題 の 検 討 を 行 な う よ う要 請 し た の で あ る が,こ の 検 討 の た め に,宇 宙 法 律 小 委 員 会 の 下 部 組 織 と して,リ モ ー トセ ン シ ン グ作 業 部 会 が 設 置 さ れ た 。 こ の 作 業 部 会 は,1975年 の 宇 宙 法 律 小 委 員 会 第14会 期 か ら,法 原 則 案 作 成 作 業 を 開 始 し た が,同 作 業 部 会 に は,ア ル ゼ ン チ ン ・ ブ ラ ジ ル ・メ キ シ コ ・ ヴ ェ ネ ズ エ ラ共 同 案27,,フ ラ ン ス ・ソ 連 共 同 案28),及 び ア メ リ カ 案29)の 各 原 則 案 が,提 出 さ れ た 。

1976年 か ら1978年 の 宇 宙 法 律 小 委 員 会 に お け る 審 議 で は,全 文 カ ギ カ ッ コ付 27‑)U.N.Doc.A/C.1/1047.

この ラテ ンア メ リカ 共 同 案 は,問 題 を 天 然 資 源 に対 す る リモ ー トセ ン シ ン グに 限 定 す る(第1条)の で,天 然 資 源 そ の もの に対 す る主 権 に よ り被 探 査 国 は そ の 法 益 保 護 を主 張で き ると し,そ の 手 段 と して,デ ー タ収 集 に対 す る同 意 権(第5条)及

び 参 加権(第7条)を,規 定 して い る。

28)U.N.Doc.AIAC.105/C.2/L.99.

この フ ラ ンス ・ソ連 共 同 案 も,上 述 の ラ テ ン ァ メ リカ共 同 案 と同様 に,問 題 を 天 然 資源 に対 す る リモ ー トセ ンシ ング に限 定 して い る(第1,3条)が,被 探 査 国の 権 益 保 護 を 目的 とす る 同意 権 行 使 の 対 象 を,デ ー タの 収 集 そ の もので は な く,第 三 者 へ の通 報 に 限定 して い る点(第4条,第5条a項)が,特 徴 と言 え る 。 29)U.N.Doc.A/AC.105/C.2/L.103.

この ア メ リカ 案 は,上 述 の2案 の よ うに 探 査 活 動 を 天 然 資 源 の み に 限定 す る こ と

は,技 術 的 及 び 経 済 的 に困 難 で あ る(第1,3条)と し,ま た 同 意権 等 に つ い て は

規 定が無 いの で,情 報 流 通 の 自由 を 促 進 しよ う とす る立 場 に立 つ もの(第5条)と,

(9)

商 学 討 究 第34巻 第3号 77 き の 原 則 が 大 部 分 で あ っ た が,第1原 則 か ら 第XVII原 則 ま で,一 応 の 案 文 が 作 成 さ れ た 。 現 在 の 第XIV原 則(当 時 は,順 序 の み が 入 れ 替 わ り,第XV 原 則 と な っ て い た)及 び 第XVII原 則 は,全 文 カ ギ カ ッ コ 付 き な が ら,1978 年 の 作 業 部 会 で 作 成 さ れ た 。 そ の 後 今 日 ま で の 作 業 部 会 で は,案 文 の カ ギ カ ッ

コ を は ず す 作 業 が 行 な わ れ た が,各 国 と も 自 国 案 文 に 沿 っ だ 主 張 を 繰 り 返 し, 法 原 則 案 作 成 作 業 は あ ま り進 展 して い な い30)。 こ の う ち 注 目 さ れ る の は,1981 年 の 作 業 部 会 に,メ キ シ コ が,一 括 妥 協 の た め の ワ ー キ ン グ ・ペ ー パ ー31}を 提

出 し た こ とで あ っ た 。 こ の ワ ー キ ン グ ・ペ ー パ ー は,今 後,放 送 衛 星 に 関 す る 前 述 の カ ナ ダ ・.スウ ェ ー デ ン の"CleanText"の よ う な 役 割 を 果 た す の で は

な い か と,思 わ れ る 。

以 上 の よ う に,リ モ ー トセ ン シ ン グ 法 原 則 案 作 成 作 業 は,各 国 の さ ま ざ ま な 意 見 対 立 に よ り,最 終 段 階 で 暗 礁 に 乗 り 上 げ て し ま っ て い る 。 しか し,リ モ ー トセ ン シ ン グ 活 動 を 行 な っ て い る ア メ リ カ ・ ソ 連 二 国 と も,探 査 国 と 被 探 査 国 の 協 議 を 義 務 付 け る こ と に は 反 対 して い な い と 思 わ れ る し,ま た 紛 争 解 決 の た め の 協 議 に つ い て も,'同 様 に,反 対 して い な い と 思 わ れ る32}。 一 方 国 際 法 理 論 の 上 か ら は,放 送 衛 星 の 場 合 以 上 に,被 探 査 国 の 正 当 な 憂 慮 を,探 査 国 は 充 分 に 考 慮 す る必 要 が 有 る と考 え ら れ る33,。 し た が っ て,リ モ ー トセ ン シ ン グ 法 原

考 え ら れ る 。

30)近 年 の 審 議 で は,リ モ ー トセ ン シ ン グ に よ っ て 得 られ た デ ー タ 及 び 情 報 を ,「 第1 次 デー タ 」(primarydata)と 「解 析 さ れ た 情 報 」(analysedinformation)と に 区

別 し て(第1原 則),前 者 の 「第1次 デ ー タ 」 に つ い て は,被 探 査 国 の 適 時 か つ 無 差 別 な ア ク セ ス(access)を 認 め る(第XII原 則,一 部 分 カ ギ カ ッ コ 付 き)と い う よ う に,両 者 に 対 し て 異 な っ た 取 り扱 い を す る と い う 傾 向 が,強 く な6て き て い る 。

31)U.N.Doc.A/AC、105/C.2/WGIRS(1981)/WP.2.

こ の ワ ー キ ン グ ・ペ ー パ ー は,第XIII原 則 に,探 査 国 と 被 探 査 国 間 の 情 報 の 提 供 に 関 す る 協 議 を,ま た 第XVII原 則 第2,3項 に,紛 争 の 平 和 的 解 決 の た め の 協 議 を,規 定 して い る 。

32)1。A.Vlasic,"TheEvolutionoftheInternationalCodeofConduct

toGovernRemotoSensjngbySatellite",ハ ηηα誌 σ ノ1か α乃dSρ α6θ Lα ω,Vol。III(1978),1979,p.570。

33)拙 稿 前 掲 論 文 「人 工 衛 星 に よ る 遠 隔 探 査(リ モ ー トセ ン シ ン グ)と 国 際 法 」,75一

(10)

78 宇 宙 国 際 法 に お け る 協 議 制 度(2・ 完)

則 案 中 の 第XIV原 則 及 び 第XVII原 則 は,現 在 ま で の と こ ろ 全 文 カ ギ カ ッ コ付 きで はあ るが,少 な くと もそ こに規 定 され て い る協 議 制 度 につ いて は,各 国 の 合 意 す る と こ ろ と考 え られ,ほ ぼ そ の ま ま の形 で,条 文 化 され る もの と思 わ れ る。

3こ こで は,「 リモ ー トセ ン シ ン グ法原 則 案」 中 の 前 述2原 則 に お け る協 議 制 度 の 特 徴 を 中心 に,検 討す る。

ま ず第XIV原 則 で あ るが,リ モ ー トセ ン シ ン グ に よ り 自国 領 域 が 探 査 さ れ る国 の一 方 的請 求 に基 づ く,そ の活 動 に 関 して の(「 特 に デ ー タ 及 び 情 報 の 配 布 にっ いて 」 とい う文 言 が カギ カ ッ コ付 きで 加 え られ て い る),探 査 国 の 協 議 義 務 を規 定 して い る。 前 述 の よ うに,リ モ ー トセ ン シ ン グ活 動 の 開始 にっ いて の 被 探 査 国 の 同意 権 につ いて は,必 ず し も各 国 の合 意 が 得 られて い な いが,探 査 国 と被 探 査 国 の協 議 を義 務 付 け る こ とに つ い て は,ア メ リカ ・ソ連 を含 む 各 国 の合 意す ると ころ と思 われ る。 したが って本 原 則 に お け る協 議制 度 は,リ モー トセ ン シ ン グ活 動 にお け る探査 国 と被 探 査 国 相 互 の利 益 共 同(特 に デー タ及 び 情 報 の 配 布 等 に関 して の)に 基 づ いて,両 国 間 の利 害 を事 前 に調 整 しよ う とす る もの で あ り,か つ 同 時 に,将 来 探 査 国 と な る能 力 を ほ とん ど有 しない一 方 的 被 探 査 国 の 利 益 に 対 す る損 害 を,防 止 しよ う とす る も の と思 わ れ る34,。この意 味 で,紛 争 を 事 前 に回 避す るた め の手 続 と して の協 議 制 度 と,考 え られ る。

な お,上 述 の協 議 の前 提 と して,第XIII原 則 が,探 査 国 に よ る 被 探 査 国 及 び 国 連事 務総 長へ の,探 査 意 思 の 「事 前 通 告 」 を規 定 して い る。 この 「事 前通 告 」 は,探 査 活動 の影 響 を 判 断 す る機会 を与 え る手 続 と して 重 要 と思 わ れ るが, 全 文 カ ギ カ ッ コ付 き の ま ま で あ る。 ま た 第VII原 則 第2項 は,「 宇 宙 条 約 」

78頁 。

34)前 述 の 放 送 衛 星 の 場 合 と同 様 に,被 探 査 国 の 意 思 を 全 く無 視 して ,継 続 的 か つ大 規 模 に リモ ー トセ ンシ ン グ活 動 を 実 施 す る こ とは,被 探 査 国 の 自由 な 統 治 権 を侵 害 す る とい う立 場 を とれ ば,本 原 則 に お け る協 議 制 度 は,被 探 査 国 の 権 利 に対 す る侵 害 を 防 止 しよ う とす る もの と,考 え られ る。

な お,注20)及 び 拙 稿 前 掲 論 文 「人 工 衛 星 に よ る 遠 隔 探 査(リ モ ー トセ ン シ ン

グ)と 国 際 法 」,75‑77頁 を 参 照 。

(11)

商 学 討 究 第34巻 第3号 79

第11条 に 基づ い た 情報 提 供 を,規 定 して い る。

次 に 第XVII原 則 で あ るが,本 法 原 則 の 適 用 か ら生 ず る紛 争 の,協 議 に よ る解 決 を 規 定 し,当 該 協 議 に よ り解 決 され な い場 合 は,そ の他 の確 立 され た平 和 的 紛争 解 決手 続 に よ り解 決 す る と,規 定 して い る。 したが って 本 原 則 は,リ モ ー トセ ン シン グ法 原 則 案 の 適 用 か ら生 ず る紛争 の,平 和 的解 決 手 続 の 第1段 階 と して,関 係 締 約 国 間 に協 議 を 義 務 付 けて い る。 本 原 則 は,協 議 の 対 象範 囲 を 「本 原 則 の 適 用 か ら生 じた いか な る紛 争」 と規 定 して い るので,そ の 対 象 範 囲 は 比 較 的 広 い と,考 え られ る。

な お,協 議 に 関す る各 原 則 と も,そ の 方 法 や手 続 に関 す る規 定 が 必 ず し も充 分 で な い こ とは,前 述 の 各 条 約 及 び 法 原 則 と同様 で あ る。

VII協 議 制 度 の 意 義 と機 能

1一 般 国 際 法 上,「 協 議 」(consultation)の 法 的 性 質 に つ い て は,必 ず しも 明 らかで は な か っ た と言 え る35〕 。 ま た,国 際条 約 に基 づ いて,関 係 締約 国 間 の協 議 を義 務 付 け る こ と も,第1次 世 界大 戦以 前 は,ほ とん ど存 在 しな か っ た。 しか し,第2次 世 界大 戦以 後 は,国 際 条 約 に基 づ く協 議 の 義 務付 け が,か な り増 加 して きて い る。 特 に,安 全保 障 に関 す る い くつ か の 国 際 条 約 中 で,こ の 協 議 の 義 務 が 規 定 され るよ うに な って き た 。

た とえ ば,1949年 の 「北 大 西 洋 条 約」 第4条 は,「 締約 国 は,い ず れ か の 締 約 国 の 領 土保 全,政 治 的独 立 又 は安 全が 脅 か され て い る と,い ず れ か の 締約 国 が 認 め た と きは い つ で も,協 議 す る」(傍 点 筆者)と 規 定 して お り,ま た1955 年 の い わ ゆ る 「ワル シ ャワ条 約 」 第3条 第3文 も,「 締約 国 は,締 約 国 の1又 は2以 上 の 国 に 対 す る武 力 攻 撃 の危 険が 生 じた と いず れ か の 締 約 国 が 認 め た と きに は,そ の 共 同 防衛 を確 保 し,か つ,平 和 と安 全 を 維 持 す るた め に,そ の都

   

度 遅 滞 な く相 互 に協 議 す る」(傍 点 筆者)と 規 定 して い る。 さ ら に1960年 の い わ ゆ る 「日米 安 全保 障 条 約」 第4条 も,「締 約 国 は,こ の 条 約 の 実 施 に関 して

35)LOppenheim‑H,Lauterpacht,厩 θmα 古εoπαZLα ω ダVol.II.Dis‑

putes,WarandNeutrality,7thed.,London,1952,pp.7‑8.

(12)

80宇 宙 国 際 法 に お け る 協 議制 度(2・ 完)

   

随 時 協議 し,ま た,日 本 国 の安 全 又 は極 東 に お け る国 際 の平 和 及 び安 全 に対 す る脅威 が生 じた とき はいっ で も,い ず れか一 方 の 締 約 国 の 要 請 に よ り協 議 す る」

(傍 点 筆 者)と 規 定 して い る36}g

これ らの安 全保 障 た 関す る条 約 中 の協 議 は,外 部 の第 三 国 か ら加 え られ る危 険 に対 抗 して,締 約 国 の共 同 の 防 衛 体 制 を と るた め の文 字 ど お りの締 約 国 間 の

「 相 談 」 で あ って,そ の形 式 的 手 段 は,条 約実 施 の た め の交 渉 と同一 の もの と 考 え られ る 。

一 方 ,学 説 の上 で は,「 関 税 と貿 易 に 関 す る一 般 協 定 」(GATT)の 諸 制 度 の 検 討 に よ り,「 協 議」 の 法 的性 質 を 明 らか に した もの が 有 る37)。この 説 に よれ ば,「 協 議」 は,「 す で に な され た 国 際取 り決 めの 関 係 事 項 で,そ の 具 体 的 実施 にあた って 当事 国間で すで に委任 され た権 限 内 の事 項 にっ いて の討 議 」 と,

され る。 しか しこ の説 とて も,あ'る ひ とっ の国 際協 定 の分 析 か らの見 解 に す ぎ ず,必 ず し も 「 協 議」 の法 的性質 を 充分 に 明 らか に した もの と は考 え られ な い。

と ころ で,近 年 にお い て この 「協 議」 が注 目 され る よ う に な って きた の は, 国 際 的 な 人 間 環 境 の保 護 の 分野 で あ る。 た と えば,1972年 の 「海 洋 投 棄規 制条 約」 第5条 第2項 は,締 約 国が 有 害物 質(永 銀,カ ド ミウ ム,高 レベ ル放 射性 廃 棄物 質)の 投 棄 に対 して特 別 許 可 を 出す 前 に,そ の 投 棄 によ り影 響 を受 け る

お そ れ の 有 る他 国 及 び 国 際 機 関(政 府 間 海 事 協 議 構 関,IMCO)と 事 前 に協

議 し な け れ ば な ら な い,と 規 定 して い る し,ま た,1974年 の 「陸 地 起 因 海 洋 汚 36)こ の 条 約 に は,「 条 約 第6条 の 実 施 に 関 す る交 換公 文 」 が,付 け られ て い る 。 同 交 換 公 文 は,「 合 衆 国 軍 隊 の 日本 国 へ の 配 置 に お け る 重 要 な 変 更,同 軍 隊 の 装 備 に お け る 重 要 な 変 更 並 び に 日本 国 か ら行 な わ れ る戦 闘作 戦行 動(前 記 の 条 約第5条 の 規 定 に 基 づ い て 行 な わ れ る もの を 除 く)の た め の 基地 と して の 日本 国 内 の施 設及 び 区 域 の 使 用 は,日 本 国 政 府 との 事 前 の 協 議 の 主 題 とす る」(傍 点 筆 者)と な って い る が,こ こに お け る事 前 協 議 は,装 備 等 の 重 要 な 変 更 を 実 施 しよ う とす る ア メ リカが 日本 に 対 し要 請 す る もの で あ る。一 方本 稿 で検 討 して い る 協 議 は,宇 宙活 動 か ら影 響 を 受 け る国 が,当 該 活 動 国 に 対 し要 請 す る もの で あ り,前 述 の 協 議 と は趣 旨が 異 な る と 言 え よ う。

37)S.L.Kass,"ObligatoryNegotiationsinInternationdlOrganizations",

(hπ αd̀αη}セ αrわooんoゾ1η6θrη α翻oπαZLα ω,VoLIII,1965,pp.45‑46.

深 津 栄 一 「紛 争 処 理 と交 渉 義 務 」 『紛 争 の平 和 的解 決 と 国 際法 』,皆 川 涜 先 生 還 暦

記 念 論 文 集,北 樹 出 版,1981年,251頁 。

(13)

商 学 討 究 第34巻 第3号 81 .

染 防 止 条 約」(い わ ゆ る 「パ リ条 約」)第9条 第1項 は,一 定 の物 質 に よ る陸 地 起 因 の海 洋 汚 染が,1又 は それ 以 上 の他 締 約 国 の 利 益 を侵 害 す る お それ が 有 る .

   

場 合 は,関 係 締 約 国 は,い ず れ か の 要 請 によ り,協 力 協 定 の 交 渉 の た めの 協 議 を行 な う と,規 定 して い る。

こ の よ うな 環境 保 護 に関 す る条 約 中 の協 議 制 度 は,あ る国 の行 為が 関係 国 に 対 して ど の よ うな影 響 を もた らす か を判 断 す る機 会 と材 料 を 与 え(計 画 等 の事 前 通 告),関 係 国 間 の 交 渉 を 通 じて 望 ま し い解 決 策 は 何 で あ る か を 探 る こ と (「協 議 」)を 目 的 とす る,調 整 原 理 で あ る と 言 え よ う38}。何 故 な らば,こ の 環 境 保 護 の分 野 に お いて は,事 が らの 性 質 上,環 境 損 害 の事 前 防止 は事 後 救 済 に優 り,上 述 の協 議 制 度 は,ま さ に この 事 前 防 止 の た め に機 能す る ひ とつ の重 要 な 手 続 で あ る と,言 え るか らで あ る39MOI。

さて,上 述 の事 前 調 整 の た め の 手 続 とい う考 え方 は,本 稿 の対 象 で あ る宇 宙 開 発 の分野 に おいて も,当 て は ま る もの と思 わ れ る。 この 分 野 に お け る活 動 は, 巨大 な資 本 及 び組 織 を 必 要 とす るの で,損 害 発生 の事 前 防止 が不 可 欠 で あ り, その 目的 の ため に関 係 国 間 の 利 害 を 調 整 す る手 続 と して,つ ま り紛 争 発 生 を 事 前 に 「回 避 」 す る手 続 と して,協 議 制 度 が 位 置付 け られ る と考 え られ よ う4b。

2こ こで は,こ れ まで の各 条 約 や 法原 則(案)の 分 析 を踏 ま えて,宇 宙 国 際 法 に お け る協 議 制 度 の 特 徴 を,第1に 協 議 の 対 象,第2に 協議 の手 続,そ し て 第3に 協 議 の機 能 とい う3つ の 観 点 か ら,検 討 してみ よ うと思 う。

38)C.B.Boume."ProcedureintheDevelopmentofInternationalDrainage

Basins:TheDutytoConsultandtoNegotiate",(hη α(涜απyご αrboo々oゾ

1撹 θrηα麗oπ αZLα ω,Vol。X,1972,p.230.

39)岩 間 徹 「国 際 環 境 法 に お け る 事 前 通 告 。 協 議 制 度 」 『一 橋 論 叢 』,第85巻 第6号,

1981年,42頁 。

40)ビ ル ダ ー は,紛 争 回 避 及 び 管 理(disputeavoidanceandmanagement)の た め の 実

体 法 及 び 手 続 法 の 整 備 の 必 要 性 を,指 摘 し て い る 。 cf。R.B.Biider,rTheSettlementofDisputesinthefieldofthe

InternationalLawoftheEnvironment",Recμ θεZdesα)μrs,Tome144 (1975‑1),ヱ976,p.149.

41)F.L.Kirgis,Jr.,Pr̀or(bπsω 琵ὰ̀oπ̀π1η ホerη α麗oπ αZ加 ω,Char‑

lottesvi11e,1983,PP.197‑198.

(14)

82 宇 宙 国 際 法 に お け る協 議制 度(2・ 完) 11脇 議 の対 象

「宇 宙 条 約」 第9条 第3,4文 は,「 他 当 事国 の活 動 に 潜 在 的 に 有 害 な 干 渉 を及 ぼす お それ の 有 る当 事 国 の 宇 宙活 動 」 を,協 議 の対 象 と して い る。本 稿 の 関 係 箇 所 で も指 摘 した よ うに,確 か に 「潜 在 的 に有 害 な 干 渉」 の 範 囲 は不 明確 で あ るが,少 な く と もそ の 「お そ れ」 の段 階 か ら協 議 の 対 象 と して い るの で あ

の  

り,関 係 国 の 利 害 を 事 前 に 調 整 しよ うとす る もの と,考 え られ る。

一 方 「月 協 定」 第8条 第3項 は ,「 締 約 国 の活 動 が,他 締 約 国 の 活 動 に 対 す る干 渉 とな る場 合 」 を,ま た第15条 第2項 は,「 締 約 国 が,協 定 上 の 義 務 違 反 又 は 権 利侵 害 が 有 る と信 ず る場合 」 を,協 議 の 対 象 と して い る。 この 協定 につ い て も,1締 約 国 が 「 信 ず る場 合 」 を協 議 の 対 象 と して い るの で,関 係 国 の利

  コ

害 の 事 前調 整 的性 格 を有 す る もの と,考 え られ る。 さ らに,「 協 定 上 の 義 務 違 反 又 は 権 利侵 害 が有 る と信 ず る場 合」 は,非 宇 宙 活 動 国 で あ って も協 定 の締 約 国 とい う地 位 に基 づ いて 協 議 に加 わ る こ とが で き るの で,前 述 の 「宇 宙条 約 」 よ り も,非 宇 宙 活 動 国 が 介 入 し うる余 地 が 広 い と思 われ る。

次 に 「放 送衛 星 法 原 則 」 中 の 「協 議 の 義 務 と権 利 」原 則 は,「 人 工 衛 星 に よ る 国 際 直接 テ レ ビ放 送 活 動 に関 し」 協 議 す る と規 定 して お り,特 に 当該 活 動 を 実 施 しよ うとす る場 合 は,「 国 家 間 の協 議及 び協 定 」 原 則 に よ り,協 議 の 対 象 と さ れ る。 ま た 「リモ ー トセ ン シ ン グ 法 原 則 案 」 第XIV原 則 は,「 探 査 活 動 にっ いて(カ ギ カ ッ コ付 きで,特 にデ ー タ及 び情 報 の配 布 に つ い て)」 協 議 す る と,規 定 して い る。 これ らの法 原 則(案)中 の協 議 も,発 信 国 と受 信 国 の,

の  

又 は探 査 国 と被 探 査 国 の 利 害 を,事 前 に調 整す る とい う性 格 を持 つ もの と考 え られ る。 特 に,「 国 家 間 の協 議 及 び協 定 」 原 則 は,直 接 放 送 活 動 を 実 施 しよ う

の  

とす る場 合 を協 議 の 対 象 と して い るの で,利 害 の事 前 調 整 とい う性 格 は,よ り い っ そ う明 らか で あ る と思 わ れ る。

そ して,「 宇 宙 救 助 返 還 協 定 」 第2条 第4文 は,「 緊 急 着 陸 等 を 行 な っ た 宇

宙 機乗 員の 捜索救 助活 動 に お け る,打 上 げ機 関 の 当 該 着 陸 国 へ の 協 力 活 動」 を,

協 議 の対 象 と して い る。 本 稿 の 関 係箇 所 で も指摘 したが,本 協 定 にお け る協 議

は,着 陸 国 の属 地 主 権 と打 上 げ国 の 宇 宙機 に対 す る属 人 主 権 が衝 突す る の を防

(15)

商 学 討 究 第34巻 第3号83

   

止 しよ う とす る手 続 で あ り,そ の 意 味で,利 害 の 事 前 調 整 的 性 格 を 有 す る もの と,考 え られ る。

以 上 の よ うに,宇 宙 国 際 法 に お け る協 議 を,そ の対 象 と い う観点 か ら見 て く

   

る と,こ こに お け る協 議 は,関 係 締 約国 間の 利 害 を,事 前 に調 整 しよ う とす る も の と い う特 徴 が,明 らか に な る と思 わ れ る。

② 協 議 の手 続 』

まず,協 議 の請求 及 び応 諾 の手 続 で あ るが,「 宇 宙 条 約 」 第9条 第3,4文,

「 月 協 定 」 第8条 第3項,「 放 送 衛 星 法 原 則 ⊥ 中 の 「国 家 間 の 協 議及 び協 定 」 原 則,及 び 「リモ ー トセ ン シ ング法 原 則 案 」 第XIV原 則 は,締 約 国 た る潜 在 被 害 国(活 動 か ら影 響 を受 け る国,受 信 国,被 探 査 国)が,協 議 を一 方 的 に請 求 す る こ とが で き る と して お り,ま た 締 約 国 た る潜在 加 害 国(活 動 を実 施 す る国, 発信 国,探 査 国)に は,当 該 協 議 の 請求 に応 ず る義 務 が 有 る と して い る42,。

これ に 対 し,「 月 協 定 」 第15条 第2項 は,1締 約 国 が一 方 的 に 協 議 を 請 求 で き,請 求 され た締 約 国 に は,当 該 請 求 に応 ず る義 務 が 有 る と して い る。 これ は, 同条 に基 づ く協議 の 対 象 が,前 述 の よ うに,「 協定 上 の 義 務 違反 又 は権 利 侵 害 」 に 及 び広 範 囲 で あ るか ら,そ の性 質 上,協 議 を請 求 で き る国 及 び 当 該 請 求 に応 ず べ き 国 の範 囲 を,上 述 の各 規 定 と比 較 して,広 く して い るの で あ る。 ま た,

「 月 協定 」第15条 第3項 は,締 約 国 に よ る国 連 事 務 総 長 へ の 協 議 に 関す る援 助 要 請 を規 定 して い るが,こ れ は,協 議 を有 効 な もの とす る ため の手 続 と して, 注 目 され よ う。

な お,「宇 宙救 助 返 還 協 定 」馳 は,協 議 の手 続 に関 す う規 定 を持 って い な い43㌔

次 に,上 述 の手 続 の前 提 と な る情 報 提 供 及 び事 前 通 告 の手 続 に つ いて で あ る 42)「 放送衛星法原則」中の 「 協議の義務と権利」原則 は,発 信国と受信 国相互 に,協

議請求権及び応諾義務を,認 めている。

43)こ れまでに述べて きた協議の義務は,条 約等 に基づ く国際義務で あり,誠 実に履行

されなければな らない。 しか しなが ら,こ の 協議の義務 は,請 求 国との合意が得 ら

れなければ,当 該活動に着手 してはな らない事 まで をも意 味するか どうか は,必 ず

しも明 らかではな い。この点 に関 し,「放送衛星法原則」中の 「 国家間の協議及び協

定 」原則 の審 議過程では,本 稿の関係箇所 で も指摘 した ように,協 議の後 に関係国

間の協定 を義務付 けるか どうかが最大の争点 であ ったが,結 局,協 定(又 は取 り決

め)を 義務付 けることが,異 例の多数決によ り押 し切 られ た。

(16)

84 宇 宙 国 際 法 に お け る協 議 制 度(2・ 完)

が,「 宇 宙 条 約 」 第11条 は,「 当 事 国 た る活 動 国 は,国 連 事 務 総 長 並 び に公 衆及 び 国 際 科学 界 に 対 し,実 行 可 能 な最 大 限度 まで,情 報 を 提供 す る」 と,規 定 し て い る。 しか し,「 実行 可 能 な 最 大 限 度 ま で」 と い う限 定 句 が 付 さ れ て い る の で,必 ず し も充分 な情 報 提 供 は,期 待 で き な い と言 え よ う。

ま た,「 月 協 定」 第5条 第1項,「 放 送 衛 星 法 原 則」 中 の 「国連 へ の通 報 」 原 則,及 び 「リモ ー トセ ン シ ン グ 法 原 則 案」 第VII原 則 第2項 は,上 述 の 「宇 宙 条 約 」 第11条 と ほ ぼ同 趣 旨の 情 報 提 供 に 関す る規 定 で あ るが,そ れ ぞれ に, や は り同 様 な限 定 句 が 付 され て お り,そ の点 が 問題 とな る。

以 上 の よ うな一 般 的 情 報 提 供の 規 定 に対 し,「 放 送 衛 星 法 原 則 」 中 の 「国 家 間 の協 議 及 び協 定」 原 則 及 び 「リモ ー トセ ン シ ング法 原 則 案 」 第XIII原 則 は, 活 動 に よ り影 響 を 受 け る国(受 信 国,被 探 査 国)へ の,活 動 国(発 信 国,探 査 国)に よ る事 前 通 告 を,義 務 付 け て い る。 この事 前 通 告 と い う手 続 は,あ る国 の 宇 宙 活 動(国 際 直 接 放 送,リ モ ー トセ ン シ ング)が,関 係 国 に 対 して い か な る影 響 を 及 ぼ す か を 判 断す る機 会 と材 料 を与 え る と い う点 で,関 係 国 間(ρ利 害 の 事 前 調 整 に寄 与す る手 続 で あ り,そ の意 味で 重 要 と考 え られ る。

次 に,協 議 に よ り関係 国間 の利 害 が事前 に調 整 で きず,紛 争 が 発 生 して しま っ た 場 合 の 手 続 で あ るが,「 月 協 定 」 第15条 第3項,及 び 「リモ ー トマ ン シ ング 法 原 則 案」 第XVII原 則 に よ れ ば,紛 争(「 リモ ー トセ ン シ ン グ 法 原 則 案 」 に っ い て は,当 該法 原 則 の適 用 か ら生 ず る紛 争 とな って いて,限 定 的 で あ る) は,協 議 に よ って解 決 され な けれ ば な らず,当 該 協 議 に よ り解 決 され ない 場 合 は,そ の 他 の 確 立 され た平 和 的紛 争 解 決 手 続(非 司 法 的 手 続 及 び 司 法 的 手 続) に よ り解 決 す る とさ れ る。 か か る手 続 に お け る協 議 は,平 和 的 な 紛 争 「解 決 」 手 続 の 第1段 階 と して,関 係 締 約 国 間 に義 務 付 け られ る もの で あ る。 そ して そ こで 用 い られ る形 式 的手 段 は,交 渉 に他 な らな い と思 わ れ る。 した が って,こ の 場合 の協 議 は,紛 争 の 平 和 的 解 決 手 続 の第1段 階 と して,国 際 条 約 に 基づ い て 関 係 締 約 国 間 に 義務 付 け られ る交 渉 と同一 の もの と,考 え られ る。

な お 「宇 宙 条 約」 及 び 「宇 宙 救 助 返 還 協 定 」 は,紛 争 解 決 に 関 す る規 定 を,

含 ん で い な い 。

(17)

商 学 討 究 第34巻 第3号 85 次 に,協 議 を欠 いて 宇 宙 活 動 が 実 施 され た場 合 の制 裁 手 続 につ いて で あ るが, 各 条 約 及 び法 原 則(案)と も,必 ず し も充 分 な規 定 を,含 ん で い な い44}。した が って,個 々 の宇 宙 活動 に つ いて,一 般 国 際 法 に基 づ く解 釈 が,必 要 に な って く ると思 わ れ る。 この点 に関 して,少 な くと も,放 送 衛 星 に よ る直 接 放 送 と リ モ ー トセ γ シン グ に つ い て は,前 稿 で も明 らか に した よ うに45⊃,受信 国 又 は被 探 査 国 の意 思 を 全 く無視 した一 方 的,継 続 的 か つ 大 規 模 な 直接 放 送 又 は リモ ー トセ ン シ ング は,国 際法 違反 の疑 いが きわ め て 強 い と思 わ れ る。 そ して各 法 原 則(案)が,協 議 と い う手 続 に よ り違 法 性 を 阻 却 しよ う と して い る以 上,当 該 手 続 を欠 い た場 合 は,国 際法 上 違 法 と な り,国 際 責 任 を 負 わ な け れ ば な らな い

と思 わ れ る。

さて こ こで,協 議 の手 続 を,各 条 約 及 び 法 原 則(案)ご とに,整 理 して お こ う と思 う。

まず 「宇 宙 条 約 」 は,情 報 提 供,協 議 を 請 求 す る権 利,及 び 請求 に応 ず る義 務 の,3つ の 段 階 か ら成 って い る。 これ に 対 し 「宇 宙救 助 返還 協 定 」 は,協 議 そ の も の につ いて 規 定 す る のみ で あ る。一 方 「月 協 定」 は,情 報提 供,協 議 を 請 求 す る権 利,請 求 に応 ず る義 務,及 び 紛 争 解 決 の た め の 第1段 階 の,4っ の 段 階 か ら成 って い る。 そ して 「放 送 衛 星 法 原 則」 は;情 報 提供,事 前 通 告,協 議 を 請 求 す る権 利,及 び 請 求 に 応 ず る義 務 の,4つ の段 階 か ら成 って い るの に 対 し,rリ モ ー トセ ン シ ング法 原 則 案 」 で は,紛 争 解 決 の た め の 第1段 階 と い

う段 階 が 加 え られ,5つ の段 階 か ら成 って い る。

以 上 の 各 段 階 の う ち,関 係 国 間 の 利 害 の 事 前 調 整手 続,つ ま り紛 争 「回 避 」 手 続 と して 重 要 な の は,事 前 通 告,協 議 を 請 求す る権 利,及 び請 求 に応 ず る義 務 の,3っ の 段 階 で あ る と思 わ れ る。

〔3脇議 の機 能

44)「 放 送 衛 星 法原 則 案 」(U.N.Doe.A/AC.105/288,AnnexII,)中 の 「不 法 な/

許 容 され な い放 送 」原 則(全 文 カ ギ カ ッコ付 き)だ け が,協 議 を 欠 い た 直 接 放 送 を 違 法 と し,当 該 放 送 を や め させ る た め に,締 約 国 は あ らゆ る援 助 を 与 え る こ と に同 意 す る と して い た が,採 択 さ れ た法 原 則 か らは削 除 され て い る。

45)拙 稿 前 掲 論 文 「放 送衛 星 に よ る 直接 放 送 と国 際法 」,,142頁。

(18)

86宇 宙国際法における協議制度(2・ 完)

宇 宙 国 際 法 に お け る協 議 の機 能 に は,2つ の 側 面 が 有 る と言 え よ う。 第1の 側 面 は,関 係 国 間 の利 害 を事 前 調 整 して 紛 争 を 「回 避」 す る手 続 と い う側 面 で

あ り,ま た第2の 側 面 は,紛 争 が 発 生 して しま った 後 の,当 該 紛 争 を 「解 決 」・

す る手 続 の第1段 階 とい う側 面 で あ る と思 わ れ る。

まず 第1の 紛 争 「回 避」 手 続 とい う側 面 に つ い て で あ る が,「 宇 宙 条 約 」 及 び 「月 協 定 」 に お け る協 議 は,宇 宙 空 間 及 び 天体 とい う国 際地 域 の共 同 利 用 及 び そ の環 境 保 全 とい う観 点 か ら,関 係 締 約 国 間 の 利 害 を事 前 に調 整 し,相 互 間 に お け る紛 争 発 生 を 回 避 す る手 続 で あ る と,考 え る ととが で き る。 この 点 に 関 して,「 宇 宙 憲 章」 た る 「宇 宙 条 約」 は,そ の 第1条 でい み じ く も,「 宇 宙 空 間 及 び 天 体 は,す べ て の国 の 利 益 の た め に,い か な る種 類 の差 別 も な く,平 等 の 基礎 に立 ち,自 由 に探 査 し利 用 す る こ とが で き る」 と,う た って い る。 よ って, 宇 宙 空 間 及 び 天 体 に お け る活 動 は,典 型 的 な 「利 益 共 同」 の関 係 にな る と思 わ れ る。 した が って,「 宇 宙 条 約」 及 び 「 月 協 定」 に お け る協 議 は,「 利 益 共 同」

に 基 づ く紛 争 回 避 手 続 と,位 置 付 け る こ とが で き よ う。

これ に対 し,「宇 宙 救 助返 還協 定」 に お け る協 議 は,協 議 の 対 象 の と こ ろで も述べ た よ うに,捜 索 救 助 活 動 を よ り有 効 に実 施 で き る打 上 げ 国 の 宇 宙機 に対 す る属人 主 権 が,着 陸 国 の属 地 主 権 と衝 突 す るの を防 止 し よ う とす る手 続 で あ る と思 わ れ る。 した が って こ の協 議 は,他 締 約 国 の権 利 に 対 す る侵 害 を 防止 す る とい う点 で,紛 争 回避 手 続 と考 え る こ とが で き る。

一 方 「放 送 衛 星 法原 則」 及 び 「リモー トセ ン シ ン グ法 原 則 案」 に お け る協 議 に っ い て で あ るが,こ れ らの法 原 則(案)が 規 律 の対 象 とす る直 接 放送 活 動 及 び リモ ー トセ ン シ ング活 動 は,宇 宙 空 間 にお け る活 動 の影 響 が,地 球 上 に及 ぶ と い う特 徴 を有 して い る。 よ って,こ れ らの 法 原 則(案)に お け る協 議 は,先

の 「宇 宙 条約 」 及 び 「月 協 定」 にお け る協 議 の機 能 と,r宇 宙 救 助 返 還 協 定 」

に お け る協 議 の機 能 と を,あ わ せ て 持 って い る と考 え られ る。 つ ま り,宇 宙 部

分 に お け る活 動 につ いて は,「 利 益 共 同」 に基 づ く紛 争 回 避 手 続 と して機 能 し,

地 上 部 分 に お け る活 動 につ い て は,受 信 国 又 は 被 探 査 国 の 利 益 に 対 す る損 害

(又 は権 利 に対 す る侵 害)を 防止 す る と い う紛争 回避 手 続 と して 機 能 す る と思

(19)

商 学 討 究 第34巻 第3号87

わ れ る。 この よ うに,「 放 送衛 星 法 原 則 」 及 び 「リモ ー トセ ン シ ング法 原 則 案」

に お け る協 議 は,2つ の 機 能 を あ わ せ て 持 って い る と考 え られ る。

次 に協 議 の機 能 の 第2の 側 面,つ ま り紛争 「解 決 」 手 続 と い う側 面 につ いて で あ るが,「 月 協 定 」 及 び 「リモ ー トセ ン シ ング法 原 則 案 」 に お け る協 議 は, 紛 争 発 生 後 の平 和 的解 決手 続 の第1段 階 とい う機 能 を有 して い る。 つ ま り,紛 争 が 発 生 して しま っ た場 合,関 係 締 約 国 は まず 協 議 に よ って 解 決す る こと を義 務 付 け られ,そ れが 不 調 とな っ た場 合 に は じめ て,そ の他 の確 立 した平 和 的 解 決 手 続(非 旬法 的手 続 及 び司 法 的 手 続)を と る こ とが,義 務 付 け られ るの で あ る。 この 協 議 に お い て用 い られ る形 式 的手 段 は,協 議 の手 続 の と ころ で も指 摘 した よ うに,交 渉 に他 な らな い と思 われ る ので,紛 争 の平 和 的解 決 手 続 の 第1 段 階 と して,国 際条 約 に基 づ いて,関 係 締 約 国 間 に 交渉 が義 務 付 け られ て い る 'と 考 え て も

,差 し支 え な いで あ ろ う46,47}。 これ が,協 議 の機 能 の第2の 側 面 で あ る。

以 上 検 討 して きた よ う に,宇 宙 国 際 法 に お け る協 議 制 度 と言 って も,そ こで 用 い られ る形 式 的 手 段 は,交 渉 と同一 の もの と思 わ れ る。 しか し,協 議 の手 続 及 び 機 能 と い う観 点 か ら見 て く る と,交 渉 とは異 な った 特 徴 が 有 る と考 え られ る。 それ は この 制度 が,宇 宙 活 動 計 画 の事 前通 告,協 議 を請 求 す る潜 在 被 害 国 の 権 利,及 び 請 求 に 応 ず る潜在 加 害 国 の義 務 と い う一 連 の手 続 か ら成 り立 って 46)こ の 点 に関 連 して,一 般 国 際 法 上,紛 争解 決 に お け る交 渉 の 優 先 性 が,確 立 した 規 範 にな って い るか ど うか が,問 題 とな る。 こ の 問題 につ いて は,諸 見 解 が 対 立 して お り(山 本草 二 「国 際 紛 争 に お け る協 議制 度 の 変 質 」 『紛 争 の 平 和 的 解 決 と国 際 法』, 皆 川 洗 先生 還 暦 記 念 論 文 集,北 樹 出版,1981年,229‑230頁 。),ま た 国 際 裁 判 所 の 態 度 も,必 ず し も一 貫 して い な い と 思わ れ る。 さ ら に国 連 憲 章 で は,第33条 第1 項が,そ の継 続が 国 際 の平 和 及 び 安 全 の維 持 を危 くす るお そ れ の 有 る紛 争 に つ い て,, 加 盟 国 が と るべ き手 続 を 列挙 し,そ の 中 に交 渉 も含 まれ るが,ど の手 続 を 選 択 す る か は 任 意 的 で あ り,必 ず し も交 渉 の優 位 性 を 規 定 した もの で は な い と 考 え られ る' (L.M.Goodrich,etal.,(洗 αrεeroノ ε んθ ひ協edNα 寵oηs,3rdand・

Rev.ed,,NewYork,1969,pp.260‑261.)。

47)も うひ と つ こ の点 に関 連 して,一 般 国 際法 上,国 家 には 交 渉 の 義 務 が 有 るか ど うか が 問 題 とな るが,こ の 問 題 自体 ひ と つ の国 際法 上 の 大 きな 問 題 で あ り,本 稿 の 主題 は,宇 宙 国 際法 に お け る紛 争 回避 手 段 と して の 協 議 の 特 徴 を 明 らか に す る こ とに有

るの で,本 稿 で は,か か る問 題 の有 る こ と を 指摘 す るに 留 め る。

(20)

88 宇 宙 国際 法 にお け る協 議 制 度(2・ 完)

い る こ とで あ り,ま た関 係 締 約 国 間 の 利 害 を事 前 に 調整 し,紛 争 の発 生 を 事 前 に 回 避 す る手 続 と して 機 能 す る こ とで あ る。 これ らの点 こそ が,本 稿 にお いて 検 討 して き た協 議 制 度 の 特徴 な の で あ る。

VIIIむ す び

これ まで の検 討 か ら明 らか にな った よ うに,宇 宙 国 際 法 に お け る協 議 制度 で 用 い られ る形 式 的 手 段 は,伝 統 的 な交 渉 に他 な らな い と思 わ れ るが,そ の手 続 及 び 機 能 と い う観点 か ら見 る と,交 渉 とは異 な っ た特 徴 を持 って い る と思 わ れ る。 特 に,宇 宙 活動 にお け る 関係 締 約 国 間 の利 害 を 事 前 に調 整 し,紛 争 の発 生 を事 前 に 回 避 す る手 続 と して この協 議 制 度 が 機 能 す る と い う点 は,そ の最 大 の 特 徴 と考 え られ る。

このよ うな 関係締 約 国 間 の利 害 を事 前 に調 整 し,紛 争 発 生 を回 避 す る手 続 は, 宇 宙 開 発 の分 野 に お いて は,必 要 か つ 不 可 欠 な 手 続 と考 え られ る。 宇 宙 開 発 に お いて も,他 の い くつ か の 分 野 と同 様 に,損 害発 生 の事 前 防止 が,事 後 救 済 よ り格 段 に優 るか らで あ る。 そ して,こ の よ うな 関係 締 約 国 間 の利 害 の事 前 調 整 と い う手 続 こそ,い み じ くも 「宇 宙 条 約」 前 文 及 び第1条 が うた って い る,宇 宙 開 発 に お け る 「国 際協 力」 を促 進 す るた め の一 形 態 とな る と思 わ れ る。

と こ ろで,こ れ まで 述 べ て きた 協 議制 度 は,国 際社 会 の 分権 性 に基 づ いて,

   

締 約 国 間 の 利 害 を 自 ら調 整 す る もの,つ ま り 「 私 的処 理 」 と考 え られ る。 しか し,宇 宙 開 発 に お い て は,活 動 国 は ア メ リカや ソ連 の よ う な大 国 で あ り,一 方 当 該 活 動 に よ り影 響 を 受 け る国 は,た いて い小 国 で あ る。 よ って,上 述 の よ う な利 害 の 事前 調 整手 続 が存 在 して も,小 国 は なか なか 大 国 に対 し,協 議 を請 求

しづ らい と思 われ る。特 に近 年 では,国 連 の政 治 機 関 の 介 入 に よ る 「公 的処 理 」 を,小 国 は さ ま ざ ま な分 野 で 強 く希 望 して い る48}。した が って,宇 宙 国 際法 に お け る協 議制 度 に お い て も,「 国 連 新 海 洋 法 条 約 」49〕 の 付 属 書Vか らVIIIが,

48)E。Jim6nezdeAr6chaga,"lnternationalLawinthePastThirdofa Centurジ,Rθc砿e記dεsσoμrs,Tome159(1978‑1),1979,p.147.

49)U.N.Doc.A/CONF.62/122。

(21)

商 学 討 究 第34巻 第3号 89 海 洋 の 専 門 家 に よ る調 停,仲 裁,及 び海 洋 法 国 際 裁 判 とい う手 続 を創 設 しよ う

と して い るの と 同様 に,宇 宙 の 専 門 家 に よ る協 議 の た め の仲 介 機 関 を 設 立 す る 必 要 が 有 る と思 わ れ る。 この 仲 介 機 関 は,専 門 的 な立 場 か ら,関 係 国 に 情 報 を 提 供 した り,問 題 解 決 の ため の 指 針 等 を 提 示 した りす る こと に な る。 この よ う な 組 織 が で きて は じめ て,協 議 制 度 は,紛 争 回 避手 続 と して,実 効 的 な もの と な るで あ ろ う。

さて 最 後 に,人 類 に よ る宇 宙 開 発 の 歴 史 は丁 度 四半 世 紀 と な るが,そ の 間 に

お け る科 学 技 術 の発 達 に 比較 す れ ば,宇 宙 国 際法 の 進 展 は,必 ず し も充 分 とは

言 え な い で あ ろ う。 した が って,宇 宙 国 際法 を 整備 す る こ と によ り,宇 宙 開発

に お い て 国 際 社会 を よ り組 織 化 す る こ とが,必 要 と な る と思 わ れ る。

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